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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1348438
審判番号 不服2017-4429  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-29 
確定日 2019-01-30 
事件の表示 特願2013-512641「減色の部分的に反射する多層光学フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月24日国際公開、WO2011/146288、平成25年 6月24日国内公表、特表2013-526730〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2011年5月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年5月21日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年5月8日に手続補正がされ、平成27年2月6日付けで拒絶理由が通知され、同年8月10日に意見書の提出とともに手続補正がされ、平成28年1月21日付けで拒絶理由が通知され、同年7月26日に意見書が提出され、同年11月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成29年3月29日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がされた。
その後、平成29年12月22日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知し、その応答期間中の平成30年7月6日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2 本件発明
本願の請求項1?3に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
第1の面内主軸を有する部分的に反射する多層反射偏光フィルム体であって、
第1のミクロ層のパケットと、
第2のミクロ層のパケットとを備え、少なくともいくらかの光線が、前記第1及び第2のミクロ層のパケットを連続的に通過することができるように、前記第1のパケットと第2のミクロ層のパケットとが接続されており、
前記第1及び第2のパケットが、400?700nmの拡張された波長範囲にわたって、前記第1の面内主軸に沿って直線偏光された垂直入射光線を部分的に透過し部分的に反射するように、それぞれ構成され、
前記第1及び第2のパケットが、組み合わされると、前記拡張された波長範囲にわたって平均して、0.05(5%)?0.95(95%)の範囲の垂直入射光線に対する第1の複合内部透過率を有し、
前記第1及び第2のパケットが、組み合わされると、(a)前記第1の面内主軸を含む第1の主平面において60度で入射し、(b)前記第1の主平面において直線偏光される斜光線に対する第2の複合内部透過率を有し、前記第2の複合内部透過率が、前記拡張された波長範囲にわたって平均して0.1(10%)?0.9(90%)の範囲にあり、
前記第1及び第2のパケットの複合の高周波スペクトル変動(Δcomb)が、前記第1のパケット自体の高周波スペクトル変動(Δ1)未満であり、
第1のパケットの反射又は透過スペクトルの高周波スペクトル変動からのピーク及び谷部分は、第2のパケットの反射又は透過スペクトルの高周波スペクトル変動からのピーク及び谷部分とそれぞれ波長が一致せず、
高周波スペクトル変動とは、a_(0)+a_(1)λ+a_(2)λ^(2)+a_(3)λ^(3)の形状の最良適合曲線との差の標準偏差であり、
前記多層反射偏光フィルム体に含まれるパケットの数が2である、多層反射偏光フィルム体。」(以下、「本件発明」という。)

3 当審拒絶理由
当審拒絶理由において理由3(進歩性)として通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

理由3(進歩性)
本件出願の請求項1?3に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内または外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1:特表平9-506837号公報
引用例2:国際公開第2009/096298号

4 引用例の記載及び引用発明
(1)引用例1
ア 引用例1の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例1(特表平9-506837号公報)には、図面とともに、以下の記載事項がある。(引用例1に記載されていた下線を省き、合議体が発明の認定等に用いた箇所に新たに下線を付与した。以下同様。)

(ア)「【特許請求の範囲】
1.結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルと別の選ばれたポリマーとの複数の交互の層の第一主要部品を含んで成る多層化ポリマーフィルムであって、層全部の厚さが、実質上0.5μm未満であり、かつ結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステル層の少なくとも1つの面内軸に関する屈折率が、選ばれたポリマーの隣接する層よりも高いフィルム。

(中略)

21.結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルと別の選ばれたポリマーとの複数の交互の層の第二主要部品を含んで成る請求項1に記載のフィルムであって、層全部の厚さが、実質上0.5μm未満であり、かつ結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステル層の少なくとも1つの面内軸に関する屈折率が、第一および第二の主要部品を互いにラミネートした選ばれたポリマーの隣接する層よりも高いフィルム。」(第2頁第1行?第3頁第27行)

(イ)「 発明の背景
本発明は、交互の層が結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルと別の選ばれたポリマーを含んで成る多層化ポリマーフィルムに関する。
そのようなフィルムは、低い屈折率と高い屈折率を有する多数の層の間の構造的な干渉によって光を反射する光学干渉フィルターを作製するために使用することができる。」(第7頁第3?8行)

(ウ)「 さらに、本発明の反射偏向子は、薄い赤外線シート偏向子として有用である。薄い赤外線シート偏向子の需要は、ババ(Baba)らによって述べられている[オプティックス・レターズ(Optics Letters)、第17巻、第8号、622?624頁、1992年4月15日]。ババらは、ガラスフィルムに囲まれた金の島を延伸することによって作製した偏向子を記載している。しかしながら、そのような偏向子は、合理的な吸収現象において作用し、そのようなものは、反射偏向子ではない。
本発明の反射偏向子は、眼用レンズ、ミラーまたは窓のような光学要素において有用である。偏向子は、サングラスにおいてスタイリッシュであると考えられる鏡の様な外観を特徴とする。さらに、PENは、非常に良好な紫外線フィルターであり、紫外線を、可視スペクトルの端まで効率よく吸収する。」(第13頁第25行?第14頁第7行)

(エ)「 実施例1
PENとナフタレート70/テレフタレート30のコポリエステル(^(co)PEN)を、ジオールとしてエチレングリコールを用いて、標準ポリエステル樹脂合成釜において合成した。PENと^(co)PENの固有粘度はいずれも、約0.6dL/gであった。PENと^(co)PENの単層フィルムを押出成型した後、約150℃において、面を押さえながら、1軸延伸した。押出成形すると、PENは、約1.65の等方性の屈折率を示し、^(co)PENは、約1.64の等方性の屈折率を表した。等方性とは、フィルムの面内の全ての軸に関する屈折率が、実質上等しいことを意味する。屈折率の値はいずれも550nmにおいて観察された。延伸比5:1で延伸した後、配向軸に関するPENの屈折率は、約1.88に高まった。横断軸に関する屈折率は、1.64までわずかに低下した。延伸比5:1で延伸した後の^(co)PENフィルムの屈折率は、約1.64で等方性を維持した。
次に、標準押出ダイを供給した51スロット供給ブロックを用いて同時押出すことにより、PENと^(co)PENの交互の層から、満足な多層偏向子を作製した。押出成形は、約295℃で行った。PENを約23ポンド/時間で押出し、かつ^(co)PENを約22.3ポンド/時間で押出した。PEN表面層の厚さは、押出したフィルム積層体内の層の約3倍であった。中間層はいずれも、約1300nmの光に対して、光学的4分の1波長厚さを有するように設計された。51層積層体を押出し、約0.0029インチの厚さまでキャストした後、約150℃においておよそ5:1の延伸比で、面を押さえながら1軸延伸した。延伸したフィルムの厚さは、約0.0005インチであった。
その後、延伸したフィルムを、エアーオーブン内において、約230℃で30秒間熱硬化した。延伸したフィルムと、その後熱硬化したフィルムについての光学スペクトルは、本質的に同じであった。
図5は、熱処理前の配向方向50と横断方向52の両者における51層積層体の測定した透過率のグラフである。
それぞれ上記と同様にして作製した8個の51層偏向子を、流体を用いて組み合わせ、408光学層の偏向子を形成してエアーギャップを排除した。図6は、配向方向54と横断方向56の両者における、408層の350?1800nmまでの透過率を示すグラフである。」(第18頁第25行?第19頁第26行)

(オ)「 実施例2
実施例1の記載と同様にして、51スロット供給ブロック内でPENと^(co)PENを押出した後、押出において連続して2層ダブリングマルチプライヤー(multiplier)を用いることにより、満足な204層偏向子を作製した。マルチプライヤーは、供給ブロックから出てくる押出成型された材料を、2つの半分幅のフロー流中に分配した後、互いの上に半分幅のフロー流を積み重ねるものである。米国特許第3,565,985号には、類似の同時押出マルチプライヤーが記載されている。固有粘度0.50dL/gのPENを、約295℃において、22.5ポンド/時間で押し出すのと同時に、固有粘度0.60dL/gの^(co)PENを、16.5ポンド/時間で押出した。キャストウェヴは、厚さ約0.0038インチであり、延伸中、空気温度140℃で、面を押さえながら、長尺方向に比5:1で1軸延伸した。表面層以外は、対の層すべてを、550nm光りに対して2分の1波長光学的厚さになるようにした。図7の透過スペクトルでは、約550nmを中心とする配向方向60の2つの反射ピークが、透過スペクトルからはっきり分かる。ダブルピークは、大抵、層マルチプライヤーに導入されたフィルム誤差の結果であり、ブロードなバックグラウンドは、押出成形工程とキャスト工程の全体に亙る累積フィルム誤差の結果である。横断方向の透過スペクトルを58で示す。上記のフィルム2つを光学的接着によって合わせてラミネートすることにより、偏向子の光学消衰を大幅に向上できる。
次に、上述と同様にして作製した2つの204層偏向子を、光学接着剤を用いて手でラミネートして、408層フィルム積層体を製造した。好ましくは、接着剤の屈折率は、等方性の^(co)PEN層の屈折率に適合させるべきである。図8に示すように、積層試料では、図7に表れた反射ピークを平滑にしている。このことは、ピーク反射率が、フィルムの異なる領域において様々な波長でランダムな形状で生じるために起こるものである。この効果は、しばしば「真珠光沢」と呼ばれる。2つのフィルムのラミネートは、色のランダムな変化が一方のフィルムと別のフィルムとで一致しないために真珠光沢を低減し、フィルムを重ねると相殺する傾向がある。
図8には、配向方向64と横断方向62の両者における透過率データを示す。偏向子の一方の面では、約450?650nmの範囲の波長において、光の80%以上を反射する。」(第19頁第27行?第21頁第1行)
(合議体注:図7及び図8は以下のとおりのものである。)


(カ)「 真珠光沢は、本質的には、ある領域に対する隣接する領域におけるフィルム層内の非均一性の尺度である。完全に厚さを制御すると、ある波長に中心を合わせたフィルム積層体は、試料全体に亙って色の変化がない。可視スペクトルを完全に反射するように設計した多層積層体は、ランダムな波長において、顕著な光がランダムな領域を通して漏れる場合、層の厚さの誤差によって、真珠光沢を有する。」(第21頁第2?7行)

(キ)「 本発明を、以下の実施例の方法により説明する。実施例では、光学吸収が無視できるために、反射は、1-透過率に等しい(R=1-T)。

(中略)

PEN:CoPEN、601-高色(High Color)
ウェヴを押出して、2日後にフィルムを配向することにより、他のすべての実施例とはことなるテンターで601層を含む同時押出フィルムを製造した。固有粘度0.5dL/g(60重量%フェノール/40重量%ジクロロベンゼン)のポリエチレンナフタレート(PEN)を、一方の押出機において速度75ポンド/時間で分配し、固有粘度0.55dL/g(60重量%フェノール/40重量%ジクロロベンゼン)のCoPEN(2,6-NDC 70モル%およびDMT 30モル%)を、他方の押出機において速度65ポンド/時間で分配した。PENは、表層上にある。供給ブロック法を用いて、151層を2つのマルチプライヤーに通して、601層の押出物を得た。米国特許第3,565,985号には、同様の同時押出マルチプライヤーが記載されている。延伸はすべて、テンター内で行った。フィルムを約280°Fで約20秒予熱し、約4.4の引っ張り比まで、約6%/秒の速度で横断方向に引っ張った。その後、フィルムを、460°Fに設定した熱硬化オーブン内で最大幅の約2%に緩和した。最終フィルムの厚さは1.8miLであった。
図28にフィルムの透過率を示す。曲線aは、通常入射におけるp偏向した光の透過率を示し、曲線bは、60°入射におけるp偏向した光の透過率を示し、曲線cは、通常入射におけるs偏向した光の透過率を示している。通常入射および60°入射の両者におけるp偏向した光の透過率は、不均一であることが分かる。曲線cで示される可視域(400?700nm)でのs偏向した光の消衰も不均一であることが分かる。
PET:CoPEN、449
キャストウェヴを1操作で押出した後、ラボラトリーフィルム延伸装置で配向することにより、449層を含む同時押出フィルムを製造した。固有粘度0.60dL/g(60重量%フェノール/40重量%ジクロロベンゼン)のポリエチレンテレフタレート(PET)を、一方の押出機において速度26ポンド/時間で分配し、IV(固有粘度)0.53dL/g(60重量%フェノール/40重量%ジクロロベンゼン)のCoPEN(2,6-NDC 70モル%およびDMT 30モル%)を、他方の押出機において速度24ポンド/時間で分配した。PENは、表層上にある。供給ブロック法を用いて、57層を2つのマルチプライヤーに通して、449層の押出物を得た。米国特許第3,565,985号には、同様の同時押出マルチプライヤーが記載されている。キャストウェヴは、厚さ7.5miL、および幅12インチであった。その後、ウエヴを、パントグラフを使用してフィルムの角を挟み、それを一方向に延伸すると同時に均一な速度で他の方向へ押すラボラトリー延伸装置を用いて1軸延伸した。7.46cm^(2)のウェヴを、約100℃において延伸機中で荷重し、120℃まで60秒で加熱した。その後、試料が約5.0×1に延伸されるまで、(元の寸法に対して)10%/秒で延伸した。延伸直後に、室温の空気を送風することによって、試料を冷却した。最終フィルムの厚さは約1.4miLであった。脱ラミネートせず配向プロセスに通すために、このフィルムを十分に接着した。
図29に、この多層フィルムの透過率を示す。曲線aは、通常の入射におけるp偏向した光の透過率を示し、曲線bは、60°入射におけるp偏向した光の透過率を示し、曲線cは、通常入射におけるs偏向した光の透過率を示している。通常入射および60°入射におけるp偏向した光の両者の透過率が非常に高いことが分かる(80?100%)。」(第34頁第18行?第40頁第2行)
(合議体注:図28及び図29は、以下のとおりのものである。)


(ク)「 57層供給ブロックを用いた実施例では、層すべてを、ある光学厚さ(550nmの4分の1)のみに設計したが、押出装置は、積層体全体に亙って層厚さの分配を導入するため、かなり広域バンドの光学応答を引き起こした。151層供給ブロックで作製した実施例では、供給ブロックを、層厚さの分布を創製して、可視スペクトルの一部を覆うように設計した。その後、米国特許第5,094,788号および同第5,094,793号に記載の如く、非対称なマルチプライヤーを用いて、層厚さの分布を広くして、ほとんどの可視スペクトルを覆うようにした。
本発明は、好ましい実施態様を参照して記載したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態や詳細を変化できることが、当業者には明白であろう。」(第40頁第26行?第41頁第8行)

イ 引用発明1
引用例1において用いられている「偏向子」という用語は、引用例1に対応する英語公報である国際公開第95/17303号では、「polarizer」(例えば明細書第15頁第10行)という用語が用いられており、「偏光子」と訳すべき用語であるから、引用発明の認定にあたっては、「偏向子」を「偏光子」に置き換えた。
上記記載事項(オ)に基づけば、引用例1には、実施例2として、以下の発明が記載されていると認められる。
「51スロット供給ブロック内でPENと^(co)PENを押出した後、押出において連続して2層ダブリングマルチプライヤー(multiplier)を用いることにより、満足な204層偏光子を作製し、
次に、上述と同様にして作製した2つの204層偏光子を、光学接着剤を用いて手でラミネートして製造した、408層フィルム積層体であって、
2つのフィルムのラミネートは、色のランダムな変化が一方のフィルムと別のフィルムとで一致しないために真珠光沢を低減し、フィルムを重ねると相殺する傾向があり、偏光子の一方の面では、約450?650nmの範囲の波長において、光の80%以上を反射する、次の透過率特性を具備する、408層フィルム積層体。

」(以下、「引用発明1」という。)

(2)引用例2
ア 引用例2の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願の優先権日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用例2(国際公開第2009/096298号)には、図面とともに、以下の記載事項がある。

(ア)「技術分野
[0001] 本発明は、少なくとも2種類の樹脂からなる層を積層した積層フィルムと、その積層フィルムからなる成形体、または反射体に関するものである。

(中略)

[0005] 金属を用いない金属のような光沢を有する材料として、従来から、屈折率の異なる樹脂層を交互に多層に積層することより、選択的に特定の波長の光を反射するフィルムを用いた例(たとえば特許文献1#2参照)がある。しかしながらこれらの技術では、用いる樹脂の屈折率差が大きすぎるために、樹脂層間の親和性が不足し、層間剥離が生じる欠点があり、実際には成形加飾に用いることは困難であった。また、ハーフミラーのような反射率の低いフィルムを製造しようとすると、色づきが生じるという問題もあった。
[0006] これらの問題に対し、用いる樹脂の屈折率差を適度に調整し、層間剥離を抑制するとともに、特殊な層構造を形成することによって実現した色づきのない金属光沢調のフィルムもある(特許文献3参照)。この場合、ハーフミラーのような反射率をおさえたフィルムを製造しようとすると、若干色づきやすく、干渉縞模様も見えやすいという問題があった。また、層厚みの分布が表裏で大きく異なるために、成形体とした場合、表裏の熱収縮・熱膨張特性の差により、そりなどが発生するという問題もあった。
[0007] また、特許文献1?3のような多層積層フィルムをインサート成型すると、ウォッシュアウト(以下、WashOutと記すことがある。)と呼ばれる成型不良現象が発生するという問題もあった。WashOutとは、ゲート部付近のフィルムやインキが融解・流動する現象である。特に多層積層フィルムの場合は、フィルムが融解しなくても、層の一部が折れ曲がり変形することにより、干渉反射波長がシフトし、特有の変色が生じ、欠点となることが問題となっていた。
特許文献1:特開平3-41401号公報
特許文献2:特開平4-295804号公報
特許文献3:国際公開第2007/20861号パンフレット
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0008] 本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、自然な金属調やハーフミラー調となりながら、色づきや層間剥離がなく、干渉縞も見えにくいフィルムを提供することを課題とする。また、環境負荷が小さく、リサイクル性にも優れ、電磁波障害を起こさず、そりやWashOutなどのない成形体や反射体を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0009] 上記課題を解決するため、本発明の積層フィルムは、すくなくとも樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層を含んでなる積層数が200以上の積層フィルムであって、層厚みが10nm以上1000nm以下の樹脂Aからなる層を層群Lとし、この層群Lは層La、層Lb、層Lcを有しており、一方の表面から他方の表面にむけて層La、層Lb、層Lcの順に配置されており、層Laと層Lcの層厚みは等しく、層Laと層Lcの間には少なくとも30層以上樹脂Aからなる層を含み、かつ層Laの層厚みは層Lbの層厚みの1.4倍以上もしくは0.7倍以下であることを特徴とする
発明の効果
[0010] 本発明の積層フィルムは、自然な金属調やハーフミラー調となりながら、色づきや層間剥離がなく、干渉縞も見えにくいものである。
[0011] また、本発明の積層フィルムを含んでなる成形体や反射体は、リサイクル性にも優れ、電磁波を遮蔽せず、そりやWashOutのないものである。」

(イ)「発明を実施するための最良の形態
[0013] 上記目的を達成するため、本発明の積層フィルムは、すくなくとも樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層を含んでなる積層数が200以上の積層フィルムであって、層厚みが10nm以上1000nm以下の樹脂Aからなる層を層群Lとし、この層群Lは層La、層Lb、層Lcを有しており、一方の表面から他方の表面にむけて層La、層Lb、層Lcの順に配置されており、層Laと層Lcの層厚みは等しく、層Laと層Lcの間には少なくとも30層以上樹脂Aからなる層を含み、かつ層Laの層厚みは層Lbの層厚みの1.4倍以上もしくは0.7倍以下でなければならない。このようなフィルムは、自然な金属調やハーフミラー調となりながら、色づきや層間剥離がなく、干渉縞も見えにくいものである。

(中略)

[0027] 本発明の積層フィルムの層構成を満たす一例を図1に例示する。図1は、樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層を交互に積層したフィルムの樹脂Aからなる層の層厚みを、各層順(以後、層番号と呼ぶ)に対してプロットしたものである。従って、図では、ライン状にも一見みえるが、整数の層番号のみに層厚みが対応しており、奇数の層番号の層が樹脂Aからなる層であり、偶数の層番号の層が樹脂Bからなる層となっている。この点については、図2?図8についても同様である。一方、従来の技術(特許文献3)の層構成を満たす一例を、同様に図6に例示する。図1からも見てとれるように、本発明の層構成を満たす場合、フィルム断面の層厚み分布が表裏で対称もしくは対称に近いものとすることができるため、表裏の物性差を抑制することができ、加熱時などに発生するカールなども抑制できるものである。さらに、金属調やハーフミラー調とするためには、図示したごとく、層厚みが徐々に変化した構造を有していなければならないが、図6のように単調増加曲線または単調減少曲線に近似できる層構成の場合、特にハーフミラー調などとすると、ごく一部の積層不良が特定波長の光の反射率の低下をもたらすため、色づきが発生しやすい。一方、図1のように、一方の表面から反対の表面に向かうにつれ、増加したのち、減少するような層構成を含む場合は、ごく一部に積層不良が生じ、設計値からはずれたとしても、他の部位に同程度の層厚みが存在しているため、全体として層厚み分布を補完することが可能であり、特定波長の光の反射率の低下が少なく、色づきが発生しにくくなるものである。」

(ウ)「[0030] また、層Laの層厚みは層Lbの層厚みの1.8倍以上もしくは0.55倍以下であることが好ましい。さらに好ましくは、層Laの層厚みは層Lbの層厚みより2.5倍以上もしくは0.4倍以下である。このような層構造であると、層厚みの光学設計値からのずれを層群L内で補完しあることができるため、色づき等が発生しにくくなるものである。また、層厚みのむらの状態がランダム化するため、反射帯域としてはリップル状になりにくく、干渉縞も見えにくくなるものである。」

(エ)「[0036] なお、本発明では便宜上、図6のような層厚み構成を1段の傾斜構造と呼び、図3のような層厚み構成を2段の傾斜構造と呼び、図1や図5のような層厚み構成を3段の傾斜構造と呼び、図4のような層厚み構成を4段の傾斜構造と呼ぶこととする。1段の傾斜構造とは、層厚み分布を1本の単調増加曲線または単調減少曲線で近似できる構成のことを言う。一方、例えば、3段の傾斜構造では、3本の単調増加曲線および/または単調減少曲線で近似できる構成のことを言う。本発明では、2段以上の傾斜構造であることが好ましく、3段以上の傾斜構造であるとさらに好ましい。3段以上の傾斜構造となると干渉縞がほとんど見えなくなり、ハーフミラーとして用いても角度変化でもほとんど色づきしないものとなる。」
(合議体注:図3は以下のとおりのものである。)


(オ)「[0043] また本発明の積層フィルムはハーフミラーとしても利用可能である。ハーフミラーとは、ある条件では鏡のようにふるまい、別の条件では透明体のようにふるまうものである。鏡のようにふるまうためには、透過光を極力少なくなるように、光を調整する。本発明の積層フィルムを、ハーフミラーとして用いる際は、積層フィルムの波長帯域400nm?1000nmの平均の相対反射率が30%以上70%以下であることが好ましい。また、本発明の積層フィルムを透明樹脂と一体成形して用いることも好ましい。さらに、本発明の積層フィルムの少なくとも片面の一部に光を遮蔽する層を設けることにより、ミラーとなる部分と、ハーフミラーとなる部分を同時に形成することも可能である。すなわち、光を遮蔽する層を設けた部分は、絶えず光の透過が生じないため、鏡のようになる。一方、光を遮蔽する層を設けなかった部分は、ハーフミラーとなるものである。ここで、光を遮蔽する層としては、黒色層を印刷などにより形成する方法が簡便である。このようなハーフミラーは、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、建築材料、ゲーム機、アミューズメント機器、包装容器などに好ましく用いることができる。」

(カ)「[0056] 本発明では、従来の多層積層フィルムに比較して、薄い層から厚い層への変化もしくは厚い層から薄い層への層厚みの変化が、非常に急になる。これは、従来の技術では、フィルム中の層厚みの変化が1段の傾斜構造となっているのに対し、本願は2段以上の傾斜構造となるためである。安易に層数を増やすことは積層精度の低下をまねくが、層数を維持しながら2段以上の傾斜構造を得ることは従来の技術では不可能であった。本発明では、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用い、各層の厚みに相当する各流量をスリットの間隙で調整することが、特に好ましく、この際、各スリット間隙の間隔精度は±10μm以下であると良い。このような特殊なフィードブロックを用いることにより、高精度でかつ2段以上の傾斜構造を形成することが可能となるものである。」

(キ)「[0072] (実施例1)
1.樹脂Bの合成
テレフタル酸ジメチルを56.1重量部、シス/トランス比率が72/28である1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルを24.8重量部、エチレングリコールを47.2重量部、スピログリコールを33.5重量部、酢酸マンガン四水塩を0.04重量部、三酸化アンチモンを0.02重量部それぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込んだ。内容物を150℃で溶解させて撹拌した。次いで、撹拌しながら反応内容物の温度を235℃までゆっくり昇温しながらメタノールを留出させた。所定量のメタノールが留出したのち、トリメチルリン酸を0.02重量部含んだエチレングリコール溶液を添加した。トリメチルリン酸を添加した後10分間撹拌してエステル交換反応を終了した。その後エステル交換反応物を重合装置に移行した。
[0073] 次いで重合装置内容物を撹拌しながら減圧および昇温し、エチレングリコールを留出させながら重合をおこなった。なお、減圧は90分かけて常圧から133Pa以下に減圧し、昇温は90分かけて235℃から285℃まで昇温した。重合装置の撹拌トルクが所定の値に達したら重合装置内を窒素ガスにて常圧へ戻し、重合装置下部のバルブを開けてガット状のポリマーを水槽へ吐出した。水槽で冷却されたポリエステルガットはカッターにてカッティングし、チップとし、樹脂Bを得た。
[0074] 得られた樹脂Bは、固有粘度は0.72の共重合ポリエステル(PE/SPG・T/CHDC)であり、非晶性樹脂であった。この樹脂Bのジカルボン酸成分は、テレフタル酸が70mol%であり、シクロヘキサンジカルボン酸が30mol%であった。また、樹脂Bのジオール成分は、エチレングリコールが75mol%であり、スピログリコールが25mol%であった。
[0075] 2.樹脂Aの合成
テレフタル酸ジメチルを100重量部、エチレングリコールを64重量部用いる以外は前記と同様にして樹脂Aを重合した。樹脂Aは固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)であり、結晶性樹脂であった。
[0076] 2種類の熱可塑性樹脂として、樹脂Aと樹脂Bを準備した。樹脂AおよびBは、それぞれ別のベント付き二軸押出機にて280℃の溶融状態とした後、ギヤポンプおよびフィルターを介して、301個のスリットを有する部材を別個に3個有する901層のフィードブロックにて合流させた。なお、両表層部分は樹脂Aとなり、樹脂Aと樹脂Bが交互に積層され、かつ隣接する樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層の層厚みは、ほぼ同じになるようにした。つづいて、T-ダイに導いてシート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。
[0077] 得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布し、透明・易滑・易接着層を形成した。
[0078] この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に7%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。このフィルムの設計層厚みは、図1のとおりであり、スリット間隙を調整することにより、各層の層厚みを制御した。得られた結果を表1に示す。」

(ク)「[0089][表1]



(ケ)「産業上の利用可能性
[0091] 本発明の用途は特に限定されないが、ミラー、金属調加飾材料、ディスプレイ用光学部材などに特に好適に用いることができるものである。」

イ 引用発明2
上記記載事項(イ)?(オ)に基づくと、引用例2には、段落[0009]又は[0013]に記載された発明をさらに具体化した態様として、図3に例示されるような、次の発明が記載されているといえる。
「すくなくとも樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層を含んでなる積層数が200以上の積層フィルムであって、
層厚みが10nm以上1000nm以下の樹脂Aからなる層を層群Lとし、この層群Lは層La、層Lb、層Lcを有しており、一方の表面から他方の表面にむけて層La、層Lb、層Lcの順に配置されており、層Laと層Lcの層厚みは等しく、層Laと層Lcの間には少なくとも30層以上樹脂Aからなる層を含み、かつ層Laの層厚みは層Lbの層厚みの0.7倍以下であり、
自然なハーフミラー調となりながら、色づきや層間剥離がなく、干渉縞も見えにくく、
さらに、積層フィルムは、
樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層を交互に積層し、奇数の層番号の層が樹脂Aからなる層であり、偶数の層番号の層が樹脂Bからなる層となっており、層厚みが徐々に変化した構造であって、一方の表面から反対の表面に向かうにつれ、増加したのち、減少するような層構成、すなわち、2段の傾斜構造を有し、
ごく一部に積層不良が生じ、設計値からはずれたとしても、他の部位に同程度の層厚みが存在しているため、全体として層厚み分布を補完することが可能であり、特定波長の光の反射率の低下が少なく、色づきが発生しにくくなり、
ハーフミラーとして用いられ、積層フィルムの波長帯域400nm?1000nmの平均の相対反射率が30%以上70%以下である、
積層フィルム。」(以下、「引用発明2」という。)

5 対比・判断
(1)引用発明1
ア 対比
本件発明と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「408層フィルム積層体」は、2つの「204層偏光子」をラミネートしたものであって、図8に示されるように配向方向64では約450?650nmの範囲の波長において光の80%以上を反射し、横断方向62では、400?700nmの範囲の波長において光の80%以上を透過するものである。そうすると、引用発明1の「408層フィルム積層体」は、配向方向64に反射する偏光フィルム体であるといえる。したがって、引用発明1の「408層フィルム積層体」は、本件発明の「第1の面内主軸を有する部分的に反射する多層反射偏光フィルム体」に相当する。

(イ)引用発明1の2つの「204層偏光子」は、51スロット供給ブロック内でPENと^(co)PENを押出した後、押出において連続して2層ダブリングマルチプライヤー(multiplier)を用いることにより作成されるものであるから、PENと^(co)PENからなる204層の層構造を有しているといえる。そして、引用発明1と同様にして作成されたとされる実施例1の多層偏光子の中間層が、「中間層はいずれも、約1300nmの光に対して、光学的4分の1波長厚さを有するように設計された。」とする記載事項(エ)に基づけば、引用発明1の204層の層構造はミクロ層であるといえる。したがって、引用発明1の2つの「204層偏光子」は、本件発明の「第1のミクロ層のパケット」及び「第2のミクロ層のパケット」に相当する。
また、引用発明1の2つの「204層偏光子」は、ラミネートされて「408層フィルム積層体」をされるものであり、引用発明1の2つの「204層偏光子」をラミネートした「408層フィルム積層体」は、偏光子として機能するものである。したがって、引用発明1の2つの「204層偏光子」は、本件発明の「少なくともいくらかの光線が、前記第1及び第2のミクロ層のパケットを連続的に通過することができるように、前記第1のパケットと第2のミクロ層のパケットとが接続されており」とする要件を満たしている。

(ウ)引用発明1の「408層フィルム積層体」は、偏光子として機能するものであって、「偏光子の一方の面では、約450?650nmの範囲の波長において、光の80%以上を反射する」ものである。そうすると、引用発明1の「408層フィルム積層体」は、本件発明の「前記第1及び第2のパケットが、400?700nmの拡張された波長範囲にわたって、前記第1の面内主軸に沿って直線偏光された垂直入射光線を部分的に透過し部分的に反射するように、それぞれ構成され」るとする要件を満たしている。

(エ)引用発明1の「408層フィルム積層体」は、図8に示される透過率特性を具備するものであり、400?700nmの拡張された波長範囲にわたって、横断方向62で80?90%の透過率を示し、配向方向64で10?50%の透過率を示している。そうすると、引用発明1の「408層フィルム積層体」は、本件発明の「前記第1及び第2のパケットが、組み合わされると、前記拡張された波長範囲にわたって平均して、0.05(5%)?0.95(95%)の範囲の垂直入射光線に対する第1の複合内部透過率を有」するという要件を満たしている。

(オ)引用発明1の「408層フィルム積層体」は、2つの204層偏光子を、光学接着剤を用いて手でラミネートして製造されている。そして、それぞれの「204層偏光子」は、前記(イ)に記載したとおり、本件発明の「第1のミクロ層のパケット」及び「第2のミクロ層のパケット」に相当するものである。そうすると、引用発明1の「408層フィルム積層体」は、本件発明の「前記多層反射偏光フィルム体に含まれるパケットの数が2である」とする要件を満たしている。

(カ)以上より、本件発明と引用発明1とは、
「第1の面内主軸を有する部分的に反射する多層反射偏光フィルム体であって、
第1のミクロ層のパケットと、
第2のミクロ層のパケットとを備え、少なくともいくらかの光線が、前記第1及び第2のミクロ層のパケットを連続的に通過することができるように、前記第1のパケットと第2のミクロ層のパケットとが接続されており、
前記第1及び第2のパケットが、400?700nmの拡張された波長範囲にわたって、前記第1の面内主軸に沿って直線偏光された垂直入射光線を部分的に透過し部分的に反射するように、それぞれ構成され、
前記第1及び第2のパケットが、組み合わされると、前記拡張された波長範囲にわたって平均して、0.05(5%)?0.95(95%)の範囲の垂直入射光線に対する第1の複合内部透過率を有し、
前記多層反射偏光フィルム体に含まれるパケットの数が2である、多層反射偏光フィルム体。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本件発明は、前記第1及び第2のパケットが、組み合わされると、(a)前記第1の面内主軸を含む第1の主平面において60度で入射し、(b)前記第1の主平面において直線偏光される斜光線に対する第2の複合内部透過率を有し、前記第2の複合内部透過率が、前記拡張された波長範囲にわたって平均して0.1(10%)?0.9(90%)の範囲にあり、前記第1及び第2のパケットの複合の高周波スペクトル変動(Δcomb)が、前記第1のパケット自体の高周波スペクトル変動(Δ1)未満であり、第1のパケットの反射又は透過スペクトルの高周波スペクトル変動からのピーク及び谷部分は、第2のパケットの反射又は透過スペクトルの高周波スペクトル変動からのピーク及び谷部分とそれぞれ波長が一致せず、高周波スペクトル変動とは、a_(0)+a_(1)λ+a_(2)λ^(2)+a_(3)λ^(3)の形状の最良適合曲線との差の標準偏差であるとする光学特性を有するのに対し、引用発明1は、そのような光学特性を有するとされていない点。

イ 判断
上記[相違点1]について検討する。
フィルム積層体における様々な入射光に対する透過率や透過スペクトル及び反射スペクトルの形状をどのように設定するかは、フィルム積層体の使用用途に応じて当業者が適宜調整し得る設計事項であるといえる。引用例1の記載事項(ウ)に示されているように赤外線シート偏光子として用いるにあたり、可視光領域である400?700nmの波長範囲にわたって、直線偏光の垂直入射光線及び60度入射光線に対して十分な透過率を有するように設計することは、当業者であれば当然考慮することである。
そして、引用例1の記載事項(キ)及び図29には、60°入射におけるp偏光した光の透過率が400?700nmの波長範囲にわたって0.1(10%)?0.9(90%)の範囲とした事例も示されている。したがって、引用発明1の408層フィルム積層体について、(a)前記第1の面内主軸を含む第1の主平面において60度で入射し、(b)前記第1の主平面において直線偏光される斜光線に対する第2の複合内部透過率を有し、前記第2の複合内部透過率が、拡張された波長範囲である400?700nmにわたって平均して0.1(10%)?0.9(90%)の範囲にあるとすることは、当業者が適宜設計し得ることである。
また、引用例1の記載事項(ク)には、「非対称なマルチプライヤーを用いて、層厚さの分布を広くして、ほとんどの可視スペクトルを覆うようにした。」ことも記載されている。層厚さの分布をどのように設定するかは当業者が所望の反射スペクトルが得られるよう適宜設定し得ることであるから、a_(0)+a_(1)λ+a_(2)λ^(2)+a_(3)λ^(3)のような3次曲線に従うよう設定することは、当業者が適宜なし得ることである。そして、引用発明1は、「2つのフィルムのラミネートは、色のランダムな変化が一方のフィルムと別のフィルムとで一致しないために真珠光沢を低減」するものであるから、設定された層厚さに基づく反射又は透過スペクトルの分布と実際の反射又は透過スペクトルの分布の差の標準偏差が、本件発明の「前記第1及び第2のパケットの複合の高周波スペクトル変動(Δcomb)が、前記第1のパケット自体の高周波スペクトル変動(Δ1)未満」であって「第1のパケットの反射又は透過スペクトルの高周波スペクトル変動からのピーク及び谷部分は、第2のパケットの反射又は透過スペクトルの高周波スペクトル変動からのピーク及び谷部分とそれぞれ波長が一致せず」とする要件を満たしているといえる。
したがって、引用発明1について、その光学特性を、本件発明の上記[相違点1]に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

ウ むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明1及び引用例1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)引用発明2
ア 対比
本件発明と引用発明2とを対比する。

(ア)引用発明2の「積層フィルム」は、「すくなくとも樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層を含んでなる積層数が200以上」の積層を有するものであるから、多層フィルム体であり、また、「ハーフミラー」として用いられるものであるから、反射フィルム体として機能するものである。したがって、引用発明2の「積層フィルム」と本件発明の「第1の面内主軸を有する部分的に反射する多層反射偏光フィルム体」とは、「多層反射」「フィルム体」である点で共通する。

(イ)引用発明2の「樹脂Aからなる層」は、「層厚みが10nm以上1000nm以下の」層であるから、「ミクロ層」ということができる。また、引用発明2の「積層フィルム」は、「樹脂Aからなる層」に加えて「樹脂Bからなる層」もまた、「ミクロ層」ということができることは、技術的にみて明らかである(引用例2の図3からも確認できる事項である。)。さらに、引用発明2の「積層フィルム」は、「一方の表面から反対の表面に向かうにつれ、増加したのち、減少するような層構成、すなわち、2段の傾斜構造」を有する。そうしてみると、引用発明2の「積層フィルム」は、「第1のミクロ層のパケット」及び「第2のミクロ層のパケット」を具備するということができるとともに、本件発明の「少なくともいくらかの光線が、前記第1及び第2のミクロ層のパケットを連続的に通過することができるように、前記第1のパケットと第2のミクロ層のパケットとが接続されており」という要件を満たすものといえる。

(ウ)引用発明2の「積層フィルム」は、「ハーフミラーとして用いられ、積層フィルムの波長帯域400nm?1000nmの平均の相対反射率が30%以上70%以下」である。そして、このような光学特性が、引用発明2の「2段の傾斜構造」の各々の寄与によってもたらされるものであることは、その「一方の表面から反対の表面に向かうにつれ、増加したのち、減少するような層構成」からみて明らかといえる。そうしてみると、引用発明2の「2段の傾斜構造」は、いずれも、400?700nmの波長範囲にわたって、垂直に入射された光線を部分的に透過し部分的に反射するといえる。したがって、引用発明2は、本件発明の「前記第1及び第2のパケットが、400?700nmの拡張された波長範囲にわたって、前記第1の面内主軸に沿って直線偏光された垂直入射光線を部分的に透過し部分的に反射するように」という構成のうち、「前記第1及び第2のパケットが、400?700nmの拡張された波長範囲にわたって」、「垂直入射光線を部分的に透過し部分的に反射するように」という構成を具備するといえる。

(エ)引用発明2の「積層フィルム」は、「2段の傾斜構造」を有している。したがって、引用発明2の「積層フィルム」は、本件発明の「パケットの数が2である」とする要件を満たしている。

(オ)以上より、本件発明と引用発明2とは、
「多層反射フィルム体であって、
第1のミクロ層のパケットと、
第2のミクロ層のパケットとを備え、少なくともいくらかの光線が、前記第1及び第2のミクロ層のパケットを連続的に通過することができるように、前記第1のパケットと第2のミクロ層のパケットとが接続されており、
前記第1及び第2のパケットが、400?700nmの拡張された波長範囲にわたって、垂直入射光線を部分的に透過し部分的に反射するように、それぞれ構成され、
前記多層反射フィルム体に含まれるパケットの数が2である、多層反射フィルム体。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点2]本件発明は、第1の面内主軸を有する部分的に反射する偏光フィルム体であって、第1の面内主軸に沿って直線偏光された垂直入射光線を部分的に透過し部分的に反射し、前記第1及び第2のパケットが、組み合わされると、前記拡張された波長範囲にわたって平均して、0.05(5%)?0.95(95%)の範囲の垂直入射光線に対する第1の複合内部透過率を有し、前記第1及び第2のパケットが、組み合わされると、(a)前記第1の面内主軸を含む第1の主平面において60度で入射し、(b)前記第1の主平面において直線偏光される斜光線に対する第2の複合内部透過率を有し、前記第2の複合内部透過率が、前記拡張された波長範囲にわたって平均して0.1(10%)?0.9(90%)の範囲にあり、前記第1及び第2のパケットの複合の高周波スペクトル変動(Δcomb)が、前記第1のパケット自体の高周波スペクトル変動(Δ1)未満であり、第1のパケットの反射又は透過スペクトルの高周波スペクトル変動からのピーク及び谷部分は、第2のパケットの反射又は透過スペクトルの高周波スペクトル変動からのピーク及び谷部分とそれぞれ波長が一致せず、高周波スペクトル変動とは、a_(0)+a_(1)λ+a_(2)λ^(2)+a_(3)λ^(3)の形状の最良適合曲線との差の標準偏差であるとする光学特性を有するのに対し、引用発明2は、偏光フィルム体ではなく、どのような光学特性を有するように設計されたものであるかが明らかではない点。

イ 判断
上記[相違点2]について検討する。
引用例2の記載事項(オ)における「このようなハーフミラーは、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、建築材料、ゲーム機、アミューズメント機器、包装容器などに好ましく用いることができる。」との記載や、記載事項(ケ)における「本発明の用途は特に限定されないが、ミラー、金属調加飾材料、ディスプレイ用光学部材などに特に好適に用いることができるものである。」との記載に基づけば、引用発明2の積層フィルムは、携帯電話やパソコン等のハーフミラーとして用いられるものである。また、記載事項(ア)において背景技術として挙げられた特許文献1及び特許文献2も、偏光子を反射ポリマー体の用途の一つとしている。そして、例えば、特開2009-200552号公報の段落【0068】及び【0069】や特開2009-251379号公報の段落【0106】等に記載されているように、携帯電話等の電子機器に用いられるハーフミラーとして、偏光ハーフミラーを用いることは周知技術である。そうしてみると、引用発明2の「積層フィルム」を「偏光ハーフミラー」として設計することは、当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項である。そして、偏光ハーフミラーとして設計した場合においても、引用発明2の「積層フィルム」は、本願発明の「前記第1及び第2のパケットが、400?700nmの拡張された波長範囲にわたって、前記第1の面内主軸に沿って直線偏光された垂直入射光線を部分的に透過し部分的に反射するように、それぞれ構成され」ると考えられるし、また、本件発明の「前記拡張された波長範囲にわたって平均して、0.05(5%)?0.95(95%)の範囲の垂直入射光線に対する第1の複合内部透過率を有し、」という構成を具備するように設計されることは、偏光ハーフミラーとして当然のことであり、加えて、「前記第1及び第2のパケットが、組み合わされると、(a)前記第1の面内主軸を含む第1の主平面において60度で入射し、(b)前記第1の主平面において直線偏光される斜光線に対する第2の複合内部透過率を有し、前記第2の複合内部透過率が、前記拡張された波長範囲にわたって平均して0.1(10%)?0.9(90%)の範囲にあり、」という要件を満たす性能となることは、積層フィルムによる反射型偏光子の特性からみて、現実的なものと考えられる。
また、引用発明2は、「自然なハーフミラー調となりながら、色づきや層間剥離がなく、干渉縞も見えにく」いというものであるとともに、「ごく一部に積層不良が生じ、設計値からはずれたとしても、他の部位に同程度の層厚みが存在しているため、全体として層厚み分布を補完することが可能であり、特定波長の光の反射率の低下が少なく、色づきが発生しにくくなり」という光学特性を備えるものである。そうしてみると、引用発明2の「積層フィルム」は、本件発明の「前記第1及び第2のパケットの複合の高周波スペクトル変動(Δcomb)が、前記第1のパケット自体の高周波スペクトル変動(Δ1)未満であり」、「第1のパケットの反射又は透過スペクトルの高周波スペクトル変動からのピーク及び谷部分は、第2のパケットの反射又は透過スペクトルの高周波スペクトル変動からのピーク及び谷部分とそれぞれ波長が一致せず」及び「高周波スペクトル変動とは、a_(0)+a_(1)λ+a_(2)λ^(2)+a_(3)λ^(3)の形状の最良適合曲線との差の標準偏差」とする要件を満たすものであり、偏光ハーフミラーとして設計するに際して当然維持されるべきものである。
したがって、引用発明2について、その光学特性を、本件発明の上記[相違点2]に係る構成とすることは、引用発明2の課題解決手段の技術的意義を踏まえた当業者が当然行うべき事項に過ぎない。

ウ むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明2、引用例2の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-08-30 
結審通知日 2018-09-04 
審決日 2018-09-18 
出願番号 特願2013-512641(P2013-512641)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 裕勝井上 徹薄井 義明  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
宮澤 浩
発明の名称 減色の部分的に反射する多層光学フィルム  
代理人 佃 誠玄  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 吉野 亮平  
代理人 野村 和歌子  
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