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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1348625 |
審判番号 | 不服2017-11607 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-03 |
確定日 | 2019-02-04 |
事件の表示 | 特願2016- 48709「不連続受信時の適応的隣接セルサーチ持続時間における省電力の方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月25日出願公開、特開2016-154343〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)1月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年1月31日 米国、 2013年1月31日 米国)を国際出願日とする特願2014-555704号の一部を平成28年3月11日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成28年12月15日付け:拒絶理由通知書 平成29年3月3日 :意見書、手続補正書の提出 平成29年3月29日付け :拒絶査定 平成29年8月3日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出 (以下、この手続補正書による手続き補正を 「本件補正」という。) 第2 本件補正について 平成29年8月3日に審判請求と同時に提出された手続補正書により請求項1、2、6、7、10、11、15、16、19、20の「メトリックを判定」との記載を「メトリックを取得」とする補正は、拒絶査定において付記された、 「●理由2(特許法第36条第6項第2号)について 1.請求項1-20に係る発明は、明確ではない。 請求項に係る「サービス中の基地局及び複数の隣接セルの複数のメトリックを判定する」ことが、明確ではない。 「サービス中の基地局及び複数の隣接セルの複数のメトリックを判定する」が、どのような判定か不明である。また、「取得する」こととの関係(違うか同じか、どちらかが他方を包含するか)が不明である。 ●その他(補正により生じた拒絶理由) 次の記載が、発明の詳細な説明に記載したものではない。 「前記論理は、 サービス中の基地局及び複数の隣接セルの複数のメトリックを判定し、 前記複数のメトリックを複数の閾値と比較し、 前記比較に基づいて、隣接セルサーチウィンドウの持続時間を調整し、 前記隣接セルサーチウィンドウの間に複数の隣接セル測定を実行するように構成されている」 メトリックの判定処理、メトリックの比較処理、比較に基づく調整処理、隣接セル測定の実行処理をすることが、発明の詳細な説明に記載されていない。最初の「メトリックの判定処理」が、記載されていない。」 との理由を解消するためのもの、すなわち、明りょうでない記載の釈明を目的としたものに相当するものと認める。 第3 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成29年8月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。 「モバイル装置を不連続受信モードで動作させる方法であって、 前記モバイル装置において、 サービス中の基地局及び複数の隣接セルの複数のメトリックを取得することと、 前記複数のメトリックを複数の閾値と比較することと、 前記比較に基づいて、隣接セルサーチウィンドウの持続時間を調整することと、 前記隣接セルサーチウィンドウの間に複数の隣接セル測定を実行することと、 を含む、方法。」 第4 拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」であり、請求項10に対して特開2004-242017号公報が引用されている。 第5 引用例の記載及び引用発明 1 引用例の記載 原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-242017号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。) (1) 「【0006】 ところで、最近移動通信端末装置では連続待ち受け時間のさらなる延長が要求されている。そして、そのために間欠受信動作における消費電力をさらに低減する種々の方式が提案されている。 【0007】 例えば第1の方式は、アクティブ基地局からの無線信号の受信レベルがしきい値未満の場合にのみ、同期確立先の基地局をアクティブ基地局から周辺基地局に切り替えるいわゆるリセレクションのための処理を実行するものである。すなわち、移動通信端末装置は、上記PICHの受信終了後に、アクティブ基地局からの無線信号の受信レベル検出値をしきい値と比較し、検出値がしきい値以上であればそのまま受信休止期間に移行する。これに対し検出値がしきい値未満の場合には受信休止期間に移行せずに周辺基地局のサーチを行う。そして、このサーチにより検出された周辺基地局からの無線信号の受信レベル検出値を、上記アクティブ基地局からの無線信号の受信レベル検出値と比較し、アクティブ基地局よりも受信レベル検出値が所定レベル以上高い周辺基地局が見つかった場合に、リセレクションを実行する。なお、上記条件を満足する周辺基地局が見つからなかった場合には、受信休止期間に移行する。」 (2) 「【0027】 【発明の実施の形態】 図1は、この発明に係わる移動通信システムの概略構成図である。 サービスエリアには複数の基地局BS1?BS7が分散配置されており、これらの基地局BS1?BS7はそれぞれセルと呼ばれる無線ゾーンE1?E7を形成している。移動通信端末装置MSは、上記無線ゾーンE1?E7内において基地局BS1?BS7のいずれかとの間で同期が確立され、待ち受け状態になる。なお、上記基地局BS1?BS7と移動通信端末MSとの間の無線アクセス方式には、例えばW-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式が使用される。 【0028】 図2は、上記移動通信端末装置MSのこの発明に係わる部分の構成を示すブロック図である。 (省略) 【0029】?【0030】 (省略) 【0031】 DSP5は、アクティブ基地局品質検出機能51と、周辺基地局品質検出機能52と、品質判定機能53とを備える。アクティブ基地局品質検出機能51は、上記入力されたディジタル復調信号をもとに、アクティブ基地局から到来する無線信号の受信品質を検出する。周辺基地局品質検出機能52は、上記入力されたディジタル復調信号をもとに、周辺の各基地局から到来する無線信号の受信品質をそれぞれ検出する。なお、受信品質は信号と雑音との比(Ec/No)として検出することができる。 【0032】 品質判定機能53は、上記アクティブ基地局品質検出機能51により検出された受信品質Ec/No(Act) を予め設定した第1及び第2のしきい値Q1,Q2(Q1>Q2)と比較してその大小関係を判定する。また、上記Ec/No(Act) <Q2の場合に、上記アクティブ基地局品質検出機能51により検出された受信品質Ec/No(Act) と上記周辺基地局品質検出機能52により検出された受信品質Ec/No(Mon) との差を算出し、この算出された受信品質の差(Ec/No(Act) -Ec/No(Mon) )をしきい値Q3と比較してその大小関係を判定する。 【0033】 中央制御ユニット(CPU)6は、セル選択機能61と、平均化シンボル数決定機能62と、待ち受け間欠起床制御機能63と、クロック制御機能64と、電源制御機能65とを備える。セル選択機能61は、上記DSP6から品質判定機能53により得られた品質判定結果を取り込む。そして、この取り込まれた品質判定結果をもとにリセレクションのためのセルを選択する。 【0034】 平均化シンボル数決定機能62は、上記DSP6の品質判定機能53により得られた品質判定結果をもとに、次回の受信起床期間の受信品質測定動作において受信すべきシンボル数を決定する。 【0035】 待ち受け間欠起床制御機能63は、受信起床期間ごとにその開始タイミングを決定すると共に、上記平均化シンボル数決定機能62において設定された受信対象シンボル数を考慮して、次回の受信起床期間における受信品質測定期間の時間長を決定する。 【0036】 クロック制御機能64は、上記待ち受け間欠起床制御機能63において決定されたタイミング情報に従い、上記復調回路4及びDSP5を上記決定された受信品質測定期間及びPICHの受信期間のみ動作させるべく、上記復調回路4及びDSP5に対するクロックの供給タイミングを制御する。 【0037】 電源制御機能65は、上記待ち受け間欠起床制御機能63において決定されたタイミング情報に従い、上記無線回路2及びA/D変換器3を上記決定された受信起床期間のみ動作させるべく、上記無線回路2及びA/D変換器3に対する電源供給タイミングを制御する。」 (3) 「【0038】 次に、以上のように構成された移動通信端末装置MSの動作を説明する。 先ず間欠受信動作の概要を説明する。図3はこの間欠受信動作を説明するためのタイミング図である。 【0039】 移動通信端末装置MSは、待ち受け間欠起床制御機能63により、システムで規定されたDRX_Cycleと呼ばれる待ち受け周期(例えば1?3秒)に従い、図3(a)に示すように受信起床期間と受信休止期間とを交互に繰り返す。 【0040】 受信起床期間において移動通信端末装置MSは、図3(b)に示すように先ずウエークアップ動作(1) を行う。このウエークアップ動作(1) は、装置内の受信動作を行うために必要な回路部を動作可能な状態に立ち上げるもので、CPU6及びDSP5の起床、クロック制御機能64による各種クロック発生回路の起動、電源制御機能65による無線回路2及びA/D変換器3への給電開始、復調回路4の初期設定の順に行われる。 【0041】 このウエークアップ動作が終了すると移動通信端末装置MSは、続いて受信タイミングの同定動作(2) を行う。この受信タイミング同定動作(2) では、先ずアクティブ基地局品質検出機能51によりアクティブ基地局から到来する無線信号の受信品質の測定が行われる。この受信品質の測定は、RAKE合成部42から出力される復調信号の複数の シンボルの受信レベルをそれぞれ検出し、この検出された受信レベルの平均値を求めることにより行われる。この受信レベルの平均値がアクティブ基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Act) となる。そして、この受信品質Ec/No(Act) が検出されると、この検出された受信品質Ec/No(Act) をもとに受信対象パスを選択し、この選択されたパスに対し受信タイミングの同定を行う。 【0042】 次に移動通信端末装置MSは、PICHの受信動作(3) を行う。このPICHの受信動作(3) は、上記受信タイミングの同定動作(2) により同定された受信タイミングにより復調回路4を動作させ、この復調回路4によりPICHの信号を復調することにより行われる。そして、この復調されたPICHの信号に自端末宛ての着信メッセージが挿入されているか否かをCPU6において判定する。 【0043】 この判定の結果、自端末宛ての着信メッセージを検出した場合には引き続き着信制御のための受信動作を行う。これに対し、自端末宛ての着信メッセージが含まれていなかった場合には、受信休止期間に移行するための動作(9) を行う。この受信休止期間への移行動作(9) では、電源制御機能65による無線回路2及びA/D変換器3への給電停止、次回の間欠起床タイミング等の設定と記憶、クロック制御機能64による各種クロックの発生停止、CPU6及びDSP5の停止の順に行われる。以後移動通信端末装置MSは、低消費電力による受信休止動作に移行する。 【0044】 また移動通信端末装置MSは、上記受信休止期間への移行動作(9) に先立ち、上記検出されたアクティブ基地局の受信品質Ec/No(Act) をしきい値と比較する。そして、受信品質Ec/No(Act) がしきい値に満たない場合には、図3(c)に示すように周辺基地局から送信される無線信号の受信品質を測定するための動作を行う。図3(c)の例では、異なる3つの周辺基地局からの無線信号の受信品質を期間(4) 、(5) 及び(6) でそれぞれ測定する場合を示している。これらの測定期間(4) 、(5) 及び(6) においてそれぞれ行われる周辺基地局からの無線信号の受信品質測定動作も、先に述べたアクティブ基地局からの無線信号の受信品質測定動作(2) と同様に、先ず複数のシンボルの受信レベルをそれぞれ検出し、この検出された各受信レベルの平均値を求めることにより行われる。この受信レベルの平均値が周辺基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Mon) となる。」 (4) 「【0047】 ところで、上記間欠受信動作において移動通信端末装置MSは、受信起床期間の可変設定制御を以下のように実行する。図4はその制御手順と制御内容を示すフローチャートである。 【0048】 すなわち、移動通信端末装置MSは、ステップ4aによりアクティブ基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Act) を検出すると、ステップ4bに移行し、品質判定機能53により上記検出されたEc/No(Act) を予め設定されたしきい値Q1,Q2(Q1>Q2)とそれぞれ比較する。なお、上記Ec/No(Act) の測定は、先に図3(b)に示した動作期間(2) において、DSP5のアクティブ基地局品質検出機能51により行われる。 【0049】 上記品質判定機能53の比較結果が得られると移動通信端末装置MSは、次に平均化シンボル数決定機能62により、次回の受信起床期間の受信品質測定動作において受信すべきシンボル数を決定する処理を行う。 【0050】?【0053】 (省略) 【0054】 一方、上記品質判定機能53による比較判定結果が、Ec/No(Act) <Q2だったとする。この場合移動通信端末装置MCはステップ4eに移行し、図3(c)の期間(4)、(5)及び(6)において、周辺基地局品質検出機能52により、周辺の基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Mon) を検出する。続いて移動通信端末装置MCはステップ4fに移行し、品質判定機能53により、先にアクティブ基地局品質検出機能51により検出された受信品質Ec/No(Act) と、上記周辺基地局品質検出機能52により検出された受信品質Ec/No(Mon) との差を算出する。そして、ステップ4gにより、上記算出された受信品質の差(Ec/No(Act) -Ec/No(Mon) )をしきい値Q3と比較し、その大小関係を判定する。 【0055】 次に移動通信端末装置MSは、上記受信品質の差(Ec/No(Act) -Ec/No(Mon) )としきい値Q3との比較判定結果をもとに、平均化シンボル数決定機能62により、次回の受信起床期間における受信品質測定動作において受信すべきシンボル数を決定する。この受信対象シンボル数の決定は、アクティブ基地局ついての受信品質測定動作(2) と、周辺基地局についての受信品質測定動作(4) 、(5) 及び(6) の各々に対し行う。 【0056】 例えば、(Ec/No(Act) -Ec/No(Mon) )≧Q3だった場合には、アクティブ基地局からの無線信号の受信品質は劣化しているものの、周辺にリセレクション対象として適当な基地局が存在しないと判断する。そして、ステップ4hに移行し、ここで次回の受信起床期間におけるアクティブ基地局についての受信品質測定動作(2) の受信対象シンボル数N(Act) 、及び周辺基地局についての受信品質測定動作(4) 、(5) 及び(6) の受信対象シンボル数N(Mon) をそれぞれN2(=4シンボル)に設定する。 【0057】 したがって、次回の受信起床期間においてアクティブ基地局からの無線信号の受信品質を測定する動作(2) では、アクティブ基地局から到来する無線信号の4シンボルが受信されることになる。そして、この受信された4シンボルの受信レベルを平均化することにより、受信品質Ec/No(Act) が求められる。また同様に、周辺基地局からの無線信号の受信品質を測定する動作(4) 、(5) 及び(6) においても、周辺基地局から到来する無線信号の4シンボルが受信されることになり、この受信された4シンボルの受信レベルを平均化することにより受信品質Ec/No(Mon) が求められる。 【0058】 すなわち、アクティブ基地局からの無線信号の受信品質は劣化しているものの、周辺にリセレクション対象として適当な基地局が存在しない状態では、アクティブ基地局についての受信品質測定動作(2) も、また周辺基地局についての受信品質測定動作(4) 、(5) 及び(6) も、4シンボル相当の時間により行われることになる。このため、受信起床期間は短い長さに抑えられ、これにより装置の消費電力を低く抑えることができる。 【0059】 これに対し、(Ec/No(Act) -Ec/No(Mon) )<Q3の場合には、リセレクションが必要でかつ周辺にリセレクション対象として適当な基地局が存在すると判断する。そして、ステップ4iに移行し、ここで次回の受信起床期間におけるアクティブ基地局についての受信品質測定動作(2) の受信対象シンボル数N(Act) 、及び周辺基地局についての受信品質測定動作(4) 、(5) 及び(6) の受信対象シンボル数N(Mon) をそれぞれN3(=8シンボル)に設定する。 【0060】 したがって、次回の受信起床期間においてアクティブ基地局からの無線信号の受信品質を測定する動作(2) では、アクティブ基地局から到来する無線信号の8シンボルが受信されることになる。そして、この受信された8シンボルの受信レベルを平均化することにより、受信品質Ec/No(Act) が求められる。また同様に、周辺基地局からの無線信号の受信品質を測定する動作(4) 、(5) 及び(6) においても、周辺基地局から到来する無線信号の8シンボルが受信されることになり、この受信された8シンボルの受信レベルを平均化することにより受信品質Ec/No(Mon) が求められる。 【0061】 すなわち、リセレクションが必要でかつ周辺にリセレクション対象として適当な基地局が存在する状況下にあっては、アクティブ基地局についての受信品質測定動作(2) においても、また周辺基地局についての受信品質測定動作(4) 、(5) 及び(6) においても、8シンボルの受信レベルの平均値を求めることにより、干渉や雑音の影響が十分に抑圧されて精度の高い受信品質測定値を得ることができる。したがって、アクティブ基地局と周辺基地局との間の受信品質測定値のばらつきを減らすことができ、これにより リセレクション処理を的確に行うことが可能となる。 【0062】 以上述べたようにこの実施形態では、受信起床期間ごとに、アクティブ基地局から到来する無線信号の受信品質をしきい値Q1,Q2をもとにDSP5により判定して、その判定結果に応じて次回の受信起床期間におけるアクティブ基地局の受信品質測定期間長をCPU6により可変設定するようにしている。また、アクティブ基地局から到来した無線信号の受信品質と周辺基地局から到来した無線信号の受信品質との差をしきい値Q3をもとにDSP5で判定し、この判定結果に応じて次回の受信起床期間におけるアクティブ基地局及び周辺基地局についての受信品質測定期間長をCPU6により可変設定するようにしている。 【0063】?【0066】 (省略) 【0067】 なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、Ec/No(Act) 、及びこのEc/No(Act) とEc/No(Mon) との差に応じて、受信起床期間長を合計3段階に可変設定する場合を例示した。しかし、受信起床期間長を4段階以上に可変設定するようにしてもよく、さらには予め設定した可変特性に応じてリニアに可変するようにしてもよい。 【0068】 また、前記実施形態ではステップ4h及びステップ4iにおいて、N(Act) 及びN(Mon) を同一値(=N3)に設定した場合を例示したが、N(Act) 及びN(Mon) を異なる値に設定するようにしてもよい。」 (5) 図3 (6) 図4 2 引用発明 (1) 上記1(3)段落0038?0039の記載によると引用例に記載された「間欠受信動作」は不連続受信モードにおいて行われる動作であることは明らかであるから、引用例の上記1(4)、上記1(6)に記載された移動通信端末装置の間欠受信動作は、移動通信端末装置において行われる「移動通信端末装置を不連続受信モードで動作させる方法」といえる。 (2) 上記1(4)段落0048の記載によると、引用例記載の方法は、アクティブ基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Act) を検出する(ステップ4a)ことと、 Ec/No(Act) を予め設定されたしきい値Q1,Q2(Q1>Q2)とそれぞれ比較する(ステップ4b)ことを含むといえる。 (3) 上記1(3)段落0044の記載によると、図3(c)の期間(4)、(5)及び(6)は、異なる3つの周辺基地局からの無線信号の受信品質をそれぞれ測定する期間を示しているから、上記1(4)段落0054の「上記品質判定機能53による比較判定結果が、Ec/No(Act) <Q2だったとする。この場合移動通信端末装置MCはステップ4eに移行し、図3(c)の期間(4)、(5)及び(6)において、周辺基地局品質検出機能52により、周辺の基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Mon) を検出する。」との記載によると、引用例記載の方法は、Ec/No(Act)<Q2の場合、複数の周辺の基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Mon)をそれぞれ検出する(ステップ4e)ことを含むといえる。 また、上記1(4)段落0054の「そして、ステップ4gにより、上記算出された受信品質の差(Ec/No(Act) -Ec/No(Mon) )をしきい値Q3と比較し、その大小関係を判定する。」との記載によると、引用例記載の方法は、受信品質の差(Ec/No(Act)-Ec/No(Mon))をしきい値Q3と比較する(ステップ4g)ことを含むといえる。 (4) 上記1(4)段落0055?0056、0059の記載によると、引用例記載の方法は、(Ec/No(Act)-Ec/No(Mon))としきい値Q3との比較判定結果結果をもとに、次回の受信起床期間における周辺基地局についての受信品質測定動作(4)、(5)及び(6)の受信対象シンボル数N(Mon)をそれぞれN2(=4シンボル)又は、それぞれN3(=8シンボル)に設定する(ステップ4h、4i)ことを含むといえる。 (5) 上記1(4)段落0057、0060の記載によると、引用例記載の方法は、次回の受信起床期間において、周辺基地局からの無線信号の受信品質を測定する動作(4)、(5)及び(6)において、周辺基地局から到来する無線信号の設定されたシンボル数N(Mon)のシンボルが受信されることになり、この受信された設定されたシンボル数のシンボルの受信レベルを平均化することにより受信品質Ec/No(Mon) が求められることを含むといえる。 以上を踏まえると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「移動通信端末装置を不連続受信モードで動作させる方法であって、 移動通信端末装置において、 アクティブ基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Act)を検出することと、 Ec/No(Act)を予め設定されたしきい値Q1,Q2(Q1>Q2)とそれぞれ比較することと、 Ec/No(Act)<Q2の場合、複数の周辺の基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Mon)をそれぞれ検出することと、 受信品質の差(Ec/No(Act)-Ec/No(Mon))をしきい値Q3と比較することと、 (Ec/No(Act)-Ec/No(Mon))としきい値Q3との比較判定結果結果をもとに、次回の受信起床期間における周辺基地局についての受信品質測定動作(4)、(5)及び(6)の受信対象シンボル数N(Mon)をそれぞれN2(=4シンボル)又は、それぞれN3(=8シンボル)に設定することと、 次回の受信起床期間において、周辺基地局からの無線信号の受信品質を測定する動作(4)、(5)及び(6)において、周辺基地局から到来する無線信号の設定された受信対象シンボル数N(Mon)のシンボルが受信されることになり、この受信された設定されたシンボル数のシンボルの受信レベルを平均化することにより受信品質Ec/No(Mon)が求められることと、 を含む方法。」 第6 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。 1 引用発明の「移動通信端末装置」は、本願発明の「モバイル装置」に相当するから、引用発明は「モバイル装置を不連続受信モードで動作させる方法」といえる点で、本願発明と共通する。 2 引用発明の「アクティブ基地局」は、本願発明の「サービス中の基地局」に相当するから、引用発明の「アクティブ基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Act)」は、本願発明の「サービス中の基地局」のメトリックに相当する。 また、上記第5 1(2)段落0027によると、それぞれの基地局はセルと呼ばれる無線ゾーンを形成し、引用発明の「周辺基地局」は周辺セル、すなわち隣接セルを形成する基地局を意味するから、引用発明の、それぞれ検出される「複数の周辺の基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Mon)」は、本願発明の「複数の隣接セルの複数のメトリック」に相当する。 してみると、「アクティブ基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Act)を検出することと、」「Ec/No(Act)<Q2の場合、複数の周辺の基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Mon) をそれぞれ検出することと、」を含む引用発明は、「サービス中の基地局及び複数の隣接セルの複数のメトリックを取得すること」を含む点で本願発明と一致する。 3 引用発明のしきい値Q1,Q2、値Q3は複数の閾値といえるから、「Ec/No(Act)を予め設定されたしきい値Q1,Q2(Q1>Q2)とそれぞれ比較することと、」「受信品質の差(Ec/No(Act)-Ec/No(Mon))をしきい値Q3と比較することと、」を含む引用発明は、「前記複数のメトリックを複数の閾値と比較すること」を含む点で本願発明と一致する。 4 引用発明の「複数の周辺の基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Mon) をそれぞれ検出すること」は、本願発明の「複数の隣接セル測定を実行すること」に相当する。 また、受信品質測定動作(4)、(5)及び(6)において、周辺基地局からの無線信号の受信品質Ec/No(Mon)を測定する際のパラメータといえる引用発明の「受信対象シンボル数N(Mon)」は、「複数の隣接セル測定を実行する際のパラメータ」といえる点で、本願発明の、持続時間によって特定される「隣接セルサーチウィンドウ」と共通する。 してみると、「(Ec/No(Act)-Ec/No(Mon))としきい値Q3との比較判定結果結果をもとに、次回の受信起床期間における周辺基地局についての受信品質測定動作(4)、(5)及び(6)の受信対象シンボル数N(Mon)をそれぞれN2(=4シンボル)又は、それぞれN3(=8シンボル)に設定することと、 次回の受信起床期間において、周辺基地局からの無線信号の受信品質を測定する動作(4)、(5)及び(6)において、周辺基地局から到来する無線信号の設定された受信対象シンボル数N(Mon)のシンボルが受信されることになり、この受信された設定されたシンボル数のシンボルの受信レベルを平均化することにより受信品質Ec/No(Mon)が求められることと、」を含む引用発明は、 「前記比較に基づいて、複数の隣接セル測定を実行する際のパラメータを調整することと、 前記隣接セル測定を実行する際のパラメータに基づいて複数の隣接セル測定を実行することと、」を含むといえる点で本願発明と共通する。 以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、相違する。 「モバイル装置を不連続受信モードで動作させる方法であって、 前記モバイル装置において、 サービス中の基地局及び複数の隣接セルの複数のメトリックを取得することと、 前記複数のメトリックを複数の閾値と比較することと、 前記比較に基づいて、複数の隣接セル測定を実行する際のパラメータを調整することと、 前記隣接セル測定を実行する際のパラメータに基づいて複数の隣接セル測定を実行することと、 を含む、方法。」 相違点 一致点とした「複数の隣接セル測定を実行する際のパラメータ」が、本願発明では持続時間により特定される「隣接セルサーチウィンドウ」であるのに対し、引用発明では「受信対象シンボル数N(Mon)」であり、また、一致点とした「複数の隣接セル測定を実行すること」が 本願発明では持続時間が調整された「前記隣接セルサーチウィンドウの間に」行われるのに対し、引用発明は、「設定された受信対象シンボル数N(Mon)のシンボルが受信されること」により行われる点。 第7 判断 引用例には、周辺基地局からの無線信号の受信レベル検出値を得ることを「サーチ」と呼称すること(上記第5 1(1)段落0007)が記載されているから、引用発明の「周辺基地局からの無線信号の受信品質を測定する動作」は「隣接セルサーチ」動作といえ、また、当該動作を行う期間は「隣接セルサーチウィンドウ」といえる。 また、引用例には「受信対象シンボル数を考慮して、次回の受信起床期間における受信品質測定期間の時間長を決定する」(上記第5 1(2)の段落0035)と記載されている。 そして、引用例に記載された上記受信品質測定期間は、アクティブ基地局、及び周辺基地局の双方を受信品質測定対象としているが、アクティブ基地局から到来する無線信号の受信品質測定結果であるEc/No(Act)としきい値Q2と比較結果に応じて行われる周辺基地局の受信品質測定動作を、アクティブ基地局の受信品質測定動作と分けて制御することは当業者が適宜なし得る事項といえるから、引用発明において、複数の周辺の基地局から到来する無線信号の受信品質Ec/No(Mon)を検出するために設定、すなわち調節される受信対象シンボル数N(Mon)に基づいて、複数の周辺の基地局が形成する隣接セルについてのみの受信品質測定期間の時間長、すなわち「隣接セルサーチウィンドウの持続時間」を調節し、前記隣接セルサーチウィンドウの間に複数の隣接セル測定を実行することは、当業者が容易に想到し得る事項といえる。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-09-05 |
結審通知日 | 2018-09-10 |
審決日 | 2018-09-21 |
出願番号 | 特願2016-48709(P2016-48709) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04W)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深津 始 |
特許庁審判長 |
中木 努 |
特許庁審判官 |
本郷 彰 松永 稔 |
発明の名称 | 不連続受信時の適応的隣接セルサーチ持続時間における省電力の方法及び装置 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 永川 行光 |
代理人 | 下山 治 |