【重要】サービス終了について

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1348626
審判番号 不服2018-1916  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-13 
確定日 2019-02-04 
事件の表示 特願2017-519718「高光電変換効率太陽電池及び高光電変換効率太陽電池の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月3日国際公開、WO2018/078669〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月25日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 5月19日 :手続補正書の提出
平成29年 7月 7日付け:拒絶理由通知書
平成29年 9月12日 :意見書の提出
平成29年11月15日付け:拒絶査定
平成30年 2月13日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年2月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年2月13日にされた手続補正についての補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「第一導電型を有する半導体基板の第一主表面に、前記第一導電型を有するベース層、及び、前記ベース層に隣接し、前記第一導電型と反対の導電型である第二導電型を有するエミッタ層を有し、
前記ベース層と電気的に接続されるベース電極と、
前記エミッタ層と電気的に接続されるエミッタ電極と
を有する太陽電池であって、
前記第一主表面上において、前記ベース層及び前記エミッタ層に接する誘電体膜を有し、
前記エミッタ電極を覆うとともに、前記誘電体膜上に位置し、少なくとも前記ベース層上において間隙を有するように配置された第一の絶縁膜を有し、
少なくとも前記第一の絶縁膜の上に位置するベース用バスバー電極を有し、
前記ベース層の前記半導体基板の第一主表面に表れる形状が細長であり、その幅が50μm以上200μm以下であり、
前記第一の絶縁膜の間隙の距離が40μm以上(W+110)μm以下(但し、40μm以上Wμm以下を除く)(但し、Wは間隙方向のベース層の幅)であり、
前記ベース電極と前記ベース用バスバー電極は電気的に接続しており、
前記ベース電極を覆う第二の絶縁膜をさらに有し、少なくとも前記第二の絶縁膜の上に位置し、前記エミッタ電極と電気的に接続するエミッタ用バスバー電極を有することを特徴とする太陽電池。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年5月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「第一導電型を有する半導体基板の第一主表面に、前記第一導電型を有するベース層、及び、前記ベース層に隣接し、前記第一導電型と反対の導電型である第二導電型を有するエミッタ層を有し、
前記ベース層と電気的に接続されるベース電極と、
前記エミッタ層と電気的に接続されるエミッタ電極と
を有する太陽電池であって、
前記第一主表面上において、前記ベース層及び前記エミッタ層に接する誘電体膜を有し、
前記エミッタ電極を覆うとともに、前記誘電体膜上に位置し、少なくとも前記ベース層上において間隙を有するように配置された第一の絶縁膜を有し、
少なくとも前記第一の絶縁膜の上に位置するベース用バスバー電極を有し、
前記ベース層の前記半導体基板の第一主表面に表れる形状が細長であり、その幅が50μm以上200μm以下であり、
前記第一の絶縁膜の間隙の距離が40μm以上(W+110)μm以下(但し、Wは間隙方向のベース層の幅)であることを特徴とする太陽電池。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第一の絶縁膜の間隙の距離」について、「40μm以上Wμm以下」(但し、Wは間隙方向のベース層の幅)という数値範囲を除くともに、「ベース電極」及び「エミッタ電極」について、「前記ベース電極と前記ベース用バスバー電極は電気的に接続しており、」と、「前記ベース電極を覆う第二の絶縁膜をさらに有し、少なくとも前記第二の絶縁膜の上に位置し、前記エミッタ電極と電気的に接続するエミッタ用バスバー電極を有する」という限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、国際公開第2015/190024号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審の付与したものである。以下同じ。)

a 「[0045] 図4、図5に示すように、本発明の太陽電池は、第1の導電型の半導体基板13の受光面とは反対の面(以下、単に、裏面とも記載する。)に第1の導電型の拡散層20と第2の導電型の拡散層21が形成されている太陽電池、いわゆる裏面電極型太陽電池である。更に、図4、図5に示すように、第1の導電型の拡散層20に接合された第1の電極部26と、第2の導電型の拡散層に接合された第2の電極部27を備える。」

b 「[0048] また、第1の導電型の半導体基板13の裏面には酸化物層(第1裏面パッシベーション膜)19を形成することができる。酸化物層19上に、第2裏面パッシベーション膜18を形成することもできる。このように受光面及び裏面のそれぞれが、保護膜(パッシベーション膜)で覆われていることが好ましい。パッシベーション膜は、酸化珪素膜、窒化珪素膜及び酸化アルミニウム膜から選択される少なくとも1つ以上からなるものであることが好ましい。
[0049] 更に、本発明の太陽電池10は、図4、図5に示すように、少なくとも第2の電極部27と第1の電極バスバー部37が交差する領域において、第1の絶縁膜24が第2の電極部27の側面部と上部を覆うように形成されている。また、少なくとも第1の電極部26と第2の電極バスバー部38が交差する領域において、第2の絶縁膜25が第1の電極部26の側面部と上部を覆うように形成されている。
[0050] また、図5に示すように、第1の電極バスバー部37は、第1の電極部26と接合することができる。また、図4に示すように、第2の電極バスバー部38は、第2の電極部27と接合することができる。」

c 「[0061][絶縁膜]
絶縁膜は、絶縁領域において、電極部の側面部と上部を覆うように形成されている。ここで、本発明における絶縁領域とは、少なくとも電極部と電極バスバー部が交差する箇所のことである。絶縁領域は、この箇所の面積よりも大きいことが好ましい。絶縁膜の形状は特に限定されないが、例えば、矩形とすることができる。第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の厚みは、1?60μmであることが好ましい。より好ましくは5?40μm程度、特に好ましくは10?30μmである。このような厚みとすることにより、絶縁性をより向上させることができる。また、過度に絶縁膜を形成することもないため、所望の太陽電池をより低コストで製造することができる。
[0062] また、第1の絶縁膜が少なくとも第1の電極バスバー部の直下に存在する第2の導電型の拡散層を覆うように形成されていることが好ましい。また、第2の絶縁膜が少なくとも第2の電極バスバー部の直下に存在する第1の導電型の拡散層を覆うように形成されていることが好ましい。裏面の基板表層に誘電体層を有する場合には、このように、拡散層幅よりも大きい絶縁層を形成することが望ましい。拡散層幅よりも絶縁膜が大きい場合、第1の電極バスバー部が第2の導電型の拡散層に接することがないので、第1の電極バスバー部と第2の導電型の拡散層が誘電体層を通じて導通してしまうこともない。」

d 「[0069] また、第2の電極部と第1の電極バスバー部が交差する領域において、第1の電極バスバー部の長さが0.3mm以上であり、第1の絶縁膜の幅が0.03mm?1.5mmであり、第2の電極部の幅が0.02?0.20mmであることが好ましい。第1の電極バスバー部の長さの上限は特に限定されないが、例えば、2mmとすることができる。」

e また、引用文献1の図4及び5において、第1の導電型の拡散層20は、第2の導電型の拡散層21と隣接して形成されており、第1及び第2裏面パッシベーション膜18及び19は、受光面とは反対の面上において第1の導電型の拡散層20及び第2の導電型の拡散層21と接するように形成されており、第1の絶縁膜24は、第1及び第2裏面パッシベーション膜18及び19上に位置し、第1の導電型の拡散層20上で間隙を有していることが示されている。また、図4及び5が、図1又は2を横から見た断面図であって、図1又は2において、受光面とは反対の面に表れる第1の電極部26が細長の形状をしていることを考えると、その下に形成されている第1の導電型の拡散層20も細長の形状をしているといえる。

(イ)引用文献1の上記記載及び図面に示された事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用文献1発明」という。)が記載されていると認められる。

「第1の導電型の半導体基板の受光面とは反対の面に第1の導電型の拡散層と第2の導電型の拡散層が隣接して形成され、
裏面パッシベーション膜が、受光面とは反対の面上において第1の導電型の拡散層及び第2の導電型の拡散層と接するように形成され、
前記第1の導電型の拡散層に接合された第1の電極部と、前記第2の導電型の拡散層に接合された第2の電極部を備え、
前記第1の電極部が接続された第1の電極バスバー部と、前記第2の電極部が接続された第2の電極バスバー部とを備え、
前記第2の電極部と前記第1の電極バスバー部が交差する領域において、第1の絶縁膜が前記第2の電極部の側面部と上部を覆うように形成されており、
前記第1の電極部と前記第2の電極バスバー部が交差する領域において、第2の絶縁膜が前記第1の電極部の側面部と上部を覆うように形成されており、
前記第1の絶縁膜は、裏面パッシベーション膜上に位置し、前記記第1の導電型の拡散層上で間隙を有し、
前記第1の導電型の拡散層は受光面とは反対の面に表れる形状が細長であり、
前記第1の絶縁膜が前記第1の電極バスバー部の直下に存在する前記第2の導電型の拡散層を覆うように形成されている、
太陽電池。」

イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、国際公開第2012/017517号(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「[0069] 図8に示すように、裏面電極型太陽電池セルの変換効率は、キャリアライフタイムτが0.5ms、1.0msおよび2.0msであって、ピッチが1mm、1.5mmおよび2mmであるそれぞれの条件において、ベース幅が減少するにつれて増加する傾向にあり、特にベース幅が400μm以下である場合に変換効率が安定して高い値を示す傾向にあることが確認された。その一方で、ベース幅が100μmよりも大きい場合、特に200μmよりも大きい場合には変換効率が上昇しない、または低下に転じる傾向にあることも確認された。
[0070] したがって、図8に示す結果から、裏面電極型太陽電池セルの変換効率を安定して高くするためには、ベース幅は400μm以下であることが好ましい。また、裏面電極型太陽電池セルの変換効率をさらに安定して高くするためには、ベース幅を100μm以上とすることが好ましい。なお、n+領域122とn型用電極126とを再現性良く形成する観点からも、ベース幅は100μm以上とすることが好ましい。」

(イ)引用文献2の上記記載から、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2技術」という。)が記載されていると認められる。

「裏面電極型太陽電池セルの変換効率を安定して高くするため、裏面電極型太陽電池セルのベース幅を100μm以上200μm以下とする技術。」

(3)対比
本件補正発明及び引用文献1発明を対比する。

ア 引用文献1発明も本件補正発明もともに太陽電池の発明であって、引用文献1発明の「第1の導電型」、「半導体基板」、「受光面とは反対の面」は、それぞれ本件補正発明の「第一導電型」、「半導体基板」、「第一主表面」に相当する。引用文献1発明の「第1の導電型の拡散層」は、本件補正発明の「第一導電型を有するベース層」に相当する。また、引用文献1発明の第1の導電型の拡散層は受光面とは反対の面に表れる形状は細長である。

イ 引用文献1発明の「裏面パッシベーション膜」は、本件補正発明の「誘電体膜」に相当する。

ウ 引用文献1発明の「第1の電極部」は、第1の導電型の拡散層に接合すなわち電気的に接続されるものであるから、本件補正発明の「ベース電極」に相当し、引用文献1発明の「第2の電極部」は、第2の導電型の拡散層に接合すなわち電気的に接続されるものであるから、本件補正発明の「エミッタ電極」に相当する。

エ 引用文献1発明の「第1の絶縁膜」は、本件補正発明の「第一の絶縁膜」に相当する。引用文献1発明において、第2の電極部と第1の電極バスバー部が交差する領域において、第1の絶縁膜が第2の電極部の側面部と上部を覆うように形成されていることから、引用文献1発明の第1の絶縁膜は第2の電極部を覆っている。また、引用文献1発明において、第1の絶縁膜は、裏面パッシベーション膜上に位置し、第2の導電型の拡散層上で間隙を有している。

オ 引用文献1発明の「第1の電極バスバー部」は、本件補正発明の「ベース用バスバー電極」に相当しており、引用文献1発明において、第1の電極バスパー部は第1の電極部と接続すなわち電気的に接続されている。引用文献1発明において、第2の電極部と第1の電極バスバー部が交差する領域において、第1の絶縁膜が第2の電極部の側面部と上部を覆うように形成されていることから、引用文献1発明の第1の電極バスパー部は、この領域において、第1の絶縁膜の上に位置する。

カ 引用文献1発明の「第2の絶縁膜」は、本件補正発明の「第二の絶縁膜」に相当する。引用文献1発明において、第1の電極部と第2の電極バスバー部が交差する領域において、第2の絶縁膜が第1の電極部の側面部と上部を覆うように形成されていることから、引用文献1発明の第2の絶縁膜は第1の電極部を覆っている。

キ 引用文献1発明の「第2の電極バスパー部」は、本件補正発明の「エミッタ用バスバー電極」に相当しており、引用文献1発明において、第2の電極バスパー部は第2の電極部と接続すなわち電気的に接続されている。引用文献1発明において、第1の電極部と第2の電極バスバー部が交差する領域において、第2の絶縁膜が第1の電極部の側面部と上部を覆うように形成されていることから、引用文献1発明の第2の電極バスパー部は、この領域において、第2の絶縁膜の上に位置する。

ク したがって、本件補正発明及び引用文献1発明は、次の一致点で一致し、次の相違点1及び2において相違する。

【一致点】
「第一導電型を有する半導体基板の第一主表面に、前記第一導電型を有するベース層、及び、前記ベース層に隣接し、前記第一導電型と反対の導電型である第二導電型を有するエミッタ層を有し、
前記ベース層と電気的に接続されるベース電極と、
前記エミッタ層と電気的に接続されるエミッタ電極と
を有する太陽電池であって、
前記第一主表面上において、前記ベース層及び前記エミッタ層に接する誘電体膜を有し、
前記エミッタ電極を覆うとともに、前記誘電体膜上に位置し、少なくとも前記ベース層上において間隙を有するように配置された第一の絶縁膜を有し、
少なくとも前記第一の絶縁膜の上に位置するベース用バスバー電極を有し、
前記ベース層の前記半導体基板の第一主表面に表れる形状が細長であり、
前記ベース電極と前記ベース用バスバー電極は電気的に接続しており、
前記ベース電極を覆う第二の絶縁膜をさらに有し、少なくとも前記第二の絶縁膜の上に位置し、前記エミッタ電極と電気的に接続するエミッタ用バスバー電極を有する、
太陽電池。」

【相違点1】
本件補正発明においては、ベース層の前記半導体基板の第一主表面に表れる形状の幅が「50μm以上200μm以下」であるのに対し、引用文献1発明においては、第1の導電型の拡散層の受光面とは反対の面に現れる形状の幅が特定されていない点。

【相違点2】
本件補正発明においては、第一の絶縁膜の間隙の距離が40μm以上(W+110)μm以下(但し、Wは間隙方向のベース層の幅)であるのに対し、引用文献1発明においては、第1の絶縁膜が第1の電極バスバー部の直下に存在する第2の導電型の拡散層を覆うように形成されている点。

(4)判断
上記相違点1及び2について検討する。

ア 相違点1について
引用文献1発明においては、第1の導電型の拡散層の受光面とは反対の面に現れる形状の幅が特定されていないが、引用文献1発明において、その変換効率を安定して高くするために引用文献2技術を適用して、ベース層に相当する、第1の導電型の拡散層の幅を100μm以上200μm以下とし、上記相違点1に係る構成を備えたものとすることは当業者が容易になし得たことである。その効果も引用文献1及び2から当業者が予測し得たものであって、格別のものではない。

イ 相違点2について
引用文献1発明においては、第1の絶縁膜が第1の電極バスバー部の直下に存在する第2の導電型の拡散層を覆うように形成されている。このように、第1の絶縁膜が第1の電極バスバー部の直下に存在する第2の導電型の拡散層を覆うということは、第1の絶縁膜(本件補正発明の「第一の絶縁膜」に相当する)の間隙と第1の拡散層の幅(本件補正発明の「ベース層」に相当する)との関係に直すと、第1の絶縁膜の間隙が第1の拡散層の幅以下(本件補正発明において「間隙方向のベース層の幅」Wμm以下であることに相当する)であることを意味する。

引用文献1の段落[0062]には、確かに、「第1の絶縁膜が少なくとも第1の電極バスバー部の直下に存在する第2の導電型の拡散層を覆うように形成されていることが好ましい」と記載されている。しかし、「好ましい」と記載されていることからすると、引用文献1においても、第1の絶縁膜が少なくとも第1の電極バスバー部の直下に存在する第2の導電型の拡散層を覆い、第1の絶縁膜の間隙が第1の拡散層の幅以下となることが好ましいものの、技術的に、第1の絶縁膜が少なくとも第1の電極バスバー部の直下に存在する第2の導電型の拡散層を覆うように形成されていなければならないものではなく、第1の拡散層の幅との関係において第1の絶縁膜の間隙にある程度の許容範囲があることは、引用文献1においても認識されていたものといえる。

そして、引用文献1の段落[0069]に「第1の絶縁膜の幅が0.03mm?1.5mmであり、第2の電極部の幅が0.02?0.20mmであることが好ましい」と記載され、絶縁膜の幅は適宜設計可能であることされていることや、段落[0061]に「このような厚みとすることにより、絶縁性をより向上させることができる。また、過度に絶縁膜を形成することもない」と記載され、絶縁膜について多量に使用することが良くないこととされていることも考慮すると、引用文献1発明において、引用文献1の段落[0062]に記載されているとおり、第1の電極バスバー部と第2の導電型の拡散層が誘電体層を通じて導通しないようにするにあたり、絶縁膜の量も考慮し、絶縁膜の幅と同様に、第1の絶縁膜の間隙を変え、1の電極バスバー部と第2の導電型の拡散層の間の導通が上記のような許容範囲に収まる設計とすることは当業者の通常の創作能力の発揮であって、その効果も格別のものではない。

したがって、本件補正発明は、引用文献1及び2に基いて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年2月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成29年5月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし8に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:国際公開第2015/190024号
引用文献2:国際公開第2012/017517号

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(2)で検討した本件補正発明から、「第一の絶縁膜の間隙の距離」について、「40μm以上Wμm以下」(但し、Wは間隙方向のベース層の幅)という数値範囲の除外を除き、「ベース電極」及び「エミッタ電極」について、「前記ベース電極と前記ベース用バスバー電極は電気的に接続しており、」と、「前記ベース電極を覆う第二の絶縁膜をさらに有し、少なくとも前記第二の絶縁膜の上に位置し、前記エミッタ電極と電気的に接続するエミッタ用バスバー電極を有する」という限定を除いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記のとおり限定したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用文献1発明及び引用文献2技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1発明及び引用文献2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-30 
結審通知日 2018-12-04 
審決日 2018-12-17 
出願番号 特願2017-519718(P2017-519718)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐竹 政彦  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 古田 敦浩
山村 浩
発明の名称 高光電変換効率太陽電池及び高光電変換効率太陽電池の製造方法  
代理人 小林 俊弘  
代理人 好宮 幹夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ