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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1348633
審判番号 不服2017-11971  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-09 
確定日 2019-02-07 
事件の表示 特願2014-501192「生物学に基づくチャンバマッチング」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月27日国際公開,WO2012/129249,平成26年 8月 7日国内公表,特表2014-519182〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年(平成24年)3月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月21日,米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 6月28日 拒絶理由通知
平成28年11月 2日 意見書提出・手続補正
平成29年 4月28日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 8月 9日 審判請求・手続補正
平成29年 9月28日 手続補正
平成30年 8月30日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)

第2 本願発明
本願の請求項1ないし32に係る発明(以下,まとめて「本願発明」という。)は,平成29年8月9日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし32に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「 【請求項1】
半導体製造ツールのためのチャンバマッチング性能の迅速な解析を提供するグラフィックユーザーインターフェースシステムであって,
参照チャンバおよび少なくとも1つのフォーカスチャンバを表す情報を受けるインポータと;
前記情報に基づいて少なくとも1つのマトリックスを生成するジェネレートコンポーネントと;
前記少なくとも1つのマトリックスを1つ以上の追加のマトリックスに変換することによってデータの1つ以上の追加のマトリックスを生成するトランスフォームコンポーネントと;
前記1つ以上の追加のマトリックスの関数として,グラフィックユーザーインターフェースにウィンドウの進行を描画する出力コンポーネントとを具備し,
前記参照チャンバおよび前記フォーカスチャンバは,ユーザーによって一つのチャンバ又は異なるチャンバとなるように選択されることができ,
前記ウィンドウの進行は,前記参照チャンバおよび前記少なくとも1つのフォーカスチャンバを比較する性能解析結果を備える,グラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項2】
前記参照チャンバおよび前記少なくとも1つのフォーカスチャンバを表す前記情報は,センサ測定,ツール性能カウンタ読取り,計測学データ,プロセスレシピ,システムレシピまたはそれらの組合せを備えている,請求項1のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項3】
前記グラフィックユーザーインターフェースシステムは,前記情報を受け,前記性能解析結果またはそれらの組合せを表示するために1つ以上のツールに直接接続する生物学に基づく学習システムのためのフロントエンドである,請求項1のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項4】
前記グラフィックユーザーインターフェースシステムは,前記参照チャンバまたは前記少なくとも1つのフォーカスチャンバと関係しているツールの挙動を学ぶ自律システムによってサポートされる,請求項1のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項5】
前記インポータは,任意のサンプリング周波数で集められる前記情報を受け,
前記ジェネレートコンポーネントは,前記任意のサンプリング周波数よりも低い周波数で前記少なくとも1つのマトリックスを構成する,請求項1のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項6】
前記ジェネレートコンポーネントは,少なくとも2つのマトリックスを生成し,
各々のマトリックスは,異なる時間分解能を備える,請求項1のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項7】
前記ジェネレートコンポーネントは,前記情報のためのサマリー統計量を生成し,
前記サマリー統計量は,各々の時間分解能に対して,平均,標準偏差,範囲,最大値,最小値またはそれらの組合せを備える,請求項1のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項8】
前記出力コンポーネントは,性能解析のためのいくつかのツールから1つ以上のチャンバの選択および1つ以上のツールの選択を受ける第1のウィンドウを描画する,請求項1のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項9】
前記出力コンポーネントは,ツール性能評価尺度のリストを備える第2のウィンドウを描画し,
前記第2のウィンドウは,
複数のチャンバから参照チャンバおよび少なくとも1つのフォーカスチャンバの選択と;
性能レベルまたは性能レベルの範囲の選択と;または,
システムレシピおよび前記解析のフォーカスとしてのプロセスレシピのセットの選択とのうちの少なくとも1つを受ける,請求項8のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項10】
前記出力コンポーネントは,前記少なくとも1つのフォーカスチャンバおよび前記参照チャンバとして同じチャンバの選択を受けることができる第2のウィンドウを描画する,請求項8のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項11】
前記出力コンポーネントは,前記第2のウィンドウの選択の関数として,時系列傾向を備える第3ウィンドウを描画し,
前記傾向は,設定可能な日付範囲に基づくものである,請求項10のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項12】
前記第3のウィンドウは,一組のロットから少なくとも1つのロットの選択を受け,前記選択は,前記少なくとも1つのフォーカスチャンバのための少なくとも1つのロットおよび前記参照チャンバのための少なくとも1つのロットを識別する,請求項11のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項13】
前記出力コンポーネントは,前記参照チャンバのための第1のチャートおよび前記少なくとも1つのフォーカスチャンバのための第2のチャートを表示する第4のウィンドウを描画する,請求項11のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項14】
前記第4のウィンドウは,前記少なくとも1つのフォーカスチャンバまたは前記参照チャンバのためのスタート日付またはエンド日付に対しての変更の機能として動的に修正されるエラー比較ウィンドウである,請求項13のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項15】
前記グラフィックユーザーインターフェースシステムは,少なくとも部分的には,機能的関係を学ぶ自律システムによってサポートされ,
前記第4のウィンドウは,前記第2のウィンドウからメリットの尺度に影響を与えるツールパラメータを識別するために前記機能的関係を使用する,請求項13のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項16】
前記出力コンポーネントは,ウェハレベルでtick-by-tick傾向線を表示する第5のウィンドウを描画する,請求項13のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項17】
前記出力コンポーネントは,前記少なくとも1つのフォーカスチャンバのための第3チャートおよび前記参照チャンバのための第4のチャートを表示する第6のウィンドウを描画し,
前記第3チャートおよび前記第4のチャートは,前記少なくとも1つのフォーカスチャンバおよび前記参照チャンバのウェハの性能レベルを示す,請求項16のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項18】
前記ウィンドウの進行の各々のウィンドウに1つ以上の変化を伝える通知コンポーネントを更に具備する請求項1のグラフィックユーザーインターフェースシステム。
【請求項19】
生物学に基づくチャンバマッチングのシステムであって,
ツールの挙動を決定する自律学習システムと;
前記挙動に基づいて,1つ以上のツールセンサ,ツールメンテナンスカウンタまたは他の計測学データの関数として,関連する出力を表すグラフィックユーザーインターフェースとを具備し,
前記関連する出力は,一つのチャンバ又は異なるチャンバとして選択されることができるフォーカスチャンバおよび参照チャンバの性能比較であり,
前記グラフィックユーザーインターフェースは,前記挙動に基づいて1つ以上のマトリックスを生成し,前記1つ以上のマトリックスを1つ以上の追加のマトリックスに変換することによって前記1つ以上のマトリックスから前記1つ以上の追加のマトリックスを生成し,及び,前記1つ以上の追加のマトリックスの関数としてウィンドウの進行を描画する,システム。
【請求項20】
前記グラフィックユーザーインターフェースは,前記自律学習システムのためのフロントエンドであり,データを受信するために,解析結果またはそれらの組合せを表示するために,1つ以上のツールに直接接続する,請求項19のシステム。
【請求項21】
前記グラフィックユーザーインターフェースは,センサ測定,ツール性能カウンタ読取り,計測学データ,プロセスレシピ,システムレシピまたはそれらの組合せをインポートする,請求項20のシステム。
【請求項22】
前記自律学習システムは,他の列の関数として,1つ以上のマトリックスの各々の列を学び,各々の列のためのサンプルを生成する,請求項19のシステム。
【請求項23】
前記グラフィックユーザーインターフェースは,互いに構築するウィンドウの進行として,関連する出力を表す,請求項19のシステム。
【請求項24】
前記グラフィックユーザーインターフェースは,前記フォーカスチャンバ,前記参照チャンバまたは前記フォーカスチャンバおよび前記参照チャンバの両方の詳細に掘り下げる手段を提供する,請求項19のシステム。
【請求項25】
前記グラフィックユーザーインターフェースは,独立しているツールである,請求項19のシステム。
【請求項26】
前記参照チャンバおよび前記フォーカスチャンバは,同一チャンバである,請求項19のシステム。
【請求項27】
前記参照チャンバおよび前記フォーカスチャンバは,異なるチャンバである,請求項19のシステム。
【請求項28】
チャンバマッチング性能解析結果を提供する方法であって,
フォーカスチャンバおよび参照チャンバを表すデータを受けることと;
前記受信データに基づいて少なくとも1つのマトリックスを生成することと;
前記少なくとも1つのマトリックスを追加のマトリックスに変換することによって前記追加のマトリックスを生成することと;
前記フォーカスチャンバおよび前記参照チャンバ間の性能解析情報を提供する一連のウィンドウをディスプレイに描画することとを具備し,
前記参照チャンバおよび前記フォーカスチャンバは,ユーザーによって一つのチャンバ又は異なるチャンバとなるように選択されることができる,方法。
【請求項29】
前記参照チャンバとして第1のチャンバの,前記フォーカスチャンバとして第2のチャンバの選択を受けることを更に具備し,
前記第1のチャンバおよび前記第2のチャンバは,異なるチャンバである,請求項28の方法。
【請求項30】
前記参照チャンバおよび前記フォーカスチャンバの両方として第1のチャンバの選択を受けることを更に具備する請求項28の方法。
【請求項31】
前記一連のウィンドウは,ツールおよびチャンバの選択ウィンドウ,メリットウィンドウの尺度,データ範囲ウィンドウ,エラー比較ウィンドウ,ウェハレベル比較ウィンドウ,レポートウィンドウまたはそれらの組合せを具備する,請求項28の方法。
【請求項32】
前記一連のウィンドウの少なくとも1つのウィンドウの第1のパラメータに対する変更を受けることと,
前記一連のウィンドウの全ての従属するウィンドウの少なくとも第2のパラメータを自動的にアップデートすることとを更に具備する請求項28の方法。」

第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の理由は,概略,次のとおりのものである。
本願は,発明の詳細な説明の記載が,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明の記載には,以下の記載がある。
「マトリックスの各々の列は,ツールセンサ測定データ,ツール部分メンテナンスデータまたはツール計測学データを含む。各々の行は,処理(例えば秒,工程,ウェハ,ロットなど)のいくつかのユニットを表示する。」(【0042】)
「1004で,受信データに基づく少なくとも1つのマトリックスは,生成される。いくつかの態様によれば,1004で,2つ以上のマトリックスは生成される。そこにおいて,各々のマトリックスは異なる時間分解能で生成される(例えば工程レベルデータ,ウェハレベルデータ,ロットレベルデータ,PMレベルデータ,その他)。いくつかの態様によれば,データは1002で受けられる,それは任意のサンプリング周波数で集められ,1004で生成されるマトリックスは低い周波数(例えば,1/10秒に受けられるデータは,平均値になっておよび1秒のレベルの読取りに変換される)で構成される。」(【0118】)
「1004で生成されるマトリックスを変換することによって,1006で追加のマトリックスは,生成される。例えば,各々の変数は,トランスポートされることができて,そして表されることができる:(測定値-レシピターゲット値)(測定値-平均測定値)などまたは他のマトリックスとして表される。このようなマトリックスは,自律システムによって通訳されることができる。例えば,自律システムは,他の列の関数として,マトリックスの各々の列を学ぶことができて,および各々の列のための異なったサンプルを生成することができる。」(【0119】)
「1008で,一連のウィンドウは,描画される。一連のウィンドウは,フォーカスチャンバおよび参照チャンバ(フォーカスチャンバおよび参照チャンバは同じチャンバである点または2つの異なるチャンバである点に関わりなく)間のマッチングの関数として,導き出される性能解析に掘り下げることを,ユーザに許容する。それで,所望の詳細な解析に従って,一連のウィンドウは,詳細な方法でまたはより一般の(または高水準の)事項において取り出される性能解析情報を可能にする。」(【0120】)

第5 判断
本願の発明の詳細な説明には,行と列がそれぞれ処理とデータを示すマトリックスの例が記載されているとはいえ(【0042】),具体的なマトリックスの実例は1例も示されておらず,行と列がそれぞれ処理とデータを示すマトリックスがどのようなものであるのか,当業者が理解できるとは認められず,さらに,どのようにマトリックスを生成するのか,どのように追加のマトリックスに変換するのか,どのように追加のマトリックスの関数として,ウィンドウに描画するのかも,当該技術分野の技術常識を勘案しても,いずれも不明である。
よって,発明の詳細な説明の記載は,本願発明について当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

第6 むすび
以上のとおり,本願は,発明の詳細な説明の記載が,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり結審する。
 
審理終結日 2018-12-03 
結審通知日 2018-12-04 
審決日 2018-12-17 
出願番号 特願2014-501192(P2014-501192)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 将之井上 弘亘  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 梶尾 誠哉
河合 俊英
発明の名称 生物学に基づくチャンバマッチング  
代理人 特許業務法人スズエ国際特許事務所  

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