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審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  G02B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
審判 一部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1348706
異議申立番号 異議2018-700275  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-03 
確定日 2018-12-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6205587号発明「光学反射素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6205587号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕、11について訂正することを認める。 特許第6205587号の請求項1、2、3、5、7、9、10、11に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6205587号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成25年4月24日(優先権主張 平成24年5月7日)を国際出願日とする出願である特願2014-514373号の一部を平成28年8月8日に新たな出願とした特願2016-155227号であって、平成29年9月15日にその特許権の設定登録がされ、平成29年10月4日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1ないし3、5、7、9ないし11に係る特許について、平成30年4月3日に特許異議申立人市東勇により特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年6月14日(同年同月19日発送)に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成30年8月17日(同年同月20日受付)に意見書の提出及び訂正の請求を行った。
なお、同年9月7日付けで当審から特許異議申立人市東勇に特許法第120条の5第5項の規定に基づく書面等を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人市東勇からの意見書の提出はなかった。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成30年8月17日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のアないしクのとおりである。
ア 訂正事項1
請求項1に係る「前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さい、光学反射素子。」を「前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる、光学反射素子。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、7、9、10も同様に訂正する。)

イ 訂正事項2
請求項4に係る「前記第2湾曲部の曲率半径は、前記第1湾曲部により近い側と前記縦梁部により近い側とで異なる、請求項2記載の光学反射素子。」を「ミラー部と、前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部により近い第1湾曲部と、前記縦梁部により近い第2湾曲部と、を有し、前記第2湾曲部の曲率半径は、前記第1湾曲部により近い側と前記縦梁部により近い側とで異なる、光学反射素子。」に訂正する。

ウ 訂正事項3
請求項6に係る「前記駆動部は前記第2湾曲部上に形成されている、請求項1記載の光学反射素子。」を「ミラー部と、前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部により近い第1湾曲部と、前記縦梁部により近い第2湾曲部と、を有し、前記駆動部は前記第2湾曲部上に形成されている、光学反射素子。」に訂正する。

エ 訂正事項4
請求項8に係る「前記固定部と前記横梁部との境界にモニタ部が形成されている、請求項1記載の光学反射素子。」を「ミラー部と、前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、前記固定部と前記横梁部との境界にモニタ部が形成されている、光学反射素子。」に訂正する。

オ 訂正事項5
請求項10に係る「前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さい、請求項9の光学反射素子。」を「前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さい、請求項9の光学反射素子。」に訂正する。

カ 訂正事項6
請求項11に係る「前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分に近い側の曲率半径が、前記縦梁と接続される部分に近い側おける曲率半径よりも小さい光学反射素子。」を「前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる光学反射素子。」に訂正する。

キ 訂正事項7
発明の詳細な説明の段落【0006】の「本発明は、大きな変位量かつ高周波駆動を実現できる小型の光学反射素子である。本発明の光学反射素子は、ミラー部と、一対の接合部と、一対の振動部と、複数の駆動部と、固定部とを有する。接合部はそれぞれ、ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続された第1端と、この第1端の反対側の第2端とを有し、第1軸方向に伸びている。振動部はそれぞれ、接合部の一方の第2端に接続された中央部を有する。複数の駆動部はそれぞれ、一対の振動部のそれぞれに設けられ、ミラー部を回動させる。固定部には一対の振動部の各両端が連結されている。接合部の第1軸に直交する方向の長さとして定義される梁幅は、一対の振動部のそれぞれの梁幅より大きい。」という記載を「本発明は、大きな変位量かつ高周波駆動を実現できる小型の光学反射素子である。本発明の一の態様に係る光学反射素子は、ミラー部と、一対の接合部と、一対の振動部と、複数の駆動部と、固定部とを有する。接合部はそれぞれ、ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続された第1端と、この第1端の反対側の第2端とを有し、第1軸方向に伸びている。振動部はそれぞれ、接合部の一方の第2端に接続された中央部を有する。複数の駆動部はそれぞれ、一対の振動部のそれぞれに設けられ、ミラー部を回動させる。固定部には一対の振動部の各両端が連結されている。接合部の第1軸に直交する方向の長さとして定義される梁幅は、一対の振動部のそれぞれの梁幅より大きい。
また、本発明の他の態様に係る光学反射素子は、ミラー部と、前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる。」に訂正する。

ク 訂正事項8
発明の詳細な説明の段落【0007】の「この構成により、接合部に掛かる応力が低減され機械的強度を高めることができるので、ミラー部を大きな回動角(変位量)でかつ高周波駆動させることができる。」という記載を「また、本発明のさらに他の態様に係る光学反射素子は、ミラー部と、前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる。
この構成により、接合部に掛かる応力が低減され機械的強度を高めることができるので、ミラー部を大きな回動角(変位量)でかつ高周波駆動させることができる。」に訂正する。

本件訂正請求は、一群の請求項〔1-10〕及び請求項11に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正事項7は、一群の請求項〔1-10〕について請求されたものであり、明細書に係る訂正事項8は、請求項11について請求されたものである。

また、訂正後の請求項4、6、8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

(2)訂正の目的の適否、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項1は、
請求項1の「前記一対の横梁部を支持する固定部」を、
「前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部」とする訂正(以下、「訂正事項1-1」という)と、
「前記縦梁と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さい、」を、
「前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、」とする訂正(以下、「訂正事項1-2」という)と、
請求項1に「前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる」との発明特定事項を追加する訂正(以下、「訂正事項1-3」という)とを含むものである。
訂正事項1-1に関し、訂正前の請求項1に係る発明では、固定部が「前記一対の横梁部を支持する」ことを特定していたが、どのような態様で固定部が「前記一対の横梁部を支持する」のかについては、何ら特定していない。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明では、固定部が「前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され]ることを明らかにすることで、どのような態様で固定部が「前記一対の横梁部を支持する」のかを特定して特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1-2に関し、訂正前の請求項1において「前記縦梁と」との記載があるところ、訂正前の請求項1には「縦梁」が存在せず、訂正前の請求項1における「前記縦梁と」との事項が不明瞭であるため、不明瞭な記載の釈明を目的として、当該記載を「前記縦梁部と」に変更した。この点において、訂正事項1一2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項1-3に関し、訂正前の請求項1に係る発明では、複数の駆動部が「前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる」ことを特定していたが、どのような態様で複数の駆動部が「前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる」のかについては、何ら特定していない。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明では、複数の駆動部が「前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる」ことを明らかにすることで、どのような態様で複数の駆動部が「前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる」のかを特定して特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1-3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は発明特定事項を直列的に付加することで、訂正前の請求項1の記載を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項の有無
訂正事項1-1は、明細書の段落【0011】の記載「枠状の固定部16は振動部14、15の両端に連結され、振動部14、15を支持している。」、段落【0030】の記載「振動部32は一対で設けられ、それぞれの中央部で接合部33に接続されている。振動部32の両端は固定部35に接続されている。」、図1,4等に基づくものである。
訂正事項1-2に関し、「前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さ」いことは、明細書の段落【0038】の記載「接合部33に近い第2湾曲部37上に占めるように、第1湾曲部36の曲率半径rを第2湾曲部37の曲率半径Rより小さくすることが好ましい。」、図7B等に基づくものである。
訂正事項1-3は、段落【0035】の記載「振動部14、15では、振動部14、15と固定部16との接続箇所において、振動部14、15の曲げ変位に伴った応力が集中しやすい。」、段落【0043】の記載「振動部32が曲げ変位を起こすため、固定部35と第1湾曲部36との境界線周辺に歪みが集中し易い。」等に基づくものである。
すなわち、これらの記載に、出願時の技術常識を照らし合わせれば、横梁部に相当する「振動部」は、固定部との接続箇所である両端が固定された状態で、振動部自体に曲げ変位が生じていることが感得される。よって、訂正事項1-3は、本件特許明細書等の記載から自明な事項である。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項2の記載を引用し、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項2では、訂正前の請求項1において「前記縦梁と」との記載があるところ、訂正前の請求項1には「縦梁」が存在せず、訂正前の請求項1における「前記縦梁と」との事項が不明瞭であるため、不明瞭な記載の釈明を目的として、当該記載を「前記縦梁部と」に変更した。この点において、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、訂正前の請求項4に対して、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項の有無
訂正事項2は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項6について、請求項1の記載を引用する記載であるところ、訂正前の請求項1には「第2湾曲部」が存在せず、訂正前の請求項6における「前記駆動部は前記第2湾曲部上に形成されている」との事項が不明瞭であるため、不明瞭な記載の釈明を目的として、請求項2の記載を引用する形に変更した。この点において、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
その上で、訂正事項3は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項2の記載を引用し、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
さらに、訂正事項3では、訂正前の請求項1において「前記縦梁と」との記載があるところ、訂正前の請求項1には「縦梁」が存在せず、訂正前の請求項1における「前記縦梁と」との事項が不明瞭であるため、不明瞭な記載の釈明を目的として、当該記載を「前記縦梁部と」に変更した。この点において、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、訂正前の請求項6に対して、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項の有無
訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項4では、訂正前の請求項1において「前記縦梁と」との記載があるところ、訂正前の請求項1には「縦梁」が存在せず、訂正前の請求項1における「前記縦梁と」との事項が不明瞭であるため、不明瞭な記載の釈明を目的として、当該記載を「前記縦梁部と」に変更した。この点において、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、訂正前の請求項8に対して、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項の有無
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項10において「前記縦梁と」との記載があるところ、訂正前の請求項10、並びに訂正前の請求項10が引用する訂正前の請求項1及び9には「縦梁」が存在せず、訂正前の請求項10における「前記縦梁と」との事項が不明瞭であるため、不明瞭な記載の釈明を目的として、当該記載を「前記縦梁部と」に変更した。この点において、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、訂正前の請求項10に対して、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項の有無
訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

カ 訂正事項6について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項6は、請求項11の「前記一対の横梁部を支持する固定部」を、「前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部」とする訂正(以下、「訂正事項6-1」という)と、請求項11の「前記固定部と接続される部分に近い側の曲率半径が、前記縦梁と接続される部分に近い側おける曲率半径よりも小さい」を、「前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、」とする訂正(以下、「訂正事項6-2」という)と、請求項11に「前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる」との発明特定事項を追加する訂正(以下、「訂正事項6-3」という)とを含むものである。
訂正事項6-1に関し、訂正前の請求項11に係る発明では、固定部が「前記一対の横梁部を支持する」ことを特定していたが、どのような態様で固定部が「前記一対の横梁部を支持する」のかについては、何ら特定していない。
これに対して、訂正後の請求項11に係る発明では、固定部が「前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され」ることを明らかにすることで、どのような態様で固定部が「前記一対の横梁部を支持する」のかを特定して特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項6-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6-2に関し、訂正前の請求項11において「前記縦梁と」との記載があるところ、訂正前の請求項11には「縦梁」が存在せず、訂正前の請求項11における「前記縦梁と」との事項が不明瞭であるため、不明瞭な記載の釈明を目的として、当該記載を「前記縦梁部と」に変更した。また、訂正事項6-2に関し、訂正前の請求項11には「前記固定部と接続される部分に近い側の曲率半径が、前記縦梁と接続される部分に近い側おける曲率半径よりも小さい」との記載があるところ、各々の「曲率半径」が内周か外周かが不明瞭であるため、不明瞭な記載の釈明を目的として、当該記載を「前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、」に変更した。これらの点において、訂正事項6-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項6-3に関し、訂正前の請求項11に係る発明では、複数の駆動部が「前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる」ことを特定していたが、どのような態様で複数の駆動部が「前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる」のかについては、何ら特定していない。
これに対して、訂正後の請求項11に係る発明では、複数の駆動部が「前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる」ことを明らかにすることで、どのような態様で複数の駆動部が「前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる」のかを特定して特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項6-3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は発明特定事項を直列的に付加することで、訂正前の請求項11の記載を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項の有無
訂正事項6-1は、明細書の段落【0011】の記載「枠状の固定部16は振動部14、15の両端に連結され、振動部14、15を支持している。」、段落【0030】の記載「振動部32は一対で設けられ、それぞれの中央部で接合部33に接続されている。振動部32の両端は固定部35に接続されている。」、図1、4等に基づくものである。
訂正事項6-2に関し、「前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さ」いことは、明細書の段落【0041】の記載「また、図7Cに示すように、第2湾曲部37を第1湾曲部36により近い側と接合部33により近い側とで曲率半径が異なる構成としても良い。」、図7C等に基づくものである。
訂正事項6-3は、段落【0035】の記載「振動部14,15では、振動部14、15と固定部16との接続箇所において、振動部14,15の曲げ変位に伴った応力が集中しやすい。」、段落【0043】の記載「振動部32が曲げ変位を起こすため、固定部35と第1湾曲部36との境界線周辺に歪みが集中し易い。」等に基づくものである。すなわち、これらの記載に、出願時の技術常識を照らし合わせれば、横梁部に相当する「振動部」は、固定部との接続箇所である両端が固定された状態で、振動部自体に曲げ変位が生じていることが感得される。よって、訂正事6-3は、本件特許明細書等の記載から自明な事項である。
よって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

キ 訂正事項7について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項7は、訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7は、訂正事項1と同じ理由により、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項の有無
訂正事項7は、訂正事項1と同じ理由により、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ク 訂正事項8について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項8は、訂正事項6に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項8は、訂正事項6と同じ理由により、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項の有無
訂正事項8は、訂正事項6と同じ理由により、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ケ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の請求項1、2、3、5、7、9、10、11について特許異議の申立てがされており、また、訂正前の請求項4,6,8についての訂正は、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるので、訂正事項1ないし6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(3)明細書又は図面の訂正と関係する請求項についての説明
請求項1?10が訂正事項7による明細書の訂正に係る請求項であり、請求項11が訂正事項8による明細書の訂正に係る請求項である。
したがって、訂正事項7は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全て(請求項1?10)について行うものであり、訂正事項8は、明細書の訂正に係る請求項11について行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕及び請求項11について訂正することを認める。

3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項を含む請求項1ないし11に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、
前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる、光学反射素子。
【請求項2】
前記一対の梁部はそれぞれ、
前記固定部により近い第1湾曲部と、
前記縦梁部により近い第2湾曲部と、を有する、請求項1記載の光学反射素子。
【請求項3】
前記第1湾曲部の曲率半径が前記第2湾曲部の曲率半径よりも小さい、
請求項2記載の光学反射素子。
【請求項4】
ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、
前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記一対の梁部はそれぞれ、
前記固定部により近い第1湾曲部と、
前記縦梁部により近い第2湾曲部と、を有し、
前記第2湾曲部の曲率半径は、前記第1湾曲部により近い側と前記縦梁部により近い側とで異なる、光学反射素子。
【請求項5】
前記第1湾曲部と前記第2湾曲部の湾曲方向が異なる、請求項2記載の光学反射素子。
【請求項6】
ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記一対の梁部はそれぞれ、
前記固定部により近い第1湾曲部と、前記縦梁部により近い第2湾曲部と、を有し、
前記駆動部は前記第2湾曲部上に形成されている、光学反射素子。
【請求項7】
前記駆動部は、下部電極膜と圧電膜と上部電極膜を順に積膜して形成されている、請求項1記載の光学反射素子。
【請求項8】
ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、
前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記固定部と前記横梁部との境界にモニタ部が形成されている、光学反射素子。
【請求項9】
前記内周は、前記横梁部の前記ミラー部に近い側の周であり、
前記外周は、前記横梁部の前記ミラー部から遠い側の周である、請求項1記載の光学反射素子。
【請求項10】
前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さい、請求項9の光学反射素子。
【請求項11】
ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる光学反射素子。」

4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1,2,3,5,7,9,10及び11に係る特許に対して、当審が平成30年6月14日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア 理由1(新規性)29条1項3号
本件特許の請求項1,2,3,5,7,9,10及び11に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された特開2010-288435号公報(以下「甲第1号証」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

イ 理由2(進歩性)29条2項
本件特許の請求項1,2,3,5,7,9,10及び11に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

ウ 理由3(拡大先願)29条の2
本件特許の請求項1,2,3,5,7,9,10及び11に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開公報の発行がされた特願2010-286758号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)甲号証の記載
ア 甲第1号証
(ア)記載事項
【0008】
そこで、本発明は、小型化の要請に応えつつ、内部応力を十分に分散させて破断等のおそれ無く安定動作させることができるアクチュエータ及びこれを用いた光走査装置を提供することを目的とする。
【0051】
圧電素子21は、上部電極23と、下部電極24とを備える。上部電極23及び下部電極24は、圧電体22に電圧を印加するための電極であり、上部電極23及び下部電極24に電圧が印加されることにより、圧電体22が伸縮し、梁15を駆動させる。
【0064】
図7は、実施例1に係るアクチュエータの共振駆動部80を抜き出して示した斜視図の一例である。図7において、共振駆動部80は、ミラー31と、支持梁40と、連結部50と、可動枠60と、駆動梁70と、駆動源20とを含み、これらは総て一体となって連結されている。
【0065】
ミラー31は、本実施例に係るアクチュエータにより傾動駆動される駆動対象物30である。駆動対象物30は、ミラー31以外のものも適用できるが、以後、説明の容易のため、ミラー31を駆動対象物30として適用した例を挙げて説明する。
【0066】
支持梁40は、ミラー31を両側から支持する1対の梁である。支持梁40は、ミラー31に連結され、ミラー31に関して対称に、回転軸Xに沿って、左右で1対となって設けられる。支持梁40は、図1において説明したように、例えば、約30〔μm〕程度の薄いシリコン活性層14として構成されるので、弾性を有する弾性部材として機能する。
【0070】
連結部50は、支持梁40の先端部と可動枠60とを連結し、可動枠60の曲げ振動をねじれ振動に変換して支持梁40に伝達する部分である。連結部50は、支持梁40を回転軸X方向の両側から挟むように、1対となって構成されている。可動枠60は、支持梁40を回転軸Xに直交する方向の両側から挟むように対をなしているので、1つの連結部50は、支持梁40と、支持梁40の両側に存在する可動枠60の3つの部材を連結する。
【0075】
連結部50は、支持梁40との連結により生じる角55が、丸められる加工処理がなされていてよい。これにより、支持梁40と連結部50との連結箇所の応力を更に分散させることができる。同様に、ミラー31と支持梁40の連結部分に生じる角45、連結部50と可動枠60の連結部分に生じる角65及び可動枠60と駆動梁70の連結部分に生じる角75を丸める加工処理を行い、これらの応力も分散させるようにしてよい。なお、角45、55、65、75の丸め処理の詳細については、後述する。
【0076】
図7に戻る。駆動梁70は、可動枠60に曲げ応力を付与する駆動力発生源である。駆動梁70は、回転軸Xと直交する方向に延在し、可動枠60を両側から挟むように可動枠60に連結され、1対となって設けられる。駆動梁70は、表面に駆動源20が装着され、自身が駆動源20に変形されて、曲げ振動を発生させる。駆動源20は、例えば、圧電素子21が用いられてよいが、曲げ振動を発生することができる手段であれば、他の手段であってもよい。圧電素子21が用いられる場合、1対の駆動梁70の圧電素子21には、両側で互いに異なる方向に変位する電圧が印加される。電圧の印加は、図1において説明したように、圧電体22に設けられた上面電極23と下面電極24から行われてよい。
【0079】
図9は、実施例1に係るアクチュエータの共振駆動部80の共振振動時における変形状態の一例を示した斜視図である。図9において、1対の駆動源20は、奥側の圧電素子25と手前側の圧電素子26とを含み、各々異なる極性又は位相の電圧が印加される。これにより、1対の駆動梁70は、奥側の駆動梁71が上方に反り、手前側の駆動梁72が下方に反る変形をし、可動枠60に曲げ振動を付与する。可動枠60の曲げ振動は、連結部50において支持梁40に伝達されるが、このとき、曲げ振動はねじれ振動に変換され、1対の支持梁40は、左側と右側でねじれる振動をする。そして、このねじれ振動により、両側から支持梁40で支持されているミラー31は、奥側と手前側に傾動振動する運動を行い、回転軸X周りに傾動駆動させられることになる。このような動作により、ミラー31は回転軸Xの軸周りで傾動駆動させられる。
【0080】
図10は、実施例1に係るアクチュエータの共振駆動部80の共振駆動時の変形状態の一例を示したミラー31の周辺拡大図である。図10において、ミラー31が、右側が上昇し、左側が下降するように傾動しているが、可動枠60も、ミラー31と同一方向に傾動し、ミラー31の方が、可動枠60よりも傾動の傾角が大きい状態となっている。図10における動作は、1対の駆動梁70に備えられた1対の駆動源20に、極性又は位相の異なる電圧を印加することにより共振させると、駆動梁70と可動枠60の連結部付近が、大きく上下に振動する。この動作により、可動枠60が傾き、また可動枠60自身がたわむことで、連結部50付近を更に傾け、連結部50がねじれて更にミラー31を傾ける、という動作を行う。

【0090】
図13は、ミラー31と支持梁40との連結箇所45と、支持梁40と連結部50との連結箇所55と、連結部50と可動枠60との連結箇所65に生じる角を丸めた場合について説明するための図である。図13(A)は、連結箇所45、55、65に角Rを付与した場合のアクチュエータの斜視図の一例であり、図13(B)は、角Rを付与したときの傾角感度と、±12〔deg〕傾いたときの連結箇所45、55、65の最大応力変化を示した図である。
【0091】
図13(A)に示すように、ミラー31と支持梁40との連結箇所45のみならず、支持梁40と連結部50との連結箇所55及び連結部50と可動枠60との連結箇所65にも角Rが付与されている。連結箇所55、65の角Rは、例えば、0.005?0.04〔mm〕の範囲で付与されてもよい。
【0092】
図13(B)は、図13(A)のような角Rを付与した構成において、傾角感度と最大応力の変化を示している。図13(B)において、傾角感度はあまり変化していないが、角Rが0.02〔mm〕以上で若干劣化している。内部応力は、ねじれが発生する連結部50で最大となる。角R=0.005?0.02〔mm〕では、最大内部応力は0.5〔GPa〕となり、深掘り反応性イオンエッチングによる加工変質層の影響や繰り返し応力の印加により、破断の可能性が出てしまう。R=0.03〔mm〕のときに、最大応力は0.49〔GPa〕となり、破断が生じない値まで応力が分散される。よって、R=0.03〔mm〕以上であれば、破断発生のおそれが無く、特に問題無いことが分かる。
【0097】
図15は、共振駆動部80における駆動源20の電極配置構成の種々の態様について示した図である。
【0098】
図15(A)は、駆動梁70にのみ駆動源20を設けた共振駆動部80の構成の一例を示した図である。図15(A)において、今まで説明したように、駆動梁70にのみ駆動源20が設けられた共振駆動部80が示されている。この場合は、図7乃至図11において説明したように、1対の駆動梁71、72からなる駆動梁70の上下動が、曲げ振動として1対の可動枠61、62からなる可動枠60に付与される。そして、可動枠60から1対の連結部50に曲げ振動が伝達される際に、曲げ振動がねじれ振動に変換され、ねじれ振動により1対の支持梁40及びミラー31が傾動駆動される。
【0099】
図15(B)は、駆動梁70及び可動枠60に駆動源20aを設けた共振振動部80aの構成の一例を示した図である。図15(B)において、駆動梁70のみでなく、可動枠60にも駆動源20aが備えられている。つまり、駆動源20aは、1対の駆動梁71、72に1対の駆動源25、26が設けられるとともに、1対の可動枠61、62にも各々駆動源27、28が設けられている。図15(B)においては、回転軸Xを中心として、互いに連結されている奥側の駆動梁71及び可動枠61には、同極性又は同位相の電圧が印加される駆動源25、27が設けられている、同様に、互いに連結されている手前側の駆動梁72及び可動枠62には、同極性又は同位相の電圧が印加される駆動源26、28が設けられており、それらの極性は、駆動源25、27とは異なっている。つまり、図15(B)においては、同じ側の駆動梁70と可動梁60には、同極性の電圧が印加されるように駆動源20aが配置構成されている。
【0100】
図15(C)は、図15(B)とは異なる駆動梁70及び可動枠60に駆動源20bを設けた共振振動部80bの構成の一例を示した図である。図15(C)において、駆動梁70に設けられる駆動源20の配置は、図15(A)、(B)と同様であるが、可動枠60に設けられる駆動源27、28が、連結されている駆動梁70の駆動源26、25とは逆極性となるように構成されている。つまり、回転軸Xを中心として、奥側の駆動梁71の駆動源25とこれに連結されている可動枠61の駆動源28は、互いに逆極性である。同様に、手前側の駆動梁72の駆動源26と、これに連結されている可動枠62の駆動源27とは、逆極性である。そして、1対の駆動源71、72同士の駆動源25、26は互
いに逆極性であり、1対の可動枠61、62同士の駆動源28、27も互いに逆極性である。
【0131】
図24(A)において、実施例3に係るアクチュエータは、可動部100と、固定枠110とを備える。固定枠100は、駆動中も固定状態にある外側の枠であり、可動部110は、固定枠100に連結支持されている。また、可動部100は、駆動対象物30と、1対の支持梁40bと、1対の連結部50bと、1対の駆動梁73とを備える。連結部50bは、駆動梁73に連結される駆動梁側連結部53と、駆動梁側連結部53と支持梁40bを連結する支持梁側連結部54とを有する。実施例3に係るアクチュエータの表面側は、総てSi活性層13で構成されている。
【0132】
実施例3に係るアクチュエータにおいては、駆動対象物30に、回転軸方向に沿って延在する支持梁40が連結されている点は、実施例1に係るアクチュエータと同様である。しかしながら、実施例3に係るアクチュエータには、可動枠60が設けられていない点で、実施例1及び実施例2に係るアクチュエータと異なっている。
【0133】
実施例3に係るアクチュエータにおいては、連結部50bの支持梁側連結部54が、回転軸Xと直交する方向に長く延在し、駆動対象物30の幅と同程度か、それよりも長く構成されている。そして、支持梁側連結部54から垂直に回転軸Xと平行に駆動梁73側に戻るように駆動梁側連結部53が延在し、駆動梁73に直接連結されている。よって、連結部50bは、可動枠60の代わりに駆動梁73と直接連結される駆動源側連結部53と、駆動梁側連結部53と支持梁40bとを連結する支持梁側連結部54を含んで構成される。ここで、支持梁側連結部54と駆動梁側連結部53とが連結される位置は、回転軸Xに垂直な方向において、駆動対象物30の端部と同じか、それよりも外側に構成されてよい。これにより、回転軸Xと平行に駆動対象物30側に延びる駆動梁側連結部53の長さを、十分に長く確保することができ、十分に応力の吸収低減を行うことが可能となる。
【0135】
また、駆動梁73は、実施例1及び実施例2に係るアクチュエータの駆動源70よりも、回転軸Xに平行な幅を大きくし、駆動源20である圧電素子21の成膜面積を大きくしている。これにより、傾角感度を更に向上させるとともに、更に高速に駆動することが可能となる。つまり、小型でありながら、十分な傾角感度を有するアクチュエータとすることができる。なお、駆動梁73が、回転軸Xの両側で、異なる方向に変位する電圧が印加させる点は、実施例1及び実施例2に係るアクチュエータと同様である。
【0136】
更に、実施例3に係るアクチュエータは、回転軸Xの軸周りに傾動運動を行う1軸型のアクチュエータが示されている。このように、実施例3に係るアクチュエータは、1軸側アクチュエータとして構成することができる。一方、図3乃至図6において説明したように、固定枠110の領域に、回転軸Xと異なる軸周りに傾動駆動するアクチュエータを組み込んで2軸型のアクチュエータとしてもよい。実施例3に係るアクチュエータは、1軸型のアクチュエータにも、2軸型のアクチュエータにも適用することができる。
【0139】
図25(A)において、支持梁40bの幅をAとし、駆動梁側連結部53の幅を、支持梁40bの幅Aの1/2のA/2に設定する。また、支持梁側連結部54の長さをB、支持梁40b及び駆動梁側連結部53の外側の端部から回転軸Yまでの距離をCとする。そして、支持梁40b及び駆動梁側連結部53の外側端部から回転軸Yまでの距離Cを可変とすることで、共振周波数を一定の30kHzに設定する。なお、駆動梁側連結部53は、4箇所存在するが、総て共通の値に設定する。また、連結箇所45aのR半径をR1=0.15mm、連結箇所55aのR半径をR2=B/2に設定する。そして、指示梁40bの幅A及び支持梁側連結部54の長さBをパラメータとして変化させ、傾角感度と最大応力の最適値を検討した。
【0140】
図25(B)は、駆動対象物30を±12degの傾角で傾動させる場合の、支持梁40bの幅A及び支持梁側連結部54の長さBの変化に対する傾角感度〔deg/V〕の変化特性を示した図である。図25(B)において、A=0.12mmの場合に最も傾角感度が高く、また、0.4mm<B<0.6mmのB=0.5mm付近の値で傾角感度が最大となっている特性が示されている。
【0153】
また、駆動対象物30と支持梁40cとの連結箇所46のR半径をR1=A/2に設定し、支持梁40cと連結部55bとの連結箇所55bのR半径をR2=B/2に設定する。
【0167】
図29は、支持梁41a、42a間の距離A及び支持梁側連結部54の長さBをパラメータとした場合の傾角感度の特性を示した図である。図29において、横軸は支持梁側連結部54の長さB〔mm〕、縦軸は傾角感度〔deg/V〕を示している。
【0168】
図29において、A、Bの値がともに大きい程、傾角感度は大きくなることが示されている。よって、図27(C)において算出した、最大応力が0.5GPa以下の範囲で、傾角感度が最大となるようなA、Bの値が、最適なパラメータ設定ということになる。

(イ)引用発明
A 上記図7及び図13の記載から、「連結部50は、途中に曲がり部を有し」ていることが見て取れる。以上の記載から、甲第1号証には、実施例1に係る発明として、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「アクチュエータを用いた光走査装置であって、
アクチュエータの共振駆動部80は、ミラー31と、支持梁40と、連結部50と、可動枠60と、駆動梁70と、駆動源20とを含み、
支持梁40は、ミラー31を両側から支持する1対の梁であり、
支持梁40は、ミラー31に連結され、ミラー31に関して対称に、回転軸Xに沿って、左右で1対となって設けられ、
連結部50は、支持梁40の先端部と可動枠60とを連結し、可動枠60の曲げ振動をねじれ振動に変換して支持梁40に伝達する部分であり、
連結部50は、支持梁40を回転軸X方向の両側から挟むように、1対となって構成され、
可動枠60は、支持梁40を回転軸Xに直交する方向の両側から挟むように対をなしており、
1つの連結部50は、支持梁40と、支持梁40の両側に存在する可動枠60の3つの部材を連結しており、
駆動梁70は、可動枠60に曲げ応力を付与する駆動力発生源であり、
駆動梁70は、回転軸Xと直交する方向に延在し、可動枠60を両側から挟むように可動枠60に連結され、1対となって設けられ、
駆動梁70は、表面に駆動源20が装着され、
連結部50は、途中に曲がり部を有し、
連結部50は、支持梁40との連結により生じる角55が、丸められ、同様に、連結部50と可動枠60の連結部分に生じる角65及び可動枠60と駆動梁70の連結部分に生じる角75を丸められ、応力を分散させている
光走査装置。」

B また、実施例3に係る図24A及び図25Aの記載から、「駆動梁73と直接連結される駆動源側連結部53との接合部外周の湾曲形状の曲率半径は、支持梁40bとを連結する支持梁側連結部54との接合部内周の湾曲形状の曲率半径より小さい」ことが見て取れる。
よって、甲第1号証には、実施例3に係る発明として、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「アクチュエータを用いた光走査装置であって、
アクチュエータは、回転軸Xの軸周りに傾動運動を行うものであり、
アクチュエータは、可動部100と、固定枠110とを備え、
固定枠100は、駆動中も固定状態にある外側の枠であり、可動部110は、固定枠100に連結支持され、可動部100は、駆動対象物30(ミラー31)と、1対の支持梁40bと、1対の連結部50bと、1対の駆動梁73とを備え、
連結部50bは、可動枠60の代わりに駆動梁73と直接連結される駆動源側連結部53と、駆動梁側連結部53と支持梁40bとを連結する支持梁側連結部54を含んで構成され、
駆動梁73と直接連結される駆動源側連結部53との接合部外周の湾曲形状の曲率半径は、支持梁40bとを連結する支持梁側連結部54との接合部内周の湾曲形状の曲率半径より小さい
光走査装置。」

イ 先願
先願(特願2010-286758号)は、平成22年12月22日の特許出願であって、平成24年7月12日に 出願公開(特開2012-133242号公報(以下「甲第2号証」という。)されたものであり、発明者は山田司であり、出願人は、ミツミ電機株式会社である。
そして、先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)記載事項
【0001】
本発明は、光走査装置に関し、特に、ミラー支持部を軸方向両側から捻れ梁により支持し、該捻れ梁の捻れにより前記ミラー支持部を軸周りに揺動させて駆動する光走査装置に関する。
【0026】
図1(A)、(B)において、本実施形態に係る光走査装置は、ミラー10と、ミラー支持部20と、捻れ梁30と、連結梁40と、第1の駆動梁50と、可動枠60と、第2の駆動梁70と、クロストーク防止リブ80と、固定枠90とを備える。捻れ梁30には、スリット31が設けられている。また、図1(A)に示すように、第1の駆動梁50は、駆動源51を備え、第2の駆動梁70は、駆動源71を備える。更に、図1(B)に示すように、ミラー支持部20の裏面にはリブ21が設けられ、第2の駆動梁70の裏面には、高調波重畳防止用リブ72が設けられている。
【0027】
図1(A)、(B)において、ミラー支持部20の表面にミラー10が支持され、ミラー支持部20は、両側にある捻れ梁30の端部に連結されている。捻れ梁30は、揺動軸を構成し、軸方向に延在してミラー支持部20を軸方向両側から支持している。捻れ梁30が捻れることにより、ミラー支持部20に支持されたミラー10が揺動し、ミラー10に照射された光の反射光を走査させる動作を行う。捻れ梁30は、連結梁40に連結支持され、第1の駆動梁50に連結されている。第1の駆動梁50、連結梁40、捻れ梁30、ミラー支持部20及びミラー10は、可動枠60に取り囲まれている。第1の駆動梁50は、可動枠60に片側が支持され、内周側に延びて連結梁40と連結している。第1の駆動梁50は、捻れ梁30とは直交する方向に、ミラー10及びミラー支持部20を挟むように、対をなして2つ設けられている。第1の駆動梁50の表面には、圧電素子の薄膜が駆動源51として形成されている。圧電素子は、印加する電圧の極性に応じて伸長した
り縮小したりするので、左側の第1の駆動梁50と右側の第1の駆動梁50とで異なる位相の電圧を交互に印加することにより、ミラー10の左側と右側で第1の駆動梁50が上下反対側に交互に振動し、捻れ梁30を揺動軸又は回転軸として、ミラー10を軸周りに揺動させることができる。このミラー10が捻れ梁30の周りに揺動する方向を、以後、水平方向と呼ぶことにする。例えば、第1の駆動梁50による水平駆動には、共振振動が用いられ、高速にミラー10を揺動駆動してよい。また、可動枠60の外部には、第2の駆動梁70の一端が連結されている。第2の駆動梁70は、第1の駆動梁50と平行に延在する梁が、隣接する梁と端部で連結され、全体としてジグザグ状の形状を有する。そして、第2の駆動梁70の他端は、固定枠90の内側に連結されている。第2の駆動梁70も、可動枠60を左右両側から挟むように、対をなして2つ設けられている。また、第2の駆動梁70の表面には、曲線部を含まない矩形単位毎に、圧電素子の薄膜が駆動源71として形成されている。矩形単位毎に隣接している駆動源71同士で、異なる極性の電圧を印加することにより、隣接する矩形梁を上下反対方向に反らせ、各矩形梁の上下動の蓄積を可動枠60に伝達することができる。そして、水平方向と直交する方向、つまり垂直方向にミラー10を揺動させることができる。例えば、第2の駆動梁70による駆動力は、非共振振動により発生させてもよい。
【0106】
図22は、実施形態1に係る光走査装置の第1の周波数変動防止構造を説明するための図である。図22(A)は、周波数変動防止構造を有する本実施形態に係る光走査装置の平面構成を示した図である。図22(A)において、第1の駆動梁50の可動枠60と接合する根元部分52が、可動枠60の内周壁面に垂直に連結されずに、可動枠60の手前で丸め構造を有する湾曲形状部53が形成され、湾曲形状部53を介して可動枠60に連結された構成となっている。つまり、第1の駆動梁50の平面形状は、可動枠60と連結梁40とを結ぶ側辺の可動枠60寄りで可動枠60に達しない位置に、内側に凹んだ湾曲形状53を有した形状となっている。

(イ)先願発明
上記図1及び図22の記載から、「連結梁40は、途中に曲がり部を有し、第1の駆動梁50と連結梁40との接合部外周の湾曲形状の曲率半径は、連結梁40と捻れ梁30との接合部内周の湾曲形状の曲率半径より小さい」ことが見て取れる。
以上の記載から、当初明細書等には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

「光走査装置は、ミラー10と、ミラー支持部20と、捻れ梁30と、連結梁40と、第1の駆動梁50と、可動枠60と、第2の駆動梁70と、クロストーク防止リブ80と、固定枠90とを備え、
ミラー支持部20の表面にミラー10が支持され、ミラー支持部20は、両側にある捻れ梁30の端部に連結され、
捻れ梁30は、揺動軸を構成し、軸方向に延在してミラー支持部20を軸方向両側から支持しており、捻れ梁30が捻れることにより、ミラー支持部20に支持されたミラー10が揺動し、ミラー10に照射された光の反射光を走査させる動作を行うものであり、
捻れ梁30は、連結梁40に連結支持され、第1の駆動梁50に連結され、
連結梁40は、途中に曲がり部を有し、
第1の駆動梁50、連結梁40、捻れ梁30、ミラー支持部20及びミラー10は、可動枠60に取り囲まれ、
第1の駆動梁50は、可動枠60に片側が支持され、内周側に延びて連結梁40と連結し、
第1の駆動梁50は、捻れ梁30とは直交する方向に、ミラー10及びミラー支持部20を挟むように、対をなして2つ設けられており、
第1の駆動梁50の可動枠60と接合する根元部分52が、湾曲形状部53を介して可動枠60に連結された構成となっており、
第1の駆動梁50と連結梁40との接合部外周の湾曲形状の曲率半径は、
連結梁40と捻れ梁30との接合部内周の湾曲形状の曲率半径より小さい、
光走査装置。」

(3)当審の判断
ア (新規性)29条1項3号及び(進歩性)29条2項について
A 本件発明1
a 本件発明1と引用発明1との対比判断
引用発明1の「ミラー31」は、本件発明1の「ミラー部」に相当する。
引用発明1の「アクチュエータを用いた光走査装置」は、ミラー31を回転軸Xを軸に駆動するものであるから、本件発明1の「ミラー部を回動させる、光学反射素子」に相当する。
引用発明1の「支持梁40」は、ミラー31を両側から支持する1対の梁であり、ミラー31に連結され、ミラー31に関して対称に、回転軸Xに沿って、左右で1対となって設けられているから、引用発明1の「支持梁40」は、本件発明1の「ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部」に相当する。
引用発明1の「連結部50」は、支持梁40の先端部と可動枠60とを連結し、支持梁40を回転軸X方向の両側から挟むように、1対となって構成されているから、引用発明1の「連結部50」は、本件発明1の「前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部」に相当する。
引用発明1の駆動梁70は、可動枠60に曲げ応力を付与する駆動力発生源であり、回転軸Xと直交する方向に延在し、可動枠60を両側から挟むように可動枠60に連結され、1対となって設けられ、表面に駆動源20が装着されているから、引用発明1の、表面に駆動源20が装着されている1対の駆動梁70は、本件発明1の「ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部」に相当する。
引用発明1の1対の「連結部50」は、支持梁40の先端部と可動枠60とを連結していることと、本件発明1の「一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し」ていることは、共に「一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と他の部分との間に架かる一対の梁部を有し」ている点で共通する。
引用発明1において、「連結部50は、途中に曲がり部を有し」ていることは、本件発明1の「前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し」ていることに相当する。
引用発明1の「連結部50は、支持梁40との連結により生じる角55が、丸められ、同様に、連結部50と可動枠60の連結部分に生じる角65及び可動枠60と駆動梁70の連結部分に生じる角75を丸められ」ていることと、本件発明1の「前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく」なっていることとは、共に「前記一対の梁部はそれぞれ、前記他の部分と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく」ている点で共通する。

引用発明1の1対の「駆動梁70は、可動枠60に曲げ応力を付与する駆動力発生源であり、」「連結部50は、支持梁40の先端部と可動枠60とを連結し、可動枠60の曲げ振動をねじれ振動に変換して支持梁40に伝達する」ことで、ミラー31を回転軸Xで回転駆動するものであるから、引用発明1の1対の「駆動梁70」は、本件発明1の「前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる」こととは、共に「前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる」点で共通する。

以上の相当関係から、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点1)
「ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と他の部分との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる、光学反射素子。」

(相違点1)
本件発明1は、「前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部」を備えるのに対し、引用発明1は、横梁部に相当する1対の連結部50をその両端で連結する可動枠60を備えている点で相違する。
(相違点2)
引用発明1の駆動梁70は、可動枠60に曲げ応力を付与し、連結部50は、支持梁40の先端部と可動枠60とを連結し、可動枠60の曲げ振動をねじれ振動に変換して支持梁40に伝達するものであることを踏まえると、本件発明1の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせているのに対し、引用発明1の駆動梁70は、連結部50の両端を、曲げ振動する可動枠60に連結された状態で、連結部50に曲げ変位を生じさせている点で相違する。
(相違点3)
本件発明1は、「前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく」なっているのに対し、引用発明1は、「連結部50は、支持梁40との連結により生じる角55が、丸められ、同様に、連結部50と可動枠60の連結部分に生じる角65及び可動枠60と駆動梁70の連結部分に生じる角75を丸められ」ており、「連結部50と可動枠60の連結部分に生じる角65」は、固定部との連結部に生じる角ではなく、また、丸められた角65と角75の曲率半径の大小は不明である点で相違する。

相違点1について以下検討する。
甲第1号証には、発明が解決しようとする課題として、【0008】に「 そこで、本発明は、小型化の要請に応えつつ、内部応力を十分に分散させて破断等のおそれ無く安定動作させることができるアクチュエータ及びこれを用いた光走査装置を提供することを目的とする。」と記載され、課題を解決するための手段として、【0010】に「これにより、駆動力を付与する対象が可動枠であり、かつ可動枠から順次弾性を有する梁構造の連結部、支持梁を介してねじれ振動を伝達するため、固定枠に連結された応力の集中する箇所を無くすことができ、内部応力を複数箇所に分散することができるので、アクチュエータの耐性を高めることができる。」と記載されている。
よって、引用発明1は、駆動力を可動枠に可動枠から連結部に、連結部から支持梁へと伝達することで、内部応力を複数箇所に分散し、固定枠に連結された応力の集中する箇所を無くす発明であるから、引用発明1において、固定枠と連結部50とを直接連結するするように代えること、つまり相違点1に係る構成を採用することは、内部応力を分散することにならず、固定枠に連結された応力の集中をもたらすことになるため、当業者が容易に採用し得ることとはいえない。
したがって、相違点2,3について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

b 本件発明1と引用発明2との対比判断
引用発明2の「駆動対象物30(ミラー31)」は、本件発明1の「ミラー部」に相当する。
引用発明2の「アクチュエータを用いた光走査装置」は、ミラー31を回転軸Xの軸周りに傾動運動ものであるから、本件発明1の「ミラー部を回動させる、光学反射素子」に相当する。
引用発明2の「1対の支持梁40b」、「1対の連結部50b」、「1対の駆動梁73」、「固定枠100」は、それぞれ本件発明1の「前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部」、「前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部」、「前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部」、「固定部」に相当する。

引用発明2において、「固定枠100は、駆動中も固定状態にある外側の枠であり、可動部110は、固定枠100に連結支持され、可動部100は、駆動対象物30(ミラー31)と、1対の支持梁40bと、1対の連結部50bと、1対の駆動梁73とを備え、」ている。ここで、駆動対象物30(ミラー31)と、1対の支持梁40bと、1対の連結部50bと、1対の駆動梁73とを備える可動部100は、固定枠100に連結支持されているから、ミラー31から固定枠100までの連結支持の関係は、ミラー31、支持梁40b、連結部50b、駆動梁73、固定枠100の順の連結支持の関係である。
この連結支持の関係を踏まえると、引用発明2の「連結部50bは、可動枠60の代わりに駆動梁73と直接連結される駆動源側連結部53と、駆動梁側連結部53と支持梁40bとを連結する支持梁側連結部54を含んで構成され」ていることと、本件発明1の「前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し」ていることは、共に「前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と他の部分との間に架かる一対の梁部を有し」ている点で共通する。
引用発明2の「駆動梁73と直接連結される駆動源側連結部53との接合部外周の湾曲形状の曲率半径は、支持梁40bとを連結する支持梁側連結部54との接合部内周の湾曲形状の曲率半径より小さい」ことと、本件発明1の「前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく」なっていることとは、共に「前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し前記一対の梁部はそれぞれ、前記他の部分と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく」ている点で共通する。

引用発明2において、「連結部50bは、可動枠60の代わりに駆動梁73と直接連結される駆動源側連結部53と、駆動梁側連結部53と支持梁40bとを連結する支持梁側連結部54を含んで構成され」ているから、「1対の駆動梁73」は、「1対の連結部50b」を直接駆動し、ミラー31を回転軸Xの軸周りに傾動運動を行うものである。
よって、引用発明2の「1対の駆動梁73」は、本件発明1の「前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる」こととは、共に「前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる」点で共通する。
以上の相当関係から、本件発明1と引用発明2との一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点2)
「ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と他の部分との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し前記一対の梁部はそれぞれ、前記他の部分と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる、光学反射素子。」

(相違点4)
固定部が、本件発明1は、「前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する」のに対し、引用発明2の「固定枠100は、」は、「1対の駆動梁73」を介して「1対の連結部50b」を支持している点で相違する。
(相違点5)
引用発明2の、「1対の駆動梁73」は、「1対の連結部50b」を直接駆動し、ミラー31を回転軸Xの軸周りに傾動運動を行うものであることを踏まえると、本件発明1の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせているのに対し、引用発明2は、「連結部50b」の両端を、曲げ振動する駆動梁73に連結された状態で曲げ変位を生じさせている点で本件発明1と相違する。
(相違点6)
本件発明1は、「前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく」なっているのに対し、引用発明1は、「駆動梁73と直接連結される駆動源側連結部53との接合部外周の湾曲形状の曲率半径は、支持梁40bとを連結する支持梁側連結部54との接合部内周の湾曲形状の曲率半径より小さい」ものであり、「駆動梁73と直接連結される駆動源側連結部53との接合部外周の湾曲形状」は、固定枠100との連結部に生じる湾曲形状ではない点で相違する。

相違点4について以下検討する。
引用発明2は、引用発明1において、可動枠60を省いた構成を有するものである。
そして、甲第1号証には、【0134】に「このように、回転軸Xと垂直に延在する支持梁側連結部54の長さを大きくし、支持梁側連結部54と駆動梁73とを駆動梁側連結部53で連結し、可動枠60を省くような構成としてもよい。この場合、駆動梁73で発生させられる傾動力は、連結部50bの駆動梁側連結部53に直接的に伝達される。駆動梁側連結部53は、駆動梁73の傾動力を支持梁側連結部54に伝達することができるとともに、応力を低減させる梁構造となっているので、応力分散を適切に行うことができる。また、可動枠60を省くことにより、より小型で省スペースのアクチュエータを構成することができる。」との記載がある。
引用発明2の「固定枠100は、」は、「1対の駆動梁73」を介して「1対の連結部50b」を支持しているところ、引用発明2において、固定枠100と連結部50bとを直接連結するするように代えることは、内部応力を分散することにならず、固定枠に連結された応力の集中をもたらすことになるため、当業者が容易に採用し得ることとはいえない。
したがって、相違点5、6について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

B 本件発明2、3、5、7、9、10
a 本件発明2、3、5、7、9、10と引用発明1との対比判断
本件発明2、3、5、7、9、10は、本件発明1の全ての構成を備えるものであるから、上記「A」「a」で検討したのと同様の理由により、本件発明2、3、5、7、9、10は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

b 本件発明2、3、5、7、9、10と引用発明2との対比判断
本件発明2、3、5、7、9、10は、本件発明2の全ての構成を備えるものであるから、上記「A」「b」で検討したのと同様の理由により、本件発明2、3、5、7、9、10は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

C 本件発明11
a 本件発明11と引用発明1との対比判断
本件発明11は、本件発明1において「一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し」ている特定がされてない発明に相当する。
してみると、「一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し」ている点は、引用発明1も有していることから、本件発明11と引用発明1との対比において、相違点とはならないが、相違点1ないし3と同じ相違点がある。
そして、相違点1についての判断は、上記のとおりであり、引用発明1において、相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易に採用し得ることとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明11は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

b 本件発明11と引用発明2との対比判断
本件発明11は、本件発明1において「一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し」ている特定がされてない発明に相当する。
してみると、「一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し」ている点は、引用発明2も有していることから、本件発明11と引用発明2との対比において、相違点とはならないが、相違点4ないし6と同じ相違点がある。
そして、相違点4についての判断は、上記のとおりであり、引用発明2において、相違点4に係る構成を採用することは、当業者が容易に採用し得ることとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明11は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

D 小括((新規性)29条1項3号及び(進歩性)29条2項について)
上記AないしCのとおり、本件発明1ないし11は、引用発明1又は引用発明2に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、本件発明1ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。

また、上記AないしCのとおり、本件発明1ないし11は、引用発明1又は引用発明2との対比において、相違点を有するものであるから、本件発明1ないし11は、引用発明1であるとはいえず、また引用発明2であるともいえない。よって、本件発明1ないし11に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものではない。。

イ (拡大先願)29条の2について
A 本件発明1と先願発明との対比判断
先願発明において、「ミラー支持部20の表面にミラー10が支持され」ており、先願発明の「ミラー支持部20及びミラー10」は、本件発明1の「ミラー部」に相当する。
先願発明において、「捻れ梁30は、揺動軸を構成し、軸方向に延在してミラー支持部20を軸方向両側から支持して」いるから、先願発明の「捻れ梁30」は、本件発明1の「前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部」に相当する。
先願発明において、「捻れ梁30は、連結梁40に連結支持され、第1の駆動梁50に連結され、」「第1の駆動梁50は、可動枠60に片側が支持され、内周側に延びて連結梁40と連結し、」「捻れ梁30とは直交する方向に、ミラー10及びミラー支持部20を挟むように、対をなして2つ設けられて」いる配置関係になっている。
この配置関係を踏まえると、先願発明の、捻れ梁30とは直交する方向に対をなして2つ設けられている第1の駆動梁50に連結している「連結梁40」は、本件発明1の「前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部」に相当する。
先願発明において、前記配置関係及び「捻れ梁30は、揺動軸を構成し、軸方向に延在してミラー支持部20を軸方向両側から支持しており、捻れ梁30が捻れることにより、ミラー支持部20に支持されたミラー10が揺動し、ミラー10に照射された光の反射光を走査させる動作を行うものであ」ることを踏まえると、先願発明の対をなして2つ設けられている「第1の駆動梁50」は、本件発明1の「前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部」に相当する。
先願発明において、対をなして2つ設けられている「捻れ梁30は、連結梁40に連結支持され、第1の駆動梁50に連結され」ており、「第1の駆動梁50は、捻れ梁30とは直交する方向に、ミラー10及びミラー支持部20を挟むように、対をなして2つ設けられて」いるから、それぞれの捻れ梁30に連結する連結梁40の両端は、対をなして2つ設けられている第1の駆動梁50に連結されている。よって、先願発明の「第1の駆動梁50」と、本件発明1の「前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部」とは、共に、「前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する他の部分」である点で共通する。

先願発明の「連結梁40」は、「軸方向に延在してミラー支持部20を軸方向両側から支持して」いる「捻れ梁30」と、対をなして2つ設けられている「第1の駆動梁50」とを連結している梁を有しているから、先願発明の「連結梁40」は、本件発明1の「前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し」ている構成とは、共に「前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記他の部分との間に架かる一対の梁部を有し」ている点で共通する。
先願発明において、「連結梁40は、途中に曲がり部を有し」ていることは、本件発明1の「前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し」ていることに相当する。
先願発明において、「第1の駆動梁50と連結梁40との接合部外周の湾曲形状の曲率半径は、連結梁40と捻れ梁30との接合部内周の湾曲形状の曲率半径より小さい」ことと、本件発明1の「前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さ」いこととは、共に、「前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記他の部分と続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さ」い点で共通する。
先願発明の、「対をなして2つ設けられて」いる「第1の駆動梁50」が駆動し、「捻れ梁30が捻れることにより、ミラー支持部20に支持されたミラー10が揺動し、ミラー10に照射された光の反射光を走査させる動作を行う」「光走査装置」は、本件発明1の「前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる、光学反射素子」とは、共に「前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる、光学反射素子」に相当する。

(一致点3)
「ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する他の部分と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と他の部分との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、
前記一対の梁部はそれぞれ、前記他の部分と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる、光学反射素子。」

(相違点7)
一対の横梁部を支持する他の部分が、本件発明1では、「固定部」であるのに対し、先願発明では、「第1の駆動梁50」である点で相違し、その相違によって、外周の曲率半径を有する箇所である他の部分も同様に相違する。

(相違点8)
本件発明1は、「前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて」いるのに対し、先願発明は、「対をなして2つ設けられて」いる「第1の駆動梁50」は、「連結梁40」の両端を振動する「第1の駆動梁50」に連結した状態で、「連結梁40」のそれぞれに曲げ変位を生じさせている点で相違する。

B 本件発明2、3、5、7、9、10と先願発明との対比判断
本件発明2、3、5、7、9、10は、本件発明1の全ての構成を備えるものである。そして、上記「A」で検討したとおり、本件発明1と先願発明とは相違点を有するものであるから、本件発明2、3、5、7、9、10は、先願発明と同一ではない。

C 本件発明11と先願発明との対比判断
本件発明11は、本件発明において「一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し」ている特定がされてない発明に相当する。
そして、「一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し」ている点は、先願発明も有していることから、本件発明11と先願発明との対比において、相違点にはならないが、相違点7、8と同じ相違点がある。
よって、本件発明11は、先願発明と同一ではない。

D 小括((拡大先願)29条の2について )
上記AないしCのとおり、本件発明1ないし11は、先願発明と同一ではないから、本件発明1ないし11に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反するものではない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1、2、3、5、7、9、10、11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、3、5、7、9、10、11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
光学反射素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイやヘッドマウントディスプレイ等の画像投影装置に用いられる光学反射素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MicroElectroMechanicalSystems(MEMS)技術を用いて、レーザ光を走査しスクリーン等に画像を投影する光学反射素子が開発されている。画像を投影するには、その光学反射素子を用いてレーザ光を2次元に走査する必要がある。光学反射素子を駆動する原理として、例えば圧電アクチュエータが用いられる。
【0003】
図10は従来の光学反射素子1の斜視図である。光学反射素子1は、ミラー部9と、ミラー部9を支持する固定部3と、一対の振動梁4と、ミラー部9を回動駆動させる圧電体層10とを有する。振動梁4はそれぞれ、ミラー部9が固定部3に対して回動可能なように、ミラー部9と固定部3とを連結している。圧電体層10に通電すると圧電体層10が伸縮する。この伸縮によって、振動梁4が捩れ変形してミラー部9が回動する。
【0004】
また、各振動梁4は、ミラー部9から延出するトーションバー6と、駆動部材7と、一対の弾性部材8とを有する。駆動部材7はトーションバー6のミラー部9と反対側の端に接続されている。一対の弾性部材8は、駆動部材7よりもミラー部9寄りに設けられ、互いにミラー部9の回動中心軸を介して対向している。また弾性部材8の第1端は駆動部材7に接続され、第2端は固定部3の一部に接続されている。なお、この出願に関する圧電アクチュエータを開示するものとして、例えば、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4285568号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、大きな変位量かつ高周波駆動を実現できる小型の光学反射素子である。本発明の一の態様に係る光学反射素子は、ミラー部と、一対の接合部と、一対の振動部と、複数の駆動部と、固定部とを有する。接合部はそれぞれ、ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続された第1端と、この第1端の反対側の第2端とを有し、第1軸方向に伸びている。振動部はそれぞれ、接合部の一方の第2端に接続された中央部を有する。複数の駆動部はそれぞれ、一対の振動部のそれぞれに設けられ、ミラー部を回動させる。固定部には一対の振動部の各両端が連結されている。接合部の第1軸に直交する方向の長さとして定義される梁幅は、一対の振動部のそれぞれの梁幅より大きい。
また、本発明の他の態様に係る光学反射素子は、ミラー部と、前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる。
【0007】
また、本発明のさらに他の態様に係る光学反射素子は、ミラー部と、前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる。
この構成により、接合部に掛かる応力が低減され機械的強度を高めることができるので、ミラー部を大きな回動角(変位量)でかつ高周波駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の実施の形態1による光学反射素子の平面図である。
【図2】図2は図1に示す光学反射素子の2-2線における断面図である。
【図3】図3は図1に示す光学反射素子の共振周波数と機械振れ角の関係を示す図である。
【図4】図4は図1に示す光学反射素子における電極膜の配置図である。
【図5】図5は図1に示す光学反射素子の5-5線における断面図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態2における光学反射素子の振動部を示す部分拡大図である。
【図7A】図7Aは本発明の実施の形態2における光学反射素子の他の振動部を示す部分拡大図である。
【図7B】図7Bは本発明の実施の形態2における光学反射素子のさらに他の振動部を示す部分拡大図である。
【図7C】図7Cは本発明の実施の形態2における光学反射素子の別の振動部を示す部分拡大図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態3における光学反射素子の平面図である。
【図9】図9は図8に示す光学反射素子の振動部の拡大図である。
【図10】図10は従来の光学反射素子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態の説明に先立ち、従来の光学反射素子1における課題を簡単に説明する。投影画像の解像度を高めるためには、ミラー部9の回動角度を維持しながら駆動周波数を高くして光束(光点)の走査速度を高める必要がある。その際、トーションバー6に応力が集中するため、例えば、トーションバー6を長くして応力を分散する必要がある。その結果、光学反射素子1が大きくなり、走査速度が低下する。
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態による光学反射素子を説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による光学反射素子11の平面図である。光学反射素子11は、ミラー部12と、一対の接合部13A、13Bと、一対の振動部14、15と、複数の駆動部24A,24B、24C、24Dと、固定部16とを有する。接合部13A、13Bは、第1軸17Aに沿った方向に伸び、ミラー部12を挟むように対向している。すなわち、接合部13A、13Bの第1端はミラー部12の対向する位置でミラー部12に接続されてミラー部12を支持している。振動部14、15は中央部で接合部13A、13Bを挟むように配置され、これらの第2端に接続されている。振動部14、15は、第1軸17Aに直交する第2軸17Bに沿って伸びている。枠状の固定部16は振動部14、15の両端に連結され、振動部14、15を支持している。なお固定部16は振動部14、15を支持していれば2つ以上の部品で構成してもよく枠状でなくてもよい。
【0012】
駆動部24A、24Bは振動部14の中央部を挟んだ互いに反対側に設けられ、駆動部24C、24Dは振動部15の中央部を挟んだ互いに反対側に設けられている。駆動部24A?24Dは第1軸17Aを中心軸としてミラー部12を回動させる。駆動部24A?24Dは、第2軸17B方向に延伸された直線形状、あるいは湾曲した形状を有している。
【0013】
次に、駆動部24A?24Dの構成について図2を参照しながら説明する。図2は、図1における2-2線の断面図である。振動部14、15を構成する駆動部24A、24Cは、最下層として光学反射素子11の全体に亘って一体に形成されたシリコン基板18を有し、シリコン基板18上に絶縁膜19が形成されている。絶縁膜19の上には下部電極膜20が設けられ、下部電極膜20の上には圧電膜21が形成され、圧電膜21の上には上部電極膜22が形成されている。このように、圧電体層23は、絶縁膜19と、下部電極膜20と、圧電膜21と、上部電極膜22とで構成されている。
【0014】
下部電極膜20、上部電極膜22は、白金、金、チタン、タングステンなどの金属膜で形成され、圧電膜21はチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr1-x,Tix)O3)等の圧電材料によって形成されている。これらは蒸着、ゾルゲル、CVD、スパッタ法等によって薄膜として形成することができる。なお、駆動部24B、24Dも同様に構成されている。すなわち、駆動部24A?24Dは、下部電極膜20と圧電膜21と上部電極膜22を順に積膜して形成されている。
【0015】
下部電極膜20と上部電極膜22との間に所定の電圧を印加することにより、逆圧電効果によって圧電膜21が圧電膜21の平面方向に伸縮動作する。そのため、圧電膜21を含む駆動部24A?24Dは、厚み方向に曲げ変位を起こす。
【0016】
駆動部24Aに与える電圧を、接合部13Aを挟んで対向する駆動部24Bに与える電圧に対して逆位相にすることにより、駆動部24A、24Bが逆方向へ曲がる。その結果、駆動部24A、24Bに挟まれた接合部13Aには捩れ変位が生じる。
【0017】
接合部13Bにも接合部13Aと同様に、駆動部24C、24Dに位相が逆方向の電圧を印加することにより捩れ変位が生じる。駆動部24Aと駆動部24Cに印加する電圧の位相を同位相にし、駆動部24B、24Dに印加する電圧の位相を同位相とすることにより、接合部13A、13Bが同位相で捩れ変位を起こす。その結果、ミラー部12が第1軸17Aの周りに回動する。
【0018】
第1軸17A周りに回動動作を起こす固有振動モードを利用することで、ミラー部12を大きく変位させることが可能になる。そのため、駆動部24A?24Dに共振周波数と同期した駆動周波数を印加させることで、第1軸17Aを中心軸としてミラー部12を大きく変位させることができる。
【0019】
このようにミラー部12を変位させると、接合部13A、13Bには捩れ変位が起こることにより、捩れ応力が発生する。ミラー部12の変位量が増大するに伴って、接合部13A、13Bに掛かる捩れ応力も増加する。この捩れ応力が接合部13A、13Bの機械的強度を越えると、接合部13A、13Bにはクラック破壊などが起こり、ミラー部12を変位動作させることができなくなる。
【0020】
一般的に、ミラー部12の変位量を増大させるには、例えば、接合部13A、13Bの長さを第1軸17A方向に延伸して、接合部13A、13Bに掛かる捩れ応力を低減する。しかしながら、接合部13A、13Bを第1軸17A方向に延伸させると光学反射素子11が大きくなり、前述のように走査速度である共振周波数が低下する。
【0021】
これに対し光学反射素子11では、接合部13A、13Bの梁幅W1が、振動部14、15の梁幅W2より大きい。梁幅W1は、接合部13A、13Bの第1軸17Aに直交する方向の長さとして定義される。一方、梁幅W2は、振動部14、15の第1軸17Aに沿った方向の長さとして定義される。
【0022】
この寸法関係により、接合部13A、13Bでは、捩れ変位よりも、駆動部24A?24Dによる曲げ変位が支配的になる。すなわち、接合部13A、13Bの中央部に掛かっていた捩れ応力よりも、接合部13A、13Bのそれぞれの全体に掛かる曲げ応力が支配的となる。このように接合部13A、13B全体に応力が分散されるため、接合部13A、13Bを構成する材料の機械的強度を越えることなくミラー部12の変位量を確保することができる。
【0023】
なお、接合部13A、13Bの梁幅を広くすることで、回動体であるミラー部12と接合部13A、13Bの合計質量が増加する。その結果、ミラー部12の上下振動モードの共振周波数は低下する。一方、第1軸17Aに平行な接合部13A、13Bの端部からミラー部12の第2軸17B方向の端部までの距離は相対的に短くなる。そのため、ミラー部12の第1軸17A周りにおける慣性モーメントが相対的に小さくなる。その結果、第1軸17A周りを回動する振動モードの共振周波数は増加する。この両者のバランスを調整することによって振動モードの共振周波数を増加させることができる。
【0024】
図3は、振動部14、15の梁幅W2に対し、接合部13A、13Bの梁幅W1を増減させたことによる共振周波数とミラー部12の機械振れ角の関係を示している。横軸は共振周波数、縦軸は機械振れ角を示している。接合部13A、13Bの梁幅W1を振動部14、15の梁幅W2である170μmに対し50μm狭くすると、共振周波数と機械振れ角が低下する。一方、接合部13A、13Bの梁幅W1を振動部14、15の梁幅W2である170μmに対し100μm広くした場合には、共振周波数と機械振れ角が共に増加しトレードオフの関係を逸脱できていることが分かる。このように、振動部14、15の梁幅W2に対し、接合部13A、13Bの梁幅W1を大きくすることで、共振周波数と機械振れ角を同時に増大させることができる。
【0025】
次に図4を参照しながら、光学反射素子11における好ましい構造を説明する。図4は光学反射素子11における上部電極膜22の配置図である。
【0026】
前述のように、駆動部24A?24Dには、振動部14、15に曲げ変位を起こすための圧電体層23が設けられている。そのため、圧電体層23を利用して振動部14、15の駆動状態をモニタリングする機能を同時に持たせてもよい。つまり、圧電膜21は圧電効果を有するため、駆動部24A?24Dの曲げ変位に伴って、電荷を発生する。また、曲げ変位量に応じた電荷量が発生するため、この電荷をモニタリングすることで、振動部14、15の駆動状態を精度よくモニタリングすることが可能となる。
【0027】
但し、振動部14、15の駆動を阻害することなく駆動状態を検知し、且つ圧電膜21に歪みが生じ易い箇所に電極膜を配置することが必要となる。駆動部24A?24Dが曲げ変位を起こすため、固定部16の周辺には歪みが集中し易い。そのため、図4に示すように、少なくとも固定部16と振動部14、15との境界線上に、上部電極膜22を設けることが望ましい。すなわち、固定部16と振動部14、15との境界にモニタ部を構成する上部電極膜22が形成されていることが好ましい。
【0028】
次に図5を参照しながら、光学反射素子11における別の好ましい構造を説明する。図5は図1に示す光学反射素子の5-5線における断面図であり、接合部13Aの断面を示している。
【0029】
このように、接合部13A、13Bの梁幅W1を、接合部13A、13Bの梁厚tより大きくすることが望ましい。梁厚tは、第1軸17Aと第2軸17Bで構成される平面と直交する方向の長さで定義される。接合部13A、13Bの梁幅W1が、梁厚t以下の場合、接合部13A、13Bに掛かる捩れ応力は、接合部13A、13Bの側壁部に集中し易くなり、梁幅W1を広くして平面方向に応力を分散させた効果が得られない。また、シリコン基板18を用いた場合、シリコンの加工にはボッシュプロセスを用いることが多い。しかし、ボッシュプロセスを用いると側壁にはスキャロップと呼ばれる凹凸形状が発生する。この凹凸部に応力が集中すると機械強度が低下してしまう。以上のことから、接合部13A、13Bの梁幅W1を梁厚tよりも大きくしておくことが望ましい。
【0030】
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2における光学反射素子31の振動部32を示す部分拡大図である。光学反射素子31は、ミラー部34と、接合部33と、振動部32と、固定部35とを有する。光学反射素子31は振動部32が曲率を有している点で実施の形態1における光学反射素子11と異なっている。それ以外の基本的な構成は光学反射素子11と同様である。すなわち、図示していないが、接合部33はミラー部34の対向する位置に一対で設けられ、振動部32は一対で設けられ、それぞれの中央部で接合部33に接続されている。振動部32の両端は固定部35に接続されている。接合部33の第1軸17Aに直交する方向の長さとして定義される梁幅は、振動部32の梁幅より大きい。
【0031】
振動部32は、接合部33に接続された中央部と固定部35との間に一対の梁部32Aを有し、梁部32Aは湾曲形状を有している。なお振動部32の梁幅は、梁部32Aの湾曲形状の外周と内周との間の長さとして定義される。
【0032】
振動部32上には、圧電膜を有する駆動部(図示せず)が設けられている。この圧電膜に電圧を印加することにより、逆圧電効果によって圧電膜が圧電膜の平面方向に伸縮し、振動部32が厚み方向に曲げ変位を起こす。振動部32の曲げ変位により、接合部33と振動部32の接続箇所付近において曲げ応力が発生する。しかしながら、振動部32の梁部32Aが湾曲形状を有していることにより、接合部33と振動部32の接続箇所近傍の応力を分散することができる。その結果、機械強度が向上し、ミラー部34の振れ角を大きくすることができる。
【0033】
次に、湾曲した梁部32Aの図6とは異なる形状について、図7A?図7Cを参照しながら説明する。図7A?図7Cは本実施の形態における他の振動部32を示す部分拡大図である。
【0034】
図7A?図7Cに示す振動部32では、梁部32Aが固定部35により近い第1湾曲部36と、接合部33に接続された中央部により近い第2湾曲部37とで構成されている。
【0035】
直線形状を有する実施の形態1における振動部14、15では、振動部14、15と固定部16との接続箇所において、振動部14、15の曲げ変位に伴った応力が集中しやすい。これに対し、振動部32と固定部35との接続箇所である第1湾曲部36を、図7A?図7Cのようにある曲率半径を有した形状とすることで固定部35と第1湾曲部36との接合箇所を応力分散することができる。
【0036】
また図7Bに示すように、第1湾曲部36の曲率半径と第2湾曲部37の曲率半径とが異なった構成としても良い。ここで、第1湾曲部36の曲率半径をr、第2湾曲部37の曲率半径をRとしている。
【0037】
接合部33に大きな捩れ変位を効率よく発生させるには、接合部33に対する駆動部の直交成分の割合を、接合部33に可能な限り近い箇所に多く設けることが効果的である。つまり、第1湾曲部36の曲率半径rが第2湾曲部37の曲率半径Rと同じかより大きい場合、接合部33に対する駆動部の直交成分の多くが接合部33から離れた第1湾曲部36上に構成される。そのため、接合部33に捩れ変位を起こす駆動効率が低下してしまう。
【0038】
そこで、接合部33に対する駆動部の直交成分の多くを、接合部33に近い第2湾曲部37上に占めるように、第1湾曲部36の曲率半径rを第2湾曲部37の曲率半径Rより小さくすることが好ましい。なお、第1湾曲部36、第2湾曲部37の曲率半径の大小関係については、図7Aに示す振動部32にも適用可能である。
【0039】
また、駆動部38を構成する圧電体層23(図2参照)を、第1湾曲部36上に設けるよりも、少なくとも第2湾曲部37上に設けることが好ましい。この配置により接合部33の捩れ変位を効率よく大きくすることができる。
【0040】
なお、第1湾曲部36の曲率半径rが大きいと、曲率半径rに伴って素子が第1軸17A方向に拡大してしまう。ここで、図7Bに示すように、第1湾曲部36を第1軸17Aに沿った方向にミラー部34に向かって凸な形状とし、第2湾曲部37を第1軸17A方向に固定部35に向かって凸な形状とすることが好ましい。すなわち、第1湾曲部36と第2湾曲部37の湾曲方向が異なり、逆方向に突出していることが好ましい。この形状により、ミラー部34に近い位置に固定部35との接続位置を設けることができるため、固定部35と第1湾曲部36との接合箇所を応力分散しながら第1湾曲部36の曲率半径rの幅だけ光学反射素子31を小型化することができる。
【0041】
また、図7Cに示すように、第2湾曲部37を第1湾曲部36により近い側と接合部33により近い側とで曲率半径が異なる構成としても良い。振動部32の曲げ変位により、接合部33と振動部32の接続箇所付近において曲げ応力が発生する。この応力を分散するには接続箇所近傍の曲率半径を大きくする必要がある。第2湾曲部37内の第1湾曲部36に近い側に掛かる応力は比較的小さい。このため、第2湾曲部37の曲率半径が一定であると光学反射素子31が大きくなる。そこで、第2湾曲部37の第1湾曲部36に近い側の曲率半径を接合部33に近い側に対して小さくすることで、光学反射素子31の機械強度を確保したまま小型化することができる。
【0042】
また、第1湾曲部36上には駆動用とは異なる圧電膜39を設け、振動部32の駆動状態をモニタリングする機能を同時に持たせてもよい。圧電膜39は固定部35と振動部32との境界に形成されたモニタ部として機能する。
【0043】
圧電膜39は圧電効果を有するため、振動部32の曲げ変位に伴って、電荷を発生する。また、曲げ変位量に応じた電荷量が発生するため、この電荷をモニタリングすることで、振動部32の駆動状態を精度よくモニタリングすることが可能となる。但し、振動部32の駆動を阻害することなく駆動状態を検知し、且つ歪みが生じ易い箇所に圧電膜39を配置することが必要となる。振動部32が曲げ変位を起こすため、固定部35と第1湾曲部36との境界線周辺に歪みが集中し易い。そのため、少なくとも固定部35と第1湾曲部36との境界線上に圧電膜39を設けることが望ましい。
【0044】
(実施の形態3)
図8は本発明の実施の形態3における光学反射素子41の平面図である。光学反射素子41は、固定部42と、一対の第1振動部43A、43Bと、可動枠44と、一対の第2振動部45A、45Bと、一対の接合部46A、46Bと、ミラー部47とを有している。
【0045】
固定部42の内側に対向するように第1振動部43A、43Bの第1端が接続され、第2端が可動枠44と接続されている。すなわち第1振動部43A、43Bは可動枠44を支持している。可動枠44の内側における第2軸17Bに沿った方向に対向する両辺に、第2振動部45A、45Bが接続されている。接合部46A、46Bの第1端は回動可能なミラー部47の対向する位置に接続され、第1端の反対側の第2端は第2振動部45A、45Bの中央部に接続されている。第1振動部43A、43Bは第2軸17B周りに可動枠44を回動させ、第2振動部45A、45Bは第2軸17Bと直交する第1軸17A周りにミラー部47を回動させる。
【0046】
図2に示した実施の形態1、2と同様に、第1振動部43A、43Bは、最下層として一体に形成されたシリコン基板18を有し、シリコン基板18上に絶縁膜19が形成されている。絶縁膜19の上には下部電極膜20が設けられ、下部電極膜20の上には圧電膜21が形成され、圧電膜21の上には上部電極膜22が形成されている。下部電極膜20、圧電膜21、上部電極膜22は駆動部として機能する。
【0047】
図9は第1振動部43Aの一部拡大図である。第1振動部43Aは、平行に設けられ隣り合った複数の連結部48と、連結部48のうちの2つを繋ぐ折り返し部49を有し、複数の連結部48と、複数の折り返し部49によってミアンダ形状に形成されている。第1振動部43Aの下部電極膜20と上部電極膜22との間に所定の電圧を印加すると、圧電膜21に所定の電界が掛かり、逆圧電効果によって圧電膜21が圧電膜21の平面方向に伸縮動作をする。このとき、圧電膜21で発生した平面方向の伸縮動作が第1振動部43Aの厚み方向のモーメントとして働くことにより、第1振動部43Aは厚み方向に撓み振動する。このとき、第1振動部43Aの連結部48に対し、隣接した連結部48にそれぞれ逆位相の電圧を印加することによって、連結部48の撓みが重畳され、可動枠44は第2軸17B周りに回動する。
【0048】
第2振動部45A、45Bとして、実施の形態1で説明した振動部14、15または実施の形態2で説明した振動部32を用いることにより、第1軸17A周り、および第2軸17B周りに、ミラー部47は同時に大きな変位で回動することができる。そのため、ミラー部47に、例えばレーザ光を照射して、2次元平面上に鮮明な画像などを投影することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の光学反射素子は、スクリーンに鮮明な画像を投影することができ、小型プロジェクタやヘッドマウントディスプレイに利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
11,31,41光学反射素子
12,34,47ミラー部
13A,13B,33,46A,46B接合部
14,15,32振動部
16,35,42固定部
17A第1軸
17B第2軸
18シリコン基板
19絶縁膜
20下部電極膜
21,39圧電膜
22上部電極膜
23圧電体層
24A,24B,24C,24D,38駆動部
32A梁部
36第1湾曲部
37第2湾曲部
43A,43B第1振動部
44可動枠
45A,45B第2振動部
48連結部
49折り返し部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、
前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる、光学反射素子。
【請求項2】
前記一対の梁部はそれぞれ、
前記固定部により近い第1湾曲部と、
前記縦梁部により近い第2湾曲部と、を有する、請求項1記載の光学反射素子。
【請求項3】
前記第1湾曲部の曲率半径が前記第2湾曲部の曲率半径よりも小さい、
請求項2記載の光学反射素子。
【請求項4】
ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、
前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記一対の梁部はそれぞれ、
前記固定部により近い第1湾曲部と、
前記縦梁部により近い第2湾曲部と、を有し、
前記第2湾曲部の曲率半径は、前記第1湾曲部により近い側と前記縦梁部により近い側とで異なる、光学反射素子。
【請求項5】
前記第1湾曲部と前記第2湾曲部の湾曲方向が異なる、請求項2記載の光学反射素子。
【請求項6】
ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、
前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記一対の梁部はそれぞれ、
前記固定部により近い第1湾曲部と、
前記縦梁部により近い第2湾曲部と、を有し、
前記駆動部は前記第2湾曲部上に形成されている、光学反射素子。
【請求項7】
前記駆動部は、下部電極膜と圧電膜と上部電極膜を順に積膜して形成されている、請求項1記載の光学反射素子。
【請求項8】
ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部のそれぞれは湾曲形状を有し、
前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記固定部と前記横梁部との境界にモニタ部が形成されている、光学反射素子。
【請求項9】
前記内周は、前記横梁部の前記ミラー部に近い側の周であり、
前記外周は、前記横梁部の前記ミラー部から遠い側の周である、請求項1記載の光学反射素子。
【請求項10】
前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さい、請求項9の光学反射素子。
【請求項11】
ミラー部と、
前記ミラー部の対向する位置のそれぞれに接続され、第1軸に沿って伸びる一対の縦梁部と、
前記縦梁部に接続され、前記第1軸と直交する第2軸に沿って伸びる部分を有する一対の横梁部と、
前記ミラー部を、前記第1軸を中心軸として、回動させる複数の駆動部と、
前記一対の横梁部のそれぞれの両端に連結され、前記一対の横梁部を支持する固定部と、を備え、
前記一対の横梁部はそれぞれ、前記縦梁部に接続された部分と前記固定部との間に架かる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部はそれぞれ、前記固定部と接続される部分における外周の曲率半径が、前記縦梁部と接続される部分における内周の曲率半径よりも小さく、
前記複数の駆動部は、前記一対の横梁部のそれぞれの両端を前記固定部に固定した状態で、前記一対の横梁部のそれぞれに曲げ変位を生じさせて、前記ミラー部を回動させる光学反射素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-12-06 
出願番号 特願2016-155227(P2016-155227)
審決分類 P 1 652・ 161- YAA (G02B)
P 1 652・ 113- YAA (G02B)
P 1 652・ 121- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 右田 昌士  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 近藤 幸浩
森 竜介
登録日 2017-09-15 
登録番号 特許第6205587号(P6205587)
権利者 パナソニックIPマネジメント株式会社
発明の名称 光学反射素子  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  
代理人 前田 浩夫  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  
代理人 鎌田 健司  
代理人 鎌田 健司  
代理人 前田 浩夫  

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