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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
管理番号 1348710
異議申立番号 異議2017-700541  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-30 
確定日 2018-12-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6034796号発明「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物、及びその利用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6034796号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕、〔12-16〕、17について訂正することを認める。 特許第6034796号の請求項1、2、5、7ないし16に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6034796号の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、2012年(平成24年)9月20日(優先権主張 2011年(平成23年)10月31日、日本国(JP))を国際出願日とする出願であり、平成28年11月4日にその特許権の設定登録がされ、同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1、2、5、7ないし16に係る特許について、平成29年5月30日特許異議申立人袖岡恭子(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 7月31日 取消理由通知
同年10月 2日 訂正請求・意見書提出(特許権者)
同年10月17日 訂正拒絶理由通知
同年11月22日 手続補正書・意見書(特許権者)
平成30年 1月12日 意見書(異議申立人)
同年 3月14日 取消理由通知
同年 5月 8日 訂正請求・意見書提出(特許権者)
同年 5月23日 訂正拒絶理由通知
同年 6月22日 意見書提出(特許権者)なお、同意見書の日付は平成28年6月22日とされているが、平成30年の誤りであることは明らかであるので、平成30年6月22日に提出されたものとする。
同年 7月13日 取消理由通知(決定の予告)
同年 9月18日 訂正請求・意見書提出(特許権者)
同年10月31日 意見書(異議申立人)

第2 訂正の適否

1 訂正事項

上記平成30年9月18日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1-11〕、〔12-17〕について訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーを含んでおり、
上記エラストマーが・・・からなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される1つであることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物(・・・)。」とあるのを「主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
熱重合禁止剤とを含み、
上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下であり、
上記エラストマーが・・・からなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される1つである接着剤組成物であって、
当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことを特徴とし、
上記接着剤組成物は、ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップと、当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、上記ウエハ上の当該接着層を非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとをこの順で有する半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物(・・・)。」に訂正する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に「主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーを含んでおり、
上記エラストマーが・・・からなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される1つであることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物(・・・)。」とあるのを「主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
熱重合禁止剤とを含み、
上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下であり、
上記エラストマーが・・・からなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される1つである接着剤組成物であって、
当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことを特徴とし、
上記接着剤組成物は、ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップと、当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、上記ウエハ上の当該接着層を非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとをこの順で有する半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物(・・・)。」に訂正する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項8に「上記ウエハは、上記支持体と接着した後に150℃以上の環境下に曝されることを特徴とする請求項1?7のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。」とあるのを「上記ウエハは、上記支持体と接着した後に150℃以上の環境下に曝されることを特徴とする請求項3、4、及び6のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。」に訂正する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項9に「さらに、熱重合禁止剤を含んでいることを特徴とする請求項1?8のいずれか1項に記載の接着剤組成物。」とあるのを「さらに、熱重合禁止剤を含んでいることを特徴とする請求項3、4、6、及び8のいずれか1項に記載の接着剤組成物。」に訂正する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項12に「ウエハと、
・・・であるエラストマーを含んでいる接着剤組成物によって形成された接着層と、
支持体と、をこの順に接着してなる積層体を150℃以上の温度で加熱するステップと、
上記ステップの後に、上記ウエハ上の上記接着層を溶剤を用いて除去するステップとを含むことを特徴とする方法。」とあるのを「ウエハと、
・・・であるエラストマーと、
熱重合禁止剤とを含み、
上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下である接着剤組成物によって形成された接着層と、
支持体と、をこの順に接着してなる積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、
上記ステップの後に、上記ウエハ上の上記接着層を、溶剤として非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとを含むことを特徴とする半導体装置の製造に用いられる方法であって、
当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行い、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことを特徴とする方法。」に訂正する。

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項17に「上記支持体には貫通した穴が設けられている、請求項16に記載の方法。」とあるのを「ウエハと、
主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーを含む接着剤組成物によって形成された接着層と、
支持体と、をこの順に接着してなる積層体を150℃以上の温度で加熱するステップと、
上記ステップの後に、上記ウエハ上の上記接着層を、溶剤を用いて除去するステップとを含み、
上記支持体には貫通した穴が設けられており、
上記溶剤によって、上記接着層を溶解して上記ウエハと上記支持体とを分離することを特徴とする方法。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1、2

ア 訂正の目的の適否

訂正事項1、2は、接着剤組成物が、「熱重合禁止剤とを含み、上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下であ」ること(以下、訂正事項(ア)という。)を限定し、「ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示す」こと(以下、訂正事項(イ)という。)を限定するものであり、また、接着剤組成物が、「ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップと、当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、上記ウエハ上の当該接着層を非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとをこの順で有する半導体装置の製造方法に用いられる」ものであること(以下、訂正事項(ウ)という。)を限定するものである。
そうすると、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。

新規事項の追加の有無

訂正事項1、2の訂正事項(ア)は、本件明細書の段落【0036】の「(熱重合禁止剤)本発明において、接着剤組成物は熱重合禁止剤を含有していてもよい。」との記載、及び同段落【0039】の「熱重合禁止剤の含有量は、エラストマーの種類、並びに接着剤組成物の用途及び使用環境に応じて適宜決定すればよいが、例えば、エラストマーの量を100重量部としたとき、0.1重量部以上、10重量部以下であることが好ましい。」との記載に基づくものである。
また、訂正事項(イ)の「接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示す」ことは、同段落【0140】【表1】の、例えば、「実施例4」及び「実施例5」における結果が、それぞれ「p-メンタンに対する23℃での溶解速度が90nm/sec」及び(90nm/sec以上である)「120nm/sec」であることに基づくものであり、その実験条件に関する訂正事項(イ)の「ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった」は、同段落【0136】の「〔積層体の薄化・高温処理〕
ウエハと支持体との積層体を用いて、ウエハの薄化、フォトリソグラフィー、220℃でのプラズマCVD、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を行なった。これにより耐熱性及び耐薬品性を評価した。」との記載、及び、同段落【0137】の上記プラズマCVD及び220℃での加熱処理に関する、「上記プラズマCVDを1時間行なった」及び「上述のN_(2)環境下における220℃での加熱処理でも耐熱性を評価した。この加熱処理を3時間行ない」との記載に基づくものであり、さらに、同段落【0139】にある、p-メンタンによる接着層の除去に関する、「〔接着層の洗浄〕
532nmレーザを照射してウエハと支持体とを分離した。支持体を取り除いたウエハを、23℃において、p-メンタンによってスプレー洗浄し、接着層を除去した。接着層の除去速度(浸漬試験において1秒あたりに溶解した接着層の厚さ(nm/sec))を算出した。」との記載、そして、この段落【0139】の記載におけるウエハと支持体との積層体は、実施例で使用する積層体について、熱処理等の条件が唯一記載されている上述の段落【0136】に記載される積層体を用いていることが明らかであるといえることに基づくものである。
そうすると、上記訂正事項1、2は、新規事項を追加するものではない。

ウ 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無

訂正事項1、2は、上記アで述べたように、訂正前の「接着剤組成物」をさらに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項3、4について

上記訂正事項3及び4は、それぞれ、請求項8が引用する請求項を、「請求項1?7のいずれか1項」から「請求項3、4、及び6のいずれか1項」とするものであり、請求項9が引用する請求項を、「請求項1?8のいずれか1項」から「請求項3、4、6、及び8のいずれか1項」とするものであり、請求項8又は請求項9がそれぞれ引用する請求項数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると共に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。

(3)訂正事項5について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項5は、接着剤組成物が、「熱重合禁止剤とを含み、上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下である」こと(以下、訂正事項(エ)という。)を限定し、積層体を加熱するステップの温度範囲を「150℃以上の温度」から「220℃以上の温度」に限定し、接着層を溶剤を用いて除去するステップの溶剤を、「溶剤として非極性の炭化水素系溶剤」に限定し、「方法」が、「半導体装置の製造に用いられる」方法であることを限定し、また、接着剤組成物が、「ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示す」こと(以下、訂正事項(オ)という。)を限定するものである。
そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。

新規事項の追加の有無

訂正事項5の訂正事項(エ)及び(オ)は、上記(1)アで述べた訂正事項(ア)及び(ウ)とそれぞれ同じ内容であるから、上記(1)イで述べたように、新規事項を追加するものではない。
また、積層体を加熱するステップの温度範囲を「220℃以上の温度」とすることは、本件明細書の段落【0055】の「また、本発明に係る接着剤組成物は、優れた耐熱性を有しているので、支持体と接着した後に150℃以上の環境下に曝されるウエハと当該支持体との接着に好適に用いられる。具体的には180℃以上、さらには220℃以上の環境下にも好適に用いることができる。」等の記載に基づくものであり、接着層を溶剤を用いて除去するステップの溶剤を、「溶剤として非極性の炭化水素系溶剤」とすることは、同段落【0058】の記載によれば、「接着剤層を除去する場合、上述の溶剤を用いれば容易に溶解して除去できる。」とされ、上述の溶剤とは、同段落【0027】の記載によれば、本発明に係る接着剤組成物に含まれる溶剤として記載される「例えば、非極性の炭化水素系溶剤、極性及び無極性の石油系溶剤等」であるといえることに基づくものであり、「方法」を「半導体装置の製造に用いられる」方法に限定することは、同段落【0144】の「本発明に係る接着剤組成物、接着フィルム及び積層体は、例えば、微細化された半導体装置の製造工程において好適に利用することができる。」との記載に基づくものである。
そうすると、訂正事項5は、新規事項を追加するものではない。

ウ 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無

訂正事項5は、上記アで述べたように、訂正前の接着剤組成物、積層体を加熱するステップの温度範囲、接着層を溶剤を用いて除去するステップの溶剤をさらに限定し、これらの特定事項を有する「方法」をさらに限定すると共に、「方法」を「半導体装置の製造に用いられる」ものに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項6について

訂正事項6は、訂正前の請求項12を引用する請求項16をさらに引用する請求項17を、請求項間の引用関係を解消し、他の請求項を引用しない独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
そして、この訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。

3 小括

上記「2」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1ないし11〕、〔12ないし17〕について訂正することを求めるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、特許権者から、訂正事項6が認められた場合、訂正後の請求項17は、請求項12ないし16とは別の請求単位として扱われることの求めがあり、これを認めるから、訂正後の請求項〔1ないし11〕、〔12ないし16〕、17について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許の特許異議申立ての対象となる請求項1、2、5、7ないし16に係る発明(以下、請求項1に係る発明を項番に対応して「本件発明1」、「本件発明1」に対応する特許を「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。なお、請求項3、4、6に係る発明は、特許異議申立ての対象となっていないが、これらの発明を引用する特許異議申立ての対象となる請求項に係る発明があるため、共に記載する。また、下線は、訂正箇所を表す。

「【請求項1】
主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
熱重合禁止剤とを含み、
上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下であり、
上記エラストマーがスチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であり、
上記エラストマーは、置換基を有していないエラストマー、置換基を有しているエラストマー、及び、反応架橋型のエラストマーからなる群から選択される少なくとも1つであって、
上記反応架橋型のエラストマーは、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンエチレンプロピレン-スチレンブロックコポリマー、及び、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンブチレン-スチレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される1つである接着剤組成物であって、
当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことを特徴とし、
上記接着剤組成物は、ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップと、当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、上記ウエハ上の当該接着層を非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとをこの順で有する半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は、架橋剤、及び架橋促進剤を含んでいない)。
【請求項2】
主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
熱重合禁止剤とを含み、
上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下であり、
上記エラストマーがスチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であり、
上記エラストマーは、置換基を有していないエラストマー、置換基を有しているエラストマー、及び、反応架橋型のエラストマーからなる群から選択される少なくとも1つであって、
上記反応架橋型のエラストマーは、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンエチレンプロピレン-スチレンブロックコポリマー、及び、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンブチレン-スチレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される少なくとも1つである、接着剤組成物であって、
当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことを特徴とし、
上記接着剤組成物は、ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップと、当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、上記ウエハ上の当該接着層を非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとをこの順で有する半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は、架橋剤、及び架橋促進剤を含んでいない)。
【請求項3】
主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
溶剤と、を含んでおり、
上記溶剤は、縮合多環式炭化水素を含んでいることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項4】
上記エラストマーが水添物であることを特徴とする請求項3に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項5】
上記エラストマーの両端がスチレンのブロック重合体であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項6】
上記エラストマーがスチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることを特徴とする請求項4に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項7】
上記ウエハは、上記支持体と接着した後に薄化工程に供されることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項8】
上記ウエハは、上記支持体と接着した後に150℃以上の環境下に曝されることを特徴とする請求項3、4及び6のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項9】
さらに、熱重合禁止剤を含んでいることを特徴とする請求項3、4、6及び8のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
フィルム上に、請求項1?9のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物からなる接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。
【請求項11】
請求項1?9のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物を用いてウエハと支持体とを接着する積層体の製造方法。
【請求項12】
ウエハと、
主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
熱重合禁止剤とを含み、
上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下である接着剤組成物によって形成された接着層と、
支持体と、をこの順に接着してなる積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、
上記ステップの後に、上記ウエハ上の上記接着層を、溶剤として非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとを含むことを特徴とする半導体装置の製造に用いられる方法であって、
当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことを特徴とする方法。
【請求項13】
上記接着層と上記支持体との間に、光を吸収することにより変質する分離層をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記積層体のウエハを薄化するステップを含む請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
上記分離層に光を照射して上記支持体を分離した後に、上記接着層を上記溶剤で除去する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
上記溶剤によって、上記接着層を溶解して上記ウエハと上記支持体とを分離する、請求項12に記載の方法。」

第4 取消理由(決定の予告)の概要

請求項1、2、5、7ないし16(当審注:平成30年5月8日提出の訂正請求書は、認められず、平成29年11月22日提出の手続補正書で補正された同年10月2日提出の訂正請求書は、平成30年5月8日提出の訂正請求書の提出により取り下げられたものと見なされるので、特許査定時の特許請求の範囲に記載された請求項。以下、「第3」と区別して、単に「請求項に係る発明」という。)に対して平成30年7月13日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

1 請求項1、2、5、7ないし16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、請求項1、2、5、7ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「取消理由1」という。)

2 請求項1、2、5、7、10、11に係る発明は、いずれも下記刊行物1に記載された発明であり、請求項1、2、5、7、10、11に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「取消理由2」という。上記理由は、特許法第29条第1項第3号による、平成29年7月31日付け取消理由、及び異議申立て理由と同趣旨である。)

3 請求項1、2、5、7ないし16に係る発明は、いずれも下記刊行物1又は6に記載された発明、参考としての下記刊行物2ないし5に記載の事項、下記刊行物1、6ないし8に記載された事項、及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、請求項1、2、5、7ないし16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「取消理由3」という。上記理由は、特許法第29条第2項による、平成29年7月31日付け取消理由と同趣旨であり、請求項1、2、5、7、10ないし16に係る発明(平成29年11月22日提出の手続補正で補正された同年10月2日提出の訂正請求書に添付された特許請求の範囲に記載されたもの)は、いずれも下記刊行物1又は6に記載された発明、参考としての下記刊行物2ないし5に記載の事項、下記刊行物1、6ないし8に記載された事項、及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとする特許法第29条第2項による平成30年3月14日付け取消理由を含むものであり、請求項1、2、5、7、10、11に係る発明は、いずれも下記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、請求項1、2、5、7ないし9、11ないし16に係る発明は、いずれも下記刊行物6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとする特許法第29条第2項の規定による異議申立て理由を含むものである。)

なお、特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項の規定による、上記異議申立て理由では、下記刊行物1ないし7以外に下記刊行物9ないし12が提出されているが、本件発明の新規性及び進歩性を判断する上で必要となる記載の範囲において、下記刊行物9(甲第2号証)は、下記刊行物2と同じ内容が記載されるものであり、下記刊行物10(甲第7号証)及び下記刊行物11(甲第8号証)は、下記刊行物3ないし5と同じ内容が記載されるものであり、下記刊行物12(甲第10号証)は、下記刊行物1以外の内容が記載されているものではないから、引用していない。



刊行物1:特表平11-508924号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開2010-180325号公報(甲第3号証)
刊行物3:特開平11-199839号公報(甲第4号証)
刊行物4:特開平6-329815号公報(甲第5号証)
刊行物5:特開2010-254809号公報(甲第6号証)
刊行物6:特表2010-506406号公報(甲第9号証)
刊行物7:特開2004-64040号公報(甲第11号証)
刊行物8:特開2010-109324号公報(平成30年1月12日提出の意見書に添付の参考資料1)
刊行物9:特開2012-121223号公報(甲第2号証)
刊行物10:特開平9-263678号公報(甲第7号証)
刊行物11:特開2000-351850号公報(甲第8号証)
刊行物12:特開2010-90352号公報(甲第10号証)

第5 取消理由に関する当審の判断

1 取消理由1(特許法第36条第6項第1号)について

取消理由1の概要は以下のとおりである。
『本件明細書の段落【0008】の記載によれば、「従来技術に係る接着剤では、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着させたものを薄化工程等の所定の工程に供した後に当該ウエハと当該支持体を分離する場合、又は、別の方法で分離したとしても残存する接着剤を除去する場合、接着剤を溶解させるための溶剤に溶解し難いという問題」があり、ここで、接着剤が、接着剤を溶解させるための溶剤に溶解し難くなるのは、同段落【0037】、【0056】等の記載によれば、半導体製造工程において、サポートプレート(支持体)が接着されたウエハが、高温プロセスに曝されることによるといえるところ、請求項1に係る発明は、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着させた後に、当該ウエハと当該支持体を分離する際又は分離後に、より速やかに溶剤に溶解して除去できる接着剤組成物を提供すること」を発明の課題としているといえる。
そして、この発明の課題に対して、本件明細書の段落【0140】【表1】、【0141】【表2】に記載の実施例1?実施例9は、220℃でのプラズマCVDを1時間、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった(同段落【0136】、【0137】)ウエハと支持体との積層体において、ウエハと支持体に分離し、ウエハをp-メンタンで洗浄した際の溶解速度が大きく、上記発明の課題を解決しているといえる。
しかしながら、請求項1に係る発明の特定では、以下の(1)及び(2)の点で、請求項1に係る発明は、上記の発明の課題を解決するものではないから、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(1)請求項1に係る発明の「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着する」ことについて
請求項1に係る発明は、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物」であることは特定されているものの、この接着剤組成物が、本件明細書の段落【0037】に記載されるような半導体製造工程の中で、所定の高温プロセスを経るものであることが特定されていないから、本件発明の接着剤組成物は、所定の高温プロセスを経ることのない半導体製造工程で使用される場合も含まれることになる。
しかしながら、この様な場合は、接着剤を溶解させるための溶剤に溶解し難くなることがなく、上述の本件発明の課題がそもそも存在するのか明らかでないから、本件発明1は、上述の本件発明の課題を解決するものであるとすることはできない。
(2)発明の課題の「溶剤に溶解」することについて
請求項1に係る発明の「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着する」ことについて、半導体製造工程の中で用いられる溶剤に関する事項が特定されていないから、上述の本件発明の課題がそもそも存在するのか明らかでなく、本件発明1は、上述の本件発明の課題を解決するものであるとすることはできない。
また、半導体製造工程の中で用いられる溶剤に関する事項が特定されていない請求項1に係る発明の接着剤組成物は、特に限定されることなく溶剤に溶解することを意図しているとも解され得るが、この接着剤組成物が、任意の溶剤に溶解するとの記載は、本件明細書には無く、実施例等の具体性をもって記載されているのは、実施例で用いられているp-メンタン等の炭化水素系の溶剤に溶解することだけである。そうすると、本件明細書に記載される本件発明1の接着剤組成物がp-メンタン等の炭化水素系の溶剤に溶解するという事項を、どの様な溶剤に溶解するものであるのか特定されていない本件発明1の範囲にまで拡張乃至一般化することができるとはいえない。
請求項1に係る発明と同様の特定がなされている請求項2に係る発明、請求項1、2に係る発明を直接又は間接的に引用する請求項5、7ないし11に係る発明、及び半導体装置の製造方法に用いられる、請求項1、2に係る発明の接着剤組成物に対して、その接着剤組成物を用いた半導体装置の製造方法の関係にある請求項12に係る発明、請求項12に係る発明を直接又は間接的に引用する請求項13ないし16に係る発明についても、同様である。』

これに対し、本件訂正により、本件発明1、2、及び本件発明1、2を引用する本件発明5、7、10、11(本件発明8、9は、本件訂正により、本件発明1、2を引用しないものとなった。)の接着剤組成物は、「ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップと、当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、上記ウエハ上の当該接着層を非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとをこの順で有する半導体装置の製造方法に用いられる」ものであることが特定されたことで、半導体製造工程の中で、高温プロセスを経るものであること、及び半導体製造工程の中で用いられる非極性の炭化水素系の溶剤に溶解するものであることが明らかになった。
そうすると、本件発明1、2、5、7、10、11は、上記(1)及び(2)の点で、上記の発明の課題を解決するものではないとすることはできない。
また、本件発明12ないし16の方法は、「ウエハと、・・・接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体と、をこの順に接着してなる積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、上記ステップの後に、上記ウエハ上の上記接着層を、溶剤として非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとを含む」「半導体装置の製造に用いられる方法」であることが特定されたことで、本件発明12ないし16の方法に用いる接着剤組成物は、半導体製造工程の中で、高温プロセスを経るものであること、及び半導体製造工程の中で用いられる非極性の炭化水素系の溶剤に溶解するものであることが明らかになった。
そうすると、本件発明12ないし16は、上記(1)及び(2)の点で、上記の発明の課題を解決するものではないとすることはできない。
よって、本件発明1、2、5、7、10ないし16は、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえないから、本件特許1、2、5、7、10ないし16を、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできない。

異議申立人は、平成30年10月31日提出の意見書で、以下のとおり主張している。
『本件発明1、2及び12に追加された「当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示す」との特定について、溶解速度は、測定方法や条件によって異なる結果が得られるものであるところ、上記特定には測定方法や条件の記載がないため、溶解速度が特定されたものとは言えないから、上記発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。』
『また、実施例には、溶解速度の測定方法について以下のように記載されている。
「【0139】
・・・」
接着層の除去速度は、浸漬試験によって測定したことが記載されているが、浸漬試験の条件は記載されていない。すなわち、溶剤に接着層を浸漬させ、どのようにして1秒あたりに溶解した接着層の厚さを測定したのか記載がない。・・・
すなわち、どのような方法によって浸漬試験を行ったか特定がなされていない場合、用いた材料や試験方法によっては当然に異なる結果が得られるものである。
加えて、溶解速度を測定するためには膜厚を測定する必要があるが、膜厚の測定方法も複数の原理が存在するものであるから、測定原理によって得られる結果は当然に異なるものである。
また・・・532nmレーザーによって剥離処理を施した後に溶剤除去試験を行っているが、この点、請求項には532nmレーザ剥離の工程の記載がなく、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行った後、どのような方法で剥離しても(又は剥離しなくても)同じ溶解速度試験の結果が得られるのか不明である。
つまり、発明の詳細な説明の記載と出願時の技術常識とに基づいたとしても、訂正請求項1、2及び12に係る発明を実施しようとした場合、当業者といえどもどのように実施するかを理解することはできない。』
「よって、本件訂正後の請求項1、2及び12に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第4項第1号に記載された要件を満たすものではない。」

しかしながら、申立人は、上記の主張で、「溶解速度は、測定方法や条件によって異なる結果が得られるものである」、「どのような方法によって浸漬試験を行ったか特定がなされていない場合、用いた材料や試験方法によっては当然に異なる(溶解速度の)結果が得られる」、「膜厚の測定方法も複数の原理が存在するものであるから、測定原理によって得られる結果は当然に異なる」、及び「どのような方法で剥離しても(又は剥離しなくても)同じ溶解速度試験の結果が得られるのか不明」としているが、これらの主張は、本件発明1等の接着剤層の溶解速度や膜厚を測定する際、通常用いられる方法が複数あり、実際、これらの測定方法の間で測定値に無視できない違いが出ることを、客観的に説明するものではないし、溶解速度を測定する際の条件(浸漬試験、剥離処理の条件等)、用いる材料によって、実際、測定値に無視できない違いが出ることを、客観的に説明するものではないから、上記の主張では、本件発明1等の接着層の溶解速度の試験結果が、実際に、測定方法や条件によって異なるものとなるとすることはできない。
また、溶解速度の測定方法及びその条件は、本件明細書の記載や技術常識をもって理解できれば良く、本件発明1等において、それらを特定しなければならないということはないから、本件発明1等は、発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるとすることはできない。
さらに、接着剤層を含め、材料によって形成される膜の溶解速度の測定方法、膜厚の測定方法は、特に目新しいものではなく、当業者であれば技術常識によって、本件発明1の接着層の溶解速度の測定方法やその条件、膜厚の測定方法等を選択することができるといえる。そうすると、それらの方法及び条件を逐一本件明細書に記載しなくとも、当業者は、本件発明1等の接着層の溶解速度の測定、膜厚の測定を十分な信頼性をもって実施することができるといえるから、本件発明1等を実施しようとした場合、当業者といえどもどのように実施するかを理解することができないとはいえない。
よって、上記意見書での異議申立人の主張を採用することはできない。

2 取消理由2(特許法第29条第1項第3号)及び取消理由3(同条同項第2項)について

(1)刊行物に記載された事項

ア 刊行物1(特表平11-508924号公報)の記載事項
刊行物1には、以下の事項が記載されている。

(ア1)「1.不変支持体と、前記不変支持体に載置する熱可塑性エラストマーブロック共重合体を含んで成る非感圧接着剤層とを含んで成る半導体ウェーハ処理テープ。
・・・
3.前記熱可塑性エラストマーブロック共重合体が、15?25重量%のスチレンを含んで成る、請求項1に記載の半導体ウェーハ処理テープ。」(【特許請求の範囲】)

(ア2)「半導体ウェーハ研削工程にはなおいっそう役に立つ接着テープへの要望が依然としてある。そのようなテープは、幾つかの所望の性質を有することが望ましい。例えば、テープは、半導体ウェーハが後処理工程に容易に耐えられるように、シリコン、ポリイミド、シリコンオキシナイトライド、およびホトレジスト塗膜等の面に対して十分な初期接着力を迅速に提供しなければならず、その上必要な時には簡単に除去できるものでなければならない。」(第10頁第3?8行)

(ア3)「本発明はまた、半導体ウェーハの処理方法にも関する。この方法は、(a)半導体ウェーハを提供する工程と、(b)不変支持体と、この不変支持体に載置する非感圧接着剤層と、を含んで成る半導体ウェーハ処理テープの接着面に、半導体ウェーハを接着剤で合着する工程と、(c)ウェーハ背面を研削、またはウェーハをダイシングして集積回路半導体チップにすることによって、半導体ウェーハを処理する工程を含んで成る。」(第15頁第8?13行)

(ア4)「好適な実施態様では、接触時間にわたる接着力ビルドが最小を示しており、そのため、工業規格によって許容される枚数を超えて破損または毀損することなく、半導体ウェーハおよび/または半導体ICチップを本発明のウェーハ処理テープから容易に除去することができ、且つ(肉眼で)見える程度の量の接着剤残留物を残留させることがない。本発明のかなり好適な実施態様では、上記に挙げた基材の一部、最も好適にはそれらの基材全ての表面に対して、これらの特性を発現する。また本発明のかなり好適な実施態様では、半導体ウェーハおよび/または半導体ICチップを汚損せずに除去することも可能である。」(第15頁第28行?第16頁第4行)

(ア5)「本発明のウェーハ処理テープにおいて有用である不変支持体は、単一層フィルムまたは多層フィルムとして提供できる。支持体の厚さは、得られたテープがウェーハ研削およびウェーハダイシング装置で容易に取り扱える限りにおいて広範に変えてもよい。」(第16頁第26行?第17頁第1行)

(ア6)「最も好適なスチレンブロック共重合体において、ゴム状セグメントは、1,4および1,2異性体の混合物を含んで成る中央ブロックを有するスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体のような不飽和前駆物質の水素化によって飽和させてもよい。後述の水素化の時、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体が得られる。同様に、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体前駆物質を水素化してスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体を生成してもよい。ポリイソプレン、ポリブタジエン、およびスチレン-ブタジエンゴムのようなゴム状物質はまた、ゴム状エラストマーセグメントを形成するために使用されてもよい。・・・
種々広範の市販の熱可塑性エラストマーを、(単独または組み合わせて)本発明において使用することができ、これには、SOLPRENE系(フィリップス・ペトローリアム社(Philips Petroleum Co.)製)、FINAPRENE系(フィナ(Fina)製)、TUFPRENEおよびASAPRENE系(アサヒ(Asahi)製)、STEREON系(ファイアーストーン・シンセティック・ラバー・アンド・ラテックス社(Firestone Synthetic Rubber & Latex Co.)製)、EUROPRENE SOL T系(エニケム(Enichem)製)、VECTOR系(デキシコポリマーズ(Dexco Polymers)製)、およびCARIFLEX TR系(シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製)がある。また、SEPTON 2002、2005、2007、2023、2043、および2063のようなSEPON系の物質(クラレ社(Kuraray Co.Ltd.)製)も有用である。更にまた、D-1101、D-1102、D-1107P、D-1111、D-1112、D-1114PX、D-1116、D-1117P、D-1118X、D-1119、D-1122X、D-1124、D-1125PX、D-1184、D-1300X、D-1320X、4141、4158、4433、RP-6408、RP-6409、RP-6614、RP-6906、RP-6912、G-1650、G-1651、G-1652、G-1654X、G-1657、G-1701X、G-1702X、G-1726X、G-1750X、G-1765X、FG-1901X、FG-1921X、FG-1924、およびTKG-101のようなKRATON系の物質(シェル・ケミカル社製)も有用である。一般に、水素化熱可塑性エラストマーのKRATON系が好適である。」(第20頁第1行?第21頁第15行)

(ア7)「また、種々の添加剤を最小量、接着剤成分中に含ませることもできる。そのような添加剤には、顔料、染料、可塑剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、プロセス油などがある。使用する添加剤の量は、所望する最終特性に依存して変更できる。」(第25頁第17?20行)

(ア8)「実施例1乃至11
本発明によるウェーハ処理テープのシリーズを製作した。各実施例のウェーハ処理テープで使用される接着剤成分は、熱可塑性エラストマー30グラム(g)とトルエン70gをワンクォートガラスジャー内で合わせて、このジャーを、非溶存熱可塑性エラストマーが見えなくなるまで、ローラーミル上に設置することで、調製する。合計混合時間は、8時間未満であった。次に、乾燥接着剤被膜の厚さを確実に約76μmにできるコーティングギャップを備えて形成されたブルノーズナイフを有するナイフボックスを使用して、接着剤成分溶液を、50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布する。一回塗布して、ウェーハ処理テープを室温で約10分乾燥してから、82℃で10分乾燥した。
以下の表1は、熱可塑性エラストマーの種類とその熱可塑性エラストマーの中のスチレンの割合(%スチレン)の記載と共に、各実施例で使用される熱可塑性エラストマーの商品名を示す。表1(以降の表でも同様)において、SISは、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を指しており、SBSはスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を、SBはスチレン-ブタジエンブロック共重合体を、SEBSはスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体を、SEPSはスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体を、更にSEPSEPはスチレン-エチレン/プロピレン-スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体を指す。なおKRATONは、シェル・ケミカル社から市販されているものである。
また、表1には、剥離接着強さ試験(方法A)の結果も示してあり、この場合、基材は平滑なポリイミドで、ドエル時間(dwell time)は1日であって、更にウェーハ処理テープの可剥性についての所見も記載してある。

^(*):剥離接着力が強すぎてテープを除去できなかった。
・・・
実施例12乃至19
本発明によるウェーハ処理テープのシリーズは、以下の表2で示す熱可塑性エラストマーを使用した他は、実施例1乃至11で説明した手順に従って製作された。SEB(I)Sは、イソプレンアームを有するSEBSブロック共重合体を指す。なお、SEPTONは、クラレ社から市販されている。複数基材で、テープの可剥性に関する所見と共に表2に明記したドエル時間を用いて、剥離接着強さに関してウェーハ処理テープを評価した(試験方法Aを使用)。これらの実施例では、ポリイミド基材を、前述のとおりICポリイミドパッシベーション層とした。
なお、実施例5、6、7、10、および11を、表2中で再び繰り返している。

」(第31頁第22行?第34頁表2)

イ 刊行物2(特開2010-180325号公報)の記載事項
刊行物2には、以下の事項が記載されている。

「【0028】
以下に本発明を更に具体的に説明するための実施例を記載する。
1. 使用原料の詳細
〔水添ブロック共重合体〕
・・・
SEBS:クレイトンG1650(商品名、クレイトンポリマージャパン(株)製)、スチレン含有量:29%、重量平均分子量(Mw):約10.9万、数平均分子量(Mn):10.3万、1,2-ビニル結合量:37質量%」

ウ 刊行物3(特開平11-199839号公報)の記載事項
刊行物3には、以下の事項が記載されている。

「【0027】粘着剤層
・・・
SEPS:スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(クラレ社製,商品名「セプトン2002」,スチレン含有量=30重量%,MFR=70g/10分・230℃,重量平均分子量=約56000)」

エ 刊行物4(特開平6-329815号公報)の記載事項
刊行物4には、以下の事項が記載されている。

「【0035】実施例2
・・・マトリックス樹脂としてスチレン含量が20重量%で重量平均分子量が200,000である水素添加(水添率99%)スチレン-イソプレントリブロック共重合体(商品名:セプトン2005、クラレ製)15重量部を加えてペースト状混合物を得た。」

オ 刊行物5(特開2010-254809号公報)の記載事項
刊行物5には、以下の事項が記載されている。

「【0032】
・・・
^(*3):「セプトン2007」、SEPS、重量平均分子量8万、ポリスチレンブロック含有率30%、株式会社クラレ製」

カ 刊行物6(特表2010-506406号公報)の記載事項
刊行物6には、以下の事項が記載されている。

(カ1)【請求項1】
溶媒系に溶解または分散されたポリマーを含有する接合用組成物で形成される接合層を介して接合された、第1の基板と第2の基板とを含むスタックを提供し、
前記スタックを、少なくとも約190℃の温度に曝して前記接合層を軟化させ、
前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方に力を印加すると同時に、前記第1の基板および前記第2の基板の他方を、前記力に耐えられるようにすることを含み、前記力は、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するに足る十分な量で印加されるウェーハの接合方法。
・・・
【請求項4】
更に、前記スタックを少なくとも約190℃の温度に曝す前に、前記基板の一方を薄化することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
更に、前記スタックを少なくとも約190℃の温度に曝す前に、前記スタックに、裏面研削、金属被覆、パターニングおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される処理を施すことを含む請求項1に記載の方法。
・・・
【請求項37】
粘着付与剤と、
ゴム類、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物とを含有する、流動性を有する接合用組成物であって、
前記粘着付与剤および化合物は、溶媒系に分散または溶解され、前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%として、少なくとも約30重量%の溶媒系を含有する、流動性を有する接合用組成物。」

(カ2)「【0011】
新規な組成物、およびアクティブウェーハをキャリア基板に接着する方法であって、高い処理温度に耐えることができ、かつ、プロセスの適切な段階で、上記ウェーハと基板とを即座に分離することを可能にする、組成物および方法が求められる。」

(カ3)「【0024】
別の実施形態では、上記組成物は、界面活性剤、接着促進剤、粘着付与剤、可塑剤および酸化防止剤を含むいくつかの任意成分を含みうる。
・・・
【0028】
酸化防止剤を用いる場合、該酸化防止剤は、上記組成物中の固体の総重量を100重量%として、上記組成物中に、約0.01重量%?約3重量%存在するのが好ましく、約0.01重量%?約1.5重量%存在するのがより好ましく、約0.01重量%?約0.1重量%存在するのが更に好ましい。適する酸化防止剤の例として、フェノール系酸化防止剤(例えば、Irganox(R) 1010の名称で、チバ(Ciba)から市販されているペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)およびホスファイト系酸化防止剤(例えば、Irgafos(R) 168の名称で、チバ(Ciba)から市販されているトリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイト)からなる群から選択される酸化防止剤が含まれる。」

(カ4)「【0033】
上記組成物は、キャリア基板かアクティブウェーハのいずれか一方に最初に塗布されうるが、アクティブウェーハに最初に塗布されることが好ましい。好ましい塗布方法として、上記組成物を、約300?3,500rpm(より好ましくは約500?1,500rpm)の回転速度で、約500?15,000rpm/秒の加速度で、約30?300秒の回転時間、スピンコーティングすることが含まれる。上記塗布工程は、特定の厚さが得られるように変更されうることが好ましいだろう。
【0034】
コーティングの後、上記基板を(例えば、ホットプレート上で)ベークして、溶媒を蒸発させることができる。典型的なベーキングでは、温度が、約150?275℃、好ましくは約150?225℃であり、時間が、約2?15分、より好ましくは約3?10分であるだろう。ベークした後の膜厚(凹凸の最上部)は、典型的には、少なくとも約5μm、より好ましくは約5?50μmであるだろう。
【0035】
ベーキングの後、所望のキャリアウェーハを、本発明の組成物の層に接触させ、その層に対して押し付ける。上記キャリアウェーハは、約150?250℃、好ましくは約180?220℃の温度で加熱することにより本発明の上記組成物に接合される。この加熱は、好ましくは、真空下で、約1?10分間、約1?約15キロニュートンの接合力で行われる。
【0036】
図1(a)は、アクティブウェーハ12と、キャリアウェーハまたは基板14とを含む例示的なスタック10を示す。アクティブウェーハ12は、裏面16と活性面18とを含む。活性面18は、1つ以上の活性部位(図示せず)、および例えば20a?dとして表わされている形状のような複数の凹凸形状(topographical features)(隆起形状または隆起線およびホール、トレンチ、または空間)を含みうる。形状20dは、活性面18上で「最も高さのある」形状を表す。即ち、端部または面21は、ウェーハ12上の他のいかなる凹凸形状の各端部よりも、ウェーハ12の裏面16から離れている。
・・・
【0040】
接合層24は、スピンコーティングにより活性面18に設けられるので、上記接合用組成物は、様々な凹凸形状に流れ込み、かつ、それらの形状を超えて流れることが好ましい。更に、接合層24は、活性面18の凹凸上に均一層を形成する。この点を図示すると、図1は、破線26で表わされる、端部21における平面を示し、この平面は、裏面16に実質的に平行である。この平面から接合面22までの距離は、厚さ「T」によって表わされる。上記厚さTは、厚さの総変化量であり、平面26および基板14の全長にわたって約8%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約2%未満、更に好ましくは約1%未満、変化する。
【0041】
図1(b)に示すように、上記のウェーハパッケージ(wafer package)に、引き続き、基板の薄化(または他の処理)を施すことができ、12’は、薄化後のウェーハ12を示す。上記基板は、約100μm未満、好ましくは約50μm未満、より好ましくは約25μm未満の厚さに薄化されうることが好ましい。薄化後、フォトリソグラフィー、ビアエッチングおよび金属被覆を含む典型的な裏面処理を行ってもよい。」

(カ5)「【0045】
所望の処理が行われた後、アクティブウェーハまたは基板は、少なくとも約190℃、好ましくは少なくとも約200℃、より好ましくは少なくとも約220℃、更に好ましくは少なくとも約240℃の温度に加熱することによって、キャリア基板から分離されうる。これらの温度範囲は、上記接合用組成物層の好ましい軟化点を示す。この加熱により、上記接合用組成物層が、軟化して、図1(c)に示すように、軟化した接合用組成物層24’を形成し、その時点で、上記の2つの基板を、離すようにスライドさせることによって分離することができる。また、図1(c)は、ウェーハ12および基板14の両方を通る軸28を示しており、スライディング力は、概して、軸28に対して横方向に印加されるだろう。または、スライドさせることを必要としなくてもよく、代わりに、ウェーハ12または基板14を上方に(即ち、概して、ウェーハ12または基板14の他方から離れる方向に)持ち上げて、ウェーハ12を基板14から分離することができる。
【0046】
分離は、単に、ウェーハ12または基板14の一方を、スライドさせる、および/または持ち上げると同時に、その他方を、上記スライディング力またはリフティング力(持ち上げ力)(lifting force)に耐えられるように、実質的に固定された位置に保つことによって(例えば、ウェーハ12および基板14に、拮抗するスライディング力を同時に印加することによって)達成されることが好ましい。このことは、全て、慣用の機器により達成されうる。
【0047】
デバイス領域に残存する、いかなる接合用組成物も、乾燥前に上記組成物の一部であった最初の溶媒、または、キシレン、ベンゼン、リモネン等の溶媒を用いて、容易に除去することができる。残存するいかなる組成物も、5?15分間、溶媒に接触させると完全に溶解するだろう(少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、より好ましくは約100%)。また、残存するいかなる接合用組成物も、プラズマエッチングを、単独で、または溶媒除去プロセスと組み合わせて用いることによって除去してもよい。この工程の後、接合用組成物を含まないクリーンなウェーハ12’およびキャリア基板14(クリーンな状態で図示せず)が残るだろう。」

(カ6)「【図1】



キ 刊行物7(特開2004-64040号公報)の記載事項
刊行物7には、以下の事項が記載されている。

(キ1)「【請求項1】
被研削基材と、
前記被研削基材と接している接合層と、
光吸収剤及び熱分解性樹脂を含む光熱変換層と、
光透過性支持体と、
を含み、
但し、前記光熱変換層は、前記接合層とは反対側の前記被研削基材の表面を研削した後に、放射エネルギーが照射されたときに分解して、研削後の基材と前記光透過性支持体とを分離するものである、積層体。
【請求項2】
前記被研削基材は脆性材料である、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記被研削基材はシリコンウェハである、請求項1記載の積層体。
【請求項4】
前記光吸収剤はカーボンブラックを含む、請求項1?3のいずれか1項記載の積層体。」

(キ2)「【0016】
光熱変換層
光熱変換層は光吸収剤及び熱分解性樹脂を含む。光熱変換層にレーザー光などの形態で照射された放射エネルギーは、光吸収剤によって吸収され、熱エネルギーに変換される。発生した熱エネルギーは光熱変換層の温度を急激に上昇させ、やがてその温度は光熱変換層中の熱分解性樹脂(有機成分)の熱分解温度に達し、樹脂が熱分解する。熱分解によって発生したガスは光熱変換層内でボイド層(空隙)となり、光熱変換層を2つに分離し、支持体と基材は分離される。」

ク 刊行物8(特開2010-109324号公報)の記載事項
刊行物8には、以下の事項が記載されている。

(ク1)「【請求項1】
第1接着剤層と、第1接着剤層よりも速く溶剤に溶解する第2接着剤層、若しくは、第1接着剤層が溶解する溶剤とは異なる溶剤に溶解する第2接着剤層とを介して支持板が貼着されている基板から、当該支持板を剥離する剥離方法であって、
上記支持板側に位置する第2接着剤層を溶解して上記支持板を上記基板から剥離する剥離工程を包含することを特徴とする剥離方法。」

(ク2)「【0004】
そのため、研削するウエハにサポートプレートと呼ばれる、ガラス、硬質プラスチック等からなるプレートを貼り合わせることによって、ウエハの強度を保持し、クラックの発生およびウエハの反りを防止するウエハサポートシステムが開発されている。ウエハサポートシステムによりウエハの強度を維持することができるため、薄板化した半導体ウエハの搬送を自動化することができる。」

(ク3)「【0010】
サポートプレートを薄板化したウエハから剥離するとき、薄板化したウエハが破損しないように注意する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、加熱および熱膨張性粒子の熱膨張による押圧力によって、ウエハが破損する可能性が高い。また、離型剤によるウエハの汚染や、熱膨張性粒子の含有による接着性の低下の問題も生じる。そのため、ウエハを破損および汚染することなく、より短時間で容易にウエハをサポートプレートから剥離することができる剥離方法および接着剤の開発が求められている。」

(ク4)「【0067】
(熱重合禁止剤)
本発明において、第1接着剤材料または第2接着剤材料として使用する接着剤組成物は、熱重合禁止剤を含有してもよい。熱重合禁止剤は、熱によるラジカル重合反応を防止するのに有効な物質である。熱重合禁止剤は、ラジカルに対して高い反応性を示し、モノマーよりも優先的に反応するため、重合が禁止される。そのため、熱重合禁止剤を含む接着剤組成物は、高温環境下(特に250℃?350℃)における接着剤組成物の重合反応が抑制される。これにより、250℃で1時間加熱する高温プロセスを経ても、接着剤組成物を容易に溶解できる。したがって、接着剤組成物により形成された接着剤層を、高温プロセス後においても容易に剥離することができ、また残渣の発生も抑えることができる。」

(ク5)「【0082】
〔実施例4?24〕
接着剤組成物1を6インチシリコンウエハ2に塗布し、110℃で3分間、150℃で6分間乾燥させて層厚30μmの第1層接着剤層4を形成した。次に、表2?4に記載のポリマー単独、オリゴマー単独、またはそれらを所定の比率で混合したものを含むp-メンタン溶液(30質量%)をそれぞれ用意し、接着剤組成物2として第1接着層4上に塗布し、120℃で3分間乾燥させて、層厚7μmの第2接着剤層5を形成した。そして第2接着剤層5上に孔あきサポートプレートを接着させた。
・・・
【0107】
〔実施例25?26〕
実施例4の接着剤組成物2に熱重合禁止剤(IRGANOX1010(チバスペシャリティケミカルズ社製))を、接着剤組成物2の樹脂全体に対して1%または5%添加したものを、それぞれ実施例25および26とした。実施例3で形成した第1層接着剤層4上に、実施例4、実施例25および26の接着剤組成物2を用いて、第2接着剤層5を形成した。そして、第2接着剤層5上に孔あきサポートプレートを接着させて積層体1を形成した。
【0108】
各積層体1を250℃で、1時間加熱した後に、p-メンタンに浸漬した。p-メンタンへの浸漬後、第2接着剤層5の溶解速度(nm/sec)を算出した。結果を表5に示す。」

2 刊行物に記載された発明

(1)刊行物1に記載された発明

ア 刊行物1A発明

刊行物1の上記(ア1)の特許請求の範囲1を引用する特許請求の範囲3には、
「不変支持体と、前記不変支持体に載置する15?25重量%のスチレンを含んで成る熱可塑性エラストマーブロック共重合体を含んで成る非感圧接着剤層とを含んで成る半導体ウェーハ処理テープ。」が記載されている。
そして、刊行物1の上記(ア6)の「最も好適なスチレンブロック共重合体において、ゴム状セグメントは、1,4および1,2異性体の混合物を含んで成る中央ブロックを有するスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体のような不飽和前駆物質の水素化によって飽和させてもよい。後述の水素化の時、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体が得られる。同様に、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体前駆物質を水素化してスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体を生成してもよい。ポリイソプレン、ポリブタジエン、およびスチレン-ブタジエンゴムのようなゴム状物質はまた、ゴム状エラストマーセグメントを形成するために使用されてもよい。最も好適なのは、ブタジエンとイソプレンである。」との記載によれば、「15?25重量%のスチレンを含んで成る熱可塑性エラストマーブロック共重合体」は、「スチレンと、ブタジエンやイソプレンとのブロック共重合体を水素化した15?25重量%のスチレンを含んで成る熱可塑性エラストマーブロック共重合体」であるといえる。
また、上記(ア3)の記載によれば、上記「半導体ウェーハ処理」とは、(a)半導体ウェーハを提供する工程と、(b)不変支持体と、この不変支持体に載置する非感圧接着剤層と、を含んで成る半導体ウェーハ処理テープの接着面に、半導体ウェーハを接着剤で合着する工程と、(c)ウェーハ背面を研削、またはウェーハをダイシングして集積回路半導体チップにすることによって、半導体ウェーハを処理する工程を含むものであるといえ、上記(ア1)の記載からは、上記「半導体ウェーハ処理テープ」について、上記の(a)?(c)の工程を含む半導体ウェーハ処理に用いられる非感圧接着剤に関する発明も把握することができるといえる。

そうすると、刊行物1には、
「スチレンと、ブタジエンやイソプレンとのブロック共重合体を水素化した15?25重量%のスチレンを含んで成る熱可塑性エラストマーブロック共重合体を含んで成る、非感圧接着剤であって、(a)半導体ウェーハを提供する工程と、(b)不変支持体と、この不変支持体に載置する非感圧接着剤層と、を含んで成る半導体ウェーハ処理テープの接着面に、半導体ウェーハを接着剤で合着する工程と、(c)ウェーハ背面を研削、またはウェーハをダイシングして集積回路半導体チップにすることによって、半導体ウェーハを処理する工程を含む半導体ウェーハ処理に用いられる非感圧接着剤。」(以下、「刊行物1A発明」という。)が記載されているといえる。

イ 刊行物1B発明

上記刊行物1A発明を、半導体ウェーハ処理に関する発明としてとらえれば、以下の
「(a)半導体ウェーハを提供する工程と、(b)不変支持体と、この不変支持体に載置する、スチレンと、ブタジエンやイソプレンとのブロック共重合体を水素化した15?25重量%のスチレンを含んで成る熱可塑性エラストマーブロック共重合体を含んで成る、非感圧接着剤からなる非感圧接着剤層と、を含んで成る半導体ウェーハ処理テープの接着面に、半導体ウェーハを接着剤で合着する工程と、(c)ウェーハ背面を研削、またはウェーハをダイシングして集積回路半導体チップにすることによって、半導体ウェーハを処理する工程を含む半導体ウェーハ処理。」(以下、「刊行物1B発明」という。)も把握できるといえる。

(2)刊行物6に記載された発明

ア 刊行物6A発明

刊行物6の上記(カ1)の【請求項37】には、
「粘着付与剤と、
ゴム類、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物とを含有する、流動性を有する接合用組成物であって、
前記粘着付与剤および化合物は、溶媒系に分散または溶解され、前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%として、少なくとも約30重量%の溶媒系を含有する、流動性を有する接合用組成物。」が記載されている。
また、刊行物6の上記(カ1)の【請求項1】を引用する【請求項5】には、
「溶媒系に溶解または分散されたポリマーを含有する接合用組成物で形成される接合層を介して接合された、第1の基板と第2の基板とを含むスタックを提供し、
前記スタックを、少なくとも約190℃の温度に曝して前記接合層を軟化させ、
前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方に力を印加すると同時に、前記第1の基板および前記第2の基板の他方を、前記力に耐えられるようにすることを含み、前記力は、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するに足る十分な量で印加され、
前記スタックを少なくとも約190℃の温度に曝す前に、前記スタックに、裏面研削、金属被覆、パターニングおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される処理を施す、方法。」が記載されているといえる。
そして、【請求項37】に記載される上記「接合用組成物」は、【請求項1】を引用する【請求項5】として記載される方法に用いられるものであり、刊行物6の上記(カ4)の段落【0033】?【0036】、及び上記(カ6)図1(a)の記載によれば、上記スタックの第1の基板と第2の基板は、アクティブウェーハと、キャリアウェーハまたは基板であるといえ、さらに、上記(カ4)の段落【0041】、及び上記(カ6)図1(b)の記載によれば、薄化(研削)されるのは、アクティブウェーハであるといえる。
さらに、上記(カ5)の記載によれば、アクティブウェーハと、キャリアウェーハまたは基板を分離後、ウェーハ12’(アクティブウェーハ)に残存する接合用組成物を溶媒を用いて除去しているといえる。

そうすると、刊行物6には、
「粘着付与剤と、
ゴム類、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物とを含有する、流動性を有する接合用組成物であり、
前記粘着付与剤および化合物は、溶媒系に分散または溶解され、前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%として、少なくとも約30重量%の溶媒系を含有する、流動性を有する接合用組成物であって、
該接合用組成物で形成される接合層を介して接合された、アクティブウェーハと、キャリアウェーハまたは基板とを含むスタックを提供し、
前記スタックを、少なくとも約190℃の温度に曝して前記接合層を軟化させ、
前記アクティブウェーハ、および前記キャリアウェーハまたは基板、の少なくとも一方に力を印加すると同時に、前記アクティブウェーハ、および前記キャリアウェーハまたは基板、の他方を、前記力に耐えられるようにすることを含み、前記力は、前記アクティブウェーハ、および前記キャリアウェーハまたは基板とを分離するに足る十分な量で印加され、
前記スタックを少なくとも約190℃の温度に曝す前に、前記アクティブウェーハに、裏面研削、金属被覆、パターニングおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される処理を施し、
前記アクティブウェーハと、キャリアウェーハまたは基板を分離後、前記アクティブウェーハに残存する接合用組成物を溶媒を用いて除去する方法に用いられる接合用組成物。」(以下、「刊行物6A発明」という。)が記載されているといえる。

イ 刊行物6B発明

上記刊行物6A発明を、ウェーハ処理に関する発明としてとらえれば、以下の
「粘着付与剤と、ゴム類、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物とを含有する、流動性を有する接合用組成物であって、前記粘着付与剤および化合物は、溶媒系に分散または溶解され、前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%として、少なくとも約30重量%の溶媒系を含有する、流動性を有する接合用組成物で形成される接合層を介して接合された、アクティブウェーハと、キャリアウェーハまたは基板とを含むスタックを提供し、
前記スタックを、少なくとも約190℃の温度に曝して前記接合層を軟化させ、
前記アクティブウェーハ、および前記キャリアウェーハまたは基板、の少なくとも一方に力を印加すると同時に、前記アクティブウェーハ、および前記キャリアウェーハまたは基板、の他方を、前記力に耐えられるようにすることを含み、前記力は、前記アクティブウェーハ、および前記キャリアウェーハまたは基板とを分離するに足る十分な量で印加され、
前記スタックを少なくとも約190℃の温度に曝す前に、前記アクティブウェーハに、裏面研削、金属被覆、パターニングおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される処理を施し、
前記アクティブウェーハと、キャリアウェーハまたは基板を分離後、前記アクティブウェーハに残存する接合用組成物を溶媒を用いて除去する方法。」(以下、「刊行物6B発明」という。)も把握できるといえる。

3 対比・検討

(1)刊行物1を主引用例として

ア 本件発明1について

(ア)本件発明1と刊行物1A発明を対比すると、刊行物1A発明の「ブタジエンやイソプレン」、「ブロック共重合体」、「水素化」、「(ブロック共重合体を水素化した)熱可塑性エラストマーブロック共重合体」、「不変支持体」、「半導体ウェーハ」及び「非感圧接着剤」は、それぞれ、本件発明1の「共役ジエン」、「ブロックコポリマー」、「水添」、「(ブロックコポリマーの水添物である)エラストマー」、「ウエハの支持体」、「ウエハ」及び「接着剤組成物」に相当する。

(イ)刊行物1A発明の熱可塑性エラストマーブロック共重合体に含まれるスチレン(単位)の含有量は、本件発明1の範囲内に含まれているから、刊行物1A発明の「スチレンと、ブタジエンやイソプレンとのブロック共重合体を水素化した15?25重量%のスチレンを含んで成る熱可塑性エラストマーブロック共重合体」は、本件発明1の「『主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であ』る『エラストマー』」、「『スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であ』る上記エラストマー」、及び「置換基を有していない上記エラストマー」に相当する。

(ウ)刊行物1A発明の「(b)不変支持体と、この不変支持体に載置する非感圧接着剤層と、を含んで成る半導体ウェーハ処理テープの接着面に、半導体ウェーハを接着剤で合着する工程」において、半導体ウェーハ処理テープに半導体ウェーハが合着されたものは、半導体ウェーハと非感圧接着剤層と不変支持体が接着されたもので、「積層体」であるといえるから、前記(b)の工程は、本件発明1の「ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップ」に相当する。

(エ)刊行物1A発明の非感圧接着剤は、(b)の工程によれば、半導体ウェーハと当該半導体ウェーハの不変支持体とを接着するためのものであるといえ、(c)の工程で製造される集積回路半導体チップは、本件発明1の「半導体装置」に相当するから、刊行物1A発明の「(a)・・・工程を含む半導体ウェーハ処理に用いられる非感圧接着剤」は、本件発明1の「上記接着剤組成物は・・・半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物と、「上記接着剤組成物は、ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップを有する半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物」の点で共通する。

そうすると、本件発明1と刊行物1A発明は、「主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であるエラストマーを含み、
上記エラストマーがスチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であり、
上記エラストマーは、置換基を有していないエラストマーである接着剤組成物であって、
上記接着剤組成物は、ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップを有する半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。

<相違点1>
エラストマーの重量平均分子量が、本件発明1では、10,000以上、200,000以下であるのに対し、刊行物1A発明は、熱可塑性エラストマーブロック共重合体の重量平均分子量が明らかでない点。

<相違点2>
接着剤組成物について、本件発明1の接着剤組成物は、熱重合禁止剤を含み、上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下であるのに対し、刊行物1A発明の非感圧接着剤は、熱重合禁止剤を含むのか明らかでない点。

<相違点3>
接着剤組成物について、本件発明1の接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果(以下、単に、「p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果」という。)を示すのに対し、刊行物1A発明の非感圧接着剤は、この様な試験結果を示すのか明らかでない点。

<相違点4>
接着剤組成物について、本件発明1の接着剤組成物は、ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップに加えて、「当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、上記ウエハ上の当該接着層を非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとをこの順で有する半導体装置の製造方法」に用いられるものであるのに対し、刊行物1A発明の非感圧接着剤は、これらのステップをこの順で有する半導体装置の製造方法に用いられるものであるのか明らかでない点。

<相違点5>
接着剤組成物に関し、本件発明1は、架橋剤、及び架橋促進剤を含んでいないのに対し、刊行物1A発明には、その様な特定がない点。

<相違点2>及び<相違点3>について
事案に鑑み、上記相違点2及び3を最初にまとめて検討することとし、まず、本件発明1の接着剤組成物が、熱重合禁止剤を含むこと、及びp-メンタンに対する23℃での接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことの技術的意義について検討する。
本件発明1は、「当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップ」を有する半導体装置の製造方法に用いられる接着剤組成物であるが、本件明細書の段落【0037】の記載によれば、支持体(サポートプレート)が接着されたウエハが、この様な高温プロセスを経た場合、高温により接着剤組成物の重合が起こると、高温プロセス後にウエハからサポートプレートを剥離する剥離液への溶解性が低下し、ウエハからサポートプレートを良好に剥離することができなくなるが、熱重合禁止剤を含有している本件発明1の接着剤組成物では熱による酸化及びそれに伴う重合反応が抑制されるため、高温プロセスを経たとしても支持体(サポートプレート)を容易に剥離することができ、残渣の発生を抑えることができる。また、同段落【0039】の記載によれば、熱重合禁止剤の含有量を、エラストマーの量を100重量部としたとき、本件発明1で特定されている0.1重量部以上、10重量部以下の範囲内とすることにより、熱による重合を抑える効果が良好に発揮され、高温プロセス後において、接着剤組成物の剥離液に対する溶解性の低下をさらに抑えることができるとされている。
そして、本件発明1の接着剤組成物は、所定のエラストマーと、所定量の熱重合禁止剤を含有することにより、段落【0140】【表1】【0141】【表2】の実施例1?9に示されているとおり、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという上記相違点3に係る試験結果を示すことができる。

一方、刊行物1の上記(ア7)の記載によれば、刊行物1には、刊行物1A発明に、安定剤等の添加剤を添加することの示唆がなされているといえるものの、刊行物1A発明に、エラストマーの量を100重量部としたとき、0.1重量部以上、10重量部以下の範囲内の「熱重合禁止剤」を添加することは、記載も示唆もされていないし、「熱重合禁止剤」を添加する動機付けとなる記載もない。

ここで、安定剤に、酸化防止剤が含まれることは、技術的な常識であり(要すれば、高分子学会高分子辞典編集委員会編、「新版高分子辞典」、1991年8月10日、第3刷、株式会社朝倉書店、第13頁、「安定剤」に関する「高分子化合物はその加工工程中,または保管,使用中に,熱,光,酸素,オゾンなどによって劣化が起こり,機械的,光学的,電気的諸性質が低下する.このような劣化に対する樹脂の抵抗力をつけさせるための配合剤を一般に安定剤という.熱安定剤[heat stabilzer],光安定剤[light stabilzer],紫外線吸収剤[UV absorber],抗酸化剤[antioxidant,酸化防止剤]などがある.」等の記載参照)、シリコンウェハを支持体に接合する接合層(粘着層)に、Irganox(R)1010等の酸化防止剤を添加することは、刊行物6の上記(カ3)に記載されるように既に知られている事項であり、ウエハをサポートプレートに接着する接着剤層にIRGANOX1010等の熱重合禁止剤を添加することは、刊行物8の上記(ク1)ないし(ク5)に記載されているように既に知られている事項である。しかしながら、刊行物1A発明には、支持体(サポートプレート)が接着されたウエハが、高温プロセスを経た場合、高温により接着剤組成物の重合が起こり、剥離液への溶解性が低下し、ウエハからサポートプレートを良好に剥離することができなくなるという認識がないのであるから、本件発明1で特定されているように、「当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップ」を有する半導体装置の製造方法に用いられる「特定の」接着剤組成物に「安定剤」を添加し、「熱重合禁止剤」として、機能させること、さらに、「熱による重合を抑える効果が良好に発揮され、高温プロセス後において、接着剤組成物の剥離液に対する溶解性の低下をさらに抑える」(本件明細書の段落【0039】)ために、その含有量をエラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下とすることは、技術常識、及び刊行物2ないし8の記載事項を考慮したとしても、導き出すことができるとはいえない。
そうすると、刊行物1A発明において、0.1重量部以上、10重量部以下の範囲内の「熱重合禁止剤」を添加することは、当業者が容易に想到し得るものではないし、上述のようにそれによりもたらされるp-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果も、刊行物1A発明の非感圧接着剤は、示すことができるとはいえないし、また、そのような結果を示す非感圧接着剤とすることが当業者にとり、容易に想到し得るとはいえない。

<本件発明1の効果>について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0012】の記載によれば、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着させた後に、当該ウエハと当該支持体を分離する際又は分離後に、より速やかに溶剤に溶解して除去できる」というものであり、「より速やかに溶剤に溶解」の程度は、本件発明1で上記相違点3に係る事項で特定されているとおりである。
そして、この点が、刊行物1ないし8に記載の事項を考慮しても導き出すことができないのであるから、本件発明1の効果は、刊行物1ないし8に記載の事項から予測することができない格別のものであるといえる。

よって、少なくとも、上記相違点2及び3は、実質的な相違点であると共に、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点1、4及び5を検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1に記載された発明ではないし、また、刊行物1に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物6ないし8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2について

置換基を有しているエラストマーの置換基が、本件発明1が、「アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される1つである」のに対し、本件発明2は、「アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される少なくとも1つである」点で、本件発明2は、本件発明1と相違するが、置換基を有しているエラストマーは、本件発明1と刊行物1A発明との対比で、一致点となる「置換基を有していないエラストマー」と択一的な関係にあるものであるから、本件発明2の本件発明1との相違は、本件発明1と刊行物1A発明との対比にさらに相違点を付加するものではない。

そうすると、本件発明2と刊行物1A発明を対比すると、その相違は、本件発明1と刊行物1A発明との<相違点1>ないし<相違点5>と同じものとなり、その判断も、上記アで述べたとおりである。

よって、本件発明2は、刊行物1に記載された発明ではないし、また、刊行物1に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物6ないし8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明1又は2を直接又は間接的に引用する本件発明5、7、10、11について

本件発明5、7、10、11は、本件発明1又は2の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1又は2にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1又は2と同様に、本件発明1又は2を直接又は間接的に引用する本件発明5、7、10、11は、刊行物1に記載された発明ではないし、また、刊行物1に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物6ないし8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明3を直接又は間接的に引用する本件発明5、7ないし11について

本件発明5、7ないし11が直接又は間接的に引用する本件発明3は、異議申立ての対象となっていない請求項であり、本件発明1又は2にはない本件発明3の、接着剤組成物が「主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、溶剤と、を含んでおり、上記溶剤は、縮合多環式炭化水素を含んでいる」点については、これを記載ないし示唆する何らの証拠も提出されていないし、何らの主張もされていない。
そうすると、上記の点を少なくとも含む、本件発明3を直接又は間接的に引用する本件発明5、7ないし11は、刊行物1に記載された発明ではないし、また、刊行物1に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物6ないし8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明12について

本件発明12と刊行物1B発明を対比すると、本件発明12の「方法」に用いられる「主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
熱重合禁止剤とを含み、
上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下である接着剤組成物・・・当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示す」接着剤組成物と、刊行物1B発明の「処理」に用いられる「スチレンと、ブタジエンやイソプレンとのブロック共重合体を水素化した15?25重量%のスチレンを含んで成る熱可塑性エラストマーブロック共重合体を含んで成る、非感圧接着剤」は、上記アでの検討を踏まえると、少なくとも、上記アで述べた相違点2及び3で相違することは明らかである。
そして、上記相違点2及び3が、実質的な相違点であると共に、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点2及び3に係る特定事項を含む本件発明12は、本件発明1と同様に、刊行物1に記載された発明ではないし、また、刊行物1に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物6ないし8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

カ 本件発明13ないし16について

本件発明13ないし16は、本件発明12の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明12にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明12と同様に、本件発明12を直接又は間接的に引用する本件発明13ないし16は、刊行物1に記載された発明ではないし、また、刊行物1に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物6ないし8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)刊行物6を主引用例として

ア 本件発明1について

(ア)本件発明1と刊行物6A発明を対比すると、刊行物6A発明の「接合用組成物」、「アクティブウェーハ」、「キャリアウェーハまたは基板」、「スタック」、「接合層」及び「溶媒」は、それぞれ、本件発明1の「接着剤組成物」、「ウエハ」、「ウエハの支持体」、「積層体」、「接着層」及び「溶剤」に相当する。

(イ)刊行物6A発明の「ゴム類、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物」は、本件発明1の「エラストマー」に対応し、刊行物6A発明の「接合用組成物」は、「エラストマー」を含む点で、本件発明1の「接着剤組成物」と共通している。

(ウ)刊行物6A発明の「該接合用組成物で形成される接合層を介して接合された、アクティブウェーハと、キャリアウェーハまたは基板とを含むスタックを提供」することは、本件発明1の「ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップ」に相当する。

(エ)刊行物6A発明の「前記スタックを、少なくとも約190℃の温度に曝して前記接合層を軟化させ」ることは、本件発明1の「当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップ」と、「当該積層体を190℃以上の温度で加熱するステップ」の点で共通する。

(オ)刊行物6A発明の「前記アクティブウェーハと、キャリアウェーハまたは基板を分離後、前記アクティブウェーハに残存する接合用組成物を溶媒を用いて除去する」ことは、本件発明1の「上記ウエハ上の当該接着層を非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップ」と、「上記ウエハ上の当該接着層を溶剤を用いて除去するステップ」の点で共通すると共に、刊行物6A発明の接合用組成物、及び本件発明1の接着剤組成物は、共に、(ウ)ないし(オ)の各ステップを「この順で有する半導体装置の製造方法に用いられる」ものであり、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物」であることは明らかである。

そうすると、本件発明1と刊行物6A発明は、「エラストマーを含む、接着剤組成物であって、
上記接着剤組成物は、ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップと、当該積層体を190℃以上の温度で加熱するステップと、上記ウエハ上の当該接着層を溶剤を用いて除去するステップとをこの順で有する半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。

<相違点6>
接着剤組成物に含まれるエラストマーが、本件発明1では、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーを含んでおり、上記エラストマーがスチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であり、上記エラストマーは、置換基を有していないエラストマー、置換基を有しているエラストマー、及び、反応架橋型のエラストマーからなる群から選択される少なくとも1つであって、上記反応架橋型のエラストマーは、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンエチレンプロピレン-スチレンブロックコポリマー、及び、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンブチレン-スチレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つであり、上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される1つであるのに対し、刊行物6A発明では、ゴム類、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物である点。

<相違点7>
接着剤組成物について、本件発明1の接着剤組成物は、熱重合禁止剤を含み、上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下であるのに対し、刊行物6A発明の接合用組成物は、熱重合禁止剤を含むのか明らかでない点。

<相違点8>
接着剤組成物について、本件発明1の接着剤組成物は、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すのに対し、刊行物6A発明の非感圧接着剤は、この様な試験結果を示すのか明らかでない点。

<相違点9>
接着剤組成物が用いられる半導体装置の製造方法について、積層体を加熱するステップの温度が、本件発明1では、220℃以上であるのに対し、刊行物6A発明では、少なくとも約190℃の温度であり、ウエハ上の接着層を除去するのに用いる溶剤が、本件発明1では、非極性の炭化水素系溶剤であるのに対し、刊行物6A発明では、溶媒との特定に留まる点。

<相違点10>
接着剤組成物に関し、本件発明1は、架橋剤、及び架橋促進剤を含んでいないのに対し、刊行物6A発明には、その様な特定がない点。

<相違点7>及び<相違点8>について
事案に鑑み、上記相違点7及び8を最初にまとめて検討する。ここで、本件発明1の接着剤組成物が、熱重合禁止剤を含むこと、及びp-メンタンに対する、23℃での接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことの技術的意義は、上記(1)アで述べたとおりである。
一方、刊行物6の上記(カ3)の段落【0024】の「別の実施形態では、上記組成物は、界面活性剤、接着促進剤、粘着付与剤、可塑剤および酸化防止剤を含むいくつかの任意成分を含みうる。」との記載によれば、刊行物6A発明には、接合用組成物に酸化防止剤を含む態様も含まれ、その酸化防止剤としては、同段落【0028】には、例えば、Irganox(R)1010等が記載されている。
そうすると、刊行物6A発明には、酸化防止剤であるIrganox(R)1010等を含有する態様が含まれ得るといえる。また、ウエハをサポートプレートに接着する接着剤層にIRGANOX1010等の熱重合禁止剤を添加することは、刊行物8の上記(ク1)ないし(ク5)に記載されているように既に知られている事項である。しかしながら、刊行物6A発明には、支持体(サポートプレート)が接着されたウエハが、高温プロセスを経た場合、高温により接着剤組成物の重合が起こり、剥離液への溶解性が低下し、ウエハからサポートプレートを良好に剥離することができなくなるという認識がないのであるから、本件発明1で特定されているように、「当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップ」を有する半導体装置の製造方法に用いられる「特定の」接着剤組成物に「酸化防止剤」を添加し、「熱重合禁止剤」として、機能させること、さらに、「熱による重合を抑える効果が良好に発揮され、高温プロセス後において、接着剤組成物の剥離液に対する溶解性の低下をさらに抑える」(本件明細書の段落【0039】)ために、その含有量をエラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下とすることは、技術常識、及び刊行物2ないし8の記載事項を考慮したとしても、導き出すことができるとはいえない。
さらには、刊行物6A発明に、「熱重合禁止剤」を添加することを導き出せるとはいえないのであるから、刊行物6A発明の接合用組成物は、p-メンタンに対する、23℃での接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すものであるとはいえないし、また、そのような結果を示す接合用組成物とすることが当業者にとり、容易に想到し得るとはいえない。

<本件発明1の効果>について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0012】の記載によれば、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着させた後に、当該ウエハと当該支持体を分離する際又は分離後に、より速やかに溶剤に溶解して除去できる」というものであり、「より速やかに溶剤に溶解」の程度は、本件発明1で上記相違点8に係る事項で特定されているとおりである。
そして、この点が、刊行物6、1ないし5、7、8に記載の事項を考慮しても導き出すことができないのであるから、本件発明1の効果は、刊行物6、1ないし5、7、8に記載の事項から予測することができない格別のものであるといえる。

よって、少なくとも、上記相違点7及び8は、実質的な相違点であると共に、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点6、9及び10を検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物6に記載された発明ではないし、また、刊行物6に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物1、7、8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2について
上記(1)イで述べたのと同様に、本件発明2の本件発明1との相違は、本件発明1と刊行物6A発明との対比にさらに相違点を付加するものではない。
そうすると、本件発明2と刊行物6A発明を対比すると、その相違は、本件発明1と刊行物6A発明との<相違点6>ないし<相違点10>と同じものとなり、その判断も、上記アで述べたとおりである。

よって、本件発明2は、刊行物6に記載された発明ではないし、また、刊行物6に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物1、7、8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明1又は2を直接又は間接的に引用する本件発明5、7、10、11について

本件発明5、7、10、11は、本件発明1又は2の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1又は2にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1又は2と同様に、本件発明1又は2を直接又は間接的に引用する本件発明5、7、10、11は、刊行物6に記載された発明ではないし、また、刊行物6に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物1、7、8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明3を直接又は間接的に引用する本件発明5、7ないし11について

上記(1)エで述べたのと同様の理由により、本件発明3を直接又は間接的に引用する本件発明5、7ないし11は、刊行物6に記載された発明ではないし、また、刊行物6に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物1、7、8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明12について

本件発明12と刊行物6B発明を対比すると、本件発明12の「方法」に用いられる接着剤組成物と、刊行物6B発明の「方法」に用いられる「粘着付与剤と、ゴム類、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物とを含有する、流動性を有する接合用組成物であって、前記粘着付与剤および化合物は、溶媒系に分散または溶解され、前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%として、少なくとも約30重量%の溶媒系を含有する、流動性を有する接合用組成物」は、上記アでの検討を踏まえると、少なくとも、上記アで述べた相違点7及び8で相違することは明らかである。
そして、上記相違点7及び8が、実質的な相違点であると共に、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点7及び8に係る特定事項を含む本件発明12は、本件発明1と同様に、刊行物6に記載された発明ではないし、また、刊行物6に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物1、7、8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

カ 本件発明13ないし16について

本件発明13ないし16は、本件発明12の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明12にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明12と同様に、本件発明12を直接又は間接的に引用する本件発明13ないし16は、刊行物6に記載された発明ではないし、また、刊行物6に記載された発明、参考としての刊行物2ないし5に記載の事項、刊行物1、7、8に記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび

上記第5で検討したとおり、本件特許1、2、5、7ないし16は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできないし、同法第29条第1項第3号及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、異議申立ての理由を含む上記取消理由1ないし3によっては、本件特許1、2、5、7ないし16を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1、2、5、7ないし16を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
熱重合禁止剤とを含み、
上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下であり、
上記エラストマーがスチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であり、
上記エラストマーは、置換基を有していないエラストマー、置換基を有しているエラストマー、及び、反応架橋型のエラストマーからなる群から選択される少なくとも1つであって、
上記反応架橋型のエラストマーは、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンエチレンプロピレン-スチレンブロックコポリマー、及び、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンブチレン-スチレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される1つである接着剤組成物であって、
当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことを特徴とし、
上記接着剤組成物は、ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップと、当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、上記ウエハ上の当該接着層を非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとをこの順で有する半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は、架橋剤、及び架橋促進剤を含んでいない)。
【請求項2】
主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
熱重合禁止剤とを含み、
上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下であり、
上記エラストマーがスチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であり、
上記エラストマーは、置換基を有していないエラストマー、置換基を有しているエラストマー、及び、反応架橋型のエラストマーからなる群から選択される少なくとも1つであって、
上記反応架橋型のエラストマーは、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンエチレンプロピレン-スチレンブロックコポリマー、及び、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレンブチレン-スチレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アセトキシ基、アミノ基、及び水酸基からなる群から選択される少なくとも1つである、接着剤組成物であって、
当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことを特徴とし、
上記接着剤組成物は、ウエハと当該接着剤組成物によって形成された接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を得るステップと、当該積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、上記ウエハ上の当該接着層を非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとをこの順で有する半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は、架橋剤、及び架橋促進剤を含んでいない)。
【請求項3】
主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
溶剤と、を含んでおり、
上記溶剤は、縮合多環式炭化水素を含んでいることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項4】
上記エラストマーが水添物であることを特徴とする請求項3に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項5】
上記エラストマーの両端がスチレンのブロック重合体であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項6】
上記エラストマーがスチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることを特徴とする請求項4に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項7】
上記ウエハは、上記支持体と接着した後に薄化工程に供されることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項8】
上記ウエハは、上記支持体と接着した後に150℃以上の環境下に曝されることを特徴とする請求項3、4及び6のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。
【請求項9】
さらに、熱重合禁止剤を含んでいることを特徴とする請求項3、4、6及び8のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
フィルム上に、請求項1?9のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物からなる接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。
【請求項11】
請求項1?9のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物を用いてウエハと支持体とを接着する積層体の製造方法。
【請求項12】
ウエハと、
主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーと、
熱重合禁止剤とを含み、
上記熱重合禁止剤の含有量は、上記エラストマー100重量部に対して0.1重量部以上、10重量部以下である接着剤組成物によって形成された接着層と、
支持体と、をこの順に接着してなる積層体を220℃以上の温度で加熱するステップと、
上記ステップの後に、上記ウエハ上の上記接着層を、溶剤として非極性の炭化水素系溶剤を用いて除去するステップとを含むことを特徴とする半導体装置の製造に用いられる方法であって、
当該接着剤組成物は、ウエハと、上記接着剤組成物により形成される接着層と、支持体とをこの順に接着してなる積層体を作製し、ウエハの薄化を行ない、フォトリソグラフィーを行ない、220℃でのプラズマCVDを1時間行ない、N_(2)環境下における220℃での加熱処理を3時間行なった後における、p-メンタンに対する23℃での当該接着層の溶解速度が90nm/sec以上であるという試験結果を示すことを特徴とする方法。
【請求項13】
上記接着層と上記支持体との間に、光を吸収することにより変質する分離層をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記積層体のウエハを薄化するステップを含む請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
上記分離層に光を照射して上記支持体を分離した後に、上記接着層を上記溶剤で除去する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
上記溶剤によって、上記接着層を溶解して上記ウエハと上記支持体とを分離する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
ウエハと、
主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下であるエラストマーを含む接着剤組成物によって形成された接着層と、
支持体と、をこの順に接着してなる積層体を150℃以上の温度で加熱するステップと、
上記ステップの後に、上記ウエハ上の上記接着層を、溶剤を用いて除去するステップとを含み、
上記支持体には貫通した穴が設けられており、
上記溶剤によって、上記接着層を溶解して上記ウエハと上記支持体とを分離することを特徴とする方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-12-19 
出願番号 特願2013-541674(P2013-541674)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (C09J)
P 1 652・ 121- YAA (C09J)
P 1 652・ 113- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 牟田 博一西澤 龍彦南 宏樹  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 阪▲崎▼ 裕美
原 賢一
登録日 2016-11-04 
登録番号 特許第6034796号(P6034796)
権利者 東京応化工業株式会社
発明の名称 ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物、及びその利用  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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