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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H01L 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01L 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H01L 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H01L |
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管理番号 | 1349006 |
審判番号 | 訂正2018-390111 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2018-08-02 |
確定日 | 2019-01-31 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第4349641号に関する訂正審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第4349641号の明細書及び特許請求の範囲を,本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第4349641号は,平成21年3月23日を出願日として出願された特願2009-69462号の請求項1ないし9に係る発明について,平成21年7月31日に特許権の設定登録がされ,その後,平成30年8月2日に本件訂正審判が請求されたものである。 第2 請求の趣旨及び訂正事項 1 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は「特許第4349641号の明細書及び特許請求の範囲を,本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める,との審決を求める。」というものである。 2 訂正事項 本件訂正審判の請求に係る訂正(以下,「本件訂正」という。)の内容は,以下の訂正事項1ないし42のとおりである。なお,下線は,審判請求人が訂正箇所を示すために付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1?5,及び9を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項1を引用するものについて独立形式に改め, 「銅(Cu)を主成分とする芯材と,該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって,前記芯材が銅(Cu)-1?500質量ppmリン(P)合金からなり,かつ,前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり, 中間層の厚さが0.005?0.2μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項1を引用するものについて独立形式に改め, 「銅(Cu)を主成分とする芯材と,該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって,前記芯材が銅(Cu)-1?500質量ppmリン(P)合金からなり,かつ,前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり, 中間層の厚さが0.01?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項1を引用するものについて独立形式に改め, 「銅(Cu)を主成分とする芯材と,該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって,前記芯材が銅(Cu)-1?500質量ppmリン(P)合金からなり,かつ,前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり, 表皮層の厚さが0.005?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項2を引用するものについて独立形式に改め, 「銅(Cu)を主成分とする芯材と,該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって,前記芯材が銅(Cu)-1?80質量ppmリン(P)合金からなり,かつ,前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり, 中間層の厚さが0.005?0.2μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正し,新たに請求項10とする。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項2を引用するものについて独立形式に改め, 「銅(Cu)を主成分とする芯材と,該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって,前記芯材が銅(Cu)-1?80質量ppmリン(P)合金からなり,かつ,前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり, 中間層の厚さが0.01?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正し,新たに請求項11とする。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項2を引用するものについて独立形式に改め, 「銅(Cu)を主成分とする芯材と,該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって,前記芯材が銅(Cu)-1?80質量ppmリン(P)合金からなり,かつ,前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり, 表皮層の厚さが0.005?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正し,新たに請求項12とする。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項3を引用するものについて独立形式に改め, 「銅(Cu)を主成分とする芯材と,該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって,前記芯材が銅(Cu)-200?400質量ppmリン(P)合金からなり,かつ,前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり, 中間層の厚さが0.005?0.2μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正し,新たに請求項13とする。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項3を引用するものについて独立形式に改め, 「銅(Cu)を主成分とする芯材と,該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって,前記芯材が銅(Cu)-200?400質量ppmリン(P)合金からなり,かつ,前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり, 中間層の厚さが0.01?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正し,新たに請求項14とする。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項3を引用するものについて独立形式に改め, 「銅(Cu)を主成分とする芯材と,該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって,前記芯材が銅(Cu)-200?400質量ppmリン(P)合金からなり,かつ,前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり, 表皮層の厚さが0.005?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正し,新たに請求項15とする。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項1?3を引用するものについて,それぞれに請求項6?8のいずれか1項の特徴を組み入れて,訂正後請求項6?8及び10?15を引用する形式に改め, 「リン(P)以外の芯材の成分が純度99.999質量%以上の銅(Cu)である請求項6?8及び10?15の何れか1項記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正し,新たに請求項16とする。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項1?3を引用するものについて,それぞれに請求項6?8のいずれか1項の特徴を組み入れて,訂正後請求項6?8及び10?15を引用する形式に改め, 「リン(P)以外の芯材の成分が純度99.9999質量%以上の銅(Cu)である請求項6?8及び10?15の何れか1項記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正し,新たに請求項17とする。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?請求項3の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ」とあるうち,請求項1?3を引用するものについて,それぞれに請求項4?8のいずれか1項に記載の特徴を組み入れて,訂正後請求項6?8及び10?17を引用する形式に改め, 「表皮層の厚さが中間層の厚さよりも薄いものである請求項6?8及び10?17の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。」に訂正し,新たに請求項18とする。 (14)訂正事項14 明細書の段落【0007】【特許文献4】の「特許4203459号公報」との記載を「特許4204359号公報」に訂正する。 (15)訂正事項15 明細書の段落【0012】の「酸化によっての際に」との記載を「酸化の際に」に訂正する。 (16)訂正事項16 明細書の段落【0012】及び【0014】の「酸化銅の発生を抑制する遅延させる」との記載を「酸化銅の発生を遅延させる」に訂正し,同段落【0016】の「溶融ボールの側面からの酸化を防止す遅延させる」との記載を「溶融ボールの側面からの酸化を遅延させる」に訂正する。 (17)訂正事項17 明細書の段落【0015】の「芯材の銅(Cu)-リン(P)合金には,リン(P)以外の不純物元素はをなるべく含まないことが好ましい」との記載を「芯材の銅(Cu)-リン(P)合金は,リン(P)以外の不純物元素をなるべく含まないことが好ましい」に訂正する。 (18)訂正事項18 明細書の段落【0015】の「溶融した銅ボールが硬くなることはなくなるなりにくい傾向にある」との記載を「溶融した銅ボールが硬くなりにくい傾向にある」に訂正する。 (19)訂正事項19 明細書の段落【0016】及び【0018】の「銅(Cu)の融点(約1085度)」との記載を「銅(Cu)の融点(約1085℃)」に訂正する。 (20)訂正事項20 明細書の段落【0016】の「合金はが薄皮となって」との記載を「合金が薄皮となって」に訂正する。 (21)訂正事項21 明細書の段落【0018】の「ワイや端面」との記載を「ワイヤ端面」に訂正する。 (22)訂正事項22 明細書の段落【0018】の「早く早期に融解して」との記載を「早く融解して」に訂正する。 (23)訂正事項23 明細書の段落【0018】の「薄皮が軟化し,して溶融ボールを形成する」との記載を「薄皮が軟化して溶融ボールを形成する」に訂正する。 (24)訂正事項24 明細書の段落【0018】の「先端部に」との記載を「先端部に」に訂正する。 (25)訂正事項25 明細書の段落【0018】の「溶融(Cu)ボールの銅(Cu)」との記載を「溶融ボールの銅(Cu)」に訂正する。 (26)訂正事項26 明細書の段落【0019】の「金(Au)の表皮層中間層の厚さは,0.005?0.020.1μmであることが好ましく,より好ましくは0.005?0.010.02μm以下であり,もっとも好ましくは0.005?0.01μmである」との記載を「金(Au)の表皮層の厚さは,0.005?0.1μmであることが好ましく,より好ましくは0.005?0.02μmであり,もっとも好ましくは0.005?0.01μmである」に訂正する。 (27)訂正事項27 明細書の段落【0020】の「固溶する。ない。その結果,」との記載を「固溶する。その結果,」に訂正する。 (28)訂正事項28 明細書の段落【0020】の「中間層と表皮層がは,」との記載を「中間層と表皮層は,」に訂正する。 (29)訂正事項29 明細書の段落【0020】の「接合力が高い高くなる」との記載を「接合力が高くなる」に訂正する。 (30)訂正事項30 明細書の同段落【0021】の「十分であるが,。」との記載を「十分である。」に訂正する。 (31)訂正事項31 明細書の段落【0021】の「時間を要するがかかる」との記載を「時間がかかる」に訂正する。 (32)訂正事項32 明細書の段落【0021】の「酸化をより遅らせるるためである効果がある」との記載を「酸化をより遅らせる効果がある」に訂正する。 (33)訂正事項33 明細書の段落【0025】の「メッキ液メッキ浴を使用した」との記載を「メッキ液を使用した」に訂正する。 (34)訂正事項34 明細書の段落【0025】の「白金(Pt)は酸性のPt-pソルト浴」との記載を「白金(Pt)は酸性のPt-Pソルト浴」に訂正する。 (35)訂正事項35 明細書の段落【0026】の表1中及び同段落【0033】の表2中の「実施例11?13」を下記のように「参考例11?13」に訂正し,同段落【0034】の「実施例1,3,6,8,10,12,15,18及び21」との記載を「実施例1,3,6,8,10,15,18及び21並びに参考例12」に訂正し,同段落【0034】の「実施例2,4,5,7,9,11,14,16,17及び22」との記載を「実施例2,4,5,7,9,14,16,17及び22並びに参考例11」に訂正し,同段落【0034】及び【0035】の「実施例13」との記載を「参考例13」に訂正し,同段落【0035】の「実施例11?13」との記載を「参考例11?13」に訂正し,同段落【0035】の「実施例11,12」との記載を「参考例11,12」に訂正する。 【表1】 【表2】 (36)訂正事項36 明細書の段落【0027】の「(株)新川製。の超音波熱圧着ワイヤ・ボンダ「UTC-1000型UTC-1000(商品名)」」との記載を「(株)新川製の超音波熱圧着ワイヤ・ボンダ「UTC-1000(商品名)」」に訂正する。 (37)訂正事項37 明細書の段落【0027】の「2kWでウェッジステッチ接合した」との記載を「2kWでステッチ接合した」に訂正する。 (38)訂正事項38 明細書の段落【0030】の「外周部が8本以上」との記載を「外周部の花弁状変形が8本以上」に訂正する。 (39)訂正事項39 明細書の段落【0031】の「その個数を表記した」との記載を「その個数を計数して評価を◎印,○印,△印又は×印で表記した」に訂正する。 (40)訂正事項40 明細書の段落【0034】の「実施例11?19及び20」との記載を「実施例19及び20並びに参考例13」に訂正する。 (41)訂正事項41 明細書の段落【0035】の「実施例5,8,15,18,及び20?22に係る5?10のボンディングワイヤは,上記の実施例1?5のに係るボンディングワイヤよりやや劣る」との記載を「実施例5,8,15,18,及び20?22に係るボンディングワイヤは,上記の実施例1?4,6,7,9,10,14,16,17及び19に係るボンディングワイヤよりやや劣る」に訂正する。 (42)訂正事項42 明細書の段落【0035】の「上記の実施例に係るボンディングワイヤより少し劣るものの,実施例1?5のボンディングワイヤと同様に,ボール部の真球性,真円性に優れ,及びチップダメージも少なくに比較例のような欠陥がなく,ウェッジ接合性,圧着形状がよいことが確認された」との記載を「上記の実施例に係るボンディングワイヤより少し劣るものの,比較例のような欠陥がなく,ウェッジ接合性がよいことが確認された」に訂正する。 第3 当審の判断 1 訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び拡張・変更の存否,独立特許要件について (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は,訂正前請求項1?5,及び9を削除するものであるから,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は,訂正前請求項1?5,及び9を削除するものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は,訂正前請求項1?5,及び9を削除するものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項1により,訂正前請求項1?5,及び9は削除されたので,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項1は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は,訂正前の請求項6が請求項1?3のいずれか1項を引用する記載であるところ,請求項2及び3を引用しないものとした上で,請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立項形式へ改めるための訂正である。 よって,訂正事項2は,特許法第126条第1項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は,訂正前の請求項7が請求項1?3のいずれか1項を引用する記載であるところ,請求項2及び3を引用しないものとした上で,請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立項形式へ改めるための訂正である。 よって,訂正事項3は,特許法第126条第1項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は,訂正前の請求項8が請求項1?3のいずれか1項を引用する記載であるところ,請求項2及び3を引用しないものとした上で,請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立項形式へ改めるための訂正である。 よって,訂正事項4は,特許法第126条第1項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は,訂正前の請求項6が請求項1?3のいずれか1項を引用する記載であるところ,請求項1及び3を引用しないものとした上で,請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立項形式へ改めるための訂正である。 よって,訂正事項5は,特許法第126条第1項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項5は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項5は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は,訂正前の請求項7が請求項1?3のいずれか1項を引用する記載であるところ,請求項1及び3を引用しないものとした上で,請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立項形式へ改めるための訂正である。 よって,訂正事項6は,特許法第126条第1項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項6は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的について 訂正事項7は,訂正前の請求項8が請求項1?3のいずれか1項を引用する記載であるところ,請求項1及び3を引用しないものとした上で,請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立項形式へ改めるための訂正である。 よって,訂正事項7は,特許法第126条第1項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項7は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項7は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的について 訂正事項8は,訂正前の請求項6が請求項1?3のいずれか1項を引用する記載であるところ,請求項1及び2を引用しないものとした上で,請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立項形式へ改めるための訂正である。 よって,訂正事項8は,特許法第126条第1項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項8は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項8は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (9)訂正事項9 ア 訂正の目的について 訂正事項9は,訂正前の請求項7が請求項1?3のいずれか1項を引用する記載であるところ,請求項1及び2を引用しないものとした上で,請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立項形式へ改めるための訂正である。 よって,訂正事項9は,特許法第126条第1項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項9は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項9は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (10)訂正事項10 ア 訂正の目的について 訂正事項10は,訂正前の請求項8が請求項1?3のいずれか1項を引用する記載であるところ,請求項1及び2を引用しないものとした上で,請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立項形式へ改めるための訂正である。 よって,訂正事項10は,特許法第126条第1項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項10は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項10は,請求項間の引用関係を解消しただけであり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (11)訂正事項11 ア 訂正の目的について 訂正事項11は,訂正前の請求項4が請求項1?3のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ,請求項1?3のいずれか1項の記載を引用する発明それぞれについて,訂正前請求項6?8のいずれか1項に記載の発明特定事項をさらに含むことを特定するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 また,訂正事項1により請求項1?3が削除され,訂正事項2?10により請求項間の引用関係を解消して訂正前の請求項6?8は独立項形式の請求項6?8及び10?15に訂正されることに伴い,訂正前の請求項4が引用する「請求項1?3の何れか1項」を訂正後の「請求項6?8及び10?15の何れか1項」を引用することを明記し,整合を図るものである。よって訂正事項11は,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正でもある。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項11のうち,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正については,明細書の表1に,実施例1?10及び14?22の被覆銅ワイヤが,訂正前の請求項6?8のいずれか1項の特徴を備え,さらにリン(P)以外の芯材の成分が純度99.999質量%以上の銅(Cu)であることが記載されており,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 また,訂正事項11のうち,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正については,訂正後の請求項間の引用関係を整理したものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって,訂正事項11は,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項11のうち,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正については,訂正前請求項1?3を引用する訂正前請求項4に係るボールボンディング用被覆銅ワイヤの「中間層の厚さ」又は「表皮層の厚さ」をさらに特定するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではない。 また,訂正事項11のうち,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正については,訂正後の請求項間の引用関係を整理したものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではない。 よって,訂正事項11は,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項11のうち,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正について,訂正前請求項1?3を引用する請求項4に係るボールボンディング用被覆銅ワイヤの「中間層の厚さ」又は「表皮層の厚さ」をさらに特定するに過ぎず,独立特許要件を満たさなくなるような新たな事情は存在しないから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項11は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (12)訂正事項12 ア 訂正の目的について 訂正事項12は,訂正前の請求項5が請求項1?3のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ,請求項1?3のいずれか1項の記載を引用する発明それぞれについて,訂正前請求項6?8のいずれか1項に記載の発明特定事項をさらに含むことを特定するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 また,訂正事項1により請求項1?3が削除され,訂正事項2?10により請求項間の引用関係を解消して訂正前の請求項6?8は独立項形式の請求項6?8及び10?15に訂正されることに伴い,訂正前の請求項4が引用する「請求項1?3の何れか1項」を訂正後の「請求項6?8及び10?15の何れか1項」を引用することを明記し,整合を図るものである。よって訂正事項12は,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正でもある。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項12のうち,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正については,明細書の表1に,実施例1?10の被覆銅ワイヤが,訂正前の請求項6?8のいずれか1項の特徴を備え,さらにリン(P)以外の芯材の成分が純度99.9999質量%以上の銅(Cu)であることが記載されており,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 また,訂正事項12のうち,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正については,訂正後の請求項間の引用関係を整理したものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって,訂正事項12は,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項12のうち,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正については,訂正前請求項1?3を引用する訂正前請求項5に係るボールボンディング用被覆銅ワイヤの「中間層の厚さ」又は「表皮層の厚さ」をさらに特定するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではない。 また,訂正事項12のうち,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正については,訂正後の請求項間の引用関係を整理したものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではない。 よって,訂正事項12は,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項12のうち,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正について,訂正前請求項1?3を引用する請求項5に係るボールボンディング用被覆銅ワイヤの「中間層の厚さ」又は「表皮層の厚さ」をさらに特定するに過ぎず,独立特許要件を満たさなくなるような新たな事情は存在しないから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項12は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (13)訂正事項13 ア 訂正の目的について 訂正事項13は,訂正前の請求項9が請求項1?3のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ,請求項1?3のいずれか1項の記載を引用する発明それぞれについて,訂正前請求項6?8のいずれか1項に記載の発明特定事項をさらに含むことを特定し,さらに訂正前請求項4又は5に記載の発明特定事項を含むことを特定するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 また,訂正事項1により請求項1?3が削除され,訂正事項2?10により請求項間の引用関係を解消して訂正前の請求項6?8は独立項形式の請求項6?8及び10?15に訂正されることに伴い,訂正前の請求項9が引用する「請求項1?3の何れか1項」を訂正後の「請求項6?8及び10?15の何れか1項」を引用することを明記し,整合を図るものである。また,訂正事項11?12により訂正前請求項4及び5は訂正後請求項16及び17に訂正されることに伴い,訂正後請求項16又は17を引用することを明記し,整合を図るものである。よって訂正事項13は,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正でもある。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項13のうち,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正については,明細書の表1に,実施例1,3?8,及び14?21の被覆銅ワイヤが,訂正前の請求項6?8のいずれか1項の特徴を備え,訂正前の請求項4又は5に記載の発明特定事項であるリン(P)以外の芯材の成分が純度99.999質量%以上又は純度99.9999質量%以上の銅(Cu)であることを充足し,訂正前の請求項9に記載の発明特定事項である表皮層の厚さが中間層の厚さよりも薄いことを充足することが記載されており,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 また,訂正事項13のうち,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正については,訂正後の請求項間の引用関係を整理したものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって,訂正事項13は,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項13のうち,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正については,訂正前請求項1?3のいずれか1項を引用する請求項9に係るボールボンディング用被覆銅ワイヤの「中間層の厚さ」,「表皮層の厚さ」及び「芯材の成分(銅の純度)」をさらに特定するものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではない。 また,訂正事項13のうち,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正については,訂正後の請求項間の引用関係を整理したものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではない。 よって,訂正事項13は,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項13のうち,特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正について,訂正前請求項1?3を引用する請求項9に係るボールボンディング用被覆銅ワイヤの「中間層の厚さ」,「表皮層の厚さ」及び「芯材の成分(銅の純度)」をさらに特定するに過ぎず,独立特許要件を満たさなくなるような新たな事情は存在しないから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項13は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (14)訂正事項14 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0007】には【特許文献4】の番号として「特許4203459号公報」と記載されている。しかし,当該文献は「電動ドライバ装置」の発明に関するものであり(甲第1号証参照),訂正前明細書の段落【0006】の「銅ボンディングワイヤの表面酸化を防ぐ方法として,金,銀,白金,パラジウム,ニッケル,コバルト,クロム,チタンなどの貴金属や耐食吐金属で銅を被覆したボンディングワイヤが提案されている(特許文献2?特許文献4参照)」との記載に整合していない。一方,「ボンディングワイヤーおよびそれを利用した集積回路デバイス」の発明に関する「特許4204359号公報」には,請求項3に「被覆層を形成する金属が,パラジウム,白金,ニッケルまたはこれらを主成分とする合金から選ばれる金属である・・・ボンディングワイヤー」が記載されていることから(甲第2号証参照),「特許4203459号公報」は「特許4204359号公報」の誤記であることは明白である。 訂正事項14は,明らかな誤記を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項14は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項14は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項14は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,独立特許要件を満たさなくなるような新たな事情は存在しないから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項14は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (15)訂正事項15 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0012】には「リン(P)は酸化によっての際に昇華する」と記載されているが,日本語として意味が不明である。本文脈において,リンが酸化して昇華することを意味すると理解することができる。 「酸化によっての際に」との記載を「酸化の際に」と訂正する訂正事項15は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項15は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項15は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (16)訂正事項16 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0012】及び【0014】には「酸化銅の発生を抑制する遅延させる」と記載され,訂正前明細書の段落【0016】には「酸化を防止す遅延させる」と記載されているが,日本語の文法に照らして誤りであり,不明瞭な記載である。訂正前明細書の段落【0017】には「酸化遅延の効果」との記載があり,上記記載の本来の意味が「酸化を遅延させる」ことであると理解できる。 「抑制する遅延させる」及び「防止す遅延させる」との記載を「遅延させる」に訂正する訂正事項16は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項16は,明細書の記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項16は,明細書の記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (17)訂正事項17 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0015】には「不純物元素はをなるべく含まない」と記載されているが,日本語として意味をなしておらず,不明瞭である。また,訂正前の同段落の「芯材の銅(Cu)-リン(P)合金には,・・・をなるべく含まない」との記載も日本語の文法に照らして誤りであり,不明瞭な記載である。 前者を「不純物元素をなるべく含まない」に訂正し,後者を「芯材の銅(Cu)-リン(P)合金は,・・・をなるべく含まない」に訂正する訂正事項17は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項17は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項17は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (18)訂正事項18 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0015】には「溶融した銅ボールが硬くなることはなくなるなりにくい傾向にある」と記載されているが,日本語として意味をなさず,不明瞭である。文脈から「硬くなることはなくなる」あるいは「硬くなりにくい傾向にある」が本来の意味であり,当該記載は「逆に不純物元素が少なくなればなるほど,」との記載に続くものであり,不純物元素の量の減少に伴い,硬くなりにくくなることを意味し,「硬くなりにくい傾向にある」が本来の意味であると理解できる。 訂正事項18は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項18は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項18は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (19)訂正事項19 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0016】及び【0018】には,銅の融点の単位として「度」が用いられているが,「度」は,「℃」や「゜F」など複数の温度の単位に解釈でき,一義的ではないため,不明瞭である。また,同段落の他の金属の融点の単位では「℃」が用いられており,これら記載と整合していない点でも不明瞭である。さらに,銅の融点が約1085℃であることは技術常識である(甲第3号証)。訂正事項19は,「度」を「℃」に変更することで,技術的意味を明確にするとともに,明細書中の他の記載に整合させるものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項19は,明細書中の記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項19は,明細書中の記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (20)訂正事項20 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0016】には「パラジウム(Pd)または白金(Pt)が薄皮となって,あるいは,パラジウム(Pd)と白金(Pt)との合金はが薄皮となって」と記載されているが,日本語として意味をなしておらず不明瞭である。前後の文脈から「合金はが薄皮となって」は「合金が薄皮となって」が本来の意味であると理解できる。 「合金はが薄皮となって」という記載を「合金が薄皮となって」に訂正する訂正事項20は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項20は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項20は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (21)訂正事項21 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0018】には「ワイや端面」と記載されているが,「ワイヤ端面」の誤記であることは明白である。 訂正事項21は,明らかな誤記を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項21は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項21は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項21は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,独立特許要件を満たさなくなるような新たな事情は存在しないから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項21は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (22)訂正事項22 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0018】には「表皮層の低融点の金(Au)が銅(Cu)よりも早く早期に融解して」と記載されている。「早く」と「早期に」と同義を重複して用いており,日本語の文法に照らして誤りであることは明白である。ここで,段落【0011】には「低融点の表皮層元素の金(Au)が中間層元素よりも早く溶融する」と記載されている。 「早く早期に融解して」という記載を「早く融解して」に訂正する訂正事項22は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項22は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項22は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (23)訂正事項23 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0018】には「薄皮が軟化し,して溶融ボールを形成する」と記載されているが,日本語として意味をなさず,「薄皮が軟化して溶融ボールを形成する」の誤記であることは明白である。 訂正事項23は,明らかな誤記を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項23は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項23は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項23は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,独立特許要件を満たさなくなるような新たな事情は存在しないから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項23は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (24)訂正事項24 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0018】には「先端部に」と記載されているが,下線が引かれている意図が不明であり,下線は削除すべき誤記であることが明白である。 訂正事項24は,明らかな誤記を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項24は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項24は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項24は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,独立特許要件を満たさなくなるような新たな事情は存在しないから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項24は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (25)訂正事項25 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0018】には「溶融(Cu)ボールの銅(Cu)」と記載されているが,「溶融ボール」及び「銅(Cu)」が正しい記載であり,「溶融(Cu)」の「(Cu)」は削除されるべき誤記であることは明白である。 訂正事項25は,明らかな誤記を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項25は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項25は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項25は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,独立特許要件を満たさなくなるような新たな事情は存在しないから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項25は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (26)訂正事項26 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0019】には「金(Au)の表皮層中間層の厚さは,」と記載されているが,表皮層と中間層のいずれの厚さを意図しているのか,不明瞭である。一方,段落【0018】には「2種類の被覆層のうち表皮層に金(Au)を用いた」と記載されているから,この記載に整合させるため,訂正事項26は,「金(Au)の表皮層中間層の厚さは,」との記載を「金(Au)の表皮層の厚さは,」に訂正するものである。 また,訂正前明細書の段落【0019】の末尾には,上述した表皮層の厚さの数値範囲が段階的に記載されているところ,好ましい範囲の上限値「0.020.1μm」,より好ましい範囲の上限値「0.010.02μm以下」の記載は,上限値として不明瞭である。そこで,好ましい範囲について,訂正前の請求項8の「表皮層の厚さが0.005?0.1μmである」に整合させて,訂正事項26は,「0.005?0.1μm」に訂正するものである。 さらに,より好ましい範囲について,「0.005?0.01μm」または「0.005?0.02μm」のいずれかと理解できるが,本文脈の「もっとも好ましくは0.005?0.01μm」との記載によれば,「より好ましい範囲」と「最も好ましい範囲」とが重複することはあり得ないから,より好ましい範囲は「0.005?0.02μm」が本来の意味であることは明白である。そこで,訂正事項26は,より好ましい範囲について,「0.005?0.02μm」に訂正するものである。 以上,訂正事項26は,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項26は,明細書の記載を特許請求の範囲の記載及び明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項26は,明細書の記載を特許請求の範囲の記載及び明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (27)訂正事項27 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0020】には「表皮層の金(Au)は,芯材の銅(Cu)と完全に固溶する。ない。」と記載されているが,「ない。」との記載は日本語として意味をなさず,削除されるべき誤記であることは明白である。 訂正事項27は,明らかな誤記を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項27は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項27は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項27は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,独立特許要件を満たさなくなるような新たな事情は存在しないから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項27は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (28)訂正事項28 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0020】には「また,2種類の被覆層である中間層と表皮層がは,」と記載されている。「がは,」との記載は日本語として意味をなさず,不明瞭である。当該記載は「表皮層が」又は「表皮層は」と記載されるべきことは明白である。 「表皮層がは」という記載を,「表皮層は」に訂正する訂正事項28は,日本語として明瞭でない記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項28は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項28は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (29)訂正事項29 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0020】には「第二ボンディングにおける超音波接合の際には,芯材の銅(Cu)が直接リードフレームに接合されるよりも被覆層によって芯材の銅(Cu)の酸化が防止されており,接合力が高い高くなる」と記載されているが,「高い高くなる」との表記は,日本語として意味をなさず不明瞭である。直前の「芯材の銅(Cu)が直接リードフレームに接合されるよりも」「被覆層によって」「酸化が防止されており」との記載は,芯材の銅が直接リードフレームに接合される場合と,被覆層をさらに含む場合とを対比することを意味し,被覆層を含むことによって酸化が防止され,接合力が高くなることを意味していることは明白である。 「高い高くなる」という記載を,「高くなる」に訂正する訂正事項29は,不明瞭な記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項29は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項29は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (30)訂正事項30 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0021】には「十分であるが,。」と記載されているが,日本語として意味をなさず,不明瞭である。 「十分であるが,。」という記載を,「十分である。」に訂正する訂正事項30は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項30は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項30は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (31)訂正事項31 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0021】の「時間を要するがかかる。」と記載されているが,日本語として意味をなしておらず,不明瞭である。 「時間を要するがかかる。」という記載を,「時間がかかる。」に訂正する訂正事項31は,不明瞭な記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項31は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項31は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (32)訂正事項32 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0021】には「・・・より良く発揮させる効果があるからである。具体的には,‥・をより遅らせるるためである効果があるからである。」と記載されているが,日本語として意味をなしておらず,不明瞭である。当該記載は前後の文脈から,「より遅らせる効果があるからである」であることは明白である。 「より遅らされるるためである効果があるからである。」という記載を,「より遅らされる効果があるからである。」に訂正する訂正事項32は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項32は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項32は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (33)訂正事項33 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0025】には「メッキ浴は,半導体用途で市販されているメッキ液メッキ浴を使用した」と記載されているが,「メッキ液メッキ浴」との記載は明瞭でない。市販されているのはメッキ液であり,メッキ液を入れた容器がメッキ浴であることは自明である。 「メッキ液メッキ浴」という記載を,「メッキ浴」に訂正する訂正事項33は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項33は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項33は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (34)訂正事項34 ア 訂正の目的について 明細書段落【0021】には,「メッキ浴には,リン酸ないしはリン酸塩が含まれることが好ましい・・・(中略)・・・白金(Pt)が析出するときにリン(P)を巻き込むことによって,第一ボンディングで芯材の銅(Cu)が溶融したときに,溶融銅(Cu)のボール表面におけるリン(P)の脱酸素効果をより良く発揮させる効果があるからである」と記載されているから,訂正前明細書の段落【0025】の「白金(Pt)は酸性のpt-pソルト浴」中の小文字の「p」はリンの原素記号である大文字の「P」の誤記であることは明白である。 訂正事項34は,明らかな誤記を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項34は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項34は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件について 訂正事項34は,明白な誤記を本来の意味に訂正するに過ぎず,独立特許要件を満たさなくなるような新たな事情は存在しないから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって,訂正事項34は,特許法第126条第7項の規定に適合する。 (35)訂正事項35 ア 訂正の目的について 訂正事項1により訂正前請求項1?5を削除し,訂正事項2?10により,中間層の厚さが0.005?0.2μmであることを発明特定事項とする請求項6,10及び13(「第1グループ」という。),中間層の厚さが0.01?0.1μmであることを発明特定事項とする請求項7,11及び14(「第2グループ」という。),表皮層の厚さが0.005?0.1μmであることを発明特定事項とする請求項8,12及び15(「第3グループという」。)が訂正後の特許請求の範囲に記載されている。 訂正前明細書の実施例11は,表皮層の厚さが0.12μmであるから第3グループの範囲外であると共に,中間層の厚さが0.22μmであるから第1及び第2グループの範囲外となっている。 訂正前明細書の実施例12は,表皮層の厚さが0.13μmであるから第3グループの範囲外であると共に,中間層の厚さが0.24μmであるから第1及び第2グループの範囲外となっている。 訂正前明細書の実施例13は,表皮層の厚さが0.15μmであるから第3グループの範囲外であると共に,中間層の厚さが0.30μmであるから第1及び第2グループの範囲外となっている。 以上,訂正前明細書の実施例11?13は,訂正後の特許請求の範囲に記載されている第1グループ?第3グループのすべての発明特定事項を充足しないから,「実施例」との記載は訂正後特許請求の範囲との間で不明瞭となっている。 訂正事項33は,訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるため,訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなる訂正前の表1及び表2に記載されていた「実施例11?13」を「参考例11?13」に訂正し,訂正前の段落【0034】の「実施例1,3,6,8,10,12,15,18及び21」との記載を「実施例1,3,6,8,10,15,18及び21並びに参考例12」に訂正し,訂正前の段落【0034】の「実施例2,4,5,7,9,11,14,16,17及び22」との記載を「実施例2,4,5,7,9,14,16,17及び22並びに参考例11」に訂正し,同段落【0034】及び【0035】の「実施例13」との記載を「参考例13」に訂正し,同段落【0035】の「実施例11?13」との記載を「参考例11?13」に訂正し,同段落【0035】の「実施例11,12」との記載を「参考例11,12」に訂正するものである。 したがって,訂正事項35は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項35は,訂正事項1?10に伴い,特許請求の範囲に含まれなくなる態様を「参考例」に訂正するものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項35は,訂正事項1?10に伴い,特許請求の範囲に含まれなくなる態様を「参考例」に訂正するものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (36)訂正事項36 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0027】には「市販の自動ワイヤボンダ((株)新川製。の超音波熱圧着ワイヤ・ボンダ「UTC-1000型UTC-1000(商品名)」」と記載されているが,日本語として不明瞭である。株式会社新川は,半導体製造装置のパイオニアであり,2001年に新コンセプトワイヤボンダ「UTC-1000」を発表したことが認められる(甲第4号証及び甲第5号証)。したがって,当該記載は「市販の自動ワイヤボンダ((株)新川製の超音波熱圧着ワイヤ・ボンダ「UTC-1000(商品名)」」が本来の意味であることは明白である。 訂正事項36は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項36は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項36は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (37)訂正事項37 ア 訂正の目的について訂正前明細書の段落【0027】には「ウェッジステッチ接合した」と記載されているが,「ウェッジ」と「ステッチ」は同じ意味であることから記載が重複しており不明瞭である。また,この記載の直前には「ボンディングワイヤの接続には,(・・・中略・・・)を使用して,ボール/ステッチ接合を行った」と記載されており,上記記載はこの試験条件をさらに具体的に説明するものであること,接合試験の評価結果について同段落【0035】には「ステッチ接合性,圧着形状が良好であることが確認された」と記載されていることから,訂正事項37は,これらの記載に整合させるために,段落【0027】の「ウェッジステッチ接合」との記載を「ステッチ接合」に訂正するものである。 したがって,訂正事項37は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項37は,明瞭でない記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項37は,明瞭でない記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (38)訂正事項38 ア 訂正の目的について訂正前明細書の段落【0030】には「花弁状等のボール圧着部の外周部が8本以上」と記載されているが,「外周部」が「8本」とは意味が不明瞭である。同段落には「花弁状変形が3?7本」及び「花弁状変形が2本以下」と記載されており,「花弁状等のボール圧着部の外周部が8本以上」が「花弁状等のボール圧着部の外周部の花弁状変形が8本以上」を意味することは明白である。 訂正事項38は,不明瞭な日本語表記を明瞭な表記に訂正するものであり,特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項38は,明細書の他の部分の記載に基づき,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項38は,明瞭でない記載を本来の意味に訂正するに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (39)訂正事項39 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0031】には「アルミニウム(Al)パッド部をアルカリ溶解した際に露出するシリコンチップに割れが発生していた場合は,その個数を表記した」と記載されているが,表2には,個数の代わりに評価(◎,○,△,×)が表記されているから,表2の記載と一致せず,不明瞭である。 訂正事項39は,訂正前明細書の段落【0031】の記載を表2の記載に整合させ,「その個数を表記した」との記載を「その個数を計数して評価を◎印,○印,△印又は×印で表記した」に訂正するものである。 したがって,訂正事項39は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項39は,明瞭でない記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項39は,明瞭でない記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (40)訂正事項40 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0034】には「第3被覆銅ワイヤに係わるボンディングワイヤ(Au/(Pt・Pd)/CuP)は実施例11?19及び20であり」と記載されているが,訂正前の表2によれば実施例11,12,14?18は中間層にPtとPdの両者を含んでいるものではないため,不明瞭である。 そこで,訂正前の実施例13,19,及び20が第3被覆銅ワイヤに係るものであり,訂正事項35により「実施例13」は「参考例13」に訂正されているから,訂正事項40は,「実施例11?19及び20」との記載を「実施例19及び20並びに参考例13」に訂正するものである。 したがって,訂正事項40は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項40は,明瞭でない記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項40は,明瞭でない記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (41)訂正事項41 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0035】には「実施例5,8,15,18,及び20?22に係る5?10のボンディングワイヤは,上記の実施例1?5のに係るボンディングワイヤよりやや劣る」と記載されている。「実施例5,8,15,18,及び20?22に係る5?10」の「係る5?10」の意味及び「実施例1?5のに係る」の意味が不明であり,「実施例5‥のボンディングワイヤは,実施例1?5のに係るボンディングワイヤよりやや劣る」との記載では実施例5が実施例5より劣ると読めるため意味が不明であると認められる。 そこで,同記載の前には実施例1?4,6,7,9,10,14,16,17及び19の結果が記載され,後には訂正前の実施例11?13の結果が記載されており,本文脈は直前及び直後に説明されている実施例以外の実施例についての説明であることは明らかであるから,訂正事項41は,訂正前明細書の段落【0035】の「実施例5,8,15,18,及び20?22に係る5?10の」との記載を「実施例5,8,15,18,及び20?22に係る」に訂正し,「上記の実施例1?5のに係る」との記載は実際に上記されている実施例番号にあわせて,「上記の実施例1?4,6,7,9,10,14,16,17及び19に係る」に訂正するものである。 したがって,訂正事項41は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項41は,明瞭でない記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項41は,明瞭でない記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 (42)訂正事項42 ア 訂正の目的について 訂正前明細書の段落【0035】には「実施例11?13に係るボンディングワイヤは,上記の実施例に係るボンディングワイヤより少し劣るものの,実施例1?5のボンディングワイヤと同様に,ボール部の真球性,真円性に優れ,及びチップダメージも少なくに比較例のような欠陥がなく,ウェッジ接合性,圧着形状がよいことが確認された」と記載されている。また,訂正事項35により,訂正前の「実施例11?13」を「参考例11?13」に訂正している。なお,訂正後の表2には,参考例11?13の評価は,実施例1?5のボンディングワイヤと同様とはいえず,訂正前明細書の段落【0035】の上記記載は訂正前後の表2の結果と一部が整合していないため不明瞭である。 訂正事項42は,訂正前明細書の段落【0035】から表2の結果と整合しない記載を削除して明瞭な記載とするものである。 したがって,訂正事項42は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項42は,明瞭でない記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 訂正事項42は,明瞭でない記載を明細書中の他の記載に整合させるものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。 2 小括 以上のとおりであるから,本件訂正審判の請求は,特許法第126条第1項ただし書第1号?第4号に掲げる事項を目的とするものであって,かつ,同条第5項?第7項の規定に適合する。 第4 平成30年9月10日付け上申書について 審判請求人は平成30年9月10日付けで上申書を提出し,本件特許に関する平成28年(ワ)第2688号事件において,以下の無効理由1?3に基づく特許無効の抗弁がされた旨,上申している。 無効理由1:新規性欠如(特許法第29条第1項第3号違反) 無効理由2:進歩性欠如(特許法第29条第2項違反) 無効理由3:サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号違反),実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号違反) しかしながら,上記上申書の内容を検討しても,上記無効理由1?3は,前記「第3 当審の判断」の「1 訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び拡張・変更の存否,独立特許要件について」の「独立特許要件」の判断を左右するものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから,本件訂正審判の請求は,特許法第126条第1項ただし書第1号?第4号に掲げる事項を目的とするものであって,かつ,同条第5項?第7項の規定に適合する。 よって,結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ボールボンディング用被覆銅ワイヤ 【技術分野】 【0001】 本発明は、半導体素子上の電極と回路配線基板の配線とをボールボンディングで接続するために利用される被覆銅ワイヤに関する。 【背景技術】 【0002】 現在、半導体素子上の電極と外部端子との間をボールボンディングで接合するボンディングワイヤとして、線径20?50μm程度の金線が主に使用されている。この金線の接合には超音波併用熱圧着方式が一般的であり、汎用ボンディング装置、ワイヤをその内部に通して接続に用いるキャピラリ冶具等が用いられる。第一ボンディングでは、ワイヤ先端をアーク入熱で加熱溶融し、表面張力によりボールを形成させた後に、150?300℃の範囲に加熱した半導体素子の電極上にこのボール部を圧着接合せしめる。その後、キャピラリ冶具でワイヤに所定のループを描いた後、第二ボンディングでは、直接ワイヤを外部リード側に超音波圧着により接合させて引きちぎる。 【0003】 近年、半導体実装の構造・材料・接続技術等は急速に多様化しており、例えば、実装構造では、現行のリードフレームを使用したQFP(Quad Flat Packaging)に加え、基板、ポリイミドテープ等を使用するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Scale Packaging)等の新しい形態が実用化され、ループ性、接合性、量産使用性等をより向上したボンディングワイヤが求められている。 【0004】 ボンディングワイヤの接合相手となる材質も多様化しており、シリコン基板上の配線、電極材料では、従来のAl合金に加えて、より微細配線に好適なCuが実用化されている。また、リードフレーム上にはAgメッキ、Pdメッキ等が施されており、また、樹脂基板、テープ等の上には、Cu配線が施され、その上に金等の貴金属元素及びその合金の膜が施されている場合が多い。こうした種々の接合相手に応じて、ワイヤの接合性、接合部信頼性を向上することが求められる。 【0005】 これまでの高純度4N系(純度が99.99質量%以上)の金線に替わり、当初は高純度3N?6N系(純度が99.9?純度99.9999質量%以上)の銅線の利用が考えられた。しかし、銅線は酸化しやすい欠点があった。ワイヤボンディング技術からの要求では、ボール形成時に真球性の良好なボールを形成し、そのボール部と電極との接合部で十分な接合強度を得ることが重要であるが、特に第一ボンディングで溶融ボールを形成する時、溶融銅は大気中の酸素を巻き込んで酸化し固化するため、ボールが硬くなり、半導体チップを割ってしまうという致命的な欠陥があった。このため高純度3N?6N系の銅線は還元性雰囲気で使用せざるを得ず、ボールボンディング用被覆銅ワイヤの半導体装置への応用範囲は限定的なものであった。 【0006】 他方、CuやCu-Sn等の芯材の外周に0.002?0.5μmのPd、Pd-Ni、Pd-Co等の被覆層を設け、耐食性並びに強度を改良することができる考案が提案されている(特許文献1参照)。また、銅ボンディングワイヤの表面酸化を防ぐ方法として、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、クロム、チタンなどの貴金属や耐食性金属で銅を被覆したボンディングワイヤが提案されている(特許文献2?特許文献4参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0007】 【特許文献1】実開昭60-160554号公報 【特許文献2】特開昭62-97360号公報 【特許文献3】特開2005-167020号公報 【特許文献4】特許4204359号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 ところが、被覆銅ワイヤであっても、第二ボンディングで被覆銅ワイヤを引きちぎると、先端の切断面に芯材の銅が露呈し、露出面の銅が酸化してしまう。このため第一ボンディングで被覆銅ワイヤをボールアップしようとすると、貴金属でコーティングされている銅芯材は酸化しないが、溶融固化したボールの底部に露出面の銅の酸化膜が痕跡として残ることで、半導体チップに取り付けられるべきボール部が硬化してしまい、第一ボンディングのボール接合時に半導体チップの損傷を与えることが問題となる。 【0009】 本発明は、上記事情に鑑みて、ボールボンディング用被覆銅ワイヤにおいて、引きちぎり後のボールアップに際してCuまたはCu合金芯材の酸化による不都合を回避することができるボールボンディング用被覆銅ワイヤを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 上記課題を解決するための本発明は、下記の構成を要旨とする。 (1)銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-1?500質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなることを特徴とするボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 (2)銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-1?80質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなることを特徴とするボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 (3)銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-200?400質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなることを特徴とするボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 (4)リン(P)以外の芯材の成分が純度99.999質量%以上の銅(Cu)である上記(1)?(3)の何れかに記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 (5)リン(P)以外の芯材の成分が純度99.9999質量%以上の銅(Cu)である上記(1)?(3)の何れかに記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 (6)中間層の厚さが0.005?0.2μmである上記(1)?(3)の何れかに記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 (7)中間層の厚さが0.01?0.1μmである上記(1)?(3)の何れかに記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 (8)表皮層の厚さが0.005?0.1μmである上記(1)?(3)の何れかに記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 (9)表皮層の厚さが中間層の厚さよりも薄いものである上記(1)?(3)の何れかに記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれは、第二ボンディングの切断時に芯材の銅が露出しても、第一ボンディングにおける溶融ボール形成時に、低融点の表皮層元素の金(Au)が中間層元素よりも早く溶融することにより、露出していた芯材の銅の酸化部分にまで表皮層元素が拡がることに加えて,芯材の銅が含有するリン(P)の脱酸素効果により、表皮層近傍でリン(P)が濃縮することにより芯材の銅の酸化部分を分断消去させることで、溶融ボール形成時に芯材の銅の酸化部分の影響がないようにすることが出来る。 【発明を実施するための形態】 【0012】 本発明の被覆銅ワイヤの一つは、芯材が銅(Cu)-1?500質量ppmリン(P)合金から構成されている。1?500質量ppmのリン(P)を含有せしめるのは、リン(P)の脱酸素作用により芯材の露出部に形成された銅(Cu)の酸化膜を分解除去するためである。溶融ボール表面上に存在するリン(P)は、酸化の際に昇華する。この際、リン(P)は芯材表層近傍に濃縮層を形成することにより芯材表面に形成される酸化銅の発生を遅延させることができ、後述の金(Au)表皮層とあいまって銅(Cu)表面の酸化膜厚を最低限に抑えることが出来る。 【0013】 本発明の被覆銅ワイヤの一つは、芯材が銅(Cu)-1?80質量ppmリン(P)合金から構成されている。リン(P)は微量でも、銅ワイヤの再結晶温度を上昇させ、ワイヤ自体の強度を硬くする効果があるからである。また、銅(Cu)の純度が高くなればなるほど、リン(P)に及ぼす不純物の影響が少なくなるため、リン(P)の添加量は少なくて済む。 【0014】 本発明の被覆銅ワイヤの一つは、芯材が銅(Cu)-200?400質量ppmリン(P)合金から構成されている。リン(P)以外の不純物元素が数十質量ppm程度存在していても、芯材表面に形成される酸化銅の発生を遅延させることができるからである。 【0015】 ただし、芯材の銅(Cu)-リン(P)合金は、リン(P)以外の不純物元素をなるべく含まないことが好ましい。これらの不純物元素が大気中の酸素と反応して酸化物を形成し、第一ボンディングの際の溶融した銅ボールを硬くするからである。逆に不純物元素が少なくなればなるほど、リン(P)の含有量を数百質量ppm程度に多くしても、溶融した銅ボールが硬くなりにくい傾向にある。具体的には、リン(P)以外の芯材の成分が純度99.999質量%以上の銅(Cu)であることが好ましく、純度99.9999質量%以上の銅(Cu)であることがより好ましい。ここで、「純度99.999質量%以上」とは、リン(P)および銅(Cu)以外の金属の不純物元素が0.001質量%未満であることをいい、銅(Cu)中に存在する酸素や窒素や炭素などのガス状元素を除いたものをいう。 【0016】 2種類の被覆層のうち中間層は、パラジウム(Pd)または白金(Pt)あるいはパラジウム(Pd)と白金(Pt)との合金から構成される。パラジウム(Pd)の融点(1554℃)および白金(Pt)の融点(1770℃)は、いずれも銅(Cu)の融点(約1085℃)よりも高い。このため芯材の銅(Cu)が球状の溶融ボールを形成していく最初の段階で、パラジウム(Pd)または白金(Pt)が薄皮となって、あるいは、パラジウム(Pd)と白金(Pt)との合金が薄皮となって溶融ボールの側面からの酸化を遅延させる。 【0017】 中間層の厚さは、0.005?0.2μmであることが好ましく、0.01?0.1μmであることがより好ましい。0.005μm未満の場合は、薄皮としての酸化遅延の効果が十分ではなくなる傾向にあり、0.2μmを超えると銅(Cu)の純度を下げ、銅ボールの合金化によってチップ割れが起きやすくなる傾向にあるからである。 【0018】 しかし、パラジウム(Pd)または白金(Pt)の薄皮あるいはパラジウム(Pd)と白金(Pt)との合金の薄皮は、溶融銅ボールの内部に吸収されてしまうので、この薄皮が芯材の露出部、すなわち銅ボールの先端部にアーク放電で形成された銅(Cu)の酸化膜まで覆い尽くすことはない。しかも、最外層の融点がより高くなり、アーク放電に、より大きなエネルギーが必要になるためワイヤ端面の酸化が促進される。そこで、芯材の銅(Cu)が球状の溶融ボールを形成していく段階で、芯材が露出した部分の酸化を防止する手段が必要となる。このため本発明では、芯材にリン(P)を含有させるほか、2種類の被覆層のうち表皮層に金(Au)を用いた。金(Au)の融点(約1064℃)は、銅(Cu)の融点(約1085℃)よりも低いので、銅(Cu)が球状の溶融ボールを形成していく段階で、表皮層の低融点の金(Au)が銅(Cu)よりも早く融解してワイヤ端面をすばやく包み、銅(Cu)の融解を促進する。次いで、銅(Cu)が融解してから、中間層のパラジウム(Pd)または白金(Pt)の薄皮あるいはパラジウム(Pd)と白金(Pt)との合金の薄皮が軟化して溶融ボールを形成する。このように銅(Cu)の溶融ボールが形成される過程で、低融点の金(Au)の表皮層が銅(Cu)の融解を促進し、金(Au)の表皮層がない場合にくらべてパラジウム(Pd)または白金(Pt)等の薄皮を溶融銅ボールの内部にいち早く吸収させることによって、先端部に露出した芯材の銅(Cu)を金(Au)が覆うことで溶融ボールの銅(Cu)の酸化を防止することができるものと思われる。 【0019】 2種類の被覆層のうち、表皮層の厚さは中間層の厚さよりも薄いことが好ましい。表皮層が厚くなれば、溶融するのに時間がかかり、銅(Cu)の融解を促進する効果が薄れるとともに、溶融銅ボールの表面偏析による合金化によって溶融銅ボール自体が硬くなり、半導体チップの割れが起きやすくなるからである。表皮層の厚さとしては、パラジウム(Pd)または白金(Pt)等の薄皮を溶融銅ボールの内部にいち早く吸収させ、溶融銅ボール芯材の露出部に形成された銅(Cu)の酸化を防ぐに足りる厚さがあれば十分である。具体的には、金(Au)の表皮層の厚さは、0.005?0.1μmであることが好ましく、より好ましくは0.005?0.02μmであり、もっとも好ましくは0.005?0.01μmである。 【0020】 中間層のパラジウム(Pd)または白金(Pt)および表皮層の金(Au)は、溶融ボールを形成しても酸化しない元素である。また、これらの元素は、銀(Ag)のように大気中のイオウ(S)と反応しないので、芯材の銅(Cu)に悪影響を与えない。しかも、パラジウム(Pd)または白金(Pt)の元素は、芯材の銅(Cu)に含まれるリン(P)にも悪影響を及ぼさず、表皮層の金(Au)は、芯材の銅(Cu)と完全に固溶する。その結果、第一ボンディングにおいて溶融した銅ボールが凝固していく過程で、銅(Cu)ボールに及ぼすリン(P)の脱酸素作用は、被覆層の有無に関わらず、半導体チップに対して同等である。また、2種類の被覆層である中間層と表皮層は、貴金属で形成されているので、第二ボンディングにおける超音波接合の際には、芯材の銅(Cu)が直接リードフレームに接合されるよりも被覆層によって芯材の銅(Cu)の酸化が防止されており、接合力が高くなるという効果がある。 【0021】 金(Au)の表皮層およびパラジウム(Pd)または白金(Pt)等の中間層を銅の芯材の表面に形成するには、メッキ法がよい。メッキ法では、電解メッキ、無電解メッキ、溶融塩メッキ等が可能である。ストライクメッキ、フラッシュメッキと呼ばれる薄い膜厚を得る電解メッキは、メッキ速度が速く、下地との密着性も良好であるので、電解メッキをする場合には好ましい。無電解メッキに使用する溶液は、置換型と還元型に分類され、金(Au)の表皮層のように膜が薄い場合には置換型メッキのみでも十分である。中間層のパラジウム(Pd)または白金(Pt)のようにある程度厚い膜を形成する場合には、置換型メッキの後に自己触媒型の還元型メッキを施すことが有効である。無電解法は装置等が簡便であり、容易であるが、電解法よりも時間がかかる。メッキ浴には、リン酸ないしはリン酸塩が含まれることが好ましい。金(Au)やパラジウム(Pd)や白金(Pt)が析出するときにリン(P)を巻き込むことによって、第一ボンディングで芯材の銅(Cu)が溶融したときに、溶融銅(Cu)のボール表面におけるリン(P)の脱酸素効果をより良く発揮させる効果があるからである。具体的には、芯材の露出部に形成された銅(Cu)の酸化膜を分解除去する効果があり、また、溶融銅(Cu)の酸化をより遅らせる効果があるからである。 【0022】 一方、物理的な蒸着法では、スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着等の物理吸着と、プラズマCVD等の化学吸着を利用することができる。いずれも乾式であり、コストを考慮しなければ、膜形成後の洗浄が不要であり、洗浄時の表面汚染等の心配がない。 【0023】 メッキ又は蒸着を施す段階については、太径の芯材にメッキ膜又は蒸着膜を形成してから、狙いの線径まで複数回ダイス伸線する手法が有効である。メッキ又は蒸着の結晶組織が伸線加工により塑性加工された組織に変性するからである。好ましい被覆手段は、ストライクメッキを施した後、電解メッキ浴中に太い銅(Cu)芯線を浸漬して中間層および表皮層の電気メッキ膜を形成した後に、この被覆銅ワイヤを伸線して最終径に到達する手法等が可能である。必要な場合は、パラジウム(Pd)または白金(Pt)によるストライクメッキを行うことが好ましい。 【0024】 表皮層が2種以上の金属からなる複数の層を形成する場合に、複数の異なる金属層をメッキ法、蒸着法、溶融法等により段階的に形成することになる。その際に、異なる金属を全て形成してから熱処理する方法、1層の金属層の形成ごとに熱処理を行い、順次積層していく方法等が有効である。 【実施例】 【0025】 以下、実施例について説明する。 所定量のリン(P)を含有させた純度の銅(Cu)インゴットから500μmの線径まで伸線加工した銅ワイヤを芯材とし、そのワイヤ表面にストライクメッキをしてから通常の方法で電解メッキを行った。中間層としてパラジウム(Pd)及び/又は白金(Pt)を被覆した3種類の線材を用意し、表皮層としてこの3種類の線材に金(Au)を直接被覆した。メッキ浴は、半導体用途で市販されているメッキ液を使用した。具体的には、パラジウム(Pd)は中性のジニトロジアンミンパラジウム浴に10gW/lのリン酸塩を添加したもの、白金(Pt)は酸性のPt-Pソルト浴、金(Au)は中性のシアン化金浴に100gW/lのリン酸塩を添加したものをそれぞれ使用した。その後、この被覆銅ワイヤを最終径の25μmまでダイス伸線して、最後に加工歪みを取り除き、伸び値が10%程度になるように熱処理を施した。最終のめっき厚等は、表1のとおりである。なお、メッキ厚はオージェ電子分光法(AES)で測定した。 【0026】 【表1】 【0027】 ボンディングワイヤの接続には、市販の自動ワイヤボンダ((株)新川製の超音波熱圧着ワイヤ・ボンダ「UTC-1000(商品名)」)を使用して、ボール/ステッチ接合を行った。窒素雰囲気中でアーク放電によりワイヤ先端にボールを作製し、それをシリコン基板上の0.8μmアルミニウム(Al-0.5%Cu)電極膜に接合し、ワイヤ他端を4μmAgメッキした200℃のリードフレーム上に周波数1/200サイクル、2kWでステッチ接合した。 【0028】 なお、第一ボンディングの条件は、次のとおりである。 (接合温度:200℃。初期ボール径:40?60μm) 試験結果を表2に示す。 【0029】 初期ボール形状の観察では、接合前のボールを20本観察して、形状が真球であるか、寸法精度が良好であるか等を判定した。異常形状のボール発生が2本以上であれば不良であるため×印、異形が2本以下だが、ワイヤに対するボール位置の芯ずれが顕著である個数が5個以上である場合には△印、芯ずれが2?4個であれば実用上の大きな問題はないと判断して○印、芯ずれが1個以下で寸法精度も良好である場合は、ボール形成は良好であるため◎印で表記した。 【0030】 圧着ボール部の接合形状の判定では、接合されたボールを500本観察して、形状の真円性、寸法精度等を評価した。ボール圧着径は、ワイヤ径の2?3倍の範囲になる条件を選定した。真円からのずれが大きい異方性や楕円状等の不良ボール形状が5本以上であれば不良と判定し×印、不良ボール形状が2?4本、又は花弁状等のボール圧着部の外周部の花弁状変形が8本以上であれば改善が必要であるため△印、不良ボール形状が1本以下、且つ、花弁状変形が3?7本であれば実用上は問題ないレベルと判定し○印、花弁状変形が2本以下であれば良好であるため◎印で表記した。 【0031】 溶融ボールの酸化については、ボールボンディング時に割れが発生していないかを、50個のチップで確認した。アルミニウム(Al)パッド部をアルカリ溶解した際に露出するシリコンチップに割れが発生していた場合は、その個数を計数して評価を◎印、○印、△印又は×印で表記した。 【0032】 ステッチ接合の評価においては、銀(Ag)メッキしたリードフレームに超音波熱圧着したボンディングループについて、その長さがステッチ側から20%の部分をプルフックで垂直に引っ張ったときに破断に至った荷重を計測した。50個のループで計測した平均値をmNで表記した。 表2には、本発明に係る被覆銅ワイヤの評価結果を示している。 【0033】 【表2】 【0034】 第1被覆銅ワイヤに係わるボンディングワイヤ(Au/Pd/CuP)は実施例1、3、6、8、10、15、18及び21並びに参考例12であり、第2被覆銅ワイヤに係わるボンディングワイヤ(Au/Pt/CuP)は実施例2、4、5、7、9、14、16、17及び22並びに参考例11であり、第3被覆銅ワイヤに係わるボンディングワイヤ(Au/(Pt・Pd)/CuP)は実施例19及び20並びに参考例13であり、第3被覆銅ワイヤに係るボンディングワイヤを900℃×20秒間熱処理したもの(Au/(Pt・Pd)/CuP)は参考例13に相当する。表1の比較例23?30には、本発明の請求項に該当しないボンディングワイヤの結果を示す。 【0035】 実施例1?4、6、7、9、10、14、16、17及び19のボンディングワイヤは、ボール部の真球性、真円性に優れ、チップダメージが無く、ステッチ接合性、圧着形状が良好であることを確認した。これらの特性は、比較例23?30の本発明の請求項に該当しない銅以外の元素の膜を単に表面に形成したCuワイヤでは十分でなかった。 実施例5、8、15、18、及び20?22に係るボンディングワイヤは、上記の実施例1?4、6、7、9、10、14、16、17及び19に係るボンディングワイヤよりやや劣るものの、ボール部の真球性、真円性に優れ、チップダメージも少なく、ステッチ接合性、圧着形状がよいことが確認された。 参考例11?13に係るボンディングワイヤは、上記の実施例に係るボンディングワイヤより少し劣るものの、比較例のような欠陥がなく、ウェッジ接合性がよいことが確認された。なお、参考例13のボンディングワイヤは、参考例11、12のボンディングワイヤと同様の結果を示した。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】(削除) 【請求項6】 銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-1?500質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり、 中間層の厚さが0.005?0.2μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項7】 銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-1?500質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり、 中間層の厚さが0.01?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項8】 銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-1?500質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり、 表皮層の厚さが0.005?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項9】(削除) 【請求項10】 銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-1?80質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(AU)の表皮層とからなり、 中間層の厚さが0.005?0.2μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項11】 銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-1?80質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり、 中間層の厚さが0.01?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項12】 銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-1?80質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり、 表皮層の厚さが0.005?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項13】 銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-200?400質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり、 中間層の厚さが0.005?0.2μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項14】 銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-200?400質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり、 中間層の厚さが0.01?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項15】 銅(Cu)を主成分とする芯材と、該芯材の上に2種類の被覆層を有するボールボンディング用被覆銅ワイヤであって、前記芯材が銅(Cu)-200?400質量ppmリン(P)合金からなり、かつ、前記被覆層がパラジウム(Pd)または白金(Pt)の中間層および金(Au)の表皮層とからなり、 表皮層の厚さが0.005?0.1μmであるボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項16】 リン(P)以外の芯材の成分が純度99.999質量%以上の銅(Cu)である請求項6?8及び10?15の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項17】 リン(P)以外の芯材の成分が純度99.9999質量%以上の銅(Cu)である請求項6?8及び10?15の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 【請求項18】 表皮層の厚さが中間層の厚さよりも薄いものである請求項6?8及び10?17の何れか1項に記載のボールボンディング用被覆銅ワイヤ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2019-01-08 |
結審通知日 | 2019-01-10 |
審決日 | 2019-01-22 |
出願番号 | 特願2009-69462(P2009-69462) |
審決分類 |
P
1
41・
853-
Y
(H01L)
P 1 41・ 856- Y (H01L) P 1 41・ 852- Y (H01L) P 1 41・ 851- Y (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田中 永一 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
河合 俊英 梶尾 誠哉 |
登録日 | 2009-07-31 |
登録番号 | 特許第4349641号(P4349641) |
発明の名称 | ボールボンディング用被覆銅ワイヤ |
代理人 | 松山 美奈子 |
代理人 | 松山 美奈子 |