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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F17D 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F17D |
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管理番号 | 1349019 |
審判番号 | 不服2017-16918 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-14 |
確定日 | 2019-03-11 |
事件の表示 | 特願2013- 95213号「オフショア防食被覆系用損耗インジケータシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日出願公開、特開2013-231511号、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年4月30日(パリ条約による優先権主張2012年4月30日 ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成28年2月15日に手続補正書及び上申書が提出され、平成28年12月16日付けで拒絶理由が通知され、平成29年3月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年7月10日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成29年11月14日に拒絶査定不服審判が請求され、平成30年8月16日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成31年1月17日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年7月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1ないし9に係る発明は、以下の引用例Aないし引用例Iに記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用例一覧> A.米国特許第4523141号明細書 B.国際公開第2011/095326号(特表2013-518946号公報 参照) C.国際公開第2010/094528号(特表2012-518142号公報 参照) D.特開2003-343767号公報 E.特開2012-77601号公報 F.特開2012-31860号公報 G.特開昭63-214589号公報 H.特開2000-177042号公報 I.実願昭55-128924号(実開昭57-51886号)のマイクロフィルム 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 [理由1]本件出願の請求項1ないし9に係る発明は、以下の刊行物1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用例一覧> 引用例1:米国特許第4523141号明細書 (拒絶査定時の引用例A) 引用例2:特開昭63-214589号公報 (拒絶査定時の引用例G) 引用例3:国際公開2010/094528号(日本語訳として特表2012-518142号を参照。)(拒絶査定時の引用例C) 引用例4:特開2012-77601号公報(拒絶査定時の引用例E) 引用例5:特開2012-31860号公報(拒絶査定時の引用例F) [理由2]本件出願は、特許請求の範囲における請求項3ないし9の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 請求項3の記載における「DIN EN 20105-A02」に基づく「4のグレースケール」に相当するコントラストとは、どの程度のコントラストを意味するのか不明である。 よって、請求項3及び請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4ないし9に係る発明は明確ではない。 第4 本願発明 本願請求項1ないし請求項8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成31年1月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも上位の層と下位の層とを有する防食被覆を備えた金属管から成る管材であって、該管材はオフショア構造物に組み付けられるか、又は水中に敷設されるものであり、 前記下位の層は、該下位の層の上位に位置する単数又は複数の層の損傷時に光信号又は電気信号が検出され得るように形成されており、 前記下位の層は導電性に設計され、前記上位の層は電気絶縁性に設計されていて、水に面しており、 前記上位の層の損傷を検出する検出手段を備え、該検出手段は、一方が水に晒され、他方が前記下位の層に接続するように配置された抵抗測定器であり、 前記金属管の表面と前記下位の層との間には、セラミック層と付着促進剤層と繊維強化材のグループのみから選択された少なくとも1つの層が介在されていることを特徴とする、管材。 【請求項2】 前記下位の層と前記上位の層とは、光学的にコントラスト調整されている、請求項1記載の管材。 【請求項3】 前記上位の層と前記下位の層とは、ポリマー材料からなる、請求項1又は2記載の管材。 【請求項4】 前記上位の層は、押し出し成形により被着されるポリアミド成形材料からなる、請求項3記載の管材。 【請求項5】 請求項1から4までのいずれか1項記載の管材の、オフショア構造物に組み付けるためか、又は水中に敷設される配管を製造するための使用。 【請求項6】 オフショア構造物の基礎構造への組み付けを行う、請求項5記載の使用。 【請求項7】 前記オフショア構造物は、風力発電施設、掘削用プラットフォーム又は灯台である、請求項5又は6記載の使用。 【請求項8】 前記オフショア構造物は風力発電施設であり、前記基礎構造は、モノパイル、ジャケット、トリポッド、クワドロポッド又はトリパイルである、請求項6記載の使用。」 第5 引用例、引用発明等 1.当審拒絶理由で引用した引用例 (1)引用例1 引用例1には、「外側バリア層18と、中間層16とを有する腐食防止のための被覆を備えたパイプラインで使用される鋼管10であって、 中間層16は、中間層16の表面側に位置する外側バリア層18に不連続部が生じた時に視覚的検査、または導電性のテストにより検出することができるものであって、 中間層16は導電性のカーボンブラックを含むポリエチレンからなるものであり、外側バリア層18はポリエチレンからなるものであって、 外側バリア層18に生じた不連続部を検出する装置を備え、該装置は1つの極が中間層16に接続するように配置された導電性テスト装置であり、 鋼管10の表面と中間層16との間に、プライマー及び腐食防止コーティング層12及び発泡ポリウレタンプラスチック層14を設けた、鋼管10。」という発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(第1欄第4ないし31行 "This invention...outer barrier layer" 、第2欄第3ないし58行 "It has now been...the finished pipe",第2欄第64行ないし第3欄第16行 "As shown in FIG.1...the outer layer" の記載及びFig.1を参照。)。 (2)引用例2 引用例2には、「外側の保護層4及び内側の導電層3を有するパイプラインに用いられる本管2において、保護層4が損傷したことを、導電層3及びパイプラインを設ける周囲環境に設置した端子12間の通電を検流計10aによって検知することにより検知する技術。」(以下、「引用例2技術」という。)が記載されている(公報第2ページ右上欄第15行ないし左下欄第20行の記載)。 (3)引用例3 引用例3には、「ポリアミド成形材料からなる押出層によりコーティングされた金属ラインパイプを水中に敷設する技術。」(以下、「引用例3技術」という。)が記載されている(【特許請求の範囲】、段落【0066】の記載ほか)。 (4)引用例4 引用例4には、「鋼管柱77を、風力発電タワーなどの海中部構造物75の基礎(モノパイル、トリパイルなど)として組み付ける技術。」(以下、「引用例4技術」という。)が記載されている(段落【0001】、段落【0037】ないし【0039】の記載、図19、図21ほか)。 (5)引用例5 引用例5には、「洋上風力発電構造の下部に海上鋼構造物(ジャケット)を築造する技術。」(以下、「引用例5技術」という。)が記載されている(段落【0006】の記載)。 2.拒絶査定時に引用されたが、当審拒絶理由においては採用しなかった引用例 (1)引用例B 引用例Bには、「目に見える変化を、DIN EN 20105-A02に従ってグレースケールを使用して評価する技術。」が記載されている(段落【0036】の記載)。 (2)引用例D 引用例Dには、「金属製の内管1にポリアミド12層5を押出成形コーティングする技術。」が記載されている(図1及び請求項1の記載)。 (3)引用例H 引用例Hには、「ライニング製品において、母材2の表面に下引き層5が被覆され、下引き層5の表面5aに上引き層6が被覆されると共に、上引き層6が耐食性且つ絶縁性を有し、下引き層5が導電性を有する材料によって形成され、収容された液体と下引き層5との間の電流を検知装置7により測定して、上引き層6の損傷を検知する技術。」が記載されている(図1、請求項1の記載及び段落【0010】ないし【0012】の記載)。 (4)引用例I 引用例Iには、「外被層のゴム層を表層と下層とから構成するとともに、両層の色彩を異なるものとすることにより、表層の亀裂の発生を容易に目視可能とする技術。」が記載されている(明細書第1ページ第17ないし20行)。 第6 対比・判断(当審拒絶理由における[理由1]について) 1.本願発明1について 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明における「外側バリア層18」は、その機能、構成及び技術的意義から、本願発明1の「上位の層」に相当し、以下同様に、「中間層16」は「下位の層」に、「腐食防止のための被覆」は「防食被覆」に、「鋼管10」あるいは「パイプラインで使用される鋼管10」は「金属管から成る管材」に、「表面側に位置する外側バリア層18」は「上位に位置する単数又は複数の層」に、「不連続部が生じた時」は「損傷時」に、「視覚的検査、または導電性のテストにより検出することができる」は「光信号又は電気信号が検出し得るように形成され(る)」に、「導電性のカーボンブラックを含むポリエチレンからなる」は、「導電性に設計され(る)」に、「外側バリア層18はポリエチレンからなる」は「上位の層は電気絶縁性に設計され(る)」に、「外側バリア層18に生じた不連続部」は「上位の層の損傷」に、「検出する装置」は「検出する検出手段」に、「導電性テスト装置」は「抵抗測定器」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明1における「該装置は1つの極が中間層16に接続するように配置された導電性テスト装置」と本願発明1における「検出手段は、一方が水に晒され、他方が前記下位の層に接続するように配置された抵抗測定器」とは、「検出手段は、一方が下位の層に接続するように配置された抵抗測定器」という限りにおいて一致する。 したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「少なくとも上位の層と下位の層とを有する防食被覆を備えた金属管から成る管材であって、 前記下位の層は、該下位の層の上位に位置する単数又は複数の層の損傷時に光信号又は電気信号が検出され得るように形成されており、 前記下位の層は導電性に設計され、前記上位の層は電気絶縁性に設計されていて、 前記上位の層の損傷を検出する検出手段を備え、該検出手段は、一方が前記下位の層に接続するように配置された抵抗測定器である管材。」 [相違点1] 本願発明1においては、「管材はオフショア構造物に組み付けられるか、又は水中に敷設されるもの」であって、「上位の層」は「水に面して」いるのに対して、引用発明においては、鋼管10が「オフショア構造物に組み付けられるか、又は水中に敷設されるもの」であるか不明であって、外側バリア層18が水に面しているかも不明である点。 [相違点2] 本願発明1においては、「抵抗測定器」の「一方が水に晒され、他方が下位の層に接続する」のに対して、引用発明においては、「導電性テスト装置」の「1つの極が中間層16に接続する」ものの、他方の極が何に接続されるのか不明である点。 [相違点3] 本願発明1においては、「前記金属管の表面と前記下位の層との間には、セラミック層と付着促進剤層と繊維強化材のグループのみから選択された少なくとも1つの層が介在されている」のに対して、引用発明においては、「鋼管10の表面と中間層16との間に、プライマー及び腐食防止コーティング層12及び発泡ポリウレタンプラスチック層14を備える」点。 以下、事案に鑑み、まず上記相違点3について検討する。 [相違点3について] 上記引用例2技術ないし引用例5技術は、いずれも上記相違点3に係る本願発明1の特定事項である、「前記金属管の表面と前記下位の層との間には、セラミック層と付着促進剤層と繊維強化材のグループのみから選択された少なくとも1つの層が介在されている」ことについての開示や示唆をするものではない。 そして、仮に、金属管の表面にセラミック層、付着促進層または繊維強化材を設けることが周知技術であるとしても、引用発明の「鋼管10の表面と中間層16との間」に「プライマー及び腐食防止コーティング層12及び発泡ポリウレタンプラスチック層14を設け」ることに代えて、「セラミック層と付着促進剤層と繊維強化材のグループのみから選択された少なくとも1つの層」を「介在」させるものとする動機付けを見出すことはできない。 したがって、上記相違点3に係る本願発明1は、引用発明及び引用例2技術ないし引用例5技術に基いて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。 よって、上記相違点3に係る本願発明1が、引用発明及び引用例2技術ないし引用例5技術に基いて当業者が容易に想到し得たものとすることはできないから、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用例2技術ないし引用例5技術に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 2.本願発明2ないし8について 本願の特許請求の範囲における請求項2ないし8は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用して記載したものであるから、本願発明2ないし8は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本願発明2ないし本願発明8は、本願発明1と同様の理由で、引用発明及び引用例2技術ないし引用例5技術に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 第7 記載不備(当審拒絶理由における[理由2]について) 平成31年1月17日提出の手続補正書による補正によって、当審拒絶理由において記載に不備があるとした請求項3が削除された。 よって、請求項3及び請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4ないし9についての記載不備は解消された。 第8 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1ないし9に係る発明について、上記引用例Aないし引用例Iに記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 しかし、平成31年1月17日提出の手続補正書により補正された請求項1ないし8に係る発明は、「前記金属管の表面と前記下位の層との間には、セラミック層と付着促進剤層と繊維強化材のグループのみから選択された少なくとも1つの層が介在されていること」を含むものであって、上記第6で検討したとおり、引用発明及び引用例2技術ないし引用例5技術(拒絶査定時の、引用例A、引用例G、引用例C、引用例E及び引用例Fに対応。)に開示や示唆がされておらず、上記引用例B、引用例D、引用例H及び引用例Iにも開示や示唆がされていないから、本願発明1ないし本願発明8は、引用例Aないし引用例Iに基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審が通知した理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-02-25 |
出願番号 | 特願2013-95213(P2013-95213) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(F17D)
P 1 8・ 121- WY (F17D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杉山 豊博 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
莊司 英史 松下 聡 |
発明の名称 | オフショア防食被覆系用損耗インジケータシステム |
代理人 | 上島 類 |
代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | 前川 純一 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |