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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1349036
審判番号 不服2017-15187  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-11 
確定日 2019-02-15 
事件の表示 特願2013- 86965「ピタバスタチンの安定した製剤」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月28日出願公開、特開2013-221029〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年4月17日(パリ条約による優先権主張 2012年4月18日 (US)アメリカ合衆国)に出願され、平成29年1月27日付け拒絶理由通知に応答して同年4月27日付けで手続補正書と意見書が提出されたが、同年6月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年10月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願請求項1?9に係る発明は、平成29年10月11日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ピタバスタチンまたはその塩、または溶媒和物、約5乃至約20重量%の酸化マグネシウム、および、薬学的に許容可能な担体からなる医薬組成物であって、
前記医薬組成物の水溶液または水分散液は、10.0から10.8のpHを有することを特徴とする、医薬組成物。」

3.引用例
原査定の拒絶理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開2012/029913号(2012年3月8日公開;以下、「引用例」とも言う。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1-i)
「【請求項1】
ピタバスタチン又はその塩と、
酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムから選ばれる1種以上のマグネシウム化合物を含有する経口剤。」([特許請求の範囲]の[請求項1])
(1-ii)
「 ピタバスタチンカルシウム(化学名:(+)-monocalcium bis{(3R,5S,6E)-7-[2-cyclopropyl-4-(4-fluorophenyl)-3-quinolyl]-3,5-dihydroxy-6-heptenoate})などのピタバスタチン又はその塩は優れたHMG-CoA還元酵素阻害活性を有し、高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤等の有効成分として有用であることが知られている(特許文献1)。」(段落【0002】)
(1-iii)
「 本発明の経口剤は、ピタバスタチン又はその塩由来の苦味が十分に抑制されており、服用感が良好であるため、服用コンプライアンスの高い医薬品として有用である。特に、本発明の経口剤が口腔内崩壊型の製剤である場合、当該製剤を口腔内にて崩壊させた場合のピタバスタチン又はその塩由来の苦味が十分に抑制されており、しかも水無しで服用が可能なため、服用コンプライアンスの高い医薬品として極めて有用である。
また、本発明の経口剤は、ピタバスタチン又はその塩に、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムから選ばれる1種以上のマグネシウム化合物を含有せしめることによって容易に製造することができる。
[発明を実施するための形態]
本発明において「ピタバスタチン又はその塩」には、ピタバスタチンそのもののほか、ピタバスタチンの薬学上許容される塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;フェネチルアミン塩等の有機アミン塩;アンモニウム塩等)、更にはピタバスタチン又はその薬学上許容される塩と、水又はアルコール等との溶媒和物も含まれる。本発明においては、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらの中でも、ピタバスタチンカルシウム(化学名:(+)-monocalcium bis{(3R,5S,6E)-7-[2-cyclopropyl-4-(4-fluorophenyl)-3-quinolyl]-3,5-dihydroxy-6-heptenoate})が好ましい。
ピタバスタチン又はその塩は公知の化合物であり、例えば、特開平1-279866号公報、米国特許第5854259号明細書、米国特許第5856336号明細書等に記載の方法により製造することができる。なお、これらの文献の記載は、全て本明細書に引用するものとする。」(段落【0022】?【0023】)
(1-iv)
「 本発明の経口剤におけるマグネシウム化合物の含有量は特に限定されず、苦味強度に応じて適宜決定することができるが、苦味抑制の観点から、経口剤の全質量に対してマグネシウム化合物を合計で0.001?60質量%含有することが好ましく、0.01?40質量%含有することがより好ましく、0.05?20質量%含有することが特に好ましい。」(段落【0026】)
(1-v)
「 本発明の経口剤は、更に矯味剤を含有することが好ましい。これにより、ピタバスタチン又はその塩由来の苦味をより一層抑制することができる。
矯味剤としては、例えば、リモネン、ピネン、カンフェン、サイメン、シネオール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、メントール、テルピネオール、ロジノール、ボルネオール、イソボルネオール、メントン、カンフル、オイゲノール、シンゼイラノールなどのテルペン;トウヒ油、オレンジ油、ハッカ油、樟脳白油、ユーカリ油、テレピン油、レモン油、ショウキョウ油、チョウジ油、ケイヒ油、ラベンダー油、ウイキョウ油、カミツレ油、シソ油、スペアミント油などのテルペンを含有する精油(以下、テルペン及びテルペンを含有する精油をまとめて「テルペン類」と称する。);アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸及びこれらの塩などの酸味剤などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、テルペン類が好ましく、メントールがより好ましく、l-メントールが特に好ましい。なお、本発明の経口剤における矯味剤の含有量は特に限定されないが、苦味抑制の観点から、経口剤の全質量に対して0.005?20質量%、更に0.01?15質量%、特に0.02?10質量%であることが好ましい。
本発明の経口剤は、更に甘味剤を含有することが好ましい。これにより、ピタバスタチン又はその塩由来の苦味をより一層抑制することができる。
甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、グリチルリチン酸、ソーマチン、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウムなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、スクラロースが好ましい。なお、本発明の経口剤における甘味剤の含有量は特に限定されないが、苦味抑制の観点から、経口剤の全質量に対して0.1?30質量%、更に0.2?25質量%、特に0.5?20質量%であることが好ましい。
本発明においては、マグネシウム化合物のみならず、矯味剤を少なくとも含有することが好ましく、矯味剤及び甘味剤を含有することが特に好ましい。矯味剤及び甘味剤の好適な組み合わせとしては、テルペン類(とりわけl-メントール)と、スクラロースが挙げられる。
本発明の経口剤は、剤形に応じて、当該技術分野において通常用いられている添加剤を含有していてもよい。当該添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、可塑剤、フィルム形成剤、難水溶性高分子物質、抗酸化剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、香料、流動化剤、液状媒体などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。なお、各添加剤の使用量は本発明の目的を妨げない範囲内で適宜決定することができる。なお、本発明の経口剤としては、フェノフィブラート、ユビデカレノン及びグルタチオンを含有しないものが好ましい。
賦形剤としては、例えば、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素、無水硫酸ナトリウム、無水リン酸水素カルシウム、塩化ナトリウム、含水無晶形酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、硫酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム等の無機系賦形剤;アメ粉、デンプン(コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン等)、果糖、カラメル、カンテン、キシリトール、パラフィン、結晶セルロース、ショ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、白糖、ブドウ糖、プルラン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、マルチトール、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、トレハロース、還元パラチノース、マルトース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、クエン酸カルシウム等の有機系賦形剤等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン等のスーパー崩壊剤やカルメロース、カルメロースカルシウム、デンプン、ショ糖脂肪酸エステル、ゼラチン、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、デヒドロ酢酸及びその塩、ポビドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、デキストリン、部分アルファー化デンプン、プルラン、アラビアゴム、カンテン、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、ポビドン、ポリビニルアルコール、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、カラメル、黒酸化鉄、酸化チタン、三二酸化鉄、タール色素、アルミニウムレーキ色素、銅クロロフィリンナトリウム等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、グリセリン、ゴマ油、ソルビトール、ヒマシ油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル)、ポリエチレングリコール[例えば、マクロゴール400(オキシエチレン単位の重合度nが7?9、以下、「n」は重合度を示す)、マクロゴール600(nが11?13)、マクロゴール1500(nが5?6と、nが28?36との等量混合物)、マクロゴール4000(nが59?84)、マクロゴール6000(nが165?210)]等が挙げられる。可塑剤としては、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが好ましく、グリセリン、プロピレングリコール及びマクロゴール400からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
フィルム形成剤としては、フィルム形成能を有する限り、その種類は特に限定されるものではない。具体的には、メチルセルロース、エチルセルロースなどのアルキルセルロース;アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸又はその塩;カラギーナン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;キサンタンガム;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)などのヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどのヒドロキシアルキルセルロースフタレート;プルラン;ポリ酢酸ビニル;ポリ酢酸ビニルフタレート;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合せが好ましい。」(段落【0028】?【0037】)
(1-vi)
「〔実施例1〕
水12gと無水エタノール28gを混合し、これにスクラロース2g、l-メントール0.15g及びピタバスタチンカルシウム1gを溶解し、更に酸化マグネシウム1gを分散した。この液にヒプロメロース15.85gを溶解し、フィルム調製液を得た。
PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム上にフィルム調製液を均一に塗布した後、温風にて乾燥し、面積2.8cm^(2)あたりの質量が10mgの層を形成し、中間製品1を得た。
中間製品1を2式準備し、層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、片側のPETフィルムを剥離し、中間製品2とした。中間製品2を2式準備し、層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、中間製品3を得た。
中間製品3を面積2.8cm^(2)に裁断し、PETフィルムを剥離して、実施例1のフィルム剤を得た。
〔比較例1〕
酸化マグネシウムの代わりにヒプロメロースを配合したほかは実施例1と同様の方法により、比較例1のフィルム剤を得た。
[試験例1]苦味抑制試験
実施例1及び比較例1のフィルム剤について、6名のパネラーにより官能試験を実施し、服用感(苦味)を評価した。
苦味の評価は、フィルム剤をパネラーの口腔内において唾液により完全に崩壊させた際の服用感につき、全く苦味を感じない場合を10点、耐え難い苦味を感じる場合を0点とするビジュアルアナログスケール法により実施した。
官能試験結果(各フィルム剤における6名のパネラーによる評価の平均点数)を、各フィルム剤の組成(フィルム剤1枚当りの成分量(mg))とともに表1に示す。
【表1】


表1に示す試験結果より、苦味を有するピタバスタチンカルシウムに加えて更に酸化マグネシウムを含有する実施例1のフィルム剤においては、酸化マグネシウムを含有しない比較例1のフィルム剤と比較して、口腔内で崩壊させた際の苦味が顕著に抑制されていることが明らかとなった。」(段落【0052】?【0056】)

引用例には、実施例1として、フィルム剤1枚当りの成分量が、ピタバスタチンカルシウム2.0mg、ヒプロメロース31.7mg、スクラロース4.0mg、l-メントール0.3mg、酸化マグネシウム2.0mgであるフィルム剤(摘示(1-vi)参照)が記載されている。
そうすると、引用例には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。

<引用例発明>
「フィルム剤1枚当りの成分量が、ピタバスタチンカルシウム2mg、酸化マグネシウム2.0mg、ヒプロメロース31.7mg、スクラロース4.0mg、l-メントール0.3mgであるフィルム剤。」

4.対比、判断
本願発明と引用例発明を対比する。
引用例発明の「ピタバスタチンカルシウム」は、本願発明の「ピタバスタチンまたはその塩、または溶媒和物」に相当する。
引用例発明のフィルム剤は、その全量が40.0mg(=2.0mg+31.mg+4.0mg+0.3mg+2.0mg)であり、「酸化マグネシウム」は、その中に2.0mg含有されているから、その含有量は5重量%(=100%×2.0mg/40.0mg)と算出できる。したがって、引用例発明の「酸化マグネシウム2.0mg」は、本願発明の「約5乃至20重量%の酸化マグネシウム」に相当する。
引用例には、引用例発明のフィルム剤について、口腔内で崩壊させて苦味を評価したこと(摘示(1-vi)参照)、ピタバスタチンカルシウムが高脂血症治療剤として有効であること、苦みが十分に抑制され、服用コンプライアンスの高い医薬品として有用であること(摘示(1-ii),摘示(1-iii)参照。)が記載されているから、引用例発明の「フィルム剤」は、本願発明の「医薬組成物」に相当する。

したがって、本願発明と引用例発明は、
「ピタバスタチンまたはその塩、または溶媒和物、約5乃至20重量%の酸化マグネシウムとを含む医薬組成物。」
の発明である点で一致し、次の点で一応相違している。

<相違点>
A.本願発明は、さらに「薬学的に許容可能な担体」を含むのに対し、引用例発明は、「ヒプロメロース、スクラロース、l-メントール」を含むものである点。
B.本願発明では、「前記医薬組成物の水溶液または水分散液は、10.0から10.8のpHを有する」と特定されているのに対し、引用例発明はそのような特定を有していない点。

そこで、これらの相違点について検討する。
(1)相違点Aについて
本願発明の「担体」は、「a carrier」(外国語明細書の特許請求の範囲)の訳語であり、発明の詳細な説明には、「用語「担体」は、本明細書で使用されるように、細胞または組織へ化合物を組み込むのを促進する、相対的に無毒な化学化合物または薬剤を指す。」(段落【0022】)と記載されているが、賦形剤や結合剤などの各種の成分のうち該当するものの例示や、具体的な化合物の例示などは記載されていない。

発明の詳細な説明には、「医薬組成物」という用語について以下の事項が記載されている。
「・・特定の実施形態では、該医薬組成物は、賦形剤、崩壊薬、結合剤、および、潤滑剤からなる群から選択された少なくとも1つの材料をさらに含む。・・」(段落【0011】)
「本発明の医薬組成物は、さまざまな形態の製剤へと調剤され得る。例えば、医薬組成物は、錠剤、果粒剤、散剤、トローチ、カプセル剤、咀嚼錠、フィルムでコーティングされたこれらの製剤、および、それらの糖衣製剤などにも調剤されてもよい。」(段落【0012】)
「本発明の医薬組成物がそのような経口の固形剤へ調剤される場合、賦形剤、結合剤、崩壊薬および潤滑剤のいずれかをそれに加えることができる。」(段落【0013】)
「いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、経口使用のために調剤される。いくつかの実施形態では、該医薬組成物は、30?95重量%の量の賦形剤、1?20重量%の量の結合剤、1?30重量%の量の崩壊薬、および、0.5?10重量%の量の潤滑剤を含む。」(段落【0018】)
「いくつかの実施形態では、甘味料、調味料、および、着色剤のような任意の追加成分が本発明の医薬組成物に加えられてもよい。」(段落【0019】)
「用語「医薬組成物」は、化合物(すなわち、本明細書に記載のピタバスタチン)と、崩壊薬、結合剤、潤滑剤、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、および/または、賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、有機体への化合物の投与を促進する。」(段落【0027】)
「特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、活性化合物(すなわち、ピタバスタチン)を薬学的に使用できる調製物へと処理するのを容易にする賦形剤および助剤を含む1またはそれ以上の生理的に許容可能な担体を用いて、任意の従来の方法で調剤される。」(段落【0034】)

そうすると、発明の詳細な説明には、本願発明の「医薬組成物」が、錠剤、果粒剤などのさまざまな形態の製剤へと調剤され得ること(段落【0012】。したがって、形態毎に担体の定義を異なるものとし得る。)や、本願発明の「医薬組成物」は、担体の外にも、崩壊薬や結合剤などの化学成分を含有する旨の記載(段落【0027】。そうすると、担体には、崩壊薬や結合剤などの化学成分が含まれないと解し得る。)などもあるが、いくつかの実施形態では、30?95重量%の量の賦形剤、1?20重量%の量の結合剤、1?30重量%の量の崩壊薬、および、0.5?10重量%の量の潤滑剤を含むとも記載されており(段落【0018】)、さらに、実施例(例えばサンプル41。【表1】参照。)の組成物は、ピタバスタチンと酸化マグネシウムの外に、マンニトール、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、など9種類の成分を含むものであるが、マンニトール、ラクトース、微結晶セルロースは、賦形剤であり(段落【0014】)、ポビドン(ポリビニルピロリドンの略称である。)は、結合剤であり(段落【0015】)、デンプングリコール酸ナトリウム、コリドン(登録商標)CL、クロスカルメロースナトリウムは、崩壊薬であり(段落【0015】)、ステアリン酸マグネシウムは、潤滑剤(段落【0016】)である(なお、オパドライは、コーティング剤であるから、除いた。)。

そうすると、発明の詳細な説明には、本願発明の「担体」に賦形剤や結合剤などの各種の成分のうち該当するものの例示や、具体的な化合物の例示などは記載されていないが、実施例の記載も含め、発明の詳細な説明の記載を総合し、本願発明の「担体」は、少なくとも、賦形剤、崩壊薬、結合剤および潤滑剤を含むものと認める。

引用例発明の「ヒプロメロース」(即ち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)は、結合剤あるいはフィルム形成剤であり(摘示(1-v)参照。)、また、本件明細書においても結合剤であることが例示されている(段落【0015】)。
したがって、引用例発明の「ヒプロメロース」は、本願発明の「担体」に相当する。
また、引用例発明の「スクラロース」は、甘味剤であり、引用例発明の「l-メントール」は、矯味剤である(摘示(1-v)参照。)から、本願発明に加えられていても良い任意の追加成分に相当する。
そうすると、相違点Aは、実質的な相違点ではない。

(2)相違点Bについて
引用例には、引用例発明のフィルム剤の水溶液または水分散液のpHについて記載がないが、当該pHは、塩基性の物質の量(モル当量)が多いほど高くなると認められる。
また、ピタバスタチンカルシウムは、弱酸(カルボン酸)と強アルカリ(水酸化カルシウム)の塩であることから弱アルカリ性の物質であると認められるのに対し、酸化マグネシウムは、強アルカリ性の物質であるから、pHは、概ね、酸化マグネシウムの量によって決まる(酸化マグネシウムが完全に溶解すると仮定する。)ものと認められる。
なお、pHは、酸化マグネシウムの濃度によっても異なるが、例えば、1錠の錠剤(仮に、100mg程度として)を100gの水に加える場合を想定すると、酸化マグネシウムの水への溶解度は、0.62mg/100g(「化学大事典3」、共立出版株式会社、昭和53年、940頁、「さんかマグネシウム」の項)であるのに対し、1錠の錠剤には5?15mgの酸化マグネシウムが含まれている(含有割合が5?15重量%として。)から、酸化マグネシウムは、大部分(88?96%)が溶け残ることになる。
なお、酸化マグネシウムの飽和水溶液のpHは、10.3(厚生労働省 職場のあんぜんサイト:化学物質:酸化マグネシウム)である。

・実施例のpHについて
本願の発明の詳細な説明には、実施例1として、酸化マグネシウムを4.7重量%及びピタバスタチンを1.6重量%含むサンプル66(段落【0041】の【表1】)、及び、酸化マグネシウムを14.3重量%及びピタバスタチンを1.6重量%含むサンプル42(段落【0041】の【表1】)が記載されており、実施例3として、酸化マグネシウムの量が5重量%であるサンプル-066のpHが10.35であること(段落【0056】の【表5】)、及び、酸化マグネシウムの量が15重量%であるサンプル-042のpHが10.76であったこと(段落【0056】の【表5】)が記載されている。
サンプル66とサンプル-066は、表記が異なるものの酸化マグネシウムの量もほぼ一致している(4.7重量%を、有効数字1桁で表記すると、5重量%となる。)ので、同一のサンプルに関する実施例であると認められ、また、仮に、異なるサンプルに関する実施例であるとしても、酸化マグネシウムの量がほぼ一致していることからそのpHもほぼ一致すると認められるので、サンプル66のpHは、(概ね)10.35であると認められる。
同様に、サンプル42のpHは、(概ね)10.76であると認められる。

・塩基性の物質(酸化マグネシウム)の量について
引用例発明のフィルム剤100gあたりの酸化マグネシウム(モル当量20.2)の量は、0.248(=5/20.2)モル当量である。なお、塩基性の物質の総量は、ピタバスタチンカルシウム(モル当量440)が0.011(=5/440)であるから、合計で0.259モル当量である。
これに対し、サンプル66の100gあたりの酸化マグネシウムの量は、0.233(=4.7/20.2)であり、塩基性の物質の総量は、ピタバスタチン(酸性の物質であり、モル当量は、421)の量が0.004(=1.6/421)であるから、差し引きで0.229モル当量である。
また、サンプル42の100gあたりの酸化マグネシウムの量は、0.708(=14.3/20.2)モル当量であり、ピタバスタチンの量は、0.004であるから、塩基性の物質の総量は、0.704モル当量である。

なお、本願の発明の詳細な説明には、「実施例2.安定性( 不純度)試験のためのHPLC条件 ピタバスタチンを含む本発明の製剤の安定性は、HPLCによって分析された。・・約25.0mgのピタバスタチンカルシウムの作業標準を正確に量る。・・ピタバスタチンカルシウム・・ピタバスタチンカルシウム・・ピタバスタチンカルシウム・・」(段落【0042】?【0049】)と記載されており、ピタバスタチンとピタバスタチンカルシウムを混同して記載しているので、実施例1のピタバスタチンも、ピタバスタチンカルシウムの誤記である可能性があるが、誤記であるとしても、サンプル66及び42の塩基性の物質の総量に対する影響は小さいため、以下の判断に影響しない。

・引用例発明のpHについて
引用例発明のフィルム剤100gあたりの酸化マグネシウムの量(0.248モル当量)は、サンプル66(0.233モル当量)よりも若干多い程度でサンプル42(0.708モル当量)よりも少ないものである。
そうすると、上述のとおり、酸化マグネシウムの量(モル当量)が多いほどpHが高くなる(酸化マグネシウムが完全に溶解すると仮定する。)と推測できるのであるから、引用例発明のフィルム剤の水溶液または水分散液のpHは、サンプル66(10.35)と略同じか、それよりも若干大きい程度であって、サンプル42(10.76)よりは小さいものになると推測できる。
なお、酸化マグネシウムの量に代えて、塩基性の物質の総量に基づいて判断しても同様である。
また、上述のとおり、酸化マグネシウムの水への溶解度が非常に小さいことを勘案すると、酸化マグネシウムの大部分は水に溶解せずに残るため、引用例発明のフィルム剤の水溶液または水分散液は、酸化マグネシウムの飽和水溶液となり、そのpHは、概ね、10.3になるとも推測できる。

したがって、引用例発明のフィルム剤も、その水溶液または水分散液は、10.0から10.8のpHを有するといえるので、相違点Bも、実質的な相違点ではない。

審判請求人は、審判請求書(「(3)本願発明が特許を受けることができることについて」の項)において、引用例の段落【0004】の「係る苦味の抑制技術としては、例えば、ピタバスタチンを含むHMG-CoA還元酵素阻害剤、ゲル化剤、高分子化合物、緩衝剤、甘味剤、基剤及び水からなりpHが7から10であるゲル状経口製剤が報告されている(特許文献2)。」との記載を指摘し、引用例の組成物のpHは、pH7?10に保つことが特に望ましいものである旨主張している。
しかし、請求人が指摘する記載は、【背景技術】として苦味を抑制する手段の一例を説明しているものであって、引用例発明においても、pH7?10に保たれているとまで解することのできる記載ではない。また、引用例発明は、上述のとおりのものであって、「組成物のpHを7?10に保つこと」が限定されているものでもない。

審判請求人は、「本願明細書に示すように、例えばサンプル41、42、及び66を参照すると、必要なpHに到達させるために、各サンプルにおいてピタバスタチン1.6mgを使用すると同時に、少なくとも4.7mgのMgO(製剤全体の4.7重量%のMgO)が必要であります。サンプル41、42及び66ではそれぞれ9.5mg、14.3mg及び4.7mgのMgOを用いています。実施例で使用されるMgOは、pHが10.0以上(ただし10.8以下)に達するため、MgOとピタバスタチンが1:1以上の比である必要があります。」とも主張している。
この主張は、医薬組成物に含まれている酸化マグネシウムの量を多くすると、水に溶解する酸化マグネシウムの濃度が高くなることにより、pHが大きくなるといえることを前提として、MgOとピタバスタチンが1:1以上の比であれば、pHが10.0以上となると主張しているものと解されるが、上述のとおり、酸化マグネシウムの水への溶解度は、0.62mg/100gであって、それ以上は溶けないのであるから、100mgの医薬組成物を100gの水に溶かしてpHを測定する場合には、酸化マグネシウムを0.62mg(したがって、ピタバスタチン1.6mgに対する割合は、0.4)を超えて含有させても、水に溶けきれない酸化マグネシウムが懸濁するだけであって、pHは変化しない(大きくならない)。
また、0.62mgの酸化マグネシウムを含有する場合(MgOとピタバスタチンが1:0.4の比である場合)には、酸化マグネシウムの飽和水溶液が形成されるから、そのpHは、10.3であるといえる。そうすると、MgOとピタバスタチンが1:1の比より小さくても、1:0.4以上の比であれば、十分にpHを10以上にすることができると認められる。

よって、請求人の主張は、いずれも採用できない。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明である。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
それ故、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-09-18 
結審通知日 2018-09-20 
審決日 2018-10-04 
出願番号 特願2013-86965(P2013-86965)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 常見 優  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 蔵野 雅昭
淺野 美奈
発明の名称 ピタバスタチンの安定した製剤  
代理人 清原 義博  
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