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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F24F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F
管理番号 1349110
審判番号 不服2018-2474  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-21 
確定日 2019-03-05 
事件の表示 特願2016- 84984号「熱源ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月26日出願公開,特開2017-194228号,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 経緯の概略
本願は,平成28年4月21日の出願であって,平成29年5月18日付けで拒絶の理由が通知され,平成29年7月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成29年11月27日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し,平成30年2月21日に拒絶査定不服審判が請求されたところ,平成30年11月8日付けで拒絶の理由が通知され,平成30年12月17日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下,請求項の番号に従って「本願発明1」などという。)は,平成30年12月17日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ケーシング(40)内に圧縮機(8)及び電装品箱(25)が設けられる熱源ユニットにおいて,
前記ケーシングの底面を形成する底フレーム(51)は,前記圧縮機が設けられる第1底フレーム(51a)と,前記第1底フレームに隣接する第2底フレーム(51b)と,を有しており,
前記電装品箱は,前記ケーシングを上から見た際の外形の半分以上が前記第2底フレームの上方に配置されており,
前記第1底フレームには,前記圧縮機から吐出された後の冷媒から冷凍機油を分離する油分離器(9)と,冷媒を一時的に溜める冷媒容器(7)と,が設けられている,
熱源ユニット(2)。
【請求項2】
前記第1底フレーム及び前記第2底フレームは,前記ケーシングを前面側から見た際に,左右方向に並んで配置されている,
請求項1に記載の熱源ユニット。
【請求項3】
前記電装品箱は,前記ケーシング内に設けられた状態において,縦長の箱形状である,請求項1又は2に記載の熱源ユニット。
【請求項4】
前記電装品箱は,前記第2底フレームに設けられている,
請求項1?3のいずれか1項に記載の熱源ユニット。
【請求項5】
前記第1底フレーム及び前記第2底フレームは,前記ケーシングの前後方向にわたる山部(52a,52b)及び谷部(53a,53b)が形成された波板状の部材である,
請求項1?4のいずれか1項に記載の熱源ユニット。」

第3 原査定の概要
原査定(平成29年11月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。すなわち,本願発明1?5は,以下の引用文献1?6に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献)
1 特開2013-83422号公報
2 特開2013-194960号公報(周知技術を示す文献)
3 特開2011-158137号公報(周知技術を示す文献)
4 特開2016-38175号公報(周知技術を示す文献)
5 特開2015-152241号公報(周知技術を示す文献)
6 特開2014-98509号公報(周知技術を示す文献)

第4 当審にて通知した拒絶の理由の概要
当審にて通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。すなわち,本件出願は,特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1に,「前記電装品箱は,少なくとも半分以上が前記第2底フレームの上方に配置されており」と記載されているが,「電装品箱」の「半分以上が…配置され(る)」とは,どのような構造を特定しているのか明確でなく,構成を明確に把握することができないから,本願発明1?5は明確でない。

第5 原査定についての判断
1 引用文献,引用発明等
(1) 引用文献1
ア 引用文献1には,以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
ケーシング(12)と,該ケーシング(12)の側面部に配置されて該側面部に沿って延び,且つケーシング(12)の外部に露出した熱交換器本体(35,36)を備え,該熱交換器本体(35,36)が平面視において中央部がケーシング(12)の外側に位置する頂部(39)を有して形成され,該熱交換器本体(35,36)の外側からケーシング(12)の内部に空気が流入されるように構成された室外機であって,
上記ケーシング(12)の上方に配置され,且つ該ケーシング(12)内の空気を外部に吹き出す送風ファン(17)と,
上記ケーシング(12)の上記熱交換器本体(35,36)の下方に形成され,且つ熱交換器本体(35,36)の側面よりも内側に凹んだ本体凹部(41,42)とを備えている
ことを特徴とする室外機。」
・「【0001】
本発明は,室外機及び該室外機を備えた冷凍装置に関し,特に,外部空気の取り込み構造に係るものである。」
・「【0036】
本実施形態の冷凍装置は,図1に示すように,チラー装置(10)を構成している。このチラー装置(10)は,ビル等の建物の屋上に設置されて該建物内に供給される空調用水を冷却又は加熱するためのヒートポンプチラーの室外機(11)を備えている。チラー装置(10)は,例示として,壁(1)際に3台の室外機(11)が幅方向に並列に配置されている。
【0037】
図2?図9に示すように,上記各室外機(11)は,それぞれが冷媒回路(図示なし)を有するケーシング(12)を備えている。
【0038】
上記ケーシング(12)は,上端に形成されたファンケーシング(13)と,下端に形成された底部材(60)と,ファンケーシング(13)と底部材(60)との間に設けられる本体部(20)とを備えている。尚,図1?図9では,概略の底部材(60)を示し,詳細な構造は後述する。」
・「【0045】
上記底部材(60)は,図11に示すように,ケーシング(12)の下端部に配置され,後述する圧縮機(50)や水熱交換器(51)を載せる部材である。底部材(60)は,第1底フレーム(61)と第2底フレーム(62)が連結されて構成されている。この第1底フレーム(61)および第2底フレーム(62)は,共に,共通する部材である本体フレーム(63)が用いられて形成される。」
・「【0046】
上記第1底フレーム(61)は,図12に示すように,本体フレーム(63)と,分割板(65)と,2枚の圧縮機取付板(68,68)と,配線カバー(67,67)と,3つの支柱取付金具(66)とを備えている。

【0048】
上記圧縮機取付板(68)は,略長方形状の板部材に形成されている。各圧縮機取付板(68)は,それぞれに対応する溝部(64)を覆うように本体フレーム(63)に取り付けられている。一枚の圧縮機取付板(68)には,後述する圧縮機(50)が3台載せられる。圧縮機取付板(68)が溝部(64)を塞ぐことで,外部の空気が第1および第2熱交換器本体(35,36)を通過することなく,底部材(60)を通過してケーシング(12)内に取り込まれるのを防止している。」
・「【0051】
上記第2底フレーム(62)は,図13に示すように,本体フレーム(63)と,ポンプ台(71)と,分割板(65)と,熱交取付板(69)と,封鎖板(70)と,3つの支柱取付金具(66)とを備えている。尚,本体フレーム(63)の構成は,上記第1底フレーム(61)の本体フレーム(63)と同様である。

【0053】
上記封鎖板(70)および熱交取付板(69)は,略長方形状の板部材に形成されている。封鎖板(70)と熱交取付板(69)は,それぞれが一の溝部(64)を覆うように本体フレーム(63)に取り付けられている。熱交取付板(69)には,後述する水熱交換器(51)が載せられる。封鎖板(70)および熱交取付板(69)が溝部(64)を塞ぐことで,外部の空気が第1および第2熱交換器本体(35,36)を通過することなく,底部材(60)を通過してケーシング(12)内に取り込まれるのを防止している。」
・「【0055】
図11に示すように,第1底フレーム(61)と第2底フレーム(62)を連結することで,底部材(60)が形成される。第1底フレーム(61)と第2底フレーム(62)とを連結すると,両底フレーム(61,62)の分割板(65,65)によって,ケーシング(12)の底面が隙間無く形成される。また,両底フレーム(61,62)の本体フレーム(63)を共通部材としたため,第1底フレーム(61)と第2底フレーム(62)とを別々に組み立てることができる。また,製造用として予備する本体フレーム(63)の在庫を削減することができる。」
・「【0071】
上記機械室(29)は,第1機械室(30)と第2機械室(31)とで構成され,機械室カバー(32)は,第1カバー(33)と第2カバー(34)とで構成されている。
【0072】
上記第1機械室(30)は,第1熱交換器本体(35)の第1空気熱交換器(37)および第2熱交換器本体(36)の第1空気熱交換器(37)の下方に形成されている。第1機械室(30)には,正面壁(23)を構成する2本の短辺支柱(22,22)からそれぞれケーシング(12)の長手方向に沿って延びる2枚の第1カバー(33,33)が立設されている。上記第1機械室(30)には,図10に示すように,内部に冷媒を圧縮する6台の圧縮機(50)が圧縮機取付板(68)上に配置されている。そして,2枚の第1カバー(33)は,それぞれが第1凹部(43)を形成している。
【0073】
上記第2機械室(31)は,第1熱交換器本体(35)の第2空気熱交換器(38)および第2熱交換器本体(36)の第2空気熱交換器(38)の下方に形成されている。第2機械室(31)には,背面壁(24)を構成する2本の短辺支柱(22,22)からそれぞれケーシング(12)の長手方向に沿って延びる第2カバー(34,34)が立設されている。第2機械室(31)には,図10に示すように,温調対象となる空調用水を温調する1台の水熱交換器(51),2台の膨張機及び電装品箱(53)などが熱交取付板(69)や封鎖板(70)上に設けられている。水熱交換器(51)は,一台で2つの冷媒回路に対して接続されている。そして,2枚の第2カバー(34,34)は,それぞれが第2凹部(44)を形成している。」
・「【0079】
圧縮機(50),水熱交換器(51),四路切換弁(図示なし),膨張機及び上記各空気熱交換器(37,37,38,38)は,蒸気圧縮式の冷媒回路を構成している。この冷媒回路は,第1冷媒回路と第2冷媒回路を備え,それぞれ独立して運転することができるように構成されている。つまり,各冷媒回路は,それぞれ四路切換弁(図示なし)を切り換えることで冷媒を可逆に循環させて空調用水を冷却又は加熱することができる。
【0080】
上記第1冷媒回路は,3台の圧縮機(50),水熱交換器(51),四路切換弁(図示なし),膨張機および2つの第1空気熱交換器(37,37)を備えている。第2冷媒回路は,3台の圧縮機(50),水熱交換器(51),四路切換弁(図示なし),膨張機および2つの第2空気熱交換器(38,38)を備えている。つまり,本実施形態に係るチラー装置(10)では,第1冷媒回路と第2冷媒回路を別々に動作させることで,2つの第1空気熱交換器(37,37)と,2つの第2空気熱交換器(38,38)とがそれぞれ独立して動作可能になっている。
【0081】
尚,機械室(29)の内部に設けられるのは,圧縮機(50),水熱交換器(51),膨張機及び電装品箱(53)に限られない。また,電装品箱(53)には,チラー装置(10)の運転を制御するためのインバータ回路の電気基板や配線等が収容されている。」
イ 上記の記載及び図面の記載からみて,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「ケーシング(12)内に圧縮機(50)及び電装品箱(53)が設けられるチラー装置(10)の室外機11において,
前記ケーシング(12)の底面を形成する底部材(60)は,前記圧縮機(50)が設けられる第1底フレーム(61)と,前記第1底フレーム(61)に連結されている第2底フレーム(62)と,を有しており,
前記電装品箱(53)は,前記第2底フレーム(62)の本体フレーム(63)に取り付けられた封鎖板(70)及び熱交取付板(69)の上に配置されている,
チラー装置(10)の室外機(11)。」

(2) 引用文献2?6
ア 引用文献2には,以下の事項が記載されている。
・「【0037】
圧縮機11,油分離器12,四方切替弁13,膨張弁16,アキュムレータ17,および電装品40は,機械室27内に配置されている。
圧縮機11は,機械室27内の下側に配置されている。油分離器12は,左右方向および奥行方向において圧縮機11に隣り合う位置に配置されている。膨張弁16は,圧縮機11の右側に配置されている。アキュムレータ17は,圧縮機11よりも背面側かつ室外用熱交換器14の右端部14Aよりも右側に配置されている。四方切替弁13は,アキュムレータ17よりも上側に配置されている。電装品40は,圧縮機11,油分離器12および吸入口25(図2参照)よりも上側に配置されている。」
イ 引用文献3には,以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
筐体の底板上に配置される圧縮機と熱交換器とを備える空気調和装置の室外ユニットにおいて,
前記底板は,前後方向に二分割されて前記圧縮機が載置される前底板と,前記熱交換器が載置される後底板とを備え,これら前底板及び後底板には,それぞれ前記筺体の幅方向に延びる1条の凹部が形成されていることを特徴とする空気調和装置の室外ユニット。

【請求項5】
前記熱交換器は,前記筐体の背面側及び両側面側の3面に沿って延びる断面略コ字状に形成され,この熱交換器の内側には,前記前底板及び前記後底板の各屈曲部を跨いでアキュムレータが配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の空気調和装置の室外ユニット。
【請求項6】
前記後底板は,前記前底板よりも板厚が薄く形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の空気調和装置の室外ユニット。」
・「【0011】
前面パネル15は,上下に二分割された上パネル15Aと下パネル15Bとを備え,これら上パネル15A及び下パネル15Bは,前面側の支柱14,14間に架け渡されて固定されている。さらに,前面パネル15の下部には,底板12に螺合されて配管引き出しパネル18,19が備えられている。
ユニットケース11の前面側には,図2に示すように,圧縮機30A,30Bや,四方弁31及び膨張弁といった弁体等の冷媒回路構成部品32が配管接続されて収容されるとともに,これら圧縮機30A,30B等の上方に室外ユニット10の各種機器を制御するための電装箱34が配置されている。このため,前面パネル15を取り外すことによって,作業者が前面側から圧縮機30A,30Bや電装箱34内の電装品等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。」
・「【0017】
これらアキュムレータ35,オイルセパレーター36及びレシーバータンク37は,冷媒または冷凍機油を一時的に貯留する圧力容器であり,メンテナンス頻度が低いものである。一方,上記した圧縮機30A,30Bや冷媒回路構成部品32は,モーターやコイル等の電動要素を備えるため,メンテナンス頻度が高い。このため,本構成では,底板12上から電装箱34の下端部まで上方に延びる仕切り板38を設け,この仕切り板38によって,ユニットケース11内が,図3に示すように,熱交換室39と機械室40とに区分けされている。そして,機械室40には,メンテナンス頻度の高い圧縮機30A,30Bや冷媒回路構成部品32が収容され,熱交換室39には,メンテナンス頻度の低い熱交換器21,アキュムレータ35,オイルセパレーター36及びレシーバータンク37が収容されている。この仕切り板38により,機械室40に収容された各機器に直接雨滴がかかることが防止される。」
・「【0018】
次に,底板12及び脚部材13,13の構成について説明する。
底板12は,図5に示されるように,その幅方向に亘る凹凸が設けられた波板形状に形成されて,前後に二分割された前底板12Aと後底板12Bとを備えて構成されている。前底板12Aと後底板12Bとは,脚部材13,13上に架け渡されて固定されている。前底板12Aと後底板12Bは,同じ板金材料,及び,同じ板厚で形成されていても良いが,本実施形態においては,圧縮機30A,30Bが配置される前底板12Aの板金を後底板12Bよりも厚くして,前底板12Aの強度を増している。また,前底板12Aは,後底板12Bよりも機械的強度の高い合金で形成して,強度を増す構成としても良い。
この構成によれば,後底板12Bの板厚を薄くすることができるため,底板12を形成するための材料費を削減することができる。また,前底板12Aにステンレス鋼板を用いて,後底板12Bにアルミ合金板等を用いて,材料費を削減する構成としても良い。」
・「【0022】
また,前底板12A,後底板12Bの下部には,図6に示されるように,略Z形に形成された補強部材B1,B2が底板12にねじ留めされて備えられ,この補強部材B1,B2によって,底板12の奥行き方向への撓みが防止され,底板12の強度が増している。
底板12には,複数の水抜き孔が設けられ,ユニットケース11内の水が,この水抜き穴からユニットケース11外に排出されるため,底板12上に水が溜まらないように構成されている。また,底板12には,圧縮機30A,30B,アキュムレータ35,オイルセパレーター36,レシーバータンク37,及び,熱交換器21等が固定される複数のねじ孔が設けられている。
アキュムレータ35は,前底板12Aの後端部,及び,後底板12Bの前端部に設けられた屈曲部12D,12Eを跨いで配置されている。これによって,底板12の略中央部に配置され,冷媒が蓄えられているために重量が大きくなるアキュムレータを,断曲げ加工が施されているために強度の高い屈曲部12D,12Eを跨いで配置したために,アキュムレータの重量で底板12の中央部が撓むのを防止することができる。」
ウ 引用文献4には,以下の事項が記載されている。
・「【0013】
図3は,室外機10の内部構成を示す平面図である。
ユニットケース11は,前後方向の長さが左右方向の幅よりも長い略矩形に形成されている。ユニットケース11の上部の前方に形成されたスペースには,室外機10の各種機器を制御するための電装箱31,32が配置されている。電装箱31は,前支柱15,15に取付けられ,電装箱32は電装箱31の後部に取付けられている。
ユニットケース11の底板12には,断面略コ字形状に屈曲されて形成された熱交換器21が配置されている。熱交換器21は,ユニットケース11の左側面,背面及び右側面
に沿わせて配置されている。
【0014】
熱交換器21で囲まれた内側の空間には,圧縮機33と,冷媒回路の一部を構成するアキュムレータ34,35と,オイルセパレーター36とが底板12の上に取付けられて配置されている。
また,ユニットケース11内には,仕切り板38が設けられ,切り板38によって,ユニットケース11内が,機械室と熱交換室とに区画される。機械室には圧縮機33,アキュムレータ35が収容され,熱交換室には熱交換器21,アキュムレータ34,オイルセパレーター36が収容される。なお,符号39は四方弁である」
・「【0016】
図5は,底部組立体42を示す斜視図である。図6は,底板12及び脚部材13,14を示す分解斜視図である。
図5に示すように,底部組立体42は,底板12の左右の端部にそれぞれ脚部材13,14が複数の締結部材としてのボルト45及びナット(不図示)で固定されている。
図6に示すように,底板12は,前後に分割された前底板12A及び後底板12Bとからなる。前底板12A及び後底板12Bは,それぞれ鋼板から折り曲げられて形成された一体成形品であり,凹凸が設けられて波板状に形成されている。」
エ 引用文献5には,以下の事項が記載されている。
・「【0016】
第3の発明は,前記熱交換器室に,前記非電源駆動圧縮機が吐出した冷媒から冷凍機油を分離する非電源駆動圧縮機油分離器を設置し,前記非電源駆動圧縮機油分離器で分離した冷凍機油を前記非電源駆動圧縮機の冷媒吸入管に戻すことを特徴とする。
【0017】
これにより,非電源駆動圧縮機油分離器を,非電源駆動圧縮機と同じ熱交換器室(2階)に設置するので,油分離器と非電源駆動圧縮機の距離が短くなる。よって,本発明では,冷凍機油の吐出量の多い非電源駆動圧縮機に冷凍機油を戻しやすくでき,非電源駆動圧縮機の運転信頼性を高めることができる。」
・「【0038】
機械室101には,電源駆動圧縮機111が設置されている。図2には示さないが,これらの他にも,アキュムレータ114,四方弁116,室外ユニット減圧装置117,制御基板,冷媒配管など,多くの部品が搭載されている。熱交換器室102において,室外熱交換器130は熱交換器室102の外壁を形成するように構成されており,仕切り板103の略中央部にエンジン111,エンジン駆動圧縮機112が設置されている。エンジン駆動圧縮機112を,機械室101内ではなく,熱交換器室102内に配置するため,機械室101内はエンジン111の排熱の影響を受けなくなる。」
・「【0072】
図4,図5において,油分離器115は,室外ユニット100内の仕切り板103の上に設置されている。また,油分離器115からエンジン駆動圧縮機112の吸入配管に接続した油戻し管115aの流路抵抗は,油分離器115から電源駆動圧縮機113の吸入配管に接続した油戻し管115cの流路抵抗よりも小さく設定されている。流路抵抗の設定は,例えば,油戻し管に設置された細管(キャピラリーチューブ)の内径と長さによって調整する。」
オ 引用文献6には,以下の事項が記載されている。
・「【0032】
ところで,上述の通り,高密度実装の要求に応えるために,支持部材21の各脚部210には大きな切欠部212を形成しており,かつ,アキュムレータ2と圧縮機1を接続する配管5の長さは短い。
【0033】
圧縮機1に吸入される冷媒を気液分離するという目的のため,アキュムレータ2は,圧縮機1の近傍に配置され,圧縮機1とアキュムレータ2を接続する配管5はできる限り短くしたいという,設計上の要求があるためである。」

2 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを,その有する機能に照らして対比してみるに,引用発明の「ケーシング(12)」,「圧縮機(50)」,「電装品箱(53)」,「チラー装置(10)の室外機11」,「底部材(60)」は,それぞれ,本願発明1の「ケーシング(40)」,「圧縮機(8)」,「電装品箱(25)」,「熱源ユニット」,「底フレーム(51)」に相当する。
また,引用発明の「第1底フレーム(61)」は,圧縮機(50)が設けられるものであるから,本願発明1の「第1底フレーム(51a)」に相当する。
そして,引用発明の「第2底フレーム(62)」は第1底フレーム(61)に連結されているもので,第1底フレーム(61)に隣接するといえるから,本願発明1の「第2底フレーム(51b)」に相当する。
さらに,引用発明の「電装品箱(53)」は,第2底フレーム(62)の本体フレーム(63)に取り付けられた封鎖板(70)及び熱交取付板(69)の上に配置されているから,本願発明1と同様に,「前記ケーシングを上から見た際の外形の半分以上が前記第2底フレームの上方に配置されて(いる)」といえる。
そうすると,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,相違すると認められる。
(一致点)
「ケーシング内に圧縮機及び電装品箱が設けられる熱源ユニットにおいて,
前記ケーシングの底面を形成する底フレームは,前記圧縮機が設けられる第1底フレームと,前記第1底フレームに隣接する第2底フレームと,を有しており,
前記電装品箱は,前記ケーシングを上から見た際の外形の半分以上が前記第2底フレームの上方に配置されている,
熱源ユニット。」
(相違点)
本願発明1は,「前記第1底フレームには,前記圧縮機から吐出された後の冷媒から冷凍機油を分離する油分離器(9)と,冷媒を一時的に溜める冷媒容器(7)と,が設けられている」のに対し,引用発明においては,その点が明らかでない点。

(2) 判断
引用文献1には,油分離器や冷媒容器の配置に関する記載は特段なく(前記1(1)),圧縮機,電装品箱の配置位置との関係で,油分離器,冷媒容器の配置を検討することの動機付けは特段認められない。
また,引用文献2,5,6に開示されているように(前記1(2)ア,エ,オ),圧縮機の近傍に油分離器や冷媒容器を配置することは周知の技術であると認められるが,底フレームが,それぞれに,圧縮機,電装品箱が配置される,二つの底フレームからなる場合に,当然に,圧縮機が配置される底フレームに,油分離器と冷媒容器を配置する構成が導かれるものとは認められない。引用文献3,4をみても(前記1(2)イ,ウ),この点について記載はなく,本願出願前において周知の技術であるともいえない。
そして,本願発明1は,「底フレームを2つに分割し,そして,第1底フレームに圧縮機を設け,かつ,第2底フレームの上方に電装品箱の大部分が配置されるようにすることで,圧縮機及び電装品箱の配置の自由度の向上とメンテナンス性の確保とを両立することができる。しかも,圧縮機が設けられる第1底フレームに油分離器及び冷媒容器を設けることで,第1底フレームの板厚を強度向上のために大きくし,かつ,第2底フレームの板厚を小さくすることができる。」(本願明細書【0023】)といった効果を奏するものである。
したがって,引用発明及び引用文献2?6に記載された事項に基いて,前記相違点に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
以上のとおりであるから,本願発明1は,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

3 本願発明2?5について
本願発明1を特定するための事項をすべて含む本願発明2?5は,さらに特定された事項を検討するまでもなく,本願発明1と同様の理由により,引用発明及び引用文献2?6に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

4 以上のとおりであるから,原査定を維持することはできない。

第6 当審にて通知した拒絶の理由についての判断
平成30年12月17日の手続補正書により補正された特許請求の範囲は前記のとおりであるところ(前記第2),当該補正により,特許請求の範囲の記載に関する不備は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由及び当審にて通知した拒絶の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-19 
出願番号 特願2016-84984(P2016-84984)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (F24F)
P 1 8・ 121- WY (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼藤 啓  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 莊司 英史
窪田 治彦
発明の名称 熱源ユニット  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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