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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C22C |
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管理番号 | 1349115 |
審判番号 | 不服2016-17912 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-30 |
確定日 | 2019-02-12 |
事件の表示 | 特願2015-115668「マグネシウム合金コイル材」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開、特開2015-172252〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成22年11月22日(優先権主張平成21年11月24日、平成22年5月21日)に出願した特願2010-259733号の一部を平成27年6月8日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成27年 6月 8日 :審査請求 同年 6月 8日 :手続補正書及び上申書の提出 平成28年 5月30日付け:拒絶理由通知 同年 7月15日 :意見書及び手続補正書の提出 同年 8月29日付け:拒絶査定 同年11月30日 :審判請求と同時に手続補正書の提出 平成29年 3月17日 :上申書の提出 平成30年 1月16日付け:当審による拒絶理由通知 同年 3月23日 :意見書及び手続補正書の提出 同年 7月12日付け:当審による拒絶理由通知 同年 9月11日 :意見書の提出 第2.本願発明 平成30年3月23日の手続補正書により補正がなされた特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 マグネシウム合金からなる板状材が円筒状に巻き取られたマグネシウム合金コイル材であって、 前記マグネシウム合金は、添加元素にAlを8.3質量%以上9.5質量%以下含有し、 前記マグネシウム合金コイル材を構成する板状材の厚さが0.3mm以上2.0mm以下であり、 前記マグネシウム合金コイル材を構成する板状材の幅が50mm以上2000mm以下であり、 前記マグネシウム合金コイル材の内径が500mm以上1000mm以下であり、 前記マグネシウム合金コイル材の外径が3000mm以下であり、 以下の幅方向の反り量を満たすマグネシウム合金コイル材。 (幅方向の反り量) 前記マグネシウム合金コイル材を構成する板状材のうち、最外周側に位置する板状材を長さ:300mmに切断して反り量用試験片とし、この反り量用試験片を水平台に載置したとき、前記水平台の表面と、当該反り量用試験片の一面において前記水平台に接触しない箇所であって、当該反り量用試験片の幅方向における鉛直方向の最大距離をh、当該反り量用試験片の幅をwとし、(前記鉛直方向の最大距離h/前記反り量用試験片の幅w)×100を幅方向の反り量(%)とするとき、当該幅方向の反り量が0.5%以下である。」 第3.拒絶の理由 平成30年7月12日付けの当審が示した拒絶の理由は、次のとおりのものである。 1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2009-256706号公報 第4.引用文献の記載及び引用発明 1.引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 (1)「【請求項2】 マグネシウム合金からなる帯状板を180?350℃に加熱し、ロール温度が室温?350℃の条件で温間でコイル圧延する際に、入側の設定張力値を、各材料温度における引張耐力の50?90%に設定するとともに、周速比1.05?1.7の異周速圧延を少なくとも1パス以上含み、該異周速圧延における圧下量比率を合計で10%以上とすることを特徴とする、成形加工用マグネシウム合金板の製造方法。」 (2)「【0001】 この発明は、弱電製品であるパソコンや携帯電話等の筐体部品など、各種電子・電気機器部品等に使用される成形加工用マグネシウム合金板に関し、特に温間プレス成形における成形性に優れたAlとMnを含有するマグネシウム合金からなる成形加工用マグネシウム合金板およびその製造方法に関するものである。また、弱電製品のみならず、自動車、二輪車等の輸送用機器の部品への適用も可能である。」 (3)「【0010】 この発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、弱電製品の筐体をはじめとする各種電子・電気機器部品等として、成形性、とりわけ深絞りによる成形加工用マグネシウム合金板を提供することを目的とする。」 (4)「【0023】 本発明の製造に用いる帯状板は、所定の組成を有するマグネシウム合金から得られる。該マグネシウム合金の組成は、本発明としては特に限定をされるものではないが、好適には、質量%で、Al:1?11%、Mn:0.15?0.5%を含有し、残部がMgおよび不可避不純物からなる組成を有し、さらに所望によりZn:0.1?2.0%を含有するものを挙げることができる。尚、Znは0.1%未満を不純物として含み得る。 【0024】 帯状板の製造方法も特に限定されるものではなく、厚スラブを薄肉化したもの、鋳造ビレットを板材状に押し出したもの、双ロールにより溶湯から直接鋳造したものが挙げられる。帯状板は、好適には1.8?10mm厚の板材とされる。 【0025】 上記帯状板は、180?350℃に加熱され、室温?350℃のロール温度としたロールによって張力を付与した状態で温間圧延される。帯状板の加熱は、好適にはインライン上で、赤外線加熱、高周波誘導加熱、ヒーターによる高温雰囲気加熱等の加熱装置により行うことができる。また、ロールの温度は、例えばロールに内蔵したシーズヒータなどによって温度調整することができる。 また、ロールは、それぞれ制御可能なツインモータなどによって上下ロールの回転速度を変えて、周速比1.05?1.7の異周速圧延によって行うのが望ましい。なお、異周速圧延は、温間圧延中の一部パスに限って行うことも可能であり、その場合、異周速圧延の総圧下率を10%以上とする。 【0026】 また、温間圧延に際しては、帯状板に張力を付与した状態で圧延を行う。この際の張力は、入側が、材料温度における引張耐力の50?90%になるように前方の張力を設定する。 【0027】 上記温間加工によって、帯状板を最終厚さにまで薄肉化する。該最終厚さは本発明としては特に限定されるものではなく、製品やその後の加工に応じた厚さを採用することができる。 得られたマグネシウム合金板は、板厚方向表層部と板厚方向中心部でX線回折による{0002}面の最大集積強度がそれぞれ18未満かつ該最大集積強度における表層部/中心部の比が0.85?1.2になっており、優れた成形性を示し、深絞り加工においても優れた成形性を有している。 【実施例1】 【0028】 以下に、本発明の実施例を説明する。 表1の合金符号A、B、Cに示す成分組成の各合金を溶解し、双ロール法により板厚5mm、板幅450mm、長さ30mの鋳造板コイルを作製した。得られた鋳造板コイルを表2に示す初期板厚まで張力を付与したコイルの状態で熱間圧延を施し、その後、400℃で20時間均質化処理した。」 (5)「【0030】 この帯状板について、表2に示す製造プロセス番号1?13に示すような種々の条件で温間圧延を施して目標板厚(上がり板厚)を得た。温間圧延工程の中では、表2中に示す周速比、圧下量比率、入側張力で温間異周速圧延を行なった。表2に示すように、温間圧延工程の材料温度(入側温度)は120℃?400℃、ロール加熱温度は室温?350℃で任意に変量した。入側設定張力値は、表2に示すように、上記材料温度における引張耐力に対する比率で変量した。 ここで温間異周速圧延は、上下のロールをそれぞれ独立したモーターで駆動された温間異周速圧延機を用い、高速側のロールの回転速度を5m/minで一定とし、低速側ロールの回転速度を、設定した異周速比に応じて変化させた。なお、表2中で示す圧延パススケジュールは、板厚(mm)の変化を示すものであり、下線が引かれた板厚から次の板厚までのパスは異周速圧延を行っていることを示している。 【0031】 また、異周速圧延における圧下量比率は、温間圧延全体の圧下量に対する、異周速圧延による圧下量の合計比率を示している。 例えば製造プロセス番号1では、 合計圧下量比率=異周速圧延による圧下量合計/温間圧延全体の圧下量×100(%)=(1.0mm-0.7mm+0.7mm-0.5mm/(2.0mm-0.5mm)×100=約33%となる。 【0032】 ここで、表2において、製造プロセス番号1?3は、いずれも熱間圧延後、均質化処理を施した帯状板を目標板厚まで温間圧延する間に、この発明で規定する条件範囲内の温間異周速圧延を行なった本発明例、製造プロセス番号4、5は、いずれも温間圧延工程の中にこの発明で規定する温間異周速圧延の異周速比範囲を外れた温間異周速圧延を行なった比較例、製造プロセス番号6は、温間圧延工程の中にこの発明で規定する温間異周速圧延の圧下量比率範囲を外れた温間異周速圧延を行なった比較例、製造プロセス番号7、8は、温間圧延工程の中でこの発明で規定する帯状板の加熱温度範囲を外れた比較例、製造プロセス番号9、10は温間圧延工程の中でこの発明で規定するミル入側における設定張力値から外れた値で圧延した比較例、製造プロセス番号12は温間圧延工程の中でこの発明で規定する温間異周速圧延を含まず行なった従来例、製造プロセス番号13は温間圧延工程の中にこの発明で規定するコイル圧延ではなく、切板圧延を行なった従来例である。11はロール温度が外れた比較例である。」 (6)「【0034】 以上のようにして得られた目標板厚まで圧延された各板について、X線回折により板厚方向表層部と中心部の極点図を作成した。X線にはCu-Kα線を用い、0002面について測定し、Schluzの反射法によって極点図を作成し、{0002}基底面における最大集積強度を調べ、表層部/中心部の比を求めた。ここで、板厚方向における{0002}基底面の最大集積強度が小さく、表層部/中心部の比が1に近いほど、成形性への寄与が大きい。また、測定した極点図において、ピークがシングルからダブルに変化しているものの方が成形性に優れる。成形性の評価としては深絞り成形を行ない、限界絞り比(LDR)を調べた。具体的にはパンチ直径50mm一定でブランク直径を変量し、材料加熱温度250℃、パンチ水冷、潤滑にBNを使用してプレス速度5m/minでの各板における限界絞り比(LDR)を調べ、相対比較による評価を行なった。これらの測定結果を表3に示す。」 (7)段落【0029】の【表1】には、「合金符号B」の「合金」は、「Al」の「成分組成」が「8.97mass%」であって、当該合金は「AZ91」合金に相当することが記載されている。 (8)段落【0033】の【表2】には、「製造プロセス番号1」の「製造プロセス」は、「初期板厚」が「2mm」で、「温間圧延工程」における「上り板厚」が「0.5mm」、「材料温度」が「250℃」、「ロール温度」が「60℃」であることが記載されている。 (9)段落【0035】の【表3】には、「合金符号B」の「合金」で「製造プロセス番号1」の「製造プロセス」で造されたものは、成形性を示すLDR(限界絞り比)が「3.0」であることが記載されている。 (10)上記(1)の「マグネシウム合金からなる帯状板を180?350℃に加熱し、ロール温度が室温?350℃の条件で温間でコイル圧延する」との記載、及び上記(4)の段落【0032】の「温間圧延工程の中にこの発明で規定するコイル圧延」との記載から、温間圧延がコイルの状態で行われることは明らかであって、温間圧延後に得られるマグネシウム合金板は、その長さからして円筒状に巻き取られ、コイルの状態であることは当業者であれば当然に認識することである。 (11)上記上記(3)の段落【0028】に「表1の合金符号A、B、Cに示す成分組成の各合金を溶解し、双ロール法により板厚5mm、板幅450mm、長さ30mの鋳造板コイルを作製した。」との記載から、その後、熱間圧延、温間圧延を経て得られるマグネシウム合金板は、その板幅が450mmであることが分かる。 2.引用発明 上記1.の引用文献1の記載事項及び認定事項からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。 「マグネシウム合金板が円筒状に巻き取られたマグネシウム合金板のコイルであって、 マグネシウム合金は、添加元素にAlを8.97mass%含有し、 前記マグネシウム合金板のコイルを構成する板状材の厚さが0.5mmであり、 前記マグネシウム合金板のコイルを構成する板状材の幅が450mmである、 マグネシウム合金板のコイル。」 第5.対比 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明における「マグネシウム合金板」は、本願発明における「マグネシウム合金からなる板状材」に相当し、また、引用発明における「マグネシウム合金板のコイル」は、本願発明における「マグネシウム合金コイル材」に相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、下記の点で一致する。 [一致点] 「マグネシウム合金からなる板状材が円筒状に巻き取られたマグネシウム合金コイル材であって、 前記マグネシウム合金は、添加元素にAlを8.3質量%以上9.5質量%以下含有し、 前記マグネシウム合金コイル材を構成する板状材の厚さが0.3mm以上2.0mm以下であり、 前記マグネシウム合金コイル材を構成する板状材の幅が50mm以上2000mm以下である、 マグネシウム合金コイル材。」 そして、両者は次の各点で相違する。 [相違点1] 本願発明においては、「マグネシウム合金コイル材の内径が500mm以上1000mm以下であり、前記マグネシウム合金コイル材の外径が3000mm以下であ」るのに対し、引用発明においては、マグネシウム合金板のコイルの内径及び外径が明らかでない点。 [相違点2] 本願発明においては、「幅方向の反り量」(マグネシウム合金コイル材を構成する板状材のうち、最外周側に位置する板状材を長さ:300mmに切断して反り量用試験片とし、この反り量用試験片を水平台に載置したとき、前記水平台の表面と、当該反り量用試験片の一面において前記水平台に接触しない箇所であって、当該反り量用試験片の幅方向における鉛直方向の最大距離をh、当該反り量用試験片の幅をwとし、(前記鉛直方向の最大距離h/前記反り量用試験片の幅w)×100)が0.5%以下であるのに対し、引用発明においては、幅方向の反り量か明らかでない点。 第6.検討・判断 1.まず、相違点1について検討する。 引用発明におけるコイルの内径は明らかでないが、内径が500mm以上1000mmであるコイルは通常のコイル(例えば、特開2000-233264号公報の段落【0003】、特開平5-154550号公報の段落【0009】、特開昭63-295046号公報の第3ページ左下欄第1行参照。)であり、一般的なコイラーを用いれば当然に得られる値にすぎない。 そして、引用発明における板厚5mm、板幅450mm、長さ30mの鋳造板コイルを温間圧延して板厚を0.5mmとしたものは、厚さを10分の1にするのであるから、幅が同じであれば、長さが10倍の300mということになる。ここで、引用発明のコイルの内径が最も大きい1000mmであった場合は、内径が1000mmであれば、一周は約3mとなるから、300mの長さであれば約100回巻けるということになる。 そうすると板の厚みが0.5mmであれば、これを内径が1000mmのコイルに100回巻いてもその外径は1000mm+(0.5mm×100)=1050mmであって、コイルの外径が3000mmを超えるものとはならない。 したがって、引用発明におけるマグネシウム合金コイル板材の内径を500mm以上1000mm以下であるものとし、外径を3000mm以下であるものとすることは当業者であれば、十分に想到しうる事項にすぎない。 よって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 2.次に、相違点2について検討する。 一般に板材の後の加工工程を考えると、板材の歪みが製品に影響する可能性がないように、例えば同じ値段であれば、なるべく平坦な板材が望まれることは当該技術分野では十分に想到しうる事項にすぎない。 したがって、どのような測定方法をとったとしても、歪みや反りが0に近い板材が望ましいという技術思想自体は、当業者であれば当然に認識している程度の事項にすぎない。 すなわち、「幅方向の反り量」(マグネシウム合金コイル材を構成する板状材のうち、最外周側に位置する板状材を長さ:300mmに切断して反り量用試験片とし、この反り量用試験片を水平台に載置したとき、前記水平台の表面と、当該反り量用試験片の一面において前記水平台に接触しない箇所であって、当該反り量用試験片の幅方向における鉛直方向の最大距離をh、当該反り量用試験片の幅をwとし、(前記鉛直方向の最大距離h/前記反り量用試験片の幅w)×100)を0%に近づけるために創意工夫が必要であり、そのための創意工夫には進歩性があるかもしれないが、当該「幅方向の反り量」を0%に近づけたいという単なる願望であれば、上述のとおり当業者が当然に認識している程度の事項にすぎない。 したがって、引用発明において、「幅方向の反り量を0.5%以下」とする、すなわち、幅方向の反り量を0に近づけてなるべく平坦とする、ということは当業者であれば十分に想到しうる事項にすぎない。 よって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 3.本願発明の効果は、全体としてみても、引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。 4.よって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第7.請求人の意見について 請求人は、平成30年9月11日提出の意見書第2ページ第24ないし36行において「上記知見に基づき、幅方向の反り量が小さいマグネシウム合金コイル材の製造条件を種々検討した結果、温間加工後の巻取直前の温度を100℃以下とすることを見出しました(本願明細書[0068],[0069],[0077],[0085],[0098])。温間加工後の巻取直前の温度を100℃以下とするには、自然放冷を利用できます(本願明細書[0069])。しかし、自然放冷とすると、圧延後、即ちロール通過直後から、巻取前までの圧延板の走行距離(以下、ロール後走行距離と呼ぶ)が長くなります。ロール後走行距離が非常に長い点については、算出例を挙げて後述します。ロール後走行距離が長いことで、設備の大型化、張力等の制御の困難性、量産性の低下等を招きます。従って、温間加工後の巻取直前の温度を100℃以下とする手法としては、衝風や水冷等の強制冷却手段を利用することが現実的であり、量産性や作業性等の点からも好ましいと考えます(本願明細書[0069],[0085],[0098])。」旨の主張をしている。 しかしながら、本願発明は、「マグネシウム合金コイル材」という物の発明であって、「温間加工後の巻取直前の温度を100℃以下とする」というコイル材の製造方法に関する事項は、本願発明の発明特定事項ではないから、請求人の当該主張は、特許請求の範囲の記載に基かないものとなり、採用することはできない。 また、請求人は同意見書第6ページ第29ないし37行において「以上説明したように、引用文献1は、Alを8.7質量%以上含むマグネシウム合金からなり、幅方向の反り量が0.5%以下のマグネシウム合金『コイル材』を何ら開示していないと思料します。また、引用文献1の製造条件を鑑みても、Alを8.7質量%以上含むマグネシウム合金からなり、幅方向の反り量が0.5%以下であるマグネシウム合金コイル材が得られないと思料します。このような引用文献1に基づいても、Alを8.7質量%以上含むマグネシウム合金からなり、幅方向の反り量が0.5%以下である本願発明のマグネシウム合金「コイル材」に容易に想到し得るはずが有りません。」旨の主張をしている。 この点について検討すると、引用文献1において、マグネシウム合金のコイルが幅方向に反っているかどうか、また幅方向にどの程度反っているかは明らかでない。 しかしながら、引用文献1は、マグネシウム合金のコイルの幅方向の反り量を低減するための何らかの手段を施すことを排除するものではないから、上記第6.2.で検討したように、「幅方向の反り量が0.5%以下」であるという発明の課題そのものにすぎない事項を本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 よって、請求人の当該主張を採用することはできない。 第8.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-11-29 |
結審通知日 | 2018-12-04 |
審決日 | 2018-12-19 |
出願番号 | 特願2015-115668(P2015-115668) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C22C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 酒井 英夫 |
特許庁審判長 |
栗田 雅弘 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 平岩 正一 |
発明の名称 | マグネシウム合金コイル材 |
代理人 | 山野 宏 |