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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1349119 |
審判番号 | 不服2017-7643 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-29 |
確定日 | 2019-02-12 |
事件の表示 | 特願2015-541708「無線LANにおけるアクティブスキャニングを実行する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日国際公開、WO2014/181995、平成27年12月24日国内公表、特表2015-537469〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)4月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年(平成25年)5月6日 米国、2013年(平成25年)5月8日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 5月31日付け 拒絶理由通知書 平成28年 8月25日 意見書、手続補正書の提出 平成29年 1月24日付け 拒絶査定 平成29年 5月29日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提 出 平成29年 9月 8日 上申書の提出 第2 平成29年5月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成29年5月29日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の概要 本件補正は、平成28年8月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された 「WLAN(wireless local area network)におけるアクティブスキャニングを実行する方法であって、前記方法は、 第1のSTA(station)により、第1のプローブ要求フレームをAP(access point)に送信することと、 前記第1のSTAにより、前記APからプローブ応答フレームを受信することであって、前記プローブ応答フレームは、前記第1のプローブ要求フレームに対する応答である、ことと を含み、 前記第1のプローブ要求フレームは、FILS(fast initial link setup)性能情報を含み、 前記プローブ応答フレームは、前記第1のSTAが前記FILSをサポートすることを前記FILS性能情報が指示する場合には、ブロードキャスト送信に基づいて送信され、 前記プローブ応答フレームは、前記第1のSTAが前記FILSをサポートすることを前記FILS性能情報が指示しない場合には、前記第1のSTAへとユニキャスト送信に基づいて送信され、 前記FILS性能情報は、前記プローブ要求フレームの拡張性能要素に含まれ、 前記FILS性能情報は、前記APが前記プローブ応答フレームをブロードキャストで送信することを可能にするための情報である、方法。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「WLAN(wireless local area network)におけるアクティブスキャニングを実行する方法であって、前記方法は、 第1のSTA(station)により、第1のプローブ要求フレームをAP(access point)に送信することと、 前記第1のSTAにより、前記APからプローブ応答フレームを受信することであって、前記プローブ応答フレームは、前記第1のプローブ要求フレームに対する応答である、ことと を含み、 前記第1のプローブ要求フレームは、FILS(fast initial link setup)性能情報を含み、 前記プローブ応答フレームは、前記第1のSTAが前記FILSをサポートすることを前記FILS性能情報が指示する場合には、第1の時間区間でブロードキャスト送信に基づいて送信され、前記第1の時間区間は、第2の時間区間以降で最大チャネル時間以前の時間区間であり、 前記プローブ応答フレームは、前記第1のSTAが前記FILSをサポートすることを前記FILS性能情報が指示しない場合には、前記第2の時間区間で前記第1のSTAへとユニキャスト送信に基づいて送信され、前記第2の時間区間は、前記第1のSTAがチャネルをスキャニングする前記最大チャネル時間のうち一部である時間区間であり、 前記FILS性能情報は、前記プローブ要求フレームの拡張性能要素に含まれ、 前記FILS性能情報は、前記APが前記プローブ応答フレームをブロードキャストで送信することを可能にするための情報である、方法。」 という発明(以下、「本願補正発明」という。)とすることを含むものである。(下線は補正箇所を示す。) 2.補正の適否 (1)新規事項の有無 請求項1についての上記補正は、本件補正前の「プローブ応答フレーム」の送信タイミングについて、第1のSTAがFILSをサポートすることをFILS性能情報が指示する場合には、「第1の時間区間で」ブロードキャスト送信に基づいて送信され、「前記第1の時間区間は、第2の時間区間以降で最大チャネル時間以前の時間区間であり、」との限定及び第1のSTAがFILSをサポートすることをFILS性能情報が指示しない場合には、「第2の時間区間で」第1のSTAへとユニキャスト送信に基づいて送信され、「前記第2の時間区間は、前記第1のSTAがチャネルをスキャニングする前記最大チャネル時間のうち一部である時間区間であり、」との限定を付したものである。 ここで、補正後の請求項1には「前記プローブ応答フレームは、前記第1のSTAが前記FILSをサポートすることを前記FILS性能情報が指示する場合には、第1の時間区間でブロードキャスト送信に基づいて送信され、前記第1の時間区間は、第2の時間区間以降で最大チャネル時間以前の時間区間であり、」と記載されていることから、「第2の時間区間でのユニキャスト送信に関わりなく、第1のSTAがFILSをサポートすることをFILS性能情報が指示する場合は、第2の時間区間以降の第1の時間区間でプローブ応答フレームは第1のSTAへとブロードキャスト送信に基づいて送信される」ことが新たな発明特定事項として補正後の請求項1に追加された。 一方、本願国際出願日における国際特許出願の明細書等の翻訳文の段落[0161]には「図15ではFILS AP1500が複数のFILS STA1510、1520及び少なくとも一つのレガシSTA1530からプローブ要求フレームを受信した場合、複数のFILS STA1510、1520及び少なくとも一つのレガシSTA1530にプローブ応答フレームを送信する方法に対して開示する。」と記載されていることから、図15では複数のFILS STA1510、1520及び少なくとも一つのレガシSTA1530の両方からプローブ要求フレームを受信した場合が記載されている。更に第2の時間区間(補正後の請求項1の「第1の時間区間」)について最小チャネル時間以降に設けることが記載されている。しかしながら、レガシSTAからプローブ要求フレームが無い場合については図15には記載されていない。 そして、図7の記載から明らかなように、レガシSTAからプローブ要求フレームが無い場合にはプローブ応答フレームがユニキャスト送信されない。 しかも、本願国際出願日における国際特許出願の明細書等の翻訳文の段落[0059]において「最小チャネル時間520は、STA500がアクティブスキャニングを実行するチャネルを変更するための動作を実行するために使われることができる。例えば、STA500は、プローブタイマが最小チャネル時間520に達する時まで他のフレーム(例えば、プローブ応答フレーム540、550の送信を探知することができない場合、STA500は、スキャニングチャネルを移動して他のチャネルでスキャニングを実行することができる。」と記載されていることから、最小チャネル時間に達するまでに他のフレームの送信を探知することができない場合に、STA500は、スキャニングチャネルを移動してしまう。 したがって、レガシSTAからプローブ要求フレームが無い場合にはプローブ応答フレームがユニキャスト送信されないので、STA500がスキャニングチャネルを移動しないためには、最小チャネル時間に達するまでの補正後の請求項1の第2の時間区間にブロードキャスト送信のプローブ要求フレームが送信されることが本願国際出願日における国際特許出願の明細書等の翻訳文からは読み取れる。つまり、補正後の請求項1の第2の時間区間でのユニキャスト送信がある場合には第2の時間区間以降の第1の時間区間でプローブ応答フレームは第1のSTAへとブロードキャスト送信に基づいて送信するが、第2の時間区間でのユニキャスト送信がない場合には第2の時間区間でプローブ応答フレームは第1のSTAへとブロードキャスト送信に基づいて送信することが読み取れる。 したがって、「第2の時間区間でのユニキャスト送信に関わりなく、第1のSTAがFILSをサポートすることをFILS性能情報が指示する場合は、第2の時間区間以降の第1の時間区間でプローブ応答フレームは第1のSTAへとブロードキャスト送信に基づいて送信する」ことは、本願国際出願日における国際特許出願の明細書等の翻訳文に記載されておらず、上記補正は翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。 よって、本件補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内のものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである(特許法第184条の12第2項参照)。 (2)独立特許要件 上記(1)のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、更に進めて、仮に請求項1についての上記補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。 ア 特許法第36条第6項第1号について (ア) 上記(1)のとおり、「第2の時間区間でのユニキャスト送信に関わりなく、第1のSTAがFILSをサポートすることをFILS性能情報が指示する場合は、第2の時間区間以降の第1の時間区間でプローブ応答フレームは第1のSTAへとブロードキャスト送信に基づいて送信する」ことは、本願国際出願日における国際特許出願の明細書等の翻訳文に記載されておらず、自明な事項でもない。したがって、請求項と発明の詳細な説明の記載との対応関係も不明であり、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 (イ) 補正後の請求項1では「前記プローブ応答フレームは、前記第1のSTAが前記FILSをサポートすることを前記FILS性能情報が指示しない場合には、前記第2の時間区間で前記第1のSTAへとユニキャスト送信に基づいて送信され、前記第2の時間区間は、前記第1のSTAがチャネルをスキャニングする前記最大チャネル時間のうち一部である時間区間であり、」と記載されているが、ユニキャスト送信と最小チャネル時間との関係が明らかにされていない。したがって、補正後の請求項1に係る発明ではユニキャスト送信が最小チャネル時間以降に行われ、そのユニキャスト送信後にブロードキャスト送信が行われるケースが含まれている。 しかしながら、ユニキャスト送信が最小チャネル時間以降に行われ、そのユニキャスト送信後にブロードキャスト送信が行われるケースについては、本願国際出願日における国際特許出願の明細書等の翻訳文に記載されておらず、自明な事項でもない。したがって、請求項と発明の詳細な説明の記載との対応関係も不明であり、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 イ 特許法第36条第4項第1号について (ア) 本願国際出願日における国際特許出願の明細書等の翻訳文の段落[0059]において「最小チャネル時間520は、STA500がアクティブスキャニングを実行するチャネルを変更するための動作を実行するために使われることができる。例えば、STA500は、プローブタイマが最小チャネル時間520に達する時まで他のフレーム(例えば、プローブ応答フレーム540、550の送信を探知することができない場合、STA500は、スキャニングチャネルを移動して他のチャネルでスキャニングを実行することができる。」と記載されていることから、最小チャネル時間に達するまでに他のフレームの送信を探知することができない場合に、STA500は、スキャニングチャネルを移動してしまう。 ここで、上記(1)のとおり、第2の時間区間でプローブ応答フレームのユニキャスト送信もブロードキャスト送信もなく、第2の時間区間以降の第1の時間区間でプローブ応答フレームを送信することとなる場合は、最小チャネル時間に達するまでに他のフレームの送信を探知することができないことから、STA500は、第2の時間区間であるスキャニングチャネルを移動してしまうことでプローブ応答フレームを受信できないこととなってしまう。しかしながら、この場合に、STA500は、スキャニングチャネルを移動しないようにするという課題をどのように解決するかが発明の詳細な説明の記載には記載されていない。したがって、発明の詳細な説明の記載は補正後の請求項1に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。 (イ) 本願国際出願日における国際特許出願の明細書等の翻訳文の段落[0059]の記載から、最小チャネル時間に達するまでに他のフレームの送信を探知することができない場合に、STA500は、スキャニングチャネルを移動してしまう。 したがって、「ア(イ)」で述べた、ユニキャスト送信が最小チャネル時間以降に行われ、そのユニキャスト送信後にブロードキャスト送信が行われるケースでは、STAはスキャニングチャネルを移動してしまうことから、プローブ応答フレームを受信できないこととなる。 したがって、ユニキャスト送信が最小チャネル時間以降に行われ、そのユニキャスト送信後にブロードキャスト送信が行われるケースについては、発明の詳細な説明の記載は補正後の請求項1に係る発明を実施しうる程度に記載されていない。 なお、平成29年9月8日に提出された上申書に提示された補正案も、「第2の時間区間でのユニキャスト送信に関わりなく、第1のSTAがFILSをサポートすることをFILS性能情報が指示する場合は、第2の時間区間以降の第1の時間区間でプローブ応答フレームは第1のSTAへとブロードキャスト送信に基づいて送信されること」との事項が含まれるから、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号又は特許法第36条第4項第1号の規定に違反している。 ウ 特許法第29条第2項について (ア) 本願補正発明 本願補正発明は、上記「1.補正の概要」の項の「本願補正発明」のとおりのものと認める。 (イ)引用例に記載された事項及び引用発明 a 引用例1 原査定の拒絶の理由で引用されたLiwen Chu, et. al.,Active Scan Optimization,IEEE 802.11-12/1263r0,2012年11月1日アップロード(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。 「Active Scan Enhancement in [1] ・802.11ai shall define a mechanism to optimise the MLME-SCAN.confirm primitive to indicate the discovered APs faster and without additional delays. ・Probe Request, Probe Response and Beacon shall contain an indication of FILS capability. ・802.11ai shall have a mechanism to transmit a Probe Response frame to an individual and/or broadcast address. ・802.11ai shall have a mechanism to include information of the responding AP and other APs to the Probe Response frame. ・An AP may respond to multiple Probe Requests from one or more FILS capable STAs with a single broadcast addressed response frame.」(Slide3 1?10行) (当審仮訳: [1]のアクティブスキャンの改良 ・802.11aiは速く、そして追加の遅れなしで発見されたAPを示すためにMLME-SCAN.confirmプリミティブを最適化するためのメカニズムを定義するでしょう。 ・プローブ要求、プローブ応答及びビーコンはFILS能力の表示を含めるでしょう。 ・802.11aiが個々のアドレス(individual)及び/又はブロードキャストアドレスに向けてプローブ応答フレームを伝送するためにメカニズムを持つでしょう。 ・802.11aiはプローブ応答フレームに応答するAP及び他のAPの情報を含めるメカニズムを持つでしょう。 ・APは1つ以上のFILS能力のあるSTAからの多数のプローブ要求に対して単一のブロードキャストアドレスの応答フレームで応答すればよい。) 上記の摘記した引用例1の記載及び当業者における技術常識からみて、次の事項が引用例1には記載されていると認められる。 802.11はWLAN(wireless local area network)の規格であることは技術常識であるから、引用例1のアクティブスキャンは「WLAN(wireless local area network)におけるアクティブスキャン」といえ、引用例1ではAPとSTAのプローブ要求とプローブ応答フレームの送受信が記載されていることから「アクティブスキャンを実行する方法」が示されているといえる。 APとはアクセスポイントを示すこと及びプローブ要求がフレームで構成されることは技術常識であり、「STAからの多数のプローブ要求に対して単一のブロードキャストアドレスの応答フレームで応答すればよい」と記載されていることから、「STAからプローブ要求フレームをAP(access point)に送信すること」と、「STAによりAPからプローブ応答フレームを受信すること」とが行われるといえる。そして、「プローブ応答フレームは、第1のプローブ要求フレームに対する応答である」ことは明らかである。 FILSがfast initial link setupの略語であることは技術常識であり、「プローブ要求・・・はFILS能力の表示を含める」と記載されていることから、「プローブ要求フレームはFILS(fast initial link setup)能力の表示を含」んでいるといえる。 「APは1つ以上のFILS能力のあるSTAからの多数のプローブ要求に対して単一のブロードキャストアドレスの応答フレームで応答すればよい。」と記載されていることから、「プローブ応答フレームはSTAがFILS能力の表示がある場合には、ブロードキャスト送信に基づいて送信され」るといえ、更に、「FILS能力の表示は、APがプローブ応答フレームをブロードキャストで送信することを可能にするための情報である」といえる。 「802.11aiが個々のアドレス及び/又はブロードキャストアドレスに向けてプローブ応答フレームを伝送するためにメカニズムを持つでしょう。」と記載されていることから、「プローブ応答フレームは個々のアドレス(individual)で送信される場合もある」といえる。 したがって、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。 (引用発明1) 「WLAN(wireless local area network)におけるアクティブスキャンを実行する方法であって、前記方法は、 STAからプローブ要求フレームをAP(access point)に送信することと、 STAにより、APからプローブ応答フレームを受信することであって、プローブ応答フレームは、第1のプローブ要求フレームに対する応答である、ことと を含み、 プローブ要求フレームはFILS(fast initial link setup)能力の表示を含み、 プローブ応答フレームはSTAがFILS能力の表示がある場合には、ブロードキャスト送信に基づいて送信され、 プローブ応答フレームは個々のアドレス(individual)で送信される場合もあり、 FILS能力の表示は、APがプローブ応答フレームをブロードキャストで送信することを可能にするための情報である、方法」 b 引用例3 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったJarkko Kneckt, et. al.,Active Scanning Enabling FILS(当審仮訳:FILSを可能にするアクティブスキャニング),IEEE 802.11-11/1619r3,2012年1月19日アップロード(以下、「引用例3」という。)には、Figure 10-3-Example of active scanning when Probe Request frame is addressed to broadcast address(当審仮訳:プローブ要求がブロードキャストアドレスにアドレスされた時のアクティブスキャンの例)が記載されている。 以上の記載を考慮すると、アクティブスキャンの際に、プローブ要求に対するプローブ応答をResponderから送信する際に、宛先がindividualのプローブ応答と宛先がブロードキャストのプローブ応答がされていること、及び、最小チャネル時間のうち一部である時間区間で宛先がindividualのプローブ応答の送信がされ、プローブ応答の宛先がindividualのプローブ応答の送信以降で最大チャネル時間以前の時間区間でプローブ応答がブロードキャスト送信されていること、が見てとれる。ここで、最大チャネル時間はプローブ要求に対してプローブ応答がなされる最大の時間であるから、最小チャネル時間の時間区間は最大チャネル時間の時間区間の一部であることは技術常識である。 したがって、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているといえる。 (引用発明3) 「アクティブスキャンの際に、Responderからプローブ応答を送信する際に、プローブ要求に対するプローブ応答を、宛先がindividualのプローブ応答の送信以降で最大チャネル時間以前の時間区間でブロードキャスト送信され、最大チャネル時間のうち一部である時間区間で宛先がindividualのプローブ応答の送信がされる。」 (ウ)対比及び判断 本願補正発明と引用発明1を対比すると、 a 本願補正発明と引用発明1とは「WLAN(wireless local area network)におけるアクティブスキャニングを実行する方法」である点で一致する。 b 引用発明1の「STA」、「プローブ要求フレーム」は、本願補正発明の「第1のSTA(station)」、「第1のプローブ要求フレーム」に相当することから、引用発明1の「STAからプローブ要求フレームをAP(access point)に送信すること」、「STAにより、APからプローブ応答フレームを受信することであって、プローブ応答フレームは、第1のプローブ要求フレームに対する応答である、こと」は、本願補正発明と「第1のSTA(station)により、第1のプローブ要求フレームをAP(access point)に送信すること」、「第1のSTAにより、APからプローブ応答フレームを受信することであって、プローブ応答フレームは、第1のプローブ要求フレームに対する応答である、こと」である点で一致する。 c 引用発明1の「FILS(fast initial link setup)能力の表示」は、FILSの能力を表していることから性能情報といえるので、本願補正発明の「FILS性能情報」に相当する。 また、引用発明1の「FILS(fast initial link setup)能力の表示」はプローブ要求フレームに含まれていることから、プローブ要求フレームの中で性能の要素を表しているといえる。そして、FILS(fast initial link setup)能力は従来のレガシSTAより拡張された性能であるから、拡張性能要素といえる。してみると、引用発明1の「プローブ要求フレームはFILS(fast initial link setup)能力の表示を含み、」は、本願補正発明の「第1のプローブ要求フレームは、FILS(fast initial link setup)性能情報を含み」、「FILS性能情報は、プローブ要求フレームの拡張性能要素に含まれ」る点で本願補正発明と一致する。 そして、引用発明1の「プローブ応答フレームはSTAがFILS能力の表示がある場合」は本願補正発明の「第1のSTAがFILSをサポートすることをFILS性能情報が指示する場合」に相当することから、引用発明1の「プローブ応答フレームはSTAがFILS能力の表示がある場合には、ブロードキャスト送信に基づいて送信され」は、本願補正発明と「プローブ応答フレームは、第1のSTAがFILSをサポートすることをFILS性能情報が指示する場合には、ブロードキャスト送信に基づいて送信され」である点で一致する。 c 引用発明1の「個々のアドレス(individual)で送信される場合」とはユニキャスト送信のことであるから、本願補正発明と「プローブ応答フレームはユニキャスト送信される場合があ」る点で一致する。 d cで述べたように、引用発明1の「FILS能力の表示」は本願補正発明の「FILS性能情報」に相当することから、本願補正発明と引用発明1は「FILS性能情報は、APがプローブ応答フレームをブロードキャストで送信することを可能にするための情報である」の点で一致する。 以上を総合すると、本願補正発明と引用発明1とは、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「WLAN(wireless local area network)におけるアクティブスキャニングを実行する方法であって、前記方法は、 第1のSTA(station)により、第1のプローブ要求フレームをAP(access point)に送信することと、 前記第1のSTAにより、前記APからプローブ応答フレームを受信することであって、前記プローブ応答フレームは、前記第1のプローブ要求フレームに対する応答である、ことと を含み、 前記第1のプローブ要求フレームは、FILS(fast initial link setup)性能情報を含み、 前記プローブ応答フレームは、前記第1のSTAが前記FILSをサポートすることを前記FILS性能情報が指示する場合には、ブロードキャスト送信に基づいて送信され、 プローブ応答フレームはユニキャスト送信される場合があり、 前記FILS性能情報は、前記プローブ要求フレームの拡張性能要素に含まれ、 前記FILS性能情報は、前記APが前記プローブ応答フレームをブロードキャストで送信することを可能にするための情報である、方法。」 (相違点1) 一致点の「プローブ応答フレームはユニキャスト送信される場合」に関し、本願補正発明では「前記第1のSTAが前記FILSをサポートすることを前記FILS性能情報が指示しない場合」であるのに対し、引用発明1では個々のアドレス(individual)で送信するが、「プローブ応答フレームはSTAがFILS能力の表示がない場合」と特定されていない点。 (相違点2) プローブ応答フレームをブロードキャスト送信に基づいて送信される際及びユニキャスト送信に基づいて送信される際に関して、本願補正発明は「第1の時間区間」でブロードキャスト送信に基づいて送信され、「前記第1の時間区間は、第2の時間区間以降で最大チャネル時間以前の時間区間であり」、「前記第2の時間区間」で前記第1のSTAへとユニキャスト送信に基づいて送信され、「前記第2の時間区間は、前記第1のSTAがチャネルをスキャニングする前記最大チャネル時間のうち一部である時間区間であ」るのに対し、引用発明1では送信のタイミングについて特定されていない点。 以下、各相違点について検討する。 (相違点1について) 従来からプローブ応答フレームはユニキャストでAPから送信されていることから、引用発明1においてもSTAがFILSをサポートしていない場合には従来と同様のユニキャストでAPからプローブ応答フレームを送信されることは格別困難なことではなく、当業者が適宜なし得ることである。 (相違点2について) 引用発明3のとおり、「アクティブスキャンの際に、Responderからプローブ応答を送信する際に、プローブ要求に対するプローブ応答を、宛先がindividualのプローブ応答の送信以降で最大チャネル時間以前の時間区間でブロードキャスト送信され、最大チャネル時間のうち一部である時間区間で宛先がindividualのプローブ応答の送信がされる。」ことは公知技術であるから、引用発明1のアクティブスキャンにおいても公知技術に基づいて、プローブ応答の送信するタイミングを、宛先がindividualであるユニキャスト送信を先に送信し、ブロードキャスト送信を後とし、どちらも最大チャネル時間の一部の区間とすることは格別困難なことではなく、当業者が適宜なし得ることである。 また、本願補正発明の作用効果も、引用発明1及び引用発明3の奏する作用効果から当業者が予測し得る範囲内のものである。 そうすると、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 以上を総合すると、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3.まとめ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、平成28年5月31日付け拒絶理由通知書では請求項1に対して引用例1が引用されている。ここで、平成29年1月24日付け拒絶査定には「・請求項1-4・引用文献等1、2」と記載されているものの、コメントから明らかなように、請求項1に対して引用例2を引用していない。なお、更に言えば、引用例2にも引用例1と同様の記載があることから、引用発明1は引用例2にも記載されている。 1.Liwen Chu, et. al.,Active Scan Optimization,IEEE 802.11-12/1263r0,2012年11月1日アップロード (2.Ping Fang, et. al.,Specification Framework for TGai,IEEE 802.11-12/0151r14,2012年11月14日アップロード) 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成28月8月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明は、上記「第2 平成29年5月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の「1.補正の概要」の項目で示した本願発明のとおりのものと認める。 2.引用発明1 引用発明1は、上記「第2 平成29年5月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件について」の「ウ 特許法第29条第2項について」の「(イ)引用例に記載された事項及び引用発明」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は上記「第2 平成29年5月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件について」の「ウ 特許法第29条第2項について」の「(ア)本願補正発明」で検討した上記本願補正発明から、「プローブ応答フレーム」の送信タイミングについて、第1のSTAがFILSをサポートすることをFILS性能情報が指示する場合には、「第1の時間区間で」ブロードキャスト送信に基づいて送信され、「前記第1の時間区間は、第2の時間区間以降で最大チャネル時間以前の時間区間であり、」との限定及び第1のSTAが前記FILSをサポートすることをFILS性能情報が指示しない場合には、「第2の時間区間で」第1のSTAへとユニキャスト送信に基づいて送信され、「前記第2の時間区間は、前記第1のSTAがチャネルをスキャニングする前記最大チャネル時間のうち一部である時間区間であり、」との限定事項を削除したものである。 そうすると、両者は上記「第2 平成29年5月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件について」の「ウ 特許法第29条第2項について」の「(ウ)対比及び判断」の「相違点1」のみ相違するが、本願発明の発明特定事項の全て含みさらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成29年5月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件について」の「ウ 特許法第29条第2項について」の項で検討したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-09-19 |
結審通知日 | 2018-09-20 |
審決日 | 2018-10-02 |
出願番号 | 特願2015-541708(P2015-541708) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W) P 1 8・ 575- Z (H04W) P 1 8・ 562- Z (H04W) P 1 8・ 536- Z (H04W) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 倉本 敦史 |
特許庁審判長 |
菅原 道晴 |
特許庁審判官 |
羽岡 さやか 中木 努 |
発明の名称 | 無線LANにおけるアクティブスキャニングを実行する方法及び装置 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 森下 夏樹 |