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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B
管理番号 1349140
審判番号 不服2017-2381  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-20 
確定日 2019-02-14 
事件の表示 特願2012-172520「PLCシステム,その作画エディタ装置,プログラマブル表示器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年2月20日出願公開,特開2014-32529〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯

本願は,平成24年8月3日の出願であって,その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 5月25日付け:拒絶理由通知
同 年 7月 1日 :意見書及び手続補正書の提出
同 年12月 1日付け:拒絶査定
平成29年 2月20日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出
平成30年 6月 5日付け:拒絶理由通知
同 年 7月26日 :意見書及び手続補正書の提出
同 年 8月15日付け:拒絶理由通知(最後)
同 年 9月18日 :意見書及び手続補正書の提出


第2 平成30年9月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年9月18日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.請求項1に係る補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1に係る補正を含むものであり,請求項1に係る補正の内容は以下のとおりである(下線部は,補正箇所を示すために当審で付したものである。)。

(1)本件補正後の請求項1の記載
「プログラマブル表示器と作画エディタ装置を有するシステムであって,
前記作画エディタ装置は,
前記プログラマブル表示器用の任意の複数の操作表示画面の作成を支援する操作表示画面作成支援手段と,
前記複数の操作表示画面をそれぞれ表示させる為の,該それぞれの操作表示画面に対応する各画面切替ボタンを生成すると共に,該各画面切替ボタンを一覧表示する,前記操作表示画面切替用の専用の切替ボタン一覧表示画面を生成する切替ボタン一覧表示画面生成手段と,
前記複数の操作表示画面と前記切替ボタン一覧表示画面を前記プログラマブル表示器側に送信して記憶させる送信手段とを有し,
前記プログラマブル表示器は,
前記切替ボタン一覧表示画面を表示して任意の前記画面切替ボタンを選択させることで前記複数の操作表示画面を切替表示する画面表示制御手段を有し,
全ての前記操作表示画面上にはそれぞれ前記切替ボタン一覧表示画面を表示させる為の1つの特定ボタンが表示され,前記画面表示制御手段は,表示中の操作表示画面上で該1つの特定ボタンが操作されると前記切替ボタン一覧表示画面を該操作表示画面内に追加表示し,前記複数の操作表示画面のうちのいずれの操作表示画面上で前記1つの特定ボタンが操作された場合であっても,同一の前記切替ボタン一覧表示画面を追加表示することを特徴とするPLCシステム。」

(2)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の,平成30年7月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「プログラマブル表示器と作画エディタ装置を有するシステムであって,
前記作画エディタ装置は,
前記プログラマブル表示器用の任意の操作表示画面の作成を支援する操作表示画面作成支援手段と,
複数の前記操作表示画面のうちの何れかの操作表示画面を表示させる為の各画面切替ボタンを生成すると共に,該各画面切替ボタンを一覧表示する,前記操作表示画面切替用の専用の切替ボタン一覧表示画面を生成する切替ボタン一覧表示画面生成手段と,
前記複数の操作表示画面と前記切替ボタン一覧表示画面を前記プログラマブル表示器側に送信して記憶させる送信手段とを有し,
前記プログラマブル表示器は,
前記切替ボタン一覧表示画面を表示して任意の前記画面切替ボタンを選択させることで前記複数の操作表示画面を切替表示する画面表示制御手段を有し,
全ての前記操作表示画面上にはそれぞれ前記切替ボタン一覧表示画面を表示させる為の1つの特定ボタンが表示され,前記画面表示制御手段は,表示中の操作表示画面上で該1つの特定ボタンが操作されると前記切替ボタン一覧表示画面を該操作表示画面内に追加表示し,前記複数の操作表示画面のうちのいずれの操作表示画面上で前記1つの特定ボタンが操作された場合であっても,同一の前記切替ボタン一覧表示画面を追加表示することを特徴とするPLCシステム。」

2.本件補正の適否
請求項1に係る補正は,訂正前の「任意の操作表示画面」という事項を「任意の複数の操作表示画面」という事項に補正することで,操作表示画面が複数であることを限定するものである(以下「限定事項1」という。)。
また,請求項1に係る補正は,訂正前の「複数の前記操作表示画面のうちの何れかの操作表示画面を表示させる為の各画面切替ボタン」という事項を「前記複数の操作表示画面をそれぞれ表示させる為の,該それぞれの操作表示画面に対応する各画面切替ボタン」という事項に補正することで,画面切替ボタンが,複数の操作表示画面をそれぞれ表示させるものであることを限定するものである(以下「限定事項2」という。)。
そして,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,請求項1に係る補正は,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)各引用文献の記載
ア.引用文献1の記載事項及び引用発明
(ア)当審が平成30年8月15日付けで通知した拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された引用文献である,特開2002-83311号公報(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。なお,下線は,理解の便のために当審で付したものである。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,作画方法,作画ツールおよび表示装置に関し,特に,作画作業中の作画イメージが容易に把握でき,しかも表示画面の変更,修正が容易で,かつ制御機器のメンテナンス対応も容易にした作画方法および作画ツールおよび表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に,PLC(プログラマブルロジックコントローラ)等を用いた制御システムにおいては表示装置(PT)は欠かせないものになってきており,SWやランプの代わりなどとしての使用頻度は高いものとなっている。
【0003】ところが,制御システムの規模が大きくなるにつれ,制御プログラムや通信ネットワークも複雑となり,ソフト系エンジニアに頼る比率がますます増加しているのは表示装置においても同様である。」

「【0022】
【発明の実施の形態】以下,この発明に係わる作画方法および作画ツールおよび表示装置の実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】図1は,この発明に係わる表示装置における表示画面の切り替えの一実施の形態を示す図である。
【0024】図1において,表示画面10はメニュー画面である。この表示画面はタッチパネルから構成されており,このメニュー画面10において,例えば,アイコン11にタッチすると,このメニュー画面10から次のメニュー画面20に切り替わる。
【0025】このメニュー画面20において,例えばアイコン22にタッチすると,このメニュー画面20から図示しない次の画面に切り替えることができる。
【0026】また,このメニュー画面20において,元の画面に戻ることを示すアイコン21にタッチすると,このメニュー画面20から元のメニュー画面10に切り替わる。
【0027】また,メニュー画面10において,ある表示画面に対応するアイコン12にタッチすると,このメニュー画面10から表示画面30に切り替わる。」

図1


「【0031】図2は,この発明に係わる表示装置における表示画面の具体例を示したものである。
・・・
【0034】また,図2の「運転」,「停止」,「自動」,「手動」,「メニュ」が表記された画像55,56,57,58,59は,ランプ兼スイッチの機能を示す表示枠を示す。」

図2


「【0064】図8は,この発明による表示画面の作成の手順を示すフローチャートである。
【0065】この発明による表示画面の作成の手順においては,まず,表示ツール上に仮想の表示画面を用意する(ステップ801)。
・・・
【0073】また,ステップ807で,表示画面がすべて作成し終わったと判断されると(ステップ807でY),この処理を終了する。
【0074】上記この発明による表示画面の作成の手順も,表示装置の画面データを作画ツール上で作成するものであるが,基本的には,図6に示した従来の表示画面の作成の手順のように,事前に制御機器システムの構成などをすべて想定しなくてもよい。」

図8


「【0098】図13は,この発明に係わる作画ツールおよび表示装置のハード構成を示すブロック図である。
【0099】図13において,表示装置1310は,ケーブル1360を介して図示しない制御装置もしくは制御機器に接続される。
【0100】この表示装置1310には,ケーブル1350介して作画ツール1320が接続され,また,この作画ツール1320には,モニタ部1330および入力部1340が接続される。」

「【0107】なお,作画ツール1320は,表示装置1310へ画面データをインストールするとき若しくは表示装置1310から画面データを吸い上げるときにケーブル1350を介して表示装置1310に接続される。」

図13


「【0109】図14は,作画ツールから表示装置へインストールされる画面データのイメージを示す図である。」

図14


「【0132】図20は,作画ツール上で情報テーブルから拡張された通信パケットを用いた仮パケットのイメージを説明する図である。
【0133】図20には,表示装置2000の表示画面2001が示されており,この表示画面には,本来表示装置で画面の切り替りによって表示される複数の表示画面が示されている。」

図20


(イ)上記の記載事項から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。

A.引用文献1に記載された技術は,PLCの表示装置及び作画ツールに関するものであり(段落【0001】,【0098】),PLCの表示装置及び作画ツールを合わせてシステムということができる。
B.作画ツール1320は,表示装置の画面データを作成するものであり(段落【0073】),図8に示されたフローチャートにしたがった手順を実行するのであるから,そのためのプログラム,すなわち,表示画面作成プログラムが存在していることは明らかである。また,作画ツールは,作成した画像データをPLCにインストールする(段落【0107】,【0109】)が,図14には,複数の表示画面1423?142nの画像データが示されているから,表示画面作成プログラムは,任意の複数の表示画面30,1423?142nの作成を行うということができる。
C.図1及び2から,表示画面30上の右下に配置されたメニュ画像59をタッチするとメニュー画面10が表示されることを理解できる。
D.図1のメニュー画面10のアイコン12にタッチすると,メニュー画面10から表示画面30に切り替わる(段落【0027】)ことから,アイコン12は表示画面を表示させる為のものであり,表示画面に対応していると理解できる。さらに,メニュー画面10のアイコン11にタッチすると,次のメニュー画面20に切り替わる(段落【0024】)ことを理解できる。
E.図14には,作画ツール1320に表示画面1423?142nの画面データと,メニュー画面1421の画面データが存在する(段落【0109】)ことが示されているから,上記B.の表示画面作成プログラムにおいて,メニュー画面1421も当然に作成されるものと理解できる。
F.表示装置においては,画面の切り替りによって表示される複数の表示画面が存在する(段落【0133】)ところ,上記C.のとおり,メニュー画面10のアイコン12により表示画面に切り替わることを理解でき,引用文献1には,表示画面30を表示させる為の手段が,アイコン12のほかに示されていないから,アイコン12は,複数の表示画面30,1423?142nをそれぞれ表示させる為のものであり,該それぞれの表示画面30,1423?142nに対応しているといえる。
G.作画ツール1320は,ケーブル1350を介して表示装置1310に接続し,表示装置1310へ画面データをインストールする(段落【0107】,【0109】)ところ,図13の図示からみて,通信I/F回路1323,コネクタ1327,ケーブル1350,コネクタ1319,通信I/F回路1314が画面データの送信を行い,表示部メモリ1313に画面データが記憶されることは明らかである。
H.表示装置1310は,図1のような画面の切り替え操作を行えるプログラム,すなわち,画面操作プログラムを有していることを当然に理解できる。

(ウ)上記A.ないしH.から,引用文献1には,次の発明が記載されていると認められる。

「表示装置1310と作画ツール1320を有するシステムであって,
前記作画ツール1320は,
前記表示装置1310用の任意の複数の表示画面30,1423?142nの作成を行う表示画面作成プログラムと,
前記複数の表示画面30,1423?142nをそれぞれ表示させる為の,該それぞれの表示画面に対応するアイコン12と,次のメニュー画面20を表示させる為の,該メニュー画面に対応するアイコン11を表示する,メニュー画面10,1421を生成する前記表示画面作成プログラムと,
前記複数の表示画面30,1423?142nと前記メニュー画面10,1421を前記表示装置1310に送信して記憶させる通信I/F回路1323,コネクタ1327,ケーブル1350,コネクタ1319,通信I/F回路1314,表示部メモリ1313とを有し,
前記表示装置1310は,
前記メニュー画面10,1421を表示して任意の前記アイコン12を選択させることで前記複数の表示画面30,1423?142nを切り替え操作し,前記アイコン11を選択させることで次のメニュー画面20を切り替え操作する画面操作プログラムを有し,
前記表示画面30,1423?142n上には前記メニュー画面10,1421を表示させる為のメニュ画像59が表示され,前記画面操作プログラムは,表示中の表示画面30,1423?142n上で該メニュ画像59が操作されると前記メニュー画面10,1421を切り替え表示するシステム。」(以下「引用発明」という。)

イ.引用文献2
(ア)当審が平成30年8月15日付けで通知した拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された引用文献である,特開2004-30145号公報(以下「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】
従来技術において,パーソナルコンピュータなどの機器によってインターネット上の所望のウェブサイトを閲覧する場合,ウェブブラウザによってこのウェブサイトのアドレス(URL;Uniform Resource Locator)情報を入力したり,検索サイトでキーワード等を入力して検索したり,リンク(ハイパーリンク)されているウェブページを辿って行くことで,所望のウェブサイト(ウェブページ)を閲覧することができる。
・・・
【0004】
ところで,上述したパーソナルコンピュータや電子機器に搭載したウェブブラウザには,ユーザがウェブサイトにアクセスするためのアドレス情報(URL)やキーワードを入力したり,リンクをたどっていくなどの手間を省き,簡単にウェブサイトへ再訪できるように,気に入ったウェブサイトのアドレス情報(URL)を文字情報(テキストデータ)と関連づけした「ブックマーク」データ(以下,ブックマークと云う)として記録(登録)しておく機能があり,一度ブックマークで記録したウェブサイトを閲覧する場合,次回にこのウェブサイトを閲覧する際は,記録してあるブックマークを呼出し,所望のブックマークを選択するだけで,所望のウェブサイト(のウェブページ)が自動的にウェブブラウザに表示される。
【0005】
例えば,図20のように,パーソナルコンピュータや電子機器に搭載されたウェブブラウザ600で,アドレス情報「http://www.sekaifuukei.com」のウェブサイト「世界風景紀行」を閲覧している場合,このウェブサイトを「ブックマーク」として登録するときは,ウェブブラウザの「ブックマーク」ボタン610を選択する。
【0006】
「ブックマーク」ボタン610を選択すると,図21のようにウィンドウ(子画面)630が表示される。
【0007】
ウィンドウ630内には,ウェブサイトをブックマークとして記録する「ブックマーク追加」ボタン631,記録してあるブックマークの消去や名前変更などの操作を行うための「ブックマーク整理」ボタン632と,「ウェブサイトZ」,「レストラン情報」,「e-ショッピング」など,ウェブサイト名やウェブサイトの特徴を表す名称で既に記録してあるブックマークを表示する一覧表示部635が表示される。
・・・
【0010】
そして,このブックマーク「世界風景紀行」を選択するとアドレス情報「http://www.sekaifuukei.com」に従ってウェブサイト「世界風景紀行」にアクセスし,ウェブブラウザにウェブサイト「世界風景紀行」(のウェブページ)が表示される(図20参照)。」

図20


図21


図22


(イ)引用文献2の段落【0002】ないし【0010】及び図20ないし22の記載からみて,引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
「ウェブブラウザ600の画面の「ブックマーク」ボタン610を選択すると,ウィンドウ630が表示され,ウィンドウ630内には,既に記録してあるブックマークを表示する一覧表示部635が表示されること。」(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)

(3)本件補正発明と引用発明の対比
ア.本件補正発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「表示装置1310」が本件補正発明の「プログラマブル表示器」に相当することは明らかであり,以下同様に,「作画ツール1320」が「作画エディタ装置」に,「表示画面30,1423?142n」が「操作表示画面」に,「表示画面30,1423?142nの作成を行う表示画面作成プログラム」が「操作表示画面の作成を支援する操作表示画面作成支援手段」に,「アイコン12」が「各画面切替ボタン」に,「通信I/F回路1323,コネクタ1327,ケーブル1350,コネクタ1319,通信I/F回路1314,表示部メモリ1313」が「送信手段」に,「システム」が「PLCシステム」に,それぞれ相当する。
イ.引用発明の「前記複数の表示画面30,1423?142nをそれぞれ表示させる為の,該それぞれの表示画面に対応するアイコン12と,次のメニュー画面20を表示させる為の,該メニュー画面に対応するアイコン11を表示する,メニュー画面10,1421」と,本件補正発明の「該各画面切替ボタンを一覧表示する,前記操作表示画面切替用の専用の切替ボタン一覧表示画面」は,「該各画面切替ボタンを表示する,切替ボタン表示画面」という点で一致する。
ウ.上記イ.から,引用発明の「前記複数の表示画面30,1423?142nをそれぞれ表示させる為の,該それぞれの表示画面に対応するアイコン12と,次のメニュー画面20を表示させる為の,該メニュー画面に対応するアイコン11を表示する,メニュー画面10,1421を生成する前記表示画面作成プログラム」と,本件補正発明の「前記複数の操作表示画面をそれぞれ表示させる為の,該それぞれの操作表示画面に対応する各画面切替ボタンを生成すると共に,該各画面切替ボタンを一覧表示する,前記操作表示画面切替用の専用の切替ボタン一覧表示画面を生成する切替ボタン一覧表示画面生成手段」は,「前記複数の操作表示画面をそれぞれ表示させる為の,該それぞれの操作表示画面に対応する各画面切替ボタンを表示する,切替ボタン表示画面を生成する切替ボタン表示画面生成手段」という点で一致する。
エ.引用発明の「前記メニュー画面10,1421を表示して任意の前記アイコン12を選択させることで前記複数の表示画面30,1423?142nを切り替え操作し,前記アイコン11を選択させることで次のメニュー画面20を切り替え操作する画面操作プログラム」と,本件補正発明の「前記切替ボタン一覧表示画面を表示して任意の前記画面切替ボタンを選択させることで前記複数の操作表示画面を切替表示する画面表示制御手段」は,「前記切替ボタン表示画面を表示して任意の前記画面切替ボタンを選択させることで前記複数の操作表示画面を切替表示する画面表示制御手段」という点で一致する。
オ.引用発明の「前記メニュー画面10,1421を表示させる為のメニュ画像59」と本件補正発明の「前記切替ボタン一覧表示画面を表示させる為の1つの特定ボタン」は,「前記切替ボタン表示画面を表示させる為の1つの特定のボタン」という点で一致する。
カ.上記オ.から,引用発明において「前記表示画面30,1423?142n上には前記メニュー画面10,1421を表示させる為のメニュ画像59が表示され,前記画面操作プログラムは,表示中の表示画面30,1423?142n上で該メニュ画像59が操作されると前記メニュー画面10,1421を切り替え表示する」ことと,本件補正発明において「全ての前記操作表示画面上にはそれぞれ前記切替ボタン一覧表示画面を表示させる為の1つの特定ボタンが表示され,前記画面表示制御手段は,表示中の操作表示画面上で該1つの特定ボタンが操作されると前記切替ボタン一覧表示画面を該操作表示画面内に追加表示し,前記複数の操作表示画面のうちのいずれの操作表示画面上で前記1つの特定ボタンが操作された場合であっても,同一の前記切替ボタン一覧表示画面を追加表示する」ことは,「前記操作表示画面上には前記切替ボタン表示画面を表示させる為の1つの特定ボタンが表示され,前記画面表示制御手段は,表示中の操作表示画面上で該1つの特定ボタンが操作されると前記切替ボタン表示画面を表示する」という点で一致する。
キ.そうすると,本件補正発明と引用発明は,以下の点で一致及び相違する。
<一致点>
「プログラマブル表示器と作画エディタ装置を有するシステムであって,
前記作画エディタ装置は,
前記プログラマブル表示器用の任意の複数の操作表示画面の作成を支援する操作表示画面作成支援手段と,
前記複数の操作表示画面をそれぞれ表示させる為の,該それぞれの操作表示画面に対応する各画面切替ボタンを表示する,切替ボタン表示画面を生成する切替ボタン表示画面生成手段と,
前記複数の操作表示画面と前記切替ボタン表示画面を前記プログラマブル表示器側に送信して記憶させる送信手段とを有し,
前記プログラマブル表示器は,
前記切替ボタン表示画面を表示して任意の前記画面切替ボタンを選択させることで前記複数の操作表示画面を切替表示する画面表示制御手段を有し,
前記操作表示画面上には前記切替ボタン表示画面を表示させる為の1つの特定ボタンが表示され,前記画面表示制御手段は,表示中の操作表示画面上で該1つの特定ボタンが操作されると前記切替ボタン表示画面を表示するPLCシステム。」

<相違点1>
「切替ボタン表示画面」が,本件補正発明では「該各画面切替ボタンを一覧表示する,前記操作表示画面切替用の専用の切替ボタン一覧表示画面」であるのに対して,引用発明では「前記複数の表示画面30,1423?142nをそれぞれ表示させる為の,該それぞれの表示画面に対応するアイコン12と,次のメニュー画面20を表示させる為の,該メニュー画面に対応するアイコン11を表示する,メニュー画面10,1421」であって,メニュー画面10がアイコン12を「一覧で表示」(アイコン12を1つの画面で表示)するかどうか不明であり,表示画面に対応するアイコン12を「専用に」表示するわけではなく,次のメニュー画面に対応するアイコン11も表示する点。

<相違点2>
「切替ボタン表示画面生成手段」が,本件補正発明では「各画面切替ボタンを生成」するものであるのに対して,引用発明ではアイコン12を生成するかどうか不明な点。

<相違点3>
「1つの特定ボタン」の表示が,本件補正発明では「全ての前記操作表示画面上」に表示されるのに対して,引用発明では「前記表示画面30,1423?142n上」にメニュ画像59が表示されるものの,「全ての」表示画面30,1423?142n内に表示されるかどうか不明な点。

<相違点4>
「切替ボタン表示画面」の表示が,本件補正発明では「前記切替ボタン一覧表示画面を該操作表示画面内に追加表示」し,「前記複数の操作表示画面のうちのいずれの操作表示画面上で前記1つの特定ボタンが操作された場合であっても,同一の前記切替ボタン一覧表示画面を追加表示」するのに対して,引用発明では「メニュー画面10,1421を切り替え表示」するから,表示画面30,1423?142n「内に」メニュー画面10,1421が表示されるわけではなく,また,いずれの表示画面30,1423?142n上でメニュ画像59が選択された場合であっても,「同一の」メニュー画面10,1421が表示されるかどうか不明な点。

(4)相違点の判断
ア.相違点1について
(ア)引用文献1の図1及び図14に接した当業者であれば,その表示からして,図14の表示画面1421は図1のメニュー画面10に相当し,以下同様に,図14の表示画面1422は図1の次のメニュー画面20に,図14の表示画面1423?142nは図1の表示画面30に,それぞれ相当するものと理解できる。そうすると,メニュー画面10及び次のメニュー画面20は最終的には,表示画面30,1423?142nを呼び出すために用いられるものであり,当業者であれば,メニュー画面10とメニュー画面20は,階層的な関係にあるものと認識するといえる。
(イ)また,相違点1は,画面の切り替え技術に関するものであるが,画面の切り替えを含む画面の作成は,引用文献1の段落【0003】に記載されているような,いわゆるソフト系エンジニアによって行われるものである。
(ウ)そして,インターネットエクスプローラー(登録商標)及びファイヤーフォックス(登録商標)等のウェブブラウザ,並びに,引用文献2記載の技術的事項に係るウェブブラウザ(上記(2)イ.(イ))に見られるように,ウェブページの表示画面上に1つの特定の「お気に入り」や「ブックマーク表示」ボタンを表示させ,当該「お気に入り」や「ブックマーク表示」ボタンが操作されるとウェブページの切替ボタン(ブックマーク)を一覧表示(1つの画面で表示)する一覧表示画面が追加表示され,いずれのウェブページ表示画面上で「お気に入り」や「ブックマーク表示」ボタンが操作された場合であっても,同一のウェブページ切替ボタン(ブックマーク)一覧表示画面が追加表示され,ウェブページの切替ボタン(ブックマーク)を操作することで,ウェブページの表示画面を切り替えることは,周知の技術的事項である。
ここで,当該周知の技術的事項におけるウェブページ切替ボタン一覧表示画面は,ウェブページの切替ボタンを一覧で表示し,ウェブページの切替ボタン専用の画面であるから,相違点1に係る「該各画面切替ボタンを一覧表示する,前記操作表示画面切替用の専用の切替ボタン一覧表示画面」に相当するものである。
(エ)また,インターネットエクスプローラー(登録商標)及びファイヤーフォックス(登録商標)等のウェブブラウザにおいて,ウェブページ切替ボタン一覧表示画面内に,ウェブページの切替ボタンのフォルダを設けることで,ウェブページの切替ボタンを階層的に表示させることも周知の技術的事項といえるから,ウェブページの切替ボタンを一覧で表示することも,階層的に表示することも,いずれも当業者が自由に選択できる事項である。
(オ)上記(イ)のとおり,引用発明の画面の作成は,ソフト系エンジニアによって行われるものであり,ウェブブラウザのような,コンピュータ画面の作成を行うソフト系エンジニアにとって,上記(ウ)に示す周知の技術的事項を適用することは,容易に想到できるものであるから,引用発明において,階層的なメニュー画面10とメニュー画面20に代えて,各画面切替ボタン専用に一覧で表示する画面を構成して,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者にとって格別に困難な事項とはいえない。

イ.相違点2について
引用文献1の図1に示されているように,表示画面30はメニュー画面10におけるアイコン12にタッチすることで表示される。してみると,引用文献1に接した当業者であれば,表示画面を表示させるためには,アイコン12が必要であることは当然に認識する事項である。
引用文献1には,アイコン12を作成することの明確な記載はないが,作画ツール1320で画面データを作成して表示装置1310へインストールする(段落【0107】)以上,アイコン12を含む画面データは,全て作画ツール1320で作成されると考えるほかないし,引用発明において画面データの作成は,図8のフローチャートを実行する表示画面作成プログラムで行われるから,当該表示画面作成プログラムでアイコン12を作成し,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到できたものである。

ウ.相違点3について
引用文献1には,表示画面30からメニュー画面10に切り替える手段として,メニュ画像59以外の手段は示されていない。また,引用文献1には,複数の表示画面を切り替えることが示され,そのためにはメニュー画面10に切り替えてアイコン12を操作する必要があるから,表示画面を切り替えるためには,全ての表示画面内にメニュ画像59を設ける必要があることは明らかである。
したがって,引用発明の表示画面30,1423?142nの全てにメニュ画像59を設け,相違点3に係る構成とすることは,当業者にとって格別に困難な事項とはいえない。

エ.相違点4について
上記ア.(ウ)に示すように,ウェブページの表示画面上に1つの特定の「お気に入り」や「ブックマーク表示」ボタンを表示させ,当該「お気に入り」や「ブックマーク表示」ボタンが操作されるとウェブページの切替ボタンを一覧表示する一覧表示画面が追加表示され,いずれのウェブページ表示画面上で「お気に入り」や「ブックマーク表示」ボタンが操作された場合であっても,同一のウェブページ切替ボタン一覧表示画面を追加表示することは,周知の技術的事項である。
また,上記ア.(オ)に示すように,引用発明において,階層的なメニュー画面10とメニュー画面20に代えて,各画面切替ボタン専用に一覧で表示する画面を構成すれば,いずれの表示画面30,1423?142n上でメニュ画像59が選択された場合であっても,「同一の」メニュー画面10,1421が表示されることは当然である。
引用発明の画面の作成がソフト系エンジニアによって行われるものであることを考慮すると,上記の周知の技術的事項を適用することは,容易に想到できるものであるから,引用発明において,表示画面30,1423?142n「内に」メニュー画面10,1421を表示し,いずれの表示画面30,1423?142n上でメニュ画像59が選択された場合であっても,「同一の」メニュー画面10,1421を表示するようにし,相違点4に係る構成とすることは,当業者にとって格別に困難な事項とはいえない。

オ.小活
したがって,本件補正発明は,引用発明,並びにインターネットエクスプローラー(登録商標),ファイヤーフォックス(登録商標)及び引用文献2記載の技術的事項に係るウェブブラウザに示す周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)意見書における請求人の主張について
ア.請求人の主張の概要
平成30年9月18日の意見書において,請求人は主に以下の3点を主張している。
<第1の主張>本件補正発明では,「1つの特定ボタン」が「操作表示画面上」に表示されるのに対して,ウェブブラウザでは,ウェブページ表示部の外部に操作ボタンが固定表示される。つまり,本件補正発明では,現在表示中の操作表示画面が消えれば,それに伴って「1つの特定ボタン」も消え,次に新たに表示された操作表示画面上に新たな「1つの特定ボタン」が現れることになるのに対し,ウェブブラウザでは,ウェブページの切り替えとは無関係に,表示装置の画面上の固定位置にボタンが常時表示される。
<第2の主張>本件補正発明では,「切替ボタン一覧表示画面」が,現在表示中の「操作表示画面内」に追加表示されるのに対し,ウェブブラウザでは,引用文献2の図5から明らかなように,ブックマーク一覧画面400が,現在表示中であったウェブページ画面内にではなく,それとは別の画面又は別の表示領域内に表示され,ブックマーク一覧画面400のような一覧画面をウェブページ画面内に追加表示するようなことは,ウェブブラウザでは行われない。
<第3の主張>本件補正発明では,作成された複数の操作表示画面のそれぞれに対応するように各画面切替ボタンが生成されるが,ウェブブラウザでは,ウェブページは無限に存在しており,そのような無限に存在するウェブページのそれぞれに対応するような画面切替ボタンを生成するようなことは不可能である。

イ.請求人の主張に対して
(ア)上記第1の主張に対して
メニュー画面10を表示させる為のメニュ画像59を「操作表示画面上」に設けることは,上記(2)ア.(イ)C.に示すように引用文献1に示されているから,請求人の主張は上記(4)オ.の判断を覆すものではない。

(イ)上記第2の主張に対して
本件補正発明において,「切替ボタン一覧表示画面」が「操作表示画面内」に追加表示されることは,具体的には,本願の図2に示されているように,操作表示画面の面積より小さい面積で「切替ボタン一覧表示画面」をポップアップ表示することを意味すると解されるが,ウェブブラウザにおいて,ウェブページの切替ボタンを一覧表示する画面をポップアップで表示することは,例えば上記(2)イ.(ア)の図21に示すように周知の技術であるから,引用発明において「切替ボタン一覧表示画面」を「操作表示画面内」に追加表示することは,当業者が容易に想到できた事項である。

(ウ)上記第3の主張に対して
作成された複数の操作表示画面のそれぞれに対応するように各画面切替ボタンを生成することは,上記(2)ア.(イ)F.に示すように引用文献1に示されているから,請求人の主張は上記(4)オ.の判断を覆すものではない。

3.本件補正についてのむすび
したがって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年9月18日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし6に係る発明は,平成30年7月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,前記第2の[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。

2 当審が通知した拒絶の理由
当審が平成30年8月15日付けで通知した拒絶の理由の概要は,この出願の請求項1ないし6に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及びインターネットエクスプローラー(登録商標)やファイヤーフォックス(登録商標)に示す周知の技術的事項,又は引用文献2に示す公知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2002-83311号公報
引用文献2:特開2004-30145号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は,前記第2の[理由]2.(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2.で検討した本件補正発明から,前記限定事項1及び2を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2.(4)に記載したとおり,引用発明,並びにインターネットエクスプローラー(登録商標),ファイヤーフォックス(登録商標)及び引用文献2記載の技術的事項に係るウェブブラウザに示す周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,本願発明も,引用発明,並びにインターネットエクスプローラー(登録商標),ファイヤーフォックス(登録商標)及び引用文献2記載の技術的事項に係るウェブブラウザに示す周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。


第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-10 
結審通知日 2018-12-11 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2012-172520(P2012-172520)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤島 孝太郎  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 刈間 宏信
栗田 雅弘
発明の名称 PLCシステム、その作画エディタ装置、プログラマブル表示器  
代理人 大菅 義之  

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