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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1349154
審判番号 不服2017-13455  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-11 
確定日 2019-02-14 
事件の表示 特願2015-235489「撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月17日出願公開、特開2016- 36183〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年12月13日の出願である特願2007-321486号の一部を、数次の分割を経て平成27年12月2日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年12月 2日:手続補正書
平成28年 9月21日:拒絶理由通知
平成28年11月25日:意見書、手続補正書
平成29年 6月 8日:拒絶査定
平成29年 9月11日:拒絶査定不服審判請求
平成29年 9月11日:手続補正書
平成30年 6月22日:拒絶理由通知(当審)
平成30年 8月27日:意見書、手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、平成30年8月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、本願発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成Gと称する。

(本願発明)
(A)撮像素子と前記撮像素子から出力される信号を処理する信号処理部とを有する撮像手段と、
(B)前記撮像手段のフォーカス位置をユーザが手動操作で制御してマニュアルフォーカス操作するためのマニュアルフォーカス操作手段と、
(C)前記撮像手段から出力される撮像映像から、画像処理を用いて人物の顔を検出する顔認識手段と、
(D)前記撮像映像から所定の領域を切出して拡大表示するための切出し映像を生成する切出し映像生成手段と、
(E)前記撮像映像又は前記切出し映像のいずれか一方を単独で表示し、若しくは、前記撮像映像と前記切出し映像の双方を重畳表示する映像表示手段と、
(F)制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(F1)前記顔認識手段により検出された前記撮像映像における人物の顔の位置に応じて自動で切出す領域を変更し、前記人物の顔の位置に応じて切出して生成した前記拡大表示するための切出し映像を前記撮像映像との重畳表示により前記映像表示手段に表示するように制御し、
(F2)前記マニュアルフォーカス操作手段へのユーザによる手動操作があると、前記手動操作に応じて前記映像表示手段による表示方法を前記切出し映像と前記撮像映像との重畳表示から切り替えて、前記顔認識手段により検出された前記撮像映像における人物の顔の位置に応じて自動で設定された領域を切出して生成された切出し映像を単独で前記映像表示手段に表示するように制御する
(G)ことを特徴とする撮像装置。

第3 当審の拒絶の理由
平成30年6月22日付けで当審が通知した拒絶の理由のうちの理由1の(2)は、概略、以下のとおりである。

理由1.(サポート要件)請求項1?6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、この出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


平成29年9月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1について、「前記顔認識手段により検出された前記撮像映像における人物の顔の位置に応じて自動で切出す領域を変更し、前記人物の顔の位置に応じて切出して生成した前記拡大表示するための切出し映像を第一の表示方法で前記映像表示手段に表示する」という表示を行っている最中に、「マニュアルフォーカス操作手段へのユーザによる手動操作」があった場合に、「前記操作に応じて前記映像表示手段による表示方法を前記第一の表示方法から切り替えて、第二の表示方法により、前記顔認識手段により検出された前記撮像映像における人物の顔の位置に応じて自動で設定された領域を切出して生成された切出し映像を、前記映像表示手段に表示する」という記載のように、表示を切り替えることは、発明の詳細な説明には記載されていない。

また、平成29年9月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項6には、「前記第一の表示方法は撮像映像と切出し映像の重畳表示であり、前記第二の表示方法は前記切出し映像の単独表示である」と記載されているが、当該「第一の表示方法」から当該「第二の表示方法」に切り替えることも、発明の詳細な説明には記載されていない。

第4 当審における拒絶の理由1(サポート要件)についての判断
1 平成30年8月27日付けの手続補正の内容
平成30年8月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成29年9月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1ないし4に補正するものであり、本件補正は、請求項1に係る次の補正事項を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

(補正前の請求項1)
【請求項1】
撮像素子と前記撮像素子から出力される信号を処理する信号処理部とを有する撮像手段と、
前記撮像手段のフォーカス位置をユーザが手動操作で制御してマニュアルフォーカス操作するためのマニュアルフォーカス操作手段と、
前記撮像手段から出力される撮像映像から、画像処理を用いて人物の顔を検出する顔認識手段と、
前記撮像映像から所定の領域を切出して拡大表示するための切出し映像を生成する切出し映像生成手段と、
前記撮像映像又は前記切出し映像のいずれか一方を単独で表示し、若しくは、前記撮像映像と前記切出し映像の双方を重畳表示する映像表示手段と、
制御部と、
を備え、
前記顔認識手段により検出された前記撮像映像における人物の顔の位置に応じて自動で切出す領域を変更し、前記人物の顔の位置に応じて切出して生成した前記拡大表示するための切出し映像を第一の表示方法で前記映像表示手段に表示するように制御する制御モード、を有し、
前記制御部は、前記制御モードにおいて前記マニュアルフォーカス操作手段へのユーザによる手動操作があると、前記操作に応じて前記映像表示手段による表示方法を前記第一の表示方法から切り替えて、第二の表示方法により、前記顔認識手段により検出された前記撮像映像における人物の顔の位置に応じて自動で設定された領域を切出して生成された切出し映像を、前記映像表示手段に表示するように制御することを特徴とする撮像装置。

(補正前の請求項6)
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記第一の表示方法は撮像映像と切出し映像の重畳表示であり、前記第二の表示方法は前記切出し映像の単独表示であることを特徴とする撮像装置。

(補正後の請求項1)
【請求項1】
撮像素子と前記撮像素子から出力される信号を処理する信号処理部とを有する撮像手段と、
前記撮像手段のフォーカス位置をユーザが手動操作で制御してマニュアルフォーカス操作するためのマニュアルフォーカス操作手段と、
前記撮像手段から出力される撮像映像から、画像処理を用いて人物の顔を検出する顔認識手段と、
前記撮像映像から所定の領域を切出して拡大表示するための切出し映像を生成する切出し映像生成手段と、
前記撮像映像又は前記切出し映像のいずれか一方を単独で表示し、若しくは、前記撮像映像と前記切出し映像の双方を重畳表示する映像表示手段と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記顔認識手段により検出された前記撮像映像における人物の顔の位置に応じて自動で切出す領域を変更し、前記人物の顔の位置に応じて切出して生成した前記拡大表示するための切出し映像を前記撮像映像との重畳表示により前記映像表示手段に表示するように制御し、
前記マニュアルフォーカス操作手段へのユーザによる手動操作があると、前記手動操作に応じて前記映像表示手段による表示方法を前記切出し映像と前記撮像映像との重畳表示から切り替えて、前記顔認識手段により検出された前記撮像映像における人物の顔の位置に応じて自動で設定された領域を切出して生成された切出し映像を単独で前記映像表示手段に表示するように制御することを特徴とする撮像装置。

以上によれば、本件補正により、補正前の請求項1の「第一の表示方法」は、「切出し映像」と「撮像映像」を「重畳表示」する表示方法と限定され、補正前の請求項1の「第二の表示方法」は、「切出し映像を単独で」表示する表示方法と限定された。

一方、補正前の特許請求の範囲の請求項6には、「前記第一の表示方法は撮像映像と切出し映像の重畳表示であり、前記第二の表示方法は前記切出し映像の単独表示である」と記載されていたから、本件補正による補正後の請求項1は、補正前の請求項6に対応するものといえる。

以下、拒絶理由の対象となった本願発明の構成F1及び構成F2が、発明の詳細な説明に記載されたものか検討する。

2 発明の詳細な説明の記載
本願発明に関して、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
なお、下線は、強調のために当審で付したものである。

(1)「【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の第1実施例に係る撮像装置を示す第一の模式図である。図1において0101は撮像部、0102は切出し映像生成部、0103は映像表示部、0104は表示映像制御部、0105はマニュアルフォーカス操作部、0106はマニュアルズーム操作部である。
【0013】
図1に示した撮像装置において、撮像部0101はズーム及びフォーカスが可変な撮像部であり、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含むレンズ群や、シャッタや、CCDまたはCMOSなどの撮像素子や、AGCや、ADや、カメラ信号処理DSPや、動画像処理LSIや、タイミングジェネレータ等から構成され、光電変換による撮像を行い、映像データと、映像表示部0103の表示領域の解像度に合わせて縮小した表示用映像データを出力する。表示用映像データは元の映像データを一定画素毎に間引いて生成しても良いし、動画像処理LSIを用いてフィルタ演算による画像縮小処理を行って生成しても良い。映像データは不図示の映像記録部に出力することで、DVDやBDやHDDなどの記録媒体に動画や静止画を記録したり、不図示のTVモニタやPCディスプレイに出力して表示したりすることが可能である。切出し映像生成部0102は撮像部0101の出力する映像データの所定の領域を選択し、領域内の映像を等倍または所定の倍率に拡大して切出し映像データとして出力する。ここで、等倍とは、撮像映像の解像度と出力する映像との解像度が等しい、すなわちdot by dotで出力することを意味することとする。映像表示部0103は、撮像装置に付属する液晶ディスプレイなどのモニタ部であり、表示映像制御部0104の出力する映像表示方法の制御情報に基づき、撮像部0101の出力する表示用映像データ、または、切出し映像生成部0102の出力する切出し映像データを取得して表示する。映像の表示方法の例については図2を用いて後述する。表示映像制御部0104は、マニュアルフォーカス操作部0105とマニュアルズーム操作部0106からフォーカス操作やズーム操作の情報を取得し、それを元に映像表示部0103の映像表示方法を決定して、その制御情報を映像表示部0103に出力する。映像表示方法の決定方法は図3を用いて後述する。マニュアルフォーカス操作部0105は、ジョイダイアルや左右ボタンやレバーなどのフォーカス位置入力インタフェースを備え、フォーカス位置入力インタフェースの入力情報を元にフォーカス位置の制御量を演算し、その制御量に基づいて撮像部0101のフォーカスレンズの位置を制御する。これによりユーザが手動でフォーカス位置を制御することが可能となる。また、マニュアルフォーカス操作部0105はフォーカス操作を行っているかどうかの情報を表示映像制御部0104に出力する。マニュアルズーム操作部0106は、ジョイダイアルや左右ボタンやレバーなどのズーム倍率入力インタフェースを備え、ズーム倍率位置入力インタフェースの入力情報を元にフォーカス位置の制御量を演算し、その制御量に基づいて撮像部0101のズームレンズの位置を制御する。これによりユーザが手動でズーム倍率を制御することが可能となる。また、マニュアルズーム操作部0106はズーム操作を行っているかどうかの情報を表示映像制御部0104に出力する。なお、表示映像制御部0104で行う映像表示方法の制御情報の演算や、マニュアルフォーカス操作部0105で行うフォーカス位置の制御量の演算や、マニュアルズーム操作部0106で行うズーム倍率の制御量の演算は、通常はカメラ内のマイコンやカメラ信号処理DSPや専用のLSIなどによって行われる。
【0014】
図2は、本発明の第1実施例に係る映像表示方法の一例を示す図である。図2で示す映像表示について、表示方法の制御は表示映像制御部0104で実行され、映像表示は映像表示部0103で実行される。図2において、(a)は通常の撮像映像を表示する液晶ディスプレイ、(b)は切出し映像を表示する液晶ディスプレイ、(c)は表示領域を水平に二分割し通常の撮像映像と切出し映像を並べて表示する液晶ディスプレイ、(d)は表示領域を小領域とその他の領域に二分割し通常の撮像映像と切出し映像を重ねて表示する液晶ディスプレイの図である。ここで、映像表示部0103で表示する通常の撮像映像とは、撮像部0101の出力する映像表示部0103の表示領域の解像度に合わせて出力された表示用映像データを再生したものに相当し、映像表示部0103で表示する切出し映像とは、切出し映像生成部0102の出力する切出し映像データを再生したものに相当する。なお、図2(a)において、点線は実際の映像には表示される被写体像ではなく、便宜上に切出し映像の切出し領域を示したものであり、図2(b)の映像は図2(a)の点線で囲まれた領域を等倍で表示したものに相当する。このように、実際の撮像映像の解像度と同じ解像度で液晶ディスプレイ上に表示するため、映像の縮小処理による画質劣化などの影響を受けずに視認性が向上する。そのため、ユーザが液晶ディスプレイで映像を確認しながら撮影する場合に、注目する被写体付近のオートフォーカスやオート露光の合い具合を確認したり、より正確にマニュアルでのフォーカス操作や露光操作などを行うことができる。なお、この例では切出し映像を等倍で表示しているが、液晶ディスプレイの画素ピッチは通常のTVモニタやPCディスプレイと比べて非常に小さいため、所定の倍率に拡大して表示しても良い。このとき、例えば整数倍で拡大処理を行えば、補間処理による画質劣化を極力抑えることができる。また、切出し映像を生成する際の、映像の切出し領域の決定や、拡大する際の倍率は、例えば出荷時にいくつかのモードを設けて設定値をEEPROMに書き込み、ユーザがメニュー画面を見て不図示の入力インタフェースから入力して選択できるようにしても良いし、ユーザが不図示のジョイダイアルやタッチパネルを用いて映像の切出し領域を自由に設定できる形態をとっても良い。これにより、ユーザが注目する領域を簡単に等倍または拡大表示して視認性を向上することができる。また、図2(c)や図2(d)のように、通常の撮像映像と切出し映像を同時に表示することで、全体の画角と詳細な被写体映像をユーザが同時に見られるようにしても良い。これにより、撮影時に、全体の構図の確認と、被写体近辺でのフォーカスや露光の確認を同時に行うことができる。このとき、図2(c)のように2つの映像を並べて表示すれば、重なりなく2つの映像を確認することができるし、図2(d)のように2つの映像を重ねて表示すれば、映像の縦横比を維持したまま2つの映像を確認できるという利点がある。なお、図2の各図において、表示映像の左上には、「MF」または「MF x1」の文字が記載されている。ここで、MFは本撮像装置がマニュアルフォーカスでフォーカス制御を行っていることを示し、x1は映像が等倍表示であることを示している。このように、撮像装置の各機能の状態や切出し映像の拡大倍率などの文字情報を重畳表示することにより、ユーザが現在の使用状況を一目で確認できるようにしても良い。
【0015】
図3は本発明の第1実施例に係る映像表示方法の制御シーケンスの一例を示す第一の図である。図3の映像表示方法の制御シーケンスは表示映像制御部0104で実行される。
【0016】
図3の映像表示方法の制御シーケンスにおいて、ST0301では、撮像装置の起動後、通常の撮像映像を映像表示部0103が表示するように制御する。ST0302では、マニュアルフォーカス操作部から、ユーザがマニュアルフォーカスを操作しているかどうかの操作情報を取得し、操作を検知していればST0303に、検知していなければST0304に分岐する。ST0303では、切出し映像を映像表示部0103が表示するように制御する。ST0304では、マニュアルズーム操作部から、ユーザがマニュアルズームを操作しているかどうかの操作情報を取得し、操作を検知していればST0305に、検知していなければST0306に分岐する。ST0305では、通常の撮像映像を映像表示部0103が表示するように制御する。ST0306では、不図示の電源スイッチで撮像装置の電源を落とすなどの液晶ディスプレイでの表示の終了条件がないか判定し、液晶表示の終了条件があればシーケンスを終了し、なければST0303から繰り返す。このようにマニュアルフォーカス操作時とマニュアルズーム操作時で異なる映像表示方法の制御を自動で行うことで、ユーザはマニュアルフォーカス操作時には切出し映像を見ながら正確なフォーカス操作を行い、マニュアルズーム操作時には通常の撮像映像を見ながら全体の画角を確認して構図の決定ができるといったように、ユーザの使用状況に応じた映像表示を行うことができるようになる。なお、本シーケンスではフォーカス操作判定後にズーム操作の判定を行っているが、これは一例を示したものであり、この順番が逆であったり同時に判定を行ったりしても当然構わない。また、マニュアルフォーカス操作時に表示する映像が、切出し映像の代わりに図2(c)や図2(d)で示したような合成映像であっても良く、マニュアルフォーカス操作時とマニュアルズーム操作時で表示する映像の表示方法をメニュー画面等でユーザが事前に選択する形態にして、ユーザが好みの映像を見ながら操作を行えるようにしても良い。
【図2】

【図3】



(2)「【実施例2】
【0027】
図8は、本発明の第2実施例に係る撮像装置を示す模式図である。図8において0101は撮像部、0102は切出し映像生成部、0103は映像表示部、0104は表示映像制御部、0811は被写体認識部である。
【0028】
図8に示した撮像装置において、撮像部0101はズーム及びフォーカスが可変な撮像部であり、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含むレンズ群や、シャッタや、CCDまたはCMOSなどの撮像素子や、AGCや、ADや、カメラ信号処理DSPや、動画像処理LSIや、タイミングジェネレータ等から構成され、光電変換による撮像を行い、映像データと、映像表示部0103の表示領域の解像度に合わせて縮小した表示用映像データを出力する。表示用映像データは元の映像データを一定画素毎に間引いて生成しても良いし、動画像処理LSIを用いてフィルタ演算による画像縮小処理を行って生成しても良い。映像データは不図示の映像記録部に出力することで、DVDやBDやHDDなどの記録媒体に動画や静止画を記録したり、不図示のTVモニタやPCディスプレイに出力して表示したりすることが可能である。切出し映像生成部0102は撮像部0101の出力する映像データの所定の領域を選択し、領域内の映像を等倍または所定の倍率に拡大して切出し映像データとして出力する。映像表示部0103は、撮像装置に付属する液晶ディスプレイなどのモニタ部であり、表示映像制御部0104の出力する映像表示方法の制御情報に基づき、撮像部0101の出力する表示用映像データ、または、切出し映像生成部0102の出力する切出し映像データを取得して表示する。表示映像制御部0104は、被写体認識部0811から被写体認識結果を取得し、それを元に映像表示部0103の映像表示方法を決定して、その制御情報を映像表示部0103に出力する。被写体認識部0811は撮像部0101の出力する映像データを元に画像認識処理で被写体の検出や追跡などを行い、被写体認識結果を表示映像制御部0104に出力する。また、被写体認識部0811は、被写体認識結果を元に切出し映像生成部0102の切出す領域の位置や範囲を決定し、切出し映像生成部0102に出力する。ここで被写体とは人物の顔などの特徴のある領域や動体などの注目対象を指し、被写体を検出するには既存の顔検出技術や動体検出技術などを用いれば良い。また、被写体の追跡には、フレーム間でそれぞれ被写体検出を行い検出結果を相関付けるか、オプティカルフローやフレーム間差分などの既存の追跡技術を用いれば良い。なお、被写体認識部0811で行う画像認識処理は、通常はカメラ内のマイコンやカメラ信号処理DSPや専用のLSIなどによって行われる。
【0029】
図9は、本発明の第2実施例に係る切出し映像の切出し領域の制御方法の一例を示す図である。図9において、(a)は一定フレーム経過前後の撮像映像、(b)は一定フレーム経過前後の対応する切出し映像を表示する液晶ディスプレイの図であり、0901_1は一定フレーム経過前における切出し領域、0901_2は一定フレーム経過後における切出し領域、0902_1は一定フレーム経過前における被写体人物、0902_2は一定フレーム経過後における被写体人物である。なお、図9(a)における点線や矢印は説明を分かりやすくするために便宜的に表示しているものであり、実際の撮影画像中の被写体像ではない。図9を用いて切出し映像の切出し領域の制御方法の動作を説明する。一定フレーム経過前において、ユーザが被写体人物0902_1付近の領域0901_1を液晶ディスプレイ上で等倍表示していたとする。このとき、被写体認識部0811は、切出し領域0901_1に含まれる被写体人物0902_1の検出を行う。一定フレームが経過し、被写体人物が図中矢印の方向に移動した場合、被写体人物は画像認識による追跡処理により、移動後の被写体人物0902_2を検出し、その移動量や移動方向などを元に、切出し領域をシフトするよう制御する。その制御情報を切出し映像生成部0102に出力し、切出し映像生成部が制御情報を元に切出し領域を変更することで、図9(b)のように被写体移動後も移動前と切出し映像内での位置が変わらないように制御することが可能となる。これにより、ユーザがフォーカスや露光を合わせたい被写体が移動した場合でも、自動で等倍または拡大表示する領域を追従し、容易に正確なフォーカスや露光の合わせが実現できる。なお、この例では被写体が一つの場合で説明したが、被写体が複数存在する場合には、ユーザが不図示のタッチパネルなどで注目する被写体を選択できたり、被写体認識部0811が切出し領域内の各々の被写体の位置や面積比を検出してそれぞれに重み付け、注目する被写体を決定するようにしても良い。また、被写体が前方または後方に移動し、被写体の切出し映像中の面積が変わった場合には、被写体面積から切出し映像の拡大倍率を制御し、常に同程度の大きさで表示されるようにしても良い。なお、画像認識を用いた被写体追跡を行う場合には、被写体の移動速度が遅い場合には、切出し領域内だけで追跡処理を行い、処理コストの低減を図っても良い。被写体の移動速度が速く、切出し領域の画角外に出てしまう場合には、通常の撮像映像の全画角で追跡処理を行い、切出し領域の画角外に出た被写体も追跡できるようにすれば良い。
【0030】
図10は、本発明の第2実施例に係る映像表示方法の制御方法の一例を示す第一の図である。図10において、(a)は一定フレーム経過前後の撮像映像、(b)は一定フレーム経過前後の対応する切出し映像を表示する液晶ディスプレイの図であり、1001_1は一定フレーム経過前における切出し領域、1001_2は一定フレーム経過後における切出し領域、1002_1は一定フレーム経過前における第一の被写体人物、1002_2は一定フレーム経過後における第一の被写体人物、1003は一定フレーム経過後における第二の被写体人物である。なお、図10(a)における点線は説明を分かりやすくするために便宜的に表示しているものであり、実際の撮影画像中の被写体像ではない。図10を用いて映像表示方法の制御方法の動作を説明する。一定フレーム経過前において、ユーザが第一の被写体人物1002_1付近の領域1001_1を液晶ディスプレイ上で等倍表示していたとする。被写体認識部0811は切出し領域1001_1の領域外でも毎フレームまたは一定フレームおきに被写体検出処理を行う。一定フレーム経過後、被写体認識部0811が切出し領域1001_2の領域外で第二の被写体1003を検出したら、検出結果を表示映像制御部0104に出力する。映像表示方法0104は検出結果を受け、図10(b)のように表示映像を通常の撮像映像に切り替えるように制御する。これにより、ユーザが切出し映像のみを確認して操作を行っている場合でも、撮像の画角内に新規の被写体が入ってきたら、自動で全体の画角が見られるように切り替わるため、画角内に荷入ってきた被写体を見逃すことなく、被写体の確認や構図の把握が容易に行えるようになる。
【0031】
かように本実施例によれば、液晶ディスプレイなどの表示モニタを有する撮像装置において、映像の一部を等倍または拡大表示することで視認性の向上と、フォーカスや露光をマニュアルで行うときの操作性の向上を実現すると共に、拡大表示する領域の位置や大きさの変更や、映像の表示方法の切り替えを画像認識により自動で行うことで、ユーザの利便性の向上を実現できる。
【図9】



(3)「【0036】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。」

3 判断
(1)第1実施例について
上記2(1)によれば、本願の発明の詳細な説明に記載された発明(第1実施例)の「マニュアルフォーカス操作部0105」、「切出し映像生成部0102」及び「映像表示部0103」は、本願発明の構成Bの「マニュアルフォーカス操作手段」、構成Dの「切出し映像生成手段」及び構成Eの「映像表示手段」に対応するものといえる。
また、図2(a)で示す映像表示方法は、構成Eの「前記撮像映像又は前記切出し映像のいずれか一方を単独で表示し」のうちの一方である「前記撮像映像を単独で表示し」に対応し、図2(b)で示す映像表示方法は、構成Eの「前記切出し映像を単独で表示し」に対応し、図2(d)で示す映像表示方法は、構成Eの「前記撮像映像と前記切出し映像の双方を重畳表示する」に対応するものといえる。
そして、「表示映像制御部0104」は、マニュアルフォーカス操作部0105からフォーカス操作の情報を取得し、それらを元に映像表示部0103の映像表示方法を決定して、その制御情報を映像表示部0103に出力するものであるから、構成Fの「制御部」に対応するものといえる。

以上によれば、発明の詳細な説明には、表示映像制御部0104の映像表示方法について、第1実施例として、以下のア?エの事項が記載されているといえる。

ア 表示映像制御部は、マニュアルフォーカス操作部へのユーザによる手動操作があると、前記手動操作に応じて映像表示部による映像表示方法を通常の撮像映像の表示(図2(a))から切り替えて、前記映像表示部による映像表示方法を切出し映像を単独で表示(図2(b))するように制御すること。

イ 表示映像制御部は、マニュアルフォーカス操作部へのユーザによる手動操作があると、前記手動操作に応じて映像表示部による映像表示方法を通常の撮像映像の表示(図2(a))から切り替えて、前記映像表示部による映像表示方法を切出し映像と撮像映像との重畳表示(図2(d))によりに表示するように制御すること。

ウ 表示映像制御部は、マニュアルズーム操作部へのユーザによる手動操作があると、前記手動操作に応じて映像表示部による映像表示方法を通常の撮像映像の表示(図2(a))に切り替えて表示するように制御すること。

エ マニュアルフォーカス操作時とマニュアルズーム操作時で表示する映像の表示方法をメニュー画面等でユーザが事前に選択すること。

(2)第2実施例について
上記2(2)によれば、上記(1)と同様に、本願の発明の詳細な説明に記載された発明(第2実施例)の「切出し映像生成部0102」、「映像表示部0103」及び「表示映像制御部0104」は、本願発明の構成Dの「切出し映像生成手段」、構成Eの「映像表示手段」及び構成Fの「制御部」に対応するものといえる。
また、「被写体認識部0811」は、顔検出を行うものであるから、構成Cの「顔認識手段」に対応するものといえる。

以上によれば、発明の詳細な説明には、表示映像制御部0104の映像表示方法について、第2実施例として、以下のアの事項が記載されているといえる。

ア 表示映像制御部は、被写体認識部により検出された撮像映像における人物の顔の位置に応じて自動で切出す領域を変更し、前記人物の顔の位置に応じて切出して生成した拡大表示するための切出し映像を映像表示部に表示するように制御すること。

(3)第1実施例と第2実施例の組み合わせについて
次に、上記2(3)のとおり、本願の発明の詳細な説明には、「ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である」とあるから、第1実施例と第2実施例の構成を置き換えること、または、構成を加えることについて検討する。

(3-1)構成F1について
上記2(1)によれば、第1実施例において、切出し映像を表示することは、「実際の撮像映像の解像度と同じ解像度で液晶ディスプレイ上に表示するため、映像の縮小処理による画質劣化などの影響を受けずに視認性が向上する」、「より正確にマニュアルでのフォーカス操作や露光操作などを行うことができる」(段落0014)と記載がある。
また、上記2(2)によれば、第2実施例に関して、切出し映像を表示することは、「液晶ディスプレイなどの表示モニタを有する撮像装置において、映像の一部を等倍または拡大表示することで視認性の向上と、フォーカスや露光をマニュアルで行うときの操作性の向上を実現する」(段落0031)と記載がある。
当該記載によれば、第1実施例及び第2実施例において、「表示映像制御部」が、「切出し領域を選択し、前記切出し領域内の映像を切出して生成した拡大表示するための切出し映像を映像表示部に表示するように制御する」のは、フォーカス操作や露光操作を行うためであって共通するものと解される。よって、第1実施例の切出し領域の設定において、第2実施例の被写体認識部0811が、被写体認識結果を元に切出し領域の位置や範囲を決定して、切出し映像生成部0102に出力する構成を加えることは、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
そうすると、上記(1)ア及びイの「切出し映像」を、「人物の顔の位置に応じて切出して生成した拡大表示するための切出し映像」と置き換えたものも、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。

以上によれば、以下のア?エの事項は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。

ア 表示映像制御部は、マニュアルフォーカス操作部へのユーザによる手動操作があると、前記手動操作に応じて映像表示部による映像表示方法を通常の撮像映像の表示(図2(a))から切り替えて、前記映像表示部による映像表示方法を人物の顔の位置に応じて切出して生成した拡大表示するための切出し映像を単独で表示(図2(b))するように制御すること。

イ 表示映像制御部は、マニュアルフォーカス操作部へのユーザによる手動操作があると、前記手動操作に応じて映像表示部による映像表示方法を通常の撮像映像の表示(図2(a))から切り替えて、前記映像表示部による映像表示方法を人物の顔の位置に応じて切出して生成した拡大表示するための切出し映像と撮像映像との重畳表示(図2(d))によりに表示するように制御すること。

ウ 表示映像制御部は、マニュアルズーム操作部へのユーザによる手動操作があると、前記手動操作に応じて映像表示部による映像表示方法を通常の撮像映像の表示(図2(a))に切り替えて表示するように制御すること。

エ マニュアルフォーカス操作時とマニュアルズーム操作時で表示する映像の表示方法をメニュー画面等でユーザが事前に選択すること。

そして、上記イによれば、構成F1は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。

(3-2)構成F2について
構成F2は、「前記切出し映像と前記撮像映像との重畳表示」(図2(d))から切り替えて、「切出し映像を単独で」表示(図2(b))する制御を、「マニュアルフォーカス操作手段へのユーザによる手動操作」に応じて行うものである。
「マニュアルフォーカス操作部へのユーザによる手動操作」に応じて映像表示方法を切り替えることについて、発明の詳細な説明には、上記(3-1)ア及びイのとおり、通常の撮像映像の表示(図2(a))から「切出し映像を単独で表示」((3-1)ア、図2(b))、あるいは、「切出し映像と撮像映像との重畳表示」((3-1)イ、図2(d))に切り替えるように制御することは記載されたものといえるが、「切出し映像と撮像映像との重畳表示」(図2(d))から、「切出し映像を単独で表示」(図2(b))に切り替えるように制御することは記載されていない。
ここで、マニュアルフォーカス操作時で表示する映像の表示方法については、上記(3-1)エの記載はあるが、上記(3-1)エでは、マニュアルフォーカス操作時で表示する映像の表示方法は、「メニュー画面等でユーザが事前に選択する」ものであるから、マニュアルフォーカス操作の事前に、「切出し映像と撮像映像との重畳表示」(図2(d))、あるいは、「切出し映像を単独で表示」(図2(b))を選択するものであって、マニュアルフォーカス操作時に、「切出し映像と撮像映像との重畳表示」(図2(d))から、「切出し映像を単独で表示」(図2(b))に切り替えるものではない。
よって、マニュアルフォーカス操作部へのユーザによる手動操作があったときに、映像表示部による映像表示方法を、切出し映像と撮像映像との重畳表示から切り替えて、被写体認識部により検出された前記撮像映像における人物の顔の位置に応じて自動で設定された領域を切出して生成された切出し映像を単独で前記映像表示部に表示するように制御することは、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

したがって、構成F2は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

(4)請求人の主張について
請求人は、平成30年8月27日付け意見書において、第1実施例には、「フォーカス操作をする前の表示状態はその前に行った別の操作(ここではズーム操作)に適した表示であってもよい」ことが示されており、「この別の操作に適した表示の一態様として、人物の顔の位置に応じて切出して生成した拡大表示するための切出し映像と撮像映像との重畳表示の場合も選択されうる」と主張している。
当該主張は、第1実施例または第2実施例において、別の操作(ズーム操作)を行ったときに、別の操作(ズーム操作)に適した表示の一態様として、切出し映像と撮像映像との重畳表示を行うことも選択されうることが発明の詳細な説明に記載されているという主張であると解される。

しかしながら、ズーム操作を行ったときの映像表示方法について、発明の詳細な説明には、上記(3-1)ウのとおり、通常の撮像映像の表示(図2(a))を行うことが記載されるのみであり、ズーム操作を行ったときに、切出し映像と撮像映像との重畳表示を行うことは、発明の詳細な説明には記載も示唆もされていない。
ここで、マニュアルズーム操作時で表示する映像の表示方法について、上記(3-1)エのとおり、「メニュー画面等でユーザが事前に選択する」ことは記載されている。しかしながら、上述のとおり、ズーム操作を行ったときの映像表示方法について、発明の詳細な説明には、通常の撮像映像の表示(図2(a))を行うことが記載されるのみである。
また、発明の詳細な説明には、上記(3-1)イのとおり、切出し映像と撮像映像との重畳表示(図2(d))を行うことは記載されているものの、当該表示は、マニュアルフォーカス操作を行ったときの映像表示方法として記載されているものであり、ズーム操作を行ったときの映像表示方法として記載されているものではない。
よって、マニュアルズーム操作時で表示する映像の表示方法について、メニュー画面等でユーザが事前に選択可能な表示方法の中に、切出し映像と撮像映像との重畳表示が含まれるとはいえない。
また、ズーム操作を行ったときに、切出し映像と撮像映像との重畳表示を行うことは、技術常識ともいえない。
したがって、第1実施例または第2実施例において、ズーム操作を行ったときに、切出し映像と撮像映像との重畳表示を行うことが発明の詳細な説明に記載されているということはできない。
よって、請求人の主張は採用することができない。

(5)まとめ
以上によれば、構成F2は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-10 
結審通知日 2018-12-11 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2015-235489(P2015-235489)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 康男  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 清水 正一
坂東 大五郎
発明の名称 撮像装置  
代理人 青稜特許業務法人  

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