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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1349155
審判番号 不服2017-14274  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-27 
確定日 2019-02-13 
事件の表示 特願2014-549164号「センサを備える光学装置、及びその製造及び使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月27日国際公開、WO2013/096169、平成27年 2月 2日国内公表、特表2015-503820号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、2012年12月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年12月22日米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成27年12月16日に手続補正書が提出され、平成28年10月27日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月30日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月2日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年9月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明及び明細書の記載事項
本願請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成29年1月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
出力表面を備えるキャビティと、
前記キャビティの中へ光を注入するために配設された1つ以上の光源と、
前記キャビティ内に少なくとも部分的に配設された光学素子と、
前記光学素子に光学的に結合されたセンサと、を備え、
前記光学素子が、前記1つ以上の光源からの光の第1部分を前記出力表面に指向させ、前記1つ以上の光源からの光の第2部分を前記センサに指向させるように構成され、
前記センサが、前記キャビティの外側に位置決めされ、
光の前記第2部分が光の前記第1部分から離れた方向に指向する、光学装置。
【請求項2】
前記キャビティが、前記出力表面に実質的に平行に配設される背面反射体を更に備え、
前記センサが、前記背面反射体によって実質的に形成される面の後ろに位置決めされる、請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記光の第2部分を前記キャビティから出射させるためのセンサ開口部を更に備える、請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
所望の光学的特徴を有する光を生成する方法であって、
出力表面を備えるキャビティと、
前記キャビティの中へ光を注入するために配設された1つ以上の光源と、
前記キャビティ内に少なくとも部分的に配設された光学素子と、
前記光学素子に光学的に結合され、前記キャビティの外側に位置決めされたセンサと、を備える光学装置を準備するステップであって、
前記光学素子が、前記1つ以上の光源からの光の第1部分を前記出力表面に指向させ、前記1つ以上の光源からの光の第2部分を前記センサに指向させるように構成される、光学装置を準備するステップと、
光の前記第1部分の所望の第1の光学的特徴を選択するステップと、
前記センサを使って、光の前記第2部分の第2の光学的特徴を検出するステップと、
前記1つ以上の光源からの注入光を調整して、光の前記第1部分に前記所望の第1の光学的特徴を与えるステップと、を備える、方法。
【請求項5】
光の前記第2部分が光の前記第1部分の電力の10%以下の電力を含む、請求項1に記載の光学装置。」

第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、本願発明1は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項(周知の技術的事項)に基づいて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。

引用文献1:特表2011-501362号公報
引用文献2:特開2007-148177号公報
引用文献3:特開2005-71702号公報

第4 各引用文献の記載事項等
1 引用文献1に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として示され、本願の優先日前に頒布された特表2011-501362号公報(以下、原査定と同様に「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。また、以下「1a」?「1e」の記載事項は、それぞれ「記載事項(1a)」?「記載事項(1e)」という。以下同様。)。

(1a)【請求項1】
上面および前記上面に相反する下面を有する回路基板と、
前記回路基板の前記上面に取り付けられた少なくとも1つの発光ダイオードと、
前記回路基板の前記下面上の第1熱接触領域群と、
前記回路基板の前記上面上の第2熱接触領域群と
を含み、
前記第2熱接触領域群は、前記発光ダイオードに隣接して露出していることを特徴とする装置。」

(1b)「【0002】
LEDチップは、寿命が温度に大きく関係するため、最大温度が制限されている。そのため、発光ダイオード素子から生じる光の出力レベルまたは光束は制限され、発光ダイオードを一般的な照明として使用することは制限されている。LEDチップの温度は、システムの冷却能力および装置のエネルギー効率(入力される電気エネルギーに対して、LEDおよびLEDシステムから発生する光エネルギーの割合)によって決定されている。また、LEDを用いた照明装置は、色度が不安定であり、色品質が低いという問題がある。色度は、照明装置の各部分において変化するとともに、時間によっても変化し、不安定である。LED光源が発生するスペクトルは、エネルギーをほとんど有さない領域にあるため、色品質が低くなっている。LEDを用いた照明装置は、空間およびまたは角度に応じて色が変化する。また、光源の色度を維持するために、色調整のための電子回路およびまたはセンサを必要とする点や、装置に要求される色およびまたは光束を満たすLEDを選別する必要がある点から、LEDを用いた照明装置は高額となる。
【0003】
したがって、発光ダイオードを光源として用いる照明装置では、改良が望まれている。」

(1c)「【0006】
図1および図2は、実施形態に係る発光ダイオード(LED)照明装置100の斜視図であり、図2は、LED照明装置100の内部を示すために一部破断して示す斜視図である。ここでのLED素子は、単一のLEDではなく、1つ以上のLEDダイまたはLEDパッケージを備えたLED基板を含むLED光源または照明、または、それらの一部分である。図3は、LED照明装置100の分解斜視図である。図4Aおよび4Bは、複数のヒートシンクが使用されたLED照明装置100の斜視図および断面図である。LED照明装置100は、熱拡散器またはヒートシンク130(図3、4A、4B参照)に取り付けられた、または結合されたLED基板104上に設けられた発光ダイオード(LED)102のような固体発光要素を1つ以上含んでいる。基板104は、基板104の上面に取り付けられた反射性の上面または反射板106を含んでいる。反射板106は、高い熱伝導性を有する材料から形成されてよく、基板104と熱接触した状態で設けられてよい。LED装置100は、基板104に結合された反射性側壁110を更に含む。側壁110および反射板106を備えた基板104は、LED照明装置100に孔101を画成する。LED102から生じた光は、出力ポート120を通って外部へと出るまでに孔101内で反射される。光の一部は、孔内で吸収される。出力ポート120から出る前の孔101内での反射は、光を混合し、LED照明装置100から放射された光の分布をより均一にする効果がある。
【0007】
反射性側壁110は、高反射性および高耐久性を有するアルミニウムをベースとした材料のような高い熱伝導性を有する材料から形成されてよい。一例として、Miro(R)(Alanod(ドイツ)が製造)のような材料が側壁110として用いられる。アルミニウムの研磨や、側壁110の内面を1つ以上の反射性コーティングで被覆することによって、側壁110の反射性を高めることができる。・・・
【0008】
反射性側壁110は、光が照明装置100から出る際に通過する出力ポート120を画成してもよい。他の実施形態では、図3に破線で示すように、反射性側壁110の上部に取り付けられた反射性上部121が、出力ポート120を画成してもよい。出力ポート120は、窓122を含んでよい。窓120は、透明または光が通過する際に散乱させるべく半透明であってよい。・・・
【0009】
孔101は、空気やイナートガスのような非固体物質によって満たされており、LED102は、固体封入物質中ではなく、非固体物質中に光を放射してもよい。例えば、孔はアルゴンガスが充填された状態で密封されてよい。また、アルゴンガスに代えて、窒素ガスが使用されてもよい。
【0010】
側壁110は、図1および2に連続した円管形状を有する形態として記載されているが、他の形状が用いられてもよい。例えば、側壁は、楕円形状(円形状を含む)を有する1つの連続した形状の側壁から構成されてよい。あるいは、例えば、三角形や四角形、他の多角形のような非連続な形状からなる複数の側壁から構成されてよい。また、必要であれば、側壁は、連続部分と非連続部分を含んでもよい。側壁110によって画成された孔101は、傾斜して底部(すなわち、LED102付近)と上部(出力ポート120付近)とにおける断面積が異なってもよい。
【0011】
基板104は、取り付けられたLED102と電源(図示しない)との電気的に接続する。また、基板104は、LED102によって発生した熱を基板104の側部および底部に伝導する。基板104の側部および底部は、ヒートシンク130(図3、4A、4B参照)、あるいは照明装置およびまたはファンのような熱を消散する他の機構に結合されている。ある実施形態では、基板104は、例えば周囲の側壁110のような、基板104の上部に熱的に結合されたヒートシンクに熱を伝導する。
【0012】
例えば、図4A、4Bに示すように、照明装置100は、点線で示された光軸OAに沿って、下部ヒートシンク130と、上部ヒートシンク132と、下部ヒートシンク130および上部ヒートシンク132の間に配置された基板104とを有する。ある実施形態では、基板104は、熱伝導性エポキシによって、ヒートシンク130,132に結合されてもよい。代わりに、または付加的に、ヒートシンク130,132の間に基板104を固定するために、図4に示すように、ヒートシンク130,132は、ねじ130_(threads),132_(threads)によって互いに螺合してもよい。図4Bに示されているように、基板104は、熱拡散器と言われる熱接触領域148を上面および下面に含んでよい。熱接触領域148は、図中の矢印で示されるように、例えば、熱伝導性グリス、熱伝導性テープまたは熱伝導性エポキシによって、上部および下部ヒートシンク130,132に熱的に結合されている。図4Bに示されるように、ヒートシンク132の内部に挿入され、例えば熱伝導性エポキシ、またはねじ110_(threads),135、ボルトによって保持された分離した挿入体110_(insert)を用いて側壁110は形成されている。取り外し可能な側壁挿入体110_(sidewall insert)は、挿入体110_(insert)の内部に配置され、側壁を画成する。側壁挿入体110_(sidewall insert)は、例えばMiro(R)、type Miro 27 Silver(Alanod(独)が製造)から作成されてよい。側壁挿入体110_(sidewall insert)が、プラスチック、セラミック、ガラスまたは他の適切な材料から作成されている場合に、必要であれば、側壁挿入体110_(sidewall insert)は、例えば図4A,15A,15Bに示されているように、1つ以上の波長変換物質およびまたは高拡散反射コーティングが被覆または積層されてよい。照明装置の色度の調整は、同様に1つ以上の波長変換物質が被覆または積層された側壁挿入体110_(sidewall insert)およびまたは窓122を交換することによって行うようにしてもよい。図4Bには、直線形状を有する側壁が示されているが、側壁110は、例えば曲線形状、非垂直形状、傾斜形状等の所望の形状であってよい。ある実施形態では、挿入体110_(insert)が上部からヒートシンク132内に挿入された場合に、ヒートシンク132内に挿入体110_(insert)を固定するために、付加的なヒートシンク142が上部ヒートシンク132に結合される。付加的なヒートシンク142は、任意的なものであることを理解されたい。挿入体110_(insert)が下部部からヒートシンク132内に挿入された場合には、下部ヒートシンク130は挿入体110_(insert)を所定の位置に固定し得る。また、側壁110は、ヒートシンク132と一体的に形成されてもよい。窓122は、例えば、接着または挿入体110_(insert)とヒートシンク142,132との間に挟み込むようなクランプ式固定によって、挿入体110_(insert)内に取り付けられる。拡散器またはリフレクタ140のような光学要素が、例えば、ねじ138,141の螺着、クランプによる固定、または他の適切な機構を用いて、着脱自在に上部ヒートシンク132に結合されてもよい。ある実施形態では、リフレクタ140(図4A)は、付加的なヒートシンク142に一体的に形成されてもよく、あるいは、ヒートシンク142(図4B)の例えば傾斜壁142_(taper)に取り付けられてもよい。
【0013】
LED基板104は、1つ以上のLEDダイまたはLEDパッケージが取り付けられた基板である。基板は、例えば厚さが0.5mmのFR4基板であってよい。LED基板104は、熱接触領域として、例えば30μm?100μmの比較的厚い銅層を上面および下面に備えている。基板104は、熱スルーホールを含み得る。また、基板104は、メタルコアを有するプリント回路基板(PCB)や、適切な電気的接続を備えたセラミックのサブマウントであってよい。他の種類の基板は、アルミナ(セラミック形態の酸化アルミニウム)や窒化アルミニウム(セラミック形態)から形成された材料を用いてもよい。付加的な熱吸収領域を提供するために、側壁110は基板104に熱的に結合されてもよい。
【0014】
LEDを適切に冷却するために、基板上に1ワット当り、少なくとも50mm^(2)、好ましくは100mm^(2)の熱接触領域が設けられるべきである。例えば、12個のLEDが使用される場合には、600?1200mm^(2)の熱(吸収)接触領域が設けられるべきである。基板の両側に接触領域が設けられることによって、基板の直径は60?40mm縮小され、基板のコストが低減される。また、照明装置の全体の大きさおよび体積が縮小され、現存する照明装置への適用が容易になる。」

(1d)「【0047】
図19Aは、他の実施形態に係る照明装置600の断面図である。照明装置600は、図1,2に示された照明装置100と似ている。照明装置600は、ヒートシンク608に取り付けられた基板604に取り付けられたLED102を備えている。また、例えばLED102に近い下部における孔601の断面領域が、例えばLED102から遠い上部における孔601の断面領域よりも大きくなるように、側壁610は傾斜している。照明装置100と同様に、照明装置600の側壁610は、例えば図19Bに示されているような円形状(楕円形状)のような連続した形状、図19Cに示されているような非連続の多角形状、またはそれらの組み合わせた形状の孔601を画成してもよい。
【0048】
照明装置600は、孔601の中央部に配置されたダイバータ602を更に備えてもよい。ダイバータ602は、LED102からの光を窓622側へ向きを変え、照明装置600の効率を改善する。図19Aでは、ダイバータ602は、錐形状を有するものとして記載されているが、必要であれば、例えば半球体形状、球状キャップ、非球面リフレクタ形状のような代替形状を用いてもよい。図19B,19Cに示されているように、ダイバータ602は、平面視において様々な形状を有してよい。ダイバータ602は、鏡面反射性コーティングや拡散コーティングを有してよく、1つ以上の蛍光体によってコーティングされてもよい。ダイバータ602の上部と窓622との間に小さな空間を設けるために、ダイバータ602の高さは、孔601の高さよりも小さくてもよい(例えば、孔601の高さの約半分)。」

(1e)「【0062】
図23は、所望の色度を発生させるべく、電気的に制御可能な照明装置600の断面図を示している。照明装置600(図23参照)の出力光の色は、少なくとも2つの青色LED102B,102bを用いて変化させられる。2つの青色LED102B,102bの内の一方のLEDは、他方のLEDよりもより低いピーク波長を有している。一方の青色LED102bは、430?450nmの範囲にピーク波長を有してよく、他方のLED102Bは、450?470nmの範囲にピーク波長を有してよい。2つ以上のLEDを使用する場合には、より低いピーク波長を有するLEDは全て電気的に接続されてよく、より長いピーク波長を有するLEDは、より低いピーク波長を有するLEDから電気的に分離された状態で電気的に接続されてよい。ドライバ670は、より長いピーク波長を有するLED102Bからなるグループと、より低いピーク波長を有するLED102bからなるグループとの間で異なる電流を供給することができる。ドライバ670は、LED102B,102bに基板604を介して結合されており、図23では説明のために接続を破線で示している。照明装置600の少なくとも1つのの蛍光体は、より長波長の光とより短波長の光との間で異なる反応を示すため、異なる色の出力光が達成される。出力光の色は、LED102B,102bからなる2つの異なるグループに流れる電流を変化させることによって制御される。また、ドライバ670をフィードバック制御するために、照明装置600の光の出力または色を測定するために孔内にセンサ672が使用される。センサ672は、照明装置600の出力窓、孔の下部、上部、側部、あるいは図23に示されているように、一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられてよい。」

(1f)引用文献1には以下の図が示されている。





また、上記記載事項及び図示内容によれば、以下の事項が認められる。
(1g)段落【0047】?【0048】には「照明装置600」に関し、「照明装置600は、図1,2に示された照明装置100と似ている。照明装置600は、ヒートシンク608に取り付けられた基板604に取り付けられたLED102を備え・・・孔601の中央部に配置されたダイバータ602を・・・備え・・・ダイバータ602は、LED102からの光を窓622側へ向きを変え」(記載事項(1d))という記載があるので、当該記載も踏まえて、段落【0062】の「電気的に制御可能な照明装置600・・・照明装置600(図23参照)の出力光の色は、・・・2つの青色LED102B,102bを用いて変化させられる。・・・ドライバ670をフィードバック制御するために、照明装置600の光の出力または色を測定するために孔内にセンサ672が使用される。センサ672は、・・・一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられてよい。」(記載事項(1e))という記載及び図23(記載事項(1f))の図示内容を参照すると、図23の「電気的に制御可能な照明装置600」が、窓622、孔601、LED102B、LED102b、ダイバータ602、センサ672を備えることが明らかである。
また、ダイバータ602が孔601の中央部に配置されること、ダイバータ602はLED102B、LED102bからの光を窓622側へ向きを変えるものであることが明らかである。

(1h)段落【0047】には「照明装置600は、図1,2に示された照明装置100と似ている。」(記載事項(1d))と記載されているところ、段落【0006】?【0008】の「側壁110および反射板106を備えた基板104は、LED照明装置100に孔101を画成する。LED102から生じた光は、出力ポート120を通って外部へと出るまでに孔101内で反射される。・・・出力ポート120は、窓122を含んでよい。」(記載事項(1c))という記載を踏まえて、段落【0062】の「電気的に制御可能な照明装置600・・・照明装置600(図23参照)の出力光の色は、・・・2つの青色LED102B,102bを用いて変化させられる。・・・ドライバ670をフィードバック制御するために、照明装置600の光の出力または色を測定するために孔内にセンサ672が使用される。センサ672は、・・・一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられてよい。」(記載事項(1e))という記載及び図23(記載事項(1f))の図示内容を参照すると、図23のLED102B、LED102bから生じた光が窓622を通って外部へ出るまでに孔601内で反射されることが明らかである。

(1i)図23(記載事項(1f))の図示内容から、窓622は孔601の上部に、ダイバータ602及びセンサ672は孔601の下部に、それぞれ配置されることが看取できる。

以上の記載事項(1a)?(1f)及び認定事項(1g)?(1i)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「窓622、孔601、LED102B、LED102b、ダイバータ602、センサ672、ドライバ670を備える電気的に制御可能な照明装置600であって、
ドライバ670をフィードバック制御するために、照明装置600の光の出力または色を測定するために孔601内にセンサ672が使用され、
ダイバータ602が孔601の中央部に配置され、
センサ672は、一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられ、
ダイバータ602はLED102B、LED102bからの光を窓622側へ向きを変えるものであり、
LED102B、LED102bから生じた光が窓622を通って外部へ出るまでに孔601内で反射され、
窓622は孔601の上部に、ダイバータ602及びセンサ672は孔601の下部に、それぞれ配置される
電気的に制御可能な照明装置600。」

2 引用文献2に記載された事項
同じく原査定に引用文献2として引用され、本願の優先日前に頒布された特開2007-148177号公報(以下、原査定と同様に「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(2a)【0011】
また、特許文献1において、光センサの配置位置としては、図31に示す位置が標準であることを示したうえで、他の配置例として次のように記載している。基板上に光センサを配設する余裕の無い場合は、図32(a)のように反射枠の中に空洞を空けたその中に配設するか、図32(b)のように反射枠の壁面に配設すればよい。LEDの配置が限られ、LEDボックスの中にセンサを配設することができない場合、図32(c)のように拡散板上の投射光の妨げにならない部分に配設すればよい。実際の光を検出するものではないが、照明部のLEDと同一特性のLEDと光センサのフォトカプラーを、図32(d)のように照明部の外部に配設することもできる。フォトカプラーを配設するのも困難なような場合には、図32(e)のように、照明部とセンサ部を光ファイバーで結合する方法もある。」

(2b)「【0044】
本発明にかかる光源制御装置として、液晶表示装置を例にとって説明する。図1は、本実施形態にかかる液晶表示装置のブロック図である。
・・・
【0051】
よって、各色それぞれの発光強度(輝度)を検出し、これに基づいて光源の発光色度、発光輝度を予め定められた所定の発光色度、発光輝度にフィードバック制御するために、R、G、B光源の発光強度(発光輝度)を検出する光検出手段としてのカラーセンサ22を備えている。詳しくは、カラーセンサ22は、赤色の発光強度を検出する赤色センサ、緑色の発光強度を検出する緑色センサ、青色の発光強度を検出する青色センサから構成されている。また、カラーセンサ22はカラーフィルタを備え、赤色センサは、赤色の波長の光を透過させる赤色フィルタを透過した光を検出し、緑色センサは、緑色の波長の光を透過させる緑色フィルタを透過した光を検出し、青色センサは、青色の波長の光を透過させる青色フィルタを透過した光を検出する。
【0052】
そして、本発明においては、上記色バランスのずれを正確に検出するために、光源を収納できる大きさに形成したシャーシ26の背面側に光源1・2・3からの光が透過することが可能なように、反射板24、光源配置基板25、シャーシ26を貫通した貫通孔23を設け、カラーセンサ22を、反射板24を挟んで光源側とは反対側(光源を配置する基板25の光源配置側とは相対する側)であって、上記貫通孔23に対向する位置に配置する。
・・・
【0059】
導光体21が、反射板24の光源配置側に突出する形状になっているため、導光体21の近くのLEDの輝度も、遠くのLEDの輝度も適切に集光できる形状となっている。すなわち、本発明の導光体21は、光源から発せられた光が、当該導光体内部を伝播し、反射板24の光源側とは反対側に透過した光をセンサ22へと導く導光手段であるとともに集光手段としても機能している。」

(2c)引用文献2には以下の図が示されている。





3 引用文献3に記載された事項
同じく原査定に引用文献3として引用され、本願の優先日前に頒布された特開2005-71702号公報(以下、原査定と同様に「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(3a)「【0016】
図1に示されるように、光センサ8は混色された白色光のR、G、Bの各光量を検出し、検出されたR、G、Bの各光量をフィードバック回路9に送る。フィードバック回路9は光センサ8が検出したR、G、Bの各光量を予め設定された各光量と比較し、検出された光量が設定値より減少した場合は、その減少量に応じてR、G、Bの各点光源4に入力する電流、電圧またはデューティ比を上げる。反対に検出された光量が増加した場合は、その増加量に応じてR、G、Bの各点光源4に入力する電流、電圧またはデューティ比を下げる。このように、光センサ8により検出されるR、G、Bの各光量に応じて点光源4に入力される電流、電圧またはデューティ比をR、G、Bの各色ごとに独立に制御することにより、拡散板2から出射する白色の照明光を所望の色度および輝度に保つことができる。
【0017】
なお、本実施の形態1にかかわる面状光源装置においては、光量を測定するための光センサ8を筐体1の底面1bの略中央部に配置している。これは、センサ8の位置が中央部から遠ざかるにしたがい、偏角素子5からセンサ8に直接入射する光が増加することで測定誤差が増加するからである。つまり、図4に示されるように、筐体1の底面1bの中央部から離れた位置に設けられた収納部1eに光センサ8を配置した場合、偏角素子5から反射板6へ向かう光R1が光センサ8へと入射するため、拡散板2を出射する混色された平均的な(代表的な)光を測定することができない。本発明は、光センサ8を筐体1内の底面1bの略中央部に設けた収納部1dに配置することで、拡散板2にて混色された平均的な光R2を検出することができる。このように、正確な参照値を用いてR、G、Bの各点光源4へ入力する電圧、電流またはデューティ比を制御することにより、所望の色度および輝度を得ることができる。」

(3b)「【0039】
なお、図9に示されるように、光センサ8の光入射面に直角プリズム11を配置してもよい。図10において、偏角素子5から出射され、直角プリズム11の入射面11aに直角に近い角度で入射する光R4は直角プリズム11内の反射面11b、11cで2回全反射され、光センサ8に入射するが、一定角度以上で入射した光R5は全反射されずに直角プリズム11の外部へ出射される。このように、直角プリズム11は、所定範囲内の入射角で入射面11aに入射する光のみを光センサ8に導く。なお、入射角度の範囲は直角プリズム11の屈折率および形状により制御できる。本変形例によれば、直角プリズム11を用いて所定範囲内の入射角を有する光のみを光センサ8に導くので、検出精度が向上する。」

(3c)引用文献3には以下の図が示されている。





第5 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

1 引用発明の「孔601」、「LED102B、LED102b」、「センサ672」及び「照明装置600」は、その意味、機能または構造からみて、本願発明1の「キャビティ」、「光源」、「センサ」及び「光学装置」にそれぞれ相当する。

2 引用発明は「LED102B、LED102bから生じた光が窓622を通って外部へ出る」ものであって、それまで当該光が「孔601内で反射される」から、引用発明の「孔601」が出力表面を備えることは明らかである。また、「LED102B、LED102b」が「孔601」へ光を注入していることが明らかである。
そうすると、引用発明の「LED102B、LED102bから生じた光が窓622を通って外部へ出るまでに」その「内で反射される」「孔601」は、本願発明1の「出力表面を備えるキャビティ」に相当し、また、引用発明の「生じた光が窓622を通って外部へ出るまでに孔601内で反射される」「LED102B、LED102b」は、本願発明1の「前記キャビティの中へ光を注入するために配設された1つ以上の光源」に相当する。

3 引用発明の「ダイバータ602」は、「孔601の中央部に配置され」るから、孔601の内に配設されていることが明らかである。また、引用発明の「ダイバータ602」は「LED102B、LED102bからの光を窓622側へ向きを変える」ものであるから、光学的な機能を有する素子、すなわち光学素子であることが明らかである。
そうすると、引用発明の「孔601の中央部に配置され」る「ダイバータ602」は、本願発明1の「前記キャビティ内に少なくとも部分的に配設された光学素子」に相当する。

4 本願発明1の「センサ」が「前記光学素子に光学的に結合され」ることの意味について、本願明細書の段落【0034】の「センサ140は、キャビティ110内又は外部に配置されてもよい。例えば、センサ140は、背面反射体116によって実質的に形成される面の後ろに位置決めされてもよい。・・・センサ140は、背面反射体116によって実質的に形成される面の前に位置決めされてもよい。・・・センサ140は、図1では、光学素子130の直後に位置決めされるように描かれているが、・・・センサ140をもっと遠隔位置に位置決めする・・・ケースにおいては、センサ開口部134を通過した光がその角度以外ではセンサ140に到達できない角度で位置決めされるのが望ましい場合もある。・・・好適な光チャネリング素子又は再指向素子を用いて、光(ランダム再指向光線176として例示的に表示される)を所望の角度でセンサの方向へ指向させることができる。」という記載及び段落【0043】の「図1は、光線170が1つ以上の光源120によってキャビティ110の中へ注入される例示的な実施形態の動作を更に示す。・・・1つ以上の光源120によってキャビティ110の中へ注入された光線174は、光学素子130の開口部136にも注入される。光線174は、光学素子130を通って流れ、再指向光線176としてセンサに指向される。」という記載を参照すると、本願発明1の「センサ」が「前記光学素子に光学的に結合され」ることの意味は、光学素子を通って流れた光がセンサに到達することを意味すると理解できる。
引用発明の「センサ672」は「一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられ」るものであるが、「照明装置600の光の出力または色を測定する」という「センサ672」の機能に照らせば、「ダイバータ602」を通って流れた光が「センサ672」に入る、すなわち「センサ672」が「ダイバータ602」に光学的に結合されていることが明らかである。
そうすると、引用発明の「一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられ」た「センサ672」は、本願発明1の「前記光学素子に光学的に結合されたセンサ」に相当する。

5 引用発明の「LED102B、LED102bからの光」は、本願発明1の「前記1つ以上の光源からの光」に相当し、そのうち「窓622側へ向きを変え」られた「窓622を通って外部へ出る」部分は、本願発明1の「第1部分」に相当する。
そして、引用発明の「ダイバータ602はLED102B、LED102bからの光を窓622側へ向きを変える」ことは、本願発明1の「前記光学素子が、前記1つ以上の光源からの光の第1部分を前記出力表面に指向させ」ることに相当する。
また、引用発明の「センサ672」は「照明装置600の光の出力または色を測定するために孔601内に」配され、「一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられ」たものであるので、「LED102B、LED102bからの光」に、前記「窓622側へ向きを変え」られ「窓622を通って外部へ出る」部分以外のセンサ672に到達する部分が存在することは明らかであり、当該部分は本願発明1の「第2部分」に相当する。
そして、引用発明の「ダイバータ602」は、引用文献1の段落【0062】に「ドライバ670をフィードバック制御するために、照明装置600の光の出力または色を測定するために・・・センサ672が使用される。センサ672は、・・・一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられてよい。」(記載事項(1e))と記載されているように、フィードバック制御するセンサ672のために、一部分が透明とされたものであって、上記本願発明1の「第2部分」に相当する部分の光をセンサ672に向かわせる機能を備えたものであることは明らかである。そうすると、引用発明の「ダイバータ602」が当該第2部分の光をセンサに向かわせる機能を備えたもの(具体的には、「一部分が透明」)であることは、本願発明1の「前記光学素子が」「前記1つ以上の光源からの光の第2部分を前記センサに指向させるように構成され」たことに相当する。

6 引用発明においては「窓622は孔601の上部に、ダイバータ602及びセンサ672は孔601の下部に、それぞれ配置される」のであるから、上記5で述べた、引用発明における「ダイバータ602」を通して「センサ672」に指向されている光が、「窓622側へ向きを変え」られた「LED102B、LED102bからの光」から離れた方向であることは明らかである。
そうすると、引用発明の「窓622は孔601の上部に、ダイバータ602及びセンサ672は孔601の下部に、それぞれ配置され」ているものにおいて、「ダイバータ602」が「LED102B、LED102bからの光を窓622側へ向きを変え」、「センサ672は、一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられ」ていることは、本願発明1の「光の前記第2部分が光の前記第1部分から離れた方向に指向する」ことに相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

<一致点>
「出力表面を備えるキャビティと、
前記キャビティの中へ光を注入するために配設された1つ以上の光源と、
前記キャビティ内に少なくとも部分的に配設された光学素子と、
前記光学素子に光学的に結合されたセンサと、を備え、
前記光学素子が、前記1つ以上の光源からの光の第1部分を前記出力表面に指向させ、前記1つ以上の光源からの光の第2部分を前記センサに指向させるように構成され、
光の前記第2部分が光の前記第1部分から離れた方向に指向する、光学装置。」

<相違点>
本願発明1は、「前記センサが、前記キャビティの外側に位置決めされ」ているのに対し、
引用発明は、「ダイバータ602が孔601の中央部に配置され」「センサ672は、一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられ」るものである点。

第6 判断
以下、相違点について検討する。

<相違点について>
1 引用文献2の第一の実施形態を記載した図2、3(記載事項(2c))に「【0051】・・・各色それぞれの発光強度(輝度)を検出し、これに基づいて光源の発光色度、発光輝度を予め定められた所定の発光色度、発光輝度にフィードバック制御するために、R、G、B光源の発光強度(発光輝度)を検出する光検出手段としてのカラーセンサ22を備えている。・・・光源を収納できる大きさに形成したシャーシ26の背面側に光源1・2・3からの光が透過することが可能なように、反射板24、光源配置基板25、シャーシ26を貫通した貫通孔23を設け、カラーセンサ22を、反射板24を挟んで光源側とは反対側(光源を配置する基板25の光源配置側とは相対する側)であって、上記貫通孔23に対向する位置に配置する。・・・導光体21は、光源から発せられた光が、当該導光体内部を伝播し、反射板24の光源側とは反対側に透過した光をセンサ22へと導く導光手段であるとともに集光手段としても機能している。」(記載事項(2b))として、光源を収納できる大きさに形成したシャーシ26の背面側に貫通孔23を設け、光源にフィードバック制御するためのカラーセンサ22を、光源を配置する基板25の光源側とは相対する側に、導光体21を介して光を導くように設ける構成が記載されており、引用文献2には、光源を収容する孔の外側に光学素子を介してセンサを配置するという技術的事項が示されているといえる。

2 また、引用文献3には光線センサに直角プリズムを配置する例を示す図9?10(記載事項(3c))に「【0016】・・・光センサ8は混色された白色光のR、G、Bの各光量を検出し、検出されたR、G、Bの各光量をフィードバック回路9に送る。フィードバック回路9は光センサ8が検出したR、G、Bの各光量を予め設定された各光量と比較し、検出された光量が設定値より減少した場合は、その減少量に応じてR、G、Bの各点光源4に入力する電流、電圧またはデューティ比を上げる。・・・面状光源装置においては、光量を測定するための光センサ8を筐体1の底面1bの略中央部に配置している。・・・光センサ8を筐体1内の底面1bの略中央部に設けた収納部1dに配置する」(記載事項(3a))、「【0039】・・・図9に示されるように、光センサ8の光入射面に直角プリズム11を配置してもよい。図10において、偏角素子5から出射され、直角プリズム11の入射面11aに直角に近い角度で入射する光R4は直角プリズム11内の反射面11b、11cで2回全反射され、光センサ8に入射するが、一定角度以上で入射した光R5は全反射されずに直角プリズム11の外部へ出射される。」(記載事項(3b))が記載されており、光源を収容する孔の外側に光学素子を介してセンサを配置するという技術的事項が示されているといえる。そうすると、上記1も踏まえると、光源を収容する孔の外側に光学素子を介してセンサを配置することは周知の技術的事項といえる。

3 そして、引用文献2の段落【0011】の「光センサの配置位置としては、図31に示す位置が標準であることを示したうえで、他の配置例として次のように記載している。基板上に光センサを配設する余裕の無い場合は、図32(a)のように反射枠の中に空洞を空けたその中に配設するか、図32(b)のように反射枠の壁面に配設すればよい。LEDの配置が限られ、LEDボックスの中にセンサを配設することができない場合、図32(c)のように拡散板上の投射光の妨げにならない部分に配設すればよい。実際の光を検出するものではないが、照明部のLEDと同一特性のLEDと光センサのフォトカプラーを、図32(d)のように照明部の外部に配設することもできる。フォトカプラーを配設するのも困難なような場合には、図32(e)のように、照明部とセンサ部を光ファイバーで結合する方法もある。」(記載事項(2a))という記載及び図32(記載事項(2c))の図示内容を参照すると、光源を収容する孔の内側にセンサを配置するのか、あるいは光源を収容する孔の外側にセンサを配置するのかは、孔の大きさ等に応じて当業者が適宜に選択し得るものといえる。

4 そうすると、「ダイバータ602が孔601の中央部に配置され、センサ672は、一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられ」た引用発明において、上記引用文献2、3に記載された技術的事項(周知の技術的事項)を参考とし、センサ672を、ダイバータ602を介して孔601の外側に配置することで、上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。

<請求人の主張について>
5 請求人は、審判請求書の【請求の理由】「3. 3-3 2)2-1)」において、「引用発明1(当審注:上記「第4 1」の引用発明)上記の課題は、発光ダイオードを光源として用いる照明装置の冷却能力および色品質を改善させつつ、電気的制御により所望の色度を発生させることにある。この『冷却能力の改善』を実現する上で、ヒートシンクは最も重要な部材である。すなわち、ヒートシンクの冷却能力を最大限に発揮させることは、引用発明1の主要な課題ないし解決手段に他ならない。・・・引用発明1の構成においてセンサを孔の外側に配置しようとすると、センサは、基板とヒートシンクとの間か、ヒートシンクの下側の、いずれかに配置されることになる。しかしながら、そのような変形を行うことは技術的に合理性がなく、当業者がかかる変形を行う可能性はない。・・・基板とヒートシンクとの間にセンサを配置しようとすると、基板とヒートシンクとの接触面積が減ることとなり、基板からヒートシンクへの熱輸送に基づく冷却能力は大きく減殺されることになる。かかる結果は、照明装置の冷却能力を改善するという引用発明1の目的に反するものとなる。・・・ヒートシンクの下側にセンサを配置しようとすると、光をセンサに通すための導光路を、基板およびヒートシンクを貫通するように形成する必要がある。導光路は空隙等であって熱伝導率は低い。そのような変更を行えば基板とヒートシンクとの接触面積が減ることとなり、やはり冷却能力は大きく減殺される。また、引用文献1の図23に示されるように、ヒートシンクは、高い冷却能力を実現すべく、大きな厚みを有する。そのような分厚いヒートシンクを貫通するように導光路を形成することは、部品の設計精度の点からも、製造コストの点からも、回避したいと考えるのが当業者の自然な思考である。」とし、審判請求書の【請求の理由】「3. 3-3 2)2-2)」において、「本願発明は、LEDを用いた光源において、光出力を低下させずに、光キャビティの光出力をサンプリングすることを課題とする・・・センサは光キャビティの外部に配置されている。かかる構成は、光出力を低下させずに、光キャビティの光出力をサンプリングするという本願発明の課題といずれも技術的に関連するものである。・・・引用発明1に基づいて、本願発明の上記相違点に係る構成とするためには、図23に示された引用発明1の構成を出発点として、センサを孔の外側に位置決めするという構成を採用しなければならない。この場合センサは、基板とヒートシンクとの間か、ヒートシンクの下側の、いずれかに配置されることになる。しかしながら、引用発明1の課題を解決する上でのヒートシンクの役割、および他の構成部材とヒートシンクとの位置関係の技術的意義を踏まえれば、引用発明1において基板上に配置されているセンサを、あえて孔の外側に位置決めするには、何らかの示唆に基づくそれなりの動機付けを必要とする。しかしながら、そのような動機付けないし示唆は、いずれの引用文献にも存在しない。」とした上で、審判請求書の【請求の理由】「3. 3-3 2)2-3)」において、「原査定は、本願発明および引用発明1の課題の相違を無視し、引用発明1の課題から示唆されず該課題に照らせば採用が阻害される構成を『容易になし得た』として、本願発明の進歩性を否定している。」と主張している。

6 上記主張について検討する。
引用文献1の段落【0002】の「LEDチップは、寿命が温度に大きく関係するため、最大温度が制限されている。そのため、発光ダイオード素子から生じる光の出力レベルまたは光束は制限され、発光ダイオードを一般的な照明として使用することは制限されている。・・・また、LEDを用いた照明装置は、色度が不安定であり、色品質が低いという問題がある。色度は、照明装置の各部分において変化するとともに、時間によっても変化し、不安定である。・・・したがって、発光ダイオードを光源として用いる照明装置では、改良が望まれている。」(記載事項(1b))を参照すると、引用文献1においては、LEDチップの最大温度が制限されていることが課題の1つとして挙げられているものの、引用文献1の【請求項1】の「上面および前記上面に相反する下面を有する回路基板と、前記回路基板の前記上面に取り付けられた少なくとも1つの発光ダイオードと、前記回路基板の前記下面上の第1熱接触領域群と、前記回路基板の前記上面上の第2熱接触領域群とを含み、前記第2熱接触領域群は、前記発光ダイオードに隣接して露出していることを特徴とする装置。」(記載事項(1a))という記載及び段落【0011】?【0012】の「基板104の側部および底部は、ヒートシンク130(図3、4A、4B参照)、あるいは照明装置およびまたはファンのような熱を消散する他の機構に結合されている。ある実施形態では、基板104は、例えば周囲の側壁110のような、基板104の上部に熱的に結合されたヒートシンクに熱を伝導する。・・・例えば、図4A、4Bに示すように、照明装置100は、点線で示された光軸OAに沿って、下部ヒートシンク130と、上部ヒートシンク132と、下部ヒートシンク130および上部ヒートシンク132の間に配置された基板104とを有する。」(記載事項(1c))という記載等を参照すると、下部ヒートシンク130に関しては選択的、あるいは例示的な記載がなされており、基板の下部に設けるヒートシンクは任意付加的な構成にすぎないと理解できる。
さらに、引用文献1の段落【0062】の「電気的に制御可能な照明装置600・・・照明装置600(図23参照)の出力光の色は、・・・2つの青色LED102B,102bを用いて変化させられる。・・・ドライバ670をフィードバック制御するために、照明装置600の光の出力または色を測定するために孔内にセンサ672が使用される。センサ672は、・・・一部分が透明なダイバータ602の内部に取り付けられてよい。」(記載事項(1e))及び図23(記載事項(1f))の図示内容を参照しても、ヒートシンクに関する言及はなされておらず、センサによる出力光の制御は、一応ヒートシンクと独立した技術として理解されるものでもある。
そうすると、上記「第4 1」で述べたとおりの「引用発明」を認定することができ、ヒートシンクの存在を前提とする請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2、3に記載された技術的事項(周知の技術的事項)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-09-13 
結審通知日 2018-09-18 
審決日 2018-10-02 
出願番号 特願2014-549164(P2014-549164)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 津田 真吾丹治 和幸  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 中田 善邦
和田 雄二
発明の名称 センサを備える光学装置、及びその製造及び使用方法  
代理人 佃 誠玄  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 野村 和歌子  
代理人 吉野 亮平  

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