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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1349159
審判番号 不服2017-15998  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-27 
確定日 2019-02-14 
事件の表示 特願2013-124685「生体情報モニタ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 5日出願公開、特開2015- 110〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月13日の出願であって、平成28年12月12日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月24日付けで拒絶査定されたところ、同年1 0月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後当審において平成30年9月28日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月7日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成30年11月7日付けの手続補正(以下、単に「手続補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの本願発明1は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
被検者の呼気ごとに呼気終末二酸化炭素濃度の測定値を取得する測定部と、
前記測定値に基づいて、少なくとも第1音と第2音を含む音声を一単位として出力する音声出力部と、
前記第2音を前記第1音に後続して出力させ、かつ前記測定値が正常範囲外である場合に前記第2音の音階を変化させる音声制御部とを備える、生体情報モニタ。」

第3 拒絶の理由
平成30年9月28日付けで当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。

1.(明確性実施可能要件)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.(サポート要件)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3.(新規性進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。または、本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



理由1(特許法第36条第6項第2号及び第4項第1号違反について)
省略

理由2(特許法第36条第6項第1号違反について)
省略

理由3(特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項違反について)
本願発明1?4は、本願の明細書段落【0016】?【0046】(ただし、段落【0023】は除く)及び図1?4に記載された実施例のような発明、すなわち、呼気終末二酸化炭素濃度(ETCO2)を測定し、呼気毎に、呼気終末二酸化炭素濃度の値により、第2音の音階等が異なる音声信号を生成する生体情報モニタを記載しようとするものであると解して、新規性進歩性を判断する。

1 刊行物等一覧
引用文献1:特許第3273295号公報(査定時の引用文献2)
引用文献2:特開平5-317269号公報(査定時の引用文献1)

2 特許法第29条第1項第3号について
本願発明1、2、4について
引用文献1に記載された発明の「呼気時の炭酸ガス濃度のピーク点」が、本願の「呼気終末二酸化炭素濃度(ETCO2)」に相当する。
また、引用文献1に記載された発明の「呼気時の炭酸ガス濃度のピーク点」が20mmHgを越えた場合に3回の断続音を、10mmHgを越え20mmHg以下の場合に2回の断続音を、5mmHgを越え10mmHg以下の場合に1回の断続音を発生することは、本願発明の「前記第2音を前記第1音に後続して出力させ、かつ前記測定値が正常範囲外である場合に前記第2音を変化させる」こと、かつ、「前記第2音の」「音数」「を変化させる」ことに相当する。(「3回の断続音」、「2回の断続音」、「1回の断続音」のそれぞれ、1回目の音が本願発明1?4の「第1音」に、2回目以降の音が、本願の「第2音」に相当する。なお、「1回の断続音」においては、「第2音」の音数が0ということになる。)

すると、本願発明1、2、4は、引用文献1に記載された発明である。

3 特許法第29条第2項について
本願発明2?4について
また、本願発明2の「第2音」の「音階」、「音量」を変化させることは、引用文献2(特に、段落【0035】参照)に記載されており、本願発明3の「音階」、「音量」を変化させる際に、連続的に変化させることは、適宜設計しうることにすぎない。
また、本願発明4の「血液酸素飽和度」については、引用文献2(特に、段落【0041】参照)に記載されている。

すると、本願発明2、3、4は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 新規性進歩性について
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1-ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、炭酸ガス測定の際、炭酸ガス濃度に応じた音を報知する炭酸ガス濃度測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、交通事故等の医療救急現場では、患者の呼吸ガスの濃度を測定するため炭酸ガス濃度測定装置が使用されている。救急現場では電源の都合から電池を使用した携帯用の測定装置が要求される。従来の炭酸ガス濃度測定装置は、濃度表示手段としてLED等の発光素子を使用したバーグラフ表示装置を使用し、患者の呼気時の炭酸ガス濃度に応じてバーの長さが変化するように構成されている。このバーグラフ表示装置の側部には炭酸ガス濃度を表す数値が付記され、呼気時の炭酸ガス濃度を判読できるようになっている
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、緊急を要する事故現場は昼夜或いは場所を問わず発生する。バーグラフ表示装置では、例えば明るい昼間時ではバーグラフの表示が見にくく、夜間ではバーグラフの表示は鮮明になるが、側部に付記された数値を読み取ることができないため、バーグラフ表示のみでは患者の呼気時の炭酸ガス濃度が正確に把握できない不都合があった。従って、本発明は上記課題に鑑み、炭酸ガス濃度に応じた音を報知させることができる炭酸ガス濃度測定装置を提供することを目的とする。」

(1-イ)「【0012】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の炭酸ガス濃度測定装置の実施例について説明する。図1は、本発明の一実施例の構成を示すブロック図である。図2は、図1の実施例の処理を示すフローチャートである。図3は、炭酸ガス濃度波形図で、呼気毎に検出されるピーク点を示している。図4は、図1の実施例による4種の報知例を示す。
・・・
【0016】7は炭酸ガス濃度演算部で、CPUから成る制御部8、RAM9及びROM10から構成され、ROM10に予め記憶された制御プログラムに基づき、赤外線センサ3の出力電圧のドリフト補正及び感度補正をして炭酸ガス濃度の演算を行い、算定された炭酸ガス濃度に対応した濃度信号のピーク値を呼気毎に検出する。RAM9は、設定データや処理データ等を一時的に記憶する。また、炭酸ガス濃度演算部7は、ROM10の制御プログラムに予め定められた炭酸ガス濃度の複数の範囲と算定された炭酸ガス濃度との比較結果に基づいて、後述する音表示部12に制御信号を送出する。
・・・
【0018】12は、例えばブザー或いはスピーカ等の音響素子から成る音表示部で、炭酸ガス濃度演算部7から出力される炭酸ガス濃度に応じた制御信号により呼気毎に音を報知する。」

(1-ウ)「【0020】図2に示すフローチャート及び図4に示す報知例に基づき、上記構成の報知処理について説明する。最初に電源をオンにして装置の初期化を行う(ステップS1)。
【0021】濃度信号検出部1は、通気管Tを流通する呼吸ガスに光源2から赤外線を透過させ、含まれる炭酸ガスの濃度に応じた光を赤外線センサ3により検出して濃度信号を出力する(ステップS2)。濃度信号は、増幅器5及びアナログ-デジタル変換器6を介して炭酸ガス濃度演算部7に取り込まれ、炭酸ガス濃度の算定が行われる(ステップS3)。
【0022】呼気時の炭酸ガス濃度を算定する際に、炭酸ガス濃度のピーク点を各呼気毎に検出する(ステップS4)。この場合、図3に示すように、制御部8により算定された炭酸ガス濃度からピーク点P1及びP2が夫々呼気毎に検出される。
【0023】制御部8は、炭酸ガス濃度が20mmHgを越えた場合(ステップS5)、報知1の制御信号を音表示部12に出力し、図4Aに示す断続音を発生させる。この報知1では、例えば持続期間及び間隔が夫々50msの3回の断続音を呼気毎に発生する。
【0024】炭酸ガス濃度が10mmHgを越え20mmHg以下の場合(ステップS6)、制御部6は報知2の制御信号を音表示部12に出力し、図4Bに示す断続音を発生させる。この報知2の断続音は、例えば持続期間及び間隔が夫々50msの2回の断続音を呼気毎に発生する。
【0025】炭酸ガス濃度が5mmHgを越え10mmHg以下の場合(ステップS7)、制御部6は報知3の制御信号を音表示部12に出力し、図4Cに示す音を発生させる。この報知3の音は、呼気毎に、例えば持続期間が50msの単音を1回、呼気毎に発生する。
【0026】上記ステップSS5?S7の各濃度判定において、それらの範囲にないと判定された場合、下位のステップに夫々移行する。
【0027】炭酸ガス濃度が5mmHg以下に低下した危険な状態の場合(ステップS8)、その継続時間例えば30秒を越えたか否か判定し(ステップS9)、30秒以上続いた場合、無呼吸状態として、制御部8は報知4の制御信号を音表示部12に出力し、図4Dに示す音を発生させる。この報知4では、800msの周期で持続期間及び間隔が50msの音を2回ずつ発生させ、緊急状態であることを報知する。
【0028】ステップS8において、炭酸ガス濃度が5mmHg以下でないと判定された場合、ステップS2に戻り上記処理を繰り返す。また、ステップS9において、炭酸ガス濃度が5mmHg以下の状態が30秒に満たない場合、ステップS2に戻り上記処理を繰り返す。
【0029】また、ステップS3において算定された炭酸ガス濃度データは、光表示部13に出力され、呼吸時の炭酸ガス濃度を、従来と同様に、濃度に応じて伸縮するバーグラフとして常時表示する。
【0030】従って、本例では、炭酸ガス濃度の変動に応じて呼気時の断続音の回数も変化するので、炭酸ガス濃度の判別が可能となる。」

(1-エ)


(1-オ)


(1-カ)


(1-キ)図4



(2)引用発明
(2-ア)上記(1-ウ)の「【0022】呼気時の炭酸ガス濃度を算定する際に、炭酸ガス濃度のピーク点を各呼気毎に検出する(ステップS4)。この場合、図3に示すように、制御部8により算定された炭酸ガス濃度からピーク点P1及びP2が夫々呼気毎に検出される。」との記載と図2、3において、ここでの濃度が各呼気の炭酸ガス濃度のピーク点での値を示しているといえることから、引用文献の段落【0023】?【0026】のステップS5?S7において比較に用いる「炭酸ガス濃度」は、段落【0022】のステップ4において検出した「炭酸ガス濃度のピーク点」であることは明らかである。

(2-イ)上記(1-ア)?(1-エ)及び(2-ア)の記載を踏まえれば、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「通気管Tを流通する呼吸ガスに光源2から赤外線を透過させ、含まれる炭酸ガスの濃度に応じた光を赤外線センサ3により検出して濃度信号を出力する濃度信号検出部1と、
濃度信号が、増幅器5及びアナログ-デジタル変換器6を介して取り込まれ、炭酸ガス濃度の算定が行われ、炭酸ガス濃度のピーク点を各呼気毎に検出し、
予め定められた炭酸ガス濃度のピーク点の複数の範囲と算定された炭酸ガス濃度のピーク点との比較結果に基づいて音表示部12に制御信号を送出する炭酸ガス濃度演算部7と、
炭酸ガス濃度のピーク点に応じた制御信号により呼気毎に音を報知する音表示部12とを備え、
炭酸ガス濃度のピーク点が20mmHgを越えた場合、(ステップS5)、持続期間及び間隔が夫々50msの3回の断続音を呼気毎に発生させる報知1の制御信号を音表示部12に出力し、
炭酸ガス濃度のピーク点が10mmHgを越え20mmHg以下の場合(ステップS6)、持続期間及び間隔が夫々50msの2回の断続音を呼気毎に発生させる報知2の制御信号を音表示部12に出力し、
炭酸ガス濃度のピーク点が5mmHgを越え10mmHg以下の場合(ステップS7)、持続期間が50msの単音を1回、呼気毎に発生させる報知3の制御信号を音表示部12に出力する、
炭酸ガス濃度測定装置。」

(3)引用文献2の記載
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2-ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生体情報を表す値が逐次測定される毎にその生体情報の値の変化方向を報知する生体情報値変化方向報知装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】手術中や手術後などにおいて患者の容態を監視するために、その患者の生体情報を表す値(たとえば血圧値)を所定の測定間隔で逐次測定し且つ表示することが行われている。この場合において、測定された生体情報の値が異常である場合には、通常、所定の警報が発せられるようになっている。」

(2-イ)「【0009】
【発明の効果】したがって、生体情報値が測定される毎に出力される第1音およびそれに続く第2音に基づいてその第1音を基準として第2音の変化を容易かつ確実に聴取し得るため、医師や看護婦等は、逐次表示される生体情報値を一々見なくても、聴覚にて生体情報値の変化方向を容易かつ確実に認識し得て患者の容態の変化を早期に把握することができる一方、それに伴って患者に対する手術や処置等の作業に一層集中することができる。」

(2-ウ)「【0014】図1は、本発明の生体情報値変化方向報知装置を備えた血圧モニタ装置の構成の一例を示すブロック線図である。この血圧モニタ装置は、たとえば、手術中や手術後の患者の容態を監視するために用いられる。図1において、10は患者の上腕部等に巻回された状態で装着されるゴム製かつ袋状のカフである。カフ10には、圧力センサ12,切換弁14,および空気ポンプ16が配管18を介してそれぞれ接続されている。切換弁14は、カフ10内への圧力の供給を許容する圧力供給状態と、カフ10内を徐々に排圧する徐速排圧状態と、カフ10内を急速に排圧する急速排圧状態とに切り換えられるようになっている。圧力センサ12は、カフ10内の圧力を検出してその圧力を表す圧力信号SPを静圧弁別回路20および脈波弁別回路22にそれぞれ供給する。静圧弁別回路20は、ローパスフィルタを備えており、圧力信号SPに含まれる静圧成分を弁別してその静圧成分(以下、カフ圧Pという)を表すカフ圧信号SKをA/D変換器24を介してCPU26へ供給する。脈波弁別回路22は、バンドパスフィルタを備えており、圧力信号SPに含まれる脈波成分を弁別して脈波を表す脈波信号SMをA/D変換器28を介してCPU26へ供給する。
【0015】上記CPU26は、データバスラインを介してROM30,RAM32,表示器34,および出力インタフェース36と連結されており、ROM30に予め記憶されたプログラムに従ってRAM32の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行し、出力インタフェース36から図示しない駆動回路へ駆動信号SD_(1) ,SD_(2)を出力して切換弁14および空気ポンプ16を制御することによりカフ圧Pを調節し、そのカフ圧Pのたとえば徐速降圧過程で逐次得られる脈波信号SMが表す脈波に基づいて最高血圧値SYSおよび最低血圧値DIAなどの血圧値を決定してその決定した血圧値を表示器34に表示させ、かかる血圧測定を予め定められた一定時間毎に繰り返す。
【0016】また、上記CPU26は、ROM30に予め記憶されたプログラムに従って、たとえば、前回測定された最高血圧値SYS_(-1)と今回測定された最高血圧値SYS_(0) との間の血圧値差ΔSYSを逐次算出して、その血圧値差ΔSYSが予め定められた範囲を外れたか否かを判断するとともに、前回の最高血圧値SYS_(-1)に対する今回の最高血圧値SYS_(0) の変化方向を決定する。
【0017】上記出力インタフェース36には、駆動回路38を介して切換スイッチ40が接続されており、この切換スイッチ40には、第1チャイム42,第2チャイム44,第3チャイム46,および警報ブザー48が並列的に接続されている。切換スイッチ40は、後述の切換信号SCに従って切り換えられることにより、駆動回路38を第1チャイム42,第2チャイム44,第3チャイム46,および警報ブザー48の何れかに接続する。
【0018】ここで、たとえば図2に示すように、上記第1チャイム42は、高さすなわち周波数が互いに略同一である比較的短い第1音およびそれに続く比較的長い第2音を出力するものである。また、上記第2チャイム44は、比較的短い第1音およびそれに続く比較的長く且つその第1音より高い第2音を出力するものである。また、上記第3チャイム46は、比較的短い第1音およびそれに続く比較的長く且つその第1音より低い第2音を出力するものである。
【0019】上記CPU26は、ROM30に予め記憶されたプログラムに従って、血圧測定が終了する毎に出力インタフェース36から所定の切換信号SCを切換スイッチ40に出力して、前記血圧値差ΔSYSが前記予め定められた範囲を外れていない場合には切換スイッチ40を駆動回路38と第1チャイム42とを接続する位置に、上記範囲を外れている場合であって且つ最高血圧値SYSの変化方向が増大方向である場合には切換スイッチ40を駆動回路38と第2チャイム44とを接続する位置に、上記範囲を外れている場合であって且つ最高血圧値SYSの変化方向が減少方向である場合には切換スイッチ40を駆動回路38と第3チャイム46とを接続する位置にそれぞれ切り換えた後、出力インタフェース36から駆動信号SD_(3)を出力してそれらチャイム42,44,46を択一的に駆動する。また、CPU26は、ROM30に予め記憶されたプログラムに従って、最高血圧値SYSが予め定められた警報出力判定値に達したか否かを判断し、達した場合には、所定の切換信号SCを切換スイッチ40に出力してその切換スイッチ40を駆動回路38と警報ブザー48とを接続する位置に切り換えた後に駆動信号SD_(3)を出力することにより、警報ブザー48を駆動する。本実施例においては、上記チャイム42,44,46が音出力装置を構成する。
・・・
【0035】また、前記実施例では、チャイム42,44,46は第1音に対する第2音の高さを変化させることにより血圧変化方向を報知するように構成されているが、必ずしもその必要はなく、たとえば、第1音に対する第2音の強さ(大きさ)を変化させることにより血圧変化方向を報知することもできる。」

(2-エ)図2



2 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「炭酸ガス濃度演算部7」は、「通気管Tを流通する呼吸ガスに光源2から赤外線を透過させ、含まれる炭酸ガスの濃度に応じた光を赤外線センサ3により検出」された「濃度信号が、増幅器5及びアナログ-デジタル変換器6を介して取り込まれ、炭酸ガス濃度の算定が行われ、炭酸ガス濃度のピーク点を各呼気毎に検出」するものである。
そして、引用発明の「呼気毎に検出」する「炭酸ガス濃度のピーク点」は、本願発明1の「被検者の呼気ごとに」「取得する」「呼気終末二酸化炭素濃度」に相当する。
そうすると、引用発明の「炭酸ガス濃度のピーク点を各呼気毎に検出」する「炭酸ガス濃度演算部7」は、本願発明1の「被検者の呼気ごとに呼気終末二酸化炭素濃度の測定値を取得する測定部」に相当する。

(2)引用発明の「炭酸ガス濃度のピーク点に応じた制御信号により呼気毎に音を報知する音表示部12」は、「検出し」た「炭酸ガス濃度のピーク点」の「予め定められた炭酸ガス濃度のピーク点の複数の範囲」「との比較結果に基づいて」「送出」された「制御信号により」「呼気毎に音を報知する」ものであり、「呼気毎の音」は、それぞれ、一単位の音といえる。
そうすると、引用発明の「炭酸ガス濃度のピーク点に応じた制御信号により呼気毎に音を報知する音表示部12」と、
本願発明1の「前記測定値に基づいて、少なくとも第1音と第2音を含む音声を一単位として出力する音声出力部」とは、
「前記測定値に基づいて、音声を一単位として出力する音声出力部」の点で共通する。

(3)本願発明1の「前記第2音を前記第1音に後続して出力させ、かつ前記測定値が正常範囲外である場合に前記第2音の音階を変化させる音声制御部」は、「測定値」が「正常範囲」内と「正常範囲外」とで、第2音の音階を変化させるものであるといえる。
そうすると、引用発明の「予め定められた炭酸ガス濃度のピーク点の複数の範囲と算定された炭酸ガス濃度のピーク点との比較結果に基づいて音表示部12に制御信号を送出する」ものであり、「炭酸ガス濃度のピーク点が20mmHgを越えた場合、(ステップS5)、持続期間及び間隔が夫々50msの3回の断続音を呼気毎に発生させる報知1の制御信号を音表示部12に出力し、
炭酸ガス濃度のピーク点が10mmHgを越え20mmHg以下の場合(ステップS6)、持続期間及び間隔が夫々50msの2回の断続音を呼気毎に発生させる報知2の制御信号を音表示部12に出力し、
炭酸ガス濃度のピーク点が5mmHgを越え10mmHg以下の場合(ステップS7)、持続期間が50msの単音を1回、呼気毎に発生させる報知3の制御信号を音表示部12に出力する」「炭酸ガス濃度演算部7」と、
本願発明1の「前記第2音を前記第1音に後続して出力させ、かつ前記測定値が正常範囲外である場合に前記第2音の音階を変化させる音声制御部」とは、
「音声を出力させ、かつ前記測定値がどの範囲であるかにより音声を変化させる音声制御部」の点で共通する。

(4)引用発明の「炭酸ガス濃度測定装置」は、「炭酸ガス濃度演算部7と」、「音表示部12とを備え」、「通気管Tを流通する呼吸ガス」の「炭酸ガスの濃度」から、「呼気毎に音を報知する」のであるから、本願発明1の「生体情報モニタ」に相当する。

3 一致点
以上のことから、両者は、
「被検者の呼気ごとに呼気終末二酸化炭素濃度の測定値を取得する測定部と、
前記測定値に基づいて、音声を一単位として出力する音声出力部と、
音声を出力させ、かつ前記測定値がどの範囲であるかにより音声を変化させる音声制御部とを備える、生体情報モニタ。」
で一致し、次の点で相違する。

4 相違点
出力させる一単位の音声について、本願発明1では、「少なくとも第1音と第2音を含む音声」であって「前記第2音を前記第1音に後続して出力させ」るもので、「前記測定値が正常範囲外である場合に前記第2音の音階を変化させる」のに対して、
引用発明では、「炭酸ガス濃度のピーク点が20mmHgを越えた場合、(ステップS5)、持続期間及び間隔が夫々50msの3回の断続音」、「炭酸ガス濃度のピーク点が10mmHgを越え20mmHg以下の場合(ステップS6)、持続期間及び間隔が夫々50msの2回の断続音」、「炭酸ガス濃度のピーク点が5mmHgを越え10mmHg以下の場合(ステップS7)、持続期間が50msの単音を1回」出力する点。

5 判断
(1)相違点について
引用文献2には、前回測定された最高血圧値と今回測定された最高血圧値との間の血圧値差を予め定められた範囲と比較した結果、予め定められた範囲内の値、予め定められた範囲より大きな値、予め定められた範囲より小さな値の3つの場合について、それぞれ、比較的短い第1音およびそれに続く比較的長い第2音であって、高さが互いに略同一である「第1チャイム42」、第1音より高い第2音を出力する「第2チャイム44」、及び第1音より低い第2音を出力する「第3チャイム46」と変化させる技術事項、すなわち、第1音およびそれに続く比較的長い第2音からなる一単位の音声を、第1音に対する第2音の高さが、同じ高さ、高い及び低い3種類に変化させて報知するという技術事項が記載されている。

そして、連続した3つの範囲の何れの範囲の値であるのかを判別できる一単位の音声で表現する手段として、引用発明の断続音の回数で3つの範囲の値を区別する手段の他に、引用文献2により第1音およびそれに続く第2音の高さを変えることで3つの範囲の値を区別する手段が公知であるところ、引用発明の手段に代えて引用文献2に記載された手段を採用することは、当業者が容易に想到するものである。
また、医療現場において、生体情報に正常範囲が設定されることは普通に行われることであって、引用発明の3つの範囲の何れかに正常範囲を割り当てることは、当業者が適宜なし得ることである。

(2)効果について
このように構成したことによる作用効果は、当業者の予測の範囲を超えるものではない。
なお、請求人は、平成30年11月7日付け意見書で、本願発明について、「ユーザの絶対音感に依存することなく迅速に認識可能にする」という効果を主張するが、引用発明及び引用文献2に記載された手段は、何れもユーザの絶対音感に依存することなく迅速に認識可能なものである。

(3)平成30年11月7日付け意見書での引用発明についての主張について
請求人は、意見書の「(4)拒絶理由を解消している旨の説明」「(4-3)理由3について」「(4-3-2)本願発明と引用文献に記載された発明の対比」において、「引用文献1の図6に記載された実施形態におきましては、呼気毎に算出された炭酸ガス濃度に応じて、出力される音の周波数(音階)が変化しますが、出力されるのは、あくまで単音です。」として、その後の意見を述べて「(4-3-3)小括・・・したがいまして、補正後の特許請求の範囲における請求項1に記載された発明は、引用文献に記載された発明ではなく、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易になしうるものでもないので、特許法第29条第1項第3号および同条第2項の規定に該当しません。」と主張している。
しかし、当審拒絶理由の「引用文献1に記載された発明の「呼気時の炭酸ガス濃度のピーク点」が20mmHgを越えた場合に3回の断続音を、10mmHgを越え20mmHg以下の場合に2回の断続音を、5mmHgを越え10mmHg以下の場合に1回の断続音を発生すること」との記載は、引用文献1の段落【0023】?【0025】及び図4に基づくことは明らかである。
そうすると、請求人の上記主張は、拒絶理由が対象にしていない実施例に基づいた主張であるので、失当である。

6 結論
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-10 
結審通知日 2018-12-11 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2013-124685(P2013-124685)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 隆一  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 信田 昌男
三木 隆
発明の名称 生体情報モニタ  
代理人 特許業務法人 信栄特許事務所  

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