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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F03D
管理番号 1349167
審判番号 不服2017-19376  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-27 
確定日 2019-02-14 
事件の表示 特願2014- 5372「風力発電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開,特開2015-132245〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年 1月15日の出願であって,平成29年 9月25日付けで拒絶査定がなされ,この査定を不服として,平成29年12月27日に本件拒絶査定不服審判が請求されると同時に,手続補正がなされた。
そして,平成30年 9月 4日付けで当審において拒絶理由が通知され,その応答期間内である平成30年11月 1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたところである。

第2 本願発明
この出願の請求項1?13に係る発明は,平成30年11月 1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
【請求項1】
「地上または洋上に設置され,発電機の支柱となるタワーと,
前記タワー上に設けられ,前記発電機を内蔵するナセルと,
前記ナセルの一端に設けられ,風を受けて回転エネルギーへ変換するハブおよびブレードからなるロータと,を有する風力発電装置であって,
前記ブレードの先端部近傍のみに設けられ,落雷時に落雷を受容する受雷部と,
前記ブレードの先端部近傍に設けられ,かつ前記受雷部から後縁側のみに延在するように前記ブレードの表面に設けられ,前記受雷部と電気的に接続された前記受雷部とは異なる金属箔と,
を備え,
前記金属箔は,前記ブレードの回転に伴い雷電流が引きずられることによる当該ブレードへのダメージを抑えることを特徴とする風力発電装置。」

第3 拒絶の理由
平成30年 9月 4日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は,次のとおりのものである。
本件出願の請求項1?13に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献1?4に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2012-246815号公報
引用文献2:国際公開2011/077970号
引用文献3:国際公開2013/084634号
引用文献4:米国特許出願公開第2011/0142643号明細書

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載
引用文献1には,「風力発電用ブレード」に関し,以下の事項が記載されている(特に,当審により本願発明に関連する事項に下線を付した。)。
・「【技術分野】
【0001】
この発明は,ブレード本体に設けた主要強度部材への雷撃損傷を抑制する風力発電用ブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電所は,強い風が安定して吹く,いわゆる風況の良い地域に建設されることが好ましいが,このような地域は,周辺に高い山や木々が存在しない,開けた土地であることが多い。また,近年では平地の好適地が限られつつあるため,山岳地域に風力発電所を建設する例もみられる。このような開けた土地や,山岳地域にブレード先端高さが100m前後に及ぶ風車を建設した場合,雷撃を受けやすくなるのは自明であり,実際に毎年多数の風車が落雷被害をこうむっている。特に落雷の被害を受けやすいのが,形状的に電界が集中しやすく,雷雲との距離も短いブレードである。落雷によってブレードが大きな損傷を受けると,その修復に多大な時間とコストがかかる場合が多い。」
・「【0035】
(実施形態1)
以下に,本発明の一実施形態を図1,2に基づいて説明する。
図1は,風力発電用ブレード1の全体を示すものであり,図2は,ブレード本体1aについて長手方向と直交する断面図である。
風力発電用ブレード1は,全体形状を形成し,FRPで構成された中空のブレード本体1aを有している。該ブレード本体1aは,表裏のプレッシャーサイド6とサクションサイド7によってフラップ面が形成され,長手方向両端にリーディングエッジ4,トレーリングエッジ5が位置している。
・・・
【0037】
上記形状のブレード本体1aには,先端に金属製先端受雷部2が設けられている。金属製先端受雷部2は,アルミニウム,銅,タングステン,ニッケル,チタン,ステンレス,あるいはこれらの合金で構成されている。先端受雷部2とブレード本体1aとは表面が面一に形成されている。先端受雷部2には,LE側ダウンコンダクタ31が接続されており,LE側ダウンコンダクタ31は,先端受雷部2に電気的に接続し,ブレード本体1aの根元まで配線した後,図示しないハブ,ナセル,タワー等を経由し,接地している。LE側ダウンコンダクタ31は十分大きな断面積を有した導線により構成することで,人身傷害や機器損傷を伴わずに雷撃電流をアースに流すことができる。ただし,LE側ダウンコンダクタ31は,ブレード本体1a内の中空部で,リーディングエッジ4に近接して配設されている。したがって,LE側ダウンコンダクタ31は,リーディングエッジ4と主要強度部材8との間で,リーディングエッジ4側に寄せて位置している。
【0038】
次に,上記実施形態の風力発電用ブレード1の動作について説明する。風力発電用ブレード1は,プレッシャーサイド6を正圧面,サクションサイド7を負圧面として,風を受けて回転する。この際に,ブレード本体1aは,主要強度部材8によって,折り曲げ応力に対する強度が高められている。この風力発電用ブレード1に対し,落雷があると雷撃が先端受雷部2に誘導される場合がある。この場合,先端受雷部2で受雷し,雷撃電流は,LE側ダウンコンダクタ31さらにアースへと流れて先端受雷部2近傍のブレード本体1aや主要強度部材8の損傷が防止される。」
・「【0058】
(実施形態5)
次に,他の実施形態を図10,11に基づいて説明する。なお,前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付しており,必要に応じて省略または簡略化する。
図10は,風力発電用ブレード1の全体を示すものであり,図11は,ブレード本体1aについて長手方向と直交する断面図である。
風力発電用ブレード1は,中空のブレード本体1aを有し,該ブレード本体1aは,プレッシャーサイド6とサクションサイド7によってフラップ面が形成され,長手方向両端にリーディングエッジ4,トレーリングエッジ5が位置している。」
・「【0060】
上記形状のブレード本体1aには,先端に前記実施形態と同様に金属製先端受雷部2が設けられている。金属製先端受雷部2は,アルミニウム,銅,タングステン,ニッケル,チタン,ステンレス,あるいはこれらの合金で構成されている。先端受雷部2には,TE側ダウンコンダクタ32が接続されており,TE側ダウンコンダクタ32は,先端受雷部2に電気的に接続し,ブレード本体1aの根元まで配線した後,図示しないハブ,ナセル,タワー等を経由し,接地している。TE側ダウンコンダクタ32は十分大きな断面積を有した導線により構成することで,人身傷害や機器損傷を伴わずに雷撃電流をアースに流すことができる。ただし,TE側ダウンコンダクタ32は,ブレード本体1a内の中空部で,トレーリングエッジ5に近接して配設されている。したがって,TE側ダウンコンダクタ32は,トレーリングエッジ5と主要強度部材8との間で,トレーリングエッジ5側に位置している。
【0061】
また,TE側ダウンコンダクタ32を厚さ方向で挟むプレッシャーサイド6とサクションサイド7の外表面には,TE側ダウンコンダクタ32が厚さ方向でプレッシャーサイド6とサクションサイド7に投影される投影線から,主要強度部材8側に0.1m?2mの距離でオフセットした位置までTE側導電性材料102が被覆されている。TE側導電性材料102は,上記オフセット位置からトレーリングエッジ5に至り,トレーリングエッジ5を覆いつつ互いに連続している。また,TE側導電性材料102は,ブレード長全体に亘って上記範囲で被覆されている。
【0062】
TE側導電性材料102は,アルミニウム,銅,タングステン,ニッケル,チタン,ステンレス,あるいはこれらの合金で構成されている。TE側導電性材料102は,金属メッシュ,金属箔,金属メッキ,金属溶射,導電性塗料などの形態で被覆がなされるが,本発明としては特定の方法に限定されるものではない。被覆は,好適には0.1mm以上10mm以下の範囲で行われる。
【0063】
この実施形態でも,TE側導電性材料102に誘導される雷撃は,TE側導電性材料102で受雷され,雷撃電流はTE側導電性材料102および先端受雷部2を介してTE側ダウンコンダクタ32に流れ,さらにはアースに流れてブレード本体1aや主要強度部材8に対する損傷を防止する。」
・「【0064】
(実施形態6)
次に,他の実施形態を図12,13に基づいて説明する。なお,前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付しており,必要に応じて省略または簡略化する。
図12は,風力発電用ブレード1の全体を示すものであり,図13は,ブレード本体1aについて長手方向と直交する断面図である。
【0065】
風力発電用ブレード1は,中空のブレード本体1aを有し,該ブレード本体1aは,プレッシャーサイド6とサクションサイド7によってフラップ面が形成され,長手方向両端にリーディングエッジ4,トレーリングエッジ5が位置している。
【0066】
また,ブレード本体1aには主要強度部材8が設けられている。主要強度部材8は,プレッシャーサイド6内面に沿った形状のPS側ガーダー81とサクションサイド7内面に沿った形状のSS側ガーダー82と,PS側ガーダー81とSS側ガーダー82との間に介設したスティフナ9とを有している。
【0067】
上記形状のブレード本体1aには,先端に金属製先端受雷部2が設けられている。金属製先端受雷部2は,アルミニウム,銅,タングステン,ニッケル,チタン,ステンレス,あるいはこれらの合金で構成されている。先端受雷部2には,二系統のLE側ダウンコンダクタ31,TE側ダウンコンダクタ32が接続されており,LE側ダウンコンダクタ31,TE側ダウンコンダクタ32は,先端受雷部2に電気的に接続し,ブレード本体1aの根元まで配線した後,図示しないハブ,ナセル,タワー等を経由し,接地している。
LE側ダウンコンダクタ31,TE側ダウンコンダクタ32は十分大きな断面積を有した導線により構成することで,人身傷害や機器損傷を伴わずに雷撃電流をアースに流すことができる。
【0068】
ただし,LE側ダウンコンダクタ31は,ブレード本体1a内の中空部で,リーディングエッジ4に近接して配設されている。したがって,LE側ダウンコンダクタ31は,リーディングエッジ4と主要強度部材8との間で,リーディングエッジ4側に寄せて位置している。
TE側ダウンコンダクタ32は,ブレード本体1a内の中空部で,トレーリングエッジ5に近接して配設されている。したがって,TE側ダウンコンダクタ32は,トレーリングエッジ5と主要強度部材8との間で,トレーリングエッジ5側に寄せて位置している。
【0069】
また,LE側ダウンコンダクタ31を厚さ方向で挟むプレッシャーサイド6とサクションサイド7の外表面には,LE側ダウンコンダクタ31が厚さ方向でプレッシャーサイド6とサクションサイド7に投影される投影線から,主要強度部材8側に0.1m?2mの距離でオフセットした位置までLE側導電性材料101が被覆されている。プレッシャーサイド6及びサクションサイド7側のLE側導電性材料101は,リーディングエッジ4にまで達してリーディングエッジ4の外表面を覆い,互いに連続している。
また,LE側導電性材料101は,ブレード長全体に亘って上記範囲で被覆されている。
【0070】
LE側導電性材料101は,アルミニウム,銅,タングステン,ニッケル,チタン,ステンレス,あるいはこれらの合金で構成されている。LE側導電性材料101は,金属メッシュ,金属箔,金属メッキ,金属溶射,導電性塗料などの形態で被覆がなされるが,本発明としては特定の方法に限定されるものではない。被覆は,好適には0.1mm以上10mm以下の範囲で行われる。
【0071】
また,TE側ダウンコンダクタ32を厚さ方向で挟むプレッシャーサイド6とサクションサイド7の外表面には,TE側ダウンコンダクタ32が厚さ方向でプレッシャーサイド6とサクションサイド7に投影される投影線から,主要強度部材8側に0.1m?2mの距離でオフセットした位置までTE側導電性材料102が被覆されている。TE側導電性材料102は,上記オフセット位置からトレーリングエッジ5を覆って互いに連続している。また,TE側導電性材料102は,ブレード長全体に亘って上記範囲で被覆されている。
【0072】
TE側導電性材料102は,アルミニウム,銅,タングステン,ニッケル,チタン,ステンレス,あるいはこれらの合金で構成されている。TE側導電性材料102は,金属メッシュ,金属箔,金属メッキ,金属溶射,導電性塗料などの形態で被覆がなされるが,本発明としては特定の方法に限定されるものではない。被覆は,好適には0.1mm以上10mm以下の範囲で行われる。
【0073】
この実施形態では,LE側ダウンコンダクタ31,TE側ダウンコンダクタ32によってダウンコンダクタを二系統有しており,各系統がリーディングエッジ側とトレーリングエッジ側とに寄せて配置されている。したがって,いずれのダウンコンダクタによって雷撃が誘導されたとしても,それぞれに対してそれぞれ形成したLE側導電性材料101,TE側導電性材料102によって効果的に受雷し,ブレード本体1aや主要強度部材9に損傷が生じるのを抑制できる。」
・「【0074】
(実施形態7)
次に他の実施形態を図14に基づいて説明する。なお,前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付しており,必要に応じて省略または簡略化する。
図14は,風力発電用ブレード1の全体を示すものである。この実施形態7は,実施形態6の変更例であり,以下に説明する。
【0075】
上記各実施形態4?6では,導電性材料は,ブレード本体1aのブレード長に亘って全体に形成されている。実施形態7では,LE側導電性材料101,TE側導電性材料102をブレード本体1aのブレード長の一部において被覆している。
すなわち,先端受雷部2を含むブレード本体1aの先端からブレード長の1/10?1/2に至る範囲でLE側導電性材料101,TE側導電性材料102を被覆している。の際のリーディングエッジ4またはトレーリングエッジ5から主要強度部材8側に至る範囲は,前記実施形態と同様に投影線から0.1m?2mオフセットした位置までとする。
【0076】
この実施形態7では,LE側導電性材料101,TE側導電性材料102の長さを短くしているが,雷撃を受けやすい範囲に限ってLE側導電性材料101,TE側導電性材料102の被覆を行っており,雷撃によるブレード本体1aや主要強度部材8の損傷抑制効果は同等に得られる。しかも,LE側導電性材料101,TE側導電性材料102の被覆量を減らせるので,ブレード長の全長に亘って導電性材料を被覆するものよりもブレードの重量を小さくすることができる。
【0077】
なお,この実施形態では,ダウンコンダクタを二系統有するものについて説明した。ダウンコンダクタを一系統で有するものについても同様にLE側導電性材料101またはTE側導電性材料102の長さを制限することができる。また,二系統のダウンコンダクタを有する場合,一方のダウンコンダクタ側の導電性材料の長さを制限し,他方のダウンコンダクタ側の導電性材料をブレード長の全長に亘って被覆するものであってもよい。また,二系統のダウンコンダクタを有する場合,両方のダウンコンダクタ側の導電性材料の長さを制限し,それぞれの導電性材料長さを異なるようにしてもよい。」

実施形態5においても段落【0060】の下線部に記載されるように,実施形態1の段落【0037】の下線部の記載と同様に金属製先端受雷部2が構成されているから,実施形態1の段落【0038】の下線部の記載と同様に,金属製先端受雷部2は落雷があると雷撃を誘導して受雷することが理解できる。
段落【0061】の下線部の記載事項と,図10,図11の図示内容からみて,金属製先端受雷部2からトレーリングエッジ5側のみに延在するようにブレード本体1aの表面に設けられたTE側導電性材料102が理解できる。
また,段落【0062】,【0063】の下線部の記載事項と図10の図示内容からみて,TE側導電性材料102は,金属製先端受雷部2と電気的に接続された前記金属製先端受雷部2とは異なる金属箔であることが理解できる。

2.引用発明
そうすると,実施形態5を有する風力発電所には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「タワーと,
ナセルと,
ハブおよび風力発電用ブレード1と,を有する風力発電所であって,
前記風力発電用ブレード1のブレード本体1aの先端に設けられ,落雷があると雷撃を誘導して受雷する金属製先端受雷部2と,
ブレード長全体に亘って形成されており,前記金属製先端受雷部2からトレーリングエッジ5側のみに延在するようにブレード本体1aの表面に設けられ,金属製先端受雷部2と電気的に接続された前記金属製先端受雷部2とは異なる金属箔であるTE側導電性材料102と,
を備える,風力発電所。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「風力発電用ブレード1」及び「ブレード本体1a」は前者の「ブレード」に相当し,以下同様に,「金属製先端受雷部2」は「受雷部」に,「トレーリングエッジ5側」は「後縁側」に,それぞれ相当する。
そして,後者の「風力発電所」は風力発電を行う所であるから,前者の「風力発電装置」に相当し,後者の「タワーと,ナセルと,ハブおよび風力発電用ブレード1と,を有する風力発電所」は,技術常識を踏まえると,前者の「地上または洋上に設置され,発電機の支柱となるタワーと,前記タワー上に設けられ,前記発電機を内蔵するナセルと,前記ナセルの一端に設けられ,風を受けて回転エネルギーへ変換するハブおよびブレードからなるロータと,を有する風力発電装置」に相当する。
後者の「前記風力発電用ブレード1のブレード本体1aの先端に設けられ,落雷があると雷撃を誘導して受雷する金属製先端受雷部2」は,前者の「前記ブレードの先端部近傍のみに設けられ,落雷時に落雷を受容する受雷部」に相当する。
後者の「前記金属製先端受雷部2からトレーリングエッジ5側のみに延在するようにブレード本体1aの表面に設けられ,金属製先端受雷部2と電気的に接続された前記金属製先端受雷部2とは異なる金属箔であるTE側導電性材料102」と,前者の「前記ブレードの先端部近傍に設けられ,かつ前記受雷部から後縁側のみに延在するように前記ブレードの表面に設けられ,前記受雷部と電気的に接続された前記受雷部とは異なる金属箔」とは「前記受雷部から後縁側のみに延在するように前記ブレードの表面に設けられ,前記受雷部と電気的に接続された前記受雷部とは異なる金属箔」において共通する。
そうすると,両者は,
「地上または洋上に設置され,発電機の支柱となるタワーと,
前記タワー上に設けられ,前記発電機を内蔵するナセルと,
前記ナセルの一端に設けられ,風を受けて回転エネルギーへ変換するハブおよびブレードからなるロータと,を有する風力発電装置であって,
前記ブレードの先端部近傍のみに設けられ,落雷時に落雷を受容する受雷部と,
前記受雷部から後縁側のみに延在するように前記ブレードの表面に設けられ,前記受雷部と電気的に接続された前記受雷部とは異なる金属箔と,
を備える,風力発電装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
<相違点>
前記受雷部と電気的に接続された前記受雷部とは異なる金属箔が,本願発明では,「前記ブレードの先端部近傍に設けられ,かつ」前記受雷部から後縁側のみに延在するように前記ブレードの表面に設けられ,「前記金属箔は,前記ブレードの回転に伴い雷電流が引きずられることによる当該ブレードへのダメージを抑える」ものであるのに対して,引用発明では,前記受雷部から後縁側のみに延在するように前記ブレードの表面に設けられているものの,ブレード長全体に亘って設けられており,前記金属箔は,前記ブレードの回転に伴い雷電流が引きずられることによる当該ブレードへのダメージを抑えるものであることが特定されていない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
引用文献1の実施形態7は,実施形態6の変更例であるが(段落【0074】参照),段落【0075】に,「上記各実施形態4?6では,導電性材料は,ブレード本体1aのブレード長に亘って全体に形成されている。実施形態7では,LE側導電性材料101,TE側導電性材料102をブレード本体1aのブレード長の一部において被覆している。」と記載されるように,引用発明である実施形態5も考慮したものであり,段落【0076】には「雷撃を受けやすい範囲に限ってLE側導電性材料101,TE側導電性材料102の被覆を行っており」と,段落【0077】には「ダウンコンダクタを一系統で有するものについても同様にLE側導電性材料101またはTE側導電性材料102の長さを制限することができる。」と,それぞれ,記載されており,実施形態5は,段落【0060】の記載及び図10,図11の図示内容を参照すると,先端受雷部2にはTE側ダウンコンダクタ32が接続されてはいるがLE側ダウンコンダクタ31は記載されておらず,ダウンコンダクタをTE側の一系統で有するものであるから,引用文献1には実施形態5においてTE側導電性材料102の長さを制限することの示唆があるといえる。
そうすると,引用発明である実施形態5において,実施形態7のブレードの重量を小さくするために,雷撃を受けやすい範囲であって,先端受雷部2を含むブレード本体1aの先端からブレード長の1/10?1/2に至る範囲でTE側導電性材料102を被覆するものを適用することにより,上記相違点における本願発明の発明特定事項である金属箔(TE側導電性材料102)を「ブレードの先端部近傍に設けられ,かつ前記受雷部から後縁側のみに延在するように前記ブレードの表面に設け」るようにすることは,当業者が容易になし得たことである。
本願明細書段落【0009】,【0010】,図8A?図8Dの記載からみて,本願発明は,雷電流が引きずられて,該雷電流が受雷部近傍であるブレードの先端部近傍を通過する際に当該部分がダメージを受けることを抑えるものであって,引用文献1には,TE側導電性材料102を雷撃を受けやすい範囲に被覆すると記載され(段落【0076】),TE側導電性材料102が被覆されている部分を雷撃が通過しようとすると,雷撃電流は,TE側導電性材料102,先端受雷部2を介してTE側ダウンコンダクタ32に流れ,ブレード本体1aに対する損傷が防止されるから(段落【0063】),引用発明である実施形態5において実施形態7の技術思想を適用したものは,「ブレードの先端部近傍のみに設けられ,落雷時に落雷を受容する受雷部と」ともに,TE側導電性材料102である金属箔を「ブレードの先端部近傍に設けられ,かつ前記受雷部から後縁側のみに延在するように前記ブレードの表面に設け」るようにすることにより,前記金属箔は,前記ブレードの回転に伴い雷電流(雷撃)が引きずられることによる当該ブレードへのダメージを抑えることになるという本願発明の発明特定事項である作用効果を自ずと奏するものといえる。
そうすると,本願発明は,引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

請求人は,平成30年11月1日付け意見書にて,引用文献1は雷撃を誘電して受雷するものであるのに対して,本願発明は,ブレードの回転に伴い雷電流が引きずられることによるダメージを抑えるものであり,これは引用文献1には記載もそれを示唆するような開示はない旨主張する。
しかしながら,上述したように,この点については,引用発明である実施形態5において引用文献1に記載された実施形態7の技術思想を適用したものである,雷撃(雷電流)を受けやすい範囲に限ってTE側導電性材料である金属箔の長さを制限したものが自ずと奏する作用効果にすぎないことから,請求人の上記主張は採用できない。
また,請求人は,「ダウンコンダクタを一系統で有するもの」の定義が不明確であり,「ダウンコンダクタを一系統で有するもの」が「TE側導電性材料102」のみを有するものであるかどうかは不明確であるから,拒絶理由通知において,「段落【0077】に『ダウンコンダクタを一系統で有するものについても同様にLE側導電性材料101またはTE側導電性材料102の長さを制限することができる。』と記載されていることから,実施形態5は,ダウンコンダクタを一系統で有するものであるから,実施形態5においてTE側導電性材料102の長さを制限することの示唆があるといえる。」と指摘した認定には,同意できない旨主張する。
しかしながら,上述したように,実施形態5は,段落【0060】の記載及び図10,図11の図示内容を参照すると,先端受雷部2にはTE側ダウンコンダクタ32が接続されてはいるがLE側ダウンコンダクタ31は記載されておらず,ダウンコンダクタをTE側の一系統で有するものといえるから,請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-05 
結審通知日 2018-12-11 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2014-5372(P2014-5372)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 浩士  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 藤井 昇
柿崎 拓
発明の名称 風力発電装置  
代理人 ポレール特許業務法人  
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