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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1349168
審判番号 不服2018-69  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-04 
確定日 2019-02-13 
事件の表示 特願2015-247895「エアゾールディスペンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月 2日出願公開、特開2016-101987〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年5月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年5月16日、米国)を国際出願日とする特願2014-511467号の一部を、平成27年12月18日に新たな特許出願としたものであって、平成28年1月18日に手続補正書が提出され、平成29年1月26日付けの拒絶理由通知に対して、平成29年6月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年8月18日付けで拒絶査定がされた。
これに対して、平成30年1月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がされたものである。

2.平成30年1月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年1月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成29年6月23日付けの手続補正の請求項1)の、
「エアゾールディスペンサを製造する方法であって、前記方法は、
第1位置において加圧された容器を提供する工程であって、前記加圧された容器は、首部を有する外側容器、そこから製品を選択的に分配するために、前記首部内に取り付けられた弁アセンブリ、前記外側容器内に製品を保持するための製品供給装置、並びに前記外側容器及び前記製品供給装置を加圧するための前記外側容器内の噴射剤を含んでいる、工程と、
前記加圧された容器を第2位置に移送する工程であって、前記第2位置は前記第1位置から離れている、工程と、
前記第2位置において、前記製品を前記製品供給装置に挿入する工程と、
前記第2位置において、前記加圧された容器に作動装置を加える工程と、
を有することを特徴とする、方法。」(以下、この発明を「本願発明」という。)を、
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の、
「エアゾールディスペンサを製造する方法であって、前記方法は、
第1位置において加圧された容器を提供する工程であって、前記加圧された容器は、首部を有する外側容器、そこから製品を選択的に分配するために、前記首部内に取り付けられた弁アセンブリ、前記外側容器内に製品を保持するための製品供給装置、並びに前記外側容器及び前記製品供給装置を加圧するための前記外側容器内の噴射剤を含んでいる、工程と、
前記加圧された容器を第2位置に移送する工程であって、前記第2位置は前記第1位置から離れている、工程と、
前記第2位置において、前記製品を前記製品供給装置に挿入する工程と、
前記第2位置において、前記加圧された容器に作動装置を加える工程と、
を有し、前記第1位置は前記第2位置より厳しい環境および安全要件を満たすことが求められることを特徴とする、方法。」(以下、この発明を「本願補正発明」という。)とする補正を含むものである。

(2)補正の適否
本件補正は、第1位置と第2位置が満たすべき環境及び安全要件について、本件補正前では特に限定のなかったものを、「前記第1位置は前記第2位置より厳しい環境および安全要件を満たすことが求められる」と限定するものであり、かつ、本願発明と本願補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)引用文献記載の発明及び技術的事項
原査定の拒絶の理由に、引用文献1として引用された、米国特許第5219005号明細書(以下、原査定と同様に「引用文献1」という。)には、「容器を製造する方法」について、以下の発明及び技術的事項が記載されている。
なお、[]内は当審で付した和訳である。

ア 「BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to containers as well as to a method for readying a container for filling and to a method for manufacturing a container.
More particularly the present invention is especially directed to a twin-chamber container of the kind comprising an outer container with a valve mounted thereon, an inner collapsible container mounted in communication with the valve, whereby the outer and the inner containers define an intermediate chamber; in some aspects the invention is also directed to single chamber containers for a pressurized product.
Further, the invention relates to a method for preparing a twin-chamber container ready to be filled with a product and to a method for manufacturing a plastic container and further to a plastic container.」
(第1欄第8-24行)
[発明の背景
本発明は、容器のみならず、充填用の容器を準備する方法、及び容器を製造する方法に関する。
より具体的には、本発明は、特に外装容器の上に取り付けられた弁を有する外装容器、該弁と連通した折り畳み可能な内装容器を有し、それにより該外装容器及び内装容器が中間チャンバーを画定する種類の二重チャンバー容器を対象とし、本発明のいくつかの態様において、本発明は、加圧製品用の一重チャンバー容器をも対象とする。
さらに、本発明は、製品を充填できる二重チャンバー容器を製造する方法に関し、プラスチック製容器を製造する方法に関し、さらには、プラスチック製容器に関する。]

イ 「DESCRIPTION OF PRIOR ART
Twin-chamber containers are known and widely used, so as for cosmetic products. They comprise an outer container made of a metal, steel or aluminium, whereon there is mounted a valve. The valve communicates with an inner collapsible container, wherein a product is stored.
In such twin-chamber containers, an intermediate chamber formed between the outer container and the inner collapsible container is pressurized with a gas so that when the valve communicating with the inner container is opened, the gas pressure within the intermediate chamber ejects the product contained in the inner collapsible container.
Thereby the outer container is made of two or three pieces, i.e. a bottom piece, a cylindric main body and a neck portion, whereby either the neck portion or the bottom part may be integrally formed with the main cylindric part.」
(第1欄第26-44行)
[先行技術の説明
二重チャンバー容器は、既知であり、化粧品等に幅広く用いられている。二重チャンバー容器は、その上に弁が取り付けられた、金属、鋼鉄、又はアルミニウムでできた外装容器を含む。該弁は、製品を保管する、折り畳み可能な内装容器と連通している。
そのような二重チャンバー容器において、該外装容器と該折り畳み可能な内装容器との間に形成される中間チャンバーは、ガスで加圧され、該内装容器と連通している該弁が開放される際に、該中間チャンバー内のガス圧により、該折り畳み可能な内装容器内の製品を放出する。
したがって、該外装容器は、二つ又は三つの部品、すなわち底部片、円筒形本体、及びネック部からできており、そのために、該ネック部又は底部片のいずれかは、該円筒形本体と一体化して形成されることができる。]

ウ 「It is further known to manufacture twin-chamber containers of the kind mentioned above, the intermediate chamber of which being pressurized with a gas, so that they leave the manufacturing plant in empty, unpressurized state. It becomes thus necessary that such twin-chamber containers be pressurized at the filling station where the inner collapsible container is filled with the specific product.
Up to now, pressurizing and product filling operations for such twin-chamber containers were thus performed at the same location. This is a serious disadvantage in that normally the container filler or manufacturer of the product to be filled in is not familiar with the pressurizing technique or would not like to be bothered therewith. Analogically the container manufacturer is not familiar with product handling, but would be with pressurizing technique of the container produced at his plant.」
(第1欄第53行-第2欄第2行)
[更に、上記の種類の二重チャンバー容器を製造すること、その中間チャンバーがガスで加圧されること、そのため、製造プラントでは、該二重チャンバー容器は、空で非加圧の状態であること、も知られている。そのため、充填作業場で、該折り畳み可能な内装容器に特定の製品を充填して、そのような二重チャンバー容器を加圧することが必要となる。
したがって、これまで、そのような二重チャンバー容器の加圧作業及び製品充填作業は、同じ作業場で行われてきた。このことは、通常、容器充填者又は充填される製品の製造者は、加圧技術を熟知しておらず又は加圧技術に関知したくないので、重大な難点である。同様に、容器製造者は、製品処理を熟知してはいないが、そのプラントで製造される容器の加圧技術を熟知している。]

エ 「It is further known that containers comprising a plastic container body are especially then critical in use when they are subjected to mechanical stress or to a considerable internal pressure relative to pressure of the outside surrounding.
Thus, accidents may be caused if from such pressurized containers valves are ejected due to an unsafe seat of such valves on respective container bodies, which seat normally involves a metal to plastic material joint. Even for one chamber containers which contain a pressurized product as for aeorosol containers, the linkage of a valve arrangement to the plastic material or to the metal container body is a critical problem in view of tightness which is to be installed and maintained at such a linkage area.」
(第2欄第12-26行)
[プラスチック製容器本体を含む容器は、機械的応力又は外圧に比べかなりの内圧にさらされる場合に、特に危険であることも、知られている。したがって、通常、金属対プラスチック材料の接続を含む、それぞれの容器本体上でのそのような弁の不安全な状態により、そのような加圧容器から弁が放出されて、事故が起こり得る。エアロゾル容器用として加圧製品を含有する一重チャンバー容器であっても、バルブ装置のプラスチック材料又は金属製容器本体への結合は、そのような結合領域で付与されて維持されるべき気密性を考慮すると、重大な問題である。]

オ 「It is a further object of the present invention to get rid with local combining of pressurizing operation for twin-chamber containers and filling operation, this for such containers with an outer container of metal or of plastic material.
According to the present invention, this is achieved by pressurizing the intermediate chamber of such containers there, where the container is manufactured, and transporting such twin-chamber containers in pressurized state to the filling station. There the product manufacturer and filler needs not anymore bother with any pressurizing problems.」
(第2欄第54-65行)
[本発明の更なる目的は、二重チャンバー容器の加圧操作及び充填操作の同じ作業場での実施をなくすことで、金属製の外装容器又はプラスチック材料でできている外装容器を有する二重チャンバー容器に関する。
本発明によれば、該容器を製造する作業場で該中間チャンバーを加圧し、加圧状態のそのような二重チャンバー容器を、充填作業場に搬送することで、上記の目的が達成される。該充填作業場で、製品の製造者及び充填者は、加圧の問題について思い悩む必要がない。]

カ 「DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENTS
In FIG. 1 there is schematically shown, in cross-section, a twin-chamber container 1. An outer container 3 thereof is made of three layers of bi-axially blow-stretched plastic material known as PET material. Thus, the outer container comprises three layers 5, 7 and 9 along substantial parts of its wall. Well-known three or multi layer bi-axial blow-stretching operations of a plastic material casting, resulting in a container body with a neck portion 11 of the outer container 1, have the drawback that the three layer structure is not anymore encountered at the upper end of the neck portion 11, but terminates below the open end 13 of the said neck portion 11.」
(第3欄第61行-第4欄第8行)
[好ましい実施形態の説明
図1に、二重チャンバー容器1の概略断面図が示されている。その外装容器3は、PET材料として知られる二軸延伸ブロー成型プラスチック材料の三つの層からなる。したがって、該外装容器は、かなりの部分がその壁に沿う三つの層、5、7、及び9を含む。プラスチック材料のよく知られている三層又は多層での二軸延伸ブロー成形で、該外装容器1のネック部11を有する容器本体が得られ、該三層構造は、該ネック部11の上部末端で一体化せず、該ネック部11の開放端13の下部で終端するという、欠点を有している。]

キ 「On top of the neck portion 11, comprising a rim 15, there is applied a valve arrangement 17 with a metallic intermediate cover 19 and with a central valve 21 thereon. The valve 21 is of the type which is opened by mechanical tilting or pressing on a valve stud 23. The intermediate cover 19 is curled around the rim 15 so that the cover 19 and thus the valve arrangement 17 are mechanically fixed to the open end of the neck portion 11.
The valve 21 communicates with the inside of an inner container 25 which is collapsible.
This container 25 is mounted at an area 27 to the valve 21.」
(第4欄第9-21行)
[該ネック部11の上端にリム15が含まれ、金属製中間被覆19及びその上の中央弁21を有する弁構造17が当てられている。該弁21は、機械的傾斜又は弁スタッド23を押すことにより、開放される種類のものである。 該中間被覆19は、該リム15の周りに巻き付けられており、それにより、該被覆19及び該弁構造17は、該ネック部11の開口端に機械的に固定されている。
該弁21は、折り畳み可能である、内装容器25の内部に連通している。
この容器25は、領域27で該弁21に取り付けられる。]

ク 「As an intermediate chamber 29 between the outer container 1 and the inner container 25 is pressurized by a gas in this embodiment of the inventive container, on the other hand, the valve arrangement 17 with its cover 19 must be sealingly fitted on the open end of neck portion 11.
Further, the inner container 25 must sealingly be mounted at the area 27 to the valve 21 to prevent a product contained within the inner container 25 to penetrate into the intermediate chamber 29 and/or to prevent the pressurized gas within the intermediate chamber 29 to penetrate into the inner container 25 with the product, and then to leave the inner container through the valve 21.」
(第4欄第27-40行)
(当審注:「outer container 1」とあるが、「outer container 3」の明らかな誤記。)
[該外装容器3と該内装容器25の間の中間チャンバー29は、本発明のこの容器のこの実施例において、ガスによって加圧されるが、一方、そのカバー19を有する弁構造17は、該ネック部11の開口端に密封して取り付けられなければならない。
また、内装容器25は、該領域27で該弁21に気密状態で取り付けられて、該内装容器25内に保持される製品が、該中間チャンバー29内に浸透することを防止する及び/又は該中間チャンバー29内の該加圧ガスが、該製品を有する該内装容器25内に浸透することを防止して、該製品が該弁21を介して該内装容器から外に出ることを防止しなければならない。]

ケ 「The inner container 25 consists, as shown in FIG. 3, of two foil-like wall members 33a and 33b, e.g. of rectangular shape, which foil-like members are joined at their periphery 35 to finally form a flat bag. There is fixed at a mounting area 37, which may accord to the mounting area 27 of FIG. 1, a stud 39 or directly an output tube of the valve 21 according to FIG. 1 which penetrates into the bag formed by the two foil-like members 33a and 33b.
As shown in FIG. 2, the flat bag is folded along substantially parallel folds 41 to be easily introduced into the outer container 1 of FIG. 1 and to expand as it is filled by a product.」
(第5欄第10-22行)
[該内装容器25は、図3に示されるように、例えば長方形の、二つの箔状壁部材33a及び33bからなり、それらの箔状部材は、その外縁35で接続されて、最終的に扁平な袋を形成する。図1の取り付け領域27に合致する、取り付け領域37で固定され、図1の弁21のスタッド39又は直接に出力管が該箔状部材33a及び33bにより形成される該袋内に貫入する。
図2に示されるように、該扁平な袋は、図1の該外装容器1内に容易に導入されるように、実質的に平行な折り目41に沿って折り畳まれ、製品が充填される際に、拡大する。]

コ 「A considerable simplification of the pre-pressurizing operation--final pressure will only be installed within the intermediate chamber 29 once the inner container 25 is filled--is to introduce a pressurizing gas, preferably H_(2) in its frozen, e.g. liquid form at low temperature into the outer container, mounting thereon the inner container 25 and the valve arrangement 17 still at low temperature and then applying the assembled container to normal temperature so that the frozen gas will evaporate and pressurize the intermediate chamber. Other gases as CO_(2) gas could be analogically used in frozen, i.e. liquid or rigid state.」
(第6欄第6-17行)
[事前加圧操作のかなりの簡素化-該内装容器25が充填される場合にのみ、該中間チャンバー29内に最終圧を導入する-では、加圧ガス、好ましくは凍結したH_(2)、例えば、低温で液状のH_(2)を該外装容器内に導入し、該外装容器に依然として低温である該内装容器25及び該弁構造17を取り付け、その後に、組み上げられた容器を常温にさらすことで、該凍結ガスが蒸発して該中間チャンバーを加圧するようにする。CO_(2)ガス等の他のガスを、凍結状態、すなわち液状又は固形で、同様に用いることができる。]

サ 「Pressurizing of the twin-chamber container occurs at a container assembling plant. Then the assembled, pressurized container is conveyed or transported to a filling station, which may be distant, and is filled there with the respective product through the valve, as through the valve 21 of FIG. 1.」
(第6欄第38-43行)
[該二重チャンバー容器の加圧は、容器組立工場で実施される。その後、組み立てられて加圧された容器は、遠距離にあっても良い充填作業場に搬送又は輸送され、そこで図1の弁21等の弁を介してそれぞれの製品が充填される。]

シ 「I claim:
1. A method for readying a twin-chamber container to be filled with a product, said container comprising an outer container, a valve, an inner collapsible container communicating with the valve and located within the outer container so as to define an intermediate chamber between said inner container and said outer container, said valve penetrating through said outer container, comprising the step of pressurizing the intermediate chamber between said outer container and said inner container with a gas and transporting the twin-chamber container with said pressurized intermediate chamber to a filling station for filling a product into said inner container through said valve.」
(第8欄第27-40行)
[特許請求の範囲
1.製品が充填される二重チャンバー容器を準備する方法であって、前記容器が、外装容器、弁、内装容器と前記外装容器との間に中間チャンバーを画定するように、前記弁と連通されかつ前記外装容器内に配置された、折り畳み可能な内装容器を含み、前記弁が前記外装容器に貫入し、前記外装容器と前記内装容器との間の前記中間チャンバーをガスで加圧する工程、及び前記加圧された中間チャンバーを有する前記二重チャンバー容器を、前記弁を介して製品を前記内装容器内に充填するための充填作業場に搬送する工程を含む方法。]

引用文献1には、「製品を充填できる二重チャンバー容器を製造する方法」(上記摘記事項ア)について記載され、上記摘記事項イによれば、その「二重チャンバー容器」は、「化粧品等に幅広く用いられ」ており、「中間チャンバー内のガス圧により」、「製品を放出する」ものである。
上記摘記事項イ、カ?ケ、及びFIG.1によると、容器が外装容器と内装容器からなる二重チャンバー容器であって、内装容器が外装容器の内部にあり、外装容器と内装容器の間が中間チャンバーであることが記載されている。
上記摘記事項カ、及びFIG.1には、外装容器がネック部を有することが記載されている。
上記摘記事項イ、キ、ク、及びFIG.1には、弁構造がネック部に取り付けられていること、弁構造を開放することで製品を放出することが記載されている。
上記摘記事項ク、コには、外装容器及び内装容器を加圧するための加圧ガスが中間チャンバーに導入されていることが記載されている。
上記摘記事項ウ、エによると、容器製造における加圧作業には危険が伴うため高い安全性が求められること、そのために加圧作業と製品充填作業を同じ作業場で行うことには問題があることが記載され、上記摘記事項オ、サ、シによると、当該問題を解決するために、容器組立工場と充填作業場を遠距離として、組み立てられた二重チャンバー容器を容器組立工場から充填作業場に二重チャンバー容器を輸送することで解決することが記載されている。
上記摘記事項ケ?シには、容器組立工場において二重チャンバー容器を加圧すること、充填作業場で内装容器内に弁21を介して製品を充填することが記載されている。

以上から引用文献1には、
「二重チャンバー容器は、弁の開放によって中間チャンバー内のガス圧で化粧品等の製品を放出するものであって、
その二重チャンバー容器は、外装容器と内装容器からなり、製品が充填される内装容器が外装容器の内部にあって、外装容器と内装容器の間が中間チャンバーであり、外装容器がネック部を有し、弁構造を開放することで製品を放出するものであり、弁構造がネック部に取り付けられており、外装容器及び内装容器を加圧するための加圧ガスが中間チャンバーに導入されているものであり、
容器組立工場において二重チャンバー容器を加圧した後、遠距離にある充填作業場に移送し、
充填作業場において製品を弁を介して内装容器に充填する、
製品を充填できる二重チャンバー容器を製造する方法」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)本願補正発明と引用発明との対比
引用発明の「弁の開放によって中間チャンバー内のガス圧で化粧品等の製品を放出する」「二重チャンバー容器」は、本願補正発明の「エアゾールディスペンサ」に相当する。
引用発明の「外装容器がネック部を有」することは、本願補正発明の「首部を有する外側容器」に相当するものであり、引用発明の「弁構造を開放することで製品を放出する」こと及び「弁構造がネック部に取り付けられて」いることは、本願補正発明の「そこから製品を選択的に分配するために、前記首部内に取り付けられた弁アセンブリ」に相当するものである。
また引用発明の「製品が充填される内装容器が外装容器の内部」にあることは、本願補正発明の「外側容器内に製品を保持するための製品供給装置」に相当するものであり、引用発明の「外装容器と内装容器の間が中間チャンバーであり外装容器及び内装容器を加圧するための加圧ガスが中間チャンバーに導入されている」ことは、本願補正発明の「前記外側容器及び前記製品供給装置を加圧するための前記外側容器内の噴射剤を含んでいる」ことに相当するものである。
さらに引用発明の「容器組立工場において二重チャンバー容器を加圧」することは、本願補正発明の「第1位置において加圧された容器を提供する工程」に相当するものであり、続いて行われる引用発明の「遠距離にある充填作業場に移送」することは、本願発明の「前記加圧された容器を第2位置に移送する工程であって、前記第2位置は前記第1位置から離れている、工程」に相当するものであり、さらに続いて行われる引用発明の「充填作業場において製品を内装容器に充填する」ことは、本願補正発明の「前記第2位置において、前記製品を前記製品供給装置に挿入する工程」に相当するものである。

よって、本願補正発明と引用発明は、
「エアゾールディスペンサを製造する方法であって、前記方法は、
第1位置において加圧された容器を提供する工程であって、前記加圧された容器は、首部を有する外側容器、そこから製品を選択的に分配するために、前記首部内に取り付けられた弁アセンブリ、前記外側容器内に製品を保持するための製品供給装置、並びに前記外側容器及び前記製品供給装置を加圧するための前記外側容器内の噴射剤を含んでいる、工程と、
前記加圧された容器を第2位置に移送する工程であって、前記第2位置は前記第1位置から離れている、工程と、
前記第2位置において、前記製品を前記製品供給装置に挿入する工程と、
を有する方法。」
で一致し、下記の点で相違する。

《相違点1》
本願補正発明では「前記第2位置において、前記加圧された容器に作動装置を加える工程」を備えているのに対して、引用発明では作動装置について明記されていない点。
《相違点2》
本願補正発明では「前記第1位置は前記第2位置より厳しい環境および安全要件を満たすことが求められる」としているのに対して、引用発明では環境および安全要件について明記されていない点。

(5)判断
ア 《相違点1》について
本願補正発明の「作動装置」について、請求項1には、他の構成要素との関係が特定されていないものの、技術常識及び発明の詳細な説明の段落【0020】等も参酌すれば、製品を選択的に分配するために弁アセンブリの弁を作動させるための装置を意味するものと理解できる。
一方、引用発明もエアゾールディスペンサであるから、技術常識を勘案すれば、最終的な製品として作動装置を備えていることは明らかである。
さらに、弁を介して内装容器内に製品が充填されるのだから、この段階で、充填にあたり弁の手前に位置し弁からの充填の妨げとなる作動装置が設けられていないことは自明であり、少なくとも作動装置は製品が挿入された後に設けられるものである。
そして作動装置をどこで設けるかについては、製品挿入後にそのまま充填作業場で設けるか、さらに移送してさらに別の位置で設けるか、または容器組立工場に戻して設けるなどから選択すべき事項である。
そうすると、引用発明の容器を製造する方法において、移送工程を削減するといった、ごく一般的な効率化の要求に応じて、二重チャンバー容器に作動装置を設ける場所として充填作業場を選択することに、格別の困難性があるとは認められない。
よって、相違点1に係る構成は、引用発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

イ 《相違点2》について
本願補正発明の「環境および安全要件」について、請求項1には、具体的に何に対する要件であるのか特定されていないものの、技術常識及び発明の詳細な説明の段落【0074】等も参酌すれば、噴射剤の材質や圧力によって、その製造工程において要求される環境面、安全面の要件を意味するものと理解できる。
一方、引用発明の容器を製造する方法も、上記摘記事項エにあるように加圧工程を伴う製造には危険が伴うものであり、技術常識を勘案すれば、容器組立工場の加圧工程は、工場が位置する現地において、加圧工程に関して法令等により求められる環境および安全要件を満たすものであることが明らかである。
また上記摘記事項オにあるように、加圧工程を有していない充填作業場では加圧の問題について思い悩む必要がないとされているのだから、加圧工程に関する環境および安全要件の問題もない、すなわち当該要件を満たすことが求められていないこともまた明らかである。
そうすると、容器組立工場と遠距離にある充填作業場のそれぞれに求められる環境および安全要件について比較すれば、加圧工程を有している容器組立工場が、加圧工程を有していない充填作業場よりも、厳しい要件を満たすことが求められるものといえる。

ここで請求人は、審判請求書(4.(1))において、
「このような特徴事項を有する本願発明は、「しかしながら、エアゾールディスペンサの加圧及び充填のための共通現場の使用は、特定の問題及び特有の固定費をもたらす。例えば、各製造現場は、複雑かつ高度に制御された噴射剤加圧装置及び安全システムを有さなくてはならない。」(本願明細書の段落0014)という課題を解決するものです。すなわち、複数の製造現場とし、そのうち1つをより厳しい要件を満たす必要がある現場とすることができ、これにより、製造工程の現場についてより柔軟な構成とすることが可能となります。」と主張する。
しかし、引用発明もまた、上記摘記事項オにあるように、エアゾールディスペンサの加圧及び充填のための共通現場の使用の問題を課題として、複数の製造現場とし、そのうち1つをその生産現場が位置する現地の要件を満たす必要がある現場とするものであって、より厳しい要件を満たすものといえるから、上記主張は採用することができない。

よって、相違点2に係る構成は、引用発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

ウ また、本願補正発明により奏される効果は、引用発明から予測できる程度のものである。

エ したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

なお請求人は、平成30年6月12日付けの上申書(3.(1))において、
「本審判請求人は、添付の補正案のとおり、特許請求の範囲に記載の、「第1位置」および「第2位置」を、「製造の第1段階の工場」および「製造の第2段階の工場」にそれぞれ変更する補正をしたいと考えています。」と主張し、補正案を添付している。
しかし、この補正案のとおり、本件補正発明の「第1位置」を「製造の第1段階の工場」に、「第2位置」を「製造の第2段階の工場」に補正したとしても、引用発明の「container assembling plant」[容器組立工場]が補正案の「製造の第1段階の工場」に、filling station[充填作業場]が補正案の「製造の第2段階の工場」に相当することに変わりはなく、この補正案のものも、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


3.本願発明について
(1)本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?14に係る発明は、平成29年6月23日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定され、そのうち、請求項1に係る発明は、前記2.(1)において記載したとおりのものである。

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明が、引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものである。

(3)引用文献記載の発明及び技術的事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその技術的事項は、前記2.(3)に記載したとおりである。

(4)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明が、「前記第1位置は前記第2位置より厳しい環境および安全要件を満たすことが求められる」としていたものが、そのような要件を限定しないものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに「前記第1位置は前記第2位置より厳しい環境および安全要件を満たすことが求められる」という発明特定事項を含む本願補正発明が、前記2.(4)及び(5)で述べたように、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上によれば、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-09-14 
結審通知日 2018-09-18 
審決日 2018-10-02 
出願番号 特願2015-247895(P2015-247895)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 悟史高橋 裕一  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 蓮井 雅之
横溝 顕範
発明の名称 エアゾールディスペンサの製造方法  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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