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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A47J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A47J
管理番号 1349196
審判番号 不服2018-2788  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-27 
確定日 2019-03-05 
事件の表示 特願2013-222504号「フライヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年4月30日出願公開、特開2015-83078号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月25日の出願であって、平成29年7月31日付けで拒絶理由が通知され、平成29年10月4日付けで意見書が提出されると共に手続補正され、平成29年11月27日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して、平成30年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正され、平成30年10月10日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年11月22日付けで意見書が提出されると共に手続補正されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1?3に係る発明は、下記の引用文献A,Bに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧:
A.実願昭59-22487号(実開昭60-134428号)のマイクロフィルム
B.特開平10-23975号公報

第3 当審拒絶理由
1.(明確性)本願特許請求の範囲の請求項1の記載は、「設けられている」の意味する内容が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.(新規性)本願請求項1,2に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3.(進歩性)本願請求項1,2に係る発明は、下記の引用文献1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧:
1.実願昭59-22487号(実開昭60-134428号)のマイクロフィルム(拒絶査定時の引用文献A)

第4 本願発明
本願請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本件発明3」という。)は、平成30年11月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?3は以下のとおりの発明である。

【請求項1】
調理油(CO)を収容する油槽(14)と、前記油槽(14)に収容した調理油(CO)に浸漬した加熱部(58)で該調理油(CO)を加熱するヒータユニット(16)とを備えたフライヤにおいて、
前記ヒータユニット(16)のユニット基部(44)から上下に延在する連設部(56)と、この連設部(56)の下部に繋がる加熱部(58)とからなり、
前記油槽(14)に収容した前記調理油(CO)の適正量を表示する油量表示マーク(G)が前記連設部(56)に形成されている
ことを特徴とするフライヤ。
【請求項2】
前記連設部(56)に取付手段(76)が装着され、この取付手段(76)は、前記油槽(14)に収容した前記調理油(CO)に浸漬して該調理油(CO)の温度を検知する油温検知手段(74)が取付けられる保持部(78a)を備えている請求項1記載のフライヤ。
【請求項3】
前記取付手段(76)は、前記油槽(14)における正面側に臨む内壁面に沿って延在する連設部(56)を前後に挟んで取付けられる一対の第1部材(78)および第2部材(80)で構成され、前記油量表示マーク(G)は、前記連設部(56)の前側に位置する第2部材(80)に形成されている請求項1記載のフライヤ。

第5 明確性について
当審では、請求項1の「油量表示マーク(G)が前記連設部(56)に設けられている」という記載について、「設けられている」の意味する内容が不明確であるとの拒絶理由を通知しているが、平成30年11月22日付けの補正により「設けられている」が「形成されている」と補正された結果、油量表示マークが連設部に直接又は間接的に形成されていることが明確になり、下記引用発明のように油量表示マークが連設部に近接配置されたものを排除することが明確になったといえるから、当審拒絶理由の理由1.(明確性)は解消された。

第6 新規性進歩性について
1.引用文献等
(1)引用文献1(引用文献A)の記載
原査定及び当審拒絶理由で引用された引用文献1(引用文献A)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「第3図において、液体(例えば食用油)を貯留する例えば円形の液槽1は、これを支持する凹状の支持体2に止めねじ等の締結具20により固定されており、支持体2の側部にはU状の掛け金具5がねじ等の取付具により取り付けられている。掛け金具5の下部には、第5図に示されているように外方に廷長した延長部5aが設けられており、該延長部上にはヒータ3及びヒータ通電ランプ7に通電するための突起部22が設けられている。
加熱装置4は、液槽1の底部上に配設され槽内の液体を加熱するほぼ環状のヒータ3と、ヒータ3を支持し電気部品等を収納した電装箱11とから主に構成されている。電装箱llには、支持体の外周壁とその掛け金具5とにより形成された穴5bに挿入され且つ掛け金具5に着脱自在に取り付けられる屈曲金具をさらに折り曲げた形をした固定金具13と、液槽内の液体の温度を検知する感温筒12に毛管16を介して接続された液温サーモ6と、ヒータ3の通電を表示するヒータ通電ランプ7と、液槽内の液体の温度が異常に高くなるのを防止する過昇防止サーモと、電装箱11を把持するための取手8とが配設されている。」(明細書4頁8行?同5頁11行)

イ.「第7図及び第8図に示されているように、保護カバー9の上部の裏側には、電装箱の取手8に保護カバー9を固定するため該取手に挿入される取付具14が固着されている。」(明細書5頁19行?同6頁2行)

ウ.「保護カバー9において槽内の液体中に浸漬される下方部分には多数の長穴23が設けられている。長穴23は被調理食品が入り込まない程度で且つ液体を円滑に通過させる程度の大きさを有している。保護カバー9の下部は、槽1の側壁に沿うヒータ部分と、このヒータ部分の下部に固着された支持部材l5に固定バンド40により取り付けられた感温筒12と、感温筒l2に接続された毛管16とをおおっている。」(明細書6頁4?13行)

エ.「第12図には本考案の保護カバーの別の実施例が示されている。保護カバー17の下部の両側には槽内の液体中に浸漬され該液体の量を表示するための液量表示穴30が設けられており、それ以外の構成は前述の実施例の保護カバー9のものと同様である。」(明細書8頁5?10行)

オ.「上述の第2実施例から理解されるように、前述の第1実施例における保護カバー9にある長穴23も槽内の液体の量を表示する液量表示穴として使用され得る。」(明細書9頁3?6行)

カ.「


上記第3図,第7図及び第8図を参照すれば、引用文献1記載の環状のヒータ3は電装箱に支持されたところから上下に延在する部分と、この部分の下部に繋がる管状部分とからなっているものと認められる。

してみれば、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「液槽の底部上に配設され槽内の液体を加熱するほぼ環状のヒータと、ヒータを支持し電気部品等を収納した電装箱から構成されるフライヤにおいて、
環状のヒータは電装箱に支持されたところから上下に延在する部分と、この部分の下部に繋がる環状部分とからなり、
電装箱の取手に保護カバーが固定され、保護カバーは槽の側壁に沿うヒータ部分をおおっており、保護カバーには液量表示穴が設けられているフライヤ。」

(2)引用文献Bの記載
原査定で引用された引用文献Bには、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「前記油槽10の上方に旋回可能に配設された電装箱12に取付けられたヒータHは、図2に示す如く、L字形に形成された4本のヒータ体14を幅方向に所定間隔離間して構成され、中間に位置する2本のヒータ体14,14の間に、油温サーモ感温筒16が、図3に示す形状の第1取付け板20と2枚の第2取付け板22,22を介して取付けられるようになっている。第1取付け板20は、熱伝導率の高い金属板を材質とし、矩形状の傾斜板24の傾斜上端縁に垂直に折曲形成された垂直板26と、傾斜下端縁に水平に折曲形成された水平板28とから基本的に構成されている。また垂直板26の幅方向両端には、裏側に向けて延出する第1保持片26a,26aが折曲形成されると共に、水平板28の幅方向両端には、裏側(図3の下方)に向けて延出する第2保持片28a,28aが折曲形成されている。第1保持片26a,26aおよび第2保持片28a,28aの夫々の離間間隔は、ヒータHにおける2本のヒータ体14,14の外側端の離間間隔と略同一に設定され、ヒータHに対して前面側から垂直板26および水平板28を当接するよう臨ませた際に、図4および図5に示す如く、両ヒータ体14,14を第1保持片26a,26aおよび第2保持片28a,28aで外側から挟持するよう構成されている。なお、垂直板26および水平板28には、幅方向に離間して複数(実施例では2つ)の通孔26b,28bが穿設されている。
前記各第2取付け板22は、矩形状平板部22aと、該平板部22aの幅方向両端に形成されて第1取付け板20から離間する方向に傾斜する傾斜部22b,22bとから構成される。また平板部22aには、第1取付け板20の垂直板26に穿設した通孔26b,26bまたは水平板28に穿設した通孔28b,28bと対応する位置にねじ孔22cが形成されている。なお、第2取付け板22の傾斜部22b,22bは、ヒータHにおける2本のヒータ体14,14の間に平板部22aを臨ませた状態で、該ヒータ体14,14に当接するよう設定されている。そして、第1取付け板20の垂直板26および水平板28をヒータHの垂直部14aおよび水平部14bに表側から当接させると共に、第2取付け板22,22を垂直板26および水平板28と対応するヒータHの裏側に当接した状態で、垂直板26および水平板28に穿設した各通孔26b,28bに挿通したねじ30,30を対応する第2取付板22のねじ孔22cに螺挿することにより、両取付け板20,22がヒータHを挟持した状態で取付けられる。
前記第1取付け板20の垂直板26と対応する第2取付け板22は、図4に示す如く、その傾斜部22b,22bがヒータ体14,14に当接した状態で、平板部22aと垂直板26との間に所要の隙間Sが生ずるよう設定されており、この隙間Sに前記油温サーモ感温筒16が臨むよう構成されている。また第1取付け板20と第2取付け板22とは、油温サーモ感温筒16を保護する機能も兼ねるようになっている。」(段落【0012】?【0014】)

イ.「



2.対比・判断
(1)本願発明1について
ア.対比
引用発明の「液体」,「液槽」及び「フライヤ」は、引用発明がフライヤに係る発明であることからすれば、それぞれ本願発明1の「調理油」,「油槽」及び「フライヤ」に相当する。そして、引用発明の「環状のヒータ」は「液槽の底部上に配設された槽内の液体を加熱する」から、本願発明1の「油槽に収容した調理油に浸漬した加熱部で該調理油を加熱する」ものであり、引用発明の「環状のヒータ」と「電装箱」は、本願発明1の「ヒータユニット」を構成するものである。よって、引用発明の「液槽の底部上に配設され槽内の液体を加熱するほぼ環状のヒータと、ヒータを支持し電気部品等を収納した電装箱から構成されるフライヤ」は、本願発明1の「調理油を収容する油槽と、前記油槽に収容した調理油に浸漬した加熱部で該調理油を加熱するヒータユニットとを備えたフライヤ」に相当する。
また、引用発明の「環状のヒータ」の「電装箱に支持されたところ」は、構成上、本願発明1の「ユニット基部」に相当し、引用発明の電装箱に支持されたところから上下に延在する部分は、「環状のヒータ」に連なって設けられているので、本願発明1の「連設部」に相当する。
よって、引用発明の「環状のヒータは電装箱に支持されたところから上下に延在する部分と、この部分の下部に繋がる環状部分とからな」る構成は、本願発明1の「ヒータユニットのユニット基部から上下に延在する連設部と、この連設部の下部に繋がる加熱部とからな」る構成に相当する。
してみると、本願発明1と引用発明は、次の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
調理油を収容する油槽と、前記油槽に収容した調理油に浸漬した加熱部で該調理油を加熱するヒータユニットとを備えたフライヤにおいて、
前記ヒータユニットのユニット基部から上下に延在する連設部と、この連設部の下部に繋がる加熱部とからなるフライヤ。

【相違点】
本願発明1は、油槽に収容した調理油の適正量を表示する油量表示マークが連設部に形成されているのに対し、引用発明は、液量表示穴が槽の側壁に沿うヒータ部分をおおう保護カバーに設けられている点。

イ.相違点についての判断
本願発明1の油量表示マークが連設部に形成されているとは、ヒータユニットの連設部に油量表示マークが形作られていることを意味しており、引用文献1には、電装箱の取手に固定され、槽の側壁に沿うヒータ部分をおおっている保護カバーの液量表示穴を、本願発明1のように環状のヒータ(ヒータユニット)に連なる上下に延在する部分に油量表示マークを形成することを示唆する記載はなされていない。
そして、本願発明1は、組み付け誤差や構成部品の経年変化やヒータユニットの筐体に対する姿勢変位等が生じても、加熱部の上面と調理油の面の上下間隔が一定になることを課題として(本願明細書の段落【0004】?【0010】参照。)、油槽に収容した調理油の適正量を表示する油量表示マークをヒータユニットの連設部に形成したものである。
また、本願発明1は、上記相違点に係る発明特定事項を採用することにより、ヒータユニットの加熱部の上面と調理油の面の上下間隔が一定になるという効果を奏するものであり(本願明細書の段落【0004】,【0005】,【0010】参照。)、上記相違点に係る発明特定事項は実質的なものであるから、引用発明から本願発明1が容易に想到できたということもできない。
よって、本願発明1は、引用発明と同一であるとはいえないし、当業者であっても引用発明に基いて容易に発明をすることができたともいえない。

(2)本願発明2,3について
請求項2,3に係る発明は、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明と同一であるとはいえないし、当業者であっても引用発明に基いて容易に発明をすることできたともいえない。

第7 原査定について
原査定は、フライヤにおける検知装置の取付けに関する引用文献B記載の技術を引用文献A(引用文献1)に適用し、油量表示手段を連設部に設けられた取付手段に取り付けることは容易である旨の判断している。
しかし、上記したとおり本願発明1は、組み付け誤差や構成部品の経年変化やヒータユニットの筐体に対する姿勢変位等が生じても、加熱部の上面と調理油の面の上下間隔が一定になることを課題として、当該課題を解決するために、ヒータユニットの連設部に油量表示マークを形成したのであり、引用文献Aには当該課題の示唆がない以上、引用文献Aに引用文献B記載の技術を適用することに動機付けがあるとはいえない。
また、仮に引用文献A記載の上記引用発明に引用文献B記載の第1及び第2の取付け板からなる取付手段を設けるとしても、この取付手段に引用発明の保護カバーに設けられている油量表示手段を移設することまで当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、本願発明1は引用発明及び引用文献Bに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審拒絶理由の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-19 
出願番号 特願2013-222504(P2013-222504)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A47J)
P 1 8・ 537- WY (A47J)
P 1 8・ 121- WY (A47J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西田 侑以  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 井上 哲男
莊司 英史
発明の名称 フライヤ  
代理人 山田 健司  
代理人 山本 喜幾  

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