• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03F
管理番号 1349260
審判番号 不服2017-18985  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-21 
確定日 2019-03-15 
事件の表示 特願2014-509224「ネガ型感光性シロキサン組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日国際公開、WO2013/151166、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)4月5日(優先権主張平成24年4月6日)を国際出願日とする出願であって、平成29年1月18日付けで拒絶理由が通知され、同年4月20日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年6月27日付けで拒絶理由が通知され、同年8月3日に意見書が提出され、同年10月13日付けで拒絶査定(以下、当該拒絶査定を「原査定」といい、原査定における拒絶の理由を「原査定拒絶理由」という。)がされ、これに対し、同年12月21日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成30年10月25日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月25日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。


2 原査定拒絶理由の概要
原査定拒絶理由の概要は、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。


3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

理由1(明確性)
本願は、特許請求の範囲の請求項8の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由2(進歩性)
本願の請求項1?10に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2011-95432号公報
引用文献2:特開2010-266803号公報
引用文献3:特開2004-109409号公報
引用文献4:特開2000-258904号公報
引用文献5:特開2007-193318号公報
引用文献6:国際公開第2012/026400号


4 本件発明
本願の請求項1?10に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明10」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
(Ia)プリベーク後の膜が、5重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であり、その溶解速度が3,000Å/秒以下である第一のポリシロキサンと(Ib)プリベーク後の膜の、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が150Å/秒以上あるポリシロキサンと
を含むポリシロキサン混合物、
前記ポリシロキサン混合物100重量部に対して、3.0?15.0重量部の、ウレイド結合を有するケイ素含有化合物、
重合開始剤、
溶剤、および
現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤、増感剤、および安定剤からなる群から選択される添加剤
からなり、
ポリシロキサン混合物に含まれるポリシロキサン(Ia)/ポリシロキサン(Ib)の重量比が1/99?80/20であり、
前記密着増強剤が、イミダゾール類またはシランカップリング剤である
ことを特徴とする、ネガ型感光性シロキサン組成物。
【請求項2】
(Ia)プリベーク後の膜が、5重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であり、その溶解速度が3,000Å/秒以下である第一のポリシロキサンと(Ib)プリベーク後の膜の、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が150Å/秒以上あるポリシロキサンと
を含むポリシロキサン混合物、
前記ポリシロキサン混合物100重量部に対して、3.0?15.0重量部の、ウレイド結合を有するケイ素含有化合物、
重合開始剤、および
溶剤
からなり、
ポリシロキサン混合物に含まれるポリシロキサン(Ia)/ポリシロキサン(Ib)の重量比が1/99?80/20である
ことを特徴とする、ネガ型感光性シロキサン組成物。
【請求項3】
前記ポリシロキサン混合物の重量平均分子量が5,000以下である、請求項1または2に記載のネガ型感光性シロキサン組成物。
【請求項4】
前記ケイ素含有化合物が、下記一般式(iia)または(iib)で表されるものである、請求項1?3のいずれか一項に記載のネガ型感光性シロキサン組成物。
【化1】

(式中、R’はケイ素含有炭化水素基である。)
【請求項5】
前記ケイ素含有化合物が、ケイ素含有イソシアヌレート化合物である、請求項4に記載のネガ型感光性シロキサン組成物。
【請求項6】
ポリシロキサン混合物100重量部に対して0.001?10重量部の重合開始剤を含んでなる、請求項1?5のいずれか1項に記載のネガ型感光性シロキサン組成物。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載のネガ型感光性シロキサン組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、塗膜を露光し、現像することを含んでなる、硬化膜の製造方法。
【請求項8】
露光後かつ現像前に、加熱工程を含まない、請求項7に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1?6のいずれか1項に記載のネガ型感光性シロキサン組成物から形成されたことを特徴とする硬化膜。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化膜を具備してなることを特徴とする素子。」


5 引用文献及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願優先権主張の日前の平成23年5月12日に頒布された刊行物である引用文献1(特開2011-95432号公報)には、以下の記載事項がある。なお、下線部は、合議体が発明の認定等に用いた箇所を示す。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]シロキサンポリマー、
[B]下記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリマー、及び
[C]感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤
を含有する感放射線性組成物。
【化1】

(式(1)中、R^(1)は水素原子又は炭素数1?4のアルキル基であり、R^(2)?R^(6)は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1?4のアルキル基であり、Bは単結合、-COO-*又は-CONH-*であり、mは0?3の整数である。但し、R^(2)?R^(6)の少なくとも1つはヒドロキシ基であり、-COO-*又は-CONH-*における各々の*の結合手は(CH_(2))_(m)の炭素と結合する。)

(中略)

【請求項6】
表示素子の保護膜又は層間絶縁膜を形成するために用いられる請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の感放射線性組成物。
【請求項7】
(1)請求項6に記載の感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱する工程
を含む表示素子用保護膜又は層間絶縁膜の形成方法。
【請求項8】
請求項6に記載の感放射線性組成物から形成された表示素子の保護膜又は層間絶縁膜。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子(LCD)、有機EL表示素子(OLED)等の表示素子の保護膜及び層間絶縁膜を形成するための材料として好適な感放射線性組成物、その組成物から形成された保護膜及び層間絶縁膜、並びに、その保護膜及び層間絶縁膜の形成方法に関する。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、透明性、耐熱性(耐熱透明性)、表面硬度、及び耐擦傷性が優れると共に、高温、高湿の厳しい条件下においてもITO透明導電膜やモリブデン等の金属配線に対する密着性、並びに耐クラック性が高い保護膜及び層間絶縁膜を形成するために好適に用いられ、かつ十分な解像性を有するポリシロキサン系ネガ型感放射線性組成物、その組成物から形成された保護膜及び層間絶縁膜、並びにその保護膜及び層間絶縁膜の形成方法を提供することである。

(中略)

【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の感放射線性組成物は、上記[A]、[B]及び[C]成分を含んでいることによって、透明性、耐熱透明性、表面硬度及び耐擦傷性という一般的な要求特性をバランス良く満たし、さらに、高温、高湿の厳しい条件下においてもITO透明導電膜やモリブデン等の金属配線に対する優れた密着性及び耐クラック性を発揮する保護膜及び層間絶縁膜を形成可能である。このように形成された保護膜又は層間絶縁膜は、特に表示素子用として好適に用いることができる。また、当該感放射線性組成物は、コンタクトホールを形成可能な程度の十分な解像性を発現する。さらに当該感放射線性組成物は、ネガ型の感放射線特性を有するものであり、既存のポジ型の感放射線特性を有する組成物と比べてコスト面でも有利である。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の感放射線性組成物は、[A]シロキサンポリマー、[B]上記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリマー、[C]感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤、及び、必要に応じてその他の任意成分([D]脱水剤等)を含有する。
【0020】
[A]成分:シロキサンポリマー
[A]成分のシロキサンポリマーは、シロキサン結合を有する化合物のポリマーである限りは特に限定されるものではない。この[A]成分は、当該成分を含む感放射線性組成物に放射線を照射することにより、後述する[C]感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基から発生した酸(酸性活性種)又は塩基(塩基活性種)を触媒として縮合し(場合によっては任意成分の[E]成分の特定構造を有するシラン化合物と共に縮合し)、硬化物を形成する。

(中略)

【0033】
[B]成分:特定構造の繰り返し単位を有するポリマー
[B]成分は、上記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリマーである。当該感放射性組成物は、このような特定構造の繰り返し単位を有するポリマーを用いることによって、透明性、耐熱性(耐熱透明性)、表面硬度及び耐擦傷性という一般的な要求特性をバランス良く満たすと同時に、高温、高湿の厳しい条件下においても、ITO透明導電膜やモリブデン等の金属配線に対して非常に高い密着性及び耐クラック性を発揮する表示素子用保護膜及び層間絶縁膜を形成することが可能となる。

(中略)

【0054】
[C]成分:感放射線性酸発生剤、感放射線性塩基発生剤
[C]成分の感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤は、放射線を照射することによって、[A]成分のシロキサンポリマー(好ましくは上記式(2)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物)の縮合・硬化反応、あるいは[A]成分と後述する[E]成分の特定構造を有するシラン化合物との縮合・硬化反応を促進するための触媒として作用する酸性活性物質又は塩基性活性物質を放出することができる化合物と定義される。なお、[C]成分を分解し、酸性活性物質のカチオン又は塩基性活性物質のアニオンを発生するために照射する放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等を挙げることができる。これらの放射線の中でも、一定のエネルギーレベルを有し、大きな硬化速度を達成可能であり、しかも照射装置が比較的安価かつ小型であることから、紫外線を使用することが好ましい。
【0055】
また、[C]成分の感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤と共に、後述するラジカル重合開始剤を併用することも好ましい。ラジカル重合開始剤から生じる中性の活性物質であるラジカルは、加水分解性シラン化合物の縮合反応を促進することはないが、[A]成分がラジカル重合性の官能基を有する場合に、かかる官能基の重合を促進することができる。

(中略)

【0062】
その他の任意成分
本発明の感放射線性組成物は、上記の[A]?[C]成分に加えて、所期の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、[D]脱水剤、[E]特定構造を有するシラン化合物、[F]酸拡散制御剤、[G]ラジカル重合開始剤、[H]界面活性剤等の他の任意成分を含有することができる。

(中略)

【0068】
[E]成分は、下記式(10)又は(12)で示されるシラン化合物である。この[E]成分は、当該成分を含む感放射線性組成物に放射線を照射することにより、上記[C]感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基から発生した酸(酸性活性種)又は塩基(塩基活性種)を触媒として、[A]成分のシロキサンポリマー(好ましくは上記式(11)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物)と共に縮合し、硬化物を形成する。当該感放射線性組成物において、上記[B]成分に加えて、[E]成分としてこのような特定構造を有するシラン化合物を含有させることによって、形成される保護膜及び層間絶縁膜のITO透明導電膜やモリブデン等の金属配線に対する密着性及び耐クラック性を、より一層向上させることができる。
【0069】

(中略)

【化12】

(式(10)中、R^(9)及びR^(11)はそれぞれ独立に炭素数が1?4のアルキル基であり、R^(10)は炭素数1?6のアルキレン基、フェニレン基、又は式(11)で示される基である。式(11)中、aは1?4の整数である。式(12)中、R^(12)、R^(13)及びR^(14)はそれぞれ独立に炭素数が1?4のアルキル基であり、bは1?6の整数である。)

(中略)

【0071】
式(12)のR^(12)、R^(13)及びR^(14)の好ましい具体例としては、[A]成分との反応性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、メチル基がより好ましい。また、式(12)中のbは、[A]成分との反応性や相溶性の観点から、1?3の整数であることが好ましい。
【0072】
当該感放射線性組成物において、[E]成分は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。式(10)及び(12)のシラン化合物のうち、式(12)で示されるイソシアヌル環を有するシラン化合物がより好ましい。このように一分子中に3個のトリアルコキシシリル基が結合したイソシアヌル環を有するシラン化合物を用いることによって、高い放射線感度を示す感放射線性組成物が得られると共に、その組成物から形成される保護膜及び層間絶縁膜の架橋度を向上させることができる。さらに、このようなイソシアヌル環含有シラン化合物を含む感放射線性組成物からは、高温、高湿の厳しい条件下においてもITO透明導電膜やモリブデン等の金属配線に対する密着性及び耐クラック性が格段に優れた保護膜及び層間絶縁膜を形成することが可能となる。
【0073】
式(10)及び(12)で示されるシラン化合物の具体例としては、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス-1,2-(トリメトキシシリル)エタン、ビス-1,2-(トリエトキシシリル)エタン、ビス-1,6-(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス-1,6-(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス-1,4-(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス-1,4-(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリルメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、トリス-(3-トリメトキシシリルメチル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルメチル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらのうち、放射線感度、得られる保護膜及び層間絶縁膜のITO透明導電膜やモリブデン等の金属配線に対する密着性及び耐クラック性の向上の観点から、1,4-ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、トリス-(3-トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが特に好ましい。
【0074】
[E]成分の特定構造を有するシラン化合物を使用する場合の量は、[A]成分100質量部に対して、好ましくは5質量部?70質量部、更に好ましくは10質量部?50質量部である。[E]成分の使用量を5質量部?70質量部とすることによって、放射線感度、及び得られる保護膜及び層間絶縁膜のITO透明導電膜やモリブデン等の金属配線に対する密着性及び耐クラック性がバランス良く優れた感放射線性組成物を得ることができる。
【0075】
[F]成分の酸拡散制御剤は、感放射線性組成物の[C]成分として感放射線性酸発生剤を用いる場合に、放射線を照射することにより生じた酸性活性物質の組成物塗膜中における拡散を制御し、非露光領域での硬化反応を抑制する作用を有する。[C]成分の感放射線性酸発生剤と共に、このような酸拡散制御剤を用いることにより、感放射線性組成物の解像性(層間絶縁膜のコンタクトホールを含めた所望のパターンを精度良く形成可能な感放射線特性)をより向上させることができる。

(中略)

【0081】
当該感放射線性組成物において、[C]成分の感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤と併用して、[G]ラジカル重合開始剤(ラジカル発生剤)を配合してもよい。ラジカル重合開始剤は、放射線を受けることにより分解してラジカルを生じ、このラジカルによってラジカル重合性官能基の重合反応を開始させる機能を有する化合物である。例えば、[A]成分が式(2)において(メタ)アクリロイル基を含む化合物である場合、[G]ラジカル重合開始剤を用いることによって、[A]成分同士の重合反応を促進し、硬化膜全体としての架橋度を向上させることができる。

(中略)

【0084】
[H]成分の界面活性剤は、感放射線性組成物の塗布性の改善、塗布ムラの低減、放射線照射部の現像性を改良するために添加することができる。好ましい界面活性剤の例としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。

(中略)

【0090】
感放射線性組成物
本発明の感放射線性組成物は、上記の[A]成分のシロキサンポリマー、[B]成分の特定構造の繰り返し単位を有するポリマー、及び[C]成分の感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤、並びに任意成分([D]成分の脱水剤等)を混合することによって調製される。通常、感放射線性組成物は、好ましくは適当な溶剤に溶解又は分散させた状態に調製され、使用される。例えば溶剤中で、[A]、[B]及び[C]成分、並びに任意成分を所定の割合で混合することにより、感放射線性組成物を調製することができる。」

エ 「【実施例】
【0107】
以下に合成例、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

(中略)

【0109】
シロキサンポリマー合成例
[合成例1]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン30質量部、フェニルトリメトキシシラン23質量部、及びテトラ-i-プロポキシアルミニウム0.1質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が60℃に到達後、イオン交換水18質量部を仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。次いで脱水剤としてオルト蟻酸メチル28質量部を加え、1時間攪拌した。さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションすることで、水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A-1)を得た。加水分解縮合物(A-1)の固形分濃度は40.5質量%であり、得られた加水分解縮合物の数平均分子量(Mn)は1,500であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。

(中略)

【0115】
[合成例7]
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)8質量部と2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン6質量部とジエチレングリコールメチルエチルエーテル220質量部とを仕込んだ。引き続きメタクリル酸グリシジル10質量部、スチレン20質量部、トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカン-8-イルメタクリレート25質量部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1質量部及びp-ヒドロキシメタクリルアニリド(上記式(5)で表される化合物)40質量部を仕込み、合成例4と同様の方法によって共重合体(B-4)を含む重合体溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度は、32.7質量%であった。得られた重合体の数平均分子量は、3,400であった。また、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。

(中略)

【0134】
感放射線性組成物の調製、並びに保護膜及び層間絶縁膜の形成
[実施例1]
[A]成分としての合成例1で得られた加水分解縮合物(A-1)を含む溶液(加水分解縮合物(A-1)100質量部(固形分)に相当する量)に、[B]成分として上記式(8)で表される化合物を含有する単量体から形成された共重合体(B-1)を含む溶液((B-1)5質量部(固形分)に相当する量)、[C]成分として(C-3)2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート3質量部、[F]成分として2,4,6-トリ(2-ピリジル)-1,3,5-トリアジン0.05質量部、[H]成分としてシリコーン系界面活性剤((株)東レ・ダウコーニング製の「SH 8400 FLUID」)0.1質量部を加え、固形分濃度が20質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、感放射線性組成物を調製した。
【0135】
この感放射線性組成物を、スピンナーを用いてSiO_(2)ディップガラス基板に塗布した後、ホットプレート上で90℃、2分間プレベークして塗膜を形成した(後述のITO密着性評価においてはITO付基板、Mo密着性評価においてはMo付基板を用いた)。次いで、得られた塗膜に5000J/m^(2)の露光量で紫外線を露光した。続いて、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、25℃で80秒現像した後、純水で1分間洗浄し、さらに230℃のオーブン中で60分間加熱することにより、膜厚2.0μmの保護膜を形成した。また、加熱後の膜厚が3.0μmに成るように塗膜形成時のスピンナーの回転数を調節し、20μm、30μm、40μm、50μmのサイズのコンタクトホールパターンを有するフォトマスクを介して、露光ギャップ(基板とフォトマスクとの間隔)を150μmで露光した以外は、上記の保護膜形成と同様にして、層間絶縁膜を形成した。
【0136】
[実施例2?57及び比較例1?7]
各成分の種類及び量を表1に記載の通りとした他は、実施例1と同様にして感放射線性組成物の調製、並びに保護膜及び層間絶縁膜の形成を行った。なお、表1?3の各成分の配合量に関する数値は、全て質量部を表す。

(中略)

【0145】
なお、表1において、[C]感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤、[E]特定構造を有するシラン化合物、[F]酸拡散制御剤、及び[H]界面活性剤の略称は、それぞれ以下のものを表す。
C-1:トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート
C-2:1-(4,7-ジブトキシ-1-ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート
C-3:2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート
E-1:1,4-ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン
E-2:ビス(トリエトキシシリル)エタン
E-3:トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート
F-1:2,4,6-トリ(2-ピリジル)-1,3,5-トリアジン
H-1:シリコーン系界面活性剤((株)東レ・ダウコーニング製の「SH 8400 FLUID」)
【0146】
【表1】



(2)引用文献1に記載された発明
記載事項エの表1及び段落【0136】に基づけば、実施例10は、[A]成分:シロキサンポリマーとして、成分A-1を100質量部、共重合体成分として成分B-4を5質量部、[C]成分:感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤として成分C-2を3質量部、[E]成分:シラン化合物として、成分E-3を30質量部、[F]成分:酸拡散抑制剤として、成分F-1を0.05質量部、[H]成分:界面活性剤として、成分H-1を0.1質量部とした他は、実施例1と同様にして調製された感放射線性組成物である。そして、記載事項ウの段落【0033】における「[B]成分は、上記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリマーである。当該感放射性組成物は、このような特定構造の繰り返し単位を有するポリマーを用いることによって、・・・ITO透明導電膜やモリブデン等の金属配線に対して非常に高い密着性・・・を発揮する表示素子用保護膜及び層間絶縁膜を形成することが可能となる。」という記載に基づけば、[B]成分である成分B-4は、高い密着性を発揮する成分であるといえる。したがって、引用文献1の記載事項エに基づけば、引用文献1には、実施例10として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン30質量部、フェニルトリメトキシシラン23質量部、及びテトラ-i-プロポキシアルミニウム0.1質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱し、溶液温度が60℃に到達後、イオン交換水18質量部を仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持し、次いで脱水剤としてオルト蟻酸メチル28質量部を加え、1時間攪拌し、さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションすることで、水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去して、固形分濃度が40.5質量%であり、数平均分子量(Mn)が1,500であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.2である、加水分解縮合物(A-1)を得て、
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)8質量部と2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン6質量部とジエチレングリコールメチルエチルエーテル220質量部とを仕込み、引き続きメタクリル酸グリシジル10質量部、スチレン20質量部、トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカン-8-イルメタクリレート25質量部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1質量部及びp-ヒドロキシメタクリルアニリド40質量部を仕込み、数平均分子量が、3,400であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.8である共重合体(B-4)を含む重合体溶液を得て、
[A]成分:シロキサンポリマーとして加水分解縮合物(A-1)を含む溶液(加水分解縮合物(A-1)100質量部(固形分)に相当する量)に、[B]成分:高い密着性を発揮する共重合体成分として共重合体(B-4)を含む溶液((B-4)5質量部(固形分)に相当する量)、[C]成分:感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤として(C-2)1-(4,7-ジブトキシ-1-ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート3質量部、[E]成分:シラン化合物として、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを30質量部、[F]成分:酸拡散抑制剤として2,4,6-トリ(2-ピリジル)-1,3,5-トリアジン0.05質量部、[H]成分:界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤((株)東レ・ダウコーニング製の「SH 8400 FLUID」)0.1質量部を加え、固形分濃度が20質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、調製した、感放射線性組成物。」


6 対比・判断
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「加水分解縮合物(A-1)」は、「メチルトリメトキシシラン」及び「フェニルトリメトキシシラン」を単量体成分として含む「シロキサンポリマー」である。そうすると、引用発明の「加水分解縮合物(A-1)」と本件発明1の「ポリシロキサン混合物」とは、「ポリシロキサン」である点で共通する。

(イ)引用発明に「[E]成分:シラン化合物」として含まれる「トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート」は、その化学構造からみて、本件発明1の「ウレイド結合を有するケイ素含有化合物」に相当する。

(ウ)引用発明に「[C]成分:感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤」として含まれる「1-(4,7-ジブトキシ-1-ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート」は、技術的にみて、本件発明1の「重合開始剤」に相当する。

(エ)引用発明の「プロピレングリコールモノメチルエーテル」は、技術的にみて、本件発明1の「溶剤」に相当する。

(オ)引用発明に「[H]成分:界面活性剤」として含まれる「シリコーン系界面活性剤((株)東レ・ダウコーニング製の「SH 8400 FLUID」)」は、本件発明1の「界面活性剤」に相当する。
また、引用発明に「[B]成分:高い密着性を発揮する共重合体成分」として含まれる「共重合体(B-4)」は、本件発明1の「密着増強剤」に相当する。
そうすると、引用発明と本件発明1とは、「現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤、増感剤、および安定剤からなる群から選択される添加剤」を含む点で共通する。

(カ)引用発明の「感放射線性組成物」は、その組成からみて、本件発明1の「ネガ型感光性シロキサン組成物」に相当する。

(キ)以上より、本件発明1と引用発明とは、
「ポリシロキサン、
ウレイド結合を有するケイ素含有化合物、
重合開始剤、
溶剤、および
現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤、増感剤、および安定剤からなる群から選択される添加剤
を含んでなる、ネガ型感光性シロキサン組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]ポリシロキサンが、本件発明1は、「(Ia)プリベーク後の膜が、5重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であり、その溶解速度が3,000Å/秒以下である第一のポリシロキサンと(Ib)プリベーク後の膜の、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が150Å/秒以上あるポリシロキサンとを含む」ポリシロキサン「混合物」であって、「ポリシロキサン混合物に含まれるポリシロキサン(Ia)/ポリシロキサン(Ib)の重量比が1/99?80/20」であるのに対し、引用発明は、そのような混合物ではない点。
[相違点2]ポリシロキサン100重量部に対するウレイド結合を有するケイ素含有化合物の含有量が、本件発明1は「3.0?15.0重量部」であるのに対し、引用発明は「30質量部」である点。
[相違点3]本件発明1は、ポリシロキサン、ウレイド結合を有するケイ素含有化合物、重合開始剤、溶剤、並びに、現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤、増感剤、および安定剤からなる群から選択される添加剤「からなり」、「前記密着増強剤が、イミダゾール類またはシランカップリング剤である」のに対し、引用発明は、[A]成分、[B]成分、[C]成分、[E]成分、及び[H]成分の他に[F]成分:酸拡散抑制剤として「2,4,6-トリ(2-ピリジル)-1,3,5-トリアジン」を含んでなり、[B]成分が、「冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)8質量部と2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン6質量部とジエチレングリコールメチルエチルエーテル220質量部とを仕込み、引き続きメタクリル酸グリシジル10質量部、スチレン20質量部、トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカン-8-イルメタクリレート25質量部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1質量部及びp-ヒドロキシメタクリルアニリド40質量部を仕込」んで得た「共重合体」である点。

イ 判断
事案に鑑みて[相違点3]について検討する。
引用発明における[B]成分の共重合体(B-4)は、その単量体成分からみて、イミダゾール類及びシランカップリング剤の何れにも該当しないことは明らかである。そして、引用文献1の記載事項アの【請求項1】や記載事項ウの「本発明の感放射線性組成物は、[A]シロキサンポリマー、[B]上記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリマー、[C]感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤、及び、必要に応じてその他の任意成分([D]脱水剤等)を含有する。」との記載、記載事項イの「本発明の感放射線性組成物は、上記[A]、[B]及び[C]成分を含んでいることによって、透明性、耐熱透明性、表面硬度及び耐擦傷性という一般的な要求特性をバランス良く満たし、さらに、高温、高湿の厳しい条件下においてもITO透明導電膜やモリブデン等の金属配線に対する優れた密着性及び耐クラック性を発揮する保護膜及び層間絶縁膜を形成可能である。」との記載に基づけば、[B]成分は、引用発明が課題を解決する上で欠くことができない必須の構成であるといえる。そうすると、当業者であっても、引用発明から、少なくとも[B]成分を除き、本件発明1の上記[相違点3]に係る構成とすることが容易になし得たということはできない。

ウ むすび
以上のとおりであるから、[相違点1]及び[相違点2]について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2)本件発明2
ア 対比
本件発明2と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「加水分解縮合物(A-1)」は、「メチルトリメトキシシラン」及び「フェニルトリメトキシシラン」を単量体成分として含む「シロキサンポリマー」である。そうすると、引用発明の「加水分解縮合物(A-1)」と本件発明2の「ポリシロキサン混合物」とは、「ポリシロキサン」である点で共通する。

(イ)引用発明に「[E]成分:シラン化合物」として含まれる「トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート」は、その化学構造からみて、本件発明2の「ウレイド結合を有するケイ素含有化合物」に相当する。

(ウ)引用発明に「[C]成分:感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤」として含まれる「1-(4,7-ジブトキシ-1-ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート」は、技術的にみて、本件発明2の「重合開始剤」に相当する。

(エ)引用発明の「プロピレングリコールモノメチルエーテル」は、技術的にみて、本件発明2の「溶剤」に相当する。

(オ)引用発明の「感放射線性組成物」は、その組成からみて、本件発明2の「ネガ型感光性シロキサン組成物」に相当する。

(カ)以上より、本件発明2と引用発明とは、
「ポリシロキサン、
ウレイド結合を有するケイ素含有化合物、
重合開始剤、および
溶剤
を含んでなる、ネガ型感光性シロキサン組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点4]ポリシロキサンが、本件発明2は、「(Ia)プリベーク後の膜が、5重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であり、その溶解速度が3,000Å/秒以下である第一のポリシロキサンと(Ib)プリベーク後の膜の、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が150Å/秒以上あるポリシロキサンとを含む」ポリシロキサン「混合物」であって、「ポリシロキサン混合物に含まれるポリシロキサン(Ia)/ポリシロキサン(Ib)の重量比が1/99?80/20」であるのに対し、引用発明は、そのような混合物ではない点。
[相違点5]ポリシロキサン100重量部に対するウレイド結合を有するケイ素含有化合物の含有量が、本件発明2は「3.0?15.0重量部」であるのに対し、引用発明は「30質量部」である点。
[相違点6]引用発明2は、ポリシロキサン、ウレイド結合を有するケイ素含有化合物、重合開始剤、および溶剤「からなり」とされているのに対し、引用発明は、[A]成分、[C]成分、[E]成分、及び[H]成分の他に[B]成分及び[F]成分を含んでなる点。

イ 判断
事案に鑑みて[相違点6]について検討すると、[B]成分は、前記(1)イにおいて検討したとおり、引用発明が課題を解決する上で欠くことができない必須の構成であるといえる。そうすると、当業者であっても、引用発明から、少なくとも[B]成分を除き、本件発明2の上記[相違点6]に係る構成とすることが容易になし得たということはできない。

ウ むすび
以上のとおりであるから、[相違点4]及び[相違点5]について検討するまでもなく、本件発明2は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(3)本件発明3?10
本件発明3?10は、いずれも、本件発明1の、ポリシロキサン、ウレイド結合を有するケイ素含有化合物、重合開始剤、溶剤、並びに、現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤、増感剤、および安定剤からなる群から選択される添加剤「からなり」、「前記密着増強剤が、イミダゾール類またはシランカップリング剤である」とする構成、又は、本件発明2の、ポリシロキサン、ウレイド結合を有するケイ素含有化合物、重合開始剤、および溶剤「からなり」とする構成を具備している。そうすると、本件発明3?10も、本件発明1又は本件発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

7 原査定拒絶理由についての判断
本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件発明1?10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。
よって、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。


8 当審拒絶理由についての判断
(1)理由1(明確性)
本願の請求項8の記載は、本件補正によって明確なものとなった。したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

(2)理由2(進歩性)
前記6に記載したとおりであるから、本件発明1?10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできない。


9 むすび
以上のとおり、原査定拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-05 
出願番号 特願2014-509224(P2014-509224)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03F)
P 1 8・ 537- WY (G03F)
P 1 8・ 536- WY (G03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川口 真隆  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
河原 正
発明の名称 ネガ型感光性シロキサン組成物  
代理人 前川 英明  
代理人 遠藤 逸子  
代理人 永井 浩之  
代理人 中村 行孝  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 朝倉 悟  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ