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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1349281
審判番号 不服2017-19253  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-26 
確定日 2019-03-12 
事件の表示 特願2013-108590「電流センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月8日出願公開、特開2014-228418、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(本願)は、平成25年5月23日にされた特許出願である。そして、平成29年4月28日に明細書及び特許請求の範囲についての補正がされたが、同年9月20日付けで拒絶査定(原査定)がされ、同26日に査定の謄本が送達された。
これに対して、同年12月26日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正がされた。
その後、審判長は、平成30年10月24日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知し(拒絶理由通知書の発送日:同30日)、請求人は、同年12月27日に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)をするとともに、意見書を提出した。

第2 本願に係る発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
被測定導体を流れる電流によって磁界を発生する磁性体コアと、
前記磁性体コアに発生した磁界を検出して、検出信号を出力する磁気検出素子と、
前記磁性体コアに、前記被測定導体に流れる電流によって生じる磁界と反対方向の磁界を発生させるフィードバックコイルと、
前記フィードバックコイルに流れる電流を、フィードバックコイルにより発生する磁界と、被測定導体に流れる電流により生じる磁界とが打ち消し合うように制御する制御回路を備え、
前記制御回路は、前記磁気検出素子からの検出信号を増幅するデジタル増幅器を備え、
前記デジタル増幅器は、PWM信号を出力する比較器と、出力フィルタと、を備え、
前記出力フィルタは、前記フィードバックコイルと兼用されたコイルと、コンデンサと、を備えたLCフィルタであり、
前記フィードバックコイルは、前記PWM信号により駆動され、
前記出力フィルタにより前記PWM信号のスイッチングノイズが低減されることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記制御回路は、前記磁気検出素子からの検出信号を増幅する誤差アンプを更に備え、
前記デジタル増幅器は、前記比較器から出力された矩形波に従ってオン・オフする電力スイッチを更に備え、
前記比較器は、前記誤差アンプからの出力と三角波発生回路からの出力を比較し、
前記出力フィルタは、前記電力スイッチからの出力波形を整形すること、
を特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記磁気検出素子が、ホール素子又はフラックス・ゲートセンサであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記磁性体コアが、その一部にギャップを有する環状の部材であり、前記ギャップに前記磁気検出素子が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電流センサ。」

なお、本願発明2ないし本願発明4は、本願発明1の構成を全て含む。

第3 原査定の概要
本願の請求項1ないし請求項4に係る発明は、引用文献1ないし引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:欧州特許出願公開第2515124号明細書
引用文献2:特開昭51-007851号公報
引用文献3:実願昭62-002717号(実開昭63-113468
号)のマイクロフィルム
引用文献4:特開2002-250746号公報

第4 当審拒絶理由の概要
1 理由1(明確性)
請求項1の「前記制御回路は、PWM信号を出力する比較器を備え、前記磁気検出素子からの検出信号を増幅するデジタル増幅器と、前記デジタル増幅器に設けられた出力フィルタであって、前記出力フィルタは、前記フィードバックコイルと兼用されたコイルとコンデンサを備えたLCフィルタであって、前記フィードバックコイルは、前記PWM信号により駆動され、前記出力フィルタにより前記PWM信号のスイッチングノイズが低減される」という記載は、日本語として意味を理解することができない。
したがって、請求項1に係る発明は、明確でない。請求項1の記載を引用して記載された請求項2ないし請求項4に係る発明も、同様である。
よって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 理由2(サポート要件)
請求項2には、「デジタル増幅器が、…誤差アンプと、…比較器と、…電力スイッチと、…出力フィルタと、を備えている」と記載されているが、本願の明細書にも図面にも、デジタル増幅器が誤差アンプを備えていることは記載されていない。
したがって、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。請求項2の記載を引用して記載された請求項3及び請求項4に係る発明も、同様である。
よって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 当審拒絶理由について
以下のとおりであるから、当審拒絶理由は解消された。

1 理由1(明確性)
本件補正により、請求項1の記載は、日本語として意味を理解することができるようになったので、請求項1に係る発明(本願発明1)は、明確になった。請求項1の記載を引用して記載された請求項2ないし請求項4に係る発明(本願発明2ないし本願発明4)も、同様である。

2 理由2(サポート要件)
本件補正により、請求項2に係る発明(本願発明2)は、デジタル増幅器ではなく制御回路が誤差アンプを備えているものとなったので、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。請求項2の記載を引用して記載された請求項3及び請求項4に係る発明(本願発明3及び本願発明4)も、同様である。

第6 原査定の理由について
1 引用文献に記載された発明等
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。原文の引用の後に記載した日本語訳は、当合議体が作成した。

「[0023] Fig. 1 shows schematically a closed loop current sensor
arrangement 1. The sensor is based on a magnetic circuit comprising
a magnetic core 2 of a highly permeable material. The magnetic core
2 is enclosed by a primary coil 3 with a number of primary windings
N_(P) with the current I_(P) that is to be measured. In the arrangement
shown in figure 1 the primary coil 3 consists of only one winding. A
flux sensor element 4 located in the air gap 5 of the magnetic core
2 will detect any magnetic flux induced in the magnetic circuit and
will generate a proportional signal. This signal of the flux sensor
element is amplified by an electronic power stage as part of a
booster circuit 6.」
「[0023]図1は、閉ループ電流センサ構成1を模式的に示す。センサは、透磁率の高い材料の磁気コア2からなる磁気回路に基づいている。磁気コア2は、測定される電流I_(P)が流れるいくつかの一次巻線N_(P)を有する一次コイル3によって囲まれている。図1に示す構成では、一次コイル3は、1つの巻線のみから構成されている。磁気コア2の空隙5に位置する磁束センサ素子4は、磁気回路中に誘導されたあらゆる磁束を検出し、比例信号を発生させる。磁気センサ素子のこの信号は、昇圧回路6の一部である電子電力段によって増幅される。」

「[0024] The booster circuit 6 generates at its output 27 a
secondary current I_(S) which flows through a secondary coil 7 that
also encloses the magnetic core 2 and has a number of secondary
windings N_(S).」
「[0024]昇圧回路6は、その出力27に、同じく磁気コア2を囲むとともにいくつかの二次巻線N_(S)を有する二次コイル7を流れる二次電流I_(S)を発生させる。」

「[0025] The secondary current is opposed to the primary current,
creating a negative feedback. It will compensate the effect of the
primary current on the magnetic circuit, apart from a small magnetic
induction which is required as the actuating variable for the
operation of the feedback loop. This residual induction corresponds
to a current error of the whole sensor arrangement 1 and needs to be
kept small. This can be achieved by designing the amplifier for a
very high gain.」
「[0025]二次電流は、一次電流と逆向きであり、負のフィードバックを生成する。それは、フィードバックループの動作のための制御値として要求される小さな磁気誘導を除いて、磁気回路への一次電流の影響を補償する。この残留磁気誘導は、センサ構成1全体の電流誤差に対応し、小さく保たれる必要がある。これは、非常に高利得の増幅器を設計することで達成される。」

「[0026] The booster circuit 6 is supplied by a power supply +V_(A) and
-V_(A). The magnitude of the secondary current I_(S) is measured with a
terminating resistor 8, also called measuring resistor R_(M), connected
in series to the secondary winding N_(S), here further connected to
ground potential. The voltage drop V_(M) across the measuring resistor
R_(M) is an indication for the secondary current I_(S) and thus gives the
measurement value for the primary current I_(P).」
「[0026]昇圧回路6は、電源+V_(A)及び-V_(A)により電源供給される。二次電流I_(S)の振幅は、二次巻線N_(S)に直列に接続され、さらにアース電位に接続されている、測定抵抗R_(M)とも呼ばれる終端抵抗8を用いて測定される。測定抵抗R_(M)での電圧降下V_(M)は、二次電流I_(S)の指標であり、一次電流I_(P)の測定値を与える。」

「[0027] The booster circuit 6 comprises a switched mode amplifier
which operates with a pulse width and density modulator that
operates based on pulse width and density modulation, turning the
compensation current into a pulse width and density modulated
current, with a switching frequency that is a function of the
compensation current in the sense that the switching frequency is
high at small currents and low at high currents.」
「[0027]昇圧回路6は、小電流ではスイッチング周波数が高く、大電流では低いという具合に、補償電流の関数となるスイッチング周波数で補償電流をパルス幅・密度変調電流に変換するパルス幅・密度変調に基づいて動作するパルス幅・密度変調器を備えて動作するスイッチモード増幅器を含む。」

「[0028] Figure 2 shows schematically the integration of the
inventive circuitry 14 applied between the modulator 12 and the
power MOSFET output bridge of the booster circuit 6.」
「[0028]図2は、昇圧回路6の変調器12とパワーMOSFET出力ブリッジとの間に適用された本発明の回路14の組み込みを模式的に示す。」

「[0029] The booster circuit 6 comprises a preamplifier 21, followed
by the modulator 12 with two complementary outputs 18, 18'. At the
output side of the booster circuit 6 there is a power stage with a
power MOSFET-half-bridge, having a first MOSFET 23 and a second
MOSFET 22. The first MOSFET 23 is connected to the negative supply
voltage -V_(S), that is why it is called also low-side MOSFET. The
second MOSFET, 22 is connected to the positive supply voltage +V_(S),
that is why it is called also high-side MOSFET.」
「[0029]昇圧回路6は、2つの相補出力18、18’を有する変調器12に接続された前置増幅器21を備えている。昇圧回路6の出力側には、第1のMOSFET23及び第2のMOSFET22を有するパワーMOSFETハーフブリッジを有する電力段がある。第1のMOSFET23は、負電源電圧-V_(S)に接続されており、これが、低圧側MOSFETとも呼ばれる理由である。第2のMOSFET、22は、正電源電圧+V_(S)に接続されており、これが、高圧側MOSFETとも呼ばれる理由である。」

「[0030] The gate of the first MOSFET 23 is connected to a first
modulator output 18. The gate of the second MOSFET 22 is connected
to the second modulator output 18', which is complementary to the
first modulator output 18, via a pulse transformer 9. The pulse
transformer features a transformation ratio around 1 or higher,
selected to reach the desired drive voltage for the power MOSFET
half bridge 22, 23.」
「[0030]第1のMOSFET23のゲートは、第1の変調器出力18に接続されている。第2のMOSFET22のゲートは、パルストランス9を介して、第1変調器出力18に相補的な第2変調器出力18’に接続されている。パルストランスは、パワーMOSFETハーフブリッジ22、23の所望の駆動電圧に達するように選択されたおよそ1又はそれを越える変圧比を特徴とする。」

「[0031] In addition, the gate of the second MOSFET 22 is connected
to a blocking and discharge circuit 10 in order to effectively keep
the transitor gate voltage on high level when the MOSFET 22 shall be
in on-state and to force the gate voltage to low when the second
MOSFET 22 shall be turned off.」
「[0031]また、MOSFET22がオン状態にあるべきときにトランジスタゲート電圧をハイレベルに効果的に維持し、第2のMOSFET22がターンオフされるべきときにゲート電圧を強制的にローにするために、第2のMOSFET22のゲートは、ブロック放電回路10に接続されている。」

「[0032] The gate of the first MOSFET 23 is further connected to a
turn-off circuit 11 which is controlled by the second modulator
output 18' via a connection line 13 to boost the turning off of the
first MOSFET 23.」
「[0032]第1のMOSFET23のターンオフを向上させるために、第1のMOSFET23のゲートは、接続ライン13を介して第2の変調器出力18’によって制御されるターンオフ回路11にも接続されている。」

「[0033] So between the modulator 12 and the pair of high-power
MOSFETs 22, 23, there is the circuitry comprising the pulse
transformer 9, the blocking and discharge unit 10 and the turn-off
circuit 11. In order to achieve good matching and switching
performance, the half bridge is preferably built from two n-type
MOSFETs, however the use of complementary MOSFETs is also possible.
As an alternative, the principle can also be used with a full bridge
instead of a half bridge of power switches.」
「[0033]このように、変調器12と一対のハイパワーMOSFET22、23との間には、パルストランス9、ブロック放電ユニット10及びターンオフ回路11を備える回路がある。良好な整合性能及びスイッチング性能を達成するために、ハーフブリッジは2つのn型MOSFETから構築されることが好ましいが、相補的なMOSFETを使用することも可能である。代替として、この原理は、パワースイッチのハーフブリッジの代わりに、フルブリッジで使用することもできる。」

「[0034] Downstream of the MOSFET half bridge 22, 23 there is a low
pass output filter 26, here with an RC arrangement, which removes
the high-frequency switching components of the modulated signal. The
filtered current signal is then fed through the secondary coil 7,
see fig. 1.」
「[0034]MOSFETハーフブリッジ22、23の下流側には、ここではRC構成による低域通過出力フィルタ26があり、変調された信号の高周波スイッチング成分を除去する。フィルタリングされた電流信号は、その後、二次コイル7に供給される。図1を参照されたい。」

Fig. 1


Fig. 2


イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の前記アの記載によれば、以下のことが認められる。

(ア)引用文献1には、閉ループ電流センサ構成1が記載されている([0023]、図1)。

(イ)閉ループ電流センサ構成1は、磁気コア2からなる磁気回路に基づいており、磁気コア2は、測定される電流I_(P)が流れる一次コイル3によって囲まれ、磁気コア2の空隙5に位置する磁束センサ素子4は、磁気回路中に誘導された磁束を検出し、比例信号を発生させ、磁気センサ素子のこの信号は、昇圧回路6によって増幅される([0023]、図1)。
したがって、引用文献1には、測定される電流I_(P)が流れる一次コイル3によって囲まれた磁気コア2からなる磁気回路と、磁気コア2の空隙5に位置し、磁気回路中に誘導された磁束を検出して比例信号を発生させる磁束センサ素子4と、磁束センサ素子4の比例信号を増幅する昇圧回路6とを備える閉ループ電流センサ構成1が記載されている。

(ウ)昇圧回路6は、磁気コア2を囲む二次コイル7を流れる二次電流I_(S)を発生させる([0024])。

(エ)二次電流I_(S)は、一次電流と逆向きであり、負のフィードバックを生成し、磁気回路への一次電流の影響を補償する([0025])。ここで、一次電流が測定される電流I_(P)であることは明らかである。
したがって、二次電流I_(S)は、測定される電流I_(P)と逆向きであり、負のフィードバックを生成し、測定される電流I_(P)の磁気回路への影響を補償する。

(オ)昇圧回路6は、2つの相補出力18、18’を有する変調器12に接続された前置増幅器21を備え、昇圧回路6の出力側には、第1のMOSFET23及び第2のMOSFET22を有するパワーMOSFETハーフブリッジがある([0029]、図2)。

(カ)昇圧回路6は、パルス幅・密度変調に基づいて動作するパルス幅・密度変調器を備えて動作するスイッチモード増幅器を含む([0027])。

(キ)第1のMOSFET23は負電源電圧-V_(S)に、第2のMOSFET22は正電源電圧+V_(S)に、それぞれ接続されている([0029]、図2)。

(ク)第1のMOSFET23のゲートは、第1の変調器出力18に接続されるとともに、第2変調器出力18’によって制御されるターンオフ回路11に接続されている([0030]、[0032]、図2)。

(ケ)第2のMOSFET22のゲートは、パルストランス9を介して第2変調器出力18’に接続されるとともに、ブロック放電回路10に接続されている([0030]、[0031]、図2)。

(コ)MOSFETハーフブリッジ22、23の下流側には、RC構成の低域通過出力フィルタ26があり、変調された信号の高周波スイッチング成分を除去する([0034]、図2)。

(サ)前記(イ)、(オ)及び(キ)ないし(ケ)を踏まえて図2を参照すると、昇圧回路6は、磁束センサ素子4の比例信号が入力される前置増幅器21と、前置増幅器21に接続され、2つの相補出力18、18’を有する変調器12と、第1のMOSFET23及び第2のMOSFET22を有するパワーMOSFETハーフブリッジと、ターンオフ回路11と、パルストランス9と、ブロック放電回路10と、RC構成の低域通過出力フィルタ26とを備えることが分かる。

(シ)以上のことをまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「測定される電流I_(P)が流れる一次コイル3によって囲まれた磁気コア2からなる磁気回路と、磁気コア2の空隙5に位置し、磁気回路中に誘導された磁束を検出して比例信号を発生させる磁束センサ素子4と、磁束センサ素子4の比例信号を増幅する昇圧回路6とを備える閉ループ電流センサ構成1であって、
昇圧回路6は、磁気コア2を囲む二次コイル7を流れる二次電流I_(S)を発生させ、
二次電流I_(S)は、測定される電流I_(P)と逆向きであり、負のフィードバックを生成し、測定される電流I_(P)の磁気回路への影響を補償し、
昇圧回路6は、パルス幅・密度変調に基づいて動作するパルス幅・密度変調器を備えて動作するスイッチモード増幅器を含み、
昇圧回路6は、磁束センサ素子4の比例信号が入力される前置増幅器21と、前置増幅器21に接続され、2つの相補出力18、18’を有する変調器12と、第1のMOSFET23及び第2のMOSFET22を有するパワーMOSFETハーフブリッジと、ターンオフ回路11と、パルストランス9と、ブロック放電回路10と、RC構成の低域通過出力フィルタ26とを備え、
第1のMOSFET23は負電源電圧-V_(S)に、第2のMOSFET22は正電源電圧+V_(S)に、それぞれ接続され、
第1のMOSFET23のゲートは、第1の変調器出力18に接続されるとともに、第2変調器出力18’によって制御されるターンオフ回路11に接続され、
第2のMOSFET22のゲートは、パルストランス9を介して第2変調器出力18’に接続されるとともに、ブロック放電回路10に接続され、
低域通過出力フィルタ26は、MOSFETハーフブリッジ22、23の下流側にあり、変調された信号の高周波スイッチング成分を除去する
閉ループ電流センサ構成1。」

(2)引用文献2
引用文献2の第2ページ左上欄第15行ないし右上欄第6行及び第4図の記載によれば、引用文献2には、電流の大きさを検知する検知コイルとノイズ除去用のローパスフィルタを構成するコイルとを兼用することが記載されている。

(3)引用文献3
引用文献3の明細書第6ページ第2行ないし第12行、第2図及び第3図の記載によれば、引用文献3には、LCフィルタ回路のコイルを直流直巻電動機の界磁巻線による界磁回路で兼用することが記載されている。

(4)引用文献4
引用文献4の【0004】及び図13の記載によれば、引用文献4には、アナログ信号と三角波とをコンパレータで大小比較してパルス幅変調信号(PWM信号)に変換することが記載されている。

2 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。

ア 引用発明の「閉ループ電流センサ構成1」は、本願発明1の「電流センサ」に相当する。

イ 引用発明の「測定される電流I_(P)」は、本願発明1の「被測定導体を流れる電流」に相当する。

ウ 引用発明の「測定される電流I_(P)が流れる一次コイル3によって囲まれた磁気コア2」には、「測定される電流I_(P)」による磁界が発生することが明らかである。
したがって、前記イを踏まえると、引用発明の「磁気コア2」は、本願発明1の「被測定導体を流れる電流によって磁界を発生する磁性体コア」に相当する。

エ 引用発明の「磁気回路中に誘導された磁束」は、「磁気コア2からなる磁気回路」中に誘導され、「磁気コア2の空隙5に位置」する「磁束センサ素子4」により「検出」されるから、「磁気回路」をなす「磁気コア2」中に誘導されたものであり、したがって、前記ウを踏まえると、本願発明1の「前記磁性体コアに発生した磁界」に相当する。

オ 引用発明の「磁気コア2の空隙5に位置し、磁気回路中に誘導された磁束を検出して比例信号を発生させる磁束センサ素子4」は、前記エを踏まえると、本願発明1の「前記磁性体コアに発生した磁界を検出して、検出信号を出力する磁気検出素子」に相当する。

カ 引用発明の「磁気コア2を囲む二次コイル7を流れる二次電流I_(S)」は、「測定される電流I_(P)と逆向きであり、負のフィードバックを生成」するから、「磁気コア2を囲む二次コイル7」は、「測定される電流I_(P)」によって「磁気コア2」に発生する磁界と反対方向の磁界を発生させるフィードバックコイルである。
したがって、前記イないしエを踏まえると、引用発明の「磁気コア2を囲む二次コイル7」は、本願発明1の「前記磁性体コアに、前記被測定導体に流れる電流によって生じる磁界と反対方向の磁界を発生させるフィードバックコイル」に相当し、引用発明の「磁気コア2を囲む二次コイル7を流れる二次電流I_(S)」は、本願発明1の「前記フィードバックコイルに流れる電流」に相当する。

キ 引用発明の「昇圧回路6」は、「磁気コア2を囲む二次コイル7を流れる二次電流I_(S)を発生させ」、「二次電流I_(S)」は、「測定される電流I_(P)と逆向きであり、負のフィードバックを生成し、測定される電流I_(P)の磁気回路への影響を補償」する。すなわち、引用発明の「昇圧回路6」は、「磁気コア2を囲む二次コイル7を流れる二次電流I_(S)」を、「二次電流I_(S)」によって「磁気コア2」に発生する磁界と、「測定される電流I_(P)」によって「磁気コア2」に発生する磁界とが打ち消し合うように制御する回路である。
したがって、引用発明の「昇圧回路6」は、前記イ及びカを踏まえると、本願発明1の「前記フィードバックコイルに流れる電流を、フィードバックコイルにより発生する磁界と、被測定導体に流れる電流により生じる磁界とが打ち消し合うように制御する制御回路」に相当する。

ク 引用発明の「昇圧回路6」は、「磁束センサ素子4の比例信号を増幅する」回路である。そして、「磁束センサ素子4の比例信号が入力される前置増幅器21と、前置増幅器21に接続され、2つの相補出力18、18’を有する変調器12と、第1のMOSFET23及び第2のMOSFET22を有するパワーMOSFETハーフブリッジと」「を備え」、「第1のMOSFET23は負電源電圧-V_(S)に、第2のMOSFET22は正電源電圧+V_(S)に、それぞれ接続され」、「第1のMOSFET23のゲートは、第1の変調器出力18に接続され」、「第2のMOSFET22のゲートは、」「第2変調器出力18’に接続される」から、「磁束センサ素子4の比例信号」は、「変調器12」の「2つの相補出力18、18’」に変換され、「第1の変調器出力18」と「第2変調器出力18’」とが「第1のMOSFET23のゲート」と「第2のMOSFET22のゲート」とを相補的にオンすることで、「第1のMOSFET23」に接続された「負電源電圧-V_(S)」と「第2のMOSFET22」に接続された「正電源電圧+V_(S)」とが相補的に出力されることになる。これは、「昇圧回路6」が「磁束センサ素子4の比例信号」をデジタル増幅する回路を備えていることにほかならない。
そして、引用発明の「昇圧回路6」が備える「磁束センサ素子4の比例信号」をデジタル増幅する回路は、前記オ及びキを踏まえると、本願発明の「制御回路」が備える「前記磁気検出素子からの検出信号を増幅するデジタル増幅器」に相当する。

ケ 引用発明の「昇圧回路6」は、「パルス幅・密度変調に基づいて動作するパルス幅・密度変調器を備えて動作するスイッチモード増幅器を含」むから、引用発明の「昇圧回路6」が備える「磁束センサ素子4の比例信号」をデジタル増幅する回路は、パルス幅変調(PWM)信号を出力する。このことと、本願発明1の「デジタル増幅器」が「PWM信号を出力する比較器」「を備え」ることとは、「デジタル増幅器がPWM信号を出力する」点で共通する。

コ 引用発明の「昇圧回路6」が「磁気コア2を囲む二次コイル7を流れる二次電流I_(S)を発生させ」ることは、前記ケを踏まえると、本願発明1の「フィードバックコイル」が「PWM信号により駆動され」ることに相当する。

サ 引用発明の「RC構成の低域通過出力フィルタ26」は、「MOSFETハーフブリッジ22、23の下流側」にあるから、「昇圧回路6」が備える「磁束センサ素子4の比例信号」をデジタル増幅する回路の一部をなすということができる。
したがって、引用発明の「RC構成の低域通過出力フィルタ26」と、本願発明1の「前記デジタル増幅器」が備える「出力フィルタ」であって、「前記フィードバックコイルと兼用されたコイルと、コンデンサと、を備えたLCフィルタ」である「出力フィルタ」とは、前記クを踏まえると、「デジタル増幅器」が備える「出力フィルタ」である点で共通する。

シ 引用発明の「低域通過出力フィルタ26」は、「MOSFETハーフブリッジ22、23の下流側に」あるから、前記ク及びケを踏まえると、「昇圧回路6」が備える「磁束センサ素子4の比例信号」をデジタル増幅する回路が出力するパルス幅変調(PWM)信号が入力される。そうすると、引用発明の「低域通過出力フィルタ26」が「除去する」「変調された信号の高周波スイッチング成分」における「変調された信号」は、パルス幅変調(PWM)信号であり、したがって、本願発明1の「PWM信号」に相当する。

ス 引用発明の「低域通過出力フィルタ26」が「変調された信号の高周波スイッチング成分を除去する」ことは、前記サ及びシを踏まえると、本願発明1の「前記出力フィルタにより前記PWM信号のスイッチングノイズが低減される」ことに相当する。

(2)一致点及び相違点
前記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点
「被測定導体を流れる電流によって磁界を発生する磁性体コアと、
前記磁性体コアに発生した磁界を検出して、検出信号を出力する磁気検出素子と、
前記磁性体コアに、前記被測定導体に流れる電流によって生じる磁界と反対方向の磁界を発生させるフィードバックコイルと、
前記フィードバックコイルに流れる電流を、フィードバックコイルにより発生する磁界と、被測定導体に流れる電流により生じる磁界とが打ち消し合うように制御する制御回路を備え、
前記制御回路は、前記磁気検出素子からの検出信号を増幅するデジタル増幅器を備え、
前記デジタル増幅器は、PWM信号を出力し、出力フィルタを備え、
前記フィードバックコイルは、前記PWM信号により駆動され、
前記出力フィルタにより前記PWM信号のスイッチングノイズが低減される電流センサ。」

イ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1は、「デジタル増幅器」が「PWM信号を出力する比較器」「を備え」るのに対し、
引用発明は、「昇圧回路6」が備える「磁束センサ素子4の比例信号」をデジタル増幅する回路(本願発明1の「デジタル増幅器」に相当する。)が「2つの相補出力18、18’を有する変調器12」を備える点。

(イ)相違点2
本願発明1は、「デジタル増幅器」が備える「出力フィルタ」が「フィードバックコイルと兼用されたコイルと、コンデンサと、を備えたLCフィルタ」であるのに対し、
引用発明は、「昇圧回路6」が備える「磁束センサ素子4の比例信号」をデジタル増幅する回路(本願発明1の「デジタル増幅器」に相当する。)が備える出力フィルタが「RC構成の低域通過出力フィルタ26」である点。

(3)相違点2についての判断
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
引用発明の出力フィルタは、「RC構成の低域通過出力フィルタ26」であるから、抵抗とコンデンサとで構成されるものであり、コイルを備えていない。したがって、引用発明において、「磁気コア2を囲む二次コイル7」(本願発明1の「フィードバックコイル」に相当する。)を、出力フィルタである「RC構成の低域通過出力フィルタ26」を構成するために使用することはできない。
引用文献2及び引用文献3には、LCフィルタを構成するコイルを、電流の大きさを検知する検知コイルや直流直巻電動機の界磁巻線としても使用することが記載されている。しかし、引用発明の出力フィルタは、RCフィルタであり、そもそもコイルを備えていないから、引用文献2や引用文献3に記載された事項を引用発明に適用する余地がない。
また、引用文献4には、フィルタについての記載はない。
したがって、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明と引用文献2ないし引用文献4に記載された発明とに基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。

(4)本願発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1ないし引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 本願発明2ないし本願発明4について
本願発明2ないし本願発明4は、本願発明1の構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点1及び相違点2(前記2(2)イ(ア)及び(イ))で引用発明と相違する。
そして、前記2(3)のとおり、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明と引用文献2ないし引用文献4に記載された発明とに基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点2に係る本願発明2ないし本願発明4の構成も同様である。
したがって、本願発明2ないし本願発明4は、引用文献1ないし引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

4 原査定の判断について
原査定は、フィルタを構成するコイルを他の目的で設けたコイルと兼用することは、例えば引用文献2及び引用文献3に記載されているように周知技術であるとした上で、引用文献1に記載された発明と周知技術とは、コイルによりフィルタを構成する点で共通するから、引用文献1に記載された発明の「低域通過出力フィルタ26」を構成するコイルを「二次コイル7」と兼用することは当業者にとって容易であると判断した。
しかし、引用発明の「低域通過出力フィルタ26」は、「RC構成」であり、抵抗とコンデンサとで構成されるものであるから、コイルを備えていない。そうすると、引用文献1に記載された発明(引用発明)と周知技術とは、コイルによりフィルタを構成する点で共通するということはできない。
したがって、原査定の理由は、維持することができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。
また、他に、本願は拒絶をするべきものであるという理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-25 
出願番号 特願2013-108590(P2013-108590)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01R)
P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 小林 紀史
中村 説志
発明の名称 電流センサ  
代理人 木内 光春  
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