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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D
管理番号 1349295
審判番号 不服2017-18783  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-19 
確定日 2019-02-20 
事件の表示 特願2013-119356「回転機械用シュラウド及びその組立て方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月26日出願公開、特開2013-256944〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月6日(パリ条約による優先権主張2012年6月8日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成28年6月3日に手続補正書が提出され、平成29年3月2日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同年6月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月1日付けで拒絶査定(発送日:同年9月5日)がされ、これに対して、同年12月19日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に特許請求の範囲について補正する手続補正がされたものである。

第2 平成29年12月19日の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成29年12月19日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本願補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成29年6月1日の手続補正書)の請求項1に、

「【請求項1】
ハウジング、回転可能なシャフト及び前記回転可能なシャフトから外側に延在する動翼を含むタービンで使用されるシュラウドであって、
前記ハウジングに結合し、第1の端部、第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間に延在する本体を備える整列部材であって、
第2の端部が、前記動翼から下流の漏洩流を促進させるように構成された弧状部分を含み、
第2の端部が、
(i)一対の略直線部分であって、弧状部分が一対の略直線部分の間に延在する一対の略直線部分、或いは
(ii)第1の端部と前記弧状部分との間に延在する略直線部分
をさらに含む、
整列部材と、
前記動翼と前記本体との間に画成されるギャップの封止を促進させるように前記本体に結合するラビリンスシールと、
を備える、シュラウド。」
とあったものを、

「【請求項1】
ハウジング、回転可能なシャフト及び前記回転可能なシャフトから外側に延在する動翼を含むタービンで使用されるシュラウドであって、
前記ハウジングに結合し、第1の端部、第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間に延在し、第1の溝及び第2の溝を備える本体を備える整列部材であって、
第1の端部が、略直線部分を有し、
第2の端部が、前記動翼から下流の漏洩流を促進させるように構成された弧状部分を含み、
第2の端部が、
(i)一対の略直線部分であって、弧状部分が一対の略直線部分の間に延在する一対の略直線部分、或いは
(ii)第1の端部と前記弧状部分との間に延在する略直線部分
をさらに含む、
整列部材と、
前記第1の端部の略直線部分と前記第2の端部の略直線部分との間に配置され、前記動翼と前記本体との間に画成されるギャップの封止を促進させるように前記本体に結合するラビリンスシールと、
を備える、シュラウド。」
と補正することを含むものである(下線は補正箇所を示すために審判請求人が付した。)。

上記補正は、発明を特定するために必要な事項である整列部材の「本体」について「第1の溝及び第2の溝を備える」と限定し、同「第1の端部」について「略直線部分を有し」と限定し、同「ラビリンスシール」について「前記第1の端部の略直線部分と前記第2の端部の略直線部分との間に配置され」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 引用文献
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された米国特許出願公開第2006/0127214号明細書(以下「引用文献1」という。)には、「GAS TURBINE GAS PATH CONTOUR」(ガスタービンのガス流路輪郭)に関して、図面(特に、FIG.1、FIG.2、FIG.6、及びFIG.7参照)と共に次の事項が記載されている。なお、仮訳は当審による。以下同様。

ア 「[0013] FIG. 1 shows an axial cross-section through a turbofan gas turbine engine 10. It will be understood however that the invention may also be applied to any type of airborne or land-based gas turbine engine. Air intake into the engine passes over fan blades 12 is split into an outer annular flow through the bypass duct 14 and an inner flow through a compressor 16 to a combustor 18, where it is combusted and the resulting hot gases are expelled through the turbine section 20, which includes vanes 22 and turbine blades 24, before exiting the engine.」
(仮訳)
「図1は、ターボファンガスタービンエンジン10の軸方向の断面を示している。しかしながら、本発明は、任意の種類の航空または陸上ガスタービンエンジンに適用することができることが理解されよう。エンジンのファンブレード12上を通過する際に吸入された空気は、バイパスダクト14を通る外側環状流と、圧縮機16から燃焼器18を通る内部流に分割され、ここで燃焼させ、得られた高温ガスは、タービンセクション20、ベーン22、タービンブレード24を通って排出され、エンジンを出る。」

イ 「[0014] Referring to FIG. 2, the turbine section has a gas path 26 defined therethrough which is generally annular and extends axially from the engine inlet to the exhaust (neither indicated). The gas path 26 is defined by an inner wall 28 and an outer wall 30 which each comprise a surface of revolution about the longitudinal engine axis 32 (reference FIG. 1). (以下略)」
(仮訳)
「図2を参照すると、タービンセクションはガス流路26を備え、それは概ね環状で、エンジン入口から排気口(いずれも示されていない)に軸線方向に延び、それを通るように規定される。ガス経路26は内壁28と外壁30によって画定され、各々は長手方向エンジン軸32の周りの回転面を有している(図1を参照)。(以下略)」

ウ 「[0015] The gas path walls 28 and 30 of sections 34 are defined by successive gas turbine components such as rotor blade platforms 36, blade tip shrouds 38, static shrouds 40, and vane platforms 42 and 44. The platforms 36, 42, and 44 and static shrouds 40 thus provide gas path defining surfaces 48, which direct air/combustion gases through the primary gas path. (以下略)」
(仮訳)
「複数のセクション34のガス通路の内壁28及び外壁30は、ロータブレードプラットフォーム36、ブレード先端シュラウド38、静止シュラウド40、及びベーンプラットホーム42及び44のような、連続的なガスタービン構成要素によって規定される。プラットフォーム36、42、及び44と静止シュラウド40は、このようにガス流路規定面48を構成し、主要なガス通路を通って空気/燃焼ガスを案内する。(以下略)」

エ 「[0016] According to the present invention, the gas path defining surfaces 48 provided by platforms 36, 42, 44 and shrouds 40 and 38 may be provided with an integrally angled lip or gas flow redirector 56 adjacent a trailing edge thereof, downstream of an exit of aerodynamic throat 52. Referring to FIG. 3, vane platform 42 is shown with a downwardly angled lip 56. Referring to FIG. 4, blade platform 36 is provided with an upwardly angled lip 56. As indicated in FIGS. 3 and 4 with angle α, the lip 56 deviates from the general direction or shape “A” of the platform in a manner so as to redirect the airflow passing gas path defining surface 48 into better alignment with a general direction or shape “B” of a downstream platform 58 of downstream article 60 (in this case, a blade and vane, respectively), and thereby reduce losses associated with turbulence caused by airflow disruptions.(以下略)」
(仮訳)
「本発明によれば、プラットホーム36、42、44、及び静止シュラウド40及びブレード先端シュラウド38によって提供されたガス流路規定面48は、空力学的喉部52の出口の下流にある後縁に隣接して、一体的に傾斜したリップ又はガス流れ方向転換器56を備える。図3を参照すると、ベーンプラットフォーム42は下方に傾斜したリップ56が示されている。図4を参照すると、ブレードプラットフォーム36は上方に傾斜したリップ56が備える。アングルαとして図3及び図4に示すように、リップ56はいくぶんプラットフォームの一般的方向、又は形状Aから逸脱し、そのため、空気流ガス通路規定面48を通る気流を方向変更し、下流物品60(この場合には、ブレードとベーンのそれぞれ)の下流側プラットフォーム58の一般的方向、又は形状Bに良好に整合させ、それによって、空気流れの混乱によって生じる乱流に伴う損失を低減する。(以下略)」

オ 「[0018] As mentioned, the gas flow redirector lip 56 can be located at various and multiple positions in the engine. In the embodiments shown, the redirector lip 56 is shown on a radially inner surface of the gas path, however it will be appreciated that redirector lip 56 can also be used on an outer gas path surface in the turbine, such as the static shroud embodiment depicted in FIG. 7 or on a turbine blade shroud 38 (embodiment not depicted) and, likewise, the invention may be employed in a compressor or other areas of the gas turbine gas path, as well. The exact shape and angle of the lip 56 can be to the designer's preference. Referring to FIGS. 5 and 6, the active or redirecting surface of lip 56 may be a linear surface of revolution about the engine axis (i.e. appears “flat”in FIG. 5) or may be curved in the axial and/or circumferential directions on a suitable constant or variable radius r (i.e. appears “curved” in FIG. 6) as desired. (以下略)」
(仮訳)
「上述のように、ガス流れ方向転換器リップ56は、エンジン内の様々なおよび複数の位置で配置することができる。図示の実施形態では、リップ56がガス流路の半径方向内側表面上に示されるが、リップ56はタービンのガス流路外表面上、例えば、図7に示されている静止シュラウドの実施形態や、タービンブレードシュラウド38(実施形態図示せず)に使用することが可能であり、同様に、本発明は、ガスタービンのガス流路の圧縮領域または他の領域にも同様にして用いることができる。リップ部56の正確な形状および角度は、設計者の好みに合わせることができる。図5及び図6を参照すると、リップ56の活性または方向転換面は、必要に応じて、エンジン軸線(すなわち、図5において“平坦”に見える)を中心に回転する直線であってもよいし、或いは適切な一定の又は可変の半径r(すなわち、図6において“湾曲”に見える)を持ち、軸方向及び/又は円周方向に湾曲していてもよい。(以下略)」

カ 「[0019] The direction or angle provided to lip 56 preferably includes a slight over- or under-correction (as the case may be) so that gases are directed smoothly over the boundary layer region of the downstream section of the gas path, and preferably avoids any local obstacles or direction changes located between the lip 56 and the general direction provided by the downstream section. 」
(仮訳)
「リップ56に設けられた方向または角度は、好ましくはわずかな過剰または過小補正(場合に応じて)を含み、ガスがガス流路の下流セクションの境界層領域を越えて滑らかに向けられ、好ましくはリップ56と下流セクションの一般的方向の間に位置する任意の局所的な障害物又は方向変更を回避する。」

キ 上記アと合わせみると、FIG.1及びFIG.2には、回転可能なシャフト及び前記回転可能なシャフトから外側に延在するタービンブレード24を含むタービンセクション20が記載されているといえる。

ク FIG.7には、静止シュラウド40が左端から右端にかけて直線状のガス流路規定面48を有し、右端直前にリップ56が設けられることが示されていることからみて、静止シュラウド40は、左端部、右端部、及び左端部と右端部との間に延在し、ガス流路規定面48を画定する部分を備え、左端部が直線状のガス流路規定面48を有することが記載されているといえる。
また、リップ56について、上記エの「空気流ガス通路規定面48を通る気流を方向変更し、下流物品60(この場合には、ブレードとベーンのそれぞれ)の下流側プラットフォーム58の一般的方向、又は形状Bに良好に整合させ、それによって、空気流れの混乱によって生じる乱流に伴う損失を低減する。」との記載、及び上記オの「リップ56の活性または方向転換面は、・・・適切な一定の又は可変の半径r(すなわち、図6において“湾曲”に見える)を持ち、軸方向及び/又は円周方向に湾曲していてもよい。」との記載を踏まえると、FIG.7には、右端部が、タービンブレード24から下流の空気流ガス通路規定面48を通る気流を方向変更し下流側プラットフォーム58の形状に良好に整合させる湾曲したリップ56を含み、さらに右端部が、左端部と前記リップ56との間に延在する直線状のガス流路規定面48を含むことが記載されているといえる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「回転可能なシャフト及び前記回転可能なシャフトから外側に延在するタービンブレード24を含むタービンセクション20で使用される静止シュラウド40であって、
左端部、右端部、及び左端部と右端部との間に延在し、ガス流路規定面48を画定する部分を備える静止シュラウド40であって、
左端部が、直線状のガス流路規定面48を有し、
右端部が、前記タービンブレード24から下流の空気流ガス通路規定面48を通る気流を方向変更し下流側プラットフォーム58の形状に良好に整合させる湾曲したリップ56を含み、
右端部が、
左端部と前記リップ56との間に延在する直線状のガス流路規定面48
をさらに含む静止シュラウド40。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された米国特許出願公開第2005/0186079号明細書(以下「引用文献2」という。)には、「GAS TURBINE TIP SHROUD RAILS」(ガスタービン先端シュラウドレール)に関して、図面(特に、FIG.5参照)と共に次の事項が記載されている。

ア 「[0033] A typical turbine rotor blade 50, as shown in FIG. 5, has an airfoil section 51 and a tip shroud 52 attached to an outer end of the airfoil section 51. Attached to an outer surface of the tip shroud 52 is at least one tip shroud rail 60. The airfoil section 51 comprises an upstream leading edge 53 and a downstream trailing edge 55. The airfoil section 51 extends longitudinally along a longitudinal or radial axis in a spanwise direction of the airfoil section 51 from an airfoil base 56 to the tip shroud 52. 」
(仮訳)
「図5に示すように、一般的なタービンロータブレード50は、翼形部51と翼形部51の外側端部に取り付けられた先端シュラウド52を有している。先端シュラウド52の外面に結合し、少なくとも1つの先端シュラウドレール60が形成されている。翼形部51は、上流側前縁53および後縁55を有している。翼形部51は、翼形部根元56から先端シュラウド52までの翼形部51の翼幅方向において半径方向軸線或いは長手方向に縦軸線に沿って延びる。」

イ 「[0035] Referring again to FIG. 5, surrounding a respective row of turbine rotor blades 50 are one or more stationary shrouds 70 attached to an outer casing 80 of the turbine section. Each stationary shroud 70 is preferably formed in a plurality of circumferential adjoining arcuate segments that collectively form a complete ring around the tip shrouds 52 of each row of turbine rotor blades 50. Integrally attached to one or more stationary shroud 70 are typically one or more stationary shroud rails 71. The space between the tip shrouds 52 and the stationary shrouds is the clearance gap 72. At least one stationary shroud rail 70 is preferably aligned to match at least one tip shroud rail 60 to form a labyrinth in the clearance gap 72. Oftentimes, each stationary shroud 70 includes a honeycomb rub strip (not shown) fixedly joined or bonded directly to an inner surface of the stationary shroud 70 to reduce the parasitic loss of combustion gases through the clearance gaps 72. In the event a honeycomb rub strip is employed, hardened cutter teeth (not shown) may be attached to the tip shroud rails in a manner to cut a path through the honeycomb rub strip. 」
(仮訳)
「再び図5を参照すると、タービンロータブレード50のそれぞれの列を囲むタービンセクションの外側ケーシング80に取り付けられた1つまたは複数の静止シュラウド70が設けられている。各々の静止シュラウド70は、タービンロータブレード50のそれぞれの列の先端シュラウド52の周りに完全なリングを集合的に形成する、周方向に隣接する複数の弧状セグメントに形成されることが好ましい。1又は複数の静止シュラウド70に一体的に取り付けられる、典型的には、1つまたは複数の静止シュラウド・レール71がある。先端シュラウド52と静止シュラウドとの間の空間は、隙間72が形成されている。少なくとも1つの静止シュラウド・レール70は少なくとも1つの先端シュラウド60を空隙72内にラビリンスを形成するように整列されることが好ましい。多くの場合、各静止シュラウド70は、クリアランスギャップ72を通る燃焼ガスの寄生損失を減少させるために、静止シュラウド70の内表面に固定接合又直接接着されたハニカム状のすり材(図示せず)を含む。ハニカムすり材が用いられる場合には、焼入れしたカッタ歯(図示せず)は、ハニカム状のすり材を貫いて経路を切断するように先端シュラウド・レールに取り付けられてもよい。」

ウ FIG.5には、静止シュラウド70の中央部の静止シュラウド・レール70の左右に溝が形成され、静止シュラウド70の左端部と右端部には略直線部分がそれぞれ形成されることが示されている。

エ 上記イの「先端シュラウド52と静止シュラウドとの間の空間は、隙間72が形成されている。少なくとも1つの静止シュラウド・レール70は少なくとも1つの先端シュラウド60を空隙72内にラビリンスを形成するように整列されることが好ましい。」との記載及びFIG.5からみて、ラビリンスを形成する前記中央部に結合する静止シュラウド・レール70は、翼形部51と前記中央部との間に画成される空隙72の封止を促進させるものであることが理解できる。

上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献2には次の事項が記載されている。

「タービンが外側ケーシング80を含み、静止シュラウド70が前記外側ケーシング80に結合し、第1の溝及び第2の溝を備える中央部を備える静止シュラウド70と、左端部の略直線部分と右端部の略直線部分との間に配置され、翼形部51と前記中央部との間に画成される空隙72の封止を促進させるように前記中央部に結合するラビリンスを形成する静止シュラウド・レール70と、を備えること。」

(3)引用文献3
本願の優先日前に頒布された特開2005-291205号公報(以下「引用文献3」という。)には、「ターボ機械のためのシール装置及び方法」に関して、図面(特に、図1、図3参照)と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0012】
ここで図1を参照すると、その全体を参照符号10で示した例示的なタービンエンジンエンジンの部分が示されている。タービン10は、燃焼器の列(この図には図示せず)によって発生された高温ガスを受け、その高温ガスは後述するように環状の高温ガス流路34に沿って送給される。タービン段12、22は、環状の高温ガス流路34に沿って配置される。各このような段は、複数の円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレードすなわちバケットと固定シュラウド組立体とを備えたロータ組立体を含む。各段はまた、回転ブレードの先端と固定シュラウドとの間の高温ガスの通路をシールするためのシール組立体を含む。例えば、図示するように、段12は、複数の円周方向に間隔を置いて配置されたブレード16と、固定シュラウド組立体18と、回転ブレード16と固定シュラウド18との界接面において係合するシール組立体20とを備えたロータ組立体14を含む。同様に、段22は、複数の円周方向に間隔を置いて配置されたブレード26と、固定シュラウド組立体28と、回転ブレード26と固定シュラウド28との界接面において係合するシール組立体30とを備えたロータ組立体24を含む。」

イ 「【0018】
図3は、全体を参照符号22で示す、シュラウド式のタービン段におけるコンプライアント・シール組立体30の例示的な実施を示す。この図は、円周方向が紙面の平面に対して垂直である部分断面図を表す。先に述べたように、各ブレード26は、その先端に部分シュラウド構造体32を有する。隣接して配置したブレードのシュラウド付き先端32は、内側又は回転シュラウドとも呼ばれる実質的に連続した回転内側リングを形成する。固定シュラウド28は、ロータ軸線46とほぼ同軸であり、外側又は固定シュラウドと呼ばれる連続した外側リングを形成する。
【0019】
ブレード26の先端における部分シュラウド32は、その数が一般的には2つであるレール又はナイフエッジ44から成る。内側シュラウド上のナイフエッジ44は、半径方向外向きに向いた実質的に連続した円周方向レールを形成する。外側シュラウドの内周面は、半径方向内向きに向いた複数の連続したナイフエッジ42を有する。内側シュラウド上のナイフエッジは、外側シュラウド上のナイフエッジと噛合って、図に示すようなラビリンス構造を形成する。図3に示す実施形態によると、コンプライアント・シール30は、外側シュラウド上の2つの連続ナイフエッジ間に配置される。非シュラウド式の段の場合のシール組立体と同様に、シュラウド式のタービン段の場合の各コンプライアント・シール組立体30は、内側シュラウド上のナイフエッジ44に近接して配置された硬質被覆表面36と、硬質被覆表面36と外側シュラウド28との間に配置された部分弾性バイアス部材38とを含む。内側シュラウド32と外側シュラウド28との間の高温ガス通路のシール作用は、バイアス部材38に予荷重を与えて硬質被覆表面36を内側シュラウド32上のナイフエッジ44に対して付勢することによって行われる。」

ウ 図1には、固定シュラウド28がタービン10のハウジングに結合し、固定シュラウド28の中央部のナイフエッジ42の左右に溝が形成され、固定シュラウド28の左端部と右端部には略直線部分がそれぞれ形成されることが示されている。

エ 上記イの「内側シュラウド上のナイフエッジは、外側シュラウド上のナイフエッジと噛合って、図に示すようなラビリンス構造を形成する。」(段落【0019】)との記載及び図3からみて、ラビリンス構造を形成する前記中央部に結合するナイフエッジ42は、ブレード26と前記中央部との間に画成される隙間の封止を促進させるものであることが理解できる。

上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献3には次の事項が記載されている。

「タービン10がハウジングを含み、固定シュラウド28が前記ハウジングに結合し、第1の溝及び第2の溝を備える中央部を備える固定シュラウド28と、左端部の略直線部分と右端部の略直線部分との間に配置され、ブレード26と前記中央部との間に画成される隙間の封止を促進させるように前記中央部に結合するナイフエッジ42とを備えること。」

3 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「タービンブレード24」は前者の「動翼」に相当し、以下同様に、「タービンセクション20」は「タービン」に、「静止シュラウド40」は「シュラウド」に、「左端部」は「第1の端部」に、「右端部」は「第2の端部」に、「ガス流路規定面48を画定する部分」は「本体」に、「直線状のガス流路規定面48」は「略直線部分」にそれぞれ相当する。

前者の「前記動翼から下流の漏洩流を促進させるように構成された弧状部分」に関して、本願明細書には、図5について「弧状部分170は、動翼出口側88内への漏洩流62の再循環の最小化及び/又は除去を促進させるように構成され、これは、漏洩流62の主流64との混合を最小化及び/又は除去する。」(段落【0022】)との記載があり、この記載からみて、弧状部分が漏洩流を促進させるように構成することは、漏洩流の主流との混合を最小化及び/又は除去することと解される。そうすると、後者のリップ56が「空気流ガス通路規定面48を通る気流を方向変更し下流側プラットフォーム58の形状に良好に整合させる」ことは前者の弧状部分が「漏洩流を促進させるように構成される」に相当するから、後者の「前記タービンブレード24から下流の空気流ガス通路規定面48を通る気流を方向変更し下流側プラットフォーム58の形状に良好に整合させる湾曲したリップ56」は前者の「前記動翼から下流の漏洩流を促進させるように構成された弧状部分」に相当する。

また、後者の「右端部が、左端部と前記リップ56との間に延在する直線状のガス流路規定面48をさらに含む」ことは、前者の「第2の端部が、(i)一対の略直線部分であって、弧状部分が一対の略直線部分の間に延在する一対の略直線部分、或いは(ii)第1の端部と前記弧状部分との間に延在する略直線部分をさらに含む」との事項のうち「第2の端部が、(ii)第1の端部と前記弧状部分との間に延在する略直線部分をさらに含む」ことに相当するから、後者の「右端部が、左端部と前記リップ56との間に延在する直線状のガス流路規定面48をさらに含む」ことは、前者の「第2の端部が、(i)一対の略直線部分であって、弧状部分が一対の略直線部分の間に延在する一対の略直線部分、或いは(ii)第1の端部と前記弧状部分との間に延在する略直線部分をさらに含む」ことに相当する。

また、後者の「静止シュラウド40」と前者の「整列部材」とは「シュラウド」という限りで共通する。

したがって、両者は、
「回転可能なシャフト及び前記回転可能なシャフトから外側に延在する動翼を含むタービンで使用されるシュラウドであって、
第1の端部、第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間に延在する本体を備えるシュラウドであって、
第1の端部が、略直線部分を有し、
第2の端部が、前記動翼から下流の漏洩流を促進させるように構成された弧状部分を含み、
第2の端部が、
(i)一対の略直線部分であって、弧状部分が一対の略直線部分の間に延在する一対の略直線部分、或いは
(ii)第1の端部と前記弧状部分との間に延在する略直線部分
をさらに含む、
シュラウド。」
である点で一致し、次の点で相違する。

〔相違点〕
本願補正発明は、タービンが「ハウジング」を含み、シュラウドが「前記ハウジングに結合し」、「第1の溝及び第2の溝を備える」本体を備える「整列部材」と、「前記第1の端部の略直線部分と前記第2の端部の略直線部分との間に配置され、前記動翼と前記本体との間に画成されるギャップの封止を促進させるように前記本体に結合するラビリンスシールと」、を備えるのに対し、
引用発明は、タービンセクション20が「ハウジング」を含むか否か不明であり、静止シュラウド40が本願補正発明の上記発明特定事項を備えていない点。

そこで、相違点を検討する。
引用文献2に記載された事項は、「タービンが外側ケーシング80を含み、静止シュラウド70が前記外側ケーシング80に結合し、第1の溝及び第2の溝を備える中央部を備える静止シュラウド70と、左端部の略直線部分と右端部の略直線部分との間に配置され、翼形部51と前記中央部との間に画成される空隙72の封止を促進させるように前記中央部に結合するラビリンスを形成する静止シュラウド・レール70と、を備えること。」である。

また、引用文献3に記載された事項は、「タービン10がハウジングを含み、固定シュラウド28が前記ハウジングに結合し、第1の溝及び第2の溝を備える中央部を備える固定シュラウド28と、左端部の略直線部分と右端部の略直線部分との間に配置され、ブレード26と前記中央部との間に画成される隙間の封止を促進させるように前記中央部に結合するナイフエッジ42とを備えること。」である。

引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項からみて、本願の優先日前に、タービンがハウジングを含み、シュラウドが前記ハウジングに結合し、第1の溝及び第2の溝を備える本体を備える整列部材と、第1の端部の略直線部分と第2の端部の略直線部分との間に配置され、動翼と前記本体との間に画成されるギャップの封止を促進させるように前記本体に結合するラビリンスシールと、を備えるシュラウドは、周知技術であるといえる。

また、引用発明において、ガスタービンエンジン10の効率化のために空気流ガス通路規定面48を通る気流を最小化させることは、当業者にとって自明な課題である。

そうすると、当該課題を解決するために、引用発明のタービンセクション20及び静止シュラウド40に上記周知技術を適用して、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願補正発明は、全体としてみて、引用発明及び上記周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成28年6月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1
・引用文献A、B
タービンにおいて、動翼とシュラウドとの間に画成されるギャップの封止を促進させるように、シュラウドにラビリンスシールを設けることは、引用文献B(図5、7等)に例示されるように、当業者にとって従来周知の技術にすぎない。
そして、動翼とシュラウドとの間に画成されるギャップの封止を促進させるように、シュラウドにラビリンスシールを設けることが周知技術である以上、引用文献A記載の発明において、ラビリンスシールをシュラウドに設けることは、当業者にとって容易に想到し得たことにすぎないし、タービンの技術分野において、漏れ流れと主流との混合損失等の作動流体の損失を低減し、効率を改善することは、周知の課題であるといえるから、効果についても、技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものであるとはいえない。
以上より、引用文献A記載の発明において、上記周知技術を採用し、補正後の本願請求項1に係る発明とすることには、当業者にとって何ら格別の困難性は認められない。

・請求項2、5ないし7
・引用文献A、B
引用文献A記載の発明において、引用文献B記載の発明を適用し、補正後の本願請求項2、5ないし7に係る発明とすることには、当業者にとって何ら格別の困難性は認められない。

引用文献A:米国特許出願公開第2006/0127214号明細書(本審決の引用文献1)
引用文献B:米国特許出願公開第2005/0186079号明細書(本審決の引用文献2)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用した本審決の引用文献、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2〔理由〕2(1)(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本願補正発明における「本体」についての「第1の溝及び第2の溝を備える」との限定を省き、「第1の端部」についての「略直線部分を有し」との限定を省き、「ラビリンスシール」についての「前記第1の端部の略直線部分と前記第2の端部の略直線部分との間に配置され」との限定を省いたものである。
そうしてみると、本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕3」に記載したとおり、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-09-19 
結審通知日 2018-09-25 
審決日 2018-10-09 
出願番号 特願2013-119356(P2013-119356)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01D)
P 1 8・ 575- Z (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬戸 康平金田 直之倉田 和博  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 冨岡 和人
水野 治彦
発明の名称 回転機械用シュラウド及びその組立て方法  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  
代理人 田中 拓人  
代理人 荒川 聡志  

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