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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1349333 |
審判番号 | 不服2018-5541 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-23 |
確定日 | 2019-02-21 |
事件の表示 | 特願2016-159472「偏光板及び光学部材」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日出願公開、特開2016-206684〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特願2016-159472号(以下「本願」という。)は、平成24年2月1日に出願された特願2012-19582号の一部を、平成28年8月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成28年 9月27日付け:手続補正書 平成29年 5月26日付け:拒絶理由通知書 平成29年 7月28日付け:意見書、手続補正書 平成29年12月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 平成30年 4月23日付け:審判請求書 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年7月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの、以下のものである。 「 【請求項1】 ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムの少なくとも片面に、オキセタン系化合物を含む活性エネルギー線硬化性化合物と重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる保護層を有し、 前記保護層は10μm以下の厚みを有し、 前記偏光フィルムは、その膜厚が25μm以下である ことを特徴とする偏光板。」 第3 原査定の概要 本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、概略、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 <引用文献等一覧> 引用文献1:特開2010-39299号公報 引用文献2:特開2006-163082号公報 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-39299号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。 (1)「【0001】 本発明は、偏光板、特に横電界(IPS)モードの液晶表示装置に好適に用いられる偏光板およびその製造方法、ならびに該偏光板を用いた横電界モードで動作する液晶表示装置に関するものである。 ・・・(中略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 本発明の目的は、液晶セル側に配置される保護層の面内のレタデーションR_(e)および膜厚方向のレタデーションR_(th)がほぼゼロである偏光板であって、さらに薄型軽量性および耐久性能に優れる偏光板、特に横電界(IPS)モードの液晶表示装置に好適に用いられる偏光板およびその製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、かかる偏光板を用いた液晶表示装置、特に横電界モードで動作する液晶表示装置を提供することである。」 (2)「【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向された偏光フィルムと、該偏光フィルムの一方の面に積層された、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる第一の保護層と、接着剤層を介して該偏光フィルムの他方の面に積層された、熱可塑性樹脂フィルムからなる第二の保護層と、を備える偏光板を提供する。 ・・・(中略)・・・ 【発明の効果】 【0023】 本発明の偏光板は、面内のレタデーションR_(e)および膜厚方向のレタデーションR_(th)がほぼゼロである第一の保護層を備える。したがって、このような本発明の偏光板を、その第一の保護層が液晶セル側となるように液晶表示装置に適用したときには、光漏れを効果的に防止することができる。また、第一の保護層を硬化性樹脂組成物の硬化物から構成したことにより、従来のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどと比較して、保護層の厚みを低減できるため、偏光板の薄型軽量化を図ることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0025】 <偏光板> 図3は、本発明に係る偏光板の好ましい一例を示す概略断面図である。図3に示される偏光板50は、偏光フィルム51と、偏光フィルム51の一方の面に積層された透明な第一の保護層52と、他方の面に積層された透明な第二の保護層53とを備える。第一の保護層52は、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなるものである。第二の保護層53は、熱可塑性樹脂フィルムからなり、接着剤層54を介して、偏光フィルム51に貼合されている。また、偏光板50は、第一の保護層52の外側、すなわち、第一の保護層52の偏光フィルム51側とは反対側の面には、液晶セルなどに貼合するための粘着剤層55を有する。なお、本発明の偏光板は、粘着剤層を有していなくてもよい。以下、本発明の偏光板について詳細に説明する。 【0026】 (偏光フィルム) 偏光板としての機能を発現させる偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向しているものである。偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと、これに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、たとえば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常、85?100モル%程度、好ましくは98?100モル%である。ポリビニルアルコール系樹脂はさらに変性されていてもよく、たとえば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000?10,000程度、好ましくは1,500?10,000程度である。 ・・・(中略)・・・ 【0035】 以上のようにして、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向された偏光フィルムを作製することができる。この偏光フィルムの厚みは、5?40μm程度とすることができる。 【0036】 (保護層) 本発明では、以上のような偏光フィルムの一方の面に設ける第一の保護層を、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物で構成する。また、偏光フィルムの他方の面に設ける第二の保護層は、熱可塑性樹脂フィルムで構成し、接着剤層を介してその熱可塑性樹脂フィルムを偏光フィルムの前記他方の面に貼合する。以下、これら第一の保護層および第二の保護層の順に説明を進めていく。 【0037】 (1)第一の保護層 偏光フィルムの一方の面に設ける第一の保護層は、前述のとおり、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物で構成する。活性エネルギー線硬化性化合物とは、活性エネルギー線(たとえば、紫外線、可視光、電子線、X線等)の照射により硬化し得る化合物を意味する。活性エネルギー線硬化性化合物は、カチオン重合性のものであってもよいし、ラジカル重合性のものであってもよい。カチオン重合性化合物の例として、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ系化合物(以下、単に「エポキシ系化合物」と称することがある)、分子内に少なくとも1個のオキセタン環を有するオキセタン系化合物(以下、単に「オキセタン系化合物」と称することがある)などを挙げることができる。また、ラジカル重合性化合物の例として、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系化合物(以下、単に「(メタ)アクリル系化合物」と称することがある)などを挙げることができる。なお、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、メタクリロイルオキシ基またはアクリロイルオキシ基を意味する。 ・・・(中略)・・・ 【0084】 また、この硬化性樹脂組成物は、上記エポキシ系化合物に加え、オキセタン系化合物を含有してもよい。オキセタン系化合物を添加することにより、硬化性樹脂組成物の粘度を低くし、硬化速度を速めることができる。 【0085】 オキセタン系化合物は、分子内に少なくとも1個のオキセタン環(4員環エーテル)を有する化合物であり、たとえば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。これらのオキセタン系化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、いずれも商品名で、「アロンオキセタン OXT-101」、「アロンオキセタン OXT-121」、「アロンオキセタン OXT-211」、「アロンオキセタン OXT-221」、「アロンオキセタン OXT-212」(いずれも東亞合成(株)製)などを挙げることができる。オキセタン系化合物の配合量は特に限定されないが、通常、活性エネルギー線硬化性化合物中、30重量%以下、好ましくは10?25重量%である。 【0086】 第一の保護層の形成に用いる硬化性樹脂組成物が、エポキシ系化合物やオキセタン系化合物などのカチオン重合性化合物を含む場合、その硬化性樹脂組成物には通常、光カチオン重合開始剤が配合される。光カチオン重合開始剤を使用すると、常温での保護層の形成が可能となるため、偏光フィルムの耐熱性や膨張による歪を考慮する必要が減少し、密着性良く第一の保護層を偏光フィルム上に形成することができる。また、光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、硬化性樹脂組成物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。 【0087】 光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって、カチオン種またはルイス酸を発生し、エポキシ系化合物および/またはオキセタン系化合物の重合反応を開始させるものである。本発明においては、いずれのタイプの光カチオン重合開始剤を用いてもよく、具体例を挙げれば、たとえば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄-アレン錯体などを挙げることができる。」 (3)「【実施例】 【0165】 以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、使用量ないし含有量を表す「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。 【0166】 (製造例1:偏光フィルムの作製) 平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であった。 【0167】 (製造例2:硬化性樹脂組成物Iの調製) まず、以下の各成分を混合して、硬化性樹脂組成物Iを得た。 【0168】 3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製、セロキサイド 2021P) 35部 ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製、アロンオキセタン OXT-221) 15部 ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物のジアクリレート(新中村化学工業(株)製、A-DOG) 50部 2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、DAROCURE 1173、光ラジカル重合開始剤) 2.5部 4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤(ダイセル・サイテック(株)製 UVACURE 1590) 2.5部 シリコーン系レベリング剤((株)東レ・ダウコーニング(株)製、SH710) 0.2部 なお、上記のA-DOG(ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物のジアクリレート)は、次式の構造を有する化合物である。 【0169】 【化13】 【0170】 (製造例3:硬化性樹脂組成物IIの調製) 以下の各成分を混合して、硬化性樹脂組成物IIを得た。 【0171】 3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製、セロキサイド 2021P) 75部 ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製、アロンオキセタン OXT-221) 25部 4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤(ダイセル・サイテック(株)製 UVACURE 1590) 5部 シリコーン系レベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、SH710) 0.2部 ・・・(中略)・・・ 【0174】 <実施例1> ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡(株)製、エステルフィルムE5100)の片面に、塗工機(第一理化(株)製、バーコーター)を用いて、製造例2で得られた硬化性樹脂組成物Iを塗工した。また、ケン化処理が施されていないトリアセチルセルロースフィルムからなる保護層(コニカミノルタオプト(株)製、KC8UX、厚み80μm)の片面にコロナ放電処理を施し、その面に同様にして硬化性樹脂組成物IIを塗工した。この際、硬化性樹脂組成物を塗工したときの塗布層の膜厚は粘度によって変化するため、バーコーターの番線の番号を変えることで膜厚を調節した。次に、製造例1で作製した偏光フィルムの一方の面に、上記硬化性樹脂組成物Iの塗布層を有するPETフィルムを、他方の面に、上記硬化性樹脂組成物IIの塗布層を有する保護層を、それぞれの塗布層側が偏光フィルムとの貼合面となるように、貼付装置(フジプラ(株)製、LPA3301)を用いて貼合した。 【0175】 この貼合品に、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブにより、PETフィルム側から紫外線を積算光量1500mJ/cm^(2)で照射し、偏光フィルムの両面に配置された硬化性樹脂組成物IおよびIIの塗布層を硬化させた。その後、PETフィルムを剥離し、偏光フィルム一方の面に透明な第一の保護層(硬化性樹脂組成物Iの硬化物)が設けられ、他方の面には透明な第二の保護層(トリアセチルセルロースフィルム)が設けられている偏光板を作製した。なお、この偏光板の厚みを、膜厚測定器((株)ニコン製、ZC-101)を用いて測定したところ、116μmであった。また、第一の保護層の厚みは、4μmであった。」 (4)「【図面の簡単な説明】 【0190】 【図1】IPSモードの液晶表示装置の構成例を示す断面模式図である。 【図2】IPSモードの原理を説明するために、ノーマリーブラックの例について示す概略斜視図であって、(A)は電圧無印加時の状態、(B)は電圧印加時の状態を表す。 【図3】本発明に係る偏光板の好ましい一例を示す概略断面図である。 【符号の説明】 【0191】 10 液晶セル、11,12 セル基板、13 電極、14 液晶層、15 液晶分子、16 液晶セルへ入射する直線偏光、17 液晶セル通過後の直線偏光、17’ 液晶セル通過後の楕円偏光、18 電界、20 前面側偏光板、22 前面側偏光板の透過軸、30 背面側偏光板、32 背面側偏光板の透過軸、40 バックライト、50 偏光板、51 偏光フィルム、52 第一の保護層、53 第二の保護層、54 接着剤層、55 粘着剤層。」 (5)「【図3】 2 引用文献1に記載された発明 上記1より、引用文献1には、実施例1として、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。 「 ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、塗工機を用いて、以下の各成分を混合して得られた硬化性樹脂組成物Iを塗工し、また、ケン化処理が施されていないトリアセチルセルロースフィルムからなる保護層(コニカミノルタオプト(株)製、KC8UX、厚み80μm)の片面にコロナ放電処理を施し、その面に同様にして以下の各成分を混合して得られた硬化性樹脂組成物IIを塗工し、 次に、平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬し、その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬し、このヨウ素染色およびホウ酸処理の工程でトータル延伸倍率5.3倍で延伸し、引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを作製し、 偏光フィルムの一方の面に、硬化性樹脂組成物Iの塗布層を有するPETフィルムを、他方の面に、硬化性樹脂組成物IIの塗布層を有する保護層を、それぞれの塗布層側が偏光フィルムとの貼合面となるように、貼付装置を用いて貼合し、 この貼合品に、PETフィルム側から紫外線を積算光量1500mJ/cm^(2)で照射し、偏光フィルムの両面に配置された硬化性樹脂組成物IおよびIIの塗布層を硬化させ、その後、PETフィルムを剥離して作製してなる、偏光フィルムの一方の面に透明な第一の保護層(硬化性樹脂組成物Iの硬化物)が設けられ、他方の面には透明な第二の保護層(トリアセチルセルロースフィルム)が設けられている、 第一の保護層の厚みが4μmである、 偏光板。 (硬化性樹脂組成物Iの成分) 3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製、セロキサイド 2021P) 35部 ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製、アロンオキセタン OXT-221) 15部 ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物のジアクリレート(新中村化学工業(株)製、A-DOG) 50部 2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、DAROCURE 1173、光ラジカル重合開始剤) 2.5部 4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤(ダイセル・サイテック(株)製 UVACURE 1590) 2.5部 シリコーン系レベリング剤((株)東レ・ダウコーニング(株)製、SH710) 0.2部 (硬化性樹脂組成物IIの成分) 3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製、セロキサイド 2021P) 75部 ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製、アロンオキセタン OXT-221) 25部 4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤(ダイセル・サイテック(株)製 UVACURE 1590) 5部 シリコーン系レベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、SH710) 0.2部」 第5 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 ア 偏光フィルム 引用発明の「ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルム」は、技術的にみて、本願発明の「ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルム」に相当するといえる。 イ 保護層 引用発明の「第一の保護層(硬化性樹脂組成物Iの硬化物)」は、技術的にみて、本願発明の「保護層」に相当する。 また、引用発明の「第一の保護層(硬化性樹脂組成物Iの硬化物)」は、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製、セロキサイド 2021P)」、「ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製、アロンオキセタン OXT-221)」、「2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、DAROCURE 1173、光ラジカル重合開始剤)」及び「4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤(ダイセル・サイテック(株)製 UVACURE 1590)」を含有するものである。 ここで、「ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製、アロンオキセタン OXT-221)」及び「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製、セロキサイド 2021P)」は、技術的にみて、それぞれ、本願発明の「オキセタン系化合物」及び「活性エネルギー線硬化性化合物」に相当する。また、「2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、DAROCURE 1173、光ラジカル重合開始剤)」及び「4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤(ダイセル・サイテック(株)製 UVACURE 1590)」は、技術的にみて、本願発明の「重合開始剤」に相当する。 そして、引用発明の「第一の保護層(硬化性樹脂組成物Iの硬化物)」は、「偏光フィルム」と「貼合」し、「紫外線」を照射し、「硬化」させたものである。 さらに、第一の保護層の厚みは、4μmである。 そうしてみると、引用発明の「第一の保護層(硬化性樹脂組成物Iの硬化物)」は、「偏光フィルムの片面に」形成されたものであって、本願発明の「オキセタン系化合物を含む活性エネルギー線硬化性化合物と重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる」という要件及び「保護層は10μm以下の厚みを有」するという要件を満たすものである。 ウ 偏光板 引用発明の「偏光板」は、技術的にみて、本願発明の「偏光板」に相当するといえる。 (2)一致点及び相違点 ア 本願発明1と引用発明1は、次の構成で一致する。 (一致点) 「 ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムの少なくとも片面に、オキセタン系化合物を含む活性エネルギー線硬化性化合物と重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる保護層を有し、 前記保護層は10μm以下の厚みを有する、 偏光板。」 イ 本願発明と引用発明は、次の点で相違する。 (相違点1) 本願発明の「偏光フィルム」は、「その膜厚が25μmである」のに対して、引用発明は、このように特定されたものではない点。 (3)相違点についての判断 相違点1について検討する。 引用文献1の【0035】には、「偏光フィルムの厚みは、5?40μm程度とすることができる」ことが記載されている。 そして、偏光フィルムの偏光フィルムの膜厚を25μm以下とすることは、周知技術である。例えば、原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-163082号公報の【0029】には、厚さ20μmの偏光フィルムが記載されている。また、特開2002-236212号公報の【0052】-【0055】及び【0060】には、厚さが13μm、17μm及び23μmの偏光子が記載されている。 さらに、引用文献1の【0012】には、引用文献1にいう本発明の目的は、薄型軽量性及び耐久性能に優れる偏光板を提供することであることが記載されている。 また、偏光フィルムの膜厚は、製品の仕様や用途等に応じて発明を具体化する際に検討するものである。 そうしてみると、引用発明において、薄型軽量化した偏光板を得るために、偏光フィルムの膜厚を25μm以下とすることは、上記周知技術及び引用文献1の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到するものである。 そして、本願発明の効果について検討するに、偏光板の耐久性は、偏光フィルムの厚さ、保護層の厚さ及び構成成分のみならず、偏光フィルムの構成成分、偏光フィルム及び保護層の諸特性等(例えば、硬度、弾性率、熱収縮率等)によって大きく変化するものといえる。しかしながら、本願発明は、偏光フィルム及び保護層の厚さと、保護層に含まれる成分を特定しているにすぎない。そうしてみると、本願発明の発明特定事項を全て具備したものとしさえすれば冷熱衝撃条件下での耐久性に優れた偏光板が得られるとはいえず、本願発明は、冷熱衝撃条件下での耐久性に優れない構成をも包含するものであるから、本願発明の効果が当業者の予測を超えた格別なものであるとはいえない。 仮に、本願発明の発明特定事項を全て具備したものとしさえすることによって、冷熱衝撃条件下での耐久性に優れた偏光板が得られるとしても、冷熱衝撃試験は、表示装置及びその構成部材の耐久性を評価するための試験方法の一つとして一般に行われているものであって、引用文献1に記載されている高温試験と全く異質のものであるとはいえない。そうしてみると、引用発明において、高温試験と同様に、冷熱衝撃試験においても優れた評価結果が得られることは、当業者が期待することであって、本願発明が冷熱衝撃試験において優れた効果を有するという事項は、引用発明において、偏光フィルムの膜厚を25μm以下とした構成における効果を確認したものにすぎず、当業者の予測を超えた格別なものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-12-14 |
結審通知日 | 2018-12-18 |
審決日 | 2019-01-08 |
出願番号 | 特願2016-159472(P2016-159472) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤岡 善行 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
川村 大輔 清水 康司 |
発明の名称 | 偏光板及び光学部材 |
代理人 | 坂元 徹 |
代理人 | 中山 亨 |