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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M |
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管理番号 | 1349387 |
審判番号 | 不服2017-12261 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-18 |
確定日 | 2019-02-27 |
事件の表示 | 特願2014-541671「医療用デバイスおよび医療用デバイスの使用を制限する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日国際公開、WO2013/072443、平成26年12月15日国内公表、特表2014-533536〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)11月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年(平成23年)11月18日、欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成28年11月 7日付け:拒絶理由通知書 平成29年 2月15日 :意見書、手続補正書の提出 平成29年 4月10日付け:拒絶査定 平成29年 8月18日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成29年8月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成29年8月18日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。 「【請求項1】 医療用デバイスの使用限界を検出する方法であって、 医療用デバイスが最初に使用されたときに該医療用デバイスのタイマを始動する工程と、 第1の判定基準が前記タイマが時限に達するかまたは時限を超えることである、第1の判定基準が満たされるかどうかチェックする工程と、 第2の判定基準が前記医療用デバイスの駆動列の少なくとも1つの動作が限界に達するかまたは限界を超えることである、該駆動列が電気機械的アセンブリを含み、そして前記駆動列の前記少なくとも一つの動作のうちの一つの動作が電気機械的アセンブリの工程数である、第2の判定基準が満たされるかどうかチェックする工程と、 第1の判定基準および第2の判定基準のうち少なくとも1つが満たされるとき、前記使用限界に達している、前記医療用デバイスの使用限界を検出する工程と、 前記使用限界に達していることを検出することに応じて前記医療用デバイスの前記使用限界を示す工程、を含む上記方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、平成29年2月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 医療用デバイスの使用限界を検出する方法であって、 医療用デバイスが最初に使用されたときに該医療用デバイスのタイマを始動する工程と、 第1の判定基準が、前記タイマが時限に達するかまたは時限を超えることである、第1の判定基準が満たされるかどうかチェックする工程と、 第2の判定基準が、前記医療用デバイスの駆動列の少なくとも1つの動作が限界に達するかまたは限界を超えることである、第2の判定基準が満たされるかどうかチェックする工程と、 第1の判定基準および第2の判定基準のうち少なくとも1つが満たされるとき、前記使用限界に達している、前記医療用デバイスの使用限界を検出する工程と、および 前記使用限界に達していることを検出することに応じて前記医療用デバイスの前記使用限界を示す工程、を含む上記方法。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「駆動列」及び「駆動列の少なくとも1つの動作」について、上記のとおり限定を付加するものを含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2項の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、本件補正は、同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2006-187629号公報(平成18年7月20日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(なお、下線は当審で付与したものである。) ア 段落【0003】 「注射ペンにおいて、例えば、しばしば動くことがあるばね又は構成要素のような注射ペンの構成要素は、使用中に生ずる歪みのため、また、機械的応力のため、また、老化過程のため、変化し又は劣化し、このため、ペンの作動及び機能的能力の正確なモードが損なわれる可能性がある。」 イ 段落【0005】 「本発明の1つの目的は、注射ペンの作用寿命を確認することができ、また、作用寿命の終了を表示することのできる装置及び方法を提案することである。」 ウ 段落【0007】 「本発明に従って、注射装置は、該注射装置の少なくとも1つの設定又は作用過程を検出し得るよう少なくとも1つのセンサを備えている。・・(中略)・・作用過程、作動又は状態パラメータを定質的に又は定量的に検出する1つ又はより多くのセンサによって、例えば、注射装置が最初に作用し又は作動したときを検出し、例えば、注射装置内に設けられたタイマーを始動させることが可能であり、該タイマーは、例えば、製造メーカが予め決定した、例えば、3年という一定の期間の後、信号を出力して注射装置の作用寿命(注射装置の製造メーカが注射装置の正確な作用モードを保証する期間)が経過したことを表示する。」 エ 段落【0009】 「かかるタイマーは、上述したセンサの少なくとも1つと接続され且つ、例えば、注射装置が最初に作用したとき、又は満杯のアンプルが挿入されたとき、これらセンサの1つ以上から始動信号を受け取ってタイマーを始動させる電子回路により具体化されることが好ましい。例えば、製造メーカ又はユーザが予め決定し又は設定し、又は注射装置に加わる応力を考慮して回路により計算された時間期間が経過したならば、回路は、例えば、ディスプレイ又はランプに対し信号を出力し、ユーザに注射装置の作用寿命の終わりに達したことを表示する。」 オ 段落【0010】 「タイマーの時間が経過したならば、注射装置の作用寿命は経過したと判断され、その後、例えば、光学的及び(又は)聴覚的及び(又は)触知可能な又は触覚的信号を発生させ、ユーザに対し注射装置は、最早、安全上の理由のため使用すべきでないことを表示する。」 カ 段落【0011】 「例えば、タイマーと共に、データ記憶装置を注射装置内に設けることもでき、この記憶装置には、例えば、注射装置が最初に作用したとき、投薬量の設定過程及び(又は)送り出し過程の回数及び(又は)時間、及び(又は)アンプルの交換回数及び(又は)時間に関するデータのような、注射装置にて行った設定又は作用過程に関するデータを記憶させることができる。注射装置内に設けられたプロセッサ又はコントローラは、例えば、記憶装置内に記憶された注射装置の使用に関するデータを例えば、製造メーカが一定状態にて予め決定し又は設定した注射装置の可能な使用に関する最大限界値と比較し、例えば、アンプルの交換又は送り出し過程の許容可能な最高回数に達し又はそれを超えたとき、信号を出力し、上述したように警報信号を発生させることができ、このことは、ユーザにアンプルの交換又は送り出し過程の最大回数に達し又はそれを超えたことを表示する。注射装置の作用寿命の終了を確認するため、注射装置の作用又は作動パラメータを使用するならば、その後、使用寿命の時間期間は、ユーザが注射装置を使用する方法に依存して変化するであろう。」 上記アには、注射ペンの老化過程によって、当該注射ペンの作動及び機能的能力の正確なモードが損なわれるおそれがあるという技術的課題が記載されており、そして、上記イには、引用文献1に記載の発明の目的として、注射ペンの作用寿命の終了を確認することができる点が記載されていることを踏まえれば、引用文献1に記載の発明は、注射ペンの作動及び機能的能力の正確なモードが損なわれる程度に老化過程が進んだ状態を作業寿命として確認するものであることは明らかである。 上記ウには、注射装置の作用寿命の終了を確認する方法として、注射装置が最初に作用したときに注射器装置のタイマーを始動する工程を有する点が記載されている。 また、上記ウには、予め決定した期間が経過する場合には信号を出力して表示を行う工程を有している点、そして、上記エ及びオには、タイマーの時間が経過したならば、注射装置の作用寿命は経過したと電子回路によって判断される点が、それぞれ記載されていることから、上記方法には、タイマーが予め決定した期間が経過したことを判定する基準(以下、「タイマー基準」という。)を有するとともに、当該基準を満たされるかどうかチェックする工程を有していることは明らかである。そして、当該タイマー基準が満たされることを電子回路によって判定するとき、作業寿命の終了に達していることを確認できることは明らかである。 さらに、上記カには、タイマーと共に、データ記憶装置及びコントローラを注射装置内に設けて、注射装置内に送り出し過程の回数を記憶する点、及び、当該送り出し過程の許容可能な最大回数に達するとき、警報信号を発生して表示する点が、それぞれ記載されていることから、上記方法には、送り出し過程が許容可能な最大回数に達する基準(以下、「送り出し許容基準」という。)を有するとともに、当該基準を満たされるかどうかチェックする工程を有することは明らかである。そして、送り出し許容基準が満たされることをデータ記憶装置とコントローラによって判定するとき、作業寿命の終了に達していることを確認できることは明らかである。 してみれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「注射装置の作用寿命の終了を確認する方法であって、 注射装置が最初に作用したときに該注射装置のタイマーを始動する工程と、 タイマー基準が前記タイマーが予め決定した期間が経過することである、タイマー基準が満たされるかどうかチェックする工程と、 送り出し許容基準が前記注射装置の送り出し過程の許容可能な最大回数に達することである、送り出し許容基準が満たされるかどうかチェックする工程と、 タイマー基準が満たされることを電子回路によって判定するとき、又は、送り出し許容基準が満たされることをデータ記憶装置とコントローラによって判定するとき、作用寿命の終了に達している、注射装置の作用寿命の終了を確認する工程と、 前記作用寿命の終了に達していることを確認することに応じて前記注射装置の前記作用寿命の終了を表示する工程、を含む上記方法。」 (3)引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「注射装置」は、その機能及び作用を踏まえると、本件補正発明の「医療用デバイス」に相当し、以下同様に、「作用寿命の終了」は「使用限界」に、「確認する」は「検出する」に、「作用したときに」は「使用されたときに」に、「タイマー」は「タイマ」に、「タイマー基準」は「第1の判定基準」に、「予め決定した期間」は「時限」に、「経過する」は「達する」に、「送り出し許容基準」は「第2の判定基準」に、「送り出し過程」は「駆動列の少なくとも一つの動作」に、「許容可能な最大回数」は「限界」に、「表示する」は「示す」に、それぞれ相当する。 してみれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「医療用デバイスの使用限界を検出する方法であって、 医療用デバイスが最初に使用されたときに該医療用デバイスのタイマを始動する工程と、 第1の判定基準が前記タイマが時限に達するかまたは時限を超えることである、第1の判定基準が満たされるかどうかチェックする工程と、 第2の判定基準が前記医療用デバイスの駆動列の少なくとも1つの動作が限界に達するかまたは限界を超えることである、第2の判定基準が満たされるかどうかチェックする工程と、 前記医療用デバイスの使用限界を検出する工程と、 前記使用限界に達していることを検出することに応じて前記医療用デバイスの前記使用限界を示す工程、を含む上記方法。」 (相違点1) 「第2の判定基準が満たされるかどうかチェックする工程」について、本件補正発明においては、「該駆動列が電気機械的アセンブリを含み、そして前記駆動列の前記少なくとも一つの動作のうちの一つの動作が電気機械的アセンブリの工程数である」のに対して、引用発明においては、そのような構成を有するか明らかでない点。 (相違点2) 「前記医療用デバイスの使用限界を検出する工程」において「前記使用限界に達している」ことを検出する条件が、本件補正発明においては、「第1の判定基準および第2の判定基準のうち少なくとも1つが満たされるとき」であるのに対して、引用発明においては、「タイマー基準が満たされることを電子回路によって判定するとき、又は、送り出し許容基準が満たされることをデータ記憶装置とコントローラによって判定するとき」である点。 (4)判断 ア 上記相違点1について検討する。一般的に、注射装置のプランジャーの送り出しの駆動手段には、手動、機械的手段、及び、電気機械的手段(モータなど)の三種類があり、駆動手段として電気機械的手段を利用した場合には、被駆動部の動作状況を、目視や位置センサだけでなく、当該電気機械的手段の動作状況(例えば、モータの回転計数、すなわち工程数など)によって電気機械的に把握できることは、常套手段として知られている。してみれば、引用発明の注射装置の送り出し過程において、当該送り出しの駆動手段としてモータなどの電気機械的手段を利用し、当該送り出し過程の回数を当該電気機械的手段の工程数によってカウントするよう構成することは、必要に応じて選択することのできる単なる設計的事項に過ぎず、新たな技術的思想の創作であるとはいえない。 また、注射装置において、プランジャーの駆動手段としてモータなどの電気機械的手段を利用するとともに、その動作状況をモータの回転計数によって把握することは周知の技術的事項である(必要とあれば、実願平1-147879号(実開平3-88547号)のマイクロフィルム、特開昭58-209360号公報、特開平4-312469号公報、特開2011-5280号公報等を参照。)ことから、引用発明の注射装置の送り出し過程において、当該送り出しの駆動手段としてモータなどの電気機械的手段を利用し、当該送り出し過程の回数を当該電気機械的手段の工程数によってカウントすることで、上記相違点1に係る本件補正発明の構成を想起することは、当業者にとって何ら困難性はない。 イ 上記相違点2について検討する。「使用限界に達している」ことを検出する条件が、引用発明においては、タイマー基準が満たされることを電子回路によって判定するとき、又は、送り出し許容基準が満たされることをデータ記憶装置とコントローラによって判定するときとするものであり、これは2系統の制御系を複数のコントローラで実現するものであるといえるが、そもそも、複数の制御系からなるコンピュータ制御において、これを複数のコントローラによりそれぞれ独立して制御するか、それとも、一つのコントローラにより中央集中的に制御するかは必要に応じて選択できる程度のことに過ぎないことから、引用発明において、上記二つの基準が満たされるときを判定する場合に、一つのコントローラにより中央集中的に制御することで、二つの基準のうち少なくとも一つが満たされるときとするよう構成することは、当業者にとって何ら困難性はない。 ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、又は、引用発明と周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成29年8月18日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年2月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「該駆動列が電気機械的アセンブリを含み、そして前記駆動列の前記少なくとも一つの動作のうちの一つの動作が電気機械的アセンブリの工程数である」という限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-09-25 |
結審通知日 | 2018-10-02 |
審決日 | 2018-10-16 |
出願番号 | 特願2014-541671(P2014-541671) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61M)
P 1 8・ 575- Z (A61M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 智弥、武内 大志 |
特許庁審判長 |
内藤 真徳 |
特許庁審判官 |
芦原 康裕 船越 亮 |
発明の名称 | 医療用デバイスおよび医療用デバイスの使用を制限する方法 |
代理人 | 結田 純次 |
代理人 | 竹林 則幸 |