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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F28D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F28D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F28D
管理番号 1349446
審判番号 不服2015-1017  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-19 
確定日 2019-03-19 
事件の表示 特願2011-533524号「微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ及びその作製方法並びに熱交換システム」拒絶査定不服審判事件〔2010年6月3日国際公開、WO2010/060342、平成24年3月29日国内公表、特表2012-507680号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年11月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年11月3日(CN)中華人民共和国、2008年11月10日(CN)中華人民共和国、2009年2月27日(CN)中華人民共和国、2009年3月10日(CN)中華人民共和国、2009年3月24日(CN)中華人民共和国、2009年3月24日(CN)中華人民共和国、2009年6月19日(CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年9月11日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年1月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされた。
その後、当審において平成28年6月6日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年12月8日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?24に係る発明は、平成28年12月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?24に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「一つの中実であるプレート状或いは帯状の熱伝導体を備え、
前記熱伝導体は二つ以上の平行配列された微細管を備え、
各前記微細管が全て独立のヒートパイプ構造を有しており、
前記微細管内に空気を含まない相変化伝熱効果を有する作動液を有し、
前記熱伝導体の前記微細管の両端が密閉され、
かつ少なくても一端は、密閉口に向かい徐々に収束した帯状密閉口を備え、
前記熱伝導体の総厚さが3mm又は3mmより小さい場合、徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.75乃至1.5の間となり、前記熱伝導体の総厚さが3mm乃至5mmである場合、徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.5乃至1.5の間となることを特徴とする微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。」

第3 引用文献
1 これに対して、当審において通知した平成28年6月6日付け拒絶理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である、特開2006-313038号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、ヒートパイプ回路基板の製造方法とヒートパイプ回路基板に関し、特に電子部品から発せられる熱の放熱性能を高めるため、回路基板自身が冷却機能を有するヒートパイプ回路基板の製造方法とヒートパイプ回路基板に関する。」
(2)「【0022】
図1Aは、本発明のヒートパイプ回路基板の一実施例を示す斜視図である。ヒートパイプ回路基板1は、主としてヒートパイプ部11、このヒートパイプ部11の上部に形成された絶縁層部12、およびこの絶縁層部12の上部に形成された導電回路部13により構成されている。場合により、ヒートパイプ回路基板1は、導電回路部13部に電気的に接続されて設けられた電子回路部14を含んで構成される。図1Bに示すように、ヒートパイプ部11には、複数の独立した作働流体流路24が形成されている。
【0023】
本発明によるヒートパイプ回路基板の作成フローの一実施例を図2により説明する。
【0024】
図2の(a)は、ヒートパイプ回路基板のヒートパイプ部の作成工程を示している。ヒートパイプ用部材21は、アルミニウム製の板211で構成されており、例えば高さ約2mm、長さ約10-600mmの大きさである。このアルミニウム板211は、その内部に長手方向に任意の数のチャンネル212を任意の位置に設けている。この複数のチャンネル212は、アルミニウム板211を押し出し成形して設けられる。それぞれのチャンネル212は、両端に開口(入口と出口)を有した断面円形状の貫通孔で構成されている。この貫通孔の大きさは、直径約0.5-1.5mmmである。」
(3)「【0029】
このヒートパイプ用部材21のそれぞれのチャンネル212には、冷媒となる作働流体25、例えば、エタノールを注入する。例えば、チャンネル212の他方の開口に真空ポンプを準備の上、真空ポンプを動作させて、チャンネル212の入口(一方の開口)から一定量の作働流体25を注入する。なお、チャンネル212内への作働流体25を注入する他の方法として、別途準備した作働流体25を貯蔵した作働流体溜めに、ヒートパイプ用部材21に設けたチャンネル212の一方の端面に設けたそれぞれの入口(一方の開口)を挿入して作働流体25に漬ける。そして、作働流体溜めから作働流体25を、毛管現象を利用してチャンネル212内部に上昇させて、一定量の作働流体25をチャンネル212の内部に注入してもよい。」
(4)「【0030】
ヒートパイプ用部材21のチャンネル212の入口(一方の開口)と出口(他方の開口)の両出入口、いいかえればヒートパイプ用部材21の両端をかしめて作働流体25をチャンネルに密閉する。このようにして、ヒートパイプ用部材21のチャンネル212である貫通孔の両端の開口を封止、密閉する。したがって、ヒートパイプ用部材21を用いて、複数の独立した作働流体流路24を有するヒートパイプ部11が作成される。この一実施例では、図1Bに示すように、複数の独立した作働流体流路24は、作働流体25と空気26が封入、密閉されている。作働流体流路24内での作働流体25と空気26の割合は、作働流体25(エタノール)が約30%、空気26が約70%を占めている。」
(5)「【0031】
本発明では、上記したように複数の独立した作働流体流路24を有するヒートパイプ部11、絶縁層部12と導電回路部13とで、ヒートパイプ回路基板1を構成している。
【0032】
本発明では、第1図に示すように、複数の独立した作働流体流路24を設けたヒートパイプ部11を有するヒートパイプ回路基板1において、導電回路部13に取り付けられた電子回路部14(発熱体)で発生した熱は、絶縁層部12を介してヒートパイプ部11に伝わり、ヒートパイプ部11の封入された冷却冷媒作働流体に伝わる。冷却冷媒作働流体25は、熱でヒートパイプ部11の各々の作働流体流路24で気化し、熱源の無い方へ移動する。熱源の無い部分で気化した冷却冷媒は冷却され作働流体25に変り、熱源部分(電子部品)へ戻る。これが繰り返され熱源部分(電子部品)の熱を吸収(吸熱)する。
【0033】
このように本発明のヒートパイプ回路基板1は、まずヒートパイプ用部材21を用い、複数の貫通孔であるチャンネルの両端を封止、密封する。この結果、ヒートパイプ部11として、複数の作働流体流路24を独立して設け、その独立した複数の作働流体流路24内にそれぞれ作働流体を収容したので、冷却冷媒である作働流体25の放熱表面積を大きく設けることができ、ヒートパイプ回路基板1のヒートパイプ部11の放熱性を大幅に向上できた。」
(6)「【0034】
ヒートパイプ用部材21の金属として、上記実施例では、アルミニウムを選択したが、アルミニウム合金、銅、銅合金、亜鉛鋼鈑、シリコン鋼鈑等を用いてもよい。また、ヒートパイプ用部材21の貫通孔として、円形断面形状としたが、楕円形状、四角形形状、または台形形状の断面形状のものを用いてもよい。ヒートパイプ用部材21の貫通孔は、例えば押し出し成形、レーザ加工等で形成する。
【0035】
また、冷媒となる作働流体25としては、例えば、水、アルコール類(エタノール、ブタン等)等を採用する。作働流体流路24内には、冷媒となる作働流体25(水、アルコール類等)と空気、不活性ガス(例えば、窒素(N2)、ヘリウム(He)等)等の流体を封入する。」
(7)「【図1】


(8)「【図2】


(9) 【図1】B、【図2】の記載から、複数の独立した作働流体流路24を形成する複数のチャンネル212は、アルミニウム板211の内部に長手方向平行に配列されていることが見て取れる。

(10) 上記(1)?(9)の記載事項を総合すると、引用文献1には以下の事項が記載されていることが把握される。
ア ヒートパイプ部11となるヒートパイプ用部材21は、高さ約2mm、長さ約600mmの大きさのアルミニウム板211で構成される。
イ アルミニウム板211は内部に長手方向平行に配列された複数のチャンネル212を備え、この複数のチャンネル212はアルミニウム板211を押し出し成形して設けられている。
ウ それぞれのチャンネル212は、両端に開口(入口と出口)を有した直径約0.5?1.5mmの断面円形状の貫通孔で構成されている。
エ チャンネル212の出口(他方の開口)に真空ポンプを準備の上、真空ポンプを動作させて、チャンネル212の入口(一方の開口)から一定量の作働流体25を注入し、アルミニウム板211のチャンネル212である貫通孔の両端の開口がかしめられて封止、密閉され、複数の独立した作働流体流路24を形成したヒートパイプ部11が作成される。
オ 作働流体流路24内での作働流体25と空気26の割合は、作働流体25が約30%、空気26が約70%を占めている。
カ 冷却冷媒作働流体25は、熱でヒートパイプ部11の各々の作働流体流路24で気化し、熱源の無い方へ移動する。熱源の無い部分で気化した冷却冷媒は冷却され作働流体25に変り、熱源部分へ戻る。これが繰り返され熱源部分の熱を吸収する。

2 引用発明
引用文献1についての上記「1(1)?(10)」の事項から、引用文献1には、
「複数の独立した作働流体流路24が形成されたヒートパイプ部11において、
ヒートパイプ部11となるヒートパイプ用部材21は、高さ約2mm、長さ約600mmの大きさのアルミニウム板211で構成され、
アルミニウム板211は、押し出し成形で設けられた長手方向平行に配列された複数のチャンネル212を内部に備え、
それぞれの複数のチャンネル212は、両端に開口を有した直径約0.5?1.5mmの断面円形状の貫通孔で構成され、
複数のチャンネル212には、一定量の作働流体25が注入され、アルミニウム板211のチャンネル212の両端の開口は、かしめられて封止、密閉されることで、複数の独立した作働流体流路24が形成され、
作働流体流路24内での作働流体25と空気26の割合は、作働流体25が約30%、空気26が約70%であり、
作働流体25は、熱でヒートパイプ部11の各々の作働流体流路24で気化し、熱源の無い方へ移動して冷却され作働流体25に変り、熱源部分へ戻ることを繰り返し、熱源部分の熱を吸収する、
複数の独立した作働流体流路24を形成したヒートパイプ部11。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

第4 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「高さ約2mm、長さ約600mmの大きさのアルミニウム板211」は、その形状・構造及びアルミニウムが熱伝導体であることを踏まえると、本願発明の「一つの中実であるプレート状或いは帯状の熱伝導体」に相当する。
また、引用発明の「両端に開口を有した直径約0.5?1.5mmの断面円形状の貫通孔で構成され」た「チャンネル212」は、その形状・構造からみて、本願発明の「微細管」に相当する。
よって、引用発明の「アルミニウム板211は、押し出し成形で設けられた長手方向平行に配列された複数のチャンネル212を内部に備え」ることは、本願発明の「前記熱伝導体は二つ以上の平行配列された微細管を備え」ることに相当する。
また、引用発明の「複数のチャンネル212には、一定量の作働流体25が注入され、アルミニウム板211のチャンネル212の両端の開口は、かしめられて封止、密閉されることで、複数の独立した作働流体流路24が形成され」ていることは、その構造からみて、本願発明の「前記熱伝導体の前記微細管の両端が密閉され」、「各前記微細管が全て独立のヒートパイプ構造を有して」いることに相当する。
そして、引用発明の「チャンネル212には、一定量の作働流体25が注入され」、「作働流体25は、熱でヒートパイプ部11の各々の作働流体流路24で気化し、熱源の無い方へ移動して冷却され作働流体25に変り、熱源部分へ戻ることを繰り返し、熱源部分の熱を吸収する」ことは、本願発明の「前記微細管内に」「相変化伝熱効果を有する作動液を有し」ていることに相当する。
そして、引用発明の「複数の独立した作働流体流路24が形成されたヒートパイプ部11」は、本願発明の「微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ」に相当する。

2 したがって、本願発明は引用発明とは、
「一つの中実であるプレート状或いは帯状の熱伝導体を備え、
前記熱伝導体は二つ以上の平行配列された微細管を備え、
各前記微細管が全て独立のヒートパイプ構造を有しており、
前記微細管内に相変化伝熱効果を有する作動液を有し、
前記熱伝導体の前記微細管の両端が密閉された、
微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、「微細管内に空気を含まない」ものであるのに対して、引用発明は、「作働流体流路24内での作働流体25と空気26の割合は、作働流体25が約30%、空気26が約70%」である点。

[相違点2]
本願発明は、「熱伝導体の前記微細管」の「密閉」された「両端」の「少なくても一端は、密閉口に向かい徐々に収束した帯状密閉口を備え」、「前記熱伝導体の総厚さが3mm又は3mmより小さい場合、徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.75乃至1.5の間となり、前記熱伝導体の総厚さが3mm乃至5mmである場合、徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.5乃至1.5の間となる」ものであるのに対して、引用発明は、「高さ約2mm、長さ約600mmの大きさ」の「アルミニウム板211のチャンネル212」の「かしめられて封止、密閉」された「両端」の少なくても一端について、そのような形状であるか明らかでない点。

第5 判断
1 上記各相違点について検討する。
まず上記相違点1について検討する。
ヒートパイプの技術分野において、ヒートパイプ内に作動流体以外の空気がないようにすることは、例えば、特開昭57-67794号公報(以下「引用文献2」という。)(1頁左欄11?18行)、特開平11-173776号公報(以下「引用文献3」という。)(【0023】)、特開2008-196787号公報(以下「引用文献4」という。)(【0026】)、特開平7-305977号公報(以下「引用文献5」という。)(【0010】)にみられるように、ヒートパイプの構造として本願優先日前に周知の技術である。また、ヒートパイプ内に作動流体以外の空気がないようにすることで、ヒートパイプ内での作動流体の気化量を多くでき、気化した流体の移動速度も高まることで、ヒートパイプの熱伝達効率が高まることも当業者の技術常識である。
そして、引用発明のヒートパイプ部11についても、熱伝達効率を向上させることは当然求められる課題であるといえるから、上記周知の技術を適用して、引用発明のヒートパイプ部11の作動流体流路24内の空気26をなくすようにすること、すなわち、上記相違点1についての本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

2 次に、上記相違点2について検討する。
引用発明のように、ヒートパイプの開口端部をかしめる(圧着する)ことにより封止、密閉することは例えば引用文献2?5にみられるように本願優先日前に周知の技術であり、そのようにして封止、密閉された端部の形状が、一般に、密閉口に向かい徐々に収束した形状となることも、例えば、引用文献3(【0028】、【図5】)、引用文献4(【0026】、【図1】)、引用文献5(【0012】?【0013】、【図7】)に示されるように、本願優先日前に周知の事項である。
よって、引用発明の複数のチャンネル212についても、かしめられて封止、密閉された端部の形状は、上記周知の密閉口に向かい徐々に収束した一般的な形状となる蓋然性が高い。そして、引用発明の複数のチャンネル212は、高さ約2mm、長さ約600mmの大きさのアルミニウム板211内部の長手方向平行に配列したものであるから、当該複数のチャンネル212の端部をかしめる際に、アルミニウム板212の端部を一括してかしめるようにする程度のことは格段の困難なく当業者が適宜になし得る設計的事項であるところ、そうして封止、密閉された端部の形状は、上記引用文献3【図5】に示されるように、密閉口に向かい徐々に収束した帯状密閉口となることも当業者であれば十分に理解し得ることである。
ここで、引用発明のヒートパイプ部11は、その上面に設けられた導電回路部13との接触面が放熱面として使用されるものであって、当該放熱面の放熱表面積を大きく設けることが特徴であるところ(上記記載事項「第3 1(5)」参照)、放熱面とはならないヒートパイプ部11の端部のかしめ形状について、密閉口に向かい徐々に収束する長さを必要以上に長く形成することはせず、反対に、かしめ加工を行う際、急角度の曲げ加工により金属に亀裂や歪みが生じないようにすることも設計上当然求められることであるところ、密閉口に向かい徐々に収束する長さを極端に短く形成することもないから、アルミニウム板212の高さに対する密閉口に向かい徐々に収束する長さの比の範囲は、自ずと一定の範囲に収まるものとなる。そして、引用発明の高さ2mmのアルミニウム板212の端部のかしめ加工により、密閉口に向かい徐々に収束する長さが1.5?3mm(アルミニウム板212の高さに対する密閉口に向かい徐々に収束する長さの比が0.75?1.5の間)とする程度の寸法、すなわち、上記相違点2における本願発明の「前記熱伝導体の総厚さが3mm又は3mmより小さい場合、徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.75乃至1.5の間となり、前記熱伝導体の総厚さが3mm乃至5mmである場合、徐々に収束した前記帯状密閉口の延在する長さと前記熱伝導体の総厚さとの比が0.5乃至1.5の間となる」ようにすることは、上記自ずと一定の範囲に収めたものに相当する寸法といい得るものであって、当業者が実施に際して容易に採用し得た設計的事項というべきものである。

3 そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用文献2?5にみられるように、内部に作動流体以外の空気がない周知のヒートパイプについて、その端部の封止、密閉をかしめ加工(圧着加工)で行うことが普通に採用されているところ、かしめ加工による一般的な形状である、密閉口に向かい徐々に収束する当該端部形状が、ヒートパイプの作動範囲での耐圧強度を有していることは明らかであり、徐々に収束した密閉口の延在する長さと熱伝導体の厚さとの比の範囲についても、上記2で述べたとおり、ヒートパイプの通常の機能が発揮されるように設計上求められる範囲のものでしかないといえるから、引用発明及び引用文献2?5にみられるような周知の技術ないし周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものというほかない。

4 よって、本願発明は、引用発明、引用文献2?5にみられるような周知の技術ないし周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-05 
結審通知日 2017-01-11 
審決日 2017-01-25 
出願番号 特願2011-533524(P2011-533524)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (F28D)
P 1 8・ 121- WZ (F28D)
P 1 8・ 537- WZ (F28D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 浩士  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 佐々木 正章
千壽 哲郎
発明の名称 微細管配列を有するマイクロヒートパイプアレイ及びその作製方法並びに熱交換システム  
代理人 福森 久夫  

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