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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1349453
審判番号 不服2018-509  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-15 
確定日 2019-03-19 
事件の表示 特願2013-171977「偏光子保護フィルムの製造方法及び偏光子保護フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月 2日出願公開、特開2015- 40978、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
平成25年 8月22日 出願
平成29年 4月10日 拒絶理由通知(同年4月18日発送)
平成29年 5月29日 意見書、手続補正書
平成29年10月13日 拒絶査定(同年10月24日発送。以下、
「原査定」という。)
平成30年 1月15日 審判請求書、手続補正書
平成30年11月13日 拒絶理由通知(同年11月20日発送。この
拒絶理由通知で通知された理由を、以下、
「当審拒絶理由」という。)
平成31年 1月18日 意見書、手続補正書(この手続補正書による
補正を、以下、「本件補正」という。)

第2 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1-5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2007-272095号公報(以下、「引用文献A」という。)及び特開2008-89806号公報(以下、「引用文献B」という。)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、以下のとおりである。
1.(新規性)本件出願の(本件補正前の)請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2013-72010号公報(以下、「引用文献1」という。)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)本件出願の(本件補正前の)特許請求の範囲の請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 本願発明
本件出願の請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
熱可塑性樹脂を成形用ダイからシート状に溶融押出しする工程と、
溶融押出しされた前記シート状の熱可塑性樹脂を、溶融した状態のまま、表面に凹凸パターンを有する最大表面粗さRmaxが5?20μmである第1ロールに接触させ、前記第1ロールと、第2ロールとにより狭圧し、一方の面に、最大表面粗さRmaxが5?20μm、かつ、ヘイズ値が60%以上となるように凹凸パターンを形成する工程と、
凹凸パターンを形成した前記シート状の熱可塑性樹脂を延伸する工程と、を備え、
前記凹凸パターンを形成する工程において、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対して、前記第1ロールの温度を、(Tg-40)?(Tg+20)℃の範囲とすることを特徴とする光拡散機能を有する偏光子保護フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対して、前記第2ロールの温度を、(Tg-50)?Tg℃の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の偏光子保護フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1ロールの表面に形成された凹凸パターンがランダムパターンであることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光子保護フィルムの製造方法。」

第5 引用文献・引用発明
1 引用文献1
(1)記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1(特開2013-72010号公報)には、次の事項が記載されている。下線は当合議体にて付した。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
導光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、偏光分離シートの保護フィルム等の光学用フィルムには、優れた透明性や耐熱性等が求められる。ポリカーボネート系樹脂からなるフィルムは、透明性に優れ、さらに、耐熱性、耐衝撃性、剛性にも優れることから、光学用フィルムとして使用されている。
【0003】
・・・(中略)・・・
偏光分離シートの保護フィルムは、偏光分離シートを保護するために、偏光分離シートの少なくとも一方の面に貼合して使用されるが、偏光分離シートから出射される偏光の偏光方向を変化させることがないように、その光学歪を小さくすることが求められるとともに、視野角を向上させるために、光拡散性が求められる。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のポリカーボネート系樹脂フィルムは、光拡散性が不十分であり、該フィルム表面に光沢が確認され、また、該フィルムが使用されている液晶表示装置を斜め方向から見ると、該液晶表示装置の表示画像が暗く見える。
【0007】
そこで本発明の課題は、優れた光拡散性を有するポリカーボネート系樹脂フィルムを提供することである。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のポリカーボネート系樹脂フィルムは、ポリカーボネート系樹脂からなるものである。
・・・(中略)・・・
【0021】
<ポリカーボネート系樹脂フィルム>
本発明のポリカーボネート系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面がマット面であり、該マット面における高さ分布指数(HDI)が所定の範囲であることで、優れた光拡散性を有する。
【0022】
前記マット面におけるHDIは、9?15であり、好ましくは9?12であり、さらに好ましくは9?10である。前記HDIがあまり小さいと、ポリカーボネート系樹脂フィルムの光拡散性が十分ではなく、該フィルム表面に光沢が確認され、また、該ポリカーボネート系樹脂フィルムが使用されている液晶表示装置を斜め方向から見ると、該液晶表示装置の表示画像が暗く見えることがある。前記HDIがあまり大きいと、ポリカーボネート系樹脂フィルムの光拡散性が過度になり、該フィルム表面に光沢は確認されないものの、該ポリカーボネート系樹脂フィルムが使用されている液晶表示装置を正面方向から見ると、該液晶表示装置の表示画像が暗く見えることがある。光ポリカーボネート系樹脂フィルムの少なくとも一方の面のHDIを上記所定の範囲とするためには、後述するマットロールを用いたフィルムの形成方法では、例えば、ダイから押し出された樹脂が第1冷却ロールと第2冷却ロールに挟み込まれたときの、該樹脂への第2冷却ロールの押付圧を調節したり、第2冷却ロールの外周面の凹凸形状を調節したりすればよく、また、後述するマット化剤を用いたマット面の形成方法においては、例えば、該マット化剤の平均粒子径や添加量を調節したりすればよい。
・・・(中略)・・・
【0026】
ポリカーボネート系樹脂フィルムは、光拡散性の観点から、HDIが上記所定の範囲であるマット面における最大高さ粗さ(Rz)が8?20μmであることが好ましく、10?15μmであることがより好ましい。前記Rzがあまり小さいと、ポリカーボネート系樹脂フィルムの光拡散性が十分ではなく、該ポリカーボネート系樹脂フィルムが使用されている液晶表示装置を斜め方向から見ると、該液晶表示装置の表示画像が暗く見えるおそれがある。前記Rzがあまり大きいと、ポリカーボネート系樹脂フィルムの光拡散性が過度になり、該ポリカーボネート系樹脂フィルムが使用されている液晶表示装置を正面方向から見ると、該液晶表示装置の表示画像が暗く見えるおそれがある。光ポリカーボネート系樹脂フィルムの少なくとも一方の面のRzを上記所定の範囲とするためには、後述する溶融押出形成における第2冷却ロール外周面の凹凸形状を調節したり、後述するマット化剤を用いたマット面の形成方法において、該マット化剤の平均粒子径や添加量を調節したりすればよい。なお、前記Rzは、JIS B0601-2001に準拠して表面粗さ計で測定して得られる値である。
・・・(中略)・・・
【0029】
ポリカーボネート系樹脂フィルムのヘイズは、50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上があることがさらに好ましい。ヘイズがあまり低いと十分な光拡散効果が現れないおそれがある。
・・・(中略)・・・
【0031】
・・・(中略)・・・
液晶表示装置は、図3に示すように、バックライトユニット8上に液晶パネル11が設置されており、バックライトユニット8から出射される光が液晶パネル11へ入射するように構成されている。偏光分離シート9は、通常、バックライトユニット8と液晶パネル11との間に配置されるものであり、バックライトユニット8から出射されてくる無偏光光を互いに直交関係にある2つの偏光光に分離し、一方の偏光光のみを選択的に透過して液晶パネル11側に出射し、もう一方の偏光光をバックライトユニット8側に戻して、バックライトユニット内で反射させた後、再度、偏光分離シート9に入射させて再利用することで、光の利用効率を向上させるようにしたものである。したがって、偏光分離シート9の保護のために該シート9の両方または一方の面に積層や貼合して用いられる偏光分離シート保護フィルム10としては、該シート9より出射してくる偏光の偏光方向をなるべく乱さないように、リタデーション値が低いことが好ましく、20nm以下のリタデーション値であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
ポリカーボネート樹脂フィルムを偏光分離シート保護フィルム10として使用する際、該フィルムのHDIが上記所定の範囲であるマット面が最表面となるように、該フィルムを偏光分離シート9に積層や貼合するのが好ましい。」

ウ 「【0032】
<ポリカーボネート系樹脂フィルムの製造工程>
本発明のポリカーボネート系樹脂フィルムは、上述したポリカーボネート系樹脂からなり、少なくとも一方の面がマット面であり、該マット面におけるHDIが上記所定の範囲のものである。ポリカーボネート系樹脂フィルムの製造方法としては、上述したポリカーボネート系樹脂を溶融押出する方法や、該樹脂を溶液製膜する方法等が挙げられる。中でも、300℃、1.2kg荷重でのMVRが11?35cm^(3)/10minであるポリカーボネート系樹脂を溶融押出する方法によれば、表面欠陥の発生が抑制されたポリカーボネート系樹脂フィルムを、連続的に安定して、生産安定性が良好に製造することができる。HDIが所定の範囲であるポリカーボネート系樹脂フィルムの形成方法としては、溶融押出成形時に外周面に凹凸形状が形成された金属ロールである、いわゆるマットロールを用いた転写による方法や、マット化剤となる透明微粒子を配合したポリカーボネート系樹脂を用いて溶融押出成形において表面に凹凸を形成させる方法等が挙げられる。なお、本発明のポリカーボネート系樹脂フィルムとしては、主として上述したポリカーボネート系樹脂を含有していればよく、例えば他の樹脂をブレンドしていてもよく、また、例えば他の樹脂との多層溶融押出成形によって得られる2種2層や2種3層等の多層フィルムであってもよい。なお、これら他の樹脂についても、ポリカーボネート系樹脂と同様に、必要に応じて、透明微粒子や上述の他の成分を配合してもよい。
【0033】
<マットロールを用いたフィルムの形成方法>
マットロールを用いたフィルムの形成方法は、溶融押出成形時に外周面に凹凸形状が形成された金属ロール(以下、マットロールということがある)を用いて、凹凸形状を転写する方法であり、例えば特開2009-196327号公報、特開2009-202382号公報に記載の方法などを挙げることができる。
【0034】
図2は、本発明のポリカーボネート系樹脂フィルムの製造プロセス(以下、本発明の製造プロセスということがある)の一例を示す概略説明図である。
同図に示すように、この製造プロセスは、溶融押出機1を準備し、押出機に投入されたポリカーボネート系樹脂は溶融混練され、ポリマーフィルター2を通過後、ダイ3(Tダイ)を介して樹脂が広げられ、ダイ先端からフィルム状となって押し出される。
【0035】
ポリマーフィルター2としては、例えば、リーフディスク型、キャンドル型、プリーツ型等が上げられるが、中でもリーフディスク型ポリマーフィルターが好ましい。
【0036】
ダイ3としては、通常、Tダイが用いられる。ダイ3は、ポリカーボネート系樹脂フィルムが単層フィルムの場合、1種の樹脂を単層で押し出す単層ダイが好ましく、2種2層や2種3層等の多層フィルムの場合、それぞれ独立して押出機から圧送された2種以上の樹脂を積層して共押出しする多層ダイが好ましく、多層ダイとして、フィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイが好ましい。
【0037】
次いで、ダイ3から押し出された樹脂は、略水平方向に対向配置された第1冷却ロール4と第2冷却ロール5の間に挟み込まれ、少なくとも一方の面に凹凸形状を転写してマット面を形成し、第3冷却ロール6により、緩やかに冷却し、ポリカーボネート系樹脂フィルム7を得ることができる。
【0038】
第1冷却ロール4は、直径が25?100cm程度であり、ゴムロールまたは金属弾性ロールからなる。
・・・(中略)・・・
【0041】
このように第1冷却ロール4としては、金属材料や弾性体で構成されたもので、鍍金等で鏡面状に仕上げされたものを用いてもよい。なお、金属弾性ロールの金属製薄膜やゴムロールの表面は、下記で説明する第2冷却ロール5と同様に表面に凹凸形状を設けても何ら問題はない。
【0042】
第2冷却ロール5は、直径が25?100cm程度であり、外周面に凹凸形状が形成された金属ロールからなるマットロールである。具体的には、金属塊を削りだしたドリルドロールや、中空構造のスパイラルロール等のロール内部に流体、蒸気等を通してロール表面の温度を制御できる金属ロールなどが挙げられ、これら金属ロールの外周面にサンドブラストや彫刻等によって所望の凹凸形状が形成されたものを用いることができる。
【0043】
第2冷却ロール5の外周面に形成される凹凸形状としては、得られるポリカーボネート系樹脂フィルムの該第2冷却ロールに当接した面におけるHDIが9?15となる形状であれば特に限定されず、マット形状や、特定のピッチや高さを有する凹凸形状などでもよく、好ましくはマット形状が挙げられる。
【0044】
ポリカーボネート系樹脂フィルム表面に凹凸形状の転写は、ダイから押し出された樹脂が第1冷却ロールとダイ2冷却ロールとの間に挟み込まれたときに、該樹脂が第2冷却ロールに押付られることで行われる。前記樹脂への第2冷却ロールの押付圧が低いと、第2冷却ロール表面の凹凸形状は該樹脂へ転写され難くなり、得られるポリカーボネート系樹脂フィルムの、凹凸形状が形成されてなるマット面におけるHDIは小さくなる傾向にある。
【0045】
ポリカーボネート系樹脂フィルムの両方の面をマット面とするには、例えば、第1冷却ロール4として上記ゴムロールを用い、第2冷却ロール5として上記凹凸形状を外周面に形成されたマットロールを用いればよく、得られるポリカーボネート系樹脂フィルムにおいて、前記マットロールに接した面は、HDIが上記所定の範囲であるマット面となる。また、上記凹凸形状を外周面に形成された冷却ロール同士の間にダイ3から押し出された樹脂を挟み込んでもよい。
【0046】
凹凸形状が転写されたポリカーボネート系樹脂フィルムは、第2冷却ロール5に巻き掛けられた後、引取りロールにより引取られて巻き取られる。このとき、第2冷却ロール5以降に第3冷却ロール6を設けてもよい。これにより、ポリカーボネート系樹脂フィルムが緩やかに冷却されるので、該フィルムの光学歪を小さくすることができ、さらに第2冷却ロール5への接触時間も安定して確保できるため、第2冷却ロール5に付与した凹凸形状を安定して転写させることが可能となる。第3冷却ロール6としては、特に限定されるものではなく、従来から押出成形で使用されている通常の金属ロールを採用することができる。具体例としては、ドリルドロールやスパイラルロール等が挙げられる。第3冷却ロール6の表面状態は、鏡面であるのが好ましい。
【0047】
第2冷却ロール5に巻き掛けられた樹脂フィルムを、第2冷却ロール5と第3冷却ロール6との間に通して第3冷却ロール6に巻き掛けるようにする。第2冷却ロール5と第3冷却ロール6との間は、所定の間隙を設けて解放状態としても、両ロールに挟み込んでも構わない。なお、樹脂フィルムをより緩やかに冷却する上で、第3冷却ロール6以降に第4冷却ロール,第5冷却ロール,・・・と複数本の冷却ロールを設け、第3冷却ロール6に巻き掛けたマットフィルムを順次、次の冷却ロールに巻き掛けるようにしてもよい。
・・・(中略)・・・
【0051】
本発明のポリカーボネート系樹脂フィルムは、拡散作用、変角作用、他部材とのスティッキング防止や接触などによるフィルム表面の保護などの様々な目的で用いられ、例えば、液晶表示装置において、バックライトユニットに組み込まれる光拡散フィルム、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどや、偏光分離シートの保護フィルム、反射フィルムや導光フィルム等に使用できる。また、光ディスクや照明用フィルムなどにも適用することができ、本発明はこれらの用途に限定されるものではない。中でも、液晶表示装置における偏光分離シートの保護フィルムとして好ましく用いることができる。」

エ 「【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下の実施例中、含有量ないし使用量を表す部は、特記ないかぎり重量基準である。
【0053】
以下の実施例および比較例で使用した押出装置の構成は、次の通りである。
溶融押出機1:ベント付きスクリュー径115mm一軸押出機(東芝機械(株)製)
ポリマーフィルター2:フィルター孔サイズ10μm
ダイ3:Tダイ(単層ダイ)
【0054】
溶融押出機1、ポリマーフィルター2、ダイ3、第1?第3冷却ロール4?6を図2に示すように配置し、各冷却ロール4?6を以下のように構成した。
【0055】
<ロール構成>
第1冷却ロール4、第2冷却ロール5および第3冷却ロール6を以下のように構成した。
第1冷却ロール4:外径450mmφで硬度A70°のシリコーンゴムロール
第2冷却ロール5:外径450mmφでブラスト処理によってRzが16.5μmの凹凸形状が形成されたステンレス鋼製の金属ロール(ドリルドロール)
第3冷却ロール6:外径450mmφで鏡面仕上げのステンレス鋼製の金属ロール(ドリルドロール)
【0056】
(実施例1)
ポリカーボネート系樹脂(住化スタイロン ポリカーボネート製の「カリバー301-10」)を115mmφの単軸の溶融押出機1に供給し、ダイ3の手前に設置したフィルター孔サイズが10μmのポリマーフィルター2を通過させた後、ダイ3から、300kg/hrの吐出量でフィルム状の樹脂を押出し、該樹脂を第1冷却ロール4(設定温度:34℃)と第2冷却ロール5(設定温度:130℃)との間に挟み込んで、該樹脂に第2冷却ロール5を押付し、第2冷却ロール5に巻き掛け、次いで、第2冷却ロール5と第3冷却ロール6(設定温度:135℃)との間に通し、さらに第3冷却ロール6に巻き掛けて、第2冷却ロール5に接した面がマット面である厚み130μmのポリカーボネート系樹脂フィルム7を得た。
【0057】
(比較例1)
第1冷却ロール4と第2冷却ロール5との間に挟み込んだ樹脂への第2冷却ロール5の押付圧を低くした以外は、実施例1と同様の方法により、第2冷却ロール5に接した面がマット面である厚み130μmのポリカーボネート系樹脂フィルム7を得た。
【0058】
得られた各ポリカーボネート系樹脂フィルム(実施例1、比較例1)について、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
<最大高さ粗さ(Rz)>
ポリカーボネート系樹脂フィルムの第2冷却ロールに接した面における最大高さ粗さ(Rz)を、JIS B0601-2001に準拠して表面粗さ計(ミツトヨ(株)製の「サーフテストSJ-201」)により測定した。
【0060】
<高さ分布指数(HDI)>
三次元顕微鏡「PLμ2300」(Sensofar社製)を用いて、ポリカーボネート系樹脂フィルムの第2冷却ロールに接した面の表面形状を測定して、表面形状の高さ分布曲線を作成した。前記測定は、前記顕微鏡の共焦点顕微鏡モードとし、対物レンズの倍率を20倍とし、Z scanは100μmピッチとし、敷居値は1.0%とし、Symmetrcalにて行なった。測定面積は640μm×480μmであった。
得られた高さ分布曲線におけるY軸の最大値を100%とし、Yが100%のときのXの値を0μmとし、Yが20%以上であるXの範囲をHDIとした。
【0061】
<表面ヘイズ>
得られたポリカーボネート系樹脂フィルムの第1冷却ロールに接した面に水を塗布し、塗布した水の上に、厚さ1mmのアクリル樹脂板(住友化学(株)製の「スミペックスE000」)1枚を載置し、積層体を作製した。得られた積層体のヘイズを、JIS K 7136に準拠して測定し、得られた値を表面ヘイズとした。
【0062】
<リタデーション値>
得られたポリカーボネート系樹脂フィルムから50mm角サイズで試験片を切り出し、微小面積複屈折率計(王子計測機器(株)製の「KOBRA-CCO/X」)により590nmにおけるリタデーション値を測定した。
【0063】
<表面光沢度>
JIS Z8741に準拠して、得られたポリカーボネート系樹脂フィルムの第2冷却ロールに接した面の60度光沢度を測定した。
【0064】
<光拡散性>
暗室内において、得られたポリカーボネート系樹脂フィルムの第2冷却ロールに接した面上に厚さ5mmのガラス板を載置し、ガラス板越しにフィルム表面を上方45度方向から光源(白熱灯)で照らしながら、ガラス板越しに該フィルムの上方45度方向から該フィルム表面を目視にて観察し、該フィルム表面に光沢が確認されなかった場合を「○」、該フィルム面に光沢が確認された場合を「×」と判定した。
【0065】

【0066】
表1から明らかなように、実施例1で得られたポリカーボネート系樹脂フィルムは、光拡散性の評価にて、フィルム表面に光沢が確認されず、光拡散性に優れるものであった。実施例1で得られたポリカーボネート系樹脂フィルムは、優れた光拡散性を有するので、該フィルムが使用されている液晶表示装置を斜め方向から見ても、該液晶表示装置の表示画像は暗く見えない。比較例1で得られたポリカーボネート系樹脂フィルムは、光拡散性の評価にて、フィルム表面に光沢が確認され、光拡散性が不十分なものであった。比較例1で得られたポリカーボネート系樹脂フィルムは、光拡散性が不十分であるので、該フィルムが使用されている液晶表示装置を斜め方向から見ると、該液晶表示装置の表示画像は暗く見える。

オ 「




(2)引用発明
前記(1)アないしオによると、引用文献1には、実施例1のポリカーボネート系樹脂フィルムの製造プロセスとして、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。

「ポリカーボネート系樹脂(住化スタイロン ポリカーボネート製の「カリバー301-10」)を115mmφの単軸の溶融押出機1に供給し、ダイ3の手前に設置したフィルター孔サイズが10μmのポリマーフィルター2を通過させた後、ダイ3から、300kg/hrの吐出量でフィルム状の樹脂を押出し、該樹脂を第1冷却ロール4と第2冷却ロール5(設定温度:130℃で、外径450mmφでブラスト処理によって最大高さ粗さRzが16.5μmの凹凸形状が形成されたステンレス鋼製の金属ロール)との間に挟み込んで、該樹脂に第2冷却ロール5を押付し、第2冷却ロール5に巻き掛け、次いで、第2冷却ロール5と第3冷却ロール6との間に通し、さらに第3冷却ロール6に巻き掛けて、第2冷却ロール5に接した面がマット面であり、厚みが130μm、最大高さ粗さRzが11.8μm、表面ヘイズが65%で光拡散性に優れるポリカーボネート系樹脂フィルム7を得る、ポリカーボネート系樹脂フィルムの製造プロセス。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ポリカーボネート系樹脂」は、熱可塑性樹脂である。
そうすると、引用発明の「ポリカーボネート系樹脂(住化スタイロン ポリカーボネート製の「カリバー301-10」)を115mmφの単軸の溶融押出機1に供給し、ダイ3の手前に設置したフィルター孔サイズが10μmのポリマーフィルター2を通過させた後、ダイ3から、300kg/hrの吐出量でフィルム状の樹脂を押出」すことは、技術的にみて、本願発明1の「熱可塑性樹脂を成形用ダイからシート状に溶融押出しする工程」に相当する。

イ 引用発明の「第2冷却ロール5」は、「外径450mmφでブラスト処理によって最大高さ粗さRzが16.5μmの凹凸形状が形成されたステンレス鋼製の金属ロール」である。
そうすると、引用発明の「第2冷却ロール5」は、技術的にみて、本願発明1の「表面に凹凸パターンを有する最大表面粗さRmaxが5?20μmである第1ロール」に相当する。
また、引用発明の「第1冷却ロール4」は、技術的にみて、本願発明1の「第2ロール」に相当する。
さらに、引用発明において、ダイ3から押出されたフィルム状の樹脂は、技術常識からみて、溶融した状態のままのものであって、第1冷却ロール4と第2冷却ロール5との間に挟み込まれ、第2冷却ロール5が押付けられることにより、厚みが130μm、最大高さ粗さRzが11.8μm、表面ヘイズが65%で光拡散性に優れるポリカーボネート系樹脂フィルム7が得られるものである。

ウ 前記イより、引用発明の「ダイ3から、300kg/hrの吐出量でフィルム状の樹脂を押出し、該樹脂を第1冷却ロール4と第2冷却ロール5(設定温度:130℃で、外径450mmφでブラスト処理によって最大高さ粗さRzが16.5μmの凹凸形状が形成されたステンレス鋼製の金属ロール)との間に挟み込んで、該樹脂に第2冷却ロール5を押付し、第2冷却ロール5に巻き掛け、次いで、第2冷却ロール5と第3冷却ロール6との間に通し、さらに第3冷却ロール6に巻き掛けて、第2冷却ロール5に接した面がマット面であり、厚みが130μm、最大高さ粗さRzが11.8μm、表面ヘイズが65%で光拡散性に優れるポリカーボネート系樹脂フィルム7を得る」ことは、本願発明1の「溶融押出しされた前記シート状の熱可塑性樹脂を、溶融した状態のまま、表面に凹凸パターンを有する最大表面粗さRmaxが5?20μmである第1ロールに接触させ、前記第1ロールと、第2ロールとにより狭圧し、一方の面に、最大表面粗さRmaxが5?20μm、かつ、ヘイズ値が60%以上となるように凹凸パターンを形成する工程」に相当する。

エ 引用発明のポリカーボネート系樹脂は、「住化スタイロン ポリカーボネート製の「カリバー301-10」」であるところ、そのガラス転移温度は146℃である(例えば、特開2012-96357号公報の【0050】を参照。)から、第2冷却ロール5の設定温度130℃は、(146-40)?(146+20)℃の範囲にある。
そうすると、引用発明は、本願発明1の「前記凹凸パターンを形成する工程において、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対して、前記第1ロールの温度を、(Tg-40)?(Tg+20)℃の範囲とする」という要件を満たしている。

オ 引用発明の「光拡散性に優れる」「ポリカーボネート系樹脂フィルムの製造プロセス」と、本願発明1の「光拡散機能を有する偏光子保護フィルムの製造方法」は、「光拡散機能を有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法」である点で共通する。

カ 以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「熱可塑性樹脂を成形用ダイからシート状に溶融押出しする工程と、
溶融押出しされた前記シート状の熱可塑性樹脂を、溶融した状態のまま、表面に凹凸パターンを有する最大表面粗さRmaxが5?20μmである第1ロールに接触させ、前記第1ロールと、第2ロールとにより狭圧し、一方の面に、最大表面粗さRmaxが5?20μm、かつ、ヘイズ値が60%以上となるように凹凸パターンを形成する工程と、を備え、
前記凹凸パターンを形成する工程において、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対して、前記第1ロールの温度を、(Tg-40)?(Tg+20)℃の範囲とする光拡散機能を有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。」

キ 他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1は、「凹凸パターンを形成した前記シート状の熱可塑性樹脂を延伸する工程」を備えるのに対し、引用発明は、そのような工程を備えない点。

<相違点2>
本願発明1は、「光拡散機能を有する偏光子保護フィルムの製造方法」であるのに対し、引用発明は、「光拡散性に優れる」「ポリカーボネート系樹脂フィルムの製造プロセス」である点。

(2)判断
ア 本願発明1と引用発明には実質的な相違点1があるから、本願発明1は、引用発明と同一であるとはいえない。

イ 事案に鑑み、相違点1について検討する。
光拡散機能を有する(熱可塑性樹脂フィルムである)偏光子保護フィルムの製造方法において、凹凸パターンを形成したシート状の熱可塑性樹脂を延伸する工程を備えることが、本件出願の出願前に公知又は周知であったことを示す証拠を見い出すことはできない。
また、引用発明の製造プロセスにおいて、第2冷却ロール5に接した面がマット面であるポリカーボネート系樹脂フィルムをさらに延伸する動機付けを見い出すことはできない。
そして、本願発明1は、「凹凸パターンを形成した前記シート状の熱可塑性樹脂を延伸する工程」を備えることにより、「光拡散偏光子保護フィルム11の面積を大きくできることによる生産効率の向上効果に加えて、光学特性を向上させることができる(特に、正面輝度が高く、視野角を広くすることができる。)」(本願明細書【0041】)という効果を奏するものである。
そうすると、引用発明において、相違点1に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

ウ したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
また、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

2 本願発明2-3について
請求項2-3は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するから、本願発明2-3は、いずれも、前記1の本願発明1についての判断と同様の理由により、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、また、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
本件補正により、本願発明1-3は「凹凸パターンを形成した前記シート状の熱可塑性樹脂を延伸する工程」を備えるものとなった。
当該工程は、原査定の理由に引用された引用文献A(特開2007-272095号公報)及び引用文献B(特開2008-89806号公報)に記載されておらず、また、当該工程が、本件出願の出願前に公知又は周知であったことを示す証拠を見い出すこともできない。
そうすると、本願発明1-3は、引用文献A及びBに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-05 
出願番号 特願2013-171977(P2013-171977)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 113- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 宮澤 浩
関根 洋之
発明の名称 偏光子保護フィルムの製造方法及び偏光子保護フィルム  
代理人 とこしえ特許業務法人  
代理人 とこしえ特許業務法人  
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