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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01P
管理番号 1349458
審判番号 不服2018-4759  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-06 
確定日 2019-03-19 
事件の表示 特願2013-230956「自動二輪車のエンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成27年5月11日出願公開、特開2015-90127、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年6月9日付け :拒絶理由通知書
平成29年8月3日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年1月4日付け :拒絶査定
平成30年4月6日 :審判請求書の提出
平成30年11月27日付け :拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由 通知」という。)
平成31年1月11日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年1月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし4に係る発明は、引用文献A及びBに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献A:特開2005-9389号公報
引用文献B:特開2013-204525号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし3に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2013-204524号公報
引用文献2:特開昭57-183525号公報

第4 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成31年1月11日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
エンジンのシリンダをクランクケースの前側上部に設けた自動二輪車のエンジンにおいて、
前記シリンダの後方でクランクケースの上部に前記エンジンを始動するスタータモータと冷却水を循環させるウォータポンプとを配置し、
前記スタータモータからのエンジン始動系の一部を前記ウォータポンプのポンプ駆動軸に接続して前記ウォータポンプを駆動させ、
前記エンジン始動系は、前記スタータモータから始動ギア列を介してカウンタ軸に接続されるとともに、前記カウンタ軸からプライマリギアを介してエンジンクランク軸に接続され、
前記ウォータポンプは、前記カウンタ軸上のミッションギアおよび前記スタータモータよりも車幅方向で外方であって、側面視で前記スタータモータと一部が重なって設けられたことを特徴とする自動二輪車のエンジン。
【請求項2】
エンジンのシリンダをクランクケースの前側上部に設けた自動二輪車のエンジンにおいて、
前記シリンダの後方でクランクケースの上部に前記エンジンを始動するスタータモータと冷却水を循環させるウォータポンプとを配置し、
エンジン始動系のワンウェイクラッチを前記ウォータポンプのポンプ駆動軸と同軸に設けて前記ウォータポンプを駆動させ、
前記エンジン始動系は、前記スタータモータから始動ギア列を介してカウンタ軸に接続されるとともに、前記カウンタ軸からプライマリギアを介してエンジンクランク軸に接続され、
前記ウォータポンプは、前記カウンタ軸上のミッションギアおよび前記スタータモータよりも車幅方向で外方であって、側面視で前記スタータモータと一部が重なって設けられたことを特徴とする自動二輪車のエンジン。
【請求項3】
エンジンのシリンダをクランクケースの前側上部に設けた自動二輪車のエンジンにおいて、
前記シリンダの後方でクランクケースの上部に前記エンジンを始動するスタータモータと冷却水を循環させるウォータポンプとを配置し、
エンジン始動系のスタータアイドルギア軸を、前記ウォータポンプのポンプ駆動軸と同軸に設けて前記ウォータポンプを駆動させ、
前記エンジン始動系は、前記スタータモータから始動ギア列を介してカウンタ軸に接続されるとともに、前記カウンタ軸からプライマリギアを介してエンジンクランク軸に接続され、
前記ウォータポンプは、前記カウンタ軸上のミッションギアおよび前記スタータモータよりも車幅方向で外方であって、側面視で前記スタータモータと一部が重なって設けられたことを特徴とする自動二輪車のエンジン。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2013-204524号公報(以下「引用文献1」という。)には、「車両用水冷式内燃機関の冷却系構造」に関して、図面(特に、図1ないし3等参照)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)

ア 「【0026】
先ず図1において、車両である自動二輪車の車体フレームFは、前輪WFを軸支するフロントフォーク11を操向可能に支承するヘッドパイプ12と、該ヘッドパイプ12から後ろ下がりに延びる左右一対のメインフレーム13…と、ヘッドパイプ12および両メインフレーム13…の前部に連設されるとともにメインフレーム13…の下方で後ろ下がりに延びる左右一対のエンジンハンガ14…と、前記メインフレーム13…の後端部に連設されて下方に延びる左右一対のピボットフレーム15…と、後ろ上がりに延びて前記両メインフレーム13…の後部に連結される左右一対のシートレール16…とを備える。
【0027】
前記車体フレームFには、水冷式4気筒の内燃機関Eの機関本体34が前記メインフレーム13…の下方に位置するようにして搭載されており、この内燃機関Eから出力される動力で回転駆動される後輪WRの車軸17が、前端部が前記ピボットフレーム15…に支軸18を介して上下に揺動可能に支承されるスイングアーム19の後端部に軸支される。また前記機関本体34内には歯車変速機M(図4参照)が内蔵されており、その歯車変速機Mの出力軸20に固定される駆動スプロケット21と、前記車軸17に固定される被動スプロケット22とに無端状のチェーン23が巻き掛けられる。」

イ 「【0030】
図2?図4を併せて参照して、前記機関本体34は、上部ケース半体35および下部ケース半体36が相互に結合されて成るとともに車幅方向に沿う軸線を有するクランクシャフト40を回転自在に支承するクランクケース37と、該クランクケース37の前部から前上がりに傾斜しつつ上方に立ち上がる気筒部38とを備え、前記クランクケース37の下部にはオイルパン39が結合される。
【0031】
前記気筒部38は、前記クランクケース37の前部から斜め前方に傾斜して上方に立ち上がるようにして前記上部ケース半体35に一体に形成されるシリンダボディ41と、該シリンダボディ41の上端部に結合されるシリンダヘッド42と、該シリンダヘッド42に結合されるヘッドカバー43とを備える。」

ウ 「【0035】
前記ウォータジャケット50,51を流通する冷却水はウォータポンプ54で強制循環されるものであり、前記シリンダボディ41内のウォータジャケット50に前記ウォータポンプ54から冷却水が供給される。一方、前記シリンダヘッド42内のウォータジャケット51から導出される冷却水は、サーモスタット55を介して前記ウォータポンプ54およびラジエータ56に導かれる。
【0036】
前記ウォータポンプ54および前記ラジエータ56は、前記機関本体34の前記気筒部38の相互に異なる側方に配置されるものであり、前記ラジエータ56は、前記気筒部38の前方に配置されて車体フレームFに支持され、前記ウォータポンプ54は、前記ラジエータ55との間で前記気筒部38を前後から挟むようにして前記気筒部38の後方に配置される。」

エ 「【0050】
前記気筒部38の後方で前記クランクケース37の上壁には、前記ウォータポンプ54の下方に配置されるスタータモータ90がそのモータ軸91をクランクシャフト40と平行にして配設されており、このスタータモータ90のモータ軸91および前記クランクシャフト40間には、図4で示すように、歯車式伝動機構92が設けられる。」

オ 上記エ及び内燃機関の始動はスタータモータにより行われるとの技術常識からみて、スタータモータ90が内燃機関Eを始動させるためのものであることは明らかである。

カ 上記イないしエ並びに図2及び図3の図示内容から、シリンダボディ41の後方でクランクケース37の上部にスタータモータ90とウォータポンプ54とを配置することが分かる。

キ 上記エ及びオから、内燃機関Eの始動系は、スタータモータ90から歯車式伝動機構92を介してクランクシャフト40に接続されるものであることが分かる。

上記アないしキ及び図1ないし図3の図示内容を総合すると、引用文献1には、「自動二輪車の内燃機関E」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「内燃機関Eのシリンダボディ41をクランクケース37の前部から斜め前方に傾斜して上方に立ち上がるように形成した自動二輪車の内燃機関Eにおいて、
前記シリンダボディ41の後方でクランクケース37の上部に前記内燃機関Eを始動するスタータモータ90と冷却水を循環させるウォータポンプ54とを配置し、
内燃機関Eの始動系は、前記スタータモータ90から歯車式伝動機構92を介してクランクシャフト40に接続されたものである自動二輪車の内燃機関E。」

2 引用文献2について
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開昭57-183525号公報(以下「引用文献2」という。)には、「車輛用エンジンのスタータ装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「自動車や自動2輪車等の車輛は、セルスタータによるエンジン始動が通常となつており、エンジンにはスタータモータが装備されている。このスタータモータはエンジン始動後、すなわちアイドリング運転時や走行中においては何らの作動もなさないので、この間に上記スタータモータを用いて例えば制動用油圧回路や冷却水循環経路等に設けられたポンプを駆動してやれば、このポンプ駆動のための格別なモータ等を必要とせず、構造の簡略化、ならびに部品点数の削減を図れることになる。」(第1ページ右欄第1行ないし第11行)

イ 「なお、上記実施例では、スタータモータによつてブレーキポンプを駆動させるようにしたが、他のポンプ例えばエンジン冷却水循環系に設けられた冷却水ポンプ等を駆動させるようにしてもよい。
以上詳述した本発明は、正逆回転可能なスタータモータの出力軸に、互に作動方向が異る1対の一方向クラツチを取付け、一方の一方向クラツチにはエンジン始動用ギヤを装着するとともに、他方の一方向クラツチにはポンプ駆動用ギヤを装着し、上記スタータモータの正回転によりエンジンが始動した状態において、このスタータモータを逆回転させることにより上記ポンプを駆動するようにしたものである。このものによれば、エンジンを始動するためのスタータモータによつてポンプを駆動させることができるので、従来エンジン始動後には何らの作動もなさないスタータモータの機能拡大を図れる。したがつて、ポンプ駆動用の格別なモータ等を必要とせず、構造の簡略化はもちろん、車輛全体としての部品点数を削減することができ、車輛の軽量化およびコストの低減を図れる等の優れた効果を奏する。」(第3ページ右下欄第3行ないし第4ページ左上欄第5行)

上記ア及びイ並びに第1図及び第2図の図示内容を総合すると、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献2記載事項〕
「スタータモータの出力軸を冷却水ポンプに接続し、前記冷却水ポンプを駆動させること。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「内燃機関E」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明1における「エンジン」に相当し、以下同様に、「シリンダボディ41」は「シリンダ」に、「クランクケース37」は「クランクケース」に、クランクケース37の「前部から斜め前方に傾斜して上方に立ち上がるように形成した」は、クランクケースの「前側上部に設けた」に、「自動二輪車」は「自動二輪車」に、「スタータモータ90」は「スタータモータ」に、「冷却水」は「冷却水」に、「ウォータポンプ54」は「ウォータポンプ」に、「内燃機関Eの始動系」は「エンジン始動系」に、「歯車式伝動機構92」は「始動ギア列」に、「クランクシャフト40」は「エンジンクランク軸」に、それぞれ相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。

〔一致点〕
「エンジンのシリンダをクランクケースの前側上部に設けた自動二輪車のエンジンにおいて、
前記シリンダの後方でクランクケースの上部に前記エンジンを始動するスタータモータと冷却水を循環させるウォータポンプとを配置し、
エンジン始動系は、前記スタータモータから始動ギア列を介してエンジンクランク軸に接続された自動二輪車のエンジン。」

〔相違点1〕
本願発明1においては、「前記スタータモータからのエンジン始動系の一部を前記ウォータポンプのポンプ駆動軸に接続して前記ウォータポンプを駆動させ」るのに対し、
引用発明においては、かかる事項を備えていない点。

〔相違点2〕
本願発明1においては、エンジン始動系は、スタータモータから始動ギア列を介して「カウンタ軸に接続されるとともに、前記カウンタ軸からプライマリギアを介して」エンジンクランク軸に接続され、「前記ウォータポンプは、前記カウンタ軸上のミッションギアおよび前記スタータモータよりも車幅方向で外方であって、側面視で前記スタータモータと一部が重なって設けられ」るのに対し、
引用発明においては、内燃機関Eの始動系は、スタータモータ90から歯車式伝動機構92を介してクランクシャフト40に接続されたものである点。

(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点2を先に検討する。
上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、上記引用文献1及び2には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3も、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項と同一の発明特定事項を有するものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成31年1月11日の手続補正により、補正後の請求項1ないし3は、「前記エンジン始動系は、前記スタータモータから始動ギア列を介してカウンタ軸に接続されるとともに、前記カウンタ軸からプライマリギアを介してエンジンクランク軸に接続され、前記ウォータポンプは、前記カウンタ軸上のミッションギアおよび前記スタータモータよりも車幅方向で外方であって、側面視で前記スタータモータと一部が重なって設けられた」という発明特定事項を有するものとなった。
当該発明特定事項は、原査定における引用文献A及びBには記載されておらず、本願出願前において周知技術でもないので、本願発明1ないし3は、引用文献A及びBに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審が通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-25 
出願番号 特願2013-230956(P2013-230956)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F01P)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 公志郎  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 鈴木 充
粟倉 裕二
発明の名称 自動二輪車のエンジン  
代理人 特許業務法人東京国際特許事務所  
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