• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1349489
審判番号 不服2018-71  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-04 
確定日 2019-03-26 
事件の表示 特願2013-183149「エピタキシャルウェーハの製造方法及び貼り合わせウェーハの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月16日出願公開,特開2015- 50425,請求項の数(3)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年9月4出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 7月 6日付け 拒絶理由通知
平成28年 9月 2日 意見書提出・手続補正
平成29年 2月24日付け 拒絶理由通知
平成29年 4月20日 意見書提出・手続補正
平成29年 9月29日付け 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成30年 1月 4日 審判請求
平成30年11月 6日付け 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)
平成30年12月27日 意見書提出・手続補正

第2 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は,平成30年12月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-本願発明3は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
シリコンウェーハのおもて面から水素イオンを1.0×10^(13)?3.0×10^(16)atoms/cm^(2)のドーズ量で注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成し,次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面にエピタキシャル層を形成するとともに,前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
シリコンウェーハのおもて面から水素イオンを1.0×10^(13)?3.0×10^(16)atoms/cm^(2)のドーズ量で注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成し,次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面を,絶縁膜を介して支持基板用ウェーハと貼り合わせる貼り合わせ強化熱処理を施すとともに,前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成することを特徴とする貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記貼り合わせに先立ち,前記絶縁膜を,前記支持基板用ウェーハに形成する請求項2に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。」

第3 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2004-282093号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
「【技術分野】
【0001】
この発明は,イントリンシック・ゲッタリングによる半導体ウエハの欠陥低減法に関し,特に半導体ウエハの表面層にH_(2)^(+)からなる水素イオンを注入した後不活性ガス雰囲気中で熱処理を行なうことにより安全性の向上及びコスト低減を図ったものである。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1?3は,この発明の一実施形態に係る半導体ウエハの欠陥低減法を示すもので,各々の図に対応する工程(1)?(3)を順次に説明する。
【0012】
(1)半導体ウエハ10は,例えばチョクラルスキー法で育成されたシリコン単結晶に切断,研磨等の処理を施して得られたもので,これに650?700℃の低温で数時間熱処理を施すことにより酸素析出核12を形成する。
【0013】
(2)次に,半導体ウエハ10の一方の主表面にH_(2)^(+)からなる水素イオンを注入する。このときのイオン注入条件は,加速エネルギーを10keV以上,注入量を1×10^(14)ions/cm^(2)以上にすることができる。水素イオンの注入は,必要に応じてウエハ10の両方の主表面に行なってもよい。
【0014】
イオン注入の際に,水素イオンは,通常のイオン注入装置で使用されている水素含有ガス(PH_(3),B_(2)H_(6)など)から簡単に発生させることができ,安全性も高い。また,イオン注入法では,一度質量分析を行なうため,水素イオンの純度が高く,部材等の高純度化も不要である。
【0015】
(3)次に,例えばアルゴンからなる不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10に熱処理を施す。このような熱処理により,ウエハ10の内部では酸素析出核12が微小欠陥14に成長すると共に,ウエハ10の表面層ではイオン注入された水素の還元作用により酸素及び酸素析出核が外方拡散して該表面層が無欠陥層16に変化する。
【0016】
上記した実施形態により得られる半導体ウエハにあっては,無欠陥層16に集積回路等のデバイスを歩留りよく形成可能である。また,微小欠陥14は,ゲッタ作用によりデバイス特性の劣化を抑制する。」

(2)引用発明1
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「シリコン単結晶に処理を施して得られた半導体ウエハ10の一方の主表面にH_(2)^(+)からなる水素イオンを加速エネルギーを10keV以上,注入量を1×10^(14)ions/cm^(2)以上のイオン注入条件で注入し,次に,不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理することにより,ウエハ10の内部では酸素析出核12がゲッタ作用を有する微小欠陥14に成長すると共に,ウエハ10の表面層ではイオン注入された水素の還元作用により酸素及び酸素析出核が外方拡散して該表面層が無欠陥層16に変化する半導体ウエハ10の製造方法。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開昭56-018430号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「2. 特許請求の範囲
半導体基板表面にイオンを注入して素子形成層より深い所に欠陥の吸収源を予め形成したのち,該半導体基板表面に素子の形成を行なうことを特徴とする半導体素子の製造方法。」(第1頁左欄第4行-第8行)

「 以下本発明の一実施例を図面を用いて説明する。本発明によれば,素子形成工程に先立って,第1図に示すごとくシリコン基板1表面に,イオン注入法を用いて例えば水素(H_(2))イオンを注入する。注入された水素イオンは第2図の曲線Aに示すようにガウス分布に従って分布する。その分布のピークの位置の表面からの深さをRpとすると,Rpより稍浅い所にイオン注入によって誘起された結晶の欠陥が集中的に発生する。
この欠陥の分布のピークの位置の深さをDとすると,欠陥は同図の曲線Bに示すように半導体基板1の表面と注入されたイオンのピーク位置Rpとの間,すなわち第1図にあっては破線2で示される深さに局在し,それより浅い所及び深い所には存在しない。従ってかかる欠陥の発生深さDを素子形成層より深い位置にえらべば,形成された素子の特性等には何の影響もなく,しかも素子形成層等に存在する酸素(O_(2))や炭素(C)等の有害不純物を有効に吸収するので微小欠陥の吸収源として用いることができる。
IC,LSI等の半導体装置の素子形成層の深さは数〔μm〕であるので,本実施例では素子形成工程に先立ちシリコン基板1表面にイオン注入法を用いて水素(H_(2))を20〔MeV〕という高エネルギで注入し,Rpを例えば20〔μm〕とすることにより,深さ約15〔μm〕の位置に吸収源2を形成した。
このあとは通常の工程に従って素子形成を行なってよく,素子形成工程中の加熱処理工程において発生する微小欠陥等は前記吸収源2に吸収され素子形成層における欠陥の発生を防止できる。
本実施例において形成した吸収源2は,従来用いられていたシリコン基板背面に形成した吸収源と異なり素子形成層に近接しているので効率よく微小欠陥等を吸収することができる。またシリコン基板1内部に形成されているので前処理等で除去されることが少なく吸収源としての機能を保持する。
上記実施例において注入するイオンとして水素(H_(2))を用いたが,これに代えてヘリウム(He)ネオン(Ne),アルゴン(Ar),キセノン(Xe),窒素(N_(2)),シリコン(Si),炭素(C),酸素(O_(2)),或いは燐(P),硼素(B)等を用いることができる。」(第2頁左上欄第13行-左下欄第16行)

(2)引用発明2
前記(1)より,引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「シリコン基板1表面に,イオン注入法を用いて水素(H_(2))イオンを注入し,注入された水素イオンはガウス分布に従って分布し,イオン注入によって誘起された結晶の欠陥は微小欠陥の吸収源として用いることができ,このあと,素子形成工程中の加熱処理工程において発生する微小欠陥等は前記吸収源2に吸収され素子形成層における欠陥の発生を防止できる素子形成工程。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平11-067682号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は半導体装置に関し,特に結晶欠陥等のゲッタリング技術に関するものである。」

「【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.以下,この発明の実施の形態1を図について説明する。図1および図2はこの発明の実施の形態1によるMOSFETの製造方法を示す断面図である。まず,シリコン単結晶等から成る半導体基板8(以下,基板8と称す)に,素子分離用の分離酸化膜9を形成し,基板8上にゲート酸化膜10を介してゲート電極11を,さらにゲート電極11上にTEOS酸化膜12を形成する。TEOS酸化膜12は後工程におけるイオン注入の際,ゲート酸化膜10にイオンがはいりこまないようにするためのマスクであり,ゲート電極11が十分厚ければ必ずしも必要ではない(図1(a))。
【0015】次に,希ガスイオンとして,ネオン(Ne)を注入エネルギー;約10KeV,注入量;約5E15cm^(-2)で注入する。図において13はソースドレインにおける希ガス注入領域としてのNe注入領域である(図1(b))。次に,不純物イオンとしてのひ素を注入エネルギー;約50KeV,注入量;約4E15cm^(-2)で注入する。図において14はソースドレインにおける不純物注入領域となるひ素注入領域である。注入エネルギーとしては,NeのRpがひ素のRpよりも深くならないようにする。本例ではNeの10KeV注入時のRpは0.021μm,ひ素の50KeV注入時のRpは0.032μmであり,上記条件を満たしている。イオン注入による基板8の結晶欠陥15はイオンの注入分布付近だけでなくさらに深い位置にも形成される(図1(c))。
【0016】次に,熱処理として,800℃,30分のアニールを行うと,希ガスであるNeはシリコン中への固溶度が低いので基板8シリコン中に注入されたNeの大部分はアニール中に基板8表面から抜け出る。Neの抜け出たあとやNe注入起因の欠陥がアニール中に集まってボイド16を形成する。ボイド16の内面は結合の手が余っており化学的に活性なので,この過程でひ素注入起因欠陥等の結晶欠陥15をゲッタリングする。またこのアニールにより不純物注入領域14は拡散層としてのソースドレイン領域17に変成される。ところで,接合における空乏層中に存在する結晶欠陥15は接合リーク電流の原因になるが,逆バイアス時に空乏層のあまり伸びないソースドレイン領域17内にある結晶欠陥15は,接合リーク電流に影響しない。すなわちボイド16はNeのRp付近に形成されソースドレイン領域17内にあるので,ボイド16自体がリーク電流を増すことはない。そして,接合の空乏層領域にある欠陥をゲッタリングしてリーク電流を低減する効果がある。また,Neはアニール後には基板8中にほとんど残留しないので,ソースドレイン領域17における拡散抵抗やコンタクト抵抗を上昇させることはない(図1(d))。」

「【0034】また,上記実施の形態ではNeを用いたが,他の希ガスイオン,すなわち,ヘリウム(He),アルゴン(Ar),クリプトン(Kr),キセノン(Xe),ラドン(Rn)を用いても良い。また,希ガスではないが水素(H)でも良い。これらの元素はシリコンへの固溶度が低く,注入後のアニールによりボイドを形成する。但し,ボイド形成に必要な注入量はイオン種により異なり,例えば水素では1E16cm^(-2)以上必要である。また,注入エネルギーはRpが接合よりも浅くなるように選ぶ。
【0035】また,上記実施の形態はすべてイオン注入により希ガスイオンを注入したが,プラズマドーピング,イオンシャワードーピングを用いても良い。
【0036】
【発明の効果】以上のようにこの発明によると,拡散層中に希ガスイオンあるいは水素イオンを注入して熱処理を施すことにより,結晶欠陥をゲッタリングするため,拡散層の抵抗および電極とのコンタクト抵抗を上昇させることなく接合のリーク電流を低減でき,微細化,高速化に適した信頼性の高い半導体装置が得られる。」

4 引用文献4について
(1)引用文献4の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平06-338507号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本願の発明は,半導体装置,特に,固体撮像装置を形成するための半導体基板及びこれらの製造方法に関するものである。」

「【0019】
【作用】請求項1,2の半導体基板17及び請求項3の固体撮像装置では,1×10^(16)原子cm^(-3)以上のピーク濃度で半導体基板11内に存在している第2の元素14が酸素の析出を加速して半導体基板11に高密度の結晶欠陥を形成しており,この結晶欠陥がゲッタリングサイトになっている。また,半導体基板11を形成している第1の元素とこの半導体基板11内に存在している第2の元素14とで共有結合半径が異なることによって応力が発生しており,この応力自体もゲッタリングサイトになっている。
【0020】このため,半導体基板11中に元々存在している不純物及び結晶欠陥や,エピタキシャル層16を形成する際及びその後に固体撮像装置等の半導体装置を形成する際に導入される不純物及び結晶欠陥が,強力にゲッタリングされており,且つゲッタリング能力が長く持続する。
【0021】しかも,第2の元素14は半導体基板11の表面12よりも半導体基板11側にピーク濃度を有しているので,この表面12の結晶性の劣化が少なく,この表面12に形成されているエピタキシャル層16の結晶性の劣化も少ない。」

「【0029】
【実施例】以下,本願の発明の第1及び第2実施例を,図1?6を参照しながら説明する。図1が,第1実施例を示している。この第1実施例では,図1(a)に示す様に,CZ法で成長させたSi基板であるCZ基板11を準備する。このCZ基板11では,<100>面をミラー表面12としてあり,抵抗率が1?10Ωcmであり,酸素濃度が1.5×10^(18)原子cm^(-3)である。そして,このCZ基板11を,まずNH_(4)OH/H_(2)O_(2)水溶液で洗浄し,更にHCl/H_(2)O_(2)水溶液で洗浄する。
【0030】次に,1000℃の温度でドライ酸化を行って,図1(b)に示す様に,膜厚が20nm程度のSiO_(2)膜13をミラー表面12に形成する。そして,SiO_(2)膜13を介してミラー表面12から,800keVの加速エネルギ及び1×10^(14)cm^(-2)のドーズ量で,炭素14をCZ基板11にイオン注入する。このときの炭素14の,投影飛程距離は1.3μm程度であり,ピーク濃度は1×10^(18)原子cm^(-3)程度である。
【0031】次に,N_(2)雰囲気中で1000℃,10分間のアニールを施す。この結果,図1(c)に示す様に,CZ基板11のミラー表面12よりも深い位置にピーク濃度を有する炭素注入領域15が形成される。この炭素注入領域15中における炭素14のピーク濃度は,1×10^(16)原子cm^(-3)以上であればよい。
【0032】その後,HF/NH_(4)F水溶液でSiO_(2)膜13を除去する。そして,SiHCl_(3)ガスを用いて,1150℃程度の温度で,抵抗率が20?30Ωcm程度のSiエピタキシャル層16を,ミラー表面12上に10μm程度の厚さに成長させて,エピタキシャル基板17を完成させる。
【0033】なお,炭素注入領域15中における炭素14のピーク濃度の位置をミラー表面12よりも深い位置にするのは,ピーク濃度の位置をミラー表面12にすると,ミラー表面12の結晶性が劣化して,このミラー表面12上に成長させるSiエピタキシャル層16の結晶性も劣化するからである。また,炭素14のイオン注入後にN_(2)雰囲気中でアニールを行うのは,後にミラー表面12上にSiエピタキシャル層16を成長させるので,イオン注入で非晶質化されたミラー表面12の近傍部における結晶性を回復させるためである。
【0034】更に,ミラー表面12にSiO_(2)膜13を形成するのは,炭素14をイオン注入する際に,チャネリングが発生するのを防止すると共に,ミラー表面12がスパッタリングされるのを防止するためである。但し,SiO_(2)膜13とN_(2)雰囲気中でのアニールとは,炭素14をイオン注入する際の加速エネルギやドーズ量によっては,必ずしも必要ではない。
【0035】図2,3には,この第1実施例のエピタキシャル基板17を用いて測定した値も示されている。なお,図2,3に示されている従来例のエピタキシャル基板を形成するためのCZ基板と,この第1実施例のエピタキシャル基板17を形成するためのCZ基板11とは,同じ仕様である。これらの図2,3から明らかな様に,発生寿命はCZ基板の1.4倍程度に改善されており,白傷欠陥の数はMCZ基板の1/2程度に改善されている。つまり,エピタキシャル基板17では,半導体装置を形成した後でもゲッタリング能力が有効に機能している。
【0036】なお,以上の第1実施例では,800keVの加速エネルギ及び1×10^(14)cm^(-2)のドーズ量で炭素14をCZ基板11にイオン注入しているが,図4は,これらの条件のうちでドーズ量のみを種々に変化させて得た,炭素14のドーズ量と,エピタキシャル基板17に形成したCCD撮像装置の白傷欠陥の数との関係を示している。
【0037】図4も,図3と同様に,MCZ基板に形成したCCD撮像装置の白傷欠陥の数を1として規格化した値を示している。但し,図3が対数グラフであるのに対して,図4は線型グラフである。この図4から,炭素14をイオン注入しさえすればMCZ基板よりも白傷欠陥の数が少なくなるが,ドーズ量が5×10^(13)cm^(-2)以上の場合に白傷欠陥の数が特に少なくて炭素14のイオン注入によるゲッタリング効果が大きいことが分かる。
【0038】但し,炭素14のドーズ量が5×10^(15)cm^(-2)を超えると,CZ基板11のミラー表面12の結晶性が劣化して,このミラー表面12上に成長させるSiエピタキシャル層16の結晶性も劣化する。従って,炭素14のドーズ量としては,5×10^(13)?5×10^(15)cm^(-2)の範囲が好ましい。
【0039】また,上述の第1実施例では,800keVの加速エネルギで炭素14をイオン注入しているが,この加速エネルギを400keVにしても,炭素14のイオン注入によるゲッタリング効果は800keVの場合と同じであり,200keVにしても,ゲッタリング効果はやはり800keVの場合と同じであると考えられる。
【0040】従って,炭素14を低エネルギでイオン注入する様にすれば,一般に用いられている高電流イオン注入装置を使用することができ,且つC^(2+)に比べて約10倍の電流を得ることができるC^(+)を使用することができるので,スループットを約10倍に向上させることができる。
【0041】なお,加速エネルギを400keV及び200keVにした場合の炭素14の投影飛程距離は,夫々0.75μm程度及び0.40μm程度であり,何れの場合も,800keVの場合と同様に,CZ基板11のミラー表面12よりも深い位置にピーク濃度を有する炭素注入領域15を形成することができる。」

(2)引用発明4
前記(1)より,引用文献4には次の発明(以下,「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「Si基板であるCZ基板11を準備し,このCZ基板11では,<100>面をミラー表面12としてあり,SiO_(2)膜13をミラー表面12に形成し,そして,SiO_(2)膜13を介してミラー表面12から,800keVの加速エネルギ及び1×10^(14)cm^(-2)のドーズ量で,炭素14をCZ基板11にイオン注入し,次に,N_(2)雰囲気中で1000℃,10分間のアニールを施し,この結果,CZ基板11のミラー表面12よりも深い位置にピーク濃度を有する炭素注入領域15が形成させ,その後,SiO_(2)膜13を除去し,そして,Siエピタキシャル層16を,ミラー表面12上に成長させるエピタキシャル基板17の製造方法。」

5 引用文献5について
(1)引用文献5の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2010-109141号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,強力なゲッタリング能力をもつ半導体基板の製造方法に関するものであり,具体的には,表層近傍の炭素イオン注入層による近接ゲッター能力と,バルク中の酸素析出物によるバルクゲッターのダブルゲッター能力を有し,かつ欠陥の少ない高品質なエピタキシャル層が形成された半導体基板の製造方法に関するものである。」

「【実施例】
【0035】
以下,実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
図1に示す工程に従って半導体基板を製造した。
まず,シリコン基板11として,チョクラルスキー法(CZ法)で成長させた,面方位(100),抵抗率10?20Ω・cm,酸素濃度が1.12×10^(18)atoms/cm^(3)のシリコン基板を準備した(工程(a))。
【0036】
次に,この基板をNH_(4)OH/H_(2)O_(2)水溶液,及びHCl/H_(2)O_(2)水溶液で洗浄した。次にこのシリコン基板11の主表面から,70keVの加速エネルギー,ドーズ量1×10^(15)/cm^(2)で炭素をイオン注入して,イオン注入層12を形成した(工程(b))。
この際の加速エネルギーは,前段加速のみで行った。この時の炭素の投影飛程はシリコン基板表面からおよそ0.2μmであり,そのピーク濃度はおよそ5×10^(19)atoms/cm^(3)であった。
【0037】
その後,シリコン基板11に対して,エッチング効果のあるNH_(4)OH/H_(2)O_(2)水溶液,及び最表面の金属汚染を除去するHCl/H_(2)O_(2)水溶液洗浄を行った(工程(c))。
【0038】
その後,イオン注入ダメージの回復アニールを行った。具体的には,ウェーハをチャンバー内に投入後,水素雰囲気中にて1130℃で60秒間アニールを行った。
その後エピタキシャル成長炉に導入した後,SiHCl_(3)ガスを導入し,厚さ6μm,抵抗率30Ω・cmのエピタキシャル層13を成長させ,半導体基板10を製造した(工程(d))。」

(2)引用発明5
前記(1)より,引用文献5には次の発明(以下,「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「シリコン基板11の主表面から,ドーズ量1×10^(15)/cm^(2)で炭素をイオン注入して,イオン注入層12を形成し,その後,エピタキシャル層13を成長させる半導体基板10の製造方法。」

6 引用文献6について
(1)引用文献6の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開平08-078644号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,半導体集積回路装置の製造方法に関し,特に,半導体基板上に絶縁膜を介して半導体膜が形成されたSOI(Silicon on Insulator)基板を有する半導体集積回路装置に適用して有効な技術に関するものである。」

「【0018】まず,図1に示すように,単結晶シリコンからなる第1半導体基板1を非酸化性雰囲気中で1200℃の温度で約1時間の熱処理を施し,その表面近傍に酸素濃度10^(18)cm^(-3)以下のデヌーデッドゾーン2を形成する。」

「【0024】(実施例2)本発明の他の実施例であるSOI基板の製造方法を図4および図5を用いて説明する。
【0025】まず,前記実施例1の第1半導体基板1を非酸化性雰囲気中で1200℃の温度で約1時間の熱処理を施し,第1半導体基板1の表面近傍に酸素濃度10^(18)cm^(-3)以下のデヌーデッドゾーン2を形成する。なお,歪み領域3の幅は,後に行なう熱処理後に0.1?1.0μmとなる。
【0026】次に,第1半導体基板1に不純物C^(+)をエネルギー100?400keV,濃度2×10^(14)?1×10^(15)cm^(-2)で打ち込み,ゲッタリングサイトとなる歪み領域3を第1半導体基板1の表面近傍に形成する。次に,図4に示すように,支持基板となる第2半導体基板5を酸素雰囲気中で熱処理することにより,厚さ0.5μmの熱酸化膜7を第2半導体基板5の表面に形成する。
【0027】次に,第1半導体基板1の表面と第2半導体基板5の表面を重ね合わせ,窒素雰囲気中で1100℃の温度で30分?2時間の熱処理を行ない貼り合わせる。その後,図5に示すように,第1半導体基板1を裏面から研磨あるいはエッチングにより薄膜化して,所望の厚みのSOI膜6を形成することにより,本実施例のSOI基板が完成する。
【0028】本実施例によれば,不純物C^(+)が打ち込まれた後の第1半導体基板1の熱処理工程がないので,不純物C^(+)の外方拡散を抑えることができる。従って,第1半導体基板1に打ち込む不純物C^(+)のエネルギーを低くすることができる。」

(2)引用発明6
前記(1)より,引用文献6には次の発明(以下,「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。
「単結晶シリコンからなる第1半導体基板1に不純物C^(+)をエネルギー100?400keV,濃度2×10^(14)?1×10^(15)cm^(-2)で打ち込み,ゲッタリングサイトとなる歪み領域3を第1半導体基板1の表面近傍に形成し,次に,支持基板となる第2半導体基板5を酸素雰囲気中で熱処理することにより,厚さ0.5μmの熱酸化膜7を第2半導体基板5の表面に形成し,次に,第1半導体基板1の表面と第2半導体基板5の表面を重ね合わせ,窒素雰囲気中で1100℃の温度で30分?2時間の熱処理を行ない貼り合わせるSOI基板の製造方法。」

7 引用文献9について
当審拒絶理由通知に引用された引用文献9(特開2010-283022号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,シリコンウェーハおよびその製造方法に係り,特に,ゲッタリング能を向上し,薄厚のデバイス製造に供されるシリコンウェーハに用いて好適な技術に関する。」

「【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の本発明のシリコンウェーハの製造方法は,シリコンウェーハに加速エネルギー50keV以上800keV以下で注入元素を5×10^(19)cm^(-3)以下のピーク濃度で注入する注入工程と,
前記注入工程で注入した注入元素の濃度がウェーハ厚さ方向においてピークとなるピーク位置を含み,かつ,注入元素の50%以上98%以下を含有するピーク層までウェーハ表面から除去する注入ピーク層除去工程と,
を有し,前記注入元素濃度ピーク位置よりも深い深さ位置に対応してゲッタリング能のピークを有するゲッタリング層を形成することにより上記課題を解決した。
本発明本発明において,注入元素が,C,B,O,N,As,P,Sb,Si,Ge,H,Ar,Heから選択される1以上であることができる。
本発明本発明の前記注入工程後に,残存する注入元素を外方拡散する外方拡散熱処理を有する外方拡散熱処理工程を有することができる。
また,また,本発明において,前記注入工程後に,注入ダメージを回復するためのダメージ回復熱処理工程を有することができる。
また,また,前記ウェーハ表面にエピタキシャル層を形成するエピタキシャル工程を有することができる。
本発明本発明においては,前記注入工程とは異なる第2注入元素を前記ピーク位置よりも深い第2ピーク位置に濃度ピークを有するように注入する第2注入工程を有することができる。
さらにさらに,前記ウェーハに他のシリコンウェーハを貼り着ける貼り合わせ工程を有することができる。
また,また,前記注入ピーク層除去工程は,研削処理,研磨処理,または,エッチング処理とされることができる。
本発明本発明のシリコンウェーハにおいては,上記のいずれか記載の製造方法により製造されたシリコンウェーハことであることができる。
【0013】
本発明の本発明のシリコンウェーハの製造方法は,シリコンウェーハに加速エネルギー50keV以上800keV以下で注入元素を5×10^(19)cm^(-3)以下のピーク濃度で注入する注入工程と,
前記注入工程で注入した注入元素の濃度がウェーハ厚さ方向においてピークとなるピーク位置を含み,かつ,注入元素の50%以上98%以下を含有するピーク層までウェーハ表面から除去する注入ピーク層除去工程と,
を有し,前記注入元素濃度ピーク位置よりも深い深さ位置に対応してゲッタリング能のピークを有するゲッタリング層となる欠陥層をイオン注入に伴うダメージ発生によって形成することにより,イオン注入・原子注入によりこのようなゲッタリング層を最も効果の高いデバイス領域に近接したすぐ下側付近に形成し,10μm程度まで薄厚化した場合でも,充分なゲッタリング能を有することを可能とするとともに,ピーク層に含まれる注入元素をピーク位置を含むようにその大部分を除去することで,ウェーハに残留する注入元素を低減しこのような注入元素が後工程における熱処理でデバイス領域側に拡散してデバイス特性に悪影響を及ぼしてしまうことを低減することができる。
【0014】
ここで,注入速エネルギーは,加速エネルギー50keV以上800keV以下,50?200keV,200?400keVとすることができ,上記の範囲とは異なった範囲とされると,所定の深さ位置に注入することができず好ましくない。また,ピーク濃度が上記の範囲から異なった範囲とされると,必要なゲッタリング能を有するEOR欠陥層を形成することができないか,注入ダメージが大きくなり過ぎて好ましくない。
【0015】
本発明本発明において,注入元素が,C,B,O,N,As,P,Sb,Si,Ge,H,Ar,Heから選択される1以上であることができ,C,Bは,イオン注入,それ以外は,原子注入とすることができる。これらの元素を注入することにより,ゲッタリング層となるイオン注入によって発生したダメージ欠陥層を形成することができる。
この注入処理条件は,注入元素の種類によってその条件が異なり,各元素に対して,それぞれ,加速エネルギー,ピーク濃度は,次のように設定することが好ましい。
C;50?200keV,1×10^(18)?1×10^(20)cm^(-3)
B;50?200keV,1×10^(16)?5×10^(19)cm^(-3)
O;50?200keV,1×10^(16)?1×10^(21)cm^(-3)
N;50?200keV,1×10^(16)?1×10^(21)cm^(-3)
As;50?200keV,1×10^(16)?5×10^(19)cm^(-3)
P;50?200keV,1×10^(16)?5×10^(19)cm^(-3)
Sb;50?200keV,1×10^(16)?5×10^(19)cm^(-3)
Si;50?200keV,1×10^(16)?5×10^(19)cm^(-3)
Ge;50?200keV,1×10^(16)?1×10^(21)cm^(-3)
H;50?200keV,1×10^(16)?1×10^(21)cm^(-3)
Ar;50?200keV,1×10^(16)?5×10^(19)cm^(-3)
He;50?200keV,1×10^(16)?1×10^(21)cm^(-3)
【0016】
本発明本発明の前記注入工程後に,残存する注入元素を外方拡散する外方拡散熱処理を有する外方拡散熱処理工程を有することにより,前記注入ピーク層除去工程で除去されずに残留している注入元素を外方拡散して低減し,デバイスプロセスにおいて,デバイス領域に影響を与える注入元素を低減して,デバイス特性に悪影響を与える可能性を低減することが可能となる。
この外方拡散熱処理工程における処理条件は,注入元素の種類によってその条件が異なり,各元素に対して,それぞれ,処理温度,処理時間,昇降温速度,処理雰囲気は,次のように設定することが好ましい。
C;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
B;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
O;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
N;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
As;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
P;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
Sb;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
Si;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
Ge;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
H;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
Ar;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
He;800?1200℃,10?120min,昇温速度0.1?0.2℃/秒,降温速度0.02?0.1℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
【0017】
また,また,本発明において,前記注入工程後に,注入ダメージを回復するためのダメージ回復熱処理工程を有することにより,注入ダメージによってデバイス領域に影響を及ぼしてデバイス特性に悪影響を与える可能性を低減することができる。
このダメージ回復熱処理工程における処理条件は,注入元素の種類によってその条件が異なり,各元素に対して,それぞれ,処理温度,処理時間,昇降温速度,処理雰囲気は,次のように設定することが好ましい。
C;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
B;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
O;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
N;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
As;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
P;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
Sb;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
Si;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
Ge;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
H;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
Ar;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス,
He;500?1200℃,0.1?60min,昇温速度0.1?20℃/秒,降温速度0.02?10℃/秒,処理雰囲気;N_(2)ガス
【0018】
また,また,前記ウェーハ表面にエピタキシャル層を形成するエピタキシャル工程を有することにより,注入元素を低減したウェーハ表面に良好なデバイス領域となるエピタキシャル層を成膜してDZ層とし,よりいそうデバイス特性を向上したウェーハを提供することが可能となる。
この場合の,エピタキシャル層の膜厚は,注入ピーク層除去工程における除去量によって適宜設定することが可能であり,注入元素の除去量Jが全注入量の0.5?0.98であって,この除去量Jと,DZ層に追加するエピタキシャル層の膜厚T(μm)との積が
J・T≧1.3
を満たすように設定することが好ましい。」

8 引用文献10について
当審拒絶理由通知に引用された引用文献10(特開2006-093175号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子及びその製造方法に関し,特に不純物ゲッタリング構造に関するものである。」

「【発明の効果】
【0006】
本発明の固体撮像素子及びその製造方法においては,軽元素(H,He)の高濃度注入により生じるキャビティ層を固体撮像素子のゲッタリング構造形成に利用する。キャビティの内部表面には高密度のダングリングボンドが存在するため,そこに効率的に金属不純物が捕獲される。キャビティ層は,従来の近接ゲッタリング構造と比較して,同じ形成ドーズ量にてより高いゲッタリング能力を発揮しやすいため,生産性を確保しつつゲッタリング能力を強化できる。また軽元素は加速されやすいため,存在確率の高い低価数イオンでも高飛程注入が容易で,良好な生産性で所望の深い位置にゲッタリング層を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
軽元素注入によるキャビティ形成にあたっては,Si基板内にピーク濃度Cpが1×10^(20)atoms/cm^(3)以上のHあるいはHeを注入する。すると,Si内にそれら元素のバブルが生じる。続いて400℃以上でアニールするとバブルはSi内から脱離し,バブルの存在した位置にはキャビティが残る。本実施の形態はこのようにして形成されるキャビティを,軽元素H,Heの飛程が大きいことから深い位置を含む所望の領域に形成可能であることを利用して,固体撮像素子における新規なゲッタリング構造を提供する。
【0008】
本実施の形態において,固体撮像素子の光電変換領域,出力部,及び必要に応じて形成された転送部に対し,キャビティ層から湧き出した電子(暗電流)が悪影響を及ぼさないように,暗電流の流入を妨げるポテンシャルバリアとして機能する領域を隔ててキャビティ層を形成する。
例えば,固体撮像素子がN型基板中にP型ウェル層を設けることにより,縦型のオーバーフローバリア層を設けた構成である場合,この縦型オーバーフローバリア層の深層側にキャビティ層を設ける。あるいは,出力部のMOSトランジスタのソースドレイン部の空乏層の領域外にキャビティ層を設ける。
【0009】
さらに,各素子間の分離を行うチャネルストップ領域にキャビティ層を設ける。またこの場合,チャネルストップ領域をフォトダイオードの電荷蓄積領域よりも深い層に延在し,キャビティ層をチャネルストップ領域の浅い領域から深い領域にかけて形成することにより,フォトダイオード間のチャネルストップ領域の機能をキャビティ層によって強化することが可能である。すなわち,キャビティ層の形成により,あるフォトダイオードにて生成された信号電荷が隣接するフォトダイオードへ漏れ込むことを防止する効果を高められる。さらに,フォトダイオードに入射した光が回折効果等により隣接フォトダイオードに進入すると混色の問題が生じるが,本実施の形態では,チャネルストップ領域に空洞(屈折率n=1)のキャビティ層を設けることで,Siとキャビティ層の界面にて光の全反射を生じさせることが可能となり,隣接するフォトダイオードへの光の侵入を低減できる。
なお,具体的なチャネルストップ領域の構造としては,上述した縦型オーバーフローバリア層までチャネルストップ領域を延在させれば,より確実に信号電荷の移動を防止することできる。また,チャネルストップ領域の形成方法としては,複数回のイオン注入を行い,複数階層構造のチャネルストップ領域を設け,このチャネルストップ領域に浅い領域から深い領域にかけてキャビティ層を形成するようにしてもよい。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の実施例1によるCCDイメージセンサの概要を示す平面図であり,図2は図1に示すCCDイメージセンサの撮像部の一部を拡大して示す平面図である。また,図3は図2のA-A´線断面図,図4は図2のB-B´線断面図である。
図1に示すように,このCCDイメージセンサは,半導体チップ10上に多数の画素を2次元アレイ状に配置した撮像部20と,この撮像部20の信号処理回路を構成する各種のMOSトランジスタ回路26等を設けたものである。
撮像部20は,それぞれフォトダイオードを設けた多数の画素21と,各画素21の画素列に沿って配置される複数の垂直CCDレジスタ(VCCD)22と,各垂直CCDレジスタ22の終端に接続される水平CCDレジスタ(HCCD)23と,この水平CCDレジスタ23の終端に設けられる出力部24とを有し,各画素21で生成した信号電荷を各垂直CCDレジスタ22によって垂直方向に転送するとともに,この転送された信号電荷を水平CCDレジスタ23によって水平方向に転送し,出力部24に設けたフローティングデフュージョン(FD)部で電位変動を電気信号に変換して出力する。
図2に示すように,撮像部20の各画素21は受光領域を有し,隣接する画素との間には,チャネルストップ領域25が形成されている。
【0011】
図3及び図4において,N型シリコン基板30の上層には,P型のチャネルストップ領域25が形成され,このチャネルストップ領域25によって区切られた領域内にフォトダイオードのP+領域31及びN領域32が設けられ,その側部に垂直CCDレジスタのN領域33及びP領域34が設けられている。
また,シリコン基板30の上面には,ゲート絶縁膜及び層間絶縁膜35を介してポリシリコン膜等の2層の転送電極膜36,37,W膜等の遮光膜38が配置され,その上層にインナーレンズ39等が配置されている。
また,シリコン基板30の内部には,Pウェル領域40による縦型オーバーフローバリア(OFB)が設けられており,フォトダイオードの下層領域にポテンシャルバリアを形成し,フォトダイオードから溢れた信号電荷を基板の深部側に排出するようになっている。
本実施例のイメージセンサでは,このオーバーフローバリアを形成するPウェル領域40の深層側に軽元素イオン注入とアニールによるキャビティ層41を設けたものである。なお,図では簡略のため,ほぼ共通の半径を有する複数のキャビティを整列した状態でキャビティ層41を表しているが,実際のキャビティ層41はこの限りではなく,種々の形態が考えられるものである。
このような構成において,シリコン基板中の金属不純物はキャビティ層41によって捕獲され,光電変換領域,転送部に存在する金属不純物量を低下させることができる。また,キャビティ層41はPウェル領域40(OFB)によってポテンシャル的に光電変換領域や転送部等と分離されており,キャビティ内部表面の表面準位から発生する暗電流はフォトダイオードやCCDレジスタ等に到達しないことから,良好な暗時ノイズ特性を維持することが可能となる。
【0012】
図5は本実施例のキャビティ層41の第1の形成方法を示す断面図である。
この例では,まず,図5(A)において,N型シリコン基板(CZ,MCZ等)30の上面に数十nm程度の酸化膜42を形成した後,図5(B)において,軽元素イオンとしてHイオンまたはHeイオンのイオン注入を行う。ここでは,ピーク濃度Cpが1×10^(20)atoms/cm^(3)以上となるよう注入エネルギー,ドーズ量を選んで任意の深さに注入する。
次に,図5(C)において,数100?数1000℃のアニールを行い,表面結晶欠陥回復を行いながらキャビティ層41を形成する。その後,図5(D)において,全面にウエットエッチングを行い,酸化膜42を除去し,図5(E)において,N型シリコン基板30の上面にエピタキシャル層43を形成する。この後は,図示は省略するが,エピタキシャル層43に対して各層を形成し,図3及び図4に示すような素子構造を作製する。」

第4 対比及び判断
1 本願発明1と引用発明1について
(1)本願発明1と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「半導体ウエハ10」は,「シリコン単結晶に処理を施して得られた」ものであるから「シリコンウェーハ」といえる。
イ 引用発明1の「一方の主表面」は,本願発明1の「おもて面」に相当する。
ウ 引用発明1の「H_(2)^(+)からなる水素イオン」は,本願発明1の「水素イオン」に相当する。
エ 引用発明1の「H_(2)^(+)からなる水素イオンを加速エネルギーを10keV以上,注入量を1×10^(14)ions/cm^(2)以上のイオン注入条件で注入」することによって,水素イオンが注入される領域が形成されるものであり,また,注入された水素イオンの一部は固溶された状態となる。
よって,引用発明1の「H_(2)^(+)からなる水素イオンを加速エネルギーを10keV以上,注入量を1×10^(14)ions/cm^(2)以上のイオン注入条件で注入」することは,本願発明1の「水素イオンを」「注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成」することに相当する。
オ 引用発明1の「次に,不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理することにより,」「イオン注入された水素の還元作用により酸素及び酸素析出核が外方拡散」によって酸素と水素は外方拡散しているといえる。
よって,引用発明1の「次に,不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理することにより,」「イオン注入された水素の還元作用により酸素及び酸素析出核が外方拡散」することは,本願発明1の「次いで」「前記水素イオン注入領域における前記水素を」「外方拡散させ」ることに相当する。
カ 引用発明1の「微小欠陥14」は,半導体ウエハ10中に形成されるものであり層状であるから,本願発明1の「ゲッタリング層」に相当する。
よって,引用発明1の「次に,不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理することにより,ウエハ10の内部では酸素析出核12がゲッタ作用を有する微小欠陥14に成長する」ことは,本願発明1の「ゲッタリング層を形成すること」に相当する。
キ すると,本願発明1と引用発明1とは,下記クの点で一致し,下記ケの点で相違する。
ク 一致点
「シリコンウェーハのおもて面に水素イオンを注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成し,次いで前記水素イオン注入領域における前記水素を外方拡散させ,ゲッタリング層を形成するシリコンウェーハの製造方法。」
ケ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1は,「水素イオン」「のドーズ量」が「1.0×10^(13)?3.0×10^(16)atoms/cm^(2)」であるのに対して,引用発明1は「1×10^(14)ions/cm^(2)以上」である点。
(イ)相違点2
本願発明1は,「ゲッタリング層」の「形成」を「前記シリコンウェーハの前記おもて面にエピタキシャル層を形成するとともに,前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成する」ことによっておこなっているのに対し,引用発明1は,「不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理すること」により,「酸素析出核12」を「成長」させ「微小欠陥14」とすることでおこなっており,シリコンウェーハのおもて面にエピタキシャル層を形成していない点。

(2)相違点についての判断
相違点2について検討する。
ア 引用発明4,5には,シリコンウェーハ上にエピタキシャル層を形成することは記載されているが,「エピタキシャル層を形成するとともに」,水素イオン注入領域において水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成することは記載されていないから,当業者が,引用発明1において,半導体ウエハを不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理することによって,酸素析出核を微小欠陥に成長させてゲッタリング層とすることに代えて,上記相違点2に係る構成を採用することが容易であったとは認められない。
イ そして,本願発明1は,相違点2に係る構成を備えることによって,「シリコンウェーハに水素イオンを注入して,このシリコンウェーハにエピタキシャル層を形成してエピタキシャルウェーハを作製すると,ゲッタリング能力を維持しつつ,抵抗変動が生じないエピタキシャルウェーハが得られる」(本願明細書【0018】)という格別の効果を奏すると認められる。

2 本願発明1と引用発明2について
(1)本願発明1と引用発明2との対比
ア 引用発明2の「シリコン基板1」は,本願発明1の「シリコンウェーハ」に相当する。
イ 引用発明2の「表面」は,本願発明1の「おもて面」に相当する。
ウ 引用発明2の「水素(H_(2))イオン」は,本願発明1の「水素イオン」に相当する。
エ 引用発明2において,「注入された水素イオンはガウス分布に従って分布」しているから,水素イオンが注入される領域が形成されており,また,注入された水素イオンの一部は固溶された状態となる。
よって,引用発明2の「イオン注入法を用いて水素(H_(2))イオンを注入し,注入された水素イオンはガウス分布に従って分布」することは,本願発明1の「水素イオンを」「注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成」することに相当する。
オ 引用発明2の「イオン注入によって誘起された結晶の欠陥」は,シリコン基板1にイオン注入法を用いて形成されるものであるから層状であり,また「微小欠陥の吸収源として用いることができ」るものであるから,本願発明1の「ゲッタリング層」に相当する。
カ 引用発明2の「素子形成方法」は,シリコン基板1に対して行うものであるから,「シリコンウェーハの製造方法」といえる。
キ すると,本願発明1と引用発明2とは,下記クの点で一致し,下記ケの点で相違する。
ク 一致点
「シリコンウェーハのおもて面に,水素イオンを注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成し,ゲッタリング層を形成するシリコンウェーハの製造方法。」
ケ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1は,「水素イオン」「のドーズ量」が「1.0×10^(13)?3.0×10^(16)atoms/cm^(2)」であるのに対して,引用発明2は水素イオンのドーズ量が不明である点。
(イ)相違点2
本願発明1は,「ゲッタリング層」の「形成」を「前記シリコンウェーハの前記おもて面にエピタキシャル層を形成するとともに,前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成する」ことによっておこなっているのに対し,引用発明2は,シリコン基板1表面に,イオン注入法を用いて水素(H_(2))イオンを注入し,イオン注入によって誘起された結晶の欠陥とすることでおこなっており,シリコンウェーハのおもて面にエピタキシャル層を形成していない点。

(2)相違点についての判断
相違点2について検討する。
ア 引用発明4,5には,シリコンウェーハ上にエピタキシャル層を形成することは記載されているが,「エピタキシャル層を形成するとともに」,水素イオン注入領域において水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成することは記載されていないから,当業者が,引用発明2において,イオン注入法を用いて水素(H_(2))イオンを注入し,イオン注入によって誘起された結晶の欠陥とすることに代えて,上記相違点2に係る構成を採用することが容易であったとは認められない。
イ そして,本願発明1は,相違点2に係る構成を備えることによって,「シリコンウェーハに水素イオンを注入して,このシリコンウェーハにエピタキシャル層を形成してエピタキシャルウェーハを作製すると,ゲッタリング能力を維持しつつ,抵抗変動が生じないエピタキシャルウェーハが得られる」(本願明細書【0018】)という格別の効果を奏すると認められる。

3 本願発明1と引用発明4について
(1)本願発明1と引用発明4との対比
ア 引用発明4の「Si基板であるCZ基板11」は,本願発明1の「シリコンウェーハ」に相当する。
イ 引用発明4では,「CZ基板11では,<100>面をミラー表面12としてあり,」「ミラー表面12から」,「炭素14をCZ基板11にイオン注入」しているから,「おもて面から」「イオンを」「注入して」いるといえる。
ウ 引用発明4では,「次に,N_(2)雰囲気中で1000℃,10分間のアニールを施し,この結果,CZ基板11のミラー表面12よりも深い位置にピーク濃度を有する炭素注入領域15が形成させ」ているから,「イオン注入領域を形成し」ているといえる。
エ 引用発明4の「そして,Siエピタキシャル層16を,ミラー表面12上に成長させる」は,本願発明1の「次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面にエピタキシャル層を形成する」に相当する。
オ 引用発明4の「エピタキシャル基板17の製造方法」は,本願発明1の「エピタキシャルウェーハの製造方法」に相当する。
カ すると,本願発明1と引用発明4とは,下記キの点で一致し,下記クの点で相違する。
キ 一致点
「シリコンウェーハのおもて面から,イオンを注入してイオン注入領域を形成し,次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面にエピタキシャル層を形成するエピタキシャルウェーハの製造方法。」
ク 相違点
(ア)相違点1
本願発明1は,「水素イオンを1.0×10^(13)?3.0×10^(16)atoms/cm^(2)のドーズ量で注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成」するのに対して,引用発明4は炭素イオンを注入する点。
(イ)相違点2
本願発明1は,「次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面にエピタキシャル層を形成するとともに,前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成する」のに対し,引用発明4は,シリコンウェーハの前記おもて面にエピタキシャル層を形成する際に,水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成していない点。

(2)相違点についての判断
相違点1,2について検討する。
ア 引用発明1,2には,シリコンウェーハに水素イオンを注入することは記載されているが,「エピタキシャル層を形成するとともに」,水素イオン注入領域において水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成することは記載されていないから,当業者が,引用発明4において,CZ基板に炭素イオン注入し,次に,N_(2)雰囲気中で1000℃10分間のアニールを施し,その後Siエピタキシャル層を形成させるのに代えて,上記相違点1,2に係る構成を採用することが容易であったとは認められない。
イ そして,本願発明1は,相違点1,2に係る構成を備えることによって,「シリコンウェーハに水素イオンを注入して,このシリコンウェーハにエピタキシャル層を形成してエピタキシャルウェーハを作製すると,ゲッタリング能力を維持しつつ,抵抗変動が生じないエピタキシャルウェーハが得られる」(本願明細書【0018】)という格別の効果を奏すると認められる。

4 本願発明1と引用発明5について
(1)本願発明1と引用発明5との対比
ア 引用発明5の「シリコン基板11」は,本願発明1の「シリコンウェーハ」に相当する。
イ 引用発明5の「主表面」は,本願発明1の「おもて面」に相当する。
ウ 引用発明5の「イオン注入層12」は,本願発明1の「イオン注入領域」に相当する。
エ 引用発明5の「ドーズ量1×10^(15)/cm^(2)で炭素をイオン注入して,イオン注入層12を形成」することは,「イオンを」「注入して」「イオン注入領域を形成し」ているといえる。
オ 引用発明5の「その後,エピタキシャル層13を成長させる」は,本願発明1の「次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面にエピタキシャル層を形成する」に相当する。
カ 引用発明5の「半導体基板10の製造方法」は,本願発明1の「エピタキシャルウェーハの製造方法」に相当する。
キ すると,本願発明1と引用発明5とは,下記クの点で一致し,下記ケの点で相違する。
ク 一致点
「シリコンウェーハのおもて面から,イオンを注入してイオン注入領域を形成し,次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面にエピタキシャル層を形成するエピタキシャルウェーハの製造方法。」
ケ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1は,「水素イオンを1.0×10^(13)?3.0×10^(16)atoms/cm^(2)のドーズ量で注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成」するのに対して,引用発明5は炭素イオンを注入する点。
(イ)相違点2
本願発明1は,「次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面にエピタキシャル層を形成するとともに,前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成する」のに対し,引用発明5は,シリコン基板11の主表面にエピタキシャル層13を成長させる際に,水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成していない点。

(2)相違点についての判断
相違点1,2について検討する。
ア 引用発明1,2には,シリコンウェーハに水素イオンを注入することは記載されているが,「エピタキシャル層を形成するとともに」,水素イオン注入領域において水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成することは記載されていないから,当業者が,引用発明5において,シリコン基板11の主表面から,ドーズ量1×10^(15)/cm^(2)で炭素をイオン注入して,イオン注入層12を形成し,その後,エピタキシャル層13を成長させるのに代えて,上記相違点1,2に係る構成を採用することが容易であったとは認められない。
イ そして,本願発明1は,相違点1,2に係る構成を備えることによって,「シリコンウェーハに水素イオンを注入して,このシリコンウェーハにエピタキシャル層を形成してエピタキシャルウェーハを作製すると,ゲッタリング能力を維持しつつ,抵抗変動が生じないエピタキシャルウェーハが得られる」(本願明細書【0018】)という格別の効果を奏すると認められる。

5 本願発明2と引用発明1について
(1)本願発明2と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「半導体ウエハ10」は,「シリコン単結晶に処理を施して得られた」ものであるから「シリコンウェーハ」といえる。
イ 引用発明1の「一方の主表面」は,本願発明2の「おもて面」に相当する。
ウ 引用発明1の「H_(2)^(+)からなる水素イオン」は,本願発明2の「水素イオン」に相当する。
エ 引用発明1の「H_(2)^(+)からなる水素イオンを加速エネルギーを10keV以上,注入量を1×10^(14)ions/cm^(2)以上のイオン注入条件で注入」することによって,水素イオンが注入される領域が形成されるものであり,また,注入された水素イオンの一部は固溶された状態となる。
よって,引用発明1の「H_(2)^(+)からなる水素イオンを加速エネルギーを10keV以上,注入量を1×10^(14)ions/cm^(2)以上のイオン注入条件で注入」することは,本願発明2の「水素イオンを」「注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成」することに相当する。
オ 引用発明1の「次に,不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理することにより,」「イオン注入された水素の還元作用により酸素及び酸素析出核が外方拡散」によって酸素と水素は外方拡散しているといえる。
よって,引用発明1の「次に,不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理することにより,」「イオン注入された水素の還元作用により酸素及び酸素析出核が外方拡散」することは,本願発明2の「次いで」「前記水素イオン注入領域における前記水素を」「外方拡散させ」ることに相当する。
カ 引用発明1の「微小欠陥14」は,半導体ウエハ10中に形成されるものであり層状であるから,本願発明2の「ゲッタリング層」に相当する。
よって,引用発明1の「次に,不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理することにより,ウエハ10の内部では酸素析出核12がゲッタ作用を有する微小欠陥14に成長する」ことは,本願発明2の「ゲッタリング層を形成すること」に相当する。
キ すると,本願発明2と引用発明1とは,下記クの点で一致し,下記ケの点で相違する。
ク 一致点
「シリコンウェーハのおもて面に水素イオンを注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成し,次いで前記水素イオン注入領域における前記水素を外方拡散させ,ゲッタリング層を形成するシリコンウェーハの製造方法。」
ケ 相違点
(ア)相違点1
本願発明2は,「水素イオン」「のドーズ量」が「1.0×10^(13)?3.0×10^(16)atoms/cm^(2)」であるのに対して,引用発明1は「1×10^(14)ions/cm^(2)以上」である点。
(イ)相違点2
本願発明2は,「ゲッタリング層」の「形成」を「前記シリコンウェーハの前記おもて面を,絶縁膜を介して支持基板用ウェーハと貼り合わせる貼り合わせ強化熱処理を施すとともに,前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成する」のに対し,引用発明1は,「不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理すること」により,「酸素析出核12」を「成長」させ「微小欠陥14」とすることでおこなっており,シリコンウェーハのおもて面を,絶縁膜を介して支持基板用ウェーハと貼り合わせていない点。

(2)相違点についての判断
相違点2について検討する。
ア 引用発明6には,半導体基板を熱酸化膜を介して支持基板と貼り合わせ,熱処理を行うことは記載されているが,「貼り合わせ強化熱処理を施すとともに,」前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成することは記載されていないから,当業者が,引用発明1において,半導体ウエハを不活性ガス雰囲気中にて1000℃以上の高温で半導体ウエハ10を熱処理することによって,酸素析出核を微小欠陥に成長させてゲッタリング層とすることに代えて,上記相違点2に係る構成を採用することが容易であったとは認められない。
イ そして,本願発明2は,相違点2に係る構成を備えることによって,「ゲッタリング能力を維持しつつ,抵抗変動が生じない貼り合わせウェーハが得られる」(本願明細書【0018】)という格別の効果を奏すると認められる。

6 本願発明2と引用発明2について
(1)本願発明2と引用発明2との対比
ア 引用発明2の「シリコン基板1」は,本願発明2の「シリコンウェーハ」に相当する。
イ 引用発明2の「表面」は,本願発明2の「おもて面」に相当する。
ウ 引用発明2の「水素(H_(2))イオン」は,本願発明2の「水素イオン」に相当する。
エ 引用発明2において,「注入された水素イオンはガウス分布に従って分布」しているから,水素イオンが注入される領域が形成されており,また,注入された水素イオンの一部は固溶された状態となる。
よって,引用発明2の「イオン注入法を用いて水素(H_(2))イオンを注入し,注入された水素イオンはガウス分布に従って分布」することは,本願発明2の「水素イオンを」「注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成」することに相当する。
オ 引用発明2の「イオン注入によって誘起された結晶の欠陥」は,シリコン基板1にイオン注入法を用いて形成されるものであるから層状であり,また「微小欠陥の吸収源として用いることができ」るものであるから,本願発明2の「ゲッタリング層」に相当する。
カ 引用発明2の「素子形成方法」は,シリコン基板1に対して行うものであるから,「シリコンウェーハの製造方法」といえる。
キ すると,本願発明1と引用発明2とは,下記クの点で一致し,下記ケの点で相違する。
ク 一致点
「シリコンウェーハのおもて面に,水素イオンを注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成し,ゲッタリング層を形成するシリコンウェーハの製造方法。」
ケ 相違点
(ア)相違点1
本願発明2は,「水素イオン」「のドーズ量」が「1.0×10^(13)?3.0×10^(16)atoms/cm^(2)」であるのに対して,引用発明2は水素イオンのドーズ量が不明である点。
(イ)相違点2
本願発明2は,「ゲッタリング層」の「形成」を「前記シリコンウェーハの前記おもて面を,絶縁膜を介して支持基板用ウェーハと貼り合わせる貼り合わせ強化熱処理を施すとともに,前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成する」のに対し,引用発明2は,シリコン基板1表面に,イオン注入法を用いて水素(H_(2))イオンを注入し,イオン注入によって誘起された結晶の欠陥とすることでおこなっており,シリコンウェーハのおもて面を,絶縁膜を介して支持基板用ウェーハと貼り合わせていない点。

(2)相違点についての判断
相違点2について検討する。
ア 引用発明6には,半導体基板を熱酸化膜を介して支持基板と貼り合わせ,熱処理を行うことは記載されているが,「貼り合わせ強化熱処理を施すとともに,」前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成することは記載されていないから,当業者が,引用発明2において,シリコン基板1表面に,イオン注入法を用いて水素(H_(2))イオンを注入し,イオン注入によって誘起された結晶の欠陥とすることに代えて,上記相違点2に係る構成を採用することが容易であったとは認められない。
イ そして,本願発明2は,相違点2に係る構成を備えることによって,「ゲッタリング能力を維持しつつ,抵抗変動が生じない貼り合わせウェーハが得られる」(本願明細書【0018】)という格別の効果を奏すると認められる。

7 本願発明2と引用発明6について
(1)本願発明2と引用発明6との対比
ア 引用発明6の「単結晶シリコンからなる第1半導体基板1」は,本願発明2の「シリコンウェーハ」に相当する。
イ 引用発明6の「不純物C^(+)」は,「イオン」といえる。
ウ 引用発明6の「打ち込み」は,本願発明2の「注入」に相当する。
エ 引用発明6の「不純物C^(+)を」「打ち込み,ゲッタリングサイトとなる歪み領域3を第1半導体基板1の表面近傍に形成し」ているから,「おもて面から」「イオンを」「注入して」いるといえる。
オ 引用発明6の「ゲッタリングサイトとなる歪み領域3を第1半導体基板1の表面近傍に形成」することは,本願発明2の「ゲッタリング層を形成すること」に相当する。
カ 引用発明6の「熱酸化膜7を第2半導体基板5の表面に形成し,次に,第1半導体基板1の表面と第2半導体基板5の表面を重ね合わせ,窒素雰囲気中で1100℃の温度で30分?2時間の熱処理」することは,本願発明2の「次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面を,絶縁膜を介して支持基板用ウェーハと貼り合わせる貼り合わせ強化熱処理を施す」ことに相当する。
キ 引用発明6の「貼り合わせるSOI基板の製造方法」は,「貼り合わせウェーハの製造方法」といえる。
ク すると,本願発明2と引用発明6とは,下記ケの点で一致し,下記コの点で相違する。
ケ 一致点
「シリコンウェーハにおもて面からイオンを注入して,次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面を,絶縁膜を介して支持基板用ウェーハと貼り合わせる貼り合わせ強化熱処理を施すこと,ゲッタリング層を形成することを特徴とする貼り合わせウェーハの製造方法。」
コ 相違点
(ア)相違点1
本願発明2は,「水素イオンを1.0×10^(13)?3.0×10^(16)atoms/cm^(2)のドーズ量で注入して前記水素イオンが固溶してなる水素イオン注入領域を形成」するのに対して,引用発明6は,不純物C^(+)をエネルギー100?400keV,濃度2×10^(14)?1×10^(15)cm^(-2)で打ち込み,ゲッタリングサイトとなる歪み領域3を形成する点。
(イ)相違点2
本願発明2は,「次いで前記シリコンウェーハの前記おもて面を,絶縁膜を介して支持基板用ウェーハと貼り合わせる貼り合わせ強化熱処理を施すとともに,前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成する」のに対し,引用発明6は,第1半導体基板1の表面と第2半導体基板5の表面を重ね合わせ,窒素雰囲気中で1100℃の温度で30分?2時間の熱処理を行ない貼り合わせる点。

(2)相違点についての判断
相違点2について検討する。
ア 引用発明1,2には,シリコンウェーハに水素イオンを注入することは記載されているが,「貼り合わせ強化熱処理を施すとともに,」前記水素イオン注入領域における前記水素を解離して外方拡散させ,空孔からなるゲッタリング層を形成することは記載されていないから,当業者が,引用発明6において,単結晶シリコンからなる第1半導体基板1に不純物C^(+)をエネルギー100?400keV,濃度2×10^(14)?1×10^(15)cm^(-2)で打ち込み,ゲッタリングサイトとなる歪み領域3を形成するのに代えて,上記相違点2に係る構成を採用することが容易であったとは認められない。
イ そして,本願発明2は,相違点2に係る構成を備えることによって,「ゲッタリング能力を維持しつつ,抵抗変動が生じない貼り合わせウェーハが得られる」(本願明細書【0018】)という格別の効果を奏すると認められる。

8 本願発明3について
本願発明3は,本願発明2の発明特定事項をすべて含むものであるから,本願発明2と同じ理由により,当業者であっても,引用文献1-6に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,補正前の請求項1-9に記載された発明ついて,上記引用文献1-6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら,平成30年12月27日付け手続補正により補正された請求項1-3に記載された発明は,上記のとおり,引用文献1-6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号について
当審では,補正前の請求項4-9に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年12月27日付けの補正において,上記の請求項4-9を削除する補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項について
当審では,補正前の請求項4-9に係る発明は,引用文献9,10に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
仮にそうでないとしても,補正前の請求項4-9に係る発明は,引用文献9,10に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年12月27日付けの補正において,上記の請求項4-9を削除する補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-3は,当業者が引用文献1-6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-11 
出願番号 特願2013-183149(P2013-183149)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桑原 清  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 河合 俊英
小田 浩
発明の名称 エピタキシャルウェーハの製造方法及び貼り合わせウェーハの製造方法  
代理人 杉村 憲司  
代理人 福井 敏夫  
代理人 川原 敬祐  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ