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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01N
管理番号 1349536
審判番号 不服2017-13806  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-15 
確定日 2019-03-05 
事件の表示 特願2016-6154「排ガス案内系用の支持リング」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月25日出願公開、特開2016-133120〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月15日(パリ条約による優先権主張2015年1月15日(DE)ドイツ連邦共和国)の出願であって、その手続は以下のとおりである。
平成28年11月7日(発送日):拒絶理由通知書
平成29年2月7日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年5月15日(発送日):拒絶査定
平成29年9月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年1月23日 :上申書の提出
平成30年5月14日(発送日):拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」という。)
平成30年8月13日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成30年8月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「車両の内燃機関の排ガス案内系用の支持リングであって、複数のボディセグメント(46,48;72,74,76)を備えた支持エレメントボディ(40)と、前記ボディセグメント(46,48;72,74,76)を互いに結合する、金属ワイヤ材料によって形成されている支持装置(42)とが設けられており、
それぞれの前記ボディセグメント(46,48;72,74,76)は、半径方向内側のU字脚(62)、半径方向外側のU字脚(64)及び該両方のU字脚を結合する結合領域(66)を有するU字形成形体によって形成されており、前記支持装置(42)は、少なくとも部分的にそれぞれの前記ボディセグメント(46,48;72,74,76)のU字形成形体内室(68)内に収容されており、
前記支持装置(42)は、複数の圧着領域において局部的に圧着されており、これによって前記U字形成形体内室(68)内と、それぞれの前記ボディセグメント(46,48;72,74,76)の前記U字脚(62,64)における接触部とに、圧着されており、これによって前記圧着領域においてそれぞれの前記ボディセグメント(46,48;72,74,76)は、前記支持装置(42)と摩擦結合によって結合されており、
前記圧着領域において、溶接によって、前記支持装置(42)と、それぞれの前記ボディセグメント(46,48;72,74,76)において両方の前記U字脚(62,64)を結合する前記結合領域(66)との間における材料結合部が形成されていることを特徴とする、
排ガス案内系用の支持リング。」

第3 当審における拒絶の理由
当審が通知した拒絶理由のうちの理由3は、次のとおりのものである。

(進歩性)本願の下記の請求項1ないし16に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1 特開2000-18029号公報
2 国際公開第2011/066041号公報
3 特開2008-57411号公報

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1
平成30年5月11日付け(発送日:平成30年5月14日)の当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献1(特開2000-18029号公報)には、「マニホールドコンバータ」に関して、図面(特に【図1】、【図4】、【図7】及び【図8】を参照。)とともに以下の事項が記載されている(なお、下線部は当審が付した。以下同様。)。

ア 「【0002】
【従来の技術】従来、車両排気系には、排ガス中のCO等の有害成分を浄化する触媒コンバータが車両の床下に装着されているが、昨今、斯かる触媒コンバータに代え、実開平6-80815号公報に開示されるように排気マニホールドの排ガス排出口に直接装着する、所謂マニホールドコンバータが多くの車両に装着されている。
【0003】図7は上記実開平6-80815号公報に開示されたマニホールドコンバータを示し、当該マニホールドコンバータ1は排気マニホールド3の排ガス排出口に略垂直に装着されており、一対の半割れシェル5a,5bからなる金属製のシェル5内に、当該シェル5に栓溶接された上下一対の金属製キャップ7と金属メッシュ状の緩衝材9を介して、断面楕円形状のセラミックス製触媒担体11が収容されている。
【0004】図8に示すようにキャップ7は、触媒担体11の端面に対向する環状フランジ部7aと、当該環状フランジ部7aの外周端から垂設された筒状部7bと、環状フランジ部7aの内周端から垂設された内側筒状部7cとで形成されたC字状のリング部材で、キャップ7は筒状部7bの4箇所(図中、P_(1)?P_(4))でシェル5に栓溶接されており、キャップ7を固定するシェル5の対応箇所には、図示しない栓溶接用の孔が設けられている。
【0005】そして、触媒担体11は、シェル5に栓溶接された上下一対のキャップ7間に、緩衝材9を介して一定の圧力で保持されている。又、シェル5の上部開口部には、排気マニホールド3の4本のパイプ3a,3b,3c,3dの各排出端が集合,連結した偏平な碗状の上流側ディフューザ13が溶接され、又、シェル5の下部開口部には、排ガス流出口15が形成された下流側ディフューザ17が溶接されており、排気マニホールド3から流入した排ガスは、触媒担体11で浄化された後、排ガス流出口15から下流側の消音器へ導かれることとなる。」

イ 「【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は請求項1及び請求項3に係るマニホールドコンバータの一実施形態を示し、図7に示すマニホールドコンバータ1と同様、本実施形態に係るマニホールドコンバータ23も、図示しない排気マニホールドの排ガス排出口に略垂直に装着される。
【0017】そして、一対の半割れシェル25a,25bからなる金属製のシェル25内に、断面楕円形状のセラミックス製触媒担体27が、上下一対のC字状の金属製キャップ29,31と金属メッシュ状の緩衝材33を介して収容されており、触媒担体27は、シェル25に栓溶接された一対のキャップ29,31間に緩衝材33を介して一定の圧力で保持されている。」

ウ 「【0021】そこで、本実施形態は、キャップ29の熱変形によるシェル25の栓溶接部位の亀裂やキャップ29自体の破損等を防止するため、上述の如き従来と同様の構成に加え、以下の如き特徴を有する。図2は触媒担体27の上流側に装着するキャップ29で、当該キャップ29も、触媒担体27の端面27aに対向する環状フランジ部29aと、当該環状フランジ部29aの外周端から垂設された筒状部29bと、環状フランジ部29aの内周端から垂設された内側筒状部29cとで形成されており、内側筒状部29cは筒状部29bに比し短尺とされている。」

エ 「【0031】図4は請求項1及び請求項5の一実施形態に係るマニホールドコンバータに用いる上流側のキャップで、図示するように本実施形態に係るキャップ53は、2分割された分割キャップ53-_(1),53-_(2)からなり、各分割キャップ53-_(1),53-_(2)は、夫々、触媒担体27の端面27aに対向する環状フランジ部53-_(1a),53-_(2a)と、各環状フランジ部53-_(1a),53-_(2a)の外周端から垂設された筒状部53-_(1b),53-_(2b)と、環状フランジ部53-_(1a),53-_(2a)の内周端から垂設された内側筒状部53-_(1c),53-_(2c)とで形成されている。
【0032】そして、図示するように分割キャップ53-_(1),53-_(2)は、夫々、筒状部53-_(1b),53-_(2b)の1箇所(図中、P_(1),P_(2))でシェル25に栓溶接されるようになっており、本実施形態は、各分割キャップ53-_(1),53-_(2)の1箇所をシェル25に栓溶接させて、隣接する分割キャップ53-_(1),53-_(2)の両端部53a-_(1),53a-_(2)間に、熱変形吸収部となる間隙を設けたものである。
【0033】而して、本実施形態によれば、エンジン駆動による排ガスの流入,エンジン停止によって、シェル25とキャップ53は膨張と収縮を繰り返すが、キャップ53を構成する分割キャップ53-_(1),53-_(2)の両端部53a-_(1),53a-_(2)側が夫々熱変形して、シェル25との熱変形差を吸収することとなる。従って、本実施形態によっても、上述した各実施形態と同様、所期の目的を達成することが可能である。
【0034】尚、図2に示すキャップ29は、筒状部29bと内側筒状部29cとに切欠き45,46を設けたが、環状フランジ部29a側に切欠きを設けてもよいし、又、図4に示す実施形態では、キャップ53を2分割したが、例えばキャップをシェル25に3箇所で栓溶接させる場合には、栓溶接部間でキャップを3分割して、隣接する分割キャップの端部間に、熱変形吸収部となる間隙を設ければよい。」

オ 図1には、キャップ53と同じ機能を有するキャップ29と緩衝材33が図示されている。そして、図1からは、キャップ29のC字状内に緩衝材33が収容されていることが分かる。

カ 一般に排ガス処理装置で用いる支持リングの緩衝材はリング状かつ中断部がない形状であるとの技術常識に鑑みれば、緩衝材33はリング状かつ中断部がない形状といえる。

キ 上記オ及びカからみて、リング状かつ中断部がない形状である緩衝材33がキャップ53に収容されることで、緩衝材33は分割キャップ53を構成する分割キャップ53-_(1),53-_(2)を互いに結合することになるといえる。

以上から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「車両排気系に装着されるマニホールドコンバータ23で触媒担体27を保持するためのキャップ53及び緩衝材33であって、分割キャップ53-_(1),53-_(2)からなるキャップ53と、分割キャップ53-_(1),53-_(2)を互いに結合する、金属メッシュ状の緩衝材33とが設けられており、
それぞれの前記分割キャップ53-_(1),53-_(2)は、内側筒状部53-_(1c),53-_(2c)、筒状部53-_(1b),53-_(2b)及び内側筒状部53-_(1c),53-_(2c)と筒状部53-_(1b),53-_(2b)を結合する環状フランジ部53-_(1a),53-_(2a)を有するC字状に形成されており、前記緩衝材33は、分割キャップ53-_(1),53-_(2)のC字状内に収容されているキャップ53及び緩衝材33。」

2 引用文献3
平成30年5月11日付け(発送日:平成30年5月14日)の当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献3(特開2008-57411号公報)には、「セラミック製ハニカム用緩衝保持部材」に関して、図面(特に【図6】ないし【図9】を参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0003】
図6は、従来から一般的に実施されている触媒コンバータの構造の1例を示している。ケーシング1は、一端側に排気入口2を、他端側に排気出口3を、それぞれ有する。このうちの排気入口2から上記ケーシング1内に送り込んだ排気を、このケーシング1の中間部に保持したハニカム触媒担体4に設けた微小流路を通過させ、この微小流路の内面に付着させた触媒との接触に基づいて無害化処理してから、上記排気出口3から送り出す様にしている。上記ハニカム触媒担体4の外周面と上記ケーシング1の内面との間には、サポータと呼ばれる外径側緩衝材5、5と、インタラムマットと呼ばれる遮蔽リング6とを設けている。このうちの外径側緩衝材5、5は、弾性金属製のフィラメントを編組して波形とした金網状で、上記ハニカム触媒担体4を上記ケーシング1内に、径方向に関する衝撃を吸収可能に支持する役目を有する。又、上記遮蔽リング6は、通気性を持たず、上記ハニカム触媒担体4の外周面と上記ケーシング1の内周面との間を排気がバイパス(触媒による無害化処理を受ける事なく通過)するのを防止する役目を有する。
【0004】
更に、上記ハニカム触媒担体4の軸方向両端面外周縁部は、本発明の対象となる緩衝保持部材7、7により、緩衝的に支持している。これら両緩衝保持部材7、7は、図7に示す様な緩衝材9と保持環8とを結合する事により、図8に示す様に構成している。このうちの緩衝材9は、ステンレスのばね鋼等の、弾性及び耐熱性を有する金属製のフィラメントを細かく曲げた状態で集合させる事により、弾性的に圧縮可能な、環状乃至は紐状としている。例えば、メリヤス編みにより筒状に形成した金網を所定長さに切断してから軸方向に圧縮して環状(円形に限らず、長円形、楕円形を含む)としたものを使用する場合が多い。或いは、上記フィラメントを編組した金網を圧縮して紐状としたものを所定長さに切断してから丸めたものを使用する場合もある。前者の場合には予め環状に形成されている為、上記保持環8と組み合わせて上記緩衝保持部材7とする組み合わせ作業が容易になる。これに対して後者の場合には、同種の素材から直径の異なる複数種類の緩衝保持部材7を造れる為、部品の調達コストの低減を図れる。従って、何れの構造を採用するかは、設計的配慮により決定する。
【0005】
一方、上記保持環8は、ステンレス鋼板等の、耐熱性を有する金属板を曲げ形成して成るもので、基板部10と、内径側フランジ部11と、外径側フランジ部12とから成る。このうちの基板部10は、全体が環状の平板状である。又、上記内径側フランジ部11は、筒状で、この基板部10の内周縁から軸方向片側に向け、全周に亙り折れ曲がっている。更に、上記外径側フランジ部12は、上記基板部の外周縁から上記内径側フランジ部11と同方向に、全周に亙り折れ曲がっている。これら両フランジ部11、12の軸方向に関する幅寸法W_(11)、W_(12)は、互いに異なっている。具体的には、外径側フランジ部12の幅寸法W_(12)を、内径側フランジ部11の幅寸法W_(11)よりも大きく(W_(12)>W_(11))している。
【0006】
この様な保持環8と上記緩衝材9とは、この緩衝材9を、この保持環8の一部に、上記内径側フランジ部11の外周面と上記外径側フランジ部12の内周面との間部分で、上記基板部10に沿って配置し、互いに結合している。この状態で、上記緩衝材9の一部を、上記内径側フランジ部11の先端縁よりも軸方向に突出させている。前記触媒コンバータを組み立てた状態では、上記緩衝材9の一部で上記内径側フランジ部11の先端縁よりも軸方向に突出した部分を、前記ハニカム触媒担体4の軸方向両端面外周縁部に突き当てて、このハニカム触媒担体4と前記ケーシング1との間に加わる軸方向の振動或いは衝撃に拘らず、上記ハニカム触媒担体4の軸方向両端面外周縁部に欠け等の損傷が生じる事を防止する。
【0007】
上述した緩衝保持部材7を構成する、上記保持環8と上記緩衝材9とを結合する為に従来は、スポット溶接を採用していた。即ち、図9の(A)→(B)に示す様に、緩衝材9の一部を押し潰しつつ、この緩衝材9の円周方向複数個所(3?4個所)を、上記保持環8のうちの基板部10に、スポット溶接していた。
ところが、線径の小さいフィラメントを編組して成る、上記緩衝材9の熱容量と、必要とする剛性を確保できるだけの板厚を有する、上記保持環8の熱容量とは大きく異なり、加熱に伴う溶融程度も大きく異なる。従って、この保持環8と上記緩衝材9とを溶接する作業は、これら両部材8、9を同種の金属により造った場合でも難しくなる。この様に困難な溶接を行なう為に、専用の設備と、面倒な工程管理とが必要になり、緩衝保持部材7の製造コストが嵩む原因になる。
しかも、上記緩衝材9の円周方向複数個所を部分的に押し潰す為、図10に示す様に、この緩衝材9の形状が歪む。具体的には、この緩衝材9のうちでスポット溶接部から円周方向に外れた部分が、上記保持環8の基板部10から浮き上がる。この浮き上りの程度が著しくなると、上記触媒コンバータの組立時に、上記緩衝材9と上記内径側フランジ部11とが、更に著しい場合には前記外径側フランジ部12とが干渉する可能性がある。そして、干渉した場合には、上記緩衝材9と上記保持環8の基板部10とを全周に亙り当接させる事ができず、上記触媒コンバータを正規状態に組み立てられなくなる。」

イ 「【0017】
上述の様な保持環8aと前記緩衝材9とを結合するには、前述した従来構造の場合と同様、図7に示した様に、これら両部材8a、9を、互いに同心に配置した状態から、互いに押し付け合う。そして、このうちの緩衝部材9を、上記保持環8aを構成する、内径側、外径側両フランジ部11、12同士の間に進入させて、基板部10に押し付ける。上記緩衝材9は、弾性金属製のフィラメントを細かく曲げた状態で集合させて成るもので、内部に多数の隙間が存在し、しかも、この隙間は上記緩衝材9の外周面を含む、表面全体にまんべんなく開口している。従って、この緩衝材9を上記外径側フランジ部12の内径側に押し込むと、上記各係止突片13、13の先端部が上記隙間の開口部に食い込む。仮にこれら各係止突片13、13の先端部がこの隙間の開口部に食い込まなくても、上記緩衝材9の外周面がこれら各係止突片13、13の先端部により弾性変形させられて凹部を形成し、この凹部とこれら各係止突片13、13の先端部とが係合する。」

以上から、上記引用文献3には次の技術(以下「引用文献3の記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「セラミック製ハニカム用緩衝保持部材における従来の保持環8と緩衝材9との結合であって、保持環8と緩衝材9を互いに押し付け合い、緩衝材9を保持環8の内径側フランジ部11、外径側フランジ部12の間に進入させて基板部10に押し付け、緩衝材9の一部を押し潰しつつ、この緩衝材9の円周方向複数箇所を基板部10にスポット溶接をすること。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「車両排気系に装着されるマニホールドコンバータ23で触媒担体27を保持するための」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「車両の内燃機関の排ガス案内系用の」に相当し、以下同様に、「キャップ53及び緩衝材33」は「支持リング」に、「分割キャップ53-_(1),53-_(2)」は「複数のボディセグメント」に、「キャップ53」は「支持エレメントボディ」に、「金属メッシュ状」は「金属ワイヤ材料によって形成されている」に、「緩衝材33」は「支持装置」に、「内側筒状部53-_(1c),53-_(2c)」は「半径方向内側のU字脚」に、「筒状部53-_(1b),53-_(2b)」は「半径方向外側のU字脚」に、「環状フランジ部53-_(1a),53-_(2a)」は「両方のU字脚を結合する結合領域」に、「C字状に形成され」たものは「U字形成形体」にそれぞれ相当する。
また、後者の「前記緩衝材33は、分割キャップ53-_(1),53-_(2)のC字状内に収容されており」は、前者の「前記支持装置は、少なくとも部分的にそれぞれの前記ボディセグメントのU字形成形体内室内に収容されており」に相当する。

したがって、両者は、
「車両の内燃機関の排ガス案内系用の支持リングであって、複数のボディセグメントを備えた支持エレメントボディと、前記ボディセグメントを互いに結合する、金属ワイヤ材料によって形成されている支持装置とが設けられており、
それぞれの前記ボディセグメントは、半径方向内側のU字脚、半径方向外側のU字脚及び該両方のU字脚を結合する結合領域を有するU字形成形体によって形成されており、前記支持装置は、少なくとも部分的にそれぞれの前記ボディセグメントのU字形成形体内室内に収容されている排ガス案内系用の支持リング。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
前者は、「支持装置は、複数の圧着領域において局部的に圧着されており、これによってU字形成形体内室内と、それぞれのボディセグメントのU字脚における接触部とに、圧着されており、これによって圧着領域においてそれぞれのボディセグメントは、支持装置と摩擦結合によって結合されており、
前記圧着領域において、溶接によって、支持装置と、それぞれのボディセグメントにおいて両方のU字脚を結合する結合領域との間における材料結合部が形成されている」のに対し、後者はかかる事項を備えていない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
引用文献3の記載事項は、「セラミック製ハニカム用緩衝保持部材における従来の保持環8と緩衝材9との結合であって、保持環8と緩衝材9を互いに押し付け合い、緩衝材9を保持環8の内径側フランジ部11、外径側フランジ部12の間に進入させて基板部10に押し付け、緩衝材9の一部を押し潰しつつ、この緩衝材9の円周方向複数箇所を基板部10にスポット溶接をすること。」である。

ここで、本願発明と引用文献3の記載事項を対比すると、後者の「セラミック製ハニカム用緩衝保持部材」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「排ガス案内系用の支持リング」に相当し、同様に「保持環8」は「支持エレメントボディ」に、「内径側フランジ部11」及び「外径側フランジ部12」は「U字脚」に、「緩衝材9」は「支持装置」に、「基板部10」は「両方のU字脚を結合する結合領域」に、「スポット溶接」は「溶接」に相当する。
そして、後者の「緩衝材9の一部を押し潰し」との事項は、「円周方向複数箇所」にあるから、前者の「複数の圧着領域において局部的に圧着されており」に相当するといえる。
また、後者の「保持環8と緩衝材9を互いに押し付け合い、緩衝材9を保持環8の内径側フランジ部11、外径側フランジ部12の間に進入させて基板部10に押し付け、緩衝材9の一部を押し潰し」との事項は、保持環8と緩衝材9を互いに押し付け合い、緩衝材9を保持環8の内径側、外径側両フランジ部同士11、12の間に進入させて基板部10に押し付けた状態おいて、さらに弾性的に圧縮可能な緩衝材9の一部を押し潰すのであるから、該「押し潰」された箇所の保持環8の内径側フランジ部11及び外径側フランジ部12並びに基板部10に対する緩衝材9の接触圧は高くなり、結果、緩衝材9と保持環8の内径側フランジ部11及び外径側フランジ部12並びに基板部10とは摩擦力が増した状態で接触する、すなわち摩擦結合しているといえる。してみると、後者の該事項は、前者の「支持装置は、複数の圧着領域において局部的に圧着されており、これによってU字形成形体内室内と、支持エレメントボディのU字脚における接触部とに、圧着されており、これによって圧着領域において支持エレメントボディは、支持装置と摩擦結合によって結合されており」に相当するといえる。
また、後者の「この緩衝材9の円周方向複数箇所を基板部10にスポット溶接をする」との事項は、前者の「溶接によって、支持装置と、それぞれの支持エレメントボディにおいて両方のU字脚を結合する結合領域との間における材料結合部が形成されている」に相当するといえる。

そうすると、引用文献3の記載事項は、本願発明の用語を用いて整理すると、以下のものということができる。

「支持装置は、複数の圧着領域において局部的に圧着されており、これによってU字形成形体内室内と、支持エレメントボディのU字脚における接触部とに、圧着されており、これによって圧着領域において支持エレメントボディは、支持装置と摩擦結合によって結合されており、
圧着領域において、溶接によって、支持装置と、それぞれの支持エレメントボディにおいて両方のU字脚を結合する結合領域との間における材料結合部が形成されていること。」

引用発明と引用文献3の記載事項とは、排ガス案内系用の支持リングに係る技術である点で共通する。そして、引用発明において、引用文献3の記載事項の適用を阻害する格別な事情を見出すこともできない。

そうすると、引用発明の分割キャップ53-_(1),53-_(2)からなるキャップ53及び緩衝材33において、引用文献3の記載事項を適用して、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者の通常の創作能力の範囲で容易になし得たことである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献3の記載事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-10-05 
結審通知日 2018-10-09 
審決日 2018-10-22 
出願番号 特願2016-6154(P2016-6154)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅家 裕輔山本 健晴  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 水野 治彦
粟倉 裕二
発明の名称 排ガス案内系用の支持リング  
代理人 前川 純一  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 上島 類  
代理人 二宮 浩康  

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