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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1349585
審判番号 不服2017-6085  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-27 
確定日 2019-03-27 
事件の表示 特願2014-515840「水溶性ダイアタッチフィルムを用いたレーザ・プラズマエッチングウェハダイシング」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月20日国際公開、WO2012/173760、平成26年 9月 8日国内公表、特表2014-523111、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年(平成24年)5月23日(パリ条約による優先権主張2011年6月15日(以下,「優先権主張日」という。),米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 4月12日付け 拒絶理由通知書
平成28年10月 3日 意見書,手続補正書の提出
平成29年 1月 4日付け 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 4月27日 審判請求書(以下,「審判請求書」とい
う。)の提出
平成30年 6月28日付け 拒絶理由通知書(以下,「当審拒絶理由
」という。)
平成30年12月27日 意見書,手続補正書の提出

第3 本願発明について
本願の請求項に係る発明は平成30年12月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであり,その請求項1ないし16に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の集積回路を含む半導体ウェハをダイシングする方法であって、
水溶性ダイアタッチフィルム上に配置された半導体ウェハの上方に、集積回路を覆い、保護するマスクを形成する工程と、
レーザスクライビングプロセスによってマスクをパターニングし、これによって集積回路間の半導体ウェハの領域を露出させるギャップをパターニングされたマスクに提供する工程と、
パターニングされたマスク内のギャップを貫通して半導体ウェハをエッチングし、これによって個片化された集積回路を形成する工程と、
水溶性ダイアタッチフィルムを水溶液によってパターニングする工程であって、パターニング後に保持された水溶性ダイアタッチフィルムの部分は、個片化された集積回路のエッジを僅かにアンダーカットする工程を含む方法。
【請求項2】
水溶性ダイアタッチフィルムを水溶液によってパターニングする工程は、毎分約1?15ミクロンの範囲内のエッチング速度で水溶性ダイアタッチフィルムを個片化する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
水溶性ダイアタッチフィルム上に配置された半導体ウェハの上方にマスクを形成する工程は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、デキストラン、ポリメタクリル酸、ポリエチレンイミン、及びポリエチレンオキシドからなる群から選択される材料を含む膜上に配置された半導体ウェハの上方にマスクを形成する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
フィルムの厚さは、約5?60ミクロンの範囲内である請求項3記載の方法。
【請求項5】
水溶性ダイアタッチフィルムを水溶液によってパターニングする工程は、アルカリ性溶液、酸性溶液、及び脱イオン水からなる群から選択される溶液を使用する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
半導体ウェハの上方にマスクを形成する工程は、水溶性マスクを形成する工程を含み、水溶性ダイアタッチフィルムを水溶液によってパターニングする工程は、水溶性マスクを除去する工程を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
レーザスクライビングプロセスによってマスクをパターニングする工程は、フェムト秒ベースのレーザスクライビングプロセスによってパターニングする工程を含み、パターニングされたマスク内のギャップを貫通して半導体ウェハをエッチングする工程は、高密度プラズマエッチングプロセスを使用する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
複数の集積回路を含む半導体ウェハを請求項1記載の方法でダイシングするためのシステムであって、
ファクトリインタフェースと、
ファクトリインタフェースに結合されたレーザスクライブ装置と、
ファクトリインタフェースに結合されたプラズマエッチングチャンバと、
ファクトリインタフェースに結合され、水溶性ダイアタッチフィルムをパターニングするように構成されたウェット/ドライステーションを含むシステム。
【請求項9】
ウェット/ドライステーションは、アルカリ性溶液、酸性溶液、及び脱イオン水からなる群から選択される水溶液を送出するように構成される請求項8記載のシステム。
【請求項10】
ウェット/ドライステーションは、貯蔵タンクを満たすことによって、又は噴霧することによって水溶液を送出するように構成される請求項9記載のシステム。
【請求項11】
プラズマエッチングチャンバ及びウェット/ドライステーションは、ファクトリインタフェースに結合されたクラスタツール上に収容され、クラスタツールは、
水溶性マスクを形成するように構成された堆積チャンバを含む請求項8記載のシステム。
【請求項12】
ウェット/ドライステーションは、水溶性ダイアタッチフィルムのパターニング時に、水溶性マスクを除去するように構成される請求項11記載のシステム。
【請求項13】
複数の集積回路を含む半導体ウェハをダイシングする方法であって、
水溶性ダイアタッチフィルム上に配置されたシリコン基板の上方に、シリコン基板上に配置された集積回路を覆い、保護するマスクを形成する工程であって、集積回路は、低K材料の層及び銅の層の上方に配置された二酸化ケイ素の層を含む工程と、
レーザスクライビングによってマスク、二酸化ケイ素の層、低K材料の層、及び銅の層をパターニングし、これによって集積回路間のシリコン基板の領域を露出させる工程と、
露出された領域を貫通してシリコン基板をエッチングし、これによって個片化された集積回路を形成する工程と、
水溶性ダイアタッチフィルムを水溶液によってパターニングする工程であって、パターニング後に保持された水溶性ダイアタッチフィルムの部分は、個片化された集積回路のエッジを僅かにアンダーカットする工程を含む方法。
【請求項14】
水溶性ダイアタッチフィルムを水溶液によってパターニングする工程は、毎分約1?15ミクロンの範囲内のエッチング速度で水溶性ダイアタッチフィルムを個片化する工程を含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
水溶性ダイアタッチフィルム上に配置されたシリコン基板の上方にマスクを形成する工程は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、デキストラン、ポリメタクリル酸、ポリエチレンイミン、及びポリエチレンオキシドからなる群から選択される材料を含む膜上に配置されたシリコン基板の上方にマスクを形成する工程を含む請求項13記載の方法。
【請求項16】
複数の集積回路を含む半導体ウェハを請求項13記載の方法でダイシングするためのシステムであって、
ファクトリインタフェースと、
ファクトリインタフェースに結合されたレーザスクライブ装置と、
ファクトリインタフェースに結合されたプラズマエッチングチャンバと、
ファクトリインタフェースに結合され、水溶性ダイアタッチフィルムをパターニングするように構成されたウェット/ドライステーションを含むシステム。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし5及び7ないし15に係る発明は、その優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1.特開2008-193034号公報
引用文献2.特開2002-118081号公報
引用文献3.特開2010-165963号公報
引用文献4.特開2006-253402号公報
引用文献5.特開平07-142442号公報

第4 引用文献
1 引用文献1の記載
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付した。以下同じ。)

「【0001】
本発明は、スクライブラインにテストパターンが形成された半導体ウェハを個々の集積回路毎に分割して半導体チップを製造する半導体チップの製造方法に関するものである。」

「【0010】
まず図1を参照して、本実施の形態における半導体チップの製造に用いられる半導体ウェハ1について説明する。図1において半導体ウェハ1は、各半導体チップを切り分けるために格子状に配列されたスクライブライン2aによって、複数の矩形状のチップ領域2(領域)に区画されている。半導体ウェハ1の回路形成面である表面1aにおいて、各チップ領域2にはそれぞれ集積回路3が形成されており、スクライブライン2aにはテストパターン4が形成されている。テストパターン4は、半導体チップの製造工程において特性試験などに用いられ、その機能を果たした後に除去されるものである。本実施の形態に示す半導体チップの製造方法は、半導体ウェハ1をプラズマエッチングを用いたプラズマダイシングによって個々の集積回路3毎に分割して、個片の半導体チップを製造するものである。
【0011】
次に、半導体チップの製造方法の詳細工程について、図2のフローに沿って各図を参照しながら説明する。図2において、まず表面1aに集積回路3およびテストパターン4が形成された半導体ウェハ1を対象として(図3(a)参照)、保持シート貼り付け(ST1)および保護シート貼り付け(ST2)が実行される。なお、ここに示す保持シート貼り付け(ST1)および保護シート貼り付け(ST2)は、どちらを先に行ってもよい。
【0012】
すなわち図3(b)に示すように、表面1aの反対側の裏面1b側に、半導体ウェハ1が個片に分割された状態の半導体チップを保持するための保持シート8を貼り付ける。保持シート8は、後工程のダイボンディングにおいて半導体チップを接着するための接着層として機能するダイアタッチフィルム6と樹脂シート7とを積層した構成となっており、この保持シート貼り付けにおいてはダイアタッチフィルム6を裏面1bに接触させて貼着する。ここでは、樹脂シート7として紫外光によって粘着力が低下する粘着層を備えたUVテープを用いるようにしており、後工程のダイボンディング工程において下面側から紫外光を照射することにより、個片の半導体チップの取り出しを容易に行うことができる。
【0013】
また表面1a側には、回路形成面を保護する保護シート5が貼り付けられる。ここでは、保護シート5として光によって粘着力が低下する粘着層を有する樹脂シートであるUVテープを使用する。そして本実施の形態においては、後述するように、半導体ウェハ1に貼り付けられた保護シート5において、スクライブライン2aに相当する範囲を除去して、半導体ウェハ1を個片の半導体チップに分割するためのプラズマエッチングにおけるマスクとして機能させるようにしている。
【0014】
すなわち、(ST1)、(ST2)においては、半導体ウェハ1において集積回路3が形成された側の表面1aにプラズマエッチングにおけるマスクとなる保護シート5を貼り付け、さらに裏面1bに個片に分割された状態の半導体チップを保持するための保持シート8を貼り付ける(シート貼り付け工程)。そしてここでは保持シート8として、ダイアタッチフィルム6を備えた樹脂シート7を使用し、シート貼り付け工程においてこのダイアタッチフィルム6を半導体ウェハ1の裏面1bに接触させて、この保持シート8を貼り付けるようにしている。
【0015】
次に、テストパターン4の除去が行われる(ST3)。ここでは、図4に示すレーザ加工装置10を用い、レーザ光によって保護シート5をスクライブライン2aに沿って除去して、上述のプラズマエッチングにおけるマスクを形成するマスク形成処理と同時に、テストパターン4の除去が行われる。
・・・ 中 略 ・・・
【0020】
半導体ウェハ1によるレーザ加工においては、レーザ加工装置10に備えられたレーザ照射部9からレーザ光9aを照射させ、図3(c)に示すように、半導体ウェハ1においてスクライブライン2aに沿ってレーザ照射部9を移動させる。これにより、図3(d)に示すように、レーザ照射部9から照射されるレーザ光9aによって境界線領域5aを除去して保護シート5を貫通する開口部5bを形成するとともに、半導体ウェハ1の表面1aに形成されたテストパターン4をレーザ光9aによって除去する。
【0021】
すなわち(ST3)においては、保護シート5が貼り付けられた半導体ウェハ1のスクライブライン2aに沿ってレーザ光9aを保護シート5側から照射することにより、スクライブライン2a上の保護シート5を前述のダイシング幅に相当する所定幅だけ除去してプラズマダイシングのマスクを形成するとともに、半導体ウェハ1においてスクライブライン2aに相当する位置に形成されていたテストパターン4を、半導体ウェハ1の表面層とともに除去する(テストパターン除去工程)。
【0022】
図5は、このテストパターン除去工程後の開口部5bの詳細を図示している。レーザ加工においては、保護シート5においてスクライブライン2aに対応する境界線領域5aの樹脂成分がレーザ光9aによって除去されて開口部5bが形成される。そして開口部5bの底部が保護シート5の下面まで到達した後は、レーザ光9aの作用は半導体ウェハ1の表面1aに及ぶようになる。これにより表面1aにおいてスクライブライン2aの位置に存在していたテストパターン4が半導体ウェハ1の表面層とともに除去され、レーザ光9aの作用はさらに半導体ウェハ1の内部まで及ぶ。このとき、レーザ光9aによって半導体ウェハ1の表面層が除去されて形成された凹部1cの表面には、微小なクラックを含むダメージ層1dが形成される。
【0023】
ダメージ層1dはそのまま放置すると半導体ウェハ1の強度を低下させるため除去しなければならない。本実施の形態においては、半導体ウェハ1をプラズマエッチングによって分割するプラズマダイシングの過程において、ダメージ層1dも同時に除去するようにしている。このとき、ダメージ層1dの形成範囲が開口部5bの底部の開口範囲を超えて拡がっているような場合には、ダメージ層1dは部分的に保護シート5の下面に覆われた状態となる(図5に示す矢印a参照)。このような場合には、保護シート5の下面によって覆われた部分にはプラズマエッチングの作用は及ばず、プラズマダイシングによって半導体ウェハ1が個片の半導体チップに分割された後においても、ダメージ層1dが部分的に残留する場合が生じる。
【0024】
このため、このような有害なダメージ層1dをプラズマダイシングにおいて完全に除去することを可能とするための処理、すなわちプラズマエッチングによって保護シート5の開口部5bの開口幅を拡げ、ダメージ層1dを全て開口部5bの底部に露呈させるためのアッシングが実行される(ST4)。このアッシングは、プラズマダイシング工程に先立って、レーザ光9aによって除去された保護シート5の開口部5bの開口幅を拡げるための予備的なプラズマエッチングを行うことにより実行される。
【0025】
次いで、プラズマダイシングが実行される。すなわち、テストパターン除去工程の後、保護シート5が除去された半導体ウェハ1の、前述のダイシング幅(所定幅)に対応する部分をプラズマエッチングすることにより、レーザ光9aの照射によって生じたダメージ層1dを除去するとともに、半導体ウェハ1を個々の集積回路3毎に分割する(プラズマダイシング工程)。
・・・ 中 略 ・・・
【0032】
次いでプラズマダイシングが実行される(ST5)。すなわち、プラズマ処理装置20において開閉バルブ25a、25bを操作することにより、プラズマ発生用ガス供給部27bからフッ素系のプラズマ発生用ガスをガス供給孔23aに供給した状態でプラズマを発生させる。そして発生したフッ素ガスプラズマP2を、開口部5b内において露呈した半導体ウェハ1に作用させることにより、図7(b)に示すように、シリコンを主成分とする半導体ウェハ1が開口部5bに対応した除去幅で除去される。
【0033】
これにより、半導体ウェハ1を上下に貫くダイシング溝部1eが形成され、半導体ウェハ1は個片の半導体チップ1*に分割される。このとき、レーザ加工により凹部1cの表面に形成されたダメージ層1dもプラズマの作用によりともに除去されるが、前述のようにダメージ層1dは開口部5b内で完全に露呈されていることからダメージ層1dは完全に除去され、未除去のダメージ層1dが部分的に残留することによる半導体チップの強度低下などの不具合が生じない。
【0034】
すなわち(ST5)においては、テストパターン除去工程の後、半導体ウェハ1において、除去された所定幅の保護シート5、すなわち境界線領域5aに対応する部分をプラズマエッチングすることにより、レーザ加工においてレーザ光9aの照射によって生じたダメージ層1cを除去するとともに、半導体ウェハ1を個々の集積回路3毎に個片の半導体チップ1*に分割する(プラズマダイシング工程)。
【0035】
次いで、DAFプラズマエッチングが実行される(ST6)。ここではレーザ加工装置10において開閉バルブ25a、25bを操作することにより、プラズマ発生用ガスの供給元を再びプラズマ発生用ガス供給部27aに切り換え、プラズマ発生用ガス供給部27aから酸素または酸素の混合ガスをプラズマ発生用ガスとしてガス供給孔23aに供給した状態でプラズマを発生させる。すなわち、図7(c)に示すように、酸素または酸素系のプラズマ発生用ガスを供給することにより発生した酸素ガスプラズマP1を、プラズマダイシング工程において形成されたダイシング溝部1eを介して、ダイアタッチフィルム6に作用させる。
【0036】
これにより、ダイシング溝部1e内に露呈した有機物であるダイアタッチフィルム6が、酸素ガスプラズマP1によって灰化されて除去される。すなわちここではプラズマダイシング工程の後、隣接する個片の半導体チップ1*間のダイアタッチフィルム7を、酸素もしくは酸素を含んだガスによるプラズマでエッチングして除去する。そしてこれにより、ダイシング溝部1eによって分割された複数の個片の半導体チップ1*は、それぞれがダイアタッチフィルム6を介して樹脂シート7によって保持された状態となる。
【0037】
次いで、保護シート5の剥離を容易にするための紫外線照射を行う(ST7)。ここでは半導体ウェハ1の表面1a側から、紫外線を保護シート5に対して照射することにより、保護シート5を表面1aに貼着させる粘着力を低下させる。なお(ST5)において、フッ素系ガスのプラズマからの紫外線が発生するが、この紫外線の光量が保護シート5の粘着力を低下させるのに十分であれば、(ST7)の工程は省略してもよい。そしてこの後、保護シート5を剥離除去するための粘着シート貼付を行う(ST8)。すなわち、図9(a)に示すように、保護シート5の上面側から、粘着シートであるダイボンディングシート30を複数の半導体チップ1*を対象として一括して貼り付ける。なお、(ST7)の紫外線照射と、(ST8)の粘着シート貼付は、紫外線が透過可能なダイボンディングシート30を用いる場合には、どちらを先に行ってもよい。」

(2)上記「(1)」の記載から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「半導体ウェハを個々の集積回路毎に分割する方法であって,
集積回路3が形成されたシリコンを主成分とする半導体ウェハ1を対象として,後工程のダイボンディングにおいて半導体チップを接着するための接着層として機能するダイアタッチフィルム6と樹脂シート7とを積層した構成を有する保持シートを裏面1bに接触させて貼着し,
集積回路3が形成された半導体ウェハ1を対象として表面1aに保護シート5を貼り付け,
レーザ光によって保護シート5をスクライブライン2aに沿って除去して,保護シート5を貫通する開口部5bを形成し,プラズマエッチングにおけるマスクとするマスク形成処理と,
プラズマエッチングによって保護シート5の開口部5bの開口幅を拡げ,ダメージ層1dを全て開口部5bの底部に露呈させるためのアッシング処理と,
半導体ウェハ1が開口部5bに対応した除去幅で除去し,半導体ウェハ1を上下に貫くダイシング溝部1eを形成し,半導体ウェハ1を個片の半導体チップ1*に分割するプラズマダイシング工程と,
ダイシング溝部1eによって分割された複数の個片の半導体チップ1*を,それぞれがダイアタッチフィルム6を介して樹脂シート7によって保持された状態とするために,ダイシング溝部1e内に露呈したダイアタッチフィルム6を酸素ガスプラズマP1によって灰化し除去するDAFプラズマエッチングと,
を有する方法。」

2 引用文献2の記載
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、半導体装置の製造方法に関するもので、特に先ダイシング法によって薄厚化及び個片化された半導体チップに、フィルム状のダイボンド剤を貼り付けた半導体チップの製造工程に適用されるものである。」

「【0027】まず、図1(a)に示すように、先ダイシング法にて分割されたウェハー(個片化された半導体チップ)1を、主にポリイミドからなる熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を混合したフィルム状の接着剤(接着剤フィルム)2上に高温でラミネートにより接着させる。そして、ウェハー1に付着していない部分を取り除いた後、図1(b)に示すように接着剤フィルム面を、ウェハーリング4に装着された、例えば塩化ビニルからなるダイシングテープ3に常温でラミネートして貼り付ける。これによって、図1(c)に示すように、ダイシングテープ3上に接着剤フィルム2を介在して個片化されたウェハー(半導体チップ)1が等間隔に貼り付けられる。
【0028】次に、図1(d)に示すように、各半導体チップ1間の間隙に露出されているの接着剤フィルム2をジメチルアセトアミド(有機溶剤)で化学的にエッチングし、間隙の部分の接着剤フィルム2を除去する。
【0029】その後、各半導体チップ1をダイシングテープ3の裏面側からピックアップニードル等で突き上げてピックアップし、図1(e)に示すような接着剤付き半導体チップ10を作製する。
【0030】そして、上記接着剤付き半導体チップ10の接着剤フィルム2面側を、金属フレームもしくは有機基板上に圧着してマウントする。
【0031】このような製造方法によれば、接着剤フィルム2における各半導体チップ1間の間隙に露出された部分を化学的にエッチングして除去するので、接着剤フィルム2をダイシングして除去する必要がなく、製造工程の煩雑化を抑制できる。また、接着剤フィルム2が半導体チップ1に接着された状態でマウント工程が実施されるので、接着剤フィルム2と半導体チップ1との位置ずれが生ずることもなく、マウント位置の精度の低下を防止できる。
【0032】なお、上記第1の実施の形態では、接着剤フィルム2がポリイミドからなる熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を混合した接着剤の場合を例にとって説明したが、熱可塑性樹脂、未硬化の熱硬化樹脂、未硬化の熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物、あるいはこれらにガラスビーズ、ポリマー、銀フィラーのスペーサーを含むものであっても良い。また、化学的エッチングの際に、有機溶剤の一種であるジメチルアセトアミドを用いる場合について説明したが、接着剤フィルムの材質に応じて他の有機溶剤、酸性溶液及びアルカリ性溶液等を用いても良い。
【0033】[第2の実施の形態]この発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について、図1(a)?(c)及び図2(a)?(d)により説明する。
【0034】ダイシングテープ3上に接着剤フィルム2を介在して半導体チップ1が等間隔に貼り付けられた構造を得るまでは、基本的には図1(a)?(c)に示した第1の実施の形態と同様である。すなわち、図1(a)に示したように、先ダイシング法にて分割されたウェハー(個片化された半導体チップ)1を、フィルム状の接着剤(接着剤フィルム)2上に高温でラミネートにより接着させる。この接着剤フィルム2は、主にポリイミドからなる熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を混合したものであるが、本第2の実施の形態では上記熱可塑性樹脂としてポリメタルクリル酸メチル構造を有し、UV照射によって解重合を起こす成分を含むものを用いる。そして、ウェハー1に接着されていない部分を取り除いた後、図1(b)に示したように接着剤フィルム面を、ウェハーリング4に装着された、例えば塩化ビニルからなるダイシングテープ3に常温でラミネートして貼り付ける。これによって、図2(a)(図1(c))に示すように、ダイシングテープ3上に接着剤フィルム2を介在して半導体チップ1が等間隔に貼り付けられた構造が得られる。
【0035】次に、図2(b)に示すように、ウェハー1の上面からUV照射を行い、各半導体チップ1の間隙の部分の接着剤フィルム2の熱可塑性樹脂成分の解重合反応を起こす。その後、エタノールで各半導体チップ1の間隙の解重合反応を起こした領域(接着剤フィルム)5を除去する(図2(c))。
【0036】そして、各半導体チップ1をダイシングテープ3の裏面側からピックアップニードル等で突き上げてピックアップし、図1(d)に示すような接着剤付き半導体チップ10を作製する。
【0037】その後、上記接着剤付き半導体チップ10の接着剤フィルム2面側を、金属フレームもしくは有機基板上に圧着してマウントする。
【0038】上記のような製造方法によれば、接着剤フィルム2における各半導体チップ1間の間隙に露出された領域に解重合反応を起こして除去するので、接着剤フィルム2をダイシングして除去する必要がなく、製造工程の煩雑化を抑制できる。また、接着剤フィルム2が半導体チップ1に接着された状態でマウント工程が実施されるので、接着剤フィルム2と半導体チップ1との位置ずれが生ずることもなく、マウント位置の精度の低下を防止できる。
【0039】なお、接着剤フィルム2は、UV照射によって解重合を起こす成分を含む材料であれば、熱可塑性樹脂、未硬化の熱硬化樹脂、未硬化の熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物、あるいはこれらにガラスビーズ、ポリマー、銀フィラーのスペーサーを含むものであっても良い。また、エタノールで各半導体チップ1間の間隙の部分の接着剤フィルム2を除去する場合について説明したが、接着剤フィルム2の材質に応じて他の有機溶剤、酸性溶液及びアルカリ性溶液等を用いても良い。」

3 引用文献3の記載
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、半導体ウェハをチップに個片化する処理方法に関する発明である。」

「【0023】
次に、図1(c)に示すように、研削された半導体ウェハ1の非パターン面に水溶性フィルム5を貼合する。水溶性フィルム5は、半導体ウェハ1に加熱により貼合する。
【0024】
次に、図1(d)に示すように、レーザー光照射手段6から照射されたレーザー光7により、半導体ウェハ1のストリートに沿って、水溶性フィルム5のみ切断し、図2(a)に示すように、溝8を入れる。溝8の幅は、ストリート幅以下とすることが好ましい。このレーザー照射は、水溶性フィルム5が形成された半導体ウェハ1に対してレーザー光7を相対的に移動させながら行われる。
【0025】
なお、図1(d)では、レーザー光7により水溶性フィルム5を切断して溝8を作成しているが、水溶性フィルム5の切断方法はこれに限定されるものでなく、例えばブレードによる切断等、溝8を形成することができれば任意の方法を用いることができる。
【0026】
次に、図2(b)に示されるように、プラズマエッチング装置10において、溝8が設けられて個片化された水溶性フィルム5側から半導体ウェハ1をプラズマ9による処理を行い、溝8においてむき出しにされたウェハをエッチングし、半導体ウェハ1がチップに個片化する。プラズマのエッチング効果により、溝8によりむき出しされた半導体ウェハ1がエッチングされ、個々のチップに分割される。」

「【0039】
水溶性フィルム5は、後述するプラズマ処理工程において用いられるマスクパターンを形成するためのものであり、フッ素系ガスを用いたプラズマに対して耐性を有する材質からなり、半導体ウェハの加工などに用いられる一般的な水溶性のフィルムを用いることができる。好ましくは、ポリビニルアルコールやポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイドなどの水溶性ポリマーを用いることができ、より好ましくは、水溶性ポリマーの部分けん化により製膜され、常温の水には溶解せず60℃?100℃の温水に可溶であることを特徴とするフィルムである。水溶性フィルム5の厚さは1?100μm程度であり、好ましくは10?50μmである。」

「【0056】
次に、図6(b)に示すように、半導体ウェハ1のパターン面2側に、水溶性フィルム5を介して表面保護テープ3を貼合する。水溶性フィルム5はパターン面2に加熱により貼合する。
【0057】
次に、第1の実施形態と同様に、図6(c)に示すように、半導体ウェハ1の非パターン面を研削する。
【0058】
次に、第1の実施形態と同様に、図7(a)に示すように、半導体ウェハ1の非パターン面を支持固定用テープ12を用いてリングフレーム14に固定する。
【0059】
次に、第1の実施形態と同様に、図7(b)に示すように、表面保護テープ3の粘着剤層4と水溶性フィルム5との層間で剥離を行い、表面保護テープ3を除去する。
【0060】
次に、第1の実施形態と同様に、図7(c)に示すように、レーザー光照射手段6から照射されたレーザー光7により、半導体ウェハ1のストリートに沿って、水溶性フィルム5を切断し、図8(a)に示されるように溝8を入れる。また、水溶性フィルム5の好ましい切断手段については、第1の実施形態における好ましい切断手段と同様である。
【0061】
次に、第1の実施形態と同様に、図8(b)に示されるように、プラズマエッチング装置10においてプラズマ9による処理を行い、溝8においてむき出しにされた半導体ウェハ1をエッチングし、チップに個片化する。
【0062】
次に、第1の実施形態と同様に、図8(c)に示すように、水あるいは温水11にて洗浄を行うことにより水溶性フィルムの溶解・除去を行う。」

4 引用文献4の記載
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特にウェハ上に複数形成された半導体装置を個々の装置に分離する方法に関する。」

「【0021】
つづいて、保護膜105が設けられたシリコンウェハ101の素子形成面のダイシング線120(図3)上にレーザ光を照射して、溝部107を形成し、溝部107の形成領域のシリコンウェハ101、配線層103および保護膜105を取り除く。この溝部107は、保護膜105および配線層103を貫通するとともに、シリコンウェハ101の内部にわたる。
【0022】
次に、溝部107の底部から、シリコンウェハ101を深さ方向にさらに除去する(図1(c))。このとき、溝部107におけるシリコンウェハ101の露出部から、ドライエッチングを用いてシリコンウェハ101を深さ方向に異方性エッチングする。
【0023】
そして、保護膜を除去した後(図2(a))、シリコンウェハ101の素子形成面全面に粘着テープ109を貼付する。粘着テープ109としては、たとえば既知のダイシングテープを用いる。つづいて、機械的研磨等を用いてシリコンウェハ101を裏面から研削して薄化する(図2(b))。研削工程による薄化後のシリコンウェハ101の厚さは、たとえば数10?100μm程度の厚さである。薄化により、溝部107がシリコンウェハ101を貫通する。その後、粘着テープ109を除去することにより、シリコンウェハ101が個片化されて、複数の半導体装置100が得られる。
【0024】
保護膜105は、ステップ102におけるレーザ光照射およびステップ103におけるエッチングにおいて、配線層103の上面を保護できる材料であればよく、また、ステップ106において、比較的容易に除去可能であって、除去時に配線層103やシリコンウェハ101を汚染しない材料とすることが好ましい。
【0025】
具体的には、保護膜105の材料を非金属材料とすることができる。こうすれば、保護膜を除去する際に、酸やアルカリを剥離液として用いる必要がなく、シリコンウエハや配線層を汚染したりこれらの損傷を与えることを抑制できる。非金属材料としては、たとえば有機樹脂材料等の樹脂材料が挙げられる。
【0026】
樹脂材料としては、たとえば、PVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性樹脂;
ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の有機溶媒溶解性(有機溶媒系)の樹脂;および
所定の温度以上の温度、たとえば60℃以上の温度で昇華または気化する昇華性の樹脂材料等が挙げられる。これらのうち、昇華性の樹脂材料として、具体的には、日本曹達株式会社製染料PSDシリーズ等が挙げられる。」

「【0033】
ステップ106における保護膜105の除去方法は、保護膜105の材料に応じて選択される。たとえば、保護膜105の材料を水溶性樹脂とした場合、シリコンウェハ101の素子形成面の水洗により保護膜105を除去することができる。また、保護膜105の材料を有機溶媒溶解性材料を用いた場合、保護膜105を溶解させる溶媒を用いて、シリコンウェハ101の素子形成面を洗浄することができる。また、保護膜105の材料が昇華性の材料である場合、シリコンウェハ101を所定の温度以上、たとえば60℃以上に加熱して昇華させる方法を用いることができる。また、保護膜105の材料に応じて、酸素プラズマ照射による除去(アッシング)または粘着テープによる引き剥がし等の方法を用いることもできる。」

「【0038】
凹凸面115は、配線層103の各層の加熱に対する耐久性を反映した形状となる。凹凸面115は、構成材料の融点に応じて、ダイシング面111端部から面内方向に向かう後退部の後退量が異なるために生じるものと推察される。たとえば、シリコン酸化膜、低誘電率層間絶縁膜、およびエッチングストッパ膜として機能する窒化膜等が所定の順序で積層されていている場合、これらの膜の融点を反映した凹凸面が形成される。また、たとえば、ダイシング線120において、配線層103に低誘電率層間絶縁膜と、金属配線と、SiO_(2)膜とが所定の位置に所定の順で積層されている場合、低誘電率層間絶縁膜、金属配線、SiO_(2)膜の順に端部が除去されて後退する度合いが大きい。」

「【0062】
(第二の実施形態)
第一の実施形態においては、ステップ103のドライエッチング工程の後(図1(c))、保護膜105を剥離し(図2(a))、シリコンウェハ101の裏面研削により複数の半導体装置100を得た(図2(b))。本実施形態では、裏面研削に代えて、シリコンウェハ101のドライエッチングをさらに行うことによりシリコンウェハ101を複数の半導体装置100に個片化する。すなわち、ステップ104のシリコンウェハ101を個片化する工程が、溝部107の底部から、エッチングによりシリコンウェハ101を深さ方向にさらに除去する工程を含む。ステップ106の保護膜105を除去する工程は、ステップ104の個片化工程の後に行う。
【0063】
図7(a)?図7(c)および図8(a)?図8(c)は、本実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。まず、第一の実施形態と同様に、シリコンウェハ101の素子形成面に所定の素子、拡散層、配線層103を有するLSIを形成する(図3)。そして、LSIを形成したシリコンウェハ101の素子形成面の全面に保護膜105を設け(図7(a))、その後、ダイシング線120(図3)上にレーザ光を照射して、保護膜105および配線層103を貫通するとともに、シリコンウェハ101の内部にわたる溝部107を形成する(図7(b))。
【0064】
次に、シリコンウェハ101の裏面に粘着テープ121を貼付する(図7(c))。粘着テープ121としては、たとえば既知のダイシングテープを用いる。そして、溝部107の底部から、シリコンウェハ101を深さ方向にさらに除去する(図8(a))。この後、本実施形態では、保護膜105を除去せずに、シリコンウェハ101の溝部107を深さ方向にさらにドライエッチングし、溝部107を裏面まで貫通させる(図8(b))。そして、第一の実施形態に記載の方法を用いて保護膜105を除去する(図8(c))。その後、粘着テープ121をシリコンウェハ101の裏面から取り除くことにより、シリコンウェハ101が個片化されて、複数の半導体装置100が得られる。」


5 引用文献5の記載
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には,以下の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、化合物の半導体装置の製造方法に関し、特に支持板に接着固定されたウェハのチップ分離に関する。」

「【0016】
【実施例】[第1の実施例]図1は本発明の第1の実施例の半導体装置を示す図である。図1において、21はシリコン等の半導体基板、22は金メッキ等の裏面電極、23は前記半導体基板21の分離部の側壁面である。そして、前記半導体基板21の分離部の側壁面23は、ハンドリング時等に欠けが生じるのを防止するよう、前記裏面電極22の端部よりも内側に引き込まれかつ略平滑に形成されている。
【0017】該半導体装置の製造方法を説明する。まず、ウェハとして複数のチップが縦横に連続並置された状態で、半導体基板21の分離部(分割ライン)以外の上面をレジスト等でマスキングし、前記分離部の上面を5?15μmの深さ程度に選択的にエッチング除去して、図2のような分離溝32を形成する(分離溝形成工程)。そして、半導体基板21(ウェハ)を厚み30μm程度になるまで研削、研磨し、前記分離溝32内および前記半導体基板21の上面にレジストからなる犠牲層33a,33bをスピン式またはローラ式等にて形成する(犠牲層形成工程)。この際、該犠牲層33a,33bの全上面をほぼ面一となるよう形成しておく。次に、該犠牲層33a,33bの全上面にワックス34を平坦に塗布し、さらに、図3の如く、該ワックス34の全上面に例えばガラス等からなる一枚の支持板35を接着する(支持板接着工程)。この状態で、半導体基板21の下面を研削、研磨加工し、該下面の分離部以外の領域に、図4の如く、厚み35μmの金メッキ等の裏面電極22を形成する(裏面電極形成工程)。その後、前記裏面電極22をマスクとして、半導体基板21の分離部に下面から基板溶解用のエッチャントE1を供給してウエットエッチングにより一部をエッチング除去する(下面分離部除去工程)。ここでのエッチャントE1としては、例えば酸化剤とフッ化水素水溶液との混合液等の一般的なものを用いる。そうすると、前記基板溶解用のエッチャントE1は隣合う裏面電極22の間の間隙からのみ侵食進行するため、除去された部分の形状は図5および図6のように断面視略半円状となる。また、ここでのエッチング深さは、前記分離溝32内の犠牲層33aの底部に達する程度とし、故に半導体基板21の分離溝32の底面に、下側に開放される所定幅w1の条孔36が形成される。しかる後、前記条孔36からレジスト溶解用のエッチャントE2を前記分離溝32内に侵食させ、図7のように分離溝32内の犠牲層33aのみを下面側から選択的にエッチング除去する(犠牲層除去工程)。そうすると、各チップは半導体基板21の側面方向に分離される。但し、全チップの半導体基板21の上面が、犠牲層33bおよびワックス34を介して一枚の支持板35に接着されているため、依然、全チップが縦横に連続並置された状態が維持される。」

「【0026】しかる後、基板溶解用のエッチャントE1を下面側から供給しウエットエッチングを行う。そうすると、エッチャントE1は半導体基板21の分離部の側壁面23から内部側方へ向かって侵食し、図13の如く、半導体基板21の分離部の側壁面23が裏面電極22の端部よりも内側まで略平滑な状態を維持しながら、裏面電極22の端部より内側まで後退する(基板側壁処理工程)。しかる後、前記支持板35を前記半導体基板21から離脱させ(支持板離脱工程)、ワックス34を洗浄除去した後、レジスト溶解用のエッチャントE2にて半導体基板21の上面および分離溝32内の犠牲層33a,33bをエッチング除去し、図1に示した第1の実施例と同様、個々のチップに分離、完成される。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 引用発明の「半導体ウェハ」及び「半導体ウェハを個々の集積回路毎に分割する方法」は,それぞれ,本願発明1の「半導体ウェハ」及び「複数の集積回路を含む半導体ウェハをダイシングする方法」に相当する。
イ 引用発明の「集積回路3が形成されたシリコンを主成分とする半導体ウェハ1を対象として,後工程のダイボンディングにおいて半導体チップを接着するための接着層として機能するダイアタッチフィルム6と樹脂シート7とを積層した構成を有する保持シートを裏面1bに接触させて貼着」された「半導体ウェハ1」と,本願発明1の「水溶性ダイアタッチフィルム上に配置された半導体ウェハ」は,「ダイアタッチフィルム上に配置された半導体ウェハ」である点で共通する。
そして,引用発明の「保護シート5」は,「レーザ光によって保護シート5をスクライブライン2aに沿って除去して、保護シート5を貫通する開口部5bを形成し,プラズマエッチングにおけるマスク」としているからプラズマエッチングにおけるマスクとしての機能を有しており,引用発明の「集積回路3が形成されたシリコンを主成分とする半導体ウェハ1を対象として,後工程のダイボンディングにおいて半導体チップを接着するための接着層として機能するダイアタッチフィルム6と樹脂シート7とを積層した構成を有する保持シートを裏面1bに接触させて貼着し,集積回路3が形成された半導体ウェハ1を対象として表面1aに保護シート5を貼り付け」ることと,本願発明1の「水溶性ダイアタッチフィルム上に配置された半導体ウェハの上方に、集積回路を覆い、保護するマスクを形成する工程」とは,「ダイアタッチフィルム上に配置された半導体ウェハの上方に、集積回路を覆い、保護するマスクを形成する工程」である点で共通する。
ウ 引用発明の「レーザ光によって保護シート5をスクライブライン2aに沿って除去して、保護シート5を貫通する開口部5bを形成し,プラズマエッチングにおけるマスクとするマスク形成処理」は,本願発明1の「レーザスクライビングプロセスによってマスクをパターニングし、これによって集積回路間の半導体ウェハの領域を露出させるギャップをパターニングされたマスクに提供する工程」に相当する。
エ 引用発明の「半導体ウェハ1が開口部5bに対応した除去幅で除去し,半導体ウェハ1を上下に貫くダイシング溝部1eを形成し,半導体ウェハ1を個片の半導体チップ1*に分割するプラズマダイシング工程」は,本願発明1の「パターニングされたマスク内のギャップを貫通して半導体ウェハをエッチングし、これによって個片化された集積回路を形成する工程」に相当する。
オ 上記「ア」ないし「エ」より,本願発明1と引用発明は,以下の点で一致し,又相違する。

[一致点]
「複数の集積回路を含む半導体ウェハをダイシングする方法であって、
ダイアタッチフィルム上に配置された半導体ウェハの上方に、集積回路を覆い、保護するマスクを形成する工程と、
レーザスクライビングプロセスによってマスクをパターニングし、これによって集積回路間の半導体ウェハの領域を露出させるギャップをパターニングされたマスクに提供する工程と、
パターニングされたマスク内のギャップを貫通して半導体ウェハをエッチングし、これによって個片化された集積回路を形成する工程を含む方法。」

[相違点1]
本願発明1は,「ダイアタッチフィルム」が「水溶性ダイアタッチフィルム」であり,「水溶性ダイアタッチフィルムを水溶液によってパターニングする工程であって、パターニング後に保持された水溶性ダイアタッチフィルムの部分は、個片化された集積回路のエッジを僅かにアンダーカットする工程」を含んでいるのに対して,引用発明の「ダイアタッチフイルム」は水溶性でなく,又「水溶性ダイアタッチフィルムを水溶液によってパターニングする工程であって、パターニング後に保持された水溶性ダイアタッチフィルムの部分は、個片化された集積回路のエッジを僅かにアンダーカットする工程」を有していない点。

(2)相違点についての判断
引用発明の「ダイアタッチフィルム」は,「酸素ガスプラズマP1によって灰化し除去する」ものであるから,引用発明の「ダイアタッチフィルム」を「水溶性ダイアタッチフィルム」とすることが自明であったとは言えない。
また,「ダイアタッチフィルム」を水溶性とすることは,原査定に引用されたいずれの文献にも記載も示唆もない。
そうすると,[相違点1]に係る工程は,引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。

(3)本願発明1についてのまとめ
したがって,本願発明1は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は,本願発明1を引用するものであり,本願発明1の発明特定事項を全て備えるから,前記「1」と同様の理由により,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。

3 本願発明8ないし12は,本願発明1を引用するものであり,本願発明1の発明特定事項を全て備える方法を行うためのシステムであるから,前記「1」と同様の理由により,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。

4 本願発明13について
(1)本願発明13と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 引用発明の「シリコンを主成分とする半導体ウェハ」及び「半導体ウェハを個々の集積回路毎に分割する方法」は,それぞれ,本願発明13の「シリコン基板」及び「複数の集積回路を含む半導体ウェハをダイシングする方法」に相当する。
イ 引用発明の「集積回路3が形成されたシリコンを主成分とする半導体ウェハ1を対象として,後工程のダイボンディングにおいて半導体チップを接着するための接着層として機能するダイアタッチフィルム6と樹脂シート7とを積層した構成を有する保持シートを裏面1bに接触させて貼着」された「シリコンを主成分とする半導体ウェハ1」と,本願発明13の「水溶性ダイアタッチフィルム上に配置されたシリコン基板」は,「ダイアタッチフィルム上に配置されたシリコン基板」である点で共通する。
そして,引用発明の「保護シート5」は,「レーザ光によって保護シート5をスクライブライン2aに沿って除去して、保護シート5を貫通する開口部5bを形成し,プラズマエッチングにおけるマスク」としているからプラズマエッチングにおけるマスクとしての機能を有しており,引用発明の「集積回路3が形成されたシリコンを主成分とする半導体ウェハ1を対象として,後工程のダイボンディングにおいて半導体チップを接着するための接着層として機能するダイアタッチフィルム6と樹脂シート7とを積層した構成を有する保持シートを裏面1bに接触させて貼着し,集積回路3が形成された半導体ウェハ1を対象として表面1aに保護シート5を貼り付け」ることと,本願発明13の「水溶性ダイアタッチフィルム上に配置されたシリコン基板の上方に、シリコン基板上に配置された集積回路を覆い、保護するマスクを形成する工程」とは,「ダイアタッチフィルム上に配置されたシリコン基板の上方に、シリコン基板上に配置された集積回路を覆い、保護するマスクを形成する工程」である点で共通する。
ウ 引用発明の「レーザ光によって保護シート5をスクライブライン2aに沿って除去して、保護シート5を貫通する開口部5bを形成し,プラズマエッチングにおけるマスクとするマスク形成処理」と,本願発明13の「レーザスクライビングによってマスク、二酸化ケイ素の層、低K材料の層、及び銅の層をパターニングし、これによって集積回路間のシリコン基板の領域を露出させる工程」とは,「レーザスクライビングによってマスクをパターニングし、これによって集積回路間のシリコン基板の領域を露出させる工程」である点で共通する。
エ 引用発明の「半導体ウェハ1が開口部5bに対応した除去幅で除去し,半導体ウェハ1を上下に貫くダイシング溝部1eを形成し,半導体ウェハ1を個片の半導体チップ1*に分割するプラズマダイシング工程」は,本願発明13の「露出された領域を貫通してシリコン基板をエッチングし、これによって個片化された集積回路を形成する工程」に相当する。
オ 上記「ア」ないし「エ」より,本願発明13と引用発明は,以下の点で一致し,又相違する。

[一致点]
「複数の集積回路を含む半導体ウェハをダイシングする方法であって、
ダイアタッチフィルム上に配置されたシリコン基板の上方に、シリコン基板上に配置された集積回路を覆い、保護するマスクを形成する工程と、
レーザスクライビングによってマスクをパターニングし、これによって集積回路間のシリコン基板の領域を露出させる工程と、
露出された領域を貫通してシリコン基板をエッチングし、これによって個片化された集積回路を形成する工程を含む方法。」

[相違点2]
本願発明13の「集積回路は、低K材料の層及び銅の層の上方に配置された二酸化ケイ素の層を含」み,「レーザスクライビングによってマスク、二酸化ケイ素の層、低K材料の層、及び銅の層をパターニングし、これによって集積回路間のシリコン基板の領域を露出させる工程」を有しているのに対して,引用発明の「集積回路」は,「低K材料の層及び銅の層の上方に配置された二酸化ケイ素の層」を含んでいるのか不明であって,また,「レーザ光によって保護シート5をスクライブライン2aに沿って除去」するものであるものの,「レーザスクライビング」によって「二酸化ケイ素の層、低K材料の層、及び銅の層をパターニング」するものであるのか不明である点。

[相違点3]
本願発明13は,「ダイアタッチフィルム」が「水溶性ダイアタッチフィルム」であり,「水溶性ダイアタッチフィルムを水溶液によってパターニングする工程であって、パターニング後に保持された水溶性ダイアタッチフィルムの部分は、個片化された集積回路のエッジを僅かにアンダーカットする工程」を含んでいるのに対して,引用発明の「ダイアタッチフイルム」は水溶性であるとの記載はなく,又「水溶性ダイアタッチフィルムを水溶液によってパターニングする工程であって、パターニング後に保持された水溶性ダイアタッチフィルムの部分は、個片化された集積回路のエッジを僅かにアンダーカットする工程」を有していない点。

(2)相違点についての判断
[相違点3]について,以下に検討する。
引用発明の「ダイアタッチフィルム」は,「酸素ガスプラズマP1によって灰化し除去する」ものであるから,引用発明の「ダイアタッチフィルム」を「水溶性ダイアタッチフィルム」とすることが自明であったとは言えない。
また,「ダイアタッチフィルム」を水溶性とすることは,原査定に引用されたいずれの文献にも記載も示唆もない。
そうすると,[相違点3]に係る工程は,引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。

(3)本願発明13についてのまとめ
したがって,本願発明13は,他の相違点について検討するまでもなく,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 本願発明14及び15について
本願発明14及び15は,本願発明13を引用するものであり,本願発明13の発明特定事項を全て備えるから,前記「4」と同様の理由により,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。

6 本願発明16は,本願発明13を引用するものであり,本願発明13の発明特定事項を全て備える方法を行うためのシステムであるから,前記「4」と同様の理由により,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。

第6 原査定についての判断
前記「第5 対比及び判断」のとおりであるから,本願発明1ないし16は,拒絶査定において引用された引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。

第7 当審拒絶理由について
当審では,補正前の請求項8ないし12に係る発明について,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知したが,平成30年12月27日にされた手続補正により,この拒絶の理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり,本願発明1ないし16は,当業者が引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-11 
出願番号 特願2014-515840(P2014-515840)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮久保 博幸  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 小田 浩
梶尾 誠哉
発明の名称 水溶性ダイアタッチフィルムを用いたレーザ・プラズマエッチングウェハダイシング  
代理人 安齋 嘉章  

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