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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1349607
審判番号 不服2018-153  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-05 
確定日 2019-03-07 
事件の表示 特願2016-116603「レーザ装置とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月14日出願公開、特開2017-220652〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成28年6月10日の出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
平成29年 5月30日 :手続補正書の提出
平成29年 6月28日付け:拒絶理由通知
平成29年 9月 4日 :意見書の提出
平成29年 9月29日付け:拒絶査定(平成29年10月10日送達)
平成30年 1月 5日付け:審判請求書、手続補正書の提出
平成30年10月22日付け:審尋
平成30年12月11日 :回答書の提出

2 本願発明の認定
本願の特許請求の範囲は、平成30年1月5日付け手続補正書によって補正されたものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりであると認められる。なお、請求項2は、本願の出願当初から補正されていない。
「励起光が入射すると発光するレーザ媒質と、前記レーザ媒質より熱伝導率が高いとともに前記励起光が透過する伝熱部材を備えており、前記レーザ媒質の端面と前記伝熱部材の端面が接合しているレーザ装置であり、
前記伝熱部材と前記レーザ媒質の間に反射特性調整膜が形成されており、
前記伝熱部材と前記レーザ媒質のいずれか一方の部材と前記反射特性調整膜の間に、前記一方の部材と同じ材質で結晶状態が相違する層が介在している、レーザ装置。」

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例1:特開2008-258627号公報
周知例2:庄司一郎、外5名,“常温接合を用いた高機能レーザー素子の作製”,レーザー研究,2011年 5月15日,第39巻,第5号,p.337-341
周知例3:特開2014-135421号公報
周知例4:特開2016-18071号公報
周知例5:国際公開第2011/126000号
周知例6:特開2007-251112号公報

4 引用発明の認定
(1)引用例1
ア 原査定が引用した、本願の出願前に公開された特開2008-258627号公報(以下「引用例1」という。)には、次の記載があると認められる(下線は当審が付した。以下、同じ。)。
(ア)「【特許請求の範囲】」、
「光学的励起利得媒体層と、
過飽和吸収体層と、
光軸を有する空洞共振器を形成するために利得媒体および過飽和吸収体層を囲んで配置される第1および第2の反射器と、
空洞共振器外側の光軸上の光透過性材料の熱拡散器と、
前記レーザ共振器の縦方向励起のために配置された利得媒体によって吸収される波長の光学的励起光と、
を含む一体型ボディを備えたマイクロレーザ装置。」(【請求項1】)、
「利得媒体が、Nd:YAGである、請求項1に記載のマイクロレーザ。」(【請求項6】)、
「熱拡散器がサファイアである、請求項1に記載のマイクロレーザ。」(【請求項14】)
「第1および第2の反射器が、それぞれ利得媒体および過飽和吸収体にそれぞれ直接施された誘電コーティングである、
請求項1に記載のマイクロレーザ。」(【請求項20】)、
「第1の反射器が、励起レーザ波長において高伝達性であり、マイクロレーザ波長において高反射性である、
請求項20に記載のマイクロレーザ。」(【請求項21】)

(イ)「【発明を実施するための最良の形態】」、
「・・・「拡散器」および「光透過性熱伝導エレメント」との表現は、本発明の説明文脈中において、ほとんど同じ意味で用いられ得る。」(【0034】)、
「本発明の実施形態に従う受動Qスイッチマイクロレーザ400を図4に示す。受動Qスイッチマイクロレーザ400は、利得媒体401と、それに接着された過飽和吸収体402と、それらを囲む一対の誘電コーティング405、406とを含み、長さ410で規定される空洞共振器を形成する。利得媒体401に接する誘電コーティング405は、励起光407を伝達し、マイクロレーザ波長において高反射である(高反射器)。過飽和吸収体402に接する誘電コーティング406は、マイクロレーザ波長において部分反射性であり(出力カプラー)、マイクロレーザ400から光出力408を出力する。出力カプラーコーティング406は、利得媒体401を介して、非吸収励起光407をも反射し得る。光透過性熱伝導エレメント403は利得媒体401に接着されており、その露出面は誘電コーティング409されている。光透過性熱伝導エレメント403に接する誘電コーティング409は、マイクロレーザ光学空洞共振器の形態に関与せず、共振器光路長410を増やさないことに留意することが重要である。したがって、光透過性熱伝導エレメント403は、例えば、パルス持続時間の変更によっても、マイクロレーザの性能に影響を与えない。」(【0035】)、

「光透過性熱伝導エレメント403を通じて励起光が伝達されると、伝達された励起光は利得媒体401を通過し、イオン励起を引き起こし、利得媒体401内部にエネルギーが蓄えられる。利得媒体401内部に蓄えられたエネルギーが増加し、マイクロレーザ波長の空胴内密度も増加すると、吸収体402は、共振器損失の低減と、密度の急速な増加と、マイクロレーザ出力パルスとしての蓄積エネルギーのかなりの割合の抽出を生じながら、飽和する。パルス放出後、吸収体402は、利得媒体401内部の蓄積エネルギーが完全に補充されるまで次のパルスが遅れるように、利得媒体が復帰する前に高損失状態に復帰し得る。したがって、過飽和吸収体と利得媒体の物理特性は、励起光が連続的である場合は、Qスイッチパルス発生の反復性を大きく決定する。」(【0036】)、
「光透過性熱伝導エレメント403は、マイクロレーザ400に多数の長所をもたらす。その一つは、熱拡散器としての作用である。熱拡散器を介した直接伝導による利得媒体からの熱除去は、利得媒体401におけるピーク温度、温度勾配、熱誘発ストレスを顕著に低下させる。例えば、図5に示す装置500の有限エレメント熱モデルが、0.15mm厚のCo:spinel過飽和吸収体502と、0.5mm厚のCo:spinel熱拡散器503とに挟まれた、1mm厚Yb,Er:ガラス利得媒体501における1W熱負に対して、利得媒体501の励起面において、熱拡散器503なしで560℃から、熱拡散器503ありで120℃までピーク温度の低減を示したことを考慮する。図4のマイクロレーザと同様に、マイクロレーザ500は、共振器光路長510の限度を規定する誘電コーティング505、506を含んでいる。光透過性熱伝導エレメント503も、誘電コーティング509を含んでいる。マイクロレーザ500は、励起光507を受け、出力光ビーム508を放射する。」(【0037】)、
「利得媒体501での励起光507の吸収は、励起面520の顕著な温度上昇をもたらす。熱拡散器503は、励起面520からこの熱を除去するために利用され得、これにより、熱束線513で示されるように、温度を低下する。熱束線513が熱拡散器503に到達すると、熱束線513は熱拡散による温度低下を示しながら発散する。25℃に保たれたアルミニウム板511がヒートシンクとして用いられ、すべての分散した熱513はアルミニウム板511に伝達する。利得媒体501の熱負荷は、縦方向励起マイクロレーザの励起領域断面エリアの典型である直径100mmの領域に制限された。」(【0038】)、
「光透過性熱伝導エレメント403は、励起光源の保護もし得る。受動Qスイッチマイクロレーザで使用される半導体ダイオードレーザ励起光源は、マイクロレーザ共振器高反射器を介して伝達されるマイクロレーザパルスエネルギーにより、ある場合には光学的に損傷を受ける。例えば、図7に、受動QスイッチYb,Er:ガラスマイクロレーザを光学的に励起するために使用された後に放射を止めた975nmシングルエミッタダイオードレーザの顕微鏡写真を示す。矩形で縁取りされたデバイス面の中心は、放射領域に位置する、円形穴、または損傷箇所を有している。この損傷箇所は、1.5mm、1mJ?2mJの数千回のレーザパルスによる材料切除の結果である。通常は、マイクロレーザの高反射器を介してどのようなレーザパルスエネルギーが放出されても、それはほとんどないものと期待する。しかしながら、出力カプラー伝達は、Yb,Er:ガラス受動Qスイッチマイクロレーザに対しては、概してわずか1%であり、99.9%反射率の高反射器により10mJから20mJの出力パルスエネルギーを生じるそのようなマイクロレーザは、十分な量のパルスエネルギーを漏らして問題となる。」(【0039】)、
「光透過性熱伝導エレメント403は、2つの方法のうちの一つ、または2つの方法の組み合わせにより、高反射器を介したマイクロレーザパルスエネルギー漏れ防止に用いられ得る。第1の方法は、熱拡散器403の露出面における誘電コーティングを、マイクロレーザ波長において高反射となるように設計することによる。この方法は、熱拡散器の割り込みにより除去され得る、熱拡散器403の誘電コーティングと、利得媒体401との間の光学エタロンの形成の可能性を有する。」(【0040】)、
「例えば、紫外線硬化接着剤の薄層により、サファイア熱拡散器が、図7に示す損傷を生じた受動Qスイッチの励起面に接着された。サファイア熱拡散器の露出面は、マイクロレーザ波長において高反射となるように誘電コーティングされた。そして、このレーザは、励起光源としての交換用半導体レーザダイオードと共に、ダイオードレーザの後続故障、または損傷なしに、数週間の期間を越える長時間稼動された。」(【0041】)、
「第2の方法は、マイクロレーザ波長において吸収性であり、励起波長において伝導性であり、Yb,Er:ガラスの場合はCo:spinel過飽和吸収体であり得る、熱拡散器403の利用による。マイクロレーザの異なるエレメントを互いに取り付けるボンディング方法は、使用される材料に適合する必要がある。強力な低光学損失とストレスフリーインターフェースを確かにするために、熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチに対しては、特に注意が必要である。使用され得るボンディング方法は、光学的接合、接着、拡散接合、溶解接合、リンギング、ガラス接合、および化学的補助直接接合を含むが、限定されるものではない。多数のボンディング方法は、結合される要素間に、材料を必要としないか、わずかの材料しか必要とせず、したがって、熱抵抗の顕著な一因とはならない。」(【0042】)、
「熱拡散器の材料、ボンディング方法、および誘電コーティング特性の適切な選択を行う場合、多数の要因を考慮すべきである。
一般に、熱拡散器は、マイクロレーザの利得媒体面と同等の、またはより大きい断面積を有しており、通常は0.1mmと10.0mmの間の厚みである。より薄い熱拡散器は加工が難しく、熱を効果的に除去しない一方、より厚い熱拡散器は、規定の厚みのもの以上の効果がない。」(【0043】)、
「単結晶材料は、熱拡散器としての利用を考えた場合、ガラスまたはプラスティックに比べて高い熱伝導率を提供する。励起およびマイクロレーザ波長が含まれる可能性の高い可視?近赤外スペクトル領域では、表1に示される通常使用される光透過性材料とその熱伝導率は、熱拡散器としての利用に対する単結晶材料の優位性を示している。まれに、加工上の理由から、ガラス材料の利用が要求され得るが、熱拡散器なしよりはましである。プラスティックと有機材料は、一般に熱拡散器としては使用されないが、ボンディング接着剤としての極薄層ではうまく使用され得る。」(【0044】)、
「表1 レーザ利得媒体ホスト結晶とガラスとを含む、通常使用される光透過性材料の熱伝導率。」(【0045】)、
「【表1】

」(【0046】)、
「好ましい熱拡散器材料は、広範囲に及ぶ有効性により、サファイアと非ドープYAGである。YAGは、レーザ利得媒体(Nd:YAG、Yb:YAG、Tm:YAG、Ho:YAG、Er:YAG、Ho,Tm:YAG)用のホスト材料、および最も広く使用される1ミクロン過飽和吸収体Cr:YAGとして広く使用されているため、特に熱拡散器材料として便利である。しかしながら、他の適切な材料が利用可能である場合は、その利用を妨げるものではない。」(【0047】)

イ 上記各記載によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明1を認定する際に活用した引用例1の記載を、参考までに、括弧内に示してある。
「(【請求項1】)光学的励起利得媒体層と、
過飽和吸収体層と、
光軸を有する空洞共振器を形成するために利得媒体および過飽和吸収体層を囲んで配置される第1および第2の反射器と、
空洞共振器外側の光軸上の光透過性材料の熱拡散器と、
前記レーザ共振器の縦方向励起のために配置された利得媒体によって吸収される波長の光学的励起光と、
を含む一体型ボディを備えたマイクロレーザ装置であって、
(【請求項6】、【0046】)利得媒体が、Nd:YAGであり、
(【請求項14】、【0046】)熱拡散器がサファイアであり、
(【請求項20】)第1および第2の反射器が、それぞれ利得媒体および過飽和吸収体にそれぞれ直接施された誘電コーティングであり、
(【請求項21】)第1の反射器が、励起レーザ波長において高伝達性であり、マイクロレーザ波長において高反射性であり、
(【0042】)マイクロレーザの異なるエレメントを互いに取り付けるボンディング方法は、使用される材料に適合する必要があり、強力な低光学損失とストレスフリーインターフェースを確かにするために、熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチに対しては、特に注意が必要である、
(【請求項1】)マイクロレーザ装置。」

(2)引用例5
ア 原査定が引用した、本願の出願前に公開された国際公開第2011/126000号(以下「引用例5」という。)には、次の記載があると認められる。
(ア)「図3に示すように、本発明の一実施形態に係る発光装置の製造方法は、発光素子10を準備する発光素子準備工程と(図3A(a)参照)、波長変換部材20を準備する波長変換部材準備工程と(図3A(b)参照)、表面活性化接合法により、発光素子10と波長変換部材20とを接合する接合工程と(図3B及びC参照)、を有することを特徴とする。」([0031])、
「本明細書において、「表面活性化接合法」とは、発光素子10及び波長変換部材20の接合面をイオンビームやプラズマなどでスパッタエッチングを行い、両接合面を活性化させた後に、その接合面にて発光素子10及び波長変換部材20を直接接合することをいう。」([0032])、
「これにより、発光素子10と波長変換部材20とを強固に接合することができる。スパッタエッチングにより、第1領域11a及び第3領域20aが形成され、両者が一体となって発光素子10と波長変換部材20との間の歪みを吸収するためであると考えられる(図2参照)。詳細は前述のとおりなので、ここでは省略する。」([0033])、
「一般的に、発光素子は、例えば、サファイアからなる円柱状のインゴットを薄くスライスした円盤状のウエハ上に、複数の半導体積層部12を形成した後、個々の発光素子ごとに分割することにより作製される。本発明において、表面活性化接合法により、発光素子10と波長変換部材20とを接合する場合、発光素子に分割する前に、複数の半導体積層部12が形成されたウエハと波長変換部材20とを接合した後、個々の素子に分割するようにしてもよいし、個々の発光素子に分割した後それぞれの発光素子に表面活性化接合法により、波長変換部材20を接合するようにしてもよい。しかしながら、表面活性化接合法により、発光素子10と波長変換部材20とを接合する場合、発光素子10はウエハでなく個々に切断されたものを用いると次のような利点がある(本明細書では、個々に切断されたものだけでなく、その前の状態であるウエハも「発光素子」という。)。つまり、通常、ウエハ上に形成された発光素子は、その素子が形成されたウエハ上の位置によってピーク波長や出力等の特性が異なる。しかし、ウエハを個々に切断した発光素子であれば同一又は類似した特性のものを選択してグループ化し、グループに属する発光素子の特性に応じて最適な波長変換特性を有する波長変換部材20を組み合わせて接合することが可能になる。具体的な方法としては、例えば、1枚の粘着シートに類似した特性を有する複数の発光素子を配置し(第1工程)、粘着シートに配置された個々の発光素子と1枚の波長変換部材とを表面活性化接合法により接合し(第2工程)、粘着シートを除去し(第3工程)、必要に応じて個々の発光装置となるように波長変換部材を切断する(第4工程)。」([0034])、
「また、発光素子を加熱すると電極や発光層が劣化する虞があるが、表面活性化接合法は必ずしも加熱することを要しない。よって、発光素子の特性を損なうことなく発光素子10と波長変換部材20とを接合することができる。電極の材料及び構成や半導体積層部の材料及び構成にもよるが、表面活性化接合法の実施温度の範囲としては、好ましくは0℃以上300度以下、より好ましくは0℃以上200度以下、さらに好ましくは0℃以上100℃以下、さらに好ましくは0℃以上50℃以下とすることができる。これにより、発光素子の特性を損なうことなく強固に接合することができる。」([0035])、
「発光素子10及び波長変換部材20の接合面はそれぞれ、表面粗さ(Ra)を、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは1nm以下とすることができる。これにより、発光素子10及び波長変換部材20を容易且つ強固に接合することができる。」([0036])、
「発光素子10の接合面及び/又は波長変換部材20の接合面の材料や状態によっては、表面活性化接合法により両者を接合し難い場合もある。その場合であっても、発光素子10と波長変換部材の一方又は両方に、他方と接合可能な接合部材を形成することで、両者を接合することができる。例えば、表面活性化接合法ではガラス(蛍光体を含む)は発光素子のサファイア基板と接合し難い。そこで、ガラス表面に接合部材として酸化アルミニウムをスパッタなどで形成し、酸化アルミニウムとサファイア基板とを表面活性化接合法により接合することができる。この場合、波長変換部材20は、蛍光体、支持体(ガラス)及び接合部材(酸化アルミニウム)から構成されることになり、接合部材(酸化アルミニウム)が発光素子側から、第3領域と第4領域とを有し、その第3領域が第4領域と比較して原子配列が不規則なものとなっている。」([0037]、審決注:「表活性化接合法」は「表面活性化接合法」の誤記と認められるので、誤記を正した上で、認定した。)

(イ)「請求の範囲」、
「発光素子を準備する発光素子準備工程と、
波長変換部材を準備する波長変換部材準備工程と、
表面活性化接合法により、前記発光素子と前記波長変換部材とを接合する接合工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。」([請求項4])

イ 上記アの各記載によれば、引用例5には、
([0035])表面活性化接合法は必ずしも加熱することを要しないこと、
([0037])発光素子10の接合面及び/又は波長変換部材20の接合面の材料や状態によっては、表面活性化接合法により両者を接合し難い場合もあるが、その場合であっても、発光素子10と波長変換部材の一方又は両方に、他方と接合可能な接合部材を形成することで、両者を接合することができること、
([0037])例えば、表面活性化接合法ではガラス(蛍光体を含む)は発光素子のサファイア基板と接合し難いが、ガラス表面に接合部材として酸化アルミニウムをスパッタなどで形成し、酸化アルミニウムとサファイア基板とを表面活性化接合法により接合することができること、
が記載されていると認められる。

5 対比
(1)本願発明と引用発明1との対比
ア 本願発明の「励起光が入射すると発光するレーザ媒質と、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「光学的励起光」及び「光学的励起利得媒体層」は、それぞれ、本願発明の「励起光」及び「レーザ媒質」に相当する。

(イ)上記(ア)によれば、引用発明1が本願発明の「励起光が入射すると発光するレーザ媒質と、」との特定事項を備えることは、明らかである。

イ 本願発明の「前記レーザ媒質より熱伝導率が高いとともに前記励起光が透過する伝熱部材を備えており、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「熱拡散器」は、本願発明の「伝熱部材」に相当する。

(イ)引用発明1の「熱拡散器」は、「空洞共振器外側の光軸上」に設けられ、「光透過性材料」からなるから、「前記励起光が透過する」といえる。

(ウ)引用発明1の「熱拡散器」は、「サファイア」からなるから、「光学的励起利得媒体層」(本願発明の「レーザ媒質」に相当。)を構成する材料である「Nd:YAG」よりも、「熱伝導率が高い」ものと認められる。

(エ)以上によれば、引用発明1は、本願発明の「前記レーザ媒質より熱伝導率が高いとともに前記励起光が透過する伝熱部材を備えており、」との特定事項を備えるといえる。

ウ 本願発明の「前記レーザ媒質の端面と前記伝熱部材の端面が接合している」との特定事項について
本願発明の「前記レーザ媒質の端面と前記伝熱部材の端面が接合している」の意味は、本願明細書の【0010】によれば、レーザ媒質の端面と伝熱部材の端面が、反射特性調整膜と伝熱部材同質層を介して、または反射特性調整膜とレーザ媒質同質層を介して接合していることである。
これを引用発明1についてみると、引用発明1の「光学的励起利得媒体層」(本願発明の「レーザ媒質」に相当。)と「熱拡散器」(本願発明の「伝熱部材」に相当。)は、「誘電コーティングである」「第1の反射器」を介して、「使用される材料に適合する」「ボンディング方法」によって「互いに取り付けられている」と認められる。しかも、これらの構成は、「一体型ボディ」となって「マイクロレーザ装置」を形成しているのであるから、「光学的励起利得媒体層」と「熱拡散器」とは、それらの端面が対向される状態で、取り付けられているものと認められる。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、「前記レーザ媒質の端面と前記伝熱部材の端面が」所定の層を介して「接合している」点で一致する。

エ 本願発明の「レーザ装置」との特定事項について
引用発明1の「マイクロレーザ装置」は、本願発明の「レーザ装置」に相当する。

オ 本願発明の「前記伝熱部材と前記レーザ媒質の間に反射特性調整膜が形成されており、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「利得媒体」「に直接施された誘電コーティング」である「第1の反射器」は、「励起レーザ波長において高伝達性であり、マイクロレーザ波長において高反射性であ」るから、本願発明の「反射特性調整膜」に相当する。

(イ)引用発明1の「第1の反射器」が、「熱拡散器」(本願発明の「伝熱部材」に相当。)と「光学的励起利得媒体層」(本願発明の「レーザ媒質」に相当。)との間に形成されていることは明らかである。

(ウ)したがって、引用発明1は、本願発明の「前記伝熱部材と前記レーザ媒質の間に反射特性調整膜が形成されており、」との特定事項を備える。

カ 本願発明の「前記伝熱部材と前記レーザ媒質のいずれか一方の部材と前記反射特性膜の間に、前記一方の部材と同じ材質で結晶状態が相違する層が介在している、」との特定事項について
引用発明1は、本願発明の上記特定事項を備えない。

(2)一致点及び相違点の認定
上記(1)によれば、本願発明と引用発明1とは、
「励起光が入射すると発光するレーザ媒質と、前記レーザ媒質より熱伝導率が高いとともに前記励起光が透過する伝熱部材を備えており、前記レーザ媒質の端面と前記伝熱部材の端面が所定の層を介して接合しているレーザ装置であり、
前記伝熱部材と前記レーザ媒質の間に反射特性調整膜が形成されている、
レーザ装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
レーザ媒質の端面と伝熱部材の端面との間に介在する「所定の層」について、
本願発明には、反射特性調整膜と、それに加えて、前記伝熱部材と前記レーザ媒質のいずれか一方の部材と前記反射特性調整膜の間の、前記一方の部材と同じ材質で結晶状態が相違する層が設けられているのに対し、
引用発明1には、反射特性調整膜(「第1の反射器」)は設けられているけれども、前記伝熱部材と前記レーザ媒質のいずれか一方の部材と前記反射特性調整膜の間の、前記一方の部材と同じ材質で結晶状態が相違する層は、設けられていない点。

6 相違点の判断
(1)判断
ア まず、引用発明1にいかなる変更を加えると相違点の構成に至るかについてみると、引用発明1の「利得媒体」「に直接施された誘電コーティング」である「第1の反射器」(本願発明の「反射特性調整膜」に相当。)と「サファイア」からなる「熱拡散器」(本願発明の「伝熱部材」に相当。)との間に、サファイアと同じ材質で結晶状態が相違する層を設ければよいということになる。
そこで、当業者がそのような変更に容易に至るかについて、以下検討する。

イ 引用発明1は、「ボンディング方法」に関して、「マイクロレーザの異なるエレメントを互いに取り付けるボンディング方法は、使用される材料に適合する必要があ」り、「強力な低光学損失とストレスフリーインターフェースを確かにするために、熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチに対しては、特に注意が必要である」ものであることを特定するものと解される。そして、当業者は、当該「ボンディング方法」が、「熱拡散器」と「第1の反射器」との間のボンディングをも対象としていることを、次のとおり、認識できるものと認められる。
第一に、引用発明1は、「光学的励起利得媒体層」と「熱拡散器」とが「第1の反射器」を介して一体化した構造となっているところ、「第1の反射器」は、「利得媒体」(光学的励起利得媒体層)に「直接施された誘電コーティング」であるのだから、当該一体化した構造を得るためには、「光学的励起利得媒体層」に既に施されている「第1の反射器」に、「熱拡散器」をボンディングさせる必要がある。そして、「第1の反射器」と「熱拡散器」とは、「マイクロレーザの異なるエレメント」である。よって、当業者は、「マイクロレーザの異なるエレメント」を対象とする当該「ボンディング方法」が、「熱拡散器」と「第1の反射器」との間のボンディングをも対象としていると、認識できるといえる。
第二に、引用発明1における「熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチ」(なお、「熱膨張および溶解点の係数」は、「熱膨張係数および融点」の意味であると解される。)は、異なる材料同士のボンディングにおいて典型的に生じることが明らかであるから、当該「ボンディング方法」においては、異なる材料同士のボンディングを対象とすることが、当然に想定されている。そして、「第1の反射器」で用いられる材料は、次の観点、すなわち、「励起レーザ波長において高伝達性であり、マイクロレーザ波長において高反射性であ」るという光学特性的な観点、から定められるものであるから、「熱拡散器」で用いられるサファイアとは、一般には異なることになる。そうすると、当業者は、異なる材料同士のボンディングをも対象とする当該「ボンディング方法」が、「熱拡散器」と「第1の反射器」をも対象としていることを、認識できるといえる。

ウ 上記イで説示したことからすれば、当業者は、引用発明1において、「熱拡散器」と「第1の反射器」との間の「ボンディング方法」をどのように行うのかを検討する必要があるといえる。そして、その検討の際は、強力な低光学損失とストレスフリーインターフェースを確かにするために、熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチに注意するとの観点、に留意する必要があることになる。
すなわち、引用例1に接した当業者は、引用発明1における「熱拡散器」の「サファイア」と「第1の反射器」とをボンディングするに当たり、強力な低光学損失とストレスフリーインターフェースを確かにするために、熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチを可及的に抑制できるようにするとの課題に直面することになる。そして、引用例1には、「使用され得るボンディング方法は、光学的接合、接着、拡散接合、溶解接合、リンギング、ガラス接合、及び化学的補助直接接合を含むが、限定されるものではない。」(【0042】)と記載されているのであるから、当業者は、当該課題を解決できるような適切なボンディング方法を追求するとの動機があるといえる。
さらに、上記でいう適切なボンディング方法の追求は、「強力な低光学損失とストレスフリーインターフェースを確かにするために、熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチを可及的に抑制できるようにする」との課題解決のためになされるものであり、当該課題は光学分野一般に妥当することが明らかであるから、当業者は、レーザーの技術分野に限らず、広く光学要素の技術分野から、ボンディング技術を参照することができるというべきである。

エ 他方、引用例5に記載されているとおり、発光素子の技術分野において、必ずしも加熱することを要しない表面活性化接合法により、発光素子のサファイア基板と波長変換部材とが接合し難い場合は、波長変換部材の表面に酸化アルミニウムをスパッタなどで形成し、酸化アルミニウムとサファイア基板とを表面活性化接合法により接合できるという技術が知られている(なお、引用例5に係る特許出願の出願人は日亜化学工業株式会社であるところ、引用例5の当該技術は、特開2015-192105号公報の【0004】において引用されており、当該公報に係る特許出願の出願人が豊田合成株式会社である。そうすると、引用例5の上記技術は本願出願前に周知であったといってもよい。)。
そして、引用例5記載の上記技術は、光学要素のボンディング技術にほかならない。加えて、引用発明1と上記技術とは、発光素子の技術分野に属するという意味でも共通する。さらにいえば、レーザーの技術分野において表面活性化接合法を用いることは技術常識である(例えば、「庄司一郎、外5名,“常温接合を用いた高機能レーザー素子の作製”,レーザー研究,2011年 5月15日,第39巻,第5号,p.337-341」、特開2014-135421号公報の【0039】?【0042】を参照。)から、両者は、単に、発光素子の技術分野に属するということだけではなく、表面活性化接合法の適用がなされている発光素子の技術分野に属するという意味でも共通する。
そうすると、上記課題に直面した当業者は、引用例5に接することができると認められる。そして、そのような当業者は、引用例5に記載された上記技術を、上記課題を解決するために使用できるかという観点から把握しようとするのであるから、この技術を、次のような技術であるとして、すなわち、必ずしも加熱することを要しないという表面活性化接合法において、サファイアと他の部材とが接合し難い場合は、当該他の部材の表面に酸化アルミニウムをスパッタなどで形成し、その酸化アルミニウムとサファイアとを表面活性化接合法により接合し、他方で、サファイアと他の部材とが接合しやすい場合は、酸化アルミニウムをスパッタなどで形成することなく、他の部材とサファイアとを表面活性化接合法により接合する技術(以下「引用例5技術」という。)であるとして、把握するものと認められる。
このような引用例5技術は、必ずしも加熱することを要しないのであるから、「強力な低光学損失とストレスフリーインターフェースを確かにするために、熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチを可及的に抑制できるようにする」との課題解決に資するといえる。

オ してみると、当業者であれば、引用発明1において、上記課題を解決するために、引用例5技術を採用することを容易に想到し得るというべきである。
そして、引用発明1の「第1の反射器」の材料は、「サファイア」とは一般に異なるのであるから、引用例5技術における表面活性化接合法によっては接合し難い場合があると解されるところ、そのような場合においては、当業者は、「第1の反射器」の表面に酸化アルミニウムなどをスパッタなどで形成し、その酸化アルミニウム(「サファイア」と同じ材質で結晶状態が相違するものと認められる。)とサファイアとを表面活性化接合法によって接合することになる。当業者は、これによって、相違点の構成に至る。

カ 本願発明の効果は、引用発明1,引用例1及び5の記載並びに上記技術常識から予測しうる程度のものにすぎない。

キ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用例1及び5の記載並びに上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において、引用例5には、レーザ装置における常温接合について開示するものではなく、一方の部材の端面に形成された反射特性調整膜が存在する旨の記載もないから、反射特性調整膜の表面に他方の部材と同じ材質で結晶状態が相違する層を形成し、当該層と他方の部材とを常温接合することはあり得ない旨主張する。
請求人が主張するとおり、引用例5には、レーザ装置の開示はない。しかしながら、上記(1)ウ及びエのとおり、引用例1に接した当業者が有する動機や、引用例1の記載と引用例5の記載との共通性からすれば、引用例5がレーザ装置に係るものではないことは、容易想到性を否定する根拠にはならないというべきである。
また、たしかに、引用例5には、反射特性調整膜の開示もない。しかしながら、引用例5では、波長変換部材の表面に酸化アルミニウムをスパッタなどで形成するところ、当該酸化アルミニウムが形成される対象が引用発明1の「第1の反射器」になったからといって、引用例5に記載された表面活性化接合法が機能しなくなるわけでもない。そうすると、請求人が主張する事情により、容易想到性が否定されるとはいえない。

イ 請求人は、審判請求書において、「庄司一郎、外5名,“常温接合を用いた高機能レーザー素子の作製”,レーザー研究,2011年 5月15日,第39巻,第5号,p.337-341」(以下「周知例2」という。)には、同種材料同士か異種材料同士かによらずに常温接合することができる旨記載されている一方、引用例5には、「接合される各部材の接合面の材料や状態によっては表面活性化接合法により両者を接合し難い場合」があるのであるから、周知例2と引用例5との課題が相反する旨主張する。
しかしながら、周知例2の338頁左欄15?17行に、「常温接合・・・は表面活性化接合・・・とも呼ばれ、これまでさまざまな材料に対し接合が試みられている。」と記載されていることからすれば、同340頁右欄下から14行?同12行の「・・・常温接合では異種材料同士であっても品質を劣化させることなく複合構造を作製することが可能であるため、」との記載は、いかなる異種材料同士であっても常温接合できることを意味しているのではなく、せいぜい、常温接合できるような異種材料同士も存在する程度の意味と解すべきである。したがって、周知例2の記載と引用例5の記載とは相反しないというべきである。

ウ 請求人は、平成30年12月11日提出の回答書(以下、単に「回答書」という。)において、引用発明1に対して引用例5に記載された事項を採用する動機付けは存在しない旨主張し、その根拠として、引用例1は、「熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチを可及的に抑制できるようにする」との課題が、接合方法自体に存在することを記載するものではなく、むしろ、「光学的接合、接着、拡散接合、溶解接合、リンギング、ガラス接合、および化学的補助接合」という接合に適した条件を決定する際に「熱膨張および溶解点の係数」を考慮すべきであることを記載するにとどまる旨を挙げる。
(ア)そこで検討すると、引用例1の【0042】及び【0043】の関連箇所は、
「マイクロレーザの異なるエレメントを互いに取り付けるボンディング方法は、使用される材料に適合する必要がある。」(以下「第1文」という。)、
「強力な低光学損失とストレスフリーインターフェースを確かにするために、熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチに対しては、特に注意が必要である。」(以下「第2文」という。)、
「使用され得るボンディング方法は、光学的接合、接着、拡散接合、溶解接合、リンギング、ガラス接合、および化学的補助直接接合を含むが、限定されるものではない。」(以下「第3文」という。)、
「多数のボンディング方法は、結合される要素間に、材料を必要としないか、わずかの材料しか必要とせず、したがって、熱抵抗の顕著な一因とはならない。」(以下「第4文」という。)、
「熱拡散器の材料、ボンディング方法、および誘電コーティング特性の適切な選択を行う場合、多数の要因を考慮すべきである。」(以下「第5文」という。)、
というものである。
しかるところ、第1文がボンディング方法を選択する際の考慮要因に関する記載であることが明らかである。そうすると、その直後にある第2文も、ボンディング方法を選択する際の考慮要因に関する記載であると解することが自然である。そして、第3文は、選択され得るボンディング方法が限定されないことを意味すると解することが自然であり、「光学的接合、接着、拡散接合、溶解接合、リンギング、ガラス接合、および化学的補助直接接合」は、選択され得るボンディング方法の例示にすぎないと解される。第4文は、ボンディング方法を選択する際の考慮要因に熱抵抗が存在することを前提とした上で、多くのボンディング方法は、熱抵抗の観点からは問題とはならないことを意味していると理解できる。第5文は、まさに、ボンディング方法を選択する際に考慮要因があることを意味する記載である。
このように、第2文は、ボンディング方法を選択する際の考慮要因を意味していると解されるのであり、しかも、その理解は、第1文?第5文の記載の全体からみて整合的である。よって、上記(1)イ及びウで説示したとおり、当業者は、引用発明1における「熱拡散器」の「サファイア」と「第1の反射器」とをボンディングするに当たり、強力な低光学損失とストレスフリーインターフェースを確かにするために、熱膨張および溶解点の係数におけるミスマッチを可及的に抑制できるようにするとの課題を解決できるような適切なボンディング方法を追求するとの動機があるといえるのである。

(イ)これに対し、請求人は、第2文と第3文との接続関係をもって、これらの文は、「光学的接合、接着、拡散接合、溶解接合、リンギング、ガラス接合、および化学的補助接合」という接合に適した条件を決定する際に「熱膨張および溶解点の係数」を考慮すべきであることを記載するにとどまる旨主張する。
しかしながら、第2文及び第3文の理解は、第1文?第5文の全体に基づいてなされるべきであって、第2文及び第3文のみを取り上げて理解することは相当でない。
また、請求人の主張によれば、引用例1は、「光学的接合」や「接着」といった接合方法を採用する場合でも、それらに適した条件を決定する際に「熱膨張や溶解点の係数」を考慮すべきであることを意味していることになる。しかしながら、「光学的接合」や「接着」といった接合方法が、それを実施するに際して当然に加熱処理を経るものではないことからすると、これらの接合方法に対してまで「熱膨張や溶解点の係数」を考慮すべきとの意味となってしまうことは、不自然である。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(ウ)請求人は、さらに、引用例1には、「光学的接合、接着、拡散接合、溶解接合、リンギング、ガラス接合、および化学的補助直接接合」といった接合方法自体について、その適用に際して特段の課題がある旨の記載が一切なく、よって、引用例1に記載された発明は、これらの接合方法を使用することで完成していると考えることが自然である旨も主張する。
しかしながら、上記(ア)のとおり、第3文は、選択され得るボンディング方法が限定されないことを意味しており、「光学的接合、接着、拡散接合、溶解接合、リンギング、ガラス接合、および化学的補助直接接合」は、選択され得るボンディング方法の例示にすぎないと解される。
また、請求人の主張は、第3文に、「限定されるものではない」との記載があることと整合しない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

エ 請求人は、回答書において、本願発明が高出力のレーザ装置において初めて認識された課題を解決するためのものである旨主張する。
しかしながら、「高出力」の定義が曖昧であるから、このことをもって、本願発明の進歩性を認めることはできない。
それを措くとしても、レーザ装置の出力が「高出力」である点は、本願発明に特定されていないし、本願の明細書及び図面にも記載されていないから、請求人の主張は、本願の明細書等にも根拠をもたないものである。

オ 以上のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-07 
結審通知日 2019-01-08 
審決日 2019-01-21 
出願番号 特願2016-116603(P2016-116603)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 星野 浩一
山村 浩
発明の名称 レーザ装置とその製造方法  
代理人 小曳 満昭  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 秋元 達也  
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