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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F24F
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  F24F
審判 一部申し立て 2項進歩性  F24F
審判 一部申し立て 発明同一  F24F
管理番号 1349645
異議申立番号 異議2018-700434  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-29 
確定日 2019-01-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6237782号発明「空気清浄機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6237782号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-8、10、11〕について訂正することを認める。 特許第6237782号の請求項2ないし4、6ないし8、10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6237782号の請求項1?13に係る特許(以下、総称して「本件特許」という。)についての出願は、2014年10月3日(優先権主張2013年10月22日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月10日にその特許権の設定登録がされ、平成29年11月29日に特許掲載公報が発行され、これに対して平成30年5月29日に特許異議申立人 山田 宏基(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項2?4、6?8及び10に係る特許について特許異議の申立てがされたものである。
そして、その後の手続は以下のとおりである。
・平成30年8月3日付け取消理由通知(発送日:平成30年8月7日)
・平成30年10月5日に特許権者による平成30年10月4日付け意見書並びに平成30年10月4日付け訂正請求書及び同訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲の提出
・平成30年11月14日に申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年10月5日に提出された平成30年10月4日付け訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲を、同訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2?8、10、11について訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を求めるものであって、本件訂正の内容は以下の(1)?(7)のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に、導風装置に関して「前記導風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え、」と追加して記載する。
特許請求の範囲の請求項2に、制御装置に関して「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」と追加して記載する。
請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3?8、10、11も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記導風装置は、基端側が前記ケーシング側に揺動可能に設けられて先端側が前記気流の流路に突出した可動体を備え、前記可動体の揺動位置に応じて前記流路面積を変更する構成とした」と記載されているのを、
「前記第一可動体及び前記第二可動体は、基端側が前記ケーシング側に揺動可能に設けられて先端側が前記気流の流路に突出し、前記第一可動体及び前記第二可動体の揺動位置に応じて前記流路面積を変更する構成とした」に訂正する。
請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5?8も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記導風装置は、前記気流の流路に対して進入及び後退する方向にスライド可能な可動体を備え、前記可動体のスライド位置に応じて前記流路面積を変更する構成とした」と記載されているのを、「前記第一可動体及び前記第二可動体は、前記気流の流路に対して進入及び後退する方向にスライド可能であり、前記第一可動体及び前記第二可動体のスライド位置に応じて前記流路面積を変更する構成とした」に訂正する。
請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5?8も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「少なくとも2個の前記可動体を前記気流の流路を挟んで互いに対向するように配置し、該各可動体が互いに近接及び離間することにより前記流路面積を変更する構成とした」と記載されているのを、「前記第一可動及び前記第二可動体を前記気流の流路を挟んで互いに対向するように配置し、前記第一可動体及び前記第二可動体が互いに近接及び離間することにより前記流路面積を変更する構成とした」に訂正する。
請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6?8も同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「複数の前記可動体が前記吹出口の一部を閉塞させることにより前記流路面積を変更する構成とした」と記載されているのを、「前記第一可動体及び前記第二可動体が前記吹出口の一部を閉塞させることにより前記流路面積を変更する構成とした」に訂正する。
請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10に「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させ、汚染物質の量が前記規定値未満である場合に、前記気流の流路面積を増加させる構成とした」と記載されているのを、「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が前記規定値未満である場合に、前記気流の流路面積を増加させる構成とした」に訂正する。
請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の段落0008に「また、この発明に係る空気清浄機は、空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、吸込口からケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を吹出口から吹出す送風装置と、ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、吹出口から吹出す気流の流路面積を変更することが可能な導風装置と、空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、送風装置及び導風装置を制御する機能を有し、汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量に基いて導風装置により気流の流路面積を変化させる制御装置と、を備えている。」と記載されているのを、「また、この発明に係る空気清浄機は、空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、吸込口からケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を吹出口から吹出す送風装置と、ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、吹出口から吹出す気流の流路面積を変更することが可能な導風装置と、空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、送風装置及び導風装置を制御する機能を有し、汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量に基いて導風装置により気流の流路面積を変化させる制御装置と、を備えている。導風装置は、第一可動体と、第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、第二可動体を動かす第二駆動部とを備える。制御装置は、汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、導風装置により気流の流路面積を減少させる。」に訂正する。

ここで、本件訂正請求は、一群の請求項[2?8、10、11]に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項[2?8、10、11]について請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正後の請求項2において、「前記道風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え、」との記載を更に追加することにより、訂正前の請求項2?8、10、11に係る発明における「道風装置」の構成を限定するものである。
また、訂正事項1は、訂正後の請求項2において、「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」との記載を更に追加することにより、訂正前の請求項2?8、10、11に係る発明における「制御装置」の機能を限定するものである。
そうすると、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
特許明細書等における明細書の段落【0016】、【0017】、【0033】、【0035】、【0039】、【0040】、【0043】及び【0046】並びに図1、2、5及び7には、道風装置が、第一可動体(可動体8A,可動体22Aの一方,可動体32A,可動体32C,可動体42A)と、前記第一可動体を動かす第一駆動部(駆動部8C,駆動部22Bの一方,可動体32A用の駆動部(図示なし),可動体32C用の駆動部(図示なし),可動体42Aの一方用の駆動部(図示なし))と、第二可動体(可動体8B,可動体22Aの他方,可動体32B,可動体32D,可動体42Aの他方)と、前記第二可動体を動かす第二駆動部(駆動部8D,駆動部22Bの他方,可動体32B用の駆動部(図示なし),可動体32D用の駆動部(図示なし),可動体42Aの他方用の駆動部(図示なし))とを備えることが記載されている。
また、特許明細書等における明細書の段落【0028】には、汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、導風装置により気流の流路面積を減少させることが記載されており、これが制御装置によるものであることは明らかである。
したがって、訂正事項1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項2?8、10、11に係る発明における「道風装置」及び「制御装置」について、概念的により下位の内容にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項5、11については特許異議申立てがされていないので、訂正後の請求項5,11に係る発明について、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かの検討をする。ここで、特許異議申立人は甲第1号証の1?甲第6号証を提出しているので、甲第1号証の1?甲第6号証に基づいて検討を行う。
(ア)訂正後の請求項5に係る発明について
訂正後の請求項5は訂正後の請求項2を間接的に引用しており、訂正後の請求項5に係る発明は、訂正後の請求項2に係る発明(後記第3の1における請求項2に記載された事項により特定される本件発明2)の発明特定事項をすべて含むものである。
そうすると、訂正後の請求項5に係る発明は、後記第3の4における4-1(1)ア、4-1(2)ア及び4-2(1)の本件発明2(訂正後の請求項2に係る発明)についての検討を踏まえると、甲第1号証に記載された発明(後記第3の3(1)ウに示した甲1発明)又は甲第2号証に記載された発明(後記第3の3(2)ウに示した甲2発明)と同一ではなく、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第3?5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、また、甲第2号証に記載された発明及び甲第3?5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、さらに、甲第6号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された発明(後記第3の3(3)ウに示した甲6発明)と実質的に同一であるとはいえない。
(イ)訂正後の請求項11に係る発明について
訂正後の請求項11は請求項1又は訂正後の請求項2を間接的に引用しているので、請求項1を引用する場合と、訂正後の請求項2を引用する場合とに分けて検討する。
a 請求項1を引用する場合
訂正後の請求項11に係る発明は、請求項1に係る発明(後記第3の1における請求項1に記載された事項により特定される発明)の発明特定事項をすべて含むものである。
そして、後記第3の4-1における(1)ウ(ア)及び(2)ウにおける本件発明6?8(訂正後の請求項6?8に係る発明)についての検討、並びに、後記第3の4-2における(3)アの本件発明8(訂正後の請求項8に係る発明)についての検討を踏まえると、訂正後の請求項11に係る発明が含む、請求項1に記載された「導風装置」についての「前記第一可動体及び前記第二可動体の組を、複数組、前記気流の流れ方向と直交する方向に並べて配置し、当該複数組の各組の可動体が個別に揺動することにより前記気流の流路断面上の複数個所でそれぞれ前記流路面積を変更する構成とした」との発明特定事項については、甲第1?5号証及び甲第6号証に係る先願明細書等のいずれにも記載されておらず、また、本件特許の優先日前に周知又は慣用の技術であるとはいえない。
そうすると、訂正後の請求項11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明と同一ではなく、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第3?5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、また、甲第2号証に記載された発明及び甲第3?5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、さらに、甲第6号証に係る先願明細書等に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。
b 訂正後の請求項2を引用する場合
訂正後の請求項2を引用する場合の訂正の請求項11に係る発明については、上記(ア)の訂正後の請求項5に係る発明についての検討と同様である。
(ウ)まとめ
そして、他に訂正後の請求項5、11に係る発明について、特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後の請求項5、11に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

(2)訂正事項2?5について
訂正事項2?5は、訂正事項1により、訂正後の請求項2において、「前記道風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え、」及び「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」との記載を追加したことに伴い、それぞれ訂正後の請求項3?6の記載を訂正後の請求項2の記載に整合させるものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものするものであって、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
る。

(3)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正事項1により、訂正後の請求項2において、「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」との記載を追加したことに伴い、訂正後の請求項10において、訂正前の請求項10の記載から重複する記載を削除して、訂正後の請求項2の記載に整合させるものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものするものであって、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(4)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正事項1による特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の記載の整合を図るための訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5?7項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2?8、10、11]について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲は次のとおりである。そして、本件の請求項2?4、6?8、10に係る発明(以下、順に「本件発明2」などという。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項2?4、6?8、10に記載された事項により特定されるとおりのものである。なお、下線は訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲において、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。
「【請求項1】
空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の流路を挟んで互いに対向する少なくとも2個の可動体を有し、該各可動体が互いに近接及び離間するように揺動することにより前記気流の流路面積及び吹出方向を変更することが可能な導風装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記少なくとも2個の可動体は、前記吹出口の開口端に取付けられた第一可動体と、前記第一可動体と反対側の前記吹出口の開口端に取付けられた第二可動体とを含み、
前記導風装置は、前記第一可動体を揺動させる第一駆動部と、前記第二可動体を揺動させる第二駆動部とを備え、
前記第一可動体及び前記第二可動体の組を、複数組、前記気流の流れ方向と直交する方向に並べて配置し、当該複数組の各組の可動体が個別に揺動することにより前記気流の流路断面上の複数個所でそれぞれ前記流路面積を変更する構成とした空気清浄機。
【請求項2】
空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の流路面積を変更することが可能な導風装置と、
空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する機能を有し、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量に基いて前記導風装置により前記気流の流路面積を変化させる制御装置と、
を備え、
前記導風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え、
前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる空気清浄機。
【請求項3】
前記第一可動体及び前記第二可動体は、基端側が前記ケーシング側に揺動可能に設けられて先端側が前記気流の流路に突出し、前記第一可動体及び前記第二可動体の揺動位置に応じて前記流路面積を変更する構成とした請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記第一可動体及び前記第二可動体は、前記気流の流路に対して進入及び後退する方向にスライド可能であり、前記第一可動体及び前記第二可動体のスライド位置に応じて前記流路面積を変更する構成とした請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項5】
少なくとも2個の前記可動体を前記気流の流路を挟んで互いに対向するように配置し、該各可動体が互いに近接及び離間することにより前記流路面積を変更する構成とした請求項3または4に記載の空気清浄機。
【請求項6】
前記第一可動体及び前記第二可動体が前記吹出口の一部を閉塞させることにより前記流路面積を変更する構成とした請求項1,3から5のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記送風装置により前記吹出口から吹出す空気の風量を一定に保持した状態で、当該空気の風速を前記導風装置により変化させる構成とした請求項1から6のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項8】
前記吹出口から吹出す空気の風量と共に当該空気の風速を、前記導風装置により変化させる構成とした請求項1から7のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項9】
空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、
前記送風装置により前記吹出口から吹出す空気の風量を一定に保持した状態で当該空気の風速を変化させる風量保持制御手段と、を備え、
前記風量保持制御手段は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させ、汚染物質の量が前記規定値未満である場合に、前記気流の流路面積を増加させる構成とした請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項10】
前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が前記規定値未満である場合に、前記気流の流路面積を増加させる構成とした請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項11】
室内の人を検出する人検出装置と、室内の障害物を検出する障害物検出装置と、室内の広さを検出する広さ検出装置のうち少なくとも1つの検出装置を備え、前記制御装置は、当該検出装置及び前記汚染物質検出装置の検出結果に基いて前記吹出口から吹出す空気の吹出方向及び風量を制御する構成とした請求項9または10に記載の空気清浄機。
【請求項12】
空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の流路を挟んで互いに対向する少なくとも2個の可動体を有し、該各可動体が互いに近接及び離間するように揺動することにより前記気流の流路面積及び吹出方向を変更することが可能な導風装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記少なくとも2個の可動体の組を、複数組、前記気流の流れ方向と直交する方向に並べて配置し、当該複数組の各組の可動体が個別に揺動することにより前記気流の流路断面上の複数個所でそれぞれ前記流路面積を変更する構成とした空気清浄機。
【請求項13】
空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の流路を挟んで互いに対向する少なくとも2個の可動体を有し、該各可動体が互いに近接及び離間するように揺動することにより前記気流の流路面積及び吹出方向を変更することが可能な導風装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する制御装置と、
空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、
前記送風装置により前記吹出口から吹出す空気の風量を一定に保持した状態で当該空気の風速を変化させる風量保持制御手段と、
を備え、
前記風量保持制御手段は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させ、汚染物質の量が前記規定値未満である場合に、前記気流の流路面積を増加させる構成とした空気清浄機。」

2 取消理由通知に記載した取消理由の概要
平成30年8月3日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は以下のとおりである。なお、当該取消理由は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由を全て含んでいる。
(1)理由1(新規性)
本件特許の請求項2、3、7及び8に係る発明は、下記甲第1号証の1又は甲第2号証に係る本件特許の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するから、本件特許の請求項2、3、7及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)理由2(進歩性)
本件特許の請求項2?4及び6?8に係る発明は、下記甲第1号証の1又は甲第2号証並びに甲第3?5号証に係る本件特許の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前(優先日前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項2?4及び6?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)理由3(拡大先願)
本件特許の請求項2、3、8及び10に係る発明は、その出願の日(優先日)前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記甲第6号証に係る先願明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願の日(優先日)前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項2、3、8及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

<甲各号証>
甲第1号証の1:パナソニック株式会社製 加湿空気清浄機「F-VXH70/F-VXH80」の取扱説明書(以下、「甲1の1」という。)
甲第1号証の2:加湿空気清浄機「F-VXH70/F-VXH80」に関するプレスリリースを表示したWebページ,インターネット<URL:https://news.panasonic.com/jp/press/data/2012/07/jn120724-3/jn120724-3.html>(以下、「甲1の2」という。)
甲第1号証の3:加湿空気清浄機「F-VXH70」の「レビュー評価・評判」を表示したWebページ,インターネット<URL:http://review.kakaku.com/review/J0000001503/>(以下、「甲1の3」という。)
甲第2号証:特開2009-250596号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:特開2010-164268号公報(以下、「甲3」という。)
甲第4号証:実公平4-34349号公報(以下、「甲4」という。)
甲第5号証:特許第4975019号公報(以下、「甲5」という。)
甲第6号証:特開2014-66449号公報(以下、「甲6」という。)

3 甲各号証について
(1)甲1の1について
ア 甲1の1の記載事項
甲1の1は、甲1の2及び甲1の3の記載によると、本件特許の優先日前である2012年(平成24年)9月10日に頒布された刊行物と認められるところ、甲1の1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「加湿空気清浄機
品番F-VXH70
品番F-VXH80」(1頁)

(イ)「

」(6頁)

(ウ)「

」(8頁)

(エ)「

」(10頁)

(オ)「

」(13頁)

(カ)「

」(16?18頁)

イ 上記アから分かること
(ア)上記ア(ア)?(カ)によると、甲1の1には、加湿空気清浄機が記載されていることが分かる。
(イ)上記ア(イ)によると、加湿空気清浄機は、空気の吸気口及び吹出口を有するケーシングを備えることが分かる。
(ウ)上記ア(カ)によると、加湿空気清浄機は、ケーシングの吹出口から吹き出す空気による気流が生じるのであるから、吸気口からケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置を備えることは明らかである。
(エ)上記ア(ウ)及び(オ)によると、加湿空気清浄機は、ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する脱臭フィルター及び集じんフィルターを備えることが分かる。
(オ)上記ア(イ)及び(カ)によると、加湿空気清浄機は、吹出口から吹出す気流の方向を変更することが可能なルーバーを備えること、並びに、前記ルーバーは、前ルーバーと、後ろルーバーとを備えることが分かる。
そして、上記ア(カ)によると、17頁に示されたA?Fのルーバーの動きにおいて、前ルーバーと後ろルーバーとは異なった動作をすることから、前記ルーバーは、前ルーバーを動かす駆動部と、後ろルーバーを動かす駆動部とを備えることが分かる。
(カ)上記ア(イ)及び(カ)によると、加湿空気清浄機は、空気中のニオイ、煙、ハウスダスト等の量を検出するニオイセンサー及びハウスダストセンサーを有することが分かる。
(キ)上記ア(エ)及び(カ)によると、加湿空気清浄機は、送風装置及びルーバーを制御する機能を有し、前記ニオイセンサー及びハウスダストセンサーにより検出されたニオイ、煙、ハウスダスト等の量に基いて前記ルーバーにより気流の方向を変化させる制御装置を備え、前記制御装置は、前記ニオイセンサー及びハウスダストセンサーにより検出されたニオイ、煙、ハウスダスト等の量と、前記ルーバー動きとの関係が、
a きれいな状態の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーをスイング低速
b ニオイまたは煙を感知の場合、前ルーバーを上向き、後ろルーバーを上向き
c ハウスダストを感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーを前方
d ニオイまたは煙を少量感知、ハウスダストを少量感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーを上向き
e ニオイまたは煙を少量感知、ハウスダストを多量感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーをスイング
f ニオイまたは煙を多量感知、ハウスダストを少量感知の場合、前ルーバーをスイング、後ろルーバーを上向き
g ニオイまたは煙を多量感知、ハウスダストを多量感知の場合、前ルーバーをスイング、後ろルーバーをスイング
となるようにすることが分かる(特に、17頁を参照。)。

ウ 甲1発明
上記ア及びイを総合すると、甲1の1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「空気の吸気口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸気口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する脱臭フィルター及び集じんフィルターと、
前記吹出口から吹出す気流の方向を変更することが可能なルーバーと、
空気中のニオイ、煙、ハウスダスト等の量を検出するニオイセンサー及びハウスダストセンサーと、
前記送風装置及び前記ルーバーを制御する機能を有し、前記ニオイセンサー及びハウスダストセンサーにより検出されたニオイ、煙、ハウスダスト等の量に基いて前記ルーバーにより前記気流の方向を変化させる制御装置と、
を備え、
前記ルーバーは、前ルーバーと、前記前ルーバーを動かす駆動部と、後ろルーバーと、前記後ろルーバーを動かす駆動部とを備え、
前記制御装置は、前記ニオイセンサー及びハウスダストセンサーにより検出されたニオイ、煙、ハウスダスト等の量と、前記ルーバー動きとの関係が、
a きれいな状態の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーをスイング低速
b ニオイまたは煙を感知の場合、前ルーバーを上向き、後ろルーバーを上向き
c ハウスダストを感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーを前方
d ニオイまたは煙を少量感知、ハウスダストを少量感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーを上向き
e ニオイまたは煙を少量感知、ハウスダストを多量感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーをスイング
f ニオイまたは煙を多量感知、ハウスダストを少量感知の場合、前ルーバーをスイング、後ろルーバーを上向き
g ニオイまたは煙を多量感知、ハウスダストを多量感知の場合、前ルーバーをスイング、後ろルーバーをスイング
となるようにする加湿空気清浄機。」

(2)甲2について
ア 甲2の記載事項
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は、理解の一助として当審において付したものである。
(ア)「【請求項1】
本体の前面または側面に設けた吸込口と、この吸込口に連通して本体内の前部に設けた清浄フィルターと、この清浄フィルターの後方で、かつ上下に配置した送風機および加湿手段と、前記本体の天面に設けた吹出口と、この吹出口に設けた風量調整ルーバーを有し、前記送風機は両側面に第1、第2の吸気口を備えたケーシングと、この第1、第2の吸気口に対応する第1、第2の多翼部を一体に備えた多翼ファンと、この多翼ファンを回転可能に軸支するファンモータからなり、前記本体は前記吸込口、清浄フィルター、第1の吸気口、第1の多翼部および吹出部を経由する清浄風路と、前記吸込口、清浄フィルター、加湿手段、第2の吸気口、第2の多翼部および吹出部を経由する加湿風路とを備え、前記清浄風路と加湿風路を前記吹出口にて合流させた吹出気流を、前記風量調整ルーバーで風量調整してなる加湿機能付空気清浄機。
・・・
【請求項6】
室内の空気汚染度を検出する空気汚れセンサーを備え、この空気汚れセンサーの空気汚染度に応じて、風量調整ルーバーを制御してなる請求項1または2記載の加湿機能付空気清浄機。
【請求項7】
室内の湿度を検出する湿度センサーと、室内の空気汚染度を検出する空気汚れセンサーを備え、前記湿度センサーの検出した湿度と、前記空気汚れセンサーの空気汚染度に応じて、風量調整ルーバーまたは/かつ駆動モータを制御してなる請求項1?3のいずれかに記載の加湿機能付空気清浄機。」

(イ)「【0005】
このような従来の加湿機能付空気清浄機では、ケーシング110の一部を開放して形成された加湿流路107に加湿手段108が配置されているので、加湿運転をする場合は送風効率が悪くなり、空気清浄風量および加湿風量ともに不充分となり、冬季の乾燥シーズンにおいて、室内の空気浄化を確実に行ない、かつ湿度を適正に保つのは難しいという課題がある。
【0006】
また、空気汚染度や湿度の室内環境が変化した場合に、その変化に対応して送風量や加湿量を調整するのが難しく、そのまま運転を継続していると、室内の空気環境がアンバランスになり、快適性を損なうという課題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、冬季の乾燥シーズンにおいて空気清浄機能および加湿機能を確実に発揮するとともに、空気汚染度や湿度の室内環境の変化に適正に対応して、運転条件を変更することにより快適性を保つことのできる加湿機能付空気清浄機を提供することを目的とする。」

(ウ)「【0024】
本発明の請求項1記載の発明は、本体の前面または側面に設けた吸込口と、この吸込口に連通して本体内の前部に設けた清浄フィルターと、この清浄フィルターの後方で、かつ上下に配置した送風機および加湿手段と、前記本体の天面に設けた吹出口と、この吹出口に設けた風量調整ルーバーを有し、前記送風機は両側面に第1、第2の吸気口を備えたケーシングと、この第1、第2の吸気口に対応する第1、第2の多翼部を一体に備えた多翼ファンと、この多翼ファンを回転可能に軸支するファンモータからなり、前記本体は前記吸込口、清浄フィルター、第1の吸気口、第1の多翼部および吹出部を経由する清浄風路と、前記吸込口、清浄フィルター、加湿手段、第2の吸気口、第2の多翼部および吹出部を経由する加湿風路とを備え、前記清浄風路と加湿風路を前記吹出口にて合流させた吹出気流を、前記風量調整ルーバーで風量調整してなる構成としたものであり、省スペースで十分な送風量を確保することができ、オールシーズンに渡り空気清浄機能を発揮するとともに、冬季の乾燥シーズンにおいて空気清浄機能を損なわずに大容量の加湿機能を有効に使用することができ、さらに空気汚染度や湿度の室内環境の変化に対応して、送風運転や加湿運転の仕様を変化させて、快適な環境を維持できるという作用を有する。
【0025】
また、請求項2記載の発明は、風量調整ルーバーは前記吹出口の開口面積を調整可能に設けるとともに、開閉可能に設けたものであり、風量調整ルーバーが吹出口を覆うように傾斜角度を変化させて、吹出口の開口面積を狭く調整するとともに、風量調整ルーバーに風圧がかかるようにすることにより、吹出気流の送風量を少なく調節することができるという作用を有する。」

(エ)「【0029】
また、請求項6記載の発明は、室内の空気汚染度を検出する空気汚れセンサーを備え、この空気汚れセンサーの空気汚染度に応じて、風量調整ルーバーを制御したものであり、部屋の空気汚染度に応じて、風量調整ルーバーの角度を吹出口に近づけるように調整することにより、室内の空気汚染度が上昇しない間は、吹出気流の送風量を少なく調整して、無駄な運転を省き、適切な空気清浄運転ができるという作用を有する。
【0030】
また、請求項7記載の発明は、室内の湿度を検出する湿度センサーと、室内の空気汚染度を検出する空気汚れセンサーを備え、前記湿度センサーの検出した湿度と、前記空気汚れセンサーの空気汚染度に応じて、風量調整ルーバーまたは/かつ駆動モータを制御してなるものであり、部屋の湿度および空気汚染度に応じて、風量調整ルーバーの角度調整または加湿フィルターの回転調整により、吹出気流の送風量または加湿フィルターの加湿量を調整して、空気清浄運転および加湿運転を適切に制御できるという作用を有する。」

(オ)「【0033】
(実施の形態1)
図1?図5に示すように、本体1の前面または側面に吸込口2を設け、本体1の天面に吹出口8を設け、吸込口2に連通して本体1内の前部に清浄フィルター3を設け、この清浄フィルター3の後方に送風機4および加湿手段5を収納している。送風機4および加湿手段5は本体1内で上下に重ねて配置され、加湿手段5は本体1に着脱可能に装着される水槽6に収納され、加湿手段5に給水する給水タンク7が水槽6に収納されている。
【0034】
また加湿手段5は水平横長の円筒形状をなす加湿フィルター20と、この加湿フィルターを水平軸を中心に回動可能に支持する支持枠21と、この支持枠21を回転する駆動モータ22とで構成されている。送風機4は両側面に第1の吸気口9と第2の吸気口10をそれぞれ備えた第1、第2のケーシング11、12と、この第1、第2の吸気口に対応する第1、第2の多翼部を一体に備えた多翼ファン13と、この多翼ファン13を回転可能に軸支する送風機4とで構成されている。本体1は吸込口2、清浄フィルター3、第1の吸気口9、第1の多翼部14および第1の吹出口15を経由する清浄風路16と、吸込口2、清浄フィルター3、加湿手段5、第2の吸気口10、第2の多翼部17および第2の吹出口18を経由する加湿風路19を有している。
【0035】
また、風量調整ルーバー23は吹出口8を覆うように回動可能に設け、吹出口8の開口面積を調整可能に設けるとともに、開閉可能に設けている。このことにより、清浄風路16と加湿風路19を吹出口8にて合流させた吹出気流は、風量調整ルーバー23で風量調整できる構成としている。
【0036】
上記構成において、給水タンク7より水槽6に給水したのち、運転を開始すると、送風機4および加湿フィルター20が駆動し、送風機4により吸気口2より汚染されている室内の空気が吸気され、清浄フィルター3により汚染空気が清浄化される。このとき、清浄フィルター3通過した大部分の清浄空気は、第1の吸気口9より清浄風路16を通過して、天面に設けた吹出口8から吐出される。また、残りの清浄空気は、本体1の下部に設けた加湿フィルター20を通過するときに水分が供給されて加湿空気となり、上方向に風向変更する加湿風路19を経由して、天面に設けた吹出口8から清浄空気とともに吐出されることとなる。
【0037】
このように、本体1内に清浄風路16と加湿風路19を設けて、両側面に第1の吸気口9と第2の吸気口10をそれぞれ備えた送風機4に接続して、本体1天面の吹出口8から送風することにより、使用者にドラフト感(冷風感)を与えることなく、省スペースで十分な送風量を確保することができ、オールシーズンに渡り空気清浄機能を発揮するとともに、冬季の乾燥シーズンにおいて空気清浄機能を損なわずに大容量の加湿機能を有効に利用することができる。
【0038】
また、加湿手段として水平軸周りに回転可能に設けた加湿フィルター20を用いることにより、加湿フィルター20の表面が常に洗浄されるので水垢などの付着が少なく、本来の加湿機能を充分に発揮することができ、水垢や汚れによる劣化を防いで寿命を長く維持できるとともに、加湿フィルター20のメンテナンスも容易に行なうことができる。
【0039】
また、清浄風路16と加湿風路19を吹出口8にて合流させた吹出気流は、風量調整ルーバー23を吹出口8方向に倒すことにより、吹出風量が少なく調整され、吹出口8から離れる方向に戻すことにより、吹出風量が多く調整されるものである。
【0040】
したがって空気汚染度や湿度の室内環境の変化に対応して、風量調整ルーバー23を回動することにより、送風運転や加湿運転の仕様を変化させて、快適な環境を維持することができるものである。
【0041】
なお、本実施の形態では、吹出風量の調整は風量調整ルーバー23の回動角度を変更するのみとしたが、通常は送風機4の回転制御により風量調整を行なうのが一般的であり、両者を併用することにより、さらに有効に風量調整ができるものである。
【0042】
(実施の形態2)
図6に示すように、室内の湿度を検出する湿度センサー24を備え、この湿度センサー24の検出湿度に応じて、風量調整ルーバー23を回動することにより、風量を調整するだけでなく、風向変更できるようにしている。また、加湿フィルター20の駆動モータ22についても、湿度センサー24の検出湿度に応じて、駆動制御できるようにしている。
【0043】
また、室内の空気汚染度を検出する空気汚れセンサー25を備え、この空気汚れセンサー25の空気汚染度に応じて、風量調整ルーバー23を回動制御できるようにしている。
【0044】
また、湿度センサー24と空気汚れセンサー25を備え、湿度センサー24の検出した湿度および空気汚れセンサー25の空気汚染度に応じて、風量調整ルーバー23または/かつ駆動モータ22を制御できるようにしている。
【0045】
また、風量調整ルーバー23は吹出口8にて合流させた吹出気流を、風向変更可能とした構成としている。
【0046】
上記構成において、まず、加湿運転が行なわれて、部屋の湿度が適正範囲になったときは、つぎに風量調整ルーバー23を倒す方向に吹出口8に近づけるように調整を行なうことにより、吹出口8からの風量および加湿量を低減することができ、同様に、部屋の湿度が適正範囲になったときに、加湿フィルター20の支持枠を回転する駆動モータ22を停止することにより、加湿フィルター20には給水されなくなるので、加湿付加量を低減することができ、室内の湿度が上昇しないように抑制して、室内の湿度に合わせた適切な加湿運転ができるものである。
【0047】
また、空気清浄運転が行なわれて、部屋の空気汚染度が適正範囲になったときは、つぎに部屋の空気汚染度に応じて、風量調整ルーバー23の角度を吹出口8に近づけるように調整することにより、室内の空気汚染度が上昇しない間は、吹出気流の送風量を少なく調整して、無駄な運転を省き、適切な空気清浄運転ができるものである。
【0048】
また、部屋の湿度および空気汚染度に応じて、風量調整ルーバー23の角度調整または加湿フィルター20の回転調整により、吹出気流の送風量または加湿フィルター20の加湿量を調整して、空気清浄運転および加湿運転を適切に制御できるものである。
【0049】
また、風量調整ルーバー23を吹出口8方向に傾斜して小風量で運転するときは、吹出気流の送風方向も水平方向に近い居住空間に向けられるので、小風量であっても快適性を保つ送風運転となり、使用者にとって風量調整と風向制御が同時にできるので、操作性が良くなるものである。
【0050】
なお、本実施の形態では、湿度センサー24または空気汚れセンサー25の検出値に応じて風量調整ルーバー23を回動制御しているが、送風機4の回転制御との併用により、さらにきめ細かい有効な風量調整をすることができるものである。」

イ 上記アから分かること
(ア)上記ア(ア)?(オ)及び図1?6の記載によると、甲2には、加湿機能付空気清浄機が記載されていることが分かる。
(イ)上記ア(ア)、(ウ)及び(オ)並びに図1?6の記載によると、加湿機能付空気清浄機は、空気の吸込口2及び吹出口8を有する本体1と、前記吸込口2から前記本体1の内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口8から吹出す送風機4と、前記本体1の内部を流れる空気を清浄化する清浄フィルター3とを備えることが分かる。
(ウ)上記ア(ア)及び(ウ)?(オ)並びに図1?6の記載によると、加湿機能付空気清浄機は、吹出口8の開口面積を調整することが可能な風量調整ルーバー23と、空気汚染度を検出する空気汚れセンサー25と、送風機4及び前記風量調整ルーバー23を制御する機能を有し、前記空気汚れセンサー25により検出された空気汚染度に基いて前記風量調整ルーバー23により前記吹出口8の開口面積を調整する制御装置と、を備えることが分かる。
(エ)上記ア(オ)及び図1?6の記載と、上記(ウ)とを合わせてみると、風量調整ルーバー23は、回動されて吹出口8方向に倒されたり、吹出口8から離れる方向に戻されるように回動制御されるのであるから、風量調整ルーバー23は、回動可能なルーバー本体と、前記回動可能なルーバー本体を動かす駆動部を備えることは明らかである。

(オ)上記ア(ウ)?(オ)によると、制御装置は、室内の空気汚染度が上昇しない間は、風量調整ルーバーの角度を吹出口に近づけるようにして、吹出口の開口面積を狭く調整することにより、吹出気流の送風量を少なく調節することが分かる。

ウ 甲2発明
上記ア及びイを総合すると、甲2には、次の事項からなる発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
「空気の吸込口2及び吹出口8を有する本体1と、
前記吸込口2から前記本体1の内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口8から吹出す送風機4と、
前記本体1の内部を流れる空気を清浄化する清浄フィルター3と、
前記吹出口8の開口面積を調整することが可能な風量調整ルーバー23と、
空気汚染度を検出する空気汚れセンサー25と、
前記送風機4及び前記風量調整ルーバー23を制御する機能を有し、前記空気汚れセンサー25により検出された空気汚染度に基いて前記風量調整ルーバー23により前記吹出口8の開口面積を調整する制御装置と、
を備え、
前記風量調整ルーバー23は、回動可能なルーバー本体と、前記回動可能なルーバー本体を動かす駆動部とを備え、
前記制御装置は、室内の空気汚染度が上昇しない間は、前記風量調整ルーバー23の角度を吹出口8に近づけるようにして、吹出口8の開口面積を狭く調整することにより、吹出気流の送風量を少なく調節する加湿機能付空気清浄機。」

(3)甲6について
ア 甲6の記載事項
本件特許の優先日前に出願された、甲6(特開2014-66449号公報)に係る特願2012-212490号の先願明細書等には、図面(図1?9)とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は、理解の一助として当審において付したものである。
(ア)「【請求項1】
吸気口及び送気口を有し、該吸気口から送気口に至る通気路を設けてあるハウジング内に、前記吸気口から吸入される空気を前記送気口を通じて所定方向へ送り出す送風手段を備える空気調和機において、
空気調和動作に係る動作情報を取得する手段と、
取得した動作情報に基づいて前記送気口の開口面積を調整する調整手段と
を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
帯電粒子を発生させて前記通気路へ放出する帯電粒子放出手段を備え、
前記動作情報として、前記通気路への帯電粒子の放出量に係る情報を取得するようにしてあり、
前記調整手段は、前記帯電粒子の放出量の多寡に応じて、前記送気口の開口面積を調整するようにしてあることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記帯電粒子の放出量を多くする場合、前記調整手段は、前記送気口の開口面積を小さくするようにしてあることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記吸気口を通じて吸入した空気を浄化する浄化フィルタを備え、
前記動作情報として、前記浄化フィルタによる空気の浄化速度に係る情報を取得するようにしてあり、
前記調整手段は、前記浄化速度の高低に応じて、前記送気口の開口面積を調整するようにしてあることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の空気調和機。
【請求項5】
前記送風手段による送風量を制御する制御手段を備え、
前記動作情報として、前記送風手段による送風量に係る情報を取得するようにしてあり、
前記調整手段は、前記送風手段による送風量の多寡に応じて、前記送気口の開口面積を調整するようにしてあることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の空気調和機。
【請求項6】
前記吸気口を通じて吸入した空気の汚染度を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記検出手段が検出した空気の汚染度に応じて、前記送風手段による送風量を制御するようにしてあることを特徴とする請求項5に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記調整手段は、
前記所定方向と交差する軸の回りに回動可能に支持され、異なる2つの回動停止位置にて前記通気路を構成する壁面部からの距離が異なり、夫々が前記壁面部と対向する2つの対向面を備えた蓋部材と、
該蓋部材を前記軸の回りに回動させる駆動手段と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1つに記載の空気調和機。」

(イ)「【0001】
本発明は、空気浄化機能を有する空気調和機に関する。」

(ウ)「【0011】
本発明に係る空気調和機は、吸気口及び送気口を有し、該吸気口から送気口に至る通気路を設けてあるハウジング内に、前記吸気口から吸入される空気を前記送気口を通じて所定方向へ送り出す送風手段を備える空気調和機において、空気調和動作に係る動作情報を取得する手段と、取得した動作情報に基づいて前記送気口の開口面積を調整する調整手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る空気調和機は、帯電粒子を発生させて前記通気路へ放出する帯電粒子放出手段を備え、前記動作情報として、前記通気路への帯電粒子の放出量に係る情報を取得するようにしてあり、前記調整手段は、前記帯電粒子の放出量の多寡に応じて、前記送気口の開口面積を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る空気調和機は、前記帯電粒子の放出量を多くする場合、前記調整手段は、前記送気口の開口面積を小さくするようにしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る空気調和機は、前記吸気口を通じて吸入した空気を浄化する浄化フィルタを備え、前記動作情報として、前記浄化フィルタによる空気の浄化速度に係る情報を取得するようにしてあり、前記調整手段は、前記浄化速度の高低に応じて、前記送気口の開口面積を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る空気調和機は、前記送風手段による送風量を制御する制御手段を備え、前記動作情報として、前記送風手段による送風量に係る情報を取得するようにしてあり、前記調整手段は、前記送風手段による送風量の多寡に応じて、前記送気口の開口面積を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る空気調和機は、前記吸気口を通じて吸入した空気の汚染度を検出する検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段が検出した空気の汚染度に応じて、前記送風手段による送風量を制御するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る空気調和機は、前記調整手段は、前記所定方向と交差する軸の回りに回動可能に支持され、異なる2つの回動停止位置にて前記通気路を構成する壁面部からの距離が異なり、夫々が前記壁面部と対向する2つの対向面を備えた蓋部材と、該蓋部材を前記軸の回りに回動させる駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、例えば、イオンの放出量を増加させて空気浄化能力を高める場合、又は室内での空気の循環速度を上げて空気浄化能力を高める場合、送気室の末端に設けられたルーバを所定の回動位置で停止させ、送気室の壁面とルーバの対向面とにより形成される送気口の開口面積を小さくするように制御を行う。送気口の開口面積を小さくすることにより、風速が大きくなるので、イオンの放出量、空気の循環速度が増加し、空気浄化効率が高まる。」

(エ)「【0021】
本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は本実施の形態に係る空気調和機を示す正面側の斜視図、図2は側断面図、図3は背面側の斜視図である。なお、図2において、紙面左側は空気調和機の正面側(前側)であり、紙面右側は空気調和機の背面側(後側)である。
【0022】
空気調和機は、縦型直方体状のハウジング1を備え、壁及び床を有する室内において、ハウジング1の背面側が壁に対面する姿勢で床に設置される。本実施の形態に係る空気調和機は、設置された室内の臭気を脱臭する空気調和動作、室内の塵、ホコリ、花粉などを集塵する空気調和動作、帯電粒子である正イオン及び負イオン(以下、単にイオンという)を放出する空気調和動作、室内を加湿する空気調和動作を可能としている。
【0023】
ハウジング1の内部には、第1通風路10、第2通風路20、及び制御室90が、互いに区画されて設けられている。
【0024】
第1通風路10は、垂直方向の隔壁14及び後ろ斜め方向の隔壁15により更に区画されており、隔壁14より後側(背面側)のフィルタ収容室11、2つの隔壁14,15の間に位置する加湿室12、及び隔壁15より前側(前面側)の送気室13を備える。ハウジング1の後面には、多数の吸気口17,17,17,…を有する後面パネル16が着脱可能に取り付けられる。フィルタ収容室11は、この後面パネル16に開設された多数の吸気口17,17,17,…を介して外部に連通する。また、送気室13は、ハウジング1の天面に開設された送気口18を介して外部に連通する。加湿室12は、隔壁14及び15の下部に設けた開口を経て、フィルタ収容室11及び送気室13の双方に連通するように構成されている。
【0025】
フィルタ収容室11には、脱臭フィルタ31及び集塵フィルタ32が積層配置してある。脱臭フィルタ31は、例えば、不織布に活性炭を分散保持させてなり、通気中の臭い成分を吸着、除去する作用をなす。集塵フィルタ32は、例えば、公知のHEPA(High Efficiency Particulate Air )フィルタであり、通気中に含まれる微細な塵埃を捕集、除去する作用をなす。脱臭フィルタ31及び集塵フィルタ32は、合成樹脂製の矩形の枠体に各別に一体化され、後面パネル16の前側に設けたフィルタ室11に嵌め込まれている。
【0026】
送風手段としての送風ファン4は、例えば、シロッコファンであり、羽根車40と、羽根車40を駆動するファンモータ41とを備えている。ファンモータ41は、送気室13を構成する壁面に固定されている。羽根車40は、送気室13内に突出するファンモータ41の出力端に固定され、隔壁14,15の下部に設けた開口に対向配置してある。送風ファン4の羽根車40は、ファンモータ41の駆動によって回転する。羽根車40が回転した場合、図2の白抜矢符で示すように、後面パネル16に設けた吸気口17,17,17,…を経て、フィルタ収容室11の内部に外気が導入される。フィルタ収容室11に導入された外気は、フィルタ収容室11の内部を前方向に流れ、加湿室12を経て羽根車40に吸い込まれ、上向きに方向を変えて送気室13の内部に導出される。そして、送気室13を斜め後ろ方向に通流し、送気室13末端の送気口18を経て外部に送り出される。
【0027】
このように、フィルタ収容室11、加湿室12及び送気室13は、送風ファン4の動作に応じて前述した空気の流れが生じる第1通風路10を構成する。脱臭フィルタ31及び集塵フィルタ32は、第1通風路10の上流側に位置しており、吸気口17,17,17,…を経てフィルタ収容室11に導入される外気は、脱臭フィルタ31の通過により臭い成分を除去され、集塵フィルタ32の通過により塵埃を除去された清浄な空気となって、送気室13の末端の送気口18を経て送り出される。」

(オ)「【0040】
本実施の形態に係る空気調和機は、第1通風路10の末端に送気口18の開口面積を調整するためのルーバ7を設けていることを特徴とする。このルーバ7は、空気調和機の空気調和動作に応じて送気口18の開口面積を調整するものであり、風向については殆ど変化させないように構成されている。
【0041】
図4?図6はルーバ7の構成を示す部分拡大断面図である。図4は送気口18を完全に閉じた状態(以下、閉状態という)、図5は送気口18を全開にした状態(以下、開状態という)、図6は送気口18を少しだけ開口した状態(以下、調整状態という)を示している。
【0042】
ルーバ7は、閉状態にて送気口18を閉塞する蓋部材70と、及び蓋部材70を横方向の回動軸72のまわりに回動可能に支持する左右一対の支持部材71,71とを備え、電動モータ75(図7を参照)の駆動力によって回動軸72のまわりに回動するように構成されている。蓋部材70は、開状態における回動停止位置にて、通風路13の前側の壁面13aと対向する第1対向面70a、及び調整状態における回動停止位置にて、通風路13の後側の壁面13bと対向する第2対向面70bを備える。
【0043】
図5及び図6に示すように、第1対向面70aは、開状態において通風路13の壁面13aと略平行となるように形成され、第2対向面70bは、調整状態において通風路13の壁面13aと略平行となるように形成されており、しかも、それぞれの状態における壁面13aからの距離は第2対向面70bの方が短くなるように形成されている。このため、ルーバ7の蓋部材70を回動させることにより、風向を変化させることなく、開口面積のみを変化させることが可能であり、送風ファン4により同じ風量の空気流を発生させている場合であっても、送気口18から送り出される空気流の風速は、開状態と比べ調整状態の方が大きくなる。
【0044】
本実施の形態に係る空気調和機は、複数の動作モードを有しており、動作モードに応じて定まる空気調和動作に基づいて、送気口18の開口面積を調整する構成としている。空気調和機が備える動作モードには、室内の空気が急に汚れたときにイオンの放出量を増大させるイオンシャワーモード、室内の塵やほこりを急速に吸塵する急速吸塵モード等が含まれる。空気調和機の動作モードは、利用者の操作により手動で切り替えられるか、又は各種センサの出力に基づき自動で切り替えられる。
【0045】
実施の形態1では、イオンシャワーモードによりイオンの放出量を増大させる際に、送気口18の開口面積を小さくする構成について説明を行う。」

(カ)「【0053】
空気調和機は、第1通風路10に設けられたファンモータ41を駆動するモータ駆動回路131を備える。モータ駆動回路131は、制御部100からの制御信号に基づいてファンモータ41の駆動を制御することにより、制御部100からの指示に応じた回転速度で送風ファン4を回転させたり、送風ファン4の回転を停止させたりする制御を行う。
【0054】
モータ駆動回路132は、加湿フィルタ52を回転させるための電動モータ58を駆動する。モータ駆動回路132は、制御部100からの制御信号に基づいて電動モータ58の駆動を制御することにより、加湿フィルタ52を所定の回転速度で回転させたり、回転を所定の回転位置で停止させたりする制御を行う。
【0055】
モータ駆動回路133は、ルーバ7を回動させるための電動モータ75を駆動する。モータ駆動回路133は、制御部100からの制御信号に基づいて電動モータ75の駆動を制御することにより、ルーバ7を横方向の回動軸72のまわりに回動させ、閉状態、開状態、調整状態の何れかの回動停止位置にてルーバ7を停止させる制御を行う。
【0056】
モータ駆動回路134は、第2通風路20に設けられたファンモータ241を駆動する。モータ駆動回路134は、制御部100からの制御信号に基づいてファンモータ241の駆動を制御することにより、制御部100からの指示に応じた回転速度で送風ファン24を回転させたり、送風ファン24の回転を停止させたりする制御を行う。
【0057】
更に、空気調和機は、各種センサとして、イオンセンサ101、温湿度センサ102、臭気センサ103、埃センサ104を備える。
【0058】
イオンセンサ101は、送気室13においてイオン発生器35よりも下流側に設置され、送気室13を通流するイオンを検出し、検出結果を適宜の時間間隔で制御部100へ繰り返し出力する。この検出結果は、送気室13を通流するイオンの多寡を示すものである。イオンセンサ101で検出したイオンの量が所定量を下回る場合、イオン発生器35に汚損又は劣化等が生じていることがわかる。
【0059】
温湿度センサ102は、例えば、ハウジング10内においてフィルタ収容室11の側壁上部に設置されている。温湿度センサ102は、吸気口17から吸入される空気の温度及び湿度を検出し、相対湿度を計測する。
【0060】
臭気センサ103は、温湿度センサ102と同様に、ハウジング10内においてフィルタ収容室11の側壁上部に設置される公知のガスセンサなどである。臭気センサ103は、臭気の要因となるガスの濃度を検知することによって、吸気口17から吸入される空気中の臭気のレベルを検出する。ガスセンサは、例えば数百度に加熱された感ガス体の抵抗値が周囲のガスの濃度によって変化することを利用してガスの濃度を検知する。検知したガスの濃度が小さい場合、臭気のレベルは低く、検知したガスの濃度が大きい場合、臭気のレベルは高い。
【0061】
埃センサ104は、温湿度センサ102と同様に、ハウジング10内においてフィルタ収容室11の側壁上部に設置される光学式粒子センサなどである。光学式粒子センサは、センサに設けたスルーホール内に発光ダイオードから赤外線を放射し、スルーホール中に浮遊する粒子による反射光をフォトトランジスタで検知することにより埃の量を検出するものであり、煙草の煙のような微細な粒子も検知できる。光学式粒子センサでは、フォトトランジスタが出力する電圧の大小によって、埃の量の多寡が検出される。
【0062】
図8は実施の形態1に係る空気調和機の動作手順を説明するフローチャートである。空気調和機の動作中においてイオンシャワーボタン111がオンされた場合(ステップS11)、制御部100は、空気調和動作の一つであるイオンシャワーモードが有効である旨の動作情報を取得する。
【0063】
次いで、制御部100は、イオン発生器35が駆動されているか否かを判断し(ステップS12)、イオン発生器35が駆動されていない場合(S12:NO)、イオン発生器35を駆動する(ステップS13)。
【0064】
イオン発生器35が駆動されていると判断した場合(S12:YES)、又はステップS13でイオン発生器35を駆動した場合(S13)、制御部100は、モータ駆動回路133に制御信号を送出して、ルーバ7を回動させるための電動モータ75の駆動を制御することにより、調整状態における回動停止位置にてルーバ7を停止させる(ステップS14)。
【0065】
前述したように、調整状態における回動停止位置にてルーバ7を停止させた場合、ルーバ7の第2対向面70bと送気室13の壁面13aとの間隔が狭くなるため、送気口18の開口面積は小さくなる。この結果、送気口18を通じて送り出される空気流の風速は大きくなり、それに伴って、送風ファン4から送気口18に至る経路上を流れる空気流の風速も大きくなる。送風ファン4から送気口18に至る経路上には、放電電極を送気室13に露出させた状態でイオン発生器35が設けられているので、その経路上を流れる空気流の風速を大きくすることにより、イオンの放出量を増大させることができ、部屋の隅々にまでイオンを届かせることができる。
【0066】
以上のように、実施の形態1では、イオンシャワーボタン111が押操作され、イオンの放出量を増大させる場合には、ルーバ7を調整状態における回動停止位置にて停止させるようにしている。すなわち、本願では、イオンの放出量を増大させるために、送風ファン4の回転速度を上昇させて風量を増大させる必要がないため、運転音を小さく抑えることができると共に、消費電力の上昇を抑えることができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、イオンシャワーボタン111の押操作によりイオンの放出量を増大させる構成としたが、空気調和機は各種センサ101?104を備えているので、各種センサ101?104のセンサ出力に基づいて、イオンの放出量を増大させるイオンシャワーモードに移行させる構成としてもよい。例えば、イオンセンサ101によって検出されるイオンの量が少なくなったと判断した場合、制御部100は、前述と同様に、ルーバ7の回動停止位置を制御してイオンの放出量を増大させる構成としてもよい。また、臭気センサ103又は埃センサ104により、室内の汚染を検出した場合、制御部100は、前述と同様に、ルーバ7の回動停止位置を制御してイオンの放出量を増大させる構成としてもよい。
【0068】
実施の形態2.
実施の形態1では、イオンシャワーモードによりイオンの放出量を増大させる際に、ルーバ7の回動停止位置を制御することにより、送気口18の開口面積を制御する構成としたが、急速吸塵モードの際に、ルーバ7の回動停止位置を制御し、送気口18の開口面積を制御する構成としてもよい。
実施の形態2では、急速吸塵モードにおける制御について説明を行う。なお、空気調和機の内部構成については実施の形態1と全く同様であるため、その説明を省略することとする。
【0069】
図9は実施の形態2に係る空気調和機の動作手順を説明するフローチャートである。空気調和機の動作中において急速吸塵ボタン112がオンされた場合(ステップS21)、制御部100は、空気調和動作の一つである急速吸塵モードが有効である旨の動作情報を取得する。
【0070】
急速吸塵モードが有効である旨の動作情報を制御部100が取得した場合、制御部100は、モータ駆動回路133に制御信号を送出して、ルーバ7を回動させるための電動モータ75の駆動を制御することにより、調整状態における回動停止位置にてルーバ7を停止させる(ステップS22)。
【0071】
調整状態における回動停止位置にてルーバ7を停止させた場合、ルーバ7の第2対向面70bと送気室13の壁面13aとの間隔が狭くなるため、送気口18の開口面積は小さくなる。この結果、送気口18を通じて送り出される空気流の風速は大きくなる。また、前述したように、送気口18を通じて送り出される空気は、空気調和機の背面の壁に沿って上昇し、天井に沿って壁から離れる方向へ流れる。天井に沿って流れる空気は、部屋の反対側の壁付近で下降し、部屋の反対側の壁付近で下降した後、床に沿って空気調和機の方向に流れ、部屋の中を循環する。
【0072】
実施の形態2では、風向を変化させることなく、送気口18を通じて送り出す空気流の風速を大きくすることができるので、室内での空気流の循環速度を大きくすることができ、空気調和機のフィルタ収容室11に配置した脱臭フィルタ31及び集塵フィルタ32の作用により、空気中の臭い成分を速やかに除去したり、空気中に含まれる微細な塵埃を速やかに捕集、除去することができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、急速吸塵ボタン112の押操作と連動して送気口18の開口面積を制御する構成としたが、空気調和機は、臭気センサ103及び埃センサ104を備えているので、これらのセンサにより室内の汚染を検出した場合、自動的に急速吸塵モードに移行させ、前述と同様に、ルーバ7の回動停止位置を制御して送気口18の開口面積を制御する構成としても良い。」

イ 上記アから分かること
(ア)上記ア(ア)?(カ)及び図1?6の記載によると、甲6の先願明細書等には、空気浄化機能を有する空気調和機が記載されていることが分かる。
(イ)上記ア(ア)、(ウ)及び(エ)並びに図1?6の記載によると、空気浄化機能を有する空気調和機は、空気の吸気口17及び送気口18を有するハウジング1と、前記吸気口17から前記ハウジング1の内部に空気を吸込んで当該空気を前記送気口18から吹出す送風ファン4と、前記ハウジング1の内部を流れる空気を清浄化する脱臭フィルタ31及び集塵フィルタ32とを備えることが分かる。
(ウ)上記ア(ア)、(ウ)、(オ)及び(カ)並びに図2?7の記載によると、空気浄化機能を有する空気調和機は、送気口18の開口面積を変更することが可能なルーバ7と、空気中の臭気のレベル及び埃の量を検出する臭気センサ103及び埃センサ104と、送風ファン4及び前記ルーバ7を制御する機能を有し、前記臭気センサ103及び埃センサ104により検出された臭気のレベル及び埃の量に基いて前記ルーバ7により前記送気口18の開口面積を変化させる制御部100と、を備えることが分かる。
(エ)上記ア(オ)並びに図2及び4?6の記載によると、ルーバ7は、蓋部材70及び前記蓋部材70を横方向の回動軸72のまわりに回動可能に支持する左右一対の支持部材71,71と、前記蓋部材70を回動させる電動モータ75とを備えることが分かる。
(オ)上記ア(オ)及び(カ)並びに図2及び4?9の記載(特に、段落【0041】、【0055】、【0057】、【0066】、【0067】及び【0069】?【0073】並びに図6の記載)と、上記(ウ)とを合わせてみると、制御部100は、臭気センサ103及び埃センサ104により空気の汚染を検出した場合に、送気口18の開口面積が小さい調整状態における回動停止位置にてルーバ7を停止させることが分かる。

ウ 甲6発明
上記ア及びイを総合すると、甲6の先願明細書等に、次の事項からなる発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認める。
「空気の吸気口17及び送気口18を有するハウジング1と、
前記吸気口17から前記ハウジング1の内部に空気を吸込んで当該空気を前記送気口18から吹出す送風ファン4と、
前記ハウジング1の内部を流れる空気を清浄化する脱臭フィルタ31及び集塵フィルタ32と、
前記送気口18の開口面積を変更することが可能なルーバ7と、
空気中の臭気のレベル及び埃の量を検出する臭気センサ103及び埃センサ104と、
前記送風ファン4及び前記ルーバ7を制御する機能を有し、前記臭気センサ103及び埃センサ104により検出された臭気のレベル及び埃の量に基いて前記ルーバ7により前記送気口18の開口面積を変化させる制御部100と、
を備え、
前記ルーバ7は、蓋部材70及び前記蓋部材70を横方向の回動軸72のまわりに回動可能に支持する左右一対の支持部材71,71と、前記蓋部材70を回動させる電動モータ75とを備え、
前記制御部100は、前記臭気センサ103及び埃センサ104により空気の汚染を検出した場合に、前記送気口18の開口面積が小さい調整状態における回動停止位置にて前記ルーバ7を停止させる空気浄化機能を有する空気調和機。」

(4)甲3について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲3(特開2010-164268号公報)には、図面(特に、図1?8)とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【要約】
【課題】部屋にいる複数の人のそれぞれに、快適な気流を提供することができる空調調和機を得ること。
【解決手段】この発明に係る空気調和機1は、当該空気調和機1の外郭を構成し、室内空気を吸い込む吸込口2と、調和空気を吹き出す吹出口8とを有する筐体20と、筐体20内に設けられ、室内空気を吸引すると共に調和空気を吹き出すクロスフローファン5と、クロスフローファン5が形成する風路内に配置され、吸引した室内空気を調和し調和空気を生成する熱交換器4と、吹出口8に設けられ、吹出口8から吹き出す気流の風向を上下方向に制御する上下風向制御板9と、吹出口8に設けられ、吹出口8から吹き出す気流の風向を左右方向に制御する左右風向制御板10と、クロスフローファン5と左右風向制御板10との間の風路に設けられ、吹出口8から吹き出す気流の風量を制御する左右に複数に分割された風量制御板11とを備えたものである。」

イ 「【0027】
クロスフローファン5の風量を制御する風量制御板11は、上下風向制御板9及び左右風向制御板10に対応して左右に二つに分割されている。風量制御板11も、左右二つに限定されない。上下風向制御板9及び左右風向制御板10に対応して、複数であればよい。
【0028】
一枚の風量制御板11は、全体が略長方形の平板状である。複数の、この実施の形態では2枚の、風量制御板11の長手方向が、空気調和機1の左右方向(正面から見て)に略一致するよう長さであり、それぞれの風量制御板11が筐体20に回動可能に取り付けられる。
【0029】
また、風量制御板11の側面視の吹き出し方向の長さL(図3参照)は、風量制御板11が上下方向に回動した際に左右風向制御板10と接触しない長さであり、かつ上下に回動させて風量が制御することができる長さである。
【0030】
図1に示す例では、風量制御板11は、長手方向(空気調和機1の左右方向)の両端部に回転軸(図示せず)を備える。その回転軸がクロスフローファン5下流側の吹出側風路のリアガイダ7で、上下方向に回動可能に軸支されている。
【0031】
後述するが、風量制御板11の筐体20への取付位置は、クロスフローファン5と上下風向制御板9及び左右風向制御板10との間で、それらと干渉しない箇所ならば何処でもよい。
【0032】
また、図1の例では、風量制御板11は上下方向に回動可能に筐体20(リアガイダ7)で軸支されているが、スライドする形態でもよい。この点についても、後述する。」

ウ 「【0039】
図4に示すように、風量制御板11は、調和空気の左右の吹き出し風量をそれぞれ独立に制御できるように風量制御板(左)11aと風量制御板(右)11bとに分割されている。風量制御板(左)11aは、風量制御板(右)11bよりも左右方向の長さが長い。これは、空気調和機1の略中央部で風量制御板11を分割すると、空気調和機1の右側端部に電気品収納部(図示せず)が存在するため、風量制御板(右)11bが風量制御板(左)11aよりも短くなるからである。但し、これは一例であって、この形態に限定されるものではない。」

エ 「【0048】
図7に示すように、風量制御板11の回動位置を、風量制御板収納部15からの回動角度θ[°]で表す。
【0049】
また、風量制御板11の先端11e(図3参照)とスタビライザー6との間の流路の距離(幅)をwとする。
【0050】
次に動作について説明する。このように構成された空気調和機1においては、クロスフローファン5がファンモータにより駆動されて回転すると、空気調和機1の外部の室内空気が吸込口2から吸引される。吸込口2から吸引された室内空気は、熱交換器4で冷凍サイクルの冷媒と熱交換を行い、調和される。室内空気は冷媒により、冷房運転時は冷却、暖房運転時は加熱される。
【0051】
熱交換器4で冷媒と熱交換された調和空気は、スタビライザー6及びリアガイダ7の間を通り、風量制御板11、左右風向制御板10及び上下風向制御板9により風量と風向が制御され、吹出口8より空気調和機1の外部(室内)へと吹き出される。
【0052】
風量制御板11は、回転軸がクロスフローファン5下流の吹出側風路のリアガイダ7上に設けられ、上下方向に回動可能に軸支されている。そのため、風量制御板11を吹出側風路に回動させることで、風量制御板11から下流側への調和空気の吹出しを遮断もしくは制限して吹出口8からの風量を制御することができる。
【0053】
また、図4、図5に示すように、調和空気の左右の吹出し風量をそれぞれ独立に制御できるように風量制御板(左)11aと風量制御板(右)11bとに分割されて取り付けられている。そのため、風量制御板(左)11a及び風量制御板(右)11bの回動角度θをそれぞれ設定することで、調和空気の左右の吹出し風量をそれぞれに制御することができる。
【0054】
風量制御板11を吹出側風路に回動したときの、風量制御板11の回動角度θ[°]と調和空気の吹出し風量比[%]との関係の一例を図8に示す。ここで、調和空気の吹き出し風量比[%]とは、風量制御板11を完全に風量制御板収納部15に収納したとき(θ=0)の調和空気の吹き出し風量に対する、風量制御板11をθだけ回動させたときの調和空気の吹き出し風量の比[%]をいう。
【0055】
図8に示すように、風量制御板11を吹出側風路に回動させることにより、風量制御板11の回動角度θが大きくなるにつれ、調和空気の吹出し風量比は徐々に小さくなる。風量制御板11の回動角度θが60°付近で、調和空気の吹き出し風量比が約5[%]となる。図7はこのときの状態に略等しい。スタビライザー6と風量制御板11との間は距離wだけ離れていて、吹出口8に連通する風路(流路)が存在するにもかかわらず、吹出口8へ向かう調和空気はほとんどなくなる。
【0056】
このように、風量制御板11をクロスフローファン5と、左右風向制御板10及び上下風向制御板9との間に設けることにより、左右風向制御板10及び上下風向制御板9による調和空気の吹き出し風向の制御に加えて、調和空気の吹き出し風量も制御が可能となる。」

オ 「【0104】
以上の説明では、風量制御板11をリアガイダ7上に設け、風量制御板11が上下方向に回動可能にリアガイダ7で軸支されるように構成して、制御装置により風量制御板11の回動角度を制御(回動させないも含む)したが、図示はしないがリアガイダ7より水平方向または鉛直方向(どの方向でもよい)に風量制御板11がスライドする構成にしてもよく、風量制御板11を使用して風量を制御したいときには、スライド移動させて吹出側風路に風量制御板11が突出するように構成する。このような構成によっても、制御装置が風量制御板11のスライド量を制御して、スライド移動させた風量制御板11の先端とスタビライザー6との間の流路の距離(幅)を制御することで、風量を遮断したり、制限したり、すなわち適度な風量比にする、など風量の制御を行うことができる。」

(5)甲4について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲4(実公平4-34349号公報)には、図面(特に、第3及び4図)とともに以下の事項が記載されている。
ア 「技術分野]
本考案は空調用の吹出口と還流口の構造に関するものである。
[背景技術]
空調吹出口を室内に設置した場合、この吹出量に見合う風量を室外に還流させる必要があるが、従来は吹出口とは別個に開口面積の固定された還流口を設けており、吹出風量の増減に応じて還流風量をコントロールしていなかつたので、室内が加圧されたり減圧されたりして、出入口における熱損失が増加したり、あるいは排気口から外部の空気が逆流したりし易いという欠点があつた。
[考案の目的]
本考案はこのような点に鑑み為されたものであり、その目的とするところは、空調吹出口からの吹出風量に応じて還流風量をコントロールして室内の気圧を一定に維持し、出入口や排気口における熱損失を防止することができる空調用風量調節装置を提供するにある。
[考案の開示]
しかして本考案による空調用風量調節装置は、下面が天井面に開口した箱状本体の内部を隔壁により空気吹出部と空気還流部とに分割し、隔壁を貫通して往復運転自在に設けられた可動軸の一端を空気吹出部に導入された空調ダクの開閉ダンパに連結すると共に、その他端を空気還流部の排気扉の開閉機構に連結し、室温センサの出力に応じて制御されるモータにより可動軸を可動せしめたものであり、室内で吹き出した空気量に応じて空気還流部からの排気量を調節できるようにした点に特徴を有するものである。」(1欄20行?2欄末行)

イ 「第3図は制御盤14のブロツク図を示したもので、温度検出回路20では、室温センサ15の出力を設定温度と比較してその温度差に比例した信号を制御回路21に加え、制御回路21では温度差信号と風量センサ16からのフイードバツク信号とにより、開閉ダンパ10の開度を温度差に比例させて制御するようにしたものである。
なお第4図の実施例は、排気扉7の他の構造例を示したもので、2枚の扉板を両側へ平衡に移動させるようにしたものであり、また第5図及び第6図の実施例は、排気扉7を上下に回動させて開閉するようにしたものである。」(3欄36行?4欄6行)

(6)甲5について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲5(特許第4975019号公報)には、図面(特に、図18)とともに以下の事項が記載されている。
「【0009】
図1?図4に示すように、除湿機1では、前面パネル2と、背面部3と、一対の側面部4と、上面部5と、底面部6とによってケーシング7が構成されている。
上面部5から前面パネル2にかけて前面側吹出口8が形成されている。その前面側吹出口8には、空気を所定の方向に向かって吹き出させるルーバ9が配設されている。
そのルーバ9は、湾曲したルーバ本体9aと、ルーバ本体9aに間隔を置いて複数取り付けられた縦ルーバ9bと、ルーバ本体9a及び縦ルーバ9bを支持するルーバベース9cとからなり、ルーバベース9cが前面側吹出口8の両側に回転自在に枢支されている。そのルーバ9は、前面側吹出口8の側部に配設されたルーバ用モータ10によってルーバベース9cが回転させられて回動するよう構成されている。
従って、所定の方向にルーバ9を固定若しくはスイングすることにより、吹き出し範囲を絞ったり、広げたりすることができる。これにより、後述する衣類の乾燥を行う場合に、湿度ムラの解消や、洗濯物等の乾燥の際に、吹出風を満遍なく当てることができ、早くむら無く乾燥できる。
背面部3の最上部には、背面吹出口11が形成されており、上部に第1風路吸込口12が形成され、下部に第2風路吸込口13が形成されている。
その第1風路吸込口12及び第2風路吸込口13には空気清浄用フィルタを有するフィルタ枠14が着脱自在に取り付けられている。
【0010】
そのハウジング7の内部では、図5?図13に示すように、背面部3側の上部に冷風を発生させるための蒸発器15が配設されている。その蒸発器15の下方には、温風を発生させるための凝縮器16が配設されている。
そのハウジング7の下方左側に圧縮機17が設けられ、下方の中央と右側には蒸発器15において結露した水分を貯留する排水タンク18が配設されている。その排水タンク18内にはフロート18aが設けられている。
また、蒸発器15と前面パネル2との間には、第1風路吸込口9から空気を吸込んで蒸発器15を通過させ、冷風を第1の風路22を経て第1の切替吹出口23から吹き出させる第1の送風機19が配設されている。第1の送風機19はモータ19aとファン19bとで構成されている。
【0011】
さらに、凝縮器16と前面パネル2との間には、第2風路吸込口13から空気を吸い込んで凝縮器16を通過させ、温風を第2の風路24を経て第2の切替吹出口25から吹き出させる第2の送風機20が配設されている。第2の送風機20はモータ20aとファン20bとで構成されている。凝縮器16の上方で前面側吹出口8の近傍にニクロム線、シーズヒータ、PTCヒータ等からなる加熱装置21が設けられている。40は電源コード、41は底面部6に設けられたキャスターである。
【0012】
また、図11?図18に示すように、ハウジング7内で前面側吹出口8と背面吹出口11の下方には、前記前面側吹出口8を第1の切替吹出口23と第2の切替吹出口25の左右に分割するよう形成し、第1の切替吹出口23から冷風を前面側吹出口8又は背面側吹出口11から吹き出させる共に第2の切替吹出口25から温風を前面側吹出口8又は背面側吹出口11から吹き出させるよう選択することができるスライド式のダンパ機構26が配設されている。
このスライド式のダンパ機構26は、仕切部材27aで左右に2分され、それぞれシャッタ28を前後方向で摺動自在に保持する長方形のシャッタ枠27と、仕切部材27aに設けられた2つのリンク駆動用モータ29と、各シャッタ28と各リンク駆動用モータ29とを連結するリンク部材30とで構成されている。
【0013】
そして、各シャッタ28の大きさは、シャッタ枠27の仕切部材27aで左右に2分された領域の半分であり、各シャッタ28が前後方向にスライドすることにより、前面側吹出口8から風が吹き出される前吹きと背面側吹出口11から風が吹き出される背面吹きとに切り替えられる。シャッタ28のうち、左側のものは第1の切替吹出口23において前
吹きと、背面吹きとに切り替えるものであり、右側のものは第2の切替吹出口25において前吹きと、背面吹きとに切り替えるものである。
このように各シャッタ28が前後方向にスライドするため、シャッタ動作の軌跡が少ないため、スペースを取らず省スペースとなる。」

4 当審の判断
4-1 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
(1)甲1発明を主とした理由について
ア 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
・甲1発明の「吸気口」は、本件発明2の「吸込口」に相当し、以下同様に、「吹出口」は「吹出口」に、「ケーシング」は「ケーシング」に、「送風装置」は「送風装置」に、「脱臭フィルター及び集じんフィルター」は「清浄化装置」に、「ルーバー」は「導風装置」に、「ニオイ、煙、ハウスダスト等」は「汚染物質」に、「ニオイセンサー及びハウスダストセンサー」は「汚染物質検出装置」に、「制御装置」は「制御装置」に、「前ルーバー」は「第一可動体」に、「前ルーバーを動かす駆動部」は「第一可動体を動かす第一駆動部」に、「後ろルーバー」は「第二可動体」に、「後ろルーバーを動かす駆動部」は「第二可動体を動かす第二駆動部」に、「加湿空気清浄機」は「空気清浄機」に、それぞれ相当する。
・甲1発明の「気流の方向」は、本件発明2の「気流の流路面積」に、「気流の状態」という限りにおいて一致する。
・甲1発明の「前記制御装置は、前記ニオイセンサー及びハウスダストセンサーにより検出されたニオイ、煙、ハウスダスト等の量と、前記ルーバー動きとの関係が、
a きれいな状態の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーをスイング低速
b ニオイまたは煙を感知の場合、前ルーバーを上向き、後ろルーバーを上向き
c ハウスダストを感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーを前方
d ニオイまたは煙を少量感知、ハウスダストを少量感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーを上向き
e ニオイまたは煙を少量感知、ハウスダストを多量感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーをスイング
f ニオイまたは煙を多量感知、ハウスダストを少量感知の場合、前ルーバーをスイング、後ろルーバーを上向き
g ニオイまたは煙を多量感知、ハウスダストを多量感知の場合、前ルーバーをスイング、後ろルーバーをスイング
となるようにする」ことは、本件発明2の「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」ことに、「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が所定の条件である場合に、前記導風装置により前記気流の状態を変化させる」という限りにおいて一致する。

したがって、本件発明2と甲1発明とは、
「空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の状態を変更することが可能な導風装置と、
空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する機能を有し、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量に基いて前記導風装置により前記気流の状態を変化させる制御装置と、
を備え、
前記導風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え、
前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が所定の条件である場合に、前記導風装置により前記気流の状態を変化させる空気清浄機。」の点で一致し、次の点で相違する。
[相違点A]
「導風装置」が「気流の状態」を変更することが可能であり、「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が所定の条件である場合に、前記導風装置により前記気流の状態を変化させる」ことに関し、本件発明2は、「導風装置」が「気流の流路面積」を変更することが可能であり、「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」のに対して、甲1発明は、「ルーバー」が「吹出口から吹出す気流の方向を変更することが可能」であり、「前記制御装置は、前記ニオイセンサー及びハウスダストセンサーにより検出されたニオイ、煙、ハウスダスト等の量と、前記ルーバー動きとの関係が、
a きれいな状態の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーをスイング低速
b ニオイまたは煙を感知の場合、前ルーバーを上向き、後ろルーバーを上向き
c ハウスダストを感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーを前方
d ニオイまたは煙を少量感知、ハウスダストを少量感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーを上向き
e ニオイまたは煙を少量感知、ハウスダストを多量感知の場合、前ルーバーを前方、後ろルーバーをスイング
f ニオイまたは煙を多量感知、ハウスダストを少量感知の場合、前ルーバーをスイング、後ろルーバーを上向き
g ニオイまたは煙を多量感知、ハウスダストを多量感知の場合、前ルーバーをスイング、後ろルーバーをスイング
となるようにする」点(以下、「相違点A」という。)。

(イ)判断
上記相違点Aについて検討する。
上記相違点Aに係る甲1発明の構成は、制御装置によって、前ルーバーと後ろルーバーが独立に制御されることから、前ルーバーと後ろルーバーが相互に近づくことによって、気流の流路面積が減少する現象が一時的に発生するとしても、ニオイセンサー及びハウスダストセンサー(汚染物質検出装置)により検出されたニオイ、煙、ハウスダスト等(汚染物質)の量が規定値以上である場合に、前ルーバーと後ろルーバーによって気流の流路面積を減少させるものとはいえない。
そうすると、上記相違点Aは実質的な相違であるから、本件発明2は、甲1発明とはいえない。
また、甲3?5は、「風量を調節するために、気流の流路に対して可動体をスライド可能に設け、可動体のスライド位置に応じて気流の流路面積を変更すること」や「風量を調節するために、可動体が吹出口の一部を閉塞させて気流の流路面積を変更すること」が本件特許の優先日前に周知の技術であることの例証であって、上記3(4)?(6)において摘記した事項が記載されているものの、甲3?5のいずれにも、汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、導風装置により気流の流路面積を減少させることは記載されていない。
そうすると、甲1発明において、甲3?5に記載された事項に基いて、上記相違点Aに係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明2は、上記相違点Aに係る本件発明2の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0009】に記載されているような、「室内の人に吹かれ感を与えることなく、塵埃の除去効率を向上させることができる。従って、ユーザの快適性を維持しつつ、室内の清浄化に必要な時間を短縮することができる。」という効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、甲1発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明3及び4について
本件発明3及び4は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明3は、上記アの本件発明2の検討を踏まえると、甲1発明とはいえない。
また、本件発明3及び4は、上記アの本件発明2の検討を踏まえると、甲1発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明6?8について
請求項6?8は、請求項1又は2を直接又は間接的に引用しており、請求項1を引用する場合と請求項2を引用する場合について検討する。
(ア)請求項1を引用する場合について
本件発明6?8において含む、請求項1に記載された「導風装置」についての「前記第一可動体及び前記第二可動体の組を、複数組、前記気流の流れ方向と直交する方向に並べて配置し、当該複数組の各組の可動体が個別に揺動することにより前記気流の流路断面上の複数個所でそれぞれ前記流路面積を変更する構成とした」との発明特定事項については、甲1発明は備えておらず、また、甲3?5のいずれにも記載されていないし、本件特許の優先日前に周知又は慣用の技術であるとはいえない。
そうすると、本件発明7及び8は、甲1発明とはいえない。
また、本件発明6?8は、甲1発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)請求項2を引用する場合について
本件発明6?8は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明7及び8は、上記アの本件発明2についての検討を踏まえると、甲1発明とはいえない。
また、本件発明6?8は、上記アの本件発明2の検討を踏まえると、甲1発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)甲2発明を主とした理由について
ア 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲2発明との対比
本件発明2と甲2発明とを対比する。
・甲2発明の「吸込口2」は、本件発明2の「吸込口」に相当し、以下同様に、「吹出口8」は「吹出口」に、「本体1」は「ケーシング」に、「送風機4」は「送風装置」に、「清浄フィルター3」は「清浄化装置」に、「風量調整ルーバー23」は「導風装置」に、「空気汚染度」は「空気中の汚染物質の量」に、「空気汚れセンサー25」は「汚染物質検出装置」に、「制御装置」は「制御装置」に、「加湿機能付空気清浄機」は「空気清浄機」に、それぞれ相当する。
・甲2発明の「吹出口8の開口面積を調整する」は、本件発明2の「吹出口から吹出す気流の流路面積を変更する」及び「気流の流路面積を変化させる」に相当する。
・甲2発明の「前記風量調整ルーバー23は、回動可能なルーバー本体と、前記回動可能なルーバー本体を動かす駆動部とを備え」ることは、本件発明2の「前記導風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え」ることに、「前記導風装置は、可動体と、前記可動体を動かす駆動部とを備え」るという限りにおいて一致する。
・甲2発明の「前記制御装置は、室内の空気汚染度が上昇しない間は、前記風量調整ルーバー23の角度を吹出口8に近づけるようにして、吹出口8の開口面積を狭く調整することにより、吹出気流の送風量を少なく調節する」ことは、本件発明2の「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」ことに、「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値に対し所定の関係にある場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」という限りにおいて一致する。

したがって、本件発明2と甲2発明とは、
「空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の状態を変更することが可能な導風装置と、
空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する機能を有し、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量に基いて前記導風装置により前記気流の状態を変化させる制御装置と、
を備え、
前記導風装置は、可動体と、前記可動体を動かす駆動部とを備え、
前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値に対し所定の関係にある場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる空気清浄機。」の点で一致し、次の点で相違する。
[相違点B]
「前記導風装置は、可動体と、前記可動体を動かす駆動部とを備え」、「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値に対し所定の関係にある場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」ことに関し、本件発明2は、「前記導風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え」、「前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」のに対して、甲2発明は、「前記風量調整ルーバー23は、回動可能なルーバー本体と、前記回動可能なルーバー本体を動かす駆動部とを備え」、「前記制御装置は、室内の空気汚染度が上昇しない間は、前記風量調整ルーバー23の角度を吹出口8に近づけるようにして、吹出口8の開口面積を狭く調整することにより、吹出気流の送風量を少なく調節する」点(以下、「相違点B」という。)。

(イ)判断
上記相違点Bに係る本件発明2の発明特定事項は、本件特許の明細書の段落【0028】において、「風量保持制御では、送風装置5の回転数を一定に保持した状態において、ケーシング2内に吸込んだ空気中の汚染物質の量を汚染物質検出装置10により検出する。そして、汚染物質の量が予め設定された規定値以上である場合には、導風装置8の可動体8A,8Bを互いに近接させることにより、吹出口4から吹出す気流の流路面積を減少させる。この処理によれば、吹出口4から吹出す空気の風量及び風向を一定に保持しつつ、当該空気の風速を増加させることができる。これにより、室内を循環する気流と共に汚染物質を吸込口3に速やかに到達させることができる。従って、ユーザが指定した風量を維持しつつ、汚染物質の浄化効率を高めることができる。」と記載されているように、汚染物質の量が予め設定された規定値以上である場合に、空気の風速を増加させることにより、室内を循環する気流と共に汚染物質を吸込口3に速やかに到達させることができ、汚染物質の浄化効率を高めることができるものである。
一方、上記相違点Bに係る甲2発明の構成は、甲2の段落【0047】において、「空気清浄運転が行なわれて、部屋の空気汚染度が適正範囲になったときは、つぎに部屋の空気汚染度に応じて、風量調整ルーバー23の角度を吹出口8に近づけるように調整することにより、室内の空気汚染度が上昇しない間は、吹出気流の送風量を少なく調整して、無駄な運転を省き、適切な空気清浄運転ができるものである。」と記載されているように、室内の空気汚染度が上昇しない間、すなわち、汚染物質の量が所定値未満である場合に、風量調整ルーバー23の角度を吹出口8に近づけるようにして、吹出口8の開口面積を狭く調整する(導風装置により気流の流路面積を減少させる)ことにより、吹出気流の送風量を少なく調整して、無駄な運転を省き、適切な空気清浄運転を可能とするものである。
そうすると、上記相違点Bの甲2発明に係る構成は、上記相違点Bの本件発明2に係る発明特定事項とは、導風装置により気流の流路面積を減少させる条件も作用効果も異なるものであり、上記相違点Bは実質的な相違であるから、本件発明2は、甲2発明と同一とはいえず、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するものとはいえない。
また、汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、導風装置により気流の流路面積を減少させることは、甲3?5のいずれにも記載されておらず、仮に、当該事項が本件特許の優先日前に公知であったとしても、当該事項を甲2発明に適用することは、上記相違点Bの甲2発明に係る構成による作用効果を奏しないものとなるから、動機付けはないものというべきである。
そうすると、甲2発明において、甲3?5に記載された事項に基いて、上記相違点Bに係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明2は、上記相違点Bに係る本件発明2の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0009】に記載されているような、「室内の人に吹かれ感を与えることなく、塵埃の除去効率を向上させることができる。従って、ユーザの快適性を維持しつつ、室内の清浄化に必要な時間を短縮することができる。」という効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、甲2発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明3及び4について
本件発明3及び4は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明3は、上記アの本件発明2の検討を踏まえると、甲2発明とはいえない。
また、本件発明3及び4は、上記アの本件発明2の検討を踏まえると、甲2発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明6?8について
本件発明7及び8は、上記アの本件発明2についての検討及び上記(1)ウの検討を踏まえると、甲2発明とはいえない。
また、本件発明6?8は、上記アの本件発明2についての検討及び上記(1)ウの検討を踏まえると、甲2発明及び甲3?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)まとめ
したがって、本件発明2、3、7及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものとすることはできない。
また、本件発明2?4及び6?8は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。
なお、本件発明2、3、7及び8は、特許法第29条第1項第1号及び同項第2号に該当するものでもない。

4-2 理由3(拡大先願)について
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲6発明とを対比する。
・甲6発明の「吸気口17」は、本件発明2の「吸込口」に相当し、以下同様に、「送気口18」は「吹出口」に、「ハウジング1」は「ケーシング」に、「送風ファン4」は「送風装置」に、「脱臭フィルタ31及び集塵フィルタ32」は「清浄化装置」に、「ルーバ7」は「導風装置」に、「臭気のレベル及び埃の量」は「汚染物質の量」に、「臭気センサ103及び埃センサ104」は「汚染物質検出装置」に、「制御部100」は「制御装置」に、「空気浄化機能を有する空気調和機」は「空気清浄機」に、それぞれ相当する。
・甲6発明の「送気口18の開口面積」は、本件発明2の「吹出口から吹出す気流の流路面積」及び「気流の流路面積」に相当する。
・甲6発明の「前記ルーバ7は、蓋部材70及び前記蓋部材70を横方向の回動軸72のまわりに回動可能に支持する左右一対の支持部材71,71と、前記蓋部材70を回動させる電動モータ75とを備え」ることは、本件発明2の「前記導風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え」ることに、「前記導風装置は、可動体と、前記可動体を動かす駆動部とを備え」るという限りにおいて一致する。
・甲6発明の「前記臭気センサ103及び埃センサ104により空気の汚染を検出した場合」は、本件発明2の「前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合」に相当する。
・甲6発明の「前記送気口18の開口面積が小さい調整状態における回動停止位置にて前記ルーバ7を停止させる」は、本件発明2の「前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる」に相当する。

したがって、本件発明2と甲6発明とは、
「空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の流路面積を変更することが可能な導風装置と、
空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する機能を有し、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量に基いて前記導風装置により前記気流の流路面積を変化させる制御装置と、
を備え、
前記導風装置は、可動体と、前記可動体を動かす駆動部とを備え、
前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる空気清浄機。」の点で一致し、次の点で相違する。
[相違点C]
「前記導風装置は、可動体と、前記可動体を動かす駆動部とを備え」ることに関し、本件発明2は、「前記導風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え」るのに対して、甲6発明は、「前記ルーバ7は、蓋部材70及び前記蓋部材70を横方向の回動軸72のまわりに回動可能に支持する左右一対の支持部材71,71と、前記蓋部材70を回動させる電動モータ75とを備え」る点(以下、「相違点C」という。)。

イ 判断
甲6発明は、単一のルーバ7の対向面70bと送気室13の壁面13aとによる流路面積の減少であり(甲6の段落【0071】)、互いに駆動する可動体同士による流路面積の減少を想定していない。
また、甲1の1の第17頁における「ルーバーの動き」の記載(上記3(1)ア(カ))並びに甲3の段落【0039】及び図4の記載を参酌しても、空気清浄機が備える吹出口から吹出す気流の流路面積を変更することが可能な導風装置において、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備えたものとすることが、本件特許の優先日前に周知又は慣用の技術であるとはいえないから、上記相違点Cは課題解決のための設計上の微差とはいえない。
そうすると、本件発明2は、甲6発明と実質的に同一であるということはできない。

(2)本件発明3、10について
請求項3及び10において、請求項2を引用しており、本件発明3及び10は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明3及び10は、上記(1)の本件発明2の検討を踏まえると、甲6発明と実質的に同一であるということはできない。

(3)本件発明8について
請求項8は、請求項1又は2を直接又は間接的に引用しており、請求項1を引用する場合と請求項2を引用する場合について検討する。
ア 請求項1を引用する場合について
本件発明8において含む、請求項1に記載された「導風装置」についての「前記第一可動体及び前記第二可動体の組を、複数組、前記気流の流れ方向と直交する方向に並べて配置し、当該複数組の各組の可動体が個別に揺動することにより前記気流の流路断面上の複数個所でそれぞれ前記流路面積を変更する構成とした」との発明特定事項については、甲6発明は備えておらず、また、本件特許の優先日前に周知又は慣用の技術であるとはいえない。
そうすると、本件発明8は、甲6発明と実質的に同一であるということはできない。

イ 請求項2を引用する場合について
本件発明8は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明8は、上記(1)の本件発明2についての検討を踏まえると、甲6発明と実質的に同一であるということはできない。

(4)まとめ
したがって、本件発明2、3、8及び10は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。

4-3 平成30年11月14日提出の意見書に記載された特許異議申立理由について
(1)申立人の主張
申立人は、平成30年11月14日提出の意見書において、次の主張をする。
「ア 本件発明2において「第一可動体」及び「第二可動体」が如何に動作して「吹出口から吹出す気流の流路面積を変更する」のかが不明である。
イ 本件発明2では、「前記導風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え」ること(以下、「構成要件A」という。)が記載されているにすぎず、「第一可動体」及び「第二可動体」の形状、設置箇所、動き方について何ら特定されていない。さらに、この構成要件Aと他の構成要件との関係についても何ら特定されていない。
ウ そのため、本件発明2において「第一可動体」及び「第二可動体」が如何に動作して「吹出口から吹出す気流の流路面積を変更する」のか、その構成を具体的に特定することができない。
エ 以上のとおりであるから、本件発明2は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」

(2)判断
そこで検討すると、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項2の記載において、「前記吹出口から吹出す気流の流路面積を変更することが可能な導風装置」を備え、「前記導風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え」ることが特定されているところ、これら記載から、導風装置が、第一駆動部によって駆動される第一可動体と、第二駆動部によって駆動される第二可動体によって、吹出口から吹出す気流の流路面積を変更することが可能に構成されていることが理解でき、本件特許の願書に添付された図1、2及び7のような具体的な物を想定することができるから、「第一可動体」及び「第二可動体」の形状、設置箇所、動き方について特定されていないことや、構成要件Aと他の構成要件との関係について特定されていないことをもって、請求項2に記載された発明(本件発明2)並びに請求項2を引用する請求項3、4、6?8及び10に係る発明が不明確であるとはいえない。
そうすると、請求項2並びに請求項2の記載を引用する請求項3、4、6?8及び10の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

5 小括
したがって、請求項2、3及び8に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項並びに同法第29条の2の規定に違反してされたものとすることはできず、同法第113条第2号に該当するものではなく、また、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできず、同法第113条第4号に該当するものではないから、取り消すことはできない。
また、請求項4及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとすることはできず、同法第113条第2号に該当するものではなく、また、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできず、同法第113条第4号に該当するものではないから、取り消すことはできない。
また、請求項7に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものとすることはできず、同法第113条第2号に該当するものではなく、また、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできず、同法第113条第4号に該当するものではないから、取り消すことはできない。
また、請求項10に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものとすることはできず、同法第113条第2号に該当するものではなく、また、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできず、同法第113条第4号に該当するものではないから、取り消すことはできない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、並びに、特許異議申立書及び平成30年11月14日提出の意見書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項2?4、6?8及び10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項2?4、6?8及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
空気清浄機
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸込んだ空気を清浄化して吹出す機能を備えた空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば特許文献1に記載されたような空気清浄機が知られている。従来技術の空気清浄機は、空気中に含まれる汚染物質の濃度を検出する手段と、空気の吹出し風量を制御する手段とを備えている。そして、この空気清浄機は、室内の空気を循環させながら汚染物質の濃度を監視することにより、汚れ発生源を捕捉してファン強度(吹出し風量)を変更し、室内の清浄化に必要な時間を短縮するようにしている。
【0003】
他の従来技術としては、例えば特許文献2に記載されたような空気清浄機も知られている。この空気清浄機は、室内に存在する人を検知して、人に風が当らないように空気の吹出し方向を制御する。これにより、他の従来技術では、空気清浄機から吹出す風が人に不快感を与えないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本特許第2854615号公報
【特許文献2】日本特公昭61-38778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の従来技術では、ファン強度を変更して吹出し風量を制御し、空気を汚れ発生源の方向に選択的に吹出すことにより、汚染物質を除去する制御を採用している。しかしながら、この制御では、室内を循環する気流の風量が上昇し、この気流が室内の人に当ることにより不快感を与えるという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載の従来技術では、室内の人に風を当てないように空気の吹出し方向を制御するので、不快感を与えることはないものの、人を回避して空気を吹出す分だけ室内の清浄化に必要な時間が長くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、室内の人に不快感を与えることなく、室内の清浄化に必要な時間を短縮することが可能な空気清浄機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る空気清浄機は、空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、吸込口からケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を吹出口から吹出す送風装置と、ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、吹出口から吹出す気流の流路を挟んで互いに対向する少なくとも2個の可動体を有し、該各可動体が互いに近接及び離間するように揺動することにより気流の流路面積及び吹出方向を変更することが可能な導風装置と、送風装置及び導風装置を制御する制御装置と、を備え、少なくとも2個の可動体は、吹出口の開口端に取付けられた第一可動体と、第一可動体と反対側の吹出口の開口端に取付けられた第二可動体とを含み、導風装置は、第一可動体を揺動させる第一駆動部と、第二可動体を揺動させる第二駆動部とを備え、第一可動体及び第二可動体の組を、複数組、気流の流れ方向と直交する方向に並べて配置し、当該複数組の各組の可動体が個別に揺動することにより気流の流路断面上の複数個所でそれぞれ流路面積を変更する構成としている。
また、この発明に係る空気清浄機は、空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、吸込口からケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を吹出口から吹出す送風装置と、ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、吹出口から吹出す気流の流路面積を変更することが可能な導風装置と、空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、送風装置及び導風装置を制御する機能を有し、汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量に基いて導風装置により気流の流路面積を変化させる制御装置と、を備えている。導風装置は、第一可動体と、第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、第二可動体を動かす第二駆動部とを備える。制御装置は、汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、導風装置により気流の流路面積を減少させる。
また、この発明に係る空気清浄機は、空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、吸込口からケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を吹出口から吹出す送風装置と、ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、吹出口から吹出す気流の流路を挟んで互いに対向する少なくとも2個の可動体を有し、該各可動体が互いに近接及び離間するように揺動することにより気流の流路面積及び吹出方向を変更することが可能な導風装置と、送風装置及び導風装置を制御する制御装置と、を備え、少なくとも2個の可動体の組を、複数組、気流の流れ方向と直交する方向に並べて配置し、当該複数組の各組の可動体が個別に揺動することにより気流の流路断面上の複数個所でそれぞれ流路面積を変更する構成としている。
また、この発明に係る空気清浄機は、空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、吸込口からケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を吹出口から吹出す送風装置と、ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、吹出口から吹出す気流の流路を挟んで互いに対向する少なくとも2個の可動体を有し、該各可動体が互いに近接及び離間するように揺動することにより気流の流路面積及び吹出方向を変更することが可能な導風装置と、送風装置及び導風装置を制御する制御装置と、空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、送風装置により吹出口から吹出す空気の風量を一定に保持した状態で当該空気の風速を変化させる風量保持制御手段と、を備え、風量保持制御手段は、汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、導風装置により気流の流路面積を減少させ、汚染物質の量が規定値未満である場合に、気流の流路面積を増加させる構成としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、室内の人に吹かれ感を与えることなく、塵埃の除去効率を向上させることができる。従って、ユーザの快適性を維持しつつ、室内の清浄化に必要な時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明の実施の形態1による空気清浄機を示す斜視図である。
【図2】 図1中の矢示A-A線に沿って破断した空気清浄機を示す縦断面図である。
【図3】 本発明の実施の形態1において、空気清浄機の風量を一定に保持した状態での風速と塵埃の除去効率との関係を示す実験データである。
【図4】 本発明の実施の形態2による空気清浄機を示す縦断面図である。
【図5】 本発明の実施の形態3による空気清浄機を示す斜視図である。
【図6】 本発明の実施の形態4による空気清浄機を示す縦断面図である。
【図7】 本発明の実施の形態5による空気清浄機を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書で使用する各図においては、共通する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
【0012】
実施の形態1.
図1から図3は本発明の実施の形態1を示している。図1は、本発明の実施の形態1による空気清浄機を示す斜視図であり、図2は、図1中の矢示A-A線に沿って破断した空気清浄機を示す縦断面図である。これらの図に示すように、本実施の形態による空気清浄機1は、ケーシング2、吸込口3、吹出口4、送風装置5、清浄化装置7、導風装置8、制御装置12等を備えている。なお、空気清浄機1は、例えば室内の何れかの壁面に近い位置に設置され、ケーシング2の後面部を当該壁面に向けると共にケーシング2の前面部を室内の空間に向けた状態で運転される。
【0013】
ケーシング2は、例えば四角形の箱形状に形成され、その内部には、送風装置5、清浄化装置7、制御装置12等が収容されている。ケーシング2の前面部には、室内の空気をケーシング2内に吸込むための吸込口3が設けられ、ケーシング2の上面部には、ケーシング2内に吸込んだ空気を吹出すための吹出口4が設けられている。吹出口4は、例えば細長い四角形状の開口部として形成され、ケーシング2の前方からみて左右方向に延在している。従って、長方形状をなす吹出口4の開口端の2つの長辺は、ケーシング2の前後方向において互いに対向している。
【0014】
送風装置5は、吸込口3からケーシング2内に空気を吸込んで当該空気を吹出口4から吹出すもので、例えば電動ファン等により構成されている。送風装置5の吹出側は、風路6を介して吹出口4に接続されている。風路6は、略筒状のダクト等により構成され、送風装置5から吹出す空気を吹出口4に導入しつつ、当該空気がケーシング2内に漏れるのを防止するものである。なお、ケーシング2の内部には、風路6以外にも、送風装置5により発生させた気流を整流する整流構造を設けてもよい。
【0015】
清浄化装置7は、送風装置5によりケーシング2内に吸込まれた空気を清浄化するもので、送風装置5の吸込側と吸込口3との間に配置されている。ケーシング2内に吸込まれた空気は、清浄化装置7を通過することにより清浄化された後に、吹出口4から吹出される。ここで、「清浄化」とは、例えば空気中に浮遊する塵埃、煙、ウイルス、菌、カビ、アレルゲン、臭気分子等からなる汚染物質を除去することを意味するもので、より具体的には、これらの汚染物質を捕集したり、不活性化したり、吸着及び分解する動作を意味している。清浄化装置7としては、例えば空気を濾過するフィルタ、電極間に高電界または活性酸素を発生させて汚染物質を除去する電圧印加デバイス、当該電圧印加デバイスとフィルタとを組合わせた機構等が用いられる。
【0016】
導風装置8は、送風装置5によりケーシング2の内部に発生させた気流の流路面積を変更するもので、具体的には、吹出口4の開口面積を変更する。導風装置8は、1組(2個)の可動体8A,8Bと、駆動部8C,8Dとを備えている。可動体8A,8Bは、ケーシング2の左右方向において、例えば吹出口4と同様の寸法を有する長方形状の平板等により形成され、吹出口4の全長にわたって延在している。そして、可動体8A,8Bは、一方の長辺側である基端側が吹出口4の開口端に対応する位置でケーシング2に揺動可能に取付けられている。また、可動体8A,8Bの他方の長辺側である先端側は、吹出口4の開口を覆う位置、即ち、気流の流路を遮る位置に突出している。
【0017】
可動体8A,8Bのうち一方の可動体8Aは、吹出口4の前側の開口端に取付けられ、他方の可動体8Bは、吹出口4の後側の開口端に取付けられている。即ち、1組の可動体8A,8Bは、吹出口4から吹出す気流の流路を挟んでケーシング2の前後方向で互いに対向するように配置されている。一方、駆動部8C,8Dは、可動体8A,8Bを揺動させるための機構であり、図示しないモータ等を備えている。
【0018】
そして、導風装置8は、駆動部8C,8Dにより可動体8A,8Bの少なくとも一方を揺動させることにより、可動体8A,8Bの揺動位置に応じて気流の流路面積を変更することができる。この場合、可動体8A,8Bの先端側は、互いに近接及び離間するように揺動し、当該先端側の間に形成される流路の面積を変更するように構成されている。また、導風装置8は、可動体8A,8Bを非対称に揺動させることにより、吹出口4から吹出す空気の吹出方向を前方と上方との間で上下方向にスイングさせることができる。なお、以下の説明では、上下方向に対する空気の吹出方向を「吹出角度」と表記する。
【0019】
上記導風装置8によれば、1組の可動体8A,8Bを近接及び離間させたり、非対称に揺動させることにより、吹出口4から吹出す気流の流路面積及び吹出角度を変更することができる。従って、流路面積及び吹出角度が変更可能な機構を1組の可動体8A,8Bにより簡単な構成で実現することができる。
【0020】
次に、本実施の形態による空気清浄機1の制御系統について説明する。空気清浄機1は、汚染物質検出装置10及び外部検出装置11を含むセンサ系統と、制御装置12とを備えている。汚染物質検出装置10は、ケーシング2内に吸込んだ空気中の汚染物質の量を検出するもので、例えばケーシング2内で清浄化装置7の上流側に配置されている。また、汚染物質検出装置10は、例えば埃センサ、ガスセンサ、風速センサ等を組合わせた複合型センサにより構成されている。
【0021】
ここで、埃センサは、半導体素子、光学素子等により構成され、空気中における塵埃の濃度を検出する。ガスセンサは、半導体素子等により構成され、臭気分子、VOC等の有害ガスを検出する。風速センサは、超音波素子等により構成され、風速の変動を電流値に変換する。そして、これらのセンサによる検出結果は、汚染物質検出装置10から制御装置12に出力される。なお、上記各センサの組合わせは一例に過ぎないもので、本発明は、上記各センサの組合わせによる汚染物質検出装置10に限定されるものではない。
【0022】
外部検出装置11は、空気清浄機1の設置環境を検出するもので、例えばケーシング2の前面部に設けられている。また、外部検出装置11は、障害物センサ、動体センサ、サーモグラフィ、湿度センサ等を組合わせた複合型センサにより構成され、対象物の検出方向を変化させることが可能な可動機構(図示せず)を備えている。ここで、障害物センサは光センサ、超音波センサ、画像認識センサ等により構成され、室内における障害物の有無、壁面までの距離(即ち、室内の広さ)等を検出する。動体センサは、光センサ、温度センサ等により構成され、照度、温度等の変化を検出することにより、人間及び動物等の動きを捕捉する。
【0023】
サーモグラフィは、人間及び動物と、無生物である障害物とを温度に基いて識別することができる。また、湿度センサの出力は、上記各センサの感度を空気中の湿度に応じて補正するときに用いられる。なお、外部検出装置11においても、上記各センサの組合わせは一例に過ぎないもので、本発明は、上記各センサの組合わせによる外部検出装置11に限定されるものではない。より具体的に述べると、外部検出装置11は、室内の人を検出する人検出装置と、室内の障害物を検出する障害物検出装置と、室内の広さを検出する広さ検出装置のうち少なくとも1つの検出装置を備えていればよい。
【0024】
制御装置12は、送風装置5及び導風装置8を含めて空気清浄機1の作動状態を制御するもので、図示しない演算処理装置、入出力ポート及び記憶回路等を備えている。制御装置12の入力側には前記センサ系統が接続され、制御装置12の出力側には、送風装置5、導風装置8の駆動部8C,8D等を含むアクチュエータが接続されている。そして、制御装置12は、センサ系統の出力に基いてアクチュエータを駆動することにより、空気清浄機1を作動させる。
【0025】
次に、本実施の形態による空気清浄機1の動作について説明する。空気清浄機1が作動すると、制御装置12は、送風装置5、導風装置8及び前記センサ系統を駆動する。これにより、ケーシング2の内部には、吸込口3から空気が吸込まれ、この空気は清浄化装置7により清浄化された後に、送風装置5及び風路6を介して吹出口4から外部に吹出される。このとき、制御装置12は、センサ系統により室内の広さ、障害物等に関する情報を検出する。この情報には、室内の最も遠い壁面までの距離に関する情報も含まれている。
【0026】
制御装置12は、これらの情報に基いて導風装置8の駆動部8C,8Dにより可動体8A,8Bを揺動させ、吹出口4から吹出す空気の吹出角度を調整すると共に、送風装置5に搭載されたファンの回転数を調整する。これにより、吹出口4から吹出す空気の吹出角度及び風量は、室内の広さ、障害物に応じて最適な状態に制御される。この最適な状態の一例を挙げると、制御装置12は、吹出口4から前方の斜め上方に向けて空気を吹出させる。この空気は、空気清浄機1から最も離れた壁面に近い位置で天井に当ってから、当該壁面に沿って下降し、更に床面に沿って空気清浄機1の位置まで戻るようになり、部屋全体を循環する。このように、室内の情報に基いて空気の吹出角度及び風量を制御することにより、吹出口4から吹出した空気を部屋全体に循環させつつ、当該空気を清浄化することができる。従って、室内の空気を短時間で効率よく清浄化することができる。
【0027】
(風量保持制御)
空気清浄機1のユーザが風量を指定する特定の運転モード(静音モード等)を選択した場合には、制御装置12により風量保持制御が実行される。風量保持制御とは、吹出口4から吹出す空気の風量を一定に保持した状態で、汚染物質の検出状態等に基いて空気の風速を導風装置8により変化させるものである。具体例を挙げると、風量保持制御では、まず、ユーザが指定した風量等に基いて送風装置5(即ち、ファン)の目標回転数を決定し、送風装置5の実際の回転数を目標回転数と一致した状態に保持する。
【0028】
風量保持制御では、送風装置5の回転数を一定に保持した状態において、ケーシング2内に吸込んだ空気中の汚染物質の量を汚染物質検出装置10により検出する。そして、汚染物質の量が予め設定された規定値以上である場合には、導風装置8の可動体8A,8Bを互いに近接させることにより、吹出口4から吹出す気流の流路面積を減少させる。この処理によれば、吹出口4から吹出す空気の風量及び風向を一定に保持しつつ、当該空気の風速を増加させることができる。これにより、室内を循環する気流と共に汚染物質を吸込口3に速やかに到達させることができる。従って、ユーザが指定した風量を維持しつつ、汚染物質の浄化効率を高めることができる。
【0029】
また、上記処理により汚染物質の検出量が規定値未満に低下した場合には、可動体8A,8Bを互いに離間させることにより、吹出口4から吹出す気流の流路面積を元の状態(規定値以上の汚染物質が検出される以前の状態)まで増加させる。この処理によれば、吹出口4から吹出す空気の風量及び風向を変化させることなく、当該空気の風速を元の状態に復帰させることができる。従って、風速を増加させる処理の継続時間を最低限に抑制することができる。
【0030】
(人避け制御)
一方、ユーザが人避けモードを選択した場合には、制御装置12により人避け制御が実行される。人避け制御は、吹出口4から吹出す空気が人に当らないように、導風装置8の可動体8A,8Bにより空気の吹出角度を制御するものである。人避け制御の実行中には、吹出口4から吹出す気流の流路面積を汚染物質の検出量に応じて可動体8A,8Bにより増減させる前述の処理を同時に実行してもよい。
【0031】
次に、図3を参照して、本実施の形態の制御による効果について説明する。図3は、本発明の実施の形態1において、空気清浄機の風量を一定に保持した状態での風速と塵埃の除去効率との関係を示す実験データである。この実験データは、塵埃を発生させた実験室内で空気清浄機1を作動させ、実験室内の9箇所のうちで塵埃の除去効果が得られた箇所の数(効果発現箇所数)を求めることにより得られたものである。効果発現箇所数とは、人が風を受けて不快となる感覚(吹かれ感)が生じないような一定の風量を保持し、かつ、所望の風速を発生させた状態において、塵埃の除去速度が一定の基準以上となった箇所の数として定義される。また、上記実験データは、風量を一定に保持した状態で、導風装置8により風速を4段階に変化させた場合の効果発現箇所数の変化を示している。
【0032】
図3に示す実験データでは、吹出口4から吹出す空気の風速を大きくするほど、効果発現箇所数が増加することがわかる。このように、風量保持制御によれば、吹出す空気の風量を一定に保持した状態で風速を増大させることにより、室内の人に吹かれ感を与えることなく、塵埃の除去効率を向上させることができる。従って、ユーザの快適性を維持しつつ、室内の清浄化に必要な時間を短縮することができる。なお、実施の形態1では、風量保持制御が風量保持制御手段の具体例を示している。
【0033】
実施の形態2.
次に、図4を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。図4は、本発明の実施の形態2による空気清浄機を示す縦断面図である。この図に示すように、本実施の形態による空気清浄機21は、前記実施の形態1とほぼ同様に構成され、導風装置22を備えている。しかし、導風装置22は、吹出口4の後側の開口端に取付けられた1個の可動体22Aと、該可動体22Aを揺動させる駆動部22Bとを備え、吹出口4の前側の開口端には可動体を配置しない構成となっている。
【0034】
このように構成される本実施の形態でも、吹出口4から吹出す気流の流路面積を可動体22Aの揺動位置に応じて変更することができるので、実施の形態1とほぼ同様の効果を得ることができる。具体的に述べると、導風装置22は、可動体22Aを前方に倒すように揺動することにより前記流路面積を減少させる。また、可動体22Aを上方に立てるように揺動することにより前記流路面積を増加させることができる。なお、吹出口4、風路6等の部位には、導風装置22と連動して空気を整流する整流機構を設けてもよい。
【0035】
実施の形態3.
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。図5は、本発明の実施の形態3による空気清浄機を示す斜視図である。この図に示すように、本実施の形態による空気清浄機31は、前記実施の形態1とほぼ同様に構成され、導風装置32を備えている。しかし、導風装置32は、可動体32A,32B及び可動体32C,32Dからなる2組(4個)の可動体と、これらの可動体32A,32B,32C,32Dを揺動させる駆動部(図示せず)とを備えている。
【0036】
可動体32A,32B,32C,32Dは、ケーシング2の左右方向において、例えば吹出口4の半分の長さ寸法を有する長方形状の平板等により形成されている。そして、可動体32A,32Cは、吹出口4の前側の開口端に揺動可能に取付けられ、吹出口4の長さ方向に並べて配置されている。他の可動体32B,32Dは、吹出口4の後側の開口端に揺動可能に取付けられ、吹出口4の長さ方向に並べて配置されている。なお、吹出口4の長さ方向は、吹出口4から吹出す気流の流れ方向と直交する方向であり、ケーシング2の左右方向と一致している。
【0037】
即ち、2組の可動体32A,32B及び可動体32C,32Dは、吹出口4から吹出す気流の流れ方向に対して並列に配置されている。そして、1組の可動体32A,32Bは、吹出口4から吹出す気流の流路全体のうち前方からみて左半分の流路を挟んで配置され、ケーシング2の前後方向で互いに対向している。これらの可動体32A,32Bは、駆動部により互いに近接及び離間するように揺動させたり、非対称に揺動させることができる。また、他の1組の可動体32C,32Dは、前方からみて右半分の流路を挟んで配置され、前後方向で互いに対向している。これらの可動体32C,32Dも、駆動部により可動体32A,32Bと同様に揺動させることができる。
【0038】
このように構成される本実施の形態によれば、吹出口4から吹出す気流の流路断面上の複数個所でそれぞれ流路面積及び吹出角度を個別に変更することができる。即ち、空気清浄機31は、吹出口4の左半分から吹出す気流の風速及び吹出角度を可動体32A,32Bにより変更し、吹出口4の右半分から吹出す気流の風速及び吹出角度を可動体32C,32Dにより変更することができる。従って、実施の形態1とほぼ同様の効果に加えて、吹出口4から複数の方向に空気を吹出したり、個々の方向において風速を異ならせることができ、室内における空気の流れを更に精度よく制御することができる。
【0039】
なお、前記実施の形態3では、4個の可動体32A,32B,32C,32Dをそれぞれ異なる駆動部により揺動させる構成としてもよいし、並んで配置された可動体32A,32Cまたは可動体32B,32Dを共通の駆動部により揺動させてもよい。
【0040】
実施の形態4.
次に、図6を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。図6は、本発明の実施の形態4による空気清浄機を示す縦断面図である。この図に示すように、本実施の形態による空気清浄機41は、前記実施の形態1とほぼ同様に構成され、導風装置42を備えている。しかし、導風装置42は、スライド式の可動体42Aと、該可動体42Aをスライドさせる駆動部(図示せず)とを備えている。
【0041】
可動体42Aは、例えば平板等により構成され、ケーシング2の左右方向において吹出口4と同様の長さ寸法を有している。また、可動体42Aは、吹出口4の開口端の近傍に形成された長溝等に嵌合され、吹出口4から吹出す気流の流路に対して垂直に進入及び後退する方向(例えば、ケーシング2の前後方向)にスライド可能となっている。そして、可動体42Aが気流の流路に進入する方向にスライドしたときには、吹出口4の開口面積、即ち、吹出口4から吹出す気流の流路面積が減少し、風速が増大する。また、可動体42Aが気流の流路から後退する方向にスライドしたときには、吹出口4の開口面積が大きくなるので、風速が減少する。
【0042】
このように構成される本実施の形態でも、制御装置12が駆動部を制御して可動体42Aをスライドさせることにより、可動体42Aのスライド位置に応じて前記流路面積を変更することができる。従って、前記実施の形態1とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、前記実施の形態3では、2組の可動体32A,32B及び可動体32C,32Dを吹出口4から吹出す気流の流れ方向に対して並列に並べる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、3組以上の可動体を気流の流れ方向に対して並列に並べる構成としてもよい。これと同様に、前記実施の形態2,4では、2個以上の可動体22A,42Aを気流の流れ方向に対して並列に並べる構成としてもよい。
【0044】
実施の形態5.
前記実施の形態1では、導風装置8を構成する可動体8A,8Bを吹出口4の前後に取付け、可動体8A,8Bを互いに対向させる構成について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図7に示すように、可動体8A,8Bを前方を開口とするように取付ける構成としてもよい。図7は、本発明の実施の形態5による空気清浄機を示す縦断面図である。この図に示すように、本実施の形態の空気清浄機51は、可動体8Aが吹出口4の後部側に配置され、可動体8Bが吹出口4上に配置されている。これらの可動体8A,8Bは、実施の形態1と同様に、駆動部8C,8Dによりそれぞれ独立に駆動される。
【0045】
本実施の形態によれば、可動体8A,8Bの一方で吹出口4の面積を一部遮ることができ、その分だけ流路の面積を狭くすることができる。これにより、吹出口4から吹出す空気の風速を高速化し、室内空気の清浄化に必要な時間を短縮することができる。なお、本実施の形態では、導風装置8が2個の可動体8A,8Bを備える場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば3個以上の可動体を前後方向に並べることにより、導風装置8を構成してもよい。また、本発明では、2個以上の可動体を左右方向に並べる構成としてもよく、この場合にも、実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、前記実施の形態1から5では、それぞれ個別の構成を例示したが、本発明は、これらの個々の構成のみに限定されるものではない。即ち、本発明では、例えば実施の形態1から4のうち組合わせが可能な複数の構成を組合わせることにより、単一の空気清浄機を実現してもよい。具体例を挙げると、本発明では、実施の形態1,4を組合わせることにより、スライド式の可動体42Aを吹出口4の前部側と後部側の両方に配置し、吹出口4の開口面積を両側から変更する構成としてもよい。
【0047】
実施の形態6.
(風量可変制御)
前記実施の形態1では、風量保持制御について説明したが、実施の形態6では、風量を可変とする風量可変制御を実行することを特徴としている。風量可変制御では、例えば汚染物質検出装置10により検出される汚染物質の検出量に応じて、風量と共に風速を変化させる構成としてもよい。この制御の具体例を挙げると、汚染物質の検出量が予め設定された基準値以上である場合には、送風装置5からの吹出し風量を増加させると共に、吹出口4から吹出す空気の風速を導風装置8により高速化する。上記風量可変制御によれば、室内の空気を清浄化するために必要な時間を、吹出し空気の風量が増加した分だけ短縮することができる。
【0048】
一方、風量可変制御では、室内の空気が清浄化され、汚染物質の検出量が前記基準値未満となった場合に、吹出し空気の風量を元の量に戻す。即ち、吹出し空気の風量を、風量可変制御を開始する前の風量に減少させる。この結果、風量可変制御により風量を増加させる時間を必要最小限に抑制することができる。従って、大きな風量の送風よりユーザが吹かれ感を感じる時間を短縮し、ユーザの快適性を向上させることができる。なお、実施の形態6で説明した風量可変制御は、前記実施の形態1から5で図示した空気清浄機1,21,31,41,51の何れによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0049】
1,21,31,41,51 空気清浄機,2 ケーシング,3 吸込口,4 吹出口,5 送風装置,6 風路,7 清浄化装置,8,22,32,42 導風装置,8A,8B,22A,32A,32B,32C,32D,42A 可動体,8C,8D,22B 駆動部,10 汚染物質検出装置,11 外部検出装置,12 制御装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の流路を挟んで互いに対向する少なくとも2個の可動体を有し、該各可動体が互いに近接及び離間するように揺動することにより前記気流の流路面積及び吹出方向を変更することが可能な導風装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記少なくとも2個の可動体は、前記吹出口の開口端に取付けられた第一可動体と、前記第一可動体と反対側の前記吹出口の開口端に取付けられた第二可動体とを含み、
前記導風装置は、前記第一可動体を揺動させる第一駆動部と、前記第二可動体を揺動させる第二駆動部とを備え、
前記第一可動体及び前記第二可動体の組を、複数組、前記気流の流れ方向と直交する方向に並べて配置し、当該複数組の各組の可動体が個別に揺動することにより前記気流の流路断面上の複数個所でそれぞれ前記流路面積を変更する構成とした空気清浄機。
【請求項2】
空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の流路面積を変更することが可能な導風装置と、
空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する機能を有し、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量に基いて前記導風装置により前記気流の流路面積を変化させる制御装置と、
を備え、
前記導風装置は、第一可動体と、前記第一可動体を動かす第一駆動部と、第二可動体と、前記第二可動体を動かす第二駆動部とを備え、
前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させる空気清浄機。
【請求項3】
前記第一可動体及び前記第二可動体は、基端側が前記ケーシング側に揺動可能に設けられて先端側が前記気流の流路に突出し、前記第一可動体及び前記第二可動体の揺動位置に応じて前記流路面積を変更する構成とした請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記第一可動体及び前記第二可動体は、前記気流の流路に対して進入及び後退する方向にスライド可能であり、前記第一可動体及び前記第二可動体のスライド位置に応じて前記流路面積を変更する構成とした請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記第一可動体及び前記第二可動体を前記気流の流路を挟んで互いに対向するように配置し、前記第一可動体及び前記第二可動体が互いに近接及び離間することにより前記流路面積を変更する構成とした請求項3または4に記載の空気清浄機。
【請求項6】
前記第一可動体及び前記第二可動体が前記吹出口の一部を閉塞させることにより前記流路面積を変更する構成とした請求項1,3から5のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記送風装置により前記吹出口から吹出す空気の風量を一定に保持した状態で、当該空気の風速を前記導風装置により変化させる構成とした請求項1から6のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項8】
前記吹出口から吹出す空気の風量と共に当該空気の風速を、前記導風装置により変化させる構成とした請求項1から7のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
【請求項9】
空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、
前記送風装置により前記吹出口から吹出す空気の風量を一定に保持した状態で当該空気の風速を変化させる風量保持制御手段と、を備え、
前記風量保持制御手段は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させ、汚染物質の量が前記規定値未満である場合に、前記気流の流路面積を増加させる構成とした請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項10】
前記制御装置は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が前記規定値未満である場合に、前記気流の流路面積を増加させる構成とした請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項11】
室内の人を検出する人検出装置と、室内の障害物を検出する障害物検出装置と、室内の広さを検出する広さ検出装置のうち少なくとも1つの検出装置を備え、前記制御装置は、当該検出装置及び前記汚染物質検出装置の検出結果に基いて前記吹出口から吹出す空気の吹出方向及び風量を制御する構成とした請求項9または10に記載の空気清浄機。
【請求項12】
空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の流路を挟んで互いに対向する少なくとも2個の可動体を有し、該各可動体が互いに近接及び離間するように揺動することにより前記気流の流路面積及び吹出方向を変更することが可能な導風装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記少なくとも2個の可動体の組を、複数組、前記気流の流れ方向と直交する方向に並べて配置し、当該複数組の各組の可動体が個別に揺動することにより前記気流の流路断面上の複数個所でそれぞれ前記流路面積を変更する構成とした空気清浄機。
【請求項13】
空気の吸込口及び吹出口を有するケーシングと、
前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出す送風装置と、
前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
前記吹出口から吹出す気流の流路を挟んで互いに対向する少なくとも2個の可動体を有し、該各可動体が互いに近接及び離間するように揺動することにより前記気流の流路面積及び吹出方向を変更することが可能な導風装置と、
前記送風装置及び前記導風装置を制御する制御装置と、
空気中の汚染物質の量を検出する汚染物質検出装置と、
前記送風装置により前記吹出口から吹出す空気の風量を一定に保持した状態で当該空気の風速を変化させる風量保持制御手段と、
を備え、
前記風量保持制御手段は、前記汚染物質検出装置により検出された汚染物質の量が規定値以上である場合に、前記導風装置により前記気流の流路面積を減少させ、汚染物質の量が前記規定値未満である場合に、前記気流の流路面積を増加させる構成とした空気清浄機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-12-26 
出願番号 特願2015-543780(P2015-543780)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (F24F)
P 1 652・ 121- YAA (F24F)
P 1 652・ 113- YAA (F24F)
P 1 652・ 161- YAA (F24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田中 一正  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 藤原 直欣
槙原 進
登録日 2017-11-10 
登録番号 特許第6237782号(P6237782)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 空気清浄機  
代理人 小泉 康男  
代理人 高橋 英樹  
代理人 小澤 次郎  
代理人 久野 淑己  
代理人 小泉 康男  
代理人 高橋 英樹  
代理人 小澤 次郎  
代理人 高田 守  
代理人 久野 淑己  
代理人 高田 守  

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