ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23L |
---|---|
管理番号 | 1349655 |
異議申立番号 | 異議2018-700466 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-06-06 |
確定日 | 2019-01-18 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6244494号発明「野菜エキス組成物、調味料及び食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6244494号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6244494号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6244494号の請求項1?7に係る特許(以下、総称して「本件特許」という。)についての出願は、平成29年7月31日に特許出願され、平成29年11月17日にその特許権の設定登録がされ、平成29年12月6日に特許掲載公報が発行され、これに対して平成30年6月6日に特許異議申立人 白井 雅恵(以下、「申立人」という。)により特許異議申立書が提出され、本件特許の請求項1?7に係る特許について特許異議の申立てがされたものである。 そして、その後の手続は以下のとおりである。 ・平成30年8月21日付け取消理由通知(発送日:平成30年8月23日) ・平成30年10月17日に特許権者による意見書並びに訂正請求書及び同訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲の提出 ・平成30年11月21日に申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成30年10月17日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲を、同訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を求めるものであって、本件訂正の内容は以下の(1)?(7)のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「乾燥固形分中に、 白菜成分を22?77質量%、 タマネギ成分を8?60質量%、 キャベツ成分を2?35質量% 含有する」という記載を、 「野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からなり、 乾燥固形分全質量あたり、 白菜成分が30.1?71.9質量%、 タマネギ成分が13.7?50.0質量%、 キャベツ成分が5.6?30.2質量% である」に訂正する(以下、「訂正事項1」という。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3における「更に、乾燥固形分全質量あたり、ニンジン成分を2?32質量%、及び/又は、ジャガイモ成分を4?41質量%含有する請求項1又は2に記載の野菜エキス組成物」という記載を、 「野菜成分が、ニンジン成分及びジャガイモ成分のうち少なくとも1種の成分と、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からなり、 乾燥固形分全質量あたり、 ニンジン成分が2?32質量%、及び/又は、ジャガイモ成分が4?41質量%、 白菜成分が30.1?71.9質量%、 タマネギ成分が13.7?50.0質量%、 キャベツ成分が5.6?30.2質量% である野菜エキス組成物」に訂正する(以下、「訂正事項2」という。)。 (3)訂正事項3 願書に添付した明細書の段落【0009】における「即ち、本発明に係る野菜エキス組成物は、乾燥固形分中に、白菜成分を22?77質量%、タマネギ成分を8?60質量%、キャベツ成分を2?35質量%含有する。」という記載を、 「即ち、本発明に係る野菜エキス組成物は、野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分で構成され、乾燥固形分全質量あたり、白菜成分が30.1?71.9質量%、タマネギ成分が13.7?50.0質量%、キャベツ成分が5.6?30.2質量%である。」に訂正する。(以下、「訂正事項3」という。)。 (4)訂正事項4 願書に添付した明細書の段落【0015】?【0016】に記載された乾燥固形分中の白菜成分の量を「22?77質量%」から「30.1?71.9質量%」に、「22質量%」から「30.1質量%」に、「77質量%」から「71.9質量%」に訂正する。(以下、「訂正事項4」という。)。 (5)訂正事項5 願書に添付した明細書の段落【0017】?【0018】に記載された乾燥固形分中のタマネギ成分の量を「8?60質量%」から「13.7?50.0質量%」、「8質量%」から「13.7質量%」に、「60質量%」から「50.0質量%」に訂正する。(以下、「訂正事項5」という。)。 (6)訂正事項6 願書に添付した明細書の段落【0020】?【0021】に記載された乾燥固形分中のキャベツ成分の量を「2?35質量%」から「5.6?30.2質量%」、「2質量%」から「5.6質量%」に、「35質量%」から「30.2質量%」に訂正する。(以下、「訂正事項6」という。)。 (7)訂正事項7 願書に添付した明細書の段落【0022】における「36質量%を超えると」という記載を、「32質量%を超えると」に訂正する(以下、「訂正事項7」という。)。 ここで、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?7〕に対して請求されたものである。 また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1?7〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からなることを特定し、乾燥固形分中の白菜成分量、タマネギ成分量及びキャベツ成分量について、その範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1の訂正後の内容は、特許明細書等における明細書の段落【0026】及び【0050】?【0054】(特に、表1)の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、上記アのとおりであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1又は請求項2の記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1を引用するものに特定し、また、他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であり、さらに、野菜成分が、ニンジン成分及びジャガイモ成分のうち少なくとも1種の成分と、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分から成ることを特定し、乾燥固形分中の白菜成分量、タマネギ成分量及びキャベツ成分量について、その範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書第4号に掲げる、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2の訂正後の内容は、特許明細書等における明細書の段落【0014】、【0026】及び【0050】?【0059】(特に、表1及び表3)の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、上記アのとおりであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3?6について ア 訂正の目的について 訂正事項3?6は、訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために行う訂正である。 したがって、訂正事項3?6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3?6の訂正後の内容は、特許明細書等における明細書の段落【0014】、【0026】及び【0050】?【0059】(特に、表1及び表3)の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項3?6は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3?6は、上記アのとおりであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項3?6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項7について ア 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の特許明細書等における明細書の段落【0022】において、「36質量%を超えると」との記載を「32質量%を超えると」に訂正しようとするものであるところ、訂正事項7に関して、特許明細書等には、以下の記載がある。 ・「[ニンジン成分:乾燥固形分中に2?32質量%]」(段落【0022】) ・「よって、ニンジン成分を配合する場合は、乾燥固形分中の成分量が2?32質量%になるようにする。」(段落【0022】) ・「表3」において、ニンジン成分についての乾燥固形分中の含有量が32.2質量%であるNo.B4の組成物の総合評価が△となること。 上記記載によれば、「36質量%を超えると」が「32質量%を超えると」の誤記であることは明らかである。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 当初明細書等においても上記アで列挙した記載と同じ記載があり、上記アのとおりであるから、訂正事項7は、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項7は、上記アのとおり、誤記を訂正するためのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 3 小括 以上のとおり、訂正事項1?7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1?4号に掲げる事項のいずれかを目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、結論のとおり訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明(以下、順に「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からなり、 乾燥固形分全質量あたり、 白菜成分が30.1?71.9質量%、 タマネギ成分が13.7?50.0質量%、 キャベツ成分が5.6?30.2質量% である野菜エキス組成物。 【請求項2】 各成分の配合比が、全窒素比で、白菜成分:タマネギ成分:キャベツ成分=25?79:7?58:2?33である請求項1に記載の野菜エキス組成物。 【請求項3】 野菜成分が、ニンジン成分及びジャガイモ成分のうち少なくとも1種の成分と、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からなり、 乾燥固形分全質量あたり、 ニンジン成分が2?32質量%、及び/又は、ジャガイモ成分が4?41質量%、 白菜成分が30.1?71.9質量%、 タマネギ成分が13.7?50.0質量%、 キャベツ成分が5.6?30.2質量% である野菜エキス組成物。 【請求項4】 ニンジン成分及びジャガイモ成分の両方を含有し、 各成分の配合比が、全窒素比で、白菜成分:タマネギ成分:キャベツ成分:ニンジン成分:ジャガイモ成分=25?79:7?58:2?33:1?19:2?22である請求項3に記載の野菜エキス組成物。 【請求項5】 請求項1?4のいずれか1項に記載の野菜エキス組成物を含有する調味料。 【請求項6】 前記野菜エキス組成物を0.03?34質量%含有する請求項5に記載の調味料。 【請求項7】 請求項5又は6に記載の調味料を用いて製造された食品。」(なお、下線は訂正請求書に添付した訂正した特許請求の範囲において、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。)。 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 平成30年8月21日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。 (1)取消理由1(進歩性) 本件発明1?7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明、周知事項1?3(甲第1、2及び10号証)及び慣用手段(甲第1及び10号証)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)取消理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1?7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (3)取消理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1?7に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 <申立人の提出した証拠方法> 甲第1号証:特開2001-29042号公報(以下、「甲1」という。) 甲第2号証:螺澤七郎,”野菜エキスの利用動向”,「月刊フードケミカル 2002-10」,Vol.18,No.10,株式会社食品化学新聞社,平成14年10月1日,p.54-57(以下、「甲2」という。) 甲第3号証:杉浦正久,”野菜エキス”,「月刊フードケミカル 1995-6」,Vol.11,No.6,株式会社食品化学新聞社,平成7年6月1日,p.36-44(以下、「甲3」という。) 甲第4号証:”井村屋製菓株式会社 調味料事業部 主要商品一覧表 Smile&Taste”と題するリーフレット,井村屋製菓株式会社 調味料事業部,「2002.5/1.500」(以下、「甲4」という。) 甲第5号証:”井村屋 主要商品添加効果一覧表 Value”と題するリーフレット,井村屋製菓株式会社 調味料事業部,「2002.5/1.500」(以下、「甲5」という。) 甲第6号証:特開2008-90号公報(以下、「甲6」という。) 甲第7号証:特開平10-191924号公報(以下、「甲7」という。) 甲第8号証:”【カロリー】「コープ 野菜ブイヨン 箱80g」の栄養バランス(2012/2/24調ベ)”,[online],平成24年2月24日,eatsmart,[平成30年5月30日検索],インターネット<URL:https://www.eatsmart.jp/do/caloriecheck/detail/param/foodCode/l025480003405>(以下、「甲8」という。) 甲第9号証:”野菜ブイヨン80g(8g×10袋)<調味料>ブイヨン・コンソメ<コープ商品情報検索”,[online],日本生活協同組合連合会,[平成30年5月30日検索],インターネット<URL:http://mdinfo.jccu.coop/bb/shohindetail/4902220344352/?_ga=2.108903556.781308690.1504147210-458549736.1504147209>(以下、「甲9」という。) 甲第10号証:特開2007-166902号公報(以下、「甲10」という。) 甲第11号証:”野菜エキスの市場動向”,「月刊フードケミカル 2017-12」,Vol. 33,No.12,株式会社食品化学新聞社,平成29年12月1日,p.38-45(以下、「甲11」という。) 2 甲号証について (1)甲1について ア 甲1の記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1(特開2001-29042号公報)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 カルノシン含有天然エキスと野菜類エキス及び/又は魚介類エキスとを組み合わせて得た食用天然カルノシン含有組成物。 【請求項2】 カルノシン含有天然エキスが40?70重量%、野菜類エキス及び/又は魚介類エキスが30?60重量%の比率で組み合わされていることを特徴とする食用天然カルノシン含有組成物。」 (イ)「【0015】 【課題を解決するための手段】本願の発明者は、天然のカルノシンを含有し、しかも天然物から簡単、かつ安価に入手できる食用の天然カルノシン含有組成物を提供するために、天然物からのカルノシンを含有した抽出エキスを用いることを採用し、更に食品に不可欠なおいしさを具備したカルノシン含有組成物とするために、野菜等の天然物の抽出エキスをこの天然物からのカルノシンを含有した抽出エキスと共に用いることを考えた。」 (ウ)「【0044】すなわち、この発明は、カルノシン含有天然エキスと野菜類エキス及び/又は魚介類エキスとを組み合わせてなる食用の天然カルノシン含有組成物である。ここで、カルノシン含有天然エキスと野菜類エキス及び/又は魚介類エキスとの組み合わせは、カルノシン含有天然エキスが40?70重量%、野菜類エキス及び/又は魚介類エキスが30?60重量%の比率とすることが好ましい。 【0045】前記の本発明の食用天然カルノシン含有組成物は、これ単独で飲食に供することができる。たとえば、エキス状のまま飲用に供したり、乾燥させて粉末状にして飲食に供したり、従来公知の造粒材、造型材を用いて、粒状品、打錠品として提供することができる。 【0046】また、従来公知の、通常の食品、飲料の原材料・構成成分・構成要素の中に含有させて、飲食に供することができる。例えば、飲料水の中に溶かして天然カルノシン含有飲料水とすることもできるし、スープの中に入れたり、パンの原料の中に入れて天然カルノシン含有食品として飲食に提供でき、その天然カルノシン含有飲料・食品の形態は、濃縮されたスープ様、飲料用の液体、粉末状、固形状の食品など、種々の形態とすることができる。 【0047】前記において、カルノシン含有天然エキスは、牛、鶏、豚、硬骨魚(カツオ、マグロ)、ウナギ等の脊椎動物の筋肉を原材料とし、これを10倍量の熱水(85℃?95℃)で抽出し、その抽出液を真空濃縮で濃縮して得ることができる。 【0048】ただし、前記以外であっても天然物であって、高濃度にカルノシンを含有している天然物であればいずれも使用することができ、カルノシンを含有する天然エキスの製造方法も前記の方法に限られるものではない。 【0049】例えば、エチルアルコール50%溶液を用いて抽出することも可能であるし、前記のような熱水抽出の場合に、抽出に用いる熱水の量を、原材料となる脊椎動物の筋肉に対して10倍乃至20倍程度の量とし、熱水の温度を60℃?95℃程度の範囲とすることが可能である。 【0050】ただし、カルノシンの生理的効果を有効に発揮させる上では、固型分とした際に、固型分100gあたり400mg以上のカルノシンを含有している抽出液となるように、カルノシンを含有する天然エキスを調製することが望ましい。 【0051】また前記において、野菜類エキスは白菜、キャベツなどの天然の野菜を原料とし、これを10倍量の熱水(85℃?95℃)で抽出し、その抽出液を真空濃縮で濃縮して得ることができる。ただし、前記以外であっても天然物であって、カルノシンと併用した際に、カルシノンの生理的効果を増強させることができものであればいずれも使用することができ、野菜エキスの製造方法も前記の方法に限られるものではない。 【0052】例えば、エチルアルコール50%溶液を用いて抽出することも可能であるし、前記のような熱水抽出の場合に、抽出に用いる熱水の量を、原材料となる野菜に対して10倍乃至20倍程度の量とし、熱水の温度を60℃?95℃程度の範囲とすることが可能である。 【0053】更に、前記において、魚介類エキスはカニ、エビ、アサリ、昆布などの魚介類を原料とし、これを10倍量の熱水(85℃?95℃)で抽出し、その抽出液を真空濃縮で濃縮して得ることができる。ただし、前記以外であっても天然物であって、カルノシンと併用した際に、カルシノンの生理的効果を増強させることができものであればいずれも使用することができ、魚介類エキスの製造方法も前記の方法に限られるものではない。 【0054】例えば、エチルアルコール50%溶液を用いて抽出することも可能であるし、前記のような熱水抽出の場合に、抽出に用いる熱水の量を、原材料となる魚介類に対して10倍乃至20倍程度の量とし、熱水の温度を60℃?95℃程度の範囲とすることが可能である。 【0055】なお、カルノシン含有天然エキスと野菜類エキスとを組み合わせただけでも本発明の食用天然カルノシン含有組成物とすることができるし、カルノシン含有天然エキスと魚介類エキスとを組み合わせただけでも本発明の食用天然カルノシン含有組成物とすることができる。更に、カルノシン含有天然エキスに野菜類エキスと魚介類エキスの双方を組み合わせて本発明の食用天然カルノシン含有組成物とすることもできる。これらの組み合わせは、味覚、美味しさ、風味などの観点から種々に変更することができる。また、野菜類エキスは、白菜、キャベツなど一種類の野菜からのエキスを用いることもできるし、複数の野菜のエキスを組み合わせて用いることもできる。魚介類エキスも、カニ、エビ、アサリ、昆布など一種類の魚介類からのエキスを用いることもできるし、複数の魚介類のエキスを組み合わせて用いることもできる。いずれも味覚、美味しさ、風味などの観点から種々に変更することができる。 【0056】本発明の食用天然カルノシン含有組成物は、前述したように、従来公知の、通常の食品、飲料の原材料・構成成分・構成要素の中に含有させて飲食に供することができるが、一回の飲食に際して、50mg以上のカルシノンが含有されているように本発明の食用天然カルノシン含有組成物を飲食物の原材料・構成成分・構成要素中に含有させることが、カルシノンの生理的効果を有効に発揮させる上で好ましい。 【0057】ここで、本発明の食用天然カルノシン含有組成物を従来公知の飲食物の原材料・構成成分・構成要素中に含有させ、天然カルノシン含有飲料・食品とする際には、最終製品たる天然カルノシン含有飲料・食品の味を調整するため、微量の副素材として、微量の香辛料・調味料、例えば、塩、胡椒などを用いることが好ましい。 【0058】なお、前記において、カルノシン含有天然エキスと野菜類エキス及び/又は魚介類エキスとの成分割合を前記のように、固型分100gあたり400mg以上のカルノシンを含有しているカルノシン含有天然エキスを40?70重量%、野菜類エキス及び/又は魚介類エキスを30?60重量%の比率したのは、本発明の食用天然カルノシン含有組成物は飲食物に含有されて、長年に渡って日常的に飲食されるものである事から、これに相応しい味、呈味、風味を持たせるという観点から定められたものである。すなわち、野菜類エキス及び/又は魚介類エキスの成分比率が30重量%より少ないと、味覚の面から不十分であり、逆に、60重量%を越えると、かえって、長年に渡る日常的な飲食には相応しくない味覚、風味となるので好ましくない。」 (エ)「【0062】 【実施例1】カルノシン含有天然エキスとしてビーフミートエキス5kgを用い、野菜類エキスとしてオニオンエキス1.2kg、白菜エキス1.2kg、ジンジャーエキス0.2kg、ガーリックエキス0.2kg、椎茸エキス0.2kgを用いた。 【0063】これに、味覚を調整するための副素材として、食塩(岩塩又は自然塩)2kg、黒コショウ粉0.05kgを混合し、9.05kgの液体状の濃縮スープを得た。 前記において、ビーフミートエキスは、原料となるビーフミートに対して15倍量の熱水(80℃)を用いて抽出し、その抽出液を真空濃縮で濃縮して得たものである。また、野菜類エキスは、原料となるオニオン(玉葱)などの野菜を20倍量の熱水(95℃)で抽出し、その抽出液を真空濃縮で濃縮して得たものである。」 (オ)「【0070】 【実施例2】カルノシン含有天然エキスとしてチキンミートエキス4.0kgを用い、野菜類エキスとしてオニオンエキス0.7kg、白菜エキス0.4kg、ジンジャーエキス0.2kg、ガーリックエキス0.1kg、人参エキス0.2kg、セロリーエキス0.2kgを用いた。これに、最終製品の味覚を調整するための副素材として、食塩(岩塩又は自然塩)1.0kg、、白コショウ粉末0.002kgを混合して6.5kgの濃縮エキスを得た。 【0071】この濃縮エキスは、一回の飲食にとって適量な150cc?200ccの水又はお湯に、この濃縮エキス2gを溶解し、濃縮チキン滋養飲料として飲用することができる。 【0072】前記において、チキンミートエキスは、原料となるチキンミートを20倍量の熱水(95℃)で抽出し、その抽出液を真空濃縮で濃縮して得たものである。また、野菜類エキスは、原料となるオニオン(玉葱)等の野菜を15倍量の熱水(80℃)で抽出し、その抽出液を真空濃縮で濃縮して得たものである。」 (カ)「【0078】 【実施例3】カルノシン含有天然エキスとしてカツオエキス4.0kgを用い、野菜類エキスとして白菜エキス2kg、キャベツエキス1.0kg、オニオンエキス1.0kg、ジンジャーエキス0.5kg、魚介類エキスとして昆布エキス1.0kgを用い、これらを混合して8.6kgの濃縮エキスを得た。この濃縮エキス8.6kgにデキストリン2.5kgを混合してトラム・ドライヤーにて乾燥して10.0kgの野菜風味飲料用の粉末を得た。 【0079】前記において、カツオエキスは、原料となるカツオを10倍量の熱水(60℃)で抽出し、その抽出液を真空濃縮で濃縮して得たものである。また、野菜類エキスは、原料となる白菜等の野菜を10倍量の熱水(60℃)で抽出し、その抽出液を真空濃縮で濃縮して得たものであり、魚介類エキスは、原料となる昆布を10倍量の熱水(60℃)で抽出し、その抽出液を真空濃縮で濃縮して得たものである。 【0080】この粉末は、一回の飲食にとって適量な150cc?200ccの水又はお湯に、この粉末4gを溶解し、野菜風味の飲料として飲用することができる。」 (キ)「【0085】本発明の野菜風味飲料用の粉末は、粉末状にて携帯に便利で、飲料としてのみならず調味料にも利用でき、保健食品としての利用も考えられる。」 イ 上記アの記載から分かること 上記ア(カ)の実施例3についての記載によれば、カルノシン含有天然エキスとしてカツオエキス4.0kgを用い、野菜類エキスとして白菜エキス2kg、キャベツエキス1.0kg、オニオンエキス1.0kg、ジンジャーエキス0.5kg、魚介類エキスとして昆布エキス1.0kgを用い、これらを混合して得た濃縮エキス8.6kgにデキストリン2.5kgを混合して、乾燥して10.0kgの野菜風味飲料用の粉末を得たのであるから、野菜風味飲料用の粉末が、カルノシン含有天然エキスであるカツオエキスの粉末と、野菜類エキスの粉末と、魚介類エキスである昆布エキスの粉末を含み、野菜類エキスの粉末が、白菜エキスの粉末、オニオンエキスの粉末、キャベツエキスの粉末、ジンジャーエキスの粉末からなることが分かる。 そこで、野菜風味飲料用の粉末の乾燥固形分全質量あたりの、白菜エキスの粉末、オニオンエキスの粉末、キャベツエキスの粉末、ジンジャーエキスの粉末の質量%を算出するにあたり、同種の野菜でも水分量や成分量が変動するため、同じ条件で濃縮しても得られるエキスの乾燥固形分量は同じにならず、異なる種類の野菜ではなおさら同等にはならないから、カツオエキス、野菜類エキス及び昆布エキスの配合比と、野菜風味飲料用の粉末の乾燥固形分中の各成分の割合は同じにならない。 そうすると、濃縮エキス8.6kg中の各エキスの質量が分かっているとしても、野菜風味飲料用の粉末の乾燥固形分全質量あたりの、白菜エキスの粉末、キャベツエキスの粉末、オニオンエキスの粉末、ジンジャーエキスの粉末の質量%を算出することはできない。 ウ 甲1発明 上記ア及びイを総合すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「カルノシン含有天然エキスであるカツオエキスの粉末と、野菜類エキスの粉末と、魚介類エキスである昆布エキスの粉末を含み、野菜類エキスの粉末が、白菜エキスの粉末、キャベツエキスの粉末、オニオンエキスの粉末、ジンジャーエキスの粉末からなる野菜風味飲料用の粉末。」 (2)甲2について 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2には、次の事項が記載されている。 ア 「(4)野菜エキスの原料 ほとんどの野菜はエキス化が可能であるが、野菜エキスの原科として使用されることが多い野菜とその分類を表2に示す。」(55頁左欄3?6行) イ 「 ![]() 」(55頁左欄の表2) ウ 「(イ)オニオンエキス 加工食品の多くに使用されており、国内生産量・輸入量が最も多いエキスである。用途としては、スープ・各種ソース(ウスターソース・トマトソース・ステーキソース等)・タレ(焼肉・米菓等)・ドレッシング等がある。特にソース類・タレ類などには主原料のひとつとして使用されているが、最近、ソース・タレ類の生産量は減少ぎみである。表3にソース類の生産量の推移を示す。特殊な加熱処理によりロースト感を強調したエキスや、オニオンフレーバーに特徴のあるエキスの利用も多くなっている。」(55頁左欄下から4行?右欄8行) エ 「(ロ)キャロットエキス 人参特有の「風味」「甘味」をもつエキスであり、タレ類(焼肉・肉団子等)、ソース類(ミートソース・トマトソース・デミグラスソース等)、スープ(ヤサイスープ・カレースープ等)に用途がある。種々の加工食品に隠し味用途で少量使用するだけでコク味のアップが図れる。表4に冷凍調味食品の生産量の推移を示す。」(55頁右欄9?16行) オ 「(ニ)キャベツエキス キャベツの煮込み風味を利用して、ロールキャベツのようにキャベツ煮込み惣菜の風味強化に用途がある。ハクサイ・ネギと同様即席麺用スープにも使用が多いエキスである。」(55頁右欄下から2行?56頁左欄3行) カ 「(チ)ハクサイエキス 和・中華風加工食品には欠かせないエキスであるが、煮込み風味と甘さがコク味・旨みを付与するのでスープ・惣菜の調味液に使用されることが多くなってきている。」(56頁左欄17?21行) (3)甲10について 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲10には、次の事項が記載されている。 ア 「【0010】 また本発明で言う野菜磨砕物、及び野菜エキスとは、野菜を切断、又はミキシングなど物理的に粉砕したもの、及び野菜から抽出、もしくは搾汁などにより得られたものであり、その形態は液体、固体(粉体)、ペースト状いずれでもよく、また数種の野菜の混合物であっても本発明の妨げにはならない。野菜の種類に関して特に制限はなく、タマネギ、ジャガイモ、さつまいも、大根、カブ、ニンジン、ごぼう等の根菜類、ホウレンソウ、白菜、キャベツ、ネギ等の葉菜類、その他ナス、ウリ、キュウリ、かぼちゃ等の野菜から適宜1種以上を用いることができる。ガーリック、タマネギ、ニラ、ネギ等に代表されるAllium属植物、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワーに代表されるBrassica属植物など、硫黄源を多く含む植物を用いるとより好ましいローストミートフレーバー様調味料を得ることができる。野菜磨砕物及び/又は野菜エキスは、その固形分換算で加熱時の溶液中に、0.1?20重量%添加されていれば良く、0.1%以下では効果が少なく、20%以上では野菜風味が強くなりすぎミートフレーバー様ではなくなる。」 イ 「【0014】 【実施例2】 40部の実施例1で用いた酵母エキス粉末に6部のキシロースを加え、表2に示す各野菜エキス(タマネギエキス:池田糖化工業(株)社製、キャベツエキス:日研フード(株)社製、ガーリックエキス:日研フード(株)社製、ニンジンエキス:日研フード(株)社製)又は野菜磨砕物(市販の野菜をミキサーで磨砕調製したもの)が加熱時溶液全体の0.1?30%(重量%、固形分換算)になるように添加し、全量が100部になるように水を加えた溶液を90℃、1時間の加熱処理を加え生成するローストミ-トフレーバー様調味料の官能評価を行った。実施例1と同様に1%の水溶液を調製し、10名の味覚パネルにより、ビーフ特有のコク味の好ましさについて評価を実施した。評価は、各サンプルでの単独評価で、1:好ましくない、2:やや好ましくない、3:やや好ましい、4:好ましい、5:非常に好ましい、の5点評価とした。結果を表2に示す様に、これらの添加量は加熱時養液中0.1?20%が適当であった。 【0015】 【表2】 ![]() 」 3 当審の判断 3-1 取消理由1(進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ・甲1発明の「野菜類エキスの粉末」は、本件発明1の「野菜成分」に相当し、以下同様に、「白菜エキスの粉末」は「白菜成分」に、「オニオンエキスの粉末」は「タマネギ成分」に、「キャベツエキスの粉末」は「キャベツ成分」に、「野菜風味飲料用の粉末」は「野菜エキス組成物」に、それぞれ相当する。 ・甲1発明の「カルノシン含有天然エキスであるカツオエキスの粉末と、野菜類エキスの粉末と、魚介類エキスである昆布エキスの粉末を含み、野菜類エキスの粉末が、白菜エキスの粉末、キャベツエキスの粉末、オニオンエキスの粉末、ジンジャーエキスの粉末からなる」ことは、本件発明1の「野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からな」ることに、「野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分を含む」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者は「野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分を含む野菜エキス組成物。」の点で一致し、以下の点で相違する。 (ア)相違点1-1 「野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分を含む」ことに関し、本件発明1は、「野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からな」るのに対して、甲1発明は、「カルノシン含有天然エキスであるカツオエキスの粉末と、野菜類エキスの粉末と、魚介類エキスである昆布エキスの粉末を含み、野菜類エキスの粉末が、白菜エキスの粉末、キャベツエキスの粉末、オニオンエキスの粉末、ジンジャーエキスの粉末からなる」点(以下、「相違点1-1」という。)。 (イ)相違点1-2 本件発明1は、「乾燥固形分全質量あたり、 白菜成分が30.1?71.9質量%、 タマネギ成分が13.7?50.0質量%、 キャベツ成分が5.6?30.2質量% である」のに対して、甲1発明は、そのような特定がされていない点(以下、「相違点1-2」という。)。 イ 判断 事案に鑑み、相違点1-2について検討する。 野菜エキス組成物において、「乾燥固形分全質量あたり、白菜成分が30.1?71.9質量%、タマネギ成分が13.7?50.0質量%、キャベツ成分が5.6?30.2質量%」とすること、すなわち、上記相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲2?11には記載されていない。 また、調味料や食品に用いる野菜成分を含有する組成物において、白菜成分がコク味・旨みを増す成分であることは、例えば甲2(特に、上記2(2)カ)に記載があるように本件特許の出願前に周知の事項(以下、「周知事項1」という。)であり、また、タマネギ成分が旨みを増す成分であることは、例証するまでもなく、本件特許の出願前に周知の事項(以下、「周知事項2」という。)であり、さらに、複数の成分の含有量を旨みを考慮して調整することは、本件特許の出願前にごく普通に行われていること(以下、「慣用手段」という。必要があれば、甲1(特に、段落【0058】)及び甲10を参照。)であることを考慮しても、甲1発明において、白菜エキスの粉末(白菜成分)、オニオンエキスの粉末(オニオン成分)及びキャベツエキスの粉末(キャベツ成分)について着目し、これらの質量%を所定の範囲とする動機付けはない。 そうすると、甲1発明において、上記相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 そして、本件発明1は、上記相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、「素材の味を生かしつつ料理の風味を向上し、様々なジャンルの惣菜に適用することができる調味料が得られ、動物系エキスや化学調味料などを用いず、単独で使用しても青臭さなどの野菜由来の過剰な香味を抑えながら、旨味に由来する濃厚感やコクを適度に有する食品を得ることができる。」という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、相違点1-1を検討するまでもなく、甲1発明、甲2?11に記載された事項、周知事項1、周知事項2及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2について 本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項2において、請求項1を引用しているから、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件発明2は、上記(1)の本件発明1の検討を踏まえると、甲1発明、甲2?11に記載された事項、周知事項1、周知事項2及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明3について ア 対比 本件発明3と甲1発明とを対比する。 ・甲1発明の「野菜類エキスの粉末」は、本件発明3の「野菜成分」に相当し、以下同様に、「白菜エキスの粉末」は「白菜成分」に、「オニオンエキスの粉末」は「タマネギ成分」に、「キャベツエキスの粉末」は「キャベツ成分」に、「野菜風味飲料用の粉末」は「野菜エキス組成物」に、それぞれ相当する。 ・甲1発明の「カルノシン含有天然エキスであるカツオエキスの粉末と、野菜類エキスの粉末と、魚介類エキスである昆布エキスの粉末を含み、野菜類エキスの粉末が、白菜エキスの粉末、キャベツエキスの粉末、オニオンエキスの粉末、ジンジャーエキスの粉末からなる」ことは、本件発明3の「野菜成分が、ニンジン成分及びジャガイモ成分のうち少なくとも1種の成分と、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からな」ることに、「野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分を含む」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者は「野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分を含む野菜エキス組成物。」の点で一致し、以下の点で相違する。 (ア)相違点3-1 「野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分を含む」ことに関し、本件発明3は、「野菜成分が、ニンジン成分及びジャガイモ成分のうち少なくとも1種の成分と、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からな」るのに対して、甲1発明は、「カルノシン含有天然エキスであるカツオエキスの粉末と、野菜類エキスの粉末と、魚介類エキスである昆布エキスの粉末を含み、野菜類エキスの粉末が、白菜エキスの粉末、キャベツエキスの粉末、オニオンエキスの粉末、ジンジャーエキスの粉末からなる」点(以下、「相違点3-1」という。)。 (イ)相違点3-2 本件発明3は、「乾燥固形分全質量あたり、 ニンジン成分が2?32質量%、及び/又は、ジャガイモ成分が4?41質量%、 白菜成分が30.1?71.9質量%、 タマネギ成分が13.7?50.0質量%、 キャベツ成分が5.6?30.2質量% である」のに対して、甲1発明は、そのような特定がされていない点(以下、「相違点3-2」という。)。 イ 判断 事案に鑑み、相違点3-2について検討する。 野菜エキス組成物において、「乾燥固形分全質量あたり、ニンジン成分が2?32質量%、及び/又は、ジャガイモ成分が4?41質量%、白菜成分が30.1?71.9質量%、タマネギ成分が13.7?50.0質量%、キャベツ成分が5.6?30.2質量%」とすること、すなわち、上記相違点3-2に係る本件発明3の発明特定事項は、甲2?11には記載されていない。 また、周知事項1、周知事項2及び慣用手段に加えて、調味料や食品に用いる野菜成分を含有する組成物において、コク味等の向上のために、ニンジン成分及び/又はジャガイモ成分を含有させることは、本件特許の出願前に周知の事項(以下、「周知事項3」という。必要があれば、甲1(特に、実施例2)、甲2(特に、55頁右欄のキャロットエキスの記載)及び甲10(特に、段落【0010】)を参照。)であることを考慮しても、甲1発明において、、ニンジンエキスの粉末(ニンジン成分)及びジャガイモエキスの粉末(ジャガイモ成分)のうち少なくとも1種の粉末(成分)をさらに含み、ニンジンエキスの粉末(ニンジン成分)及びジャガイモエキスの粉末(ジャガイモ成分)のうち少なくとも1種の粉末(成分)、白菜エキスの粉末(白菜成分)、オニオンエキスの粉末(オニオン成分)並びにキャベツエキスの粉末(キャベツ成分)について着目し、これらの質量%を所定の範囲とする動機付けはない。 そうすると、甲1発明において、上記相違点3-2に係る本件発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 そして、本件発明3は、上記相違点3-2に係る本件発明3の発明特定事項を備えることにより、「素材の味を生かしつつ料理の風味を向上し、様々なジャンルの惣菜に適用することができる調味料が得られ、動物系エキスや化学調味料などを用いず、単独で使用しても青臭さなどの野菜由来の過剰な香味を抑えながら、旨味に由来する濃厚感やコクを適度に有する食品を得ることができる。」という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明3は、相違点3-1を検討するまでもなく、甲1発明、甲2?11に記載された事項、周知事項1?3及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明4について 本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項4において、請求項3を引用しているから、本件発明4は、本件発明3の発明特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件発明4は、上記(3)の本件発明3の検討を踏まえると、甲1発明、甲2?11に記載された事項、周知事項1?3及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本件発明5?7について 本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項5?7において、請求項1又は3を直接又は間接的に引用しているから、本件発明5?7は、本件発明1又は3の発明特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件発明5?7は、上記(1)の本件発明1の検討又は上記(3)の本件発明3の検討を踏まえると、甲1発明、甲2?11に記載された事項、周知事項1、周知事項2及び慣用手段に基いて、又は、甲1発明、甲2?11に記載された事項、周知事項1?3及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)まとめ したがって、本件発明1?7は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。 3-2 取消理由2(サポート要件)について (1)本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1において、「野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からなり、乾燥固形分全質量あたり、白菜成分が30.1?71.9質量%、タマネギ成分が13.7?50.0質量%、キャベツ成分が5.6?30.2質量%である」という特定事項(以下、「特定事項A」という。)が記載されたものとなった。 これにより、本件発明1は、本件特許の明細書の段落【0050】における表1の例と対応するものとなったので、白菜成分、タマネギ成分、キャベツ成分の各成分の含有量の上限値と下限値の範囲で官能評価の結果が良好であることが確認できるものとなった。 (2)次に、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項3において、「野菜成分が、ニンジン成分及びジャガイモ成分のうち少なくとも1種の成分と、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からなり、乾燥固形分全質量あたり、ニンジン成分が2?32質量%、及び/又は、ジャガイモ成分が4?41質量%、白菜成分が30.1?71.9質量%、タマネギ成分が13.7?50.0質量%、キャベツ成分が5.6?30.2質量%である」という特定事項(以下、「特定事項B」という。)が記載されたものとなった。 そして、上記表1において、総合評価が△の例も実施例とされていることを考慮すると、本件特許の明細書の段落【0056】における表3において、B1?4、6?10及び12の例は、本件発明3の実施例ということができ、白菜成分:30.7質量%以上51.7質量%以下、タマネギ成分:21.5質量%以上36.2質量%以下、キャベツ成分:6.2質量%以上10.4質量%以下、ニンジン成分:1.8質量%以上32.2質量%以下、ジャガイモ成分:3.6質量%以上41.7質量%以下の範囲が読み取れる。 これを特定事項Bと比べてみると、白菜成分の下限値、タマネギ成分の下限値、キャベツ成分の下限値、ニンジン成分の下限値及び上限値、ジャガイモ成分の下限値及び上限値とほぼ同じであり、本件発明3は、表3と対応するものといえる。 (3)申立人は、表1において、総合評価が△の例は低得点のもので効果があるとは認められず、効果が認められるのは、表1の○のものと解釈すべき旨主張するが(平成30年11月21日に提出された意見書の8?9頁の(5)の主張)、本件特許の明細書の「<総合評価> 「総合評価」は、前述した4項目の評価結果から、下記の基準により◎、○、△、×の4段階で評価した。 ◎:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価がすべて5 ○:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価がいずれも3以上で、かつ「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」の評価点の合計が10?14 △:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価がいずれも2以上で、かつ「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」の評価点の合計が6から9 ×:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価のうち、1項目以上2未満」(段落【0046】)の評価基準を踏まえると、△の「『満足感』、『コク』、『野菜臭さ』、『ざらつき』の評価がいずれも2以上で、かつ『満足感』、『コク』、『野菜臭さ』の評価点の合計が6から9」の評価があれば、効果が認められないとはいえないから、上記申立人の主張は採用できない。 (4)そうすると、本件発明1?7は、発明の詳細な説明において、明細書の段落【0008】に記載されている、「本発明は、野菜由来の過剰な香味を低減し、単独で使用しても旨味を向上させることができ、汎用性のある野菜エキス組成物、調味料及び食品を提供することを目的とする。」という本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものといえる。 したがって、本件発明1ないし7は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 3-3 取消理由3(実施可能要件)について (1)取消理由3(実施可能要件)に対して、特許権者から平成30年10月17日に意見書と共に、次の乙第1号証及び乙第2号証が提出された。 乙第1号証:螺澤七郎,”野菜エキス調味料の近況”,「ジャパンフードサイエンス」,第54巻,第9号,日本食品出版株式会社,2015年9月号,p.21-27(以下、「乙1」という。) 乙第2号証:螺澤七郎,”野菜エキスの新しい傾向とその用途開発”,「ジャパンフードサイエンス」,第29巻,第11号,日本食品出版株式会社,1990年11月号,p.56-62(以下、「乙2」という。) (2)乙1の記載(21頁右欄3行?22頁左欄1行)によると、野菜エキスには、形状や濃縮度が異なるいくつかのタイプがあることが示され、また、乙2の記載(57頁左欄17?21行)によると、たまねぎ(オニオン)エキスには、オイル、オレオレジン、ストレートジュースタイプ(BX≒6?12 )、高濃縮エキス(BX≒60?80)、中間濃縮エキスがあることが示されている。 さらに、甲10の段落【0014】には、「・・・表2に示す各野菜エキス(タマネギエキス:池田糖化工業(株)社製、キャベツエキス:日研フード(株)社製、ガーリックエキス:日研フード(株)社製、ニンジンエキス:日研フード(株)社製)又は野菜磨砕物(市販の野菜をミキサーで磨砕調製したもの)が加熱時溶液全体の0.1?30%(重量%、固形分換算)になるように添加し、・・・」との記載がある。 そうすると、当業者であれば、各野菜エキスを、乾燥固形分中の成分量が本件発明1又は3の範囲になるよう各野菜エキスを混合するにあたり、各野菜エキスの乾燥固形分量(Brix値)を確認し、その確認結果に基づき乾燥固形分中の成分量が本件発明1又は3の範囲になるよう各野菜エキスを配合して混合すればよいことを理解できる。 よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(新規性)の概要 本件発明1、2、5?7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するから、本件特許の請求項1、2、5?7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)当審の判断 本件発明1、2、5?7と、甲1発明とを対比すると、上記第4の3-1(1)ア(イ)に示す相違点1-2又は上記第4の3-1(3)ア(イ)に示す相違点3-2で相違する。 したがって、本件発明1、2、5?7は、甲1発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 野菜エキス組成物、調味料及び食品 【技術分野】 【0001】 本発明は、複数の野菜成分を含む野菜エキス組成物、この組成物を用いた調味料及び食品に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、惣菜類調理用の合わせ調味料には、砂糖、塩、醤油及び味噌などの味付け用調味料の他に、風味や旨味を向上させるために、畜肉系エキス、魚介系エキス、野菜系エキスなどのエキス類が添加されている(特許文献1?4参照)。一般に、畜肉系エキスや魚介系エキスは、風味や旨味が強く、濃厚感やコクを付与する効果が高いが、野菜エキスはこれらの効果が動物系エキスよりも低いため、加工食品において単独で用いられることは少なく、畜肉系エキスや魚介系エキスと組み合わせて用いられることが多い。 【0003】 一方、食物アレルギー患者、菜食主義者及び自然派志向者などように、動物性食品の摂取を避けたり、制限したりする必要がある人向けの調味料では、畜肉系エキス及び魚介系エキスの使用が制限される。このような理由から、近年、肉や魚などの動物性原料を用いない調味料への要求が高まっている。 【0004】 畜肉系エキス及び魚介系エキスに代わるエキス類としては、野菜エキスが挙げられる。従来、調味料に配合される野菜エキスには、ニンニク、ショウガ、ネギ及びセロリなどの香味野菜や、白菜、キャベツ及びほうれん草などの葉物野菜、ニンジンなどの根野菜、マッシュルームや椎茸などのキノコ類などの各種野菜が、目的や用途に応じて適宜組み合わせされて使用されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特開平10-191924号公報 【特許文献2】特開2007-259744号公報 【特許文献3】特開2008-5746号公報 【特許文献4】特開2017-23018号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、野菜エキスは、動物系エキスに比べて旨味などの呈味性が弱く、また、多量に使用すると野菜特有の青臭さや苦み・えぐみなどの好ましくない味が生じることがあるという問題点がある。更に、ネギやショウガなどの香味野菜を原料とするエキスは、特有の香味を有するため、料理全体の香味のバランスが崩れたり、素材の香りや風味がマスキングされたりすることがある。 【0007】 野菜由来の香味を抑える方法としては、香りが少ない野菜のみを原料とするエキスを用いることが考えられるが、その場合、調味料や食品に配合した際の風味や旨味の向上効果も低下する。また、特許文献1に記載の調味料では、野菜由来の好ましくない臭いの発生を防ぐために、アルコール類、食品添加物の酸味料、アルカリ性物質や醸造酢又は梅酢エキスなどを用いて加熱前にpHを3.0?7.0に調整しているが、この方法では、野菜エキス以外の調味料の風味が強くなるため、適用可能な料理が限定されると共に、製造時の作業工程を増やすことになる。 【0008】 そこで、本発明は、野菜由来の過剰な香味を低減し、単独で使用しても旨味を向上させることができ、汎用性のある野菜エキス組成物、調味料及び食品を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者は、前述した課題を解決するために、鋭意実験検討を行った結果、野菜エキス組成物を構成する野菜を特定の組み合わせとし、その配合比を特定の範囲にすることで、野菜臭さを抑えつつ、旨味に由来する濃厚感やコクを相乗的に向上できることを見出し、本発明に至った。 即ち、本発明に係る野菜エキス組成物は、野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分で構成され、乾燥固形分全質量あたり、白菜成分が30.1?71.9質量%、タマネギ成分が13.7?50.0質量%、キャベツ成分が5.6?30.2質量%である。 本発明の野菜エキス組成物は、各成分の配合比を、全窒素比で、白菜成分:タマネギ成分:キャベツ成分=25?79:7?58:2?33とすることができる。 本発明の野菜エキス組成物は、更に、乾燥固形分全質量あたり、ニンジン成分を2?32質量%、及び/又は、ジャガイモ成分を4?41質量%含有していてもよい。 ニンジン成分及びジャガイモ成分の両方を含有する場合、各成分の配合比を、全窒素比で、白菜成分:タマネギ成分:キャベツ成分:ニンジン成分:ジャガイモ成分=25?79:7?58:2?33:1?19:2?22とすることができる。 【0010】 本発明に係る調味料は、前述した野菜エキス組成物を含有するものである。 前記野菜エキス組成物の含有量は、例えば0.03?34質量%とすることができる。 【0011】 本発明に係る食品は、前述した調味料を用いて製造されたものである。 【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、素材の味を生かしつつ料理の風味を向上し、様々なジャンルの惣菜に適用することができる調味料が得られ、動物系エキスや化学調味料などを用いず、単独で使用しても青臭さなどの野菜由来の過剰な香味を抑えながら、旨味に由来する濃厚感やコクを適度に有する食品を得ることができる。 【発明を実施するための形態】 【0013】 以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。 【0014】 (第1の実施形態) 先ず本発明の第1の実施形態に係る野菜エキス組成物について説明する。本実施形態の野菜エキス組成物は、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分とを少なくとも含有し、更に、必要に応じて、ニンジン成分やジャガイモ成分が配合されている。 【0015】 [白菜成分:乾燥固形分中に30.1?71.9質量%] 白菜は、本実施形態の野菜エキス組成物の必須の成分であり、グルタミン酸やアスパラギン酸などの様々なアミノ酸を含んでおり、甘味と濃厚感を付与する効果がある。また、白菜には、野菜臭さを出さずに、料理や食品に煮込み感を付与する効果もある。 【0016】 ただし、野菜エキス組成物中の白菜に由来する成分(白菜成分)の量が、乾燥固形分全質量あたり、30.1質量%未満の場合、前述した効果が得られず、全体として濃厚感を感じられない香味となる。また、白菜成分の量が、乾燥固形分全質量あたり、71.9質量%を超えると、相対的に他の成分の配合量が減るため、成分間の相乗効果が得られず、濃厚感やコクが感じられないものとなる。よって、白菜成分は、乾燥固形分中の含有量が30.1?71.9質量%になるように配合する。なお、濃厚感やコクの向上、野菜由来の香味の適正化の観点から、乾燥固形分中の白菜成分量は、36?68質量%とすることが好ましい。 【0017】 [タマネギ成分:乾燥固形分中に13.7?50.0質量%] タマネギは、本実施形態の野菜エキス組成物の必須の成分であり、辛みや香りの元である硫化アリルを含んでおり、他の野菜成分から生じる香味が過剰にならないよう抑制する効果がある。また、タマネギには、料理の風味をまろやかにし、甘味とコクを付与する効果もある。 【0018】 ただし、野菜エキス組成物中のタマネギに由来する成分(タマネギ成分)の量が、乾燥固形分全質量あたり、13.7質量%未満の場合、前述した効果が得られず、濃厚感やコクが不十分になったりする。また、タマネギ成分の量が、乾燥固形分全質量あたり、50.0質量%を超えると、タマネギエキスに起因する香味が際立ち、料理全体の香味のバランスが崩れたり、素材の香りや風味がマスキングされたりすることがある。更に、タマネギ成分の量が多くなると、相対的に他の成分の配合量が減るため、成分間の相乗効果が得られず、濃厚感やコクが感じられないものとなる。よって、タマネギ成分は、乾燥固形分中の含有量が13.7?50.0質量%になるように配合する。 【0019】 なお、乾燥固形分中のタマネギ成分量は、29?40質量%とすることが好ましい。これにより、前述したタマネギ成分の効果を高め、濃厚感やコクを向上し、野菜由来の過剰な香味のない野菜エキス組成物が得られる。 【0020】 [キャベツ成分:乾燥固形分中に5.6?30.2質量%] キャベツは、本実施形態の野菜エキス組成物の必須の成分であり、ビタミン類を多く含むと共に、特有の風味により濃厚感とコクを向上させる効果がある。ただし、野菜エキス組成物中のキャベツに由来する成分(キャベツ成分)の量が、乾燥固形分全質量あたり、5.6質量%未満の場合、前述した効果が得られず、濃厚感やコクが感じられないものとなり、また、30.2質量%を超えると、キャベツに由来する香味が強くなり、濃厚感が低下する。よって、キャベツ成分は、乾燥固形分中の含有量が5.6?30.2質量%になるように配合する。 【0021】 なお、乾燥固形分中のキャベツ成分量は、5.6?27質量%とすることが好ましい。これにより、前述したキャベツ成分の効果を高め、濃厚感やコクを向上し、野菜由来の過剰な香味のない野菜エキス組成物が得られる。 【0022】 [ニンジン成分:乾燥固形分中に2?32質量%] ニンジンは、特有の甘みがあり、濃厚感を付与する効果があるため、必要に応じて用いられる。ただし、野菜エキス組成物中のニンジンに由来する成分(ニンジン成分)の量が、乾燥固形分全質量あたり、2質量%未満の場合、十分な添加効果が得られず、また、32質量%を超えると、野菜由来の過剰な香味が目立ち、相対的に他の成分の配合量が減ることになるため、却って濃厚感やコクを低下させることになる。よって、ニンジン成分を配合する場合は、乾燥固形分中の成分量が2?32質量%になるようにする。 【0023】 [ジャガイモ成分:乾燥固形分中に4?41質量%] ジャガイモは、澱粉が主成分であるが、ビタミンやミネラルも多く含んでおり、甘みが強く、コクを与える効果がある。そこで、本実施形態の野菜エキス組成物では、必要に応じてジャガイモを用いる。ただし、野菜エキス組成物中のジャガイモに由来する成分(ジャガイモ成分)の量が、乾燥固形分全質量あたり、4質量%未満の場合、十分な添加効果が得られない。また、ジャガイモ成分を、乾燥固形分全質量あたり、41質量%を超えて添加すると、食した際にざらつき感が目立って食感が悪くなったり、野菜由来の過剰な香味が感じられるようになったりする。よって、ジャガイモ成分を配合する場合は、乾燥固形分中の成分量が4?41質量%になるようにする。 【0024】 [各成分の配合比] 前述した各野菜成分の配合比は、全窒素比で、白菜成分:タマネギ成分:キャベツ成分=25?79:7?58:2?33であることが好ましい。これにより、野菜由来の過剰な香味が抑えられると共に、濃厚感やコクが強くなり、料理において汎用性のある野菜エキス組成物とすることができる。また、ニンジン成分とジャガイモ成分を配合する場合は、濃厚感やコクの更なる向上の観点から、全窒素比で、白菜成分:タマネギ成分:キャベツ成分:ニンジン成分:ジャガイモ成分=25?79:7?58:2?33:1?19:2?22とすることが好ましい。 【0025】 [その他の成分] 本実施形態の野菜エキス組成物は、液体状、ペースト状、粉末状などの各種形態をとることができ、液体状又はペースト状の場合、前述した各成分に加えて、水分調整用の水が添加されていてもよい。また、本実施形態の野菜エキス組成物には、前述した各エキス成分に加えて、保存安定性向上のために、食塩や砂糖などが添加されていてもよい。更に、本実施形態の野菜エキス組成物は、本発明の効果に影響を与えない範囲であれば、他の野菜エキスが添加されていてもよい。 【0026】 なお、当然ながら、本実施形態の野菜エキス組成物は、その他の成分を含まず、「白菜成分、タマネギ成分及びキャベツ成分のみ」、又は、「白菜成分、タマネギ成分及びキャベツ成分に加えて、ニンジン成分及びジャガイモ成分のうち少なくとも1種の成分のみ」で構成されていてもよい。 【0027】 [製造方法] 次に、本実施形態の野菜エキス組成物の製造方法について説明する。本実施形態の野菜エキス組成物は、原料となる白菜、タマネギ、キャベツ、必要に応じて、ニンジン及びジャガイモの各野菜のエキス(以下、野菜エキスという。)をそれぞれ個別に準備し、乾燥固形分中の成分量が前述した範囲になるよう各野菜エキスを混合することで製造することができる。また、白菜、タマネギ、キャベツなどの各原料野菜から抽出したエキスよりも野菜成分の濃度が薄い液(抽出液)を、所定割合で混合した後、濃縮して野菜エキス組成物としてもよい。更に、液状又はペースト状の野菜エキス組成物を、乾燥して粉末状にしてもよい。 【0028】 なお、本実施形態の野菜エキス組成物で用いる「野菜エキス」や「野菜成分の抽出液」の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の手法を適用することができる。野菜からエキスを抽出する方法としては、例えば、特許文献4の段落0016に記載されているように、原料である野菜を粉砕後、必要に応じて加熱し、水や有機溶媒で抽出して固液分離する方法、及び、原料である野菜の煮汁を酸や酵素で分解した後濃縮する方法などがあり、本実施形態の野菜エキス組成物は、何れの方法で製造されたものも用いることができる。 【0029】 「野菜エキス」や「野菜成分の抽出液」を製造する際は、遠心分離機、ろ過装置や電気透析機などを用いた精製工程を行ってもよく、また、加熱による濃縮、減圧濃縮、低温濃縮、真空濃縮、凍結濃縮及び逆浸透濃縮などの濃縮工程を行ってもよい。なお、「野菜エキス」や「野菜成分の抽出液」の製造に用いる原料野菜の部位や形態も、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。 【0030】 以上詳述したように、本実施形態の野菜エキス組成物は、白菜成分、タマネギ成分及びキャベツ成分を主成分とし、特定の割合で含有しているため、野菜以外原料からなるエキス類や化学調味料などを併用しなくても、食品の風味や旨味を向上させつつ、調理に用いる素材の味を生かすことができる。また、本実施形態の野菜エキス組成物は、全体のバランスがよく、様々なジャンルの料理に適用できるため、汎用性に優れており、更に、動物性原料を用いていないため、食物アレルギー患者、菜食主義者及び自然派志向者など向けの調味料や食品に好適である。 【0031】 (第2の実施形態) 次に、本実施形態の第2の実施形態に係る調味料について説明する。前述した野菜エキス組成物は、単独で使用してもよいが、他の成分を配合して調味料とすることもできる。具体的には、第1の実施形態の野菜エキス組成物は、液体調味料、ペースト状調味料、固体調味料、粉体調味料などの各種調味料に用いることができ、特に、惣菜料理を簡単に調理するための液体状の合わせ調味料に好適に用いられる。 【0032】 [野菜エキス組成物含有量:0.03?34質量%] 本実施形態の調味料における野菜エキス組成物の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、惣菜用の液体調味料の場合は、野菜エキス組成物を全体の0.03?34質量%の範囲で配合することが好ましい。野菜エキス組成物含有量をこの範囲にすることで、風味、コク及び濃厚感の向上効果が高い調味料が得られる。 【0033】 食品へのコク付与効果向上の観点から、調味料における野菜エキス組成物の配合量は、0.1?19質量%であることが好ましく、より好ましくは0.4?5質量%である。これにより、惣菜などの食品に用いたときに、旨味の持続性に優れた調味液を得ることができる。 【0034】 [その他の成分] 本実施形態の調味料に配合される野菜エキス組成物以外の成分としては、例えば、醤油、塩、砂糖、味噌、酢、みりん及び酒などの味付け用調味料、畜肉系エキス、魚介系エキス及び酵母エキスなどの野菜以外のエキス類、各種オイル、香辛料、増粘剤などが挙げられる。更に、本実施形態の調味料には、肉類、魚介類、野菜類、乾物、穀類、キノコ類、ナッツ類などの具材が配合されていてもよい。 【0035】 [用途] 本実施形態の調味料は、洋風、和風、中華風の各種惣菜の他、スープ類や、加工食品など、各種食品に用いることができるが、特に、和風惣菜に好適である。 【0036】 本実施形態の調味料は、白菜成分、タマネギ成分及びキャベツ成分を主成分とする野菜エキス組成物を用いているため、風味の向上効果が高く、化学調味料などを併用せず、単独で使用しても、食品にコクを付与することができる。また、本実施形態の調味料は、野菜由来の過剰な香味がなく、素材の味をじゃましないため、汎用性が高く、様々な分野の食品に適用することができる。更に、本実施形態の調味料は、野菜エキス組成物以外の成分についても、植物性などの動物由来でない原料のみを用いたものに限定することで、動物性原料不使用の調味料を実現することができる。 【実施例】 【0037】 以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。 【0038】 (第1実施例) 先ず、本発明の第1実施例として、所定の割合で、白菜エキス、タマネギエキス及びキャベツエキスを配合し、得られた実施例及び比較例の各野菜エキス組成物を、官能試験により評価した。なお、下記表1に示すNo.A1?A12の組成物は本発明の範囲内で作製した実施例であり、No.A13?A23の組成物は本発明の範囲から外れる比較例である。 【0039】 [評価方法] 実施例及び比較例の各野菜エキス組成物を水で10倍に希釈したサンプルについて、4名の分析型官能評価専門パネル(訓練期間:9?24年)により、「i.濃厚感」、「ii.コク」、「iii.野菜由来の過剰な香味」、「iv.ざらつき」の4項目を評価した。官能試験は、(1)サンプルの提示、(2)官能評価項目のすり合わせ、(3)試し評価・キャリブレーション、(4)本評価の順に行った。 【0040】 (1)サンプルの提示 官能評価におけるパネルのバイアス(偏り)を排除し、評価の精度を高めるために、サンプル提供を次の通りに設定した。常温(25℃)にしたサンプル40mlを、発泡スチロール製サーモカップ(容量180ml)に注ぎ、シャーレで蓋をした後、各パネルに提示した。その際、サンプルの試験区番号や野菜成分の比率はパネルに知らせず、各試験区のサンプルをランダムに提示した。 【0041】 (2)官能評価項目のすり合わせ 評価を実施するにあたり、パネル全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにした。総合評価についても、官能評価の結果をもとに基準化できるように、パネル全体で事前に協議した上で設定した。 【0042】 <i.濃厚感> 「濃厚感」は、喫食時における味(旨味)の強さ(濃さ)である。本実施例では、下記の5段階評価法により評価した。 5:非常に強い 4:強い 3:やや強い 2:やや弱い 1:効果なし 【0043】 <ii.コク> 「コク」は、喫食時において、口腔内に留まる味(旨味)の持続性である。本実施例では下記の5段階評価法で評価した。 5:非常に強い 4:強い 3:やや強い 2:やや弱い 1:効果なし 【0044】 <iii.野菜由来の過剰な香味> 「野菜由来の過剰な香味」は、野菜の青臭さや各野菜特有の香りや風味である所謂「野菜臭さ」を、下記の5段階評価法で評価した。 5:感じない 4:ほぼ感じない 3:やや感じる 2:感じる 1:非常に強く感じる 【0045】 <iv.ざらつき> 「ざらつき」は、喫食時において、舌の上に残る繊維状の食感である。本実施例では下記3段階評価法で評価した。 5:感じない 3:やや感じる 1:非常に強く感じる 【0046】 <総合評価> 「総合評価」は、前述した4項目の評価結果から、下記の基準により◎、○、△、×の4段階で評価した。 ◎:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価がすべて5 ○:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価がいずれも3以上で、かつ「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」の評価点の合計が10?14 △:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価がいずれも2以上で、かつ「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」の評価点の合計が6から9 ×:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価のうち、1項目以上2未満 【0047】 (3)試し評価・キャリブレーション いくつかの野菜エキス組成物を用いて、各評価項目について強度評価の訓練を行った。訓練に際しては、パネル自身の評価結果を伝えることで、繰り返し評価における再現性を確認させた。 【0048】 (4)本評価 前述した訓練により各パネリストの強度評価の妥当性を担保した後、実施例及び比較例のサンプルを用いて官能評価を行った。香りはカップに直接鼻を近づけて評価し、風味、味及び食感は計量スプーンで小さじ1杯(約5ml)分計量したサンプルを味わうことにより評価した。 【0049】 また、各野菜成分及び野菜エキス組成物の乾燥固形分量は、105℃で35時間乾燥し、乾燥後に残った固形分の質量を測定して求めた。また、各エキスの全窒素量は、ケルダール法により測定した。以上の結果を、下記表1及び表2にまとめて示す。 【0050】 【表1】 ![]() 【0051】 【表2】 ![]() 【0052】 上記表2に示すように、No.A13の組成物は、タマネギ成分量が本発明の範囲を超えているため野菜臭さが強く、また、白菜成分が本発明の範囲に満たないため、濃厚感が感じられなかった。No.A14の組成物は、白菜成分量が本発明の範囲を超え、タマネギ成分量が本発明の範囲に満たないため、濃厚感やコクが感じられないものであった。同様に、No.A15の組成物は、白菜成分量が本発明の範囲を超えているため、タマネギやキャベツとの間の相乗効果が発揮されず、濃厚感やコクが感じられないものであった。 【0053】 No.A16の組成物は、キャベツ成分量が本発明の範囲を超えているため、野菜臭さが強く、濃厚感も感じられなかった。No.A17の組成物は、キャベツ成分量が本発明の範囲に満たないため、濃厚感やコクが感じられなかった。また、白菜成分、タマネギ成分又はキャベツ成分のみからなるNo.A18?A20の組成物は、濃厚感やコクが感じられず、No.A19及びNo.A20の組成物は、更に野菜臭さも際立っていた。白菜成分、タマネギ成分及びキャベツ成分のうち2種を組み合わせたNo.A21?A23の組成物も同様に濃厚感やコクが感じられず、No.A21及びNo.A23の組成物は更に野菜臭さも顕著であった。 【0054】 これに対して、上記表1に示す本発明の実施例であるNo.A1?A12の野菜エキス組成物は、濃厚感やコクがあり、かつ野菜臭さも感じられず、惣菜用途に好適なものであった。 【0055】 (第2実施例) 次に、本発明の第2実施例として、所定の割合で、白菜エキス、タマネギエキス、キャベツエキス、ニンジンエキス及びジャガイモエキスを混合し、得られた各野菜エキス組成物について、前述した第1実施例と同様の方法及び条件で、官能試験を行った。その結果を下記表3に示す 【0056】 【表3】 ![]() 【0057】 上記表3に示すように、32質量%を超えてニンジン成分を添加したNo.B4,B5の野菜エキス組成物は、ニンジン成分を含まないNo.A6の野菜エキス組成物に比べて、濃厚感、コク及び野菜臭さのいずれも評価が低かった。一方、ニンジン成分量が2質量%未満であるNo.B1の野菜エキス組成物は、No.A6の野菜エキス組成物と同等の評価結果であり、濃厚感やコクの底上げ効果は得られなかった。 【0058】 また、41質量%を超えてジャガイモ成分を添加したNo.B10,B11の野菜エキス組成物は、ジャガイモ成分を含まないNo.A6の野菜エキス組成物に比べて、濃厚感、コク及び野菜臭さのいずれも評価が低くなり、更に、ざらつきが目立ち、食感が悪くなった。一方、ジャガイモ成分量が4質量%未満であるNo.B6の野菜エキス組成物は、No.A6の野菜エキス組成物と同等の評価結果であり、濃厚感やコクの底上げ効果は得られなかった。 【0059】 これに対して、ニンジン成分を2?32質量%、又は、ジャガイモ成分を4?41質量%含有するNo.B2,B3,B7,B8,B9の野菜エキス組成物は、No.A6の野菜エキス組成物よりも濃厚感やコクが向上していた。更に、ニンジン成分とジャガイモ成分の両方を含有するNo.B12の野菜エキス組成物は、濃厚感及びコク共に大幅に向上していた。 【0060】 (第3実施例) 次に、第3実施例として、野菜エキス組成物の配合量が異なる複数の調味液を調製し、各調味液を用いて惣菜を調理し、野菜エキス組成物の添加効果について、官能試験により確認した。野菜エキス組成物には、第1実施例のNo.A6の組成物を用いた。また、調味液は、下記表4に示す配合とした。なお、上記表4に示す調味液成分の残部は水である。 【0061】 【表4】 ![]() 【0062】 [調理方法] 評価に用いる惣菜は、煮豆腐とした。評価用の煮豆腐を調理する際は、豆腐200gを所定の大きさに切り、フライパンで炒めた後、調味液100gを絡めた。 【0063】 [評価方法] 4名の分析型官能評価専門パネルにより、野菜エキス組成物を添加していないものを基準とし、各惣菜の「濃厚感」と「コク」を、下記の4段階で評価した。 ◎:非常に高い ○:高い △:効果あり ×:差がない又は味のバランスが崩れた 【0064】 ここで、「濃厚感」とは、惣菜の喫食時における味(旨味)の強さ(濃さ)のことであり、「コク」とは、惣菜の喫食時における口腔内に留まる味(旨味)の持続性のことである。そして、「濃厚感」及び「コク」を評価する際は、パネル全体で討議して、各評価項目の特性に対してすり合わせを行い、各パネルが共通認識を持つようにした。また、各評価項目について強度評価の訓練では、パネル自身の評価結果を伝えることで、繰り返し評価における再現性を確認させた。各パネリストの強度評価の妥当性を訓練により担保した後に、実施例の各試験区について官能評価を行った。 【0065】 以上の評価結果を下記表5に示す。 【0066】 【表5】 ![]() 【0067】 上記表5に示すように、野菜エキス組成物含有率が0.025質量%の調味液を用いたNo.C2の惣菜(煮豆腐)は、野菜エキス組成物を配合していない調味液を用いたNo.C1の惣菜と、味に差は感じられなかった。また、野菜エキス組成物を、35質量%及び50質量%と多量に含有する調味液を用いたNo.C10及びNo.C11の惣菜は、野菜エキスの味が強くなり、味のバランスが崩れた。 【0068】 これに対して、野菜エキス組成物を0.05?30質量%の範囲で含有する調味液を用いたNo.C3?C9の惣菜は、野菜エキス組成物を配合していない調味液で調理したNo.C1の惣菜に比べて、濃厚感とコクが向上していた。これらの結果から、本発明の野菜エキス組成物を適量配合することで、惣菜に濃厚感とコクを付与できることが確認された。特に、野菜エキス組成物の含有量が0.4?5質量%の調味液では、コクの付与効果が高かった。 【0069】 (第4実施例) 次に、第4実施例として、本発明の野菜エキス組成物を配合した調味液を用いて、煮豆腐以外の惣菜を調理し、野菜エキス組成物の添加効果について、官能試験により確認した。なお、野菜エキス組成物には、第1実施例のNo.A6の組成物を用いた。 【0070】 <惣菜I:コーンスープ> クリームコーン200gに、醤油を3.5質量%、野菜エキス組成物を2質量%含有し、残部が水の調味液Iを加え、軽く沸騰させてコーンスープを作製した。 【0071】 <惣菜II:なすとピーマンの甘味噌炒め> 所定の大きさに切ったなす200gとピーマン60gを、サラダ油をひき、熱したフライパンに投入し、火が通るまで炒めた。その後、醤油を20質量%、甜麺醤を40質量%、清酒を30質量%、野菜エキス組成物を2質量%含有し、残部が水の調味液IIを入れ、具材(なす・ピーマン)に絡めた。 【0072】 [評価方法] 野菜エキス組成物を添加していないものを基準とし、各惣菜の「濃厚感」及び「コク」を、4名の分析型官能評価専門パネルにより、前述した実施例3と同様の方法及び条件で評価した。その評価結果を下記表6に示す。 【0073】 【表6】 ![]() 【0074】 上記表6に示すように、洋風のコーンスープ(惣菜I)や、中華風のなすとピーマンの甘味噌炒め(惣菜II)においても、本発明の野菜エキス組成物を含有する調味液を用いると、惣菜に、濃厚感とコクを付与すると共に、風味を増強できた。これにより、本発明の野菜エキス組成物は、和風惣菜だけでなく、洋風惣菜や中華惣菜においても、好適に使用できることが確認された。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 野菜成分が、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からなり、 乾燥固形分全質量あたり、 白菜成分が30.1?71.9質量%、 タマネギ成分が13.7?50.0質量%、 キャベツ成分が5.6?30.2質量% である野菜エキス組成物。 【請求項2】 各成分の配合比が、全窒素比で、白菜成分:タマネギ成分:キャベツ成分=25?79:7?58:2?33である請求項1に記載の野菜エキス組成物。 【請求項3】 野菜成分が、ニンジン成分及びジャガイモ成分のうち少なくとも1種の成分と、白菜成分と、タマネギ成分と、キャベツ成分からなり、 乾燥固形分全質量あたり、 ニンジン成分が2?32質量%、及び/又は、ジャガイモ成分が4?41質量%、 白菜成分が30.1?71.9質量%、 タマネギ成分が13.7?50.0質量%、 キャベツ成分が5.6?30.2質量% である野菜エキス組成物。 【請求項4】 ニンジン成分及びジャガイモ成分の両方を含有し、 各成分の配合比が、全窒素比で、白菜成分:タマネギ成分:キャベツ成分:ニンジン成分:ジャガイモ成分=25?79:7?58:2?33:1?19:2?22である請求項3に記載の野菜エキス組成物。 【請求項5】 請求項1?4のいずれか1項に記載の野菜エキス組成物を含有する調味料。 【請求項6】 前記野菜エキス組成物を0.03?34質量%含有する請求項5に記載の調味料。 【請求項7】 請求項5又は6に記載の調味料を用いて製造された食品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-01-08 |
出願番号 | 特願2017-147607(P2017-147607) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L) P 1 651・ 536- YAA (A23L) P 1 651・ 113- YAA (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小林 薫 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
槙原 進 藤原 直欣 |
登録日 | 2017-11-17 |
登録番号 | 特許第6244494号(P6244494) |
権利者 | キッコーマン株式会社 |
発明の名称 | 野菜エキス組成物、調味料及び食品 |
代理人 | 大森 桂子 |
代理人 | 大森 桂子 |