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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65B
管理番号 1349661
異議申立番号 異議2017-700008  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-06 
確定日 2019-01-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5948080号発明「容器の殺菌方法および殺菌装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5948080号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?18〕、19、〔20?22〕について訂正することを認める。 特許第5948080号の請求項1?22に係る特許を取り消す。  
理由 第1.手続の経緯
特許第5948080号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?22に係る特許についての出願は、平成24年2月22日(パリ条約による優先権主張2011年2月24日、ドイツ連邦共和国(DE))に特許出願され、平成28年6月10日にその特許権の設定登録がされた。
その後、平成29年1月6日に、請求項1?22に係る特許について、特許異議申立人山▲崎▼浩一郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年3月23日付けで取消理由が通知され、平成29年4月14日付けで意見書が提出され、平成29年5月9日付けで取消理由が通知され、その応答期間の経過後である平成29年8月10日付けで意見書及び訂正請求書が提出され、平成29年8月31日付けで特許権者に対し前記訂正請求書に係る手続を却下する理由が通知されたが、その指定期間内に特許権者は弁明書を提出しなかった。その後、平成29年10月20日付けで、前記訂正請求書に係る手続を却下する決定がなされた。
その後、平成30年2月21日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成30年5月23日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、平成30年6月12日付けで申立人に対し、本件訂正請求があった旨の通知がなされ、平成30年7月17日付けで申立人から意見書が提出された。

2.本件訂正請求についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである(訂正箇所を下線で示す。)。
ア.請求項1?18に係る訂正
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記容器の外側に位置する開口領域も殺菌され、前記開口領域および頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されない」とあるのを、
「前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域も殺菌され、前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されない」に訂正する。

(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項12に、「前記照射装置は前記容器に対して斜めに配置され、前記容器は側方から照射される請求項1に記載の容器の殺菌方法。」とあるのを、
「さらに第2の照射装置が設けられ、前記第2の照射装置は前記容器に対して斜めに配置され、前記容器は側方から照射される請求項1に記載の容器の殺菌方法。」に訂正する。

イ.請求項19に係る訂正
特許請求の範囲の請求項19に、「搬送装置により、所定の搬送経路に沿って、開口部を備えた開口端を有する容器を搬送し、前記容器の内部に照射装置を挿入し、前記容器内部の前記容器の底部で始まる電荷担体照射の放射によって前記容器を殺菌し、前記電荷担体の照射によって前記容器の内壁の全体を殺菌するための前記開口部の向きにおいて、前記容器の内壁に対し相対的に前記照射装置を移動し、前記照射装置を前記開口部の外へ移動させている間に、該照射装置が前記容器の外側に位置する開口領域を殺菌し、」とあるのを、
「搬送装置により、所定の搬送経路に沿って、その端部に開口部を有する容器を搬送し、前記容器の内部に照射装置を挿入し、前記容器内部の前記容器の底部から始まる電荷担体の放射を始め、前記電荷担体の前記放射によって前記容器の内壁の全体を殺菌するために、前記開口部の方向に、前記容器の内壁に対し相対的に前記照射装置を移動し、前記照射装置を前記開口部の外へ移動させている間に、前記照射装置が前記容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域を殺菌することで、前記容器を殺菌し、前記開口領域および頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されず、」に訂正する。

ウ.請求項20?22に係る訂正
特許請求の範囲の請求項20に、「前記照射装置を制御する制御装置をさらに備え、該制御装置は、前記照射装置による照射によって前記容器の外側に位置する開口領域も殺菌し、前記開口領域および頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌しない」とあるのを、
「前記照射装置を制御する制御装置をさらに備え、該制御装置は、前記照射装置による照射によって前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域も殺菌し、前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌しない」に訂正する。

エ.願書に添付した明細書の段落【0012】に係る訂正
願書に添付した明細書の段落【0012】に、「この場合、外側に位置する領域とは、特に、内面が殺菌される容器の開口領域であると理解される。さらに、開口領域は、開口部の領域と、おそらくは隣接する容器の頭部領域とであると理解される。このやり方で、特に容器のねじ領域も、外側において殺菌される。したがって、後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域が、殺菌されることが好都合である。また、プラスチック材料製の予備成形物の頭部および開口領域が、容器に随意により配置されるキャリアリングまで延びることが好ましい。」とあるのを、
「この場合、外側に位置する領域とは、特に、内面が殺菌される容器の開口領域であると理解される。さらに、開口領域は、開口部を含む領域であり、容器の頭部領域に隣接していると理解される。このやり方で、特に容器のねじ領域も、外側において殺菌される。したがって、後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域が、殺菌されることが好都合である。また、プラスチック材料製の予備成形物の頭部領域および開口領域が、容器に随意により配置されるキャリアリングまで延びることが好ましい。」に訂正する。

(2)訂正の適否
ア.請求項1?18に係る訂正
(ア)一群の請求項
訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2?18は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、請求項1?18に係る訂正は、当該一群の請求項1?18に対し請求されたものである。

(イ)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「容器の殺菌方法」において、「前記開口領域および頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されない」ことを発明特定事項としていたこと及び願書に添付した明細書の段落【0017】における「これらの特定の寸法のおかげで、照射装置から発せられる特に電子などの電荷担体が、開口領域および開口領域に隣接する容器の頭部領域を殺菌するための充分な範囲を依然として有することができる。」という記載に基いて、容器の外側で殺菌される箇所が、「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」であることを明確にするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ゆえに、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項12の「前記容器に対して斜めに配置され、前記容器は側方から照射される」という「前記照射装置」は、当該請求項12が引用する請求項1の「照射装置」とは別に設けられる、「第2の照射装置」であることを、願書に添付した明細書の段落【0046】の「部分IVにおいては、容器が再び下方位置において搬送され、開口領域について照射される。この場合、斜めに向けられ、あるいはおおむね他のやり方で配置された照射装置2aを設けることも可能であり、容器が側方から照射される。」との記載に基いて、限定して特定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ゆえに、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ.請求項19に係る訂正
請求項19に係る訂正は、訂正前の請求項12の「開口部を備えた開口端を有する容器」との記載における「開口端」に対応する記載が明細書にはない一方で、【図1】及び【図2】等の記載から「開口部」は「容器」の端部に存在することが把握されることに基いて、「容器」における「開口部」の位置を明確にするとともに、訂正前の請求項12において、「前記容器内部の前記容器の底部で始まる電荷担体照射の放射によって前記容器を殺菌し、前記電荷担体の照射によって前記容器の内壁の全体を殺菌するための前記開口部の向きにおいて、前記容器の内壁に対し相対的に前記照射装置を移動し」とされていた「照射装置」の移動方向が、「電荷担体の放射」が始まる「容器の底部」から「開口部」の方向であることを明確にし、また、前記段落【0017】の記載に基いて、容器の外側で殺菌される箇所が、「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」であることを明確にするとともに、段落【0018】の「本発明にかかる容器の殺菌方法において、開口領域および頭部領域よりも下方に位置する容器の外壁の領域が、電荷担体の照射による照射によっては殺菌されない。」との記載に基いて、「前記開口領域および頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されない」ことを、限定して特定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ゆえに、請求項19に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.請求項20?22に係る訂正
訂正前の請求項20及び請求項20を引用する請求項21及び22は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、請求項20?22に係る訂正は、当該一群の請求項20?22に対し請求されたものである。

請求項20?22に係る訂正は、訂正前の請求項20の「容器の殺菌装置」において、「前記開口領域および頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌しない」ことを発明特定事項としていたこと及び願書に添付した明細書の段落【0017】における「これらの特定の寸法のおかげで、照射装置から発せられる特に電子などの電荷担体が、開口領域および開口領域に隣接する容器の頭部領域を殺菌するための充分な範囲を依然として有することができる。」という記載に基いて、容器の外側で殺菌される箇所が、「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」であることを明確にするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ゆえに、請求項20?22に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ.願書に添付した明細書の段落【0012】に係る訂正
段落【0012】に係る訂正は、同段落【0012】における「・・・開口領域は、開口部の領域と、おそらくは隣接する容器の頭部領域とであると理解される。・・・」との記載を、段落【0017】の「・・・開口領域および開口領域に隣接する容器の頭部領域を・・・」との記載及び段落【0034】の「・・・参照符号10bは、開口部10dを含む開口領域を指しているが・・・」との記載と整合させ、明確にするものであって、請求項1?18、19及び20?22に係る各々の発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ゆえに、段落【0012】に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、段落【0012】に係る訂正は、請求項1?18、19及び20?22に係る各々の発明を対象とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項?第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?18〕、19、〔20?22〕について訂正を認める。

第3.特許異議の申立てについて
1.本件発明
本件訂正請求が認められることにより、本件特許の請求項1?22に係る発明(以下、「本件発明1?22」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであるところ、これらを、以下のように分説して示す。(分説記号の「A)」等は、特許異議申立書での記載を踏まえ、当審にて付した。)
【請求項1】
A)容器が搬送装置によって所定の搬送経路に沿って運ばれる工程と、
B)照射装置が前記容器と該照射装置との間の前記容器の長手方向の相対移動によって殺菌すべき前記容器の内部へと導入される工程と、
C)電荷担体の照射によって前記容器の内壁を殺菌すべく電荷担体を照射する工程と、を含む容器の殺菌方法であって、
D)前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域も殺菌され、
E)前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されないことを特徴とする容器の殺菌方法。
【請求項2】
F)前記外側に位置する開口領域は、前記照射装置によって殺菌されることを特徴とする請求項1に記載の容器の殺菌方法。
【請求項3】
G)前記開口領域の殺菌は、前記照射装置を完全に前記容器の外部に位置させつつ実行されることを特徴とする請求項2に記載の容器の殺菌方法。
【請求項4】
H)前記開口領域の殺菌の際に、前記照射装置の下端が、0.5cm?10cmの間、好ましくは1cm?6cmの間、特に好まくは3cm?5cmの間の距離に位置することを特徴とする請求項3に記載の容器の殺菌方法。
【請求項5】
I)前記容器は、クリーンルームを通って運ばれること、またはクリーンルームへと運ばれることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の容器の殺菌方法。
【請求項6】
J)前記照射装置は、前記容器の前記開口領域を、少なくとも前記容器が無菌室に進入するまで照射することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の容器の殺菌方法。
【請求項7】
K)前記容器に、気体媒体の導かれた流れが作用させられることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の容器の殺菌方法。
【請求項8】
L)前記照射は、少なくとも前記照射装置が前記容器の底部から取り去られる時間のあいだ行われることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の容器の殺菌方法。
【請求項9】
M)前記容器の内壁の全体を殺菌する請求項1に記載の容器の殺菌方法。
【請求項10】
N)前記殺菌が、前記容器内部の前記容器の底部から、前記容器の前記開口部の方向への前記照射装置の相対移動によって始まる請求項1に記載の容器の殺菌方法。
【請求項11】
O)前記容器が、前記内壁および前記外側に位置する前記開口領域の両方の殺菌の間、上下方向に立設されている請求項1に記載の容器の殺菌方法。
【請求項12】
P)さらに第2の照射装置が設けられ、前記第2の照射装置は前記容器に対して斜めに配置され、前記容器は側方から照射される請求項1に記載の容器の殺菌方法。
【請求項13】
Q)電子線照射の線量に必要な処理の継続時間が、前記容器の下降または上昇の速度によって調節され得る請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項14】
R)前記容器の断面形状の違いに応じて、該容器内で前記照射装置を異なる速度で移動させる請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項15】
S)前記照射装置が、前記容器の底部まで導入される請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項16】
T)電子雲が、前記内部および前記外側の両方から前記容器の前記開口部に作用する請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項17】
U)前記電荷担体は、加速装置によって加速された電子である請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項18】
V)前記容器がプラスチックの予備成形物である請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項19】
W)搬送装置により、所定の搬送経路に沿って、その端部に開口部を有する容器を搬送し、
X)前記容器の内部に照射装置を挿入し、
Y)前記容器内部の前記容器の底部から始まる電荷担体の放射を始め、前記電荷担体の前記放射によって前記容器の内壁の全体を殺菌するために、前記開口部の方向に、前記容器の内壁に対し相対的に前記照射装置を移動し、前記照射装置を前記開口部の外へ移動させている間に、前記照射装置が前記容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域を殺菌することで、前記容器を殺菌し、前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されず、
Z)前記容器が上下方向に立設されており、かつ、前記容器および前記開口領域の両方の前記殺菌の間、前記容器の前記開口端が上方を向いている容器の殺菌方法。
【請求項20】
A1)容器を所定の搬送経路に沿って運ぶ搬送装置と、
B1)電荷担体を照射する照射装置と、
を備え、
C1)前記照射装置を、前記容器と該照射装置との間の容器の長手方向の相対移動によって容器の内部へと導入し、前記容器の内壁を殺菌することができる容器の殺菌装置であって、
D1)前記照射装置を制御する制御装置をさらに備え、該制御装置は、前記照射装置による照射によって前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域も殺菌し、前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌しないことを特徴とする容器の殺菌装置。
【請求項21】
E1)前記照射装置は、少なくとも局所的に前記容器と一緒に移動することを特徴とする請求項20に記載の容器の殺菌装置。
【請求項22】
F1)前記容器に気体媒体の流れを作用させる加圧装置を備えることを特徴とする請求項20または21に記載の容器の殺菌装置。

2.取消理由
本件発明1ないし22に係る特許に対する取消理由は、以下のとおりである。
なお、異議申立人が申立てたすべての理由を通知した。

《理由1》
本件特許に係る下記の発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
《理由2》
本件特許に係る下記の発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
《理由3》
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

申立人による特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された甲第1号証ないし甲第6号証を、甲1ないし甲6といい、甲1等に記載された発明を、甲1発明等といい、甲1等に記載された事項を、甲1記載事項等という。

《刊 行 物 等 一 覧》
甲1.特開2008-145291号公報
甲2.特開2009-35330号
甲3.特開2002-211520号公報
甲4.米国特許出願公開第2011-0016829号明細書
甲5.米国特許出願公開第2011-0012032号明細書
甲6.特開2010-58843号公報

(1)理由1について
ア.理由1-1.(甲1を主たる引用例とした理由)
本件発明1ないし3、8ないし11、19、20は、甲1発明と実質的に同一であり、甲1に記載された発明である。
イ.理由1-2.(甲5を主たる引用例とした理由)
本件発明1ないし3、5ないし11、13ないし16、18ないし22は、甲5発明と実質的に同一であり、甲5に記載された発明である。

(2)理由2について
ア.理由2-1.(甲1を主たる引用例とした理由)
本件発明1ないし22は、甲1発明、甲1ないし甲6記載事項、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ.理由2-2.(甲5を主たる引用例とした理由)
本件発明1ないし22は、甲5発明、甲2記載事項、甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)理由3について
ア.請求項1及び請求項1を引用する請求項2ないし17について
請求項1の「容器の外側に位置する開口領域」の範囲、「前記開口領域および頭部領域よりも下方に位置する」の「および」の意味が不明であり、請求項1の記載は、多義的な記載となっているために、本件発明1は明確でない。
請求項1を引用する本件発明2ないし17についても同様である。
イ.請求項10について
請求項10が引用する請求項1には「開口部」との記載がないから、本件発明10は明確でない。
ウ.請求項16について
請求項16が引用する請求項1には「開口部」との記載がないから、本件発明16は明確でない。
エ.請求項18について
請求項18の「予備成形物」について、請求項18が引用する請求項1の「頭部領域」となる部分が不明であり、本件発明18は明確でない。
オ.請求項19について
請求項19において、「開口部」と「開口端」の関係、及び、「前記電荷担体の照射によって前記容器の内壁の全体を殺菌するための前記開口部の向きにおいて」の意味が不明であり、本件発明19は明確でない。
カ.請求項20及び請求項20を引用する請求項21、22について
請求項20の「容器の外側に位置する開口領域」の範囲、「前記開口領域および頭部領域よりも下方に位置する」の「および」の意味が不明であり、請求項20の記載は、多義的な記載となっているために、本件発明20は明確でない。
請求項20を引用する本件発明21、22についても同様である。

3.判断
(1)理由3について
事案に鑑み、理由3から判断する。
ア.請求項1及び請求項1を引用する請求項2ないし17について
請求項1及び請求項1を引用する請求項2?17について、上記第2.で示したとおり本件訂正請求が認められたことにより、「前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」が、容器の外側で殺菌される領域であり、「前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域」が、容器の外側で殺菌されない領域であることが明確となった。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を踏まえると、上記「前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」なる事項は、容器の外側で殺菌される領域を規定するものであって、その技術的な意味は、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「容器に随意により配置されるキャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域(段落【0012】を参照)を規定することにあるといえる。
また、上記「前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域」なる事項は、容器の外側で殺菌されない領域を規定するものであって、その技術的な意味は、「充てんされる飲料に触れる可能性がないため、殺菌を省略することが可能である」領域(段落【0018】を参照)を規定することにあるといえる。
したがって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?17の記載は、「容器の外側で殺菌される領域」と「容器の外側で殺菌されない領域」とを一義的に規定するものであり、その技術的な意味も明確であるといえるから、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2?17は明確であり、理由3のア.は、理由のないものとなった。

なお、申立人は、平成30年7月17日付け意見書において、(ア)訂正後の請求項1の記載は、本件特許明細書の段落【0038】、【0040】、【0045】、【0046】、【0056】の記載と矛盾している旨及び(イ)訂正後の請求項1では容器の外側で殺菌される箇所が、「前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」であるのに対し、訂正後の請求項1を引用する請求項2、3、4、6及び11では「開口領域」のままであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を見ても意味不明である旨を主張している。
しかし、以下に示すように、上記(ア)及び(イ)の主張はいずれも当を得ておらず、採用できない。
(ア)について
本件特許明細書の段落【0038】には「図3は・・・電子雲12が、内側および外側の両方から容器の開口部10dに作用し、この開口部の殺菌をもたらしている。しかしながら、さらには、開口領域にも電子が作用し、この場合には容器の上部領域10fにも電子が作用している。」と記載され、【図3】からは電子雲12が容器の上部領域10fにも接触している様子が把握される。
一方、上述したように、「前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域」なる事項の技術的な意味は、「充てんされる飲料に触れる可能性がないため、殺菌を省略することが可能である」領域(段落【0018】を参照)を規定することにあるといえることを踏まえると、上記「前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域」なる事項が、「前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域」の全ての領域を指していると解すべき理由はない。
ゆえに、たとえ、上記「容器の上部領域10f」が、「前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する」領域であるとしても、訂正後の請求項1の記載は、段落【0038】及び【図3】の記載と矛盾しているとはいえない。
また、段落【0040】の「容器は開口領域についても殺菌され、したがって外側についても殺菌される。」、【0045】の「しかしながら、部分IIIのうちの右側の2つの状態においては、容器がすでに再びほとんど下げられた状態で、容器の外側の開口領域の照射も施される。」、【0046】の「部分IVにおいては、容器が再び下方位置において搬送され、開口領域について照射される。」、【0056】の「ここで、容器は、内側について殺菌され、開口領域についても殺菌されており」等の記載において、「頭部領域」が言及されていないことは、単に言及されていないだけであって、訂正後の請求項1の記載が、これらの段落の記載と矛盾しているとまではいえないし、「容器の外側で殺菌される領域」と「容器の外側で殺菌されない領域」との境界を不明確にするものであるともいえない。

(イ)について
請求項2、3、4、6、11の記載は、各々、請求項1の「D)前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域も殺菌され」なる事項における「開口領域」に関し、「前記(請求項1に記載された)外側に位置する開口領域は、前記(請求項1に記載された)照射装置によって殺菌されること」、「前記(請求項2に記載された)開口領域の殺菌は、前記(請求項2に記載された)照射装置を完全に前記(請求項2に記載された)容器の外部に位置させつつ実行されること」、「前記(請求項3に記載された)開口領域の殺菌の際に、前記(請求項3に記載された)照射装置の下端が、0.5cm?10cmの間、好ましくは1cm?6cmの間、特に好まくは3cm?5cmの間の距離に位置すること」、「前記(請求項1?5のいずれか一項に記載された)照射装置は、前記(請求項1?5のいずれか一項に記載された)容器の前記(請求項1?5のいずれか一項に記載された)開口領域を、少なくとも前記(請求項1?5のいずれか一項に記載された)容器が無菌室に進入するまで照射すること」、「前記(請求項1に記載された)容器が、前記(請求項1に記載された)内壁および前記(請求項1に記載された)外側に位置する前記(請求項1に記載された)開口領域の両方の殺菌の間、上下方向に立設されている」ことを技術的に限定するものであるところ、これらの請求項において、「頭部領域」が言及されていないからといって、これらの請求項記載が意味不明であるとはいえないし、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載と矛盾しているわけでもない。

イ.請求項10、16、18について
請求項1について、上記2.で示したとおり本件訂正請求が認められたことにより、「開口部」と「開口領域」の関係は、「前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域」であり、「頭部領域」は、「該開口領域に隣接する頭部領域」であることが明確となったから、本件発明10、16、18は明確であり、理由3のイ.?エ.は、理由のないものとなった。

ウ.請求項19について
請求項19について、上記2.で示したとおり本件訂正請求が認められたことにより、「容器」における「開口部」の位置が、「容器」の「端部」であること、及び、「照射装置」の移動方向が、「電荷担体の放射」が始まる「容器の底部」から「開口部」の方向であることが明確となったから、本件発明19は明確であり、理由3のオ.は、理由のないものとなった。

エ.請求項20及び請求項20を引用する請求項21、22について
請求項20及び請求項20を引用する請求項21、22について、上記2.で示したとおり本件訂正請求が認められたことにより、「前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」が、容器の外側で殺菌される領域であり、「前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域」が、容器の外側で殺菌されない領域であることが明確となったため、上記ア.で述べたことと同様に、請求項20及び請求項20を引用する請求項21、22の記載は、「容器の外側で殺菌される領域」と「容器の外側で殺菌されない領域」とを一義的に規定するものであり、その技術的な意味も明確であるといえるから、本件発明20及び本件発明20を引用する本件発明21、22は明確であり、理由3のカ.は、理由のないものとなった。

(2)理由1及び2について
ア.理由1-1及び理由2-1について
(ア)甲1記載事項及び甲1発明
甲1には以下の甲1記載事項がある。
a.「【0021】
・・・
この電子ビーム照射ノズルは、電子ビーム照射対象体である筒状容器1の開口1Aから挿入されるものであることから、筒状容器1の開口1Aの開口径および電子ビーム照射ノズルが挿入されるべき開口部分の内径よりも小径の外径を有するものであることが必要とされる。
・・・
【0026】
以下、本発明に係る電子ビーム照射装置10における電子ビーム照射ノズル部35および電子ビーム照射対象体である筒状容器1の一構成例を示す。
・・・
【0027】
このような構成を有する電子ビーム照射装置10によれば、以下のようにして電子ビーム照射対象体に対して滅菌処理を行うための電子ビームの照射が行われる。
【0028】
先ず、図2に示すように、電子ビーム照射対象体である筒状容器1を、その開口1Aを上方とした正立状態で電子ビーム照射装置10の電子ビーム管ホルダ30における電子ビーム照射ノズル部35の真下に位置させ、上方(図1において上方)に移動させることによって当該筒状容器1の開口1Aから、この開口1Aが電子ビーム管ホルダ30の位置決めストッパ部33に当接する状態まで電子ビーム照射ノズル部35を挿入する。
・・・
そして、筒状容器1内および電子ビーム管ホルダ30内、並びに筒状容器1内に不活性ガスが充填された状態において、電子ビーム発生器24を駆動して電子ビームを発生させることにより、電子ビーム出射窓23から放射された電子ビームが、電子ビーム管ホルダ30における電子ビーム通過空間31Bを通過した後、電子ビーム照射ノズル部35によって筒状容器1の内部に導通され、これにより、電子ビーム照射ノズル部35が挿入されている開口1Aおよび開口部分を除く内表面に電子ビームを照射する(以下、「電子ビーム内表面照射工程」ともいう。)。
図2においては、筒状容器1を破線で示し、また、電子ビームの放射方向を破線の矢印で示し、不活性ガスの流動方向を実線の矢印で示す。」

b.「【0029】
次いで、図3に示すように、電子ビーム発生器24が駆動されて電子ビーム出射窓23から電子ビームが放射され、かつガス供給手段によってガス流路に不活性ガスが流動されて充填されている状態において、筒状容器1を下方(図2において下方)に移動させることによって当該筒状容器1の開口1Aから電子ビーム照射ノズル部35を引き抜き、更に、この筒状容器1を電子ビーム照射ノズル部35の真下における所定の位置まで移動させる。このようにして、電子ビーム内表面照射工程において電子ビーム照射ノズル部35が挿入されていた開口1Aおよび開口部分に対して筒状容器1を移動させながら電子ビームを照射する(以下、「電子ビーム開口部照射工程」ともいう。)。
図3においては、図2と同様に電子ビームの放射方向を破線の矢印で示し、不活性ガスの流動方向を実線の矢印で示す。また、容器の移動方向を一点鎖線の矢印で示す。」

c.「【0030】
以上のような電子ビーム照射装置10によれば、電子ビーム管ホルダ30に電子ビーム照射ノズル部35が設けられていることから、電子ビーム照射対象体が、筒状容器1のような開口1Aを有する有底筒状の形態の立体的なものであっても、筒状容器1に対して電子ビームを、電子ビーム照射ノズル部35によって部分的に遮蔽した状態で照射することができるため、当該筒状容器1に対して所期の線量を均一に照射することができる。
すなわち、先ず、電子ビーム内表面照射工程において、筒状容器1の開口1Aおよび開口部分に電子ビーム照射ノズル部35を挿入することにより、この電子ビーム照射ノズル部35が挿入されている部分を完全に遮蔽した状態で当該筒状容器1に電子ビームを照射し、このようにして筒状容器1の開口1Aおよび開口部分を除く内表面に対して電子ビームを照射する。次いで、この電子ビーム内表面照射工程に連続する、電子ビーム開口部照射工程において、筒状容器1を、当該筒状容器1の開口1Aから電子ビーム照射ノズル部35を引き抜くよう下方に移動するという簡単な操作により、開口1Aおよび開口部分に対して電子ビーム出射窓23との離間距離を筒状容器1に関する線量分布に基づいて調整することによって照射線量を制御した状態で電子ビームを照射することができる。
従って、電子ビーム照射装置10によれば、筒状容器1に対して電子ビームの照射を、その開口1Aおよび開口部分に過剰に照射することなく、確実かつ容易に行うことができることから、当該筒状容器1に対して確実に滅菌処理を施すことができると共に、筒状容器1自体が電子ビームが照射されることによって部分的に劣化することを防止することができる。」

d.「【0033】
このような電子ビーム照射装置10は、例えば医薬品、化粧水などの人体に適用する物質を容器に充填するための作業ライン上において、当該容器に必要とされる滅菌処理を行うためのものとして好適であり、例えば、電子ビーム照射装置10により滅菌処理が施された容器を、当該電子ビーム照射装置10に係る滅菌処理工程から、例えばベルトコンベアなどによって次工程である充填工程に搬送することにより、滅菌処理を容易にインラインで行うことができる。」

e.上記c.に摘記した「従って、電子ビーム照射装置10によれば、筒状容器1に対して電子ビームの照射を、その開口1Aおよび開口部分に過剰に照射することなく、確実かつ容易に行うことができることから、当該筒状容器1に対して確実に滅菌処理を施すことができると共に、筒状容器1自体が電子ビームが照射されることによって部分的に劣化することを防止することができる。」なる記載を踏まえ、開口1Aから電子ビーム照射ノズル部35が抜けた直後の状態を想定すると、開口1Aより下方の筒状容器1の外壁の領域には電子ビームが照射されないことが看取される。

f.上記a.ないしe.を踏まえると、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。
《甲1発明》
a)筒状容器1を、その開口1Aを上方とした正立状態で電子ビーム照射装置10の電子ビーム管ホルダ30における電子ビーム照射ノズル部35の真下に位置させ、
b)電子ビーム内表面照射工程において、筒状容器1の開口1Aおよび開口部分に電子ビーム照射ノズル部35を挿入する工程と、
c)筒状容器1の開口1Aおよび開口部分を除く内表面に対して電子ビームを照射する電子ビーム内表面照射工程と、次いで、筒状容器1の開口1Aから電子ビーム照射ノズル部35を引き抜くよう下方に移動する操作により、開口1Aおよび開口部分に対して照射線量を制御した状態で電子ビームを照射する電子ビーム開口部照射工程と、を含む滅菌処理の方法であって、
d)前記電子ビーム開口部照射工程では、開口1Aおよび開口部分に電子ビームを過剰に照射することなく、確実かつ容易に滅菌処理を施すことができ、
e)開口1Aおよび開口部分より下方の容器の外壁の領域には電子ビームが照射されず、
f)開口1Aおよび開口部分は、電子ビーム照射ノズル部35によって電子ビームが照射され、
g)前記電子ビーム開口部照射工程は、筒状容器1の開口1Aから電子ビーム照射ノズル部35を引き抜き、更に、この筒状容器1を電子ビーム照射ノズル部35の真下における所定の位置まで移動させ、電子ビーム照射ノズル部35が挿入されていた開口1Aおよび開口部分に対して筒状容器1を移動させながら電子ビームを照射するものであり、
l)電子ビームが放射され、かつガス供給手段によってガス流路に不活性ガスが流動されて充填されている状態において、筒状容器1を下方に移動させることによって当該筒状容器1の開口1Aから電子ビーム照射ノズル部35を引き抜き、
m)筒状容器1の開口1Aおよび開口部分を除く内表面に電子ビームを照射し、次いで、開口1Aおよび開口部分に対して電子ビームを照射することにより、筒状容器1を確実に殺菌処理し、
o)開口1Aおよび開口部分を除く内表面と、開口部および容器の外側に位置する開口1Aに電子ビームを照射する間、筒状容器1は正立状態とされている、
滅菌処理の方法。

(イ)本件発明1について
a.甲1発明
甲1発明は、上記第3.3.(2)ア.(ア)f.に示したとおりである。
b.対比
甲1発明の「筒状容器1」、「電子ビーム照射ノズル部35」、「電子ビーム」、「内表面」、「滅菌処理の方法」は、各々、本件発明1の「容器」、「照射装置」、「電荷担体」、「内壁」、「容器の殺菌方法」に相当する。
ここで、本件発明1の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、上記第3.3.(1)ア.で示したとおり、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「容器に随意により配置されるキャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものである。
一方、甲1には「・・・筒状容器1の開口1Aの開口径・・・電子ビーム照射ノズルが挿入されるべき開口部分の内径・・・」との記載がある(上記第2.3.(2)ア.(ア)a.を参照)ことを踏まえると、甲1発明の「開口部分」は「内径」が」存在し得る領域、すなわち、「開口1A」が形成され、かつ、該「開口1A」よりも下方に位置する筒状部分を意味すると解すべきであり、そのような筒状部分は、容器の内側に位置する領域(「内径」が存在し得る領域)と容器の外側に位置する領域(「内径」に対する概念としての外径が存在し得る領域)とからなることが明らかである。
ゆえに、甲1発明の「開口1Aおよび開口部分」と、本件発明1の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」とは、「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」という限りにおいて一致するものである。
そして、上記第2.3.(2)ア.(ア)d.に摘記したように、甲1発明は、「ベルトコンベアなどによって次工程である充填工程に搬送することにより、滅菌処理を容易にインラインで行うことができる」ことを想定したものであるから、甲1発明の「筒状容器1を、その開口1Aを上方とした正立状態で電子ビーム照射装置10の電子ビーム管ホルダ30における電子ビーム照射ノズル部35の真下に位置させ」ることは、ベルトコンベア等の搬送装置によって所定の搬送経路に沿って運ばれることで行われることを含むものであることが明らかである。
また、甲1発明の「筒状容器1の開口1Aおよび開口部分に電子ビーム照射ノズル部35を挿入する」ことは、「電子ビーム照射ノズル部35」が、「筒状容器1」と該「電子ビーム照射ノズル部35」との間の前記「筒状容器1」の長手方向の相対移動によって前記「筒状容器1」の内部に導入されることを意味することが明らかである。
ゆえに、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

《一致点》
A)容器が搬送装置によって所定の搬送経路に沿って運ばれる工程と、
B)照射装置が前記容器と該照射装置との間の前記容器の長手方向の相対移動によって殺菌すべき前記容器の内部へと導入される工程と、
C)電荷担体の照射によって前記容器の内壁を殺菌すべく電荷担体を照射する工程と、を含む容器の殺菌方法であって、
D’)前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する領域も殺菌され、
E’)前記開口領域および前記開口領域に隣接する領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されない、容器の殺菌方法。

《相違点1-0》
「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」が、本件発明1では「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」であるのに対し、甲1発明では「開口1Aおよび開口部分」である点。

c.相違点の判断
上記第3.3.(2)ア.(イ)b.でも示したとおり、本件発明1の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「キャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものである。
一方、甲1には、筒状容器1の蓋、キャップ、ないしカバー等やねじ領域、キャリングに関する記載がなく、甲1発明の「開口部分」が、蓋、キャップ、ないしカバー等と接触する領域や、容器のねじ領域や容器に随意により配置されるキャリングまで延びる領域を含む領域であるとはいえないことを踏まえると、上記《相違点1-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明であるとはいえず、理由1-1によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
しかし、蓋、キャップ、ないしカバー等の容器の開口を塞ぐ手段は、通常備えられ、容器のねじ領域やキャリングは必要に応じて備えられるものであることが技術常識であり、また、容器の、蓋と接触する領域、ねじ領域及びキャリングまで延びる領域といった領域は、例えば、飲料容器の場合には、飲用者の口と直接触れる可能性のある領域であり、予め殺菌されておくべき領域であることは、例示を待つまでもなく当業者に周知の事項である。
そして、「筒状容器1」の外壁の領域のどこまでを照射対象とするかは、当該「筒状容器1」の用途やその製造コスト等を勘案し、当業者が適宜決定し得た設計的な事項にすぎないから、甲1発明の筒状容器1に、蓋、キャップ、ないしカバー等やねじ領域、キャリングを設ける際には、蓋と接触する領域、ねじ領域及びキャリングまで延びる領域をも殺菌すること、すなわち、甲1発明の「開口1Aおよび開口部分」を、本件発明1における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
さらに、特許権者が、平成30年5月23日付け意見書で主張する、「滅菌に必要な資源(エネルギー)を低減させることができるとともに、非常に速やかな殺菌工程とすることができる」という本件発明1の作用効果(同意見書12頁16?24行を参照)は、「d)前記電子ビーム開口部照射工程では、開口1Aおよび開口部分に電子ビームを過剰に照射することなく、確実かつ容易に滅菌処理を施すことができ、e)開口1Aおよび開口部分より下方の容器の外壁の領域には電子ビームが照射されず、」ということをその構成の一部とする甲1発明においても奏されるものであり、格別なものとはいえない。
ゆえに、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、本件発明1に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(ウ)本件発明2について
本件発明2の「外側に位置する開口領域」は、上記第2.で示したとおり本件訂正請求が認められたことにより、「外側に位置する、開口部を有する開口領域」であることが明確となったことを踏まえると、甲1発明の「開口1Aおよび開口部分」は、本件発明2の「外側に位置する開口領域」を包含することが明らかであるから、甲1発明の構成f)は、本件発明2の構成Fに相当する。
ゆえに、本件発明2と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したように、上記《相違点1-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明2は甲1発明であるとはいえないが、甲1発明の「開口1Aおよび開口部分」を、本件発明2における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明2に係る特許は、理由1-1によっては、取り消すことはできないが、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(エ)本件発明3について
甲1発明の構成g)において、「電子ビーム開口部照射工程」は、「筒状容器1の開口1Aから電子ビーム照射ノズル部35を引き抜」いた状態で行われるものであるから、甲1発明の構成g)は、本件発明3の構成Gに相当する。
ゆえに、本件発明3と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したように、上記《相違点1-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明3は甲1発明であるとはいえないが、甲1発明の「開口1Aおよび開口部分」を、本件発明3における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明3に係る特許は、理由1-1によっては、取り消すことはできないが、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(オ)本件発明4について
本件発明4の「特に好まく」は、正しくは「特に好ましく」の明らかな誤記であると認める。
本件発明4と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-1》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-1》
本件発明4では、開口領域の殺菌の際に、照射装置の下端が、0.5cm?10cmの間、好ましくは1cm?6cmの間、特に好ましくは3cm?5cmの間の距離に位置するのに対し、甲1発明では、照射装置の下端の位置が不明である点。
相違点について検討する。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-1》に関し、甲1発明において、「電子ビーム照射ノズル部35」と「開口1Aおよび開口部分」との距離は、電子ビームの照射出力や必要とされる殺菌能力等を踏まえ、当業者が適宜設定すべき設計的事項である。
また、本件発明4が上記の距離とした理由について、本件特許明細書には段落【0017】に定性的かつ当業者であれば通常想定し得る事項しか記載されていないことを踏まえると、本件発明4が奏する作用効果は、甲1発明が奏する作用効果から、当業者が予測し得る程度のものであり、格別なものとはいえない。
ゆえに、本件発明4は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明4に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(カ)本件発明5について
本件発明5と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-2》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-2》
本件発明5では、容器は、クリーンルームを通って運ばれること、またはクリーンルームへと運ばれるのに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-2》に関し、殺菌対象の容器が、クリーンルームを通って運ばれるか、またはクリーンルームへと運ばれるようにすることは、例えば、甲4の段落[0050]及び[0051](申立書の32頁15行ないし33頁24行も併せて参照されたい。)や甲5の段落[0122]及び[0061](申立書の39頁12行ないし40頁末行も併せて参照されたい。)にも記載されているように、従来周知の技術であり、この周知技術を踏まえ、甲1発明において、クリーンルームを設置し、「筒状容器1」が、クリーンルームを通って運ばれるか、またはクリーンルームへと運ばれるように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明5は、甲1発明及び甲4、5にも記載されたような周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明5に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(キ)本件発明6について
本件発明6と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-3》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-3》
本件発明6では、照射装置は、前記容器の前記開口領域を、少なくとも前記容器が無菌室に進入するまで照射するのに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-3》に関し、殺菌対象の容器が、無菌室(クリーンルーム)に進入するまで、照射装置により、前記容器の開口領域を照射するようにすることは、例えば、甲4の段落[0050]及び[0051](申立書の32頁15行ないし33頁24行も併せて参照されたい。)や甲5の段落[0122]及び[0061](申立書の39頁12行ないし40頁末行も併せて参照されたい。)にも記載されているように、従来周知の技術であり、この周知技術を踏まえ、甲1発明において、クリーンルームを設置し、「筒状容器1」が、無菌室(クリーンルーム)に進入するまで、電子ビーム照射装置により、「筒状容器1」の「開口1Aおよび開口部分」を照射するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明6は、甲1発明及び甲4、5にも記載されたような周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明6に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(ク)本件発明7について
本件発明7と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-4》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-4》
本件発明7では、容器に、気体媒体の導かれた流れが作用させられるのに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-4》に関し、殺菌対象の容器に、気体媒体の導かれた流れを作用させることは、例えば、甲4の段落[0050]及び[0051](申立書の32頁15行ないし33頁24行も併せて参照されたい。)や甲5の段落[0122]及び[0061](申立書の39頁12行ないし40頁末行も併せて参照されたい。)にも記載されているように、従来周知の技術であり、この周知技術を踏まえ、甲1発明において、「筒状容器1」に、気体媒体の導かれた流れを作用させることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件特許発明7は、甲1発明及び甲4、5にも記載されたような周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明7に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(ケ)本件発明8について
甲1発明の構成l)において、「電子ビームが放射され」ることは、「筒状容器1を下方に移動させる」間、すなわち、「電子ビーム照射ノズル部35」が、筒状容器1の底部から取り去られる間にも行われることを意味することが明らかであるから、甲1発明の構成l)は、本件発明8の構成Lに相当する。
ゆえに、本件発明8と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したように、上記《相違点1-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明8は甲1発明であるとはいえないが、甲1発明の「開口1Aおよび開口部分」を、本件発明8における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明8に係る特許は、理由1-1によっては、取り消すことはできないが、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(コ)本件発明9について
甲1発明の構成m)において、「電子ビームを照射」は、「筒状容器1の開口1Aおよび開口部分を除く内表面に」対し行われているから、筒状容器1の内壁の全体を殺菌するものであることを踏まえると、 甲1発明の構成m)は、本件発明9の構成Mに相当する。
ゆえに、本件発明9と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したように、上記《相違点1-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明9は甲1発明であるとはいえないが、甲1発明の「開口1Aおよび開口部分」を、本件発明9における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明9に係る特許は、理由1-1によっては、取り消すことはできないが、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(サ)本件発明10について
甲1発明の構成l)の「筒状容器1を下方に移動させること」は、「電子ビーム照射ノズル部35」が、筒状容器1の底部から開口1Aの方向への相対移動を意味することが明らかであるから、甲1発明の構成l)は、本件発明10の構成Nに相当する。
ゆえに、本件発明10と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したように、上記《相違点1-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明10は甲1発明であるとはいえないが、甲1発明の「開口1Aおよび開口部分」を、本件発明10における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明10に係る特許は、理由1-1によっては、取り消すことはできないが、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(シ)本件発明11について
甲1発明の構成o)は、「筒状容器1」が、「開口1Aおよび開口部分を除く内表面と、開口部および容器の外側に位置する開口1Aに電子ビームを照射する間」、上下方向に立設されていることを意味することは明らかであるから、本件発明11の構成Oに相当する。
ゆえに、本件発明11と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したように、上記《相違点1-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明11は甲1発明であるとはいえないが、甲1発明の「開口1Aおよび開口部分」を、本件発明11における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明11に係る特許は、理由1-1によっては、取り消すことはできないが、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(ス)本件発明12について
本件発明12と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-5》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-5》
本件発明12では、照射装置は容器に対して斜めに配置され、前記容器は側方から照射されるのに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-5》に関し、甲3の段落[0015]及び図1には、電子線照射装置の電子線照射窓1が、ボトル3の軸線Cに直交する面に対して角度Aで傾斜して設けられ、これにより、電子線照射窓1から照射された電子線2は、ボトル3の軸線Cに対して角度Aで照射されることが記載されており(申立書の31頁28行ないし32頁14行も併せて参照されたい。)、この記載に基づき、甲1発明において、電子ビーム照射装置を「筒状容器1」に対して斜めに配置し、「筒状容器1」が側方から照射されるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明12は、甲1発明及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明12に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(セ)本件発明13について
本件発明13と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-6》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-6》
本件発明13では、電子線照射の線量に必要な処理の継続時間が、前記容器の下降または上昇の速度によって調節され得るのに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-6》に関し、甲5の段落[0075]及びFIG.4には、電子ビーム照射の線量率が、ボトル(B)の下降または上昇の速度によって調整され得ることが記載されており(申立書の42頁末行ないし43頁32行も併せて参照されたい。)、この記載に基づき、甲1発明において、電子ビーム照射装置の線量に必要な処理の継続時間が、「筒状容器1」の下降または上昇の速度によって調節され得るようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明13は、甲1発明及び甲5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明13に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(ソ)本件発明14について
本件発明14と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-7》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-7》
本件発明14では、容器の断面形状の違いに応じて、該容器内で照射装置を異なる速度で移動させるのに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-7》に関し、容器の断面形状の違いに応じて、該容器内で照射装置を異なる速度で移動させることは、例えば、甲5の段落[0075]及びFIG.4(申立書の42頁末行ないし43頁34行も併せて参照されたい。)や甲6の段落【0009】、【0011】、【0015】及び【0020】(申立書の34頁13行ないし35頁2行も併せて参照されたい。)にも記載されているように、従来周知の技術であり、この周知技術を踏まえ、甲1発明において、「筒状容器1」の断面形状の違いに応じて、該「筒状容器1」内で電子ビーム照射装置を異なる速度で移動させることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明14は、甲1発明及び甲5、6にも記載されたような周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明14に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(タ)本件発明15について
本件発明15と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-8》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-8》
本件発明15では、照射装置が、容器の底部まで導入されるのに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-8》に関し、照射装置を、容器の底部まで導入することは、例えば、甲2の段落【0072】、【0095】及び【0097】(申立書の30頁10行ないし31頁27行も併せて参照されたい。)や甲5の段落[0072]、[0075]及びFIG.4(申立書の41頁1行ないし42頁2行及び44頁3行ないし7行も併せて参照されたい。)にも記載されているように、従来周知の技術であり、この周知技術を踏まえ、甲1発明において、電子ビーム照射装置の「電子ビーム照射ノズル部35」を、「筒状容器1」の底部まで導入することは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明15は、甲1発明及び甲2、5にも記載されたような周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明15に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(チ)本件発明16について
本件発明16と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-9》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-9》
本件発明16では、電子雲が、内部および外側の両方から容器の開口部に作用するのに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-8》に関し、甲5の段落[0058]及びFIG.2Bには、電子プルーム280が、ボトル(B)の内部および外側の両方からその開口部に作用することが記載されており(申立書の37頁23行ないし38頁9行及び44頁8行ないし18行も併せて参照されたい。)、この記載に基づき、甲1発明において、電子ビームの電子雲が、内部および外側の両方から「筒状容器1」の開口部に作用するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明16は、甲1発明及び甲5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明16に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(ツ)本件発明17について
本件発明17と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-10》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-10》
本件発明17では、電荷担体は、加速装置によって加速された電子であるのに対し、甲1発明1は、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-10》に関し、甲2の段落【0072】、【0095】及び【0097】には、容器を殺菌するための電子ビームの電子が、加速デバイス6を介して加速されることが記載されており(申立書の30頁10行ないし31頁27行も併せて参照されたい。)、この記載に基いて、甲1発明において、電子ビームの電子が、加速装置によって加速された電子とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明17は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明17に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(テ)本件発明18について
本件発明18と甲1発明とは、上記第3.3.(2)ア.(イ)b.で示した《相違点1-0》及び以下の《相違点1-11》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-11》
本件発明18では、容器がプラスチックの予備成形物であるのに対し、甲1発明は、容器がプラスチックの予備成形物ではない点。
《相違点1-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点1-11》に関し、甲5の段落[0155]には、電子ビームにより殺菌されるボトル(B)がプリフォームであることが記載されており(下記第2.3.(2)イ.(ア)jを参照。)、この記載に基いて、甲1発明において、「筒状容器1」をプラスチックの予備成形物とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明18は、甲1発明及び甲5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明18に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(ト)本件発明19について
a.甲1発明A
上記第2.3.(1)ア.(ア)a.に示した甲1記載事項に関し、筒状容器1の内表面の殺菌の間は、筒状容器1の開口1Aが上方を向いていることは明らかである。
また、上記第2.3.(1)ア.(ア)b.に示した甲1記載事項に関し、筒状容器1の開口1Aおよび開口部分の殺菌の間も、筒状容器1の開口1Aは上方を向いていることが明らかである。
以上を踏まえると、甲1には、上記甲1発明に加え、以下に示す甲1発明Aが記載されているといえる。
《甲1発明A》
w)電子ビーム照射対象体である筒状容器1を、その開口1Aを上方とした正立状態で電子ビーム照射ノズル部35の真下に位置させ、
x)筒状容器1の開口1Aおよび開口部分に電子ビーム照射ノズル部35を挿入し、
y)電子ビーム照射ノズル部35が挿入されている開口1Aおよび開口部分を除く内表面に電子ビームを照射し、次いで、筒状容器1の開口1Aから電子ビーム照射ノズル部35を引き抜くよう下方に移動する操作により、開口1Aおよび開口部分に対して照射線量を制御した状態で電子ビームを照射し、
z)前記筒状容器1が正立状態で、かつ、筒状容器1の内表面および開口1Aおよび開口部分の両方の殺菌の間、筒状容器1の開口1Aが上方を向いている滅菌処理の方法。

b.対比
甲1発明Aと本件発明19とを対比する。
甲1発明Aの「筒状容器1」、「電子ビーム照射ノズル部35」、「電子ビーム」、「内表面」、「滅菌処理の方法」は、各々、本件発明19の「容器」、「照射装置」、「電荷担体」、「内壁」、「容器の殺菌方法」に相当する。
ここで、本件発明19の「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、上記第3.3.(1)ア.で示したことと同様に、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「容器に随意により配置されるキャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものである。
一方、甲1には「・・・筒状容器1の開口1Aの開口径・・・電子ビーム照射ノズルが挿入されるべき開口部分の内径・・・」との記載がある(上記第2.3.(2)ア.(ア)a.を参照)ことを踏まえると、甲1発明Aの「開口部分」は「内径」が」存在し得る領域、すなわち、「開口1A」が形成され、かつ、該「開口1A」よりも下方に位置する筒状部分を意味すると解すべきであり、そのような筒状部分は、容器の内側に位置する領域(「内径」が存在し得る領域)と容器の外側に位置する領域(「内径」に対する概念としての外径が存在し得る領域)とからなることが明らかである。
ゆえに、甲1発明Aの「開口1Aおよび開口部分」と、本件発明19の「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」とは、「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」という限りにおいて一致するものである。
そして、上記第2.3.(1)ア.(ア)d.に摘記したように、甲1発明Aは、「ベルトコンベアなどによって次工程である充填工程に搬送することにより、滅菌処理を容易にインラインで行うことができる」ことを想定したものであるから、甲1発明Aの「電子ビーム照射対象体である筒状容器1を、その開口1Aを上方とした正立状態で電子ビーム照射ノズル部35の真下に位置させ」ることは、ベルトコンベア等の搬送装置によって所定の搬送経路に沿って運ばれることで行われることを含むものであることが明らかである。
さらに、甲1発明Aの「筒状容器1の開口1Aおよび開口部分に電子ビーム照射ノズル部35を挿入」することは、「電子ビーム照射ノズル部35」が、「筒状容器1」と該「電子ビーム照射ノズル部35」との間の前記「筒状容器1」の長手方向の相対移動によって行われることが明らかである。
ゆえに、本件発明19と甲1発明Aとの一致点、相違点は以下のとおりである。

《一致点》
W)搬送装置により、所定の搬送経路に沿って、その端部に開口部を有する容器を搬送し、
X)前記容器の内部に照射装置を挿入し、
Y’)前記容器内部の前記容器の底部から始まる電荷担体の放射を始め、前記電荷担体の前記放射によって前記容器の内壁の全体を殺菌するために、前記開口部の方向に、前記容器の内壁に対し相対的に前記照射装置を移動し、前記照射装置を前記開口部の外へ移動させている間に、前記照射装置が前記容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する領域を殺菌することで、前記容器を殺菌し、前記開口領域および前記開口領域に隣接する領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されず、
Z)前記容器が上下方向に立設されており、かつ、前記容器および前記開口領域の両方の前記殺菌の間、前記容器の前記開口端が上方を向いている容器の殺菌方法。

《相違点1-0’》
「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」が、本件発明19では「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」であるのに対し、甲1発明Aでは「開口1Aおよび開口部分」である点。

c.相違点の判断
上記第3.3.(2)ア.(ト)b.で示したように、本件発明19の「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「キャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものであるが、甲1には、筒状容器1の蓋、キャップ、ないしカバー等やネジ領域、キャリングに関する記載がなく、甲1発明Aの「開口部分」が、蓋、キャップ、ないしカバー等と接触する領域や、容器のねじ領域や容器に随意により配置されるキャリングまで延びる領域を含む領域であるとはいえないことを踏まえると、上記《相違点1-0’》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるから、本件発明19は甲1発明Aであるとはいえず、理由1-1によっては、本件発明19に係る特許を取り消すことはできない。
しかし、上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示した理由と同様の理由により、甲1発明Aの「開口1Aおよび開口部分」を、本件発明19における「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
ゆえに、本件発明19は、甲1発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、本件発明19に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(ナ)本件発明20について
a.甲1発明B
上記第2.3.(1)ア.(ア)a.に示した甲1記載事項に関し、筒状容器1の内表面の殺菌の間は、筒状容器1の開口1Aが上方を向いていることは明らかである。
また、上記第2.3.(1)ア.(ア)b.に示した甲1記載事項に関し、筒状容器1の開口1Aおよび開口部分の殺菌の間も、筒状容器1の開口1Aは上方を向いていることが明らかである。
以上を踏まえると、甲1には、上記甲1発明及び甲1発明Aに加え、以下に示す甲1発明Bが記載されているといえる。
《甲1発明B》
a1)筒状容器1を、その開口1Aを上方とした正立状態で電子ビーム照射ノズル部35の真下に位置させる手段と、
b1)電子ビームを照射する電子ビーム照射装置10の電子ビーム照射ノズル部35と、を備え、
c1)筒状容器1の開口1Aおよび開口部分に電子ビーム照射ノズル部35を挿入し、筒状容器1の内表面を殺菌することができる電子ビーム照射装置であって、
d1)電子ビーム照射装置10を制御する制御ユニット19をさらに備え、制御ユニット19は、電子ビームによる照射によって筒状容器1の開口1Aおよび開口部分も殺菌し、前記開口1Aおよび開口部分よりも下方に位置する筒状容器1の外壁の領域は、電子ビームを照射しない電子ビーム照射装置。

b.対比
甲1発明Bと本件発明20とを対比する。
甲1発明Bの「筒状容器1」、「電子ビーム照射ノズル部35」、「電子ビーム」、「内表面」、「電子ビーム照射装置」は、各々、本件発明20の「容器」、「照射装置」、「電荷担体」、「内壁」、「容器の殺菌装置」に相当する。
ここで、本件発明20の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、上記第3.3.(1)ア.で示したことと同様に、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「容器に随意により配置されるキャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものである。
一方、甲1には「・・・筒状容器1の開口1Aの開口径・・・電子ビーム照射ノズルが挿入されるべき開口部分の内径・・・」との記載がある(上記第2.3.(2)ア.(ア)a.を参照)ことを踏まえると、甲1発明Bの「開口部分」は「内径」が」存在し得る領域、すなわち、「開口1A」が形成され、かつ、該「開口1A」よりも下方に位置する筒状部分を意味すると解すべきであり、そのような筒状部分は、容器の内側に位置する領域(「内径」が存在し得る領域)と容器の外側に位置する領域(「内径」に対する概念としての外径が存在し得る領域)とからなることが明らかである。
ゆえに、甲1発明Bの「開口1Aおよび開口部分」と、本件発明20の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」とは、「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」という限りにおいて一致するものである。
そして、上記第2.3.(1)ア.(ア)d.に摘記したように、甲1発明Bは、「ベルトコンベアなどによって次工程である充填工程に搬送することにより、滅菌処理を容易にインラインで行うことができる」ことを想定したものであるから、甲1発明Bの「筒状容器1を、その開口1Aを上方とした正立状態で電子ビーム照射ノズル部35の真下に位置させる」ことは、ベルトコンベア等の搬送装置によって所定の搬送経路に沿って運ばれることで行われることを含むものであることが明らかである。
また、甲1発明Bの「筒状容器1の開口1Aおよび開口部分に電子ビーム照射ノズル部35を挿入」することは、「電子ビーム照射ノズル部35」が、「筒状容器1」と該「電子ビーム照射ノズル部35」との間の前記「筒状容器1」の長手方向の相対移動によって行われることが明らかである。
さらに、甲1発明Bの「開口1Aより下方に位置する筒状容器1の外壁の領域」は、「開口1A」および「筒状容器1」の頭部の領域よりも下方に位置する「筒状容器1」の外壁の領域を意味することも明らかである。
ゆえに、本件発明20と甲1発明Bとの一致点、相違点は以下のとおりである。

《一致点》
A1)容器を所定の搬送経路に沿って運ぶ搬送装置と、
B1)電荷担体を照射する照射装置と、
を備え、
C1)前記照射装置を、前記容器と該照射装置との間の容器の長手方向の相対移動によって容器の内部へと導入し、前記容器の内壁を殺菌することができる容器の殺菌装置であって、
D1’)前記照射装置を制御する制御装置をさらに備え、該制御装置は、前記照射装置による照射によって前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域も殺菌し、前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌しない、容器の殺菌装置。

《相違点1-0”》
「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」が、本件発明20では「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」であるのに対し、甲1発明Bでは「開口1Aおよび開口部分」である点。

c.相違点の判断
上記第3.3.(2)ア.(ナ)b.で示したように、本件発明20の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「キャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものであるが、甲1には、筒状容器1の蓋、キャップ、ないしカバー等やネジ領域、キャリングに関する記載がなく、甲1発明Bの「開口部分」が、蓋、キャップ、ないしカバー等と接触する領域や、容器のねじ領域や容器に随意により配置されるキャリングまで延びる領域を含む領域であるとはいえないことを踏まえると、上記《相違点1-0”》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるから、本件発明20は甲1発明Bであるとはいえず、理由1-1によっては、本件発明20に係る特許を取り消すことはできない。
しかし、上記第3.3.(2)ア.(イ)c.で示した理由と同様の理由により、甲1発明Bの「開口1Aおよび開口部分」を、本件発明20における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
ゆえに、本件発明20は、甲1発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、本件発明20に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(ニ)本件発明21について
本件発明21と甲1発明Bとは、上記第3.3.(2)ア.(ナ)b.で示した《相違点1-0”》及び以下の《相違点1-12》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-12》
本件発明21では、照射装置は、少なくとも局所的に前記容器と一緒に移動するのに対し、甲1発明Bは、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0”》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(ナ)c.で示したとおりである。
《相違点1-12》に関し、容器を殺菌する照射装置を、局所的に前記容器と一緒に移動させることは、例えば、甲2の段落【0072】、【0095】及び【0097】(申立書の30頁10行ないし31頁27行も併せて参照されたい。)や甲5の段落[0054](申立書の36頁1行ないし21行及び45頁29行ないし46頁3行も併せて参照されたい。)にも記載されているように、従来周知の技術であり、この周知技術を踏まえ、甲1発明Bにおいて、電子ビーム照射装置が局所的に「筒状容器1」と一緒に移動するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明21は、甲1発明B及び甲2、5にも記載されたような周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明21に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。

(ヌ)本件発明22について
本件発明22と甲1発明Bとは、上記第3.3.(2)ア.(ナ)b.で示した《相違点1-0”》及び以下の《相違点1-13》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点1-13》
本件発明22では、容器に気体媒体の流れを作用させる加圧装置を備えるのに対し、甲1発明Bは、そのような構成を有していない点。
《相違点1-0”》の判断は、上記上記第3.3.(2)ア.(ナ)c.で示したとおりである。
《相違点1-13》に関し、殺菌される容器に気体媒体の流れを作用させる加圧装置を備えることは、例えば、甲4の段落[0050]及び[0051](申立書の32頁15行ないし33頁24行も併せて参照されたい。)や甲5の段落[0061](申立書の40頁5行ないし末行も併せて参照されたい。)にも記載されているように、従来周知の技術であり、この周知技術を踏まえ、甲1発明Bにおいて、「筒状容器1」に気体媒体の流れを作用させる加圧装置を備えることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明22は、甲1発明B、甲2、5にも記載されたような周知技術及び甲4、5にも記載されたような周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明22に係る特許は、理由2-1によって取り消されるべきものである。


イ.理由1-2.及び理由2-2.について
(ア)甲5記載事項及び甲5発明
甲5には以下の甲5記載事項がある。
a.「[0052] FIG. 1A is a diagrammatic view of an exemplary electron beam sterilization apparatus 100 A in accordance with an illustrative embodiment of the present invention. The apparatus 100 A includes an infeed transfer wheel 105 , onto which a succession of bottles B is placed by a loader (not shown) and suspended by grippers securing the bottle from either above or below the neck of the bottle. It should be noted that grippers are described in an exemplary embodiment. In alternative embodiments, other techniques may be utilized for transporting bottles. Such alternative techniques may include, e.g., conveyors, vacuum systems, etc. As such, the description of grippers should be taken as exemplary only. The bottles are transferred therefrom to the grippers 115 of a sterilization carousel 110. As the carousel 110 rotates in the direction indicated by arrow 120, the bottles are processed and transported in succession to a discharge wheel 125 which offloads them into a sterile zone in which downstream processing steps, such as a filling and capping (not shown) take place.」
(当審訳:[0052]FIG.1Aは、本発明の例示的な実施形態に係る好適な電子ビーム殺菌装置の概略図である。装置100Aは、インフィールドトランスファホイール105を有し、ボトルBはローダ(不図示)によって連続的に配列され、ボトルのネックの上方または下方からボトルを保持しているグリッパによって吊り下げている。グリッパは例示的な実施形態として説明される点に留意されるべきである。別の実施形態において、他の技術が、ボトルの運搬に利用され得る。そのような他の技術は、たとえば、コンベア、真空システムなどを含んである。そのように、グリッパの説明は例示としてのみ取られるべきである。ボトルは、そこから殺菌カルーセル110のグリッパ115に移される。カルーセル110は矢印120で示される方向に回転すると、ボトルは処理され、下流の処理ステップ、充填やキャッピング(不図示)が実行される殺菌ゾーンに、それらをおろすディスチャージホイール125に移送される。)

b.「[0053]・・・As shown in FIG. 2A, each emitter 130 includes a housing 205 defining a vacuum chamber 210 containing an electron beam generator 215. The housing 205 is formed with an elongated dependent nozzle 220 which is narrow enough to fit into the finish of the bottles B and which is long enough to extend into the bottles.・・・
[0054] As the carousel 110 rotates, the bottle grippers 115 thereof are lifted progressively so that the bottles B are gradually raised around the emitter nozzles 220 to achieve a desired amount of nozzle penetration into the bottles. Then, the grippers 115 are progressively lowered to allow the bottles to clear the nozzles 220 before the bottles reach the discharge wheel 125. As described further below, this penetration of the nozzle into the bottles enables sufficient dosage to be delivered to the interior of the entire bottle. While it is preferable to move the bottle relative to the emitter, in alternative embodiments the emitter may move relative to the bottle.」
(当審訳:[0053]・・・図2Aに示すように、各エミッタ130は、電子ビーム発生器215を含む真空チャンバ210を画定するハウジング205を含む。ハウジング205には、ボトルBのフィニッシュに合致するように充分に細く、ボトル内部まで延びるように十分な長さを有するノズル220が形成されている。・・・
[0054]カルーセル110が回転すると、そのボトルグリッパ115は徐々に上昇し、ボトル内への所望のノズル進入量に達するまで、ボトルBはエミッタノズル220の周りに上昇する。そして、グリッパ115は、ボトルがディスチャージホイール125に達する前に、ボトルがノズル220を通過するように、徐々に下降する。さらに以下に説明するように、このボトル内へのノズルの進入は、十分な線量が、ボトルの内面に達することを可能とする。ボトルがエミッタに対して相対移動することが好適であるが、一方で、別の実施形態として、エミッタがボトルに対して相対移動してもよい。)

c.「[0055] Each emitter 130 is activated by a power supply 225. The electrons emanating from the nozzle window 210 scatter in air, creating an electron beam energy plume that extends in 3 dimensions relative to surface of window. This energy plume sterilizes air and surfaces based on well known relationships between electron beam dose and microbiological reduction (such as published in Cleghorn et. al, “Sterilization of Plastic Containers Using Electron Beam Irradiation Directed through the Opening”, Journal of Applied Microbiology, 2002). Electron scattering due to collisions of electrons with atmospheric molecules enables electron beam energy to reach surfaces that may be partially blocked due to the geometry of the surfaces.」
(当審訳:[0055]各エミッタ130は電源225によって活性化される。ノズル窓210から出射される電子は空気中で散乱し、窓の表面に応じて三次元的に拡がる電子ビームエネルギープルームを生成する。このエネルギープルームは、周知の電子ビーム線量と微生物学的な減少との関係、に基づいて、空気と表面を殺菌する(2012年、応用微生物学ジャーナル“開口部を通じた電子ビーム放射を用いたプラスチック容器の殺菌”クレグホーンその他)。電子の空気分子との衝突による電子散乱は、電子ビームのエネルギが、表面の幾何学形状により部分的に遮断される表面に到達することを可能とする。)

d.「[0057] Alternatively, the sterile zone may be defined so as to only require the sterilization of upper portions of the bottle. In this case, the electron beam emanating from the nozzle may provide sufficient sterilization to upper portions of the bottle before and after the nozzle is inserted into the interior of the bottle. Thus, the number of external emitters may be reduced or avoided altogether. In this case, the relative movement of the nozzle with respect to the bottle would provide sufficient exposure time to effectively sterilize the relevant portions of the exterior of the bottle.」
(当審訳:[0057]別の方法として、殺菌ゾーンは、ボトルの上部の殺菌だけに必要とするような範囲を規定し得る。このケースでは、ノズルから放出された電子線は、ノズルがボトル内に挿入される前後において上部の十分な殺菌を提供する。このようにすれば、外部エミッタの数は、減少または削減され得る。この場合には、ボトルに対するノズルの相対移動がボトルの外部の適切な部分の効果的な殺菌に十分な照射時間を提供する。)

e.「[0058] FIG. 2B is a side elevational view showing a portion of the exemplary electron beam sterilization apparatus sterilizing exterior surfaces of a bottle in accordance with an illustrative embodiment of the present invention. Environment 200 B shows that an electron beam plume 280 may be utilized to sterilize the exterior of a bottle B. The housing 205 and nozzle 220 enter into the sterile zone 15 B and a plume 280 of electrons is generated from the electron beam window 245. The plume 280 is of sufficient diameter to sterilize the upper surface of bottle B as the nozzle 220 is inserted into the bottle. By controlling the speed at which the nozzle 220 is inserted into the bottle, an adequate dose to ensure sterilization can be achieved.」
(当審訳:[0058]FIG.2Bは、本発明の例示の実施形態に従うボトルの外部表面を殺菌する電子ビーム殺菌装置を示す側面図である。環境200Bは、電子線プルーム280がボトルBの外面の殺菌に利用され得ることを示している。ハウジング205とノズル220が殺菌ゾーン15Bに入り、電子のプルーム280が電子線窓245から発生する。プルーム280は、ノズル220がボトルに挿入されるので、ボトルの上部表面を殺菌するのに十分な径である。ノズル220がボトル内に挿入されるスピードを制御することによって、殺菌を確実にする線量に到達させることができる。)

f.「[0061] A clean process zone (or chamber) 150 where the bottles B are sterilized is illustratively defined by physical partitions 140 and positive internal gauge pressure may be provided to prevent ingress of contaminants into zone 150. Illustratively, the clean process zone 150 may be defined by physical partitions 140 and/or air pressure to provide an isolated environment where outside air is prevented from entering. Conventionally, the interior surfaces of chamber 150 as well as the nozzles 220 and other surfaces in the process chamber are cleaned in place (CIP) with various chemicals and them sterilized in place (SIP) using a chemical sterilant such as vaporized hydrogen peroxide (VHP) or peracetic acid (PAA) or by heat.」
(当審訳:[0061]クリーンプロセスゾーン(または、チャンバ)150はボトルが殺菌されるところであり、物理的な仕切り140によって例示的に規定されており、ゾーン150に汚染菌の進入を防止するために、正圧の内部ゲージ圧が供給されている。例示的に、クリーンプロセスゾーン150は、物理的な仕切り140によって規定されるか、および/または、空気圧が隔離された環境に供給され、外気の進入を防いでいる。従来は、チャンバの内表面は、プロセスチャンバ内のノズルや他のチャンバと同程度に、種々の薬品で定置洗浄(CIP)され、また、過酸化水素(VHP)や過酢酸のような種々の化学滅菌剤または熱によって、定置滅菌(SIP)されている。)

g.「[0072] For example, FIG. 4 shows the emitter dose distribution for a typical bottle B using a fixed output from an exemplary emitter 130 and a constant up/down movement of the bottle relative to the emitter in accordance with an illustrative embodiment of the present invention. In this example, a dose over 50 kGy is considered an excessive dose while a dose under 25 kGy is considered an insufficient dose. It should be noted that in alternative embodiments, the 25 and 50 kGy doses may vary and/or be substituted with differing values depending on the particular environment, material, etc. Waveform P1 in FIG. 4 shows that there is a non-uniform dose distribution due to the three dimensional nature of bottle B. That is, when the bottle is at positions 1 - 2 and the window 245 of nozzle 220 is in the mouth and narrow neck of the bottle, the electron beam dose received is too great Likewise for bottle positions 9 - 10 when the window 245 is near the base of the bottle and the relative motion is being reversed. On the other hand, an insufficient electron beam dose is delivered to the surfaces at the sides of the bottle at position 5. Such variations in the applied electron beam dose adversely affect the applicability of electron beam sterilization for many such bottles and other irregular three dimensional targets.」
(当審訳:[0072]たとえば、FIG.4は、好適なエミッタ130からの固定出力と、本発明の例示的な実施形態に係るエミッタに対するボトルの相対的な一定の上下運動とを用いた、典型的なボトルBの放射線量分布である。この例では、50kGyが過大な線量で、25kGyが不十分な線量と考えられる。留意すべきことは、別の実施形態では、25と50kGyが、特別な環境、材料等に依存して、変動、および/または、異なる値に変わる可能性があることである。FIG.4の波形P1が示していることは、ボトルBの三次元的な形状による不均一な線量分布があることである。つまり、ボトルがポジション1-2にあり、ノズル220の窓245が、ボトルの開口と狭い首にあるときは、受ける電子ビーム線量は大きくなり過ぎ、窓245がボトルの底部に近く相対運動が反転するときのボトルポジション9-10についても同様である。一方、不十分な電子ビーム線量はポジション5でボトルの側部の表面に照射される。このような適用される電子ビーム線量の変化は、多くのボトルや他の不規則な三次元対象物に対する電子ビーム殺菌の適用に、不利な影響を及ぼす。)

h.「[0075] For example, in case of the bottle shape represented by the waveform P1 in FIG. 4, an excessive dose can be avoided by programming controller 605 to use a higher gripper 115 speed at bottle positions 1 - 2 when each nozzle 220 is in the mouth and neck of the associated bottle, e.g. higher by, say, a factor of 2-5 times the nominal speed. Also, when the neck is near the base of the bottle at positions 9 - 10, and the relative motion is being reversed, the output of the associated emitter may be modulated by reducing the beam output current and/or energy to create a dose rate that is lower by a factor of, e.g., 2-5 times the nominal dose rate. On the other hand, at bottle position 5, the gripper 115 may be slowed down and/or the dose rate increased.」
(当審訳:[0075]たとえば、FIG.4の波形P1によって表示されたボトル形状の場合、過大な線量は、プログラミングコントローラ605によって、各ノズル220が関連するボトルの開口および首部にあるボトルポジション1-2で、より高速、たとえば、およそ定格速度の2-5倍の速度のグリッパ115を使用して回避可能である。また、ポジション9-10で、首がボトルの底部のそばにあるとき、対応するエミッタの出力は、ビーム出力電流、および/または、たとえば、定格線量率の1/2?1/5の線量率を生成して、エネルギーを減少させることにより、調整可能である。一方、ボトルポジション5では、グリッパ115が速度を低下、および/または、線量率を上昇させてもよい。)

i.「[0080]・・・The sensor may also be used in conjunction with a controller (e.g., controller 240 in FIG. 2 ) for feedback control to regulate the emitter output based on the sensed signal.・・・
[0092]In the case of the external emitter(s) 135, extra emitters may be utilized to provide such dose redundancy. Thus, if one emitter, say, emitter 130, fails, the controller 240 may switch out the emitter and activate its mate. Preferably, during normal operation of the apparatus, the two emitters (primary and secondary) are both operated at half power. Then, if one emitter fails, the controller 240 may automatically double the power to the other so that the bottles B targeted by that emitter pair receive a normal electron beam dose.」
(当審訳:[0080]・・・センサはまた、検出された信号に基いてエミッタ出力を調整するフィードバック制御のためにコントローラ(例えば、図2のコントローラ240)と共に使用されてもよい。・・・
[0092]外部エミッタ135の場合、そのような線量の冗長性を提供するために余剰のエミッタを利用することができる。したがって、1つのエミッタ、例えば、エミッタ130が故障した場合、コントローラ240は、そのエミッタをスイッチアウトし、そのメイトを作動させることができる。好ましくは、装置の通常の動作中、2つのエミッタ(第1及び第2)は両方とも半分の電力で動作する。次いで、1つのエミッタが故障した場合、コントローラ240は自動的に他のエミッタへの電力を2倍にして、そのエミッタ対によって目標とされるボトルBが通常の電子ビーム線量を受け取るようにしてもよい。)

j.「[0122] Illustratively, region 725 comprises a non-sterile zone. A sterile boundary exists at some point in the sterilization carousel, or directly after the carousel, which defines an aseptic zone 720 in which the bottles as well as all machinery surfaces and air are considered sterile. That is, before the bottles reach the sterile boundary, they are considered to be non-sterile. Once the bottles have been sterilized, they are discharged onto discharge carousel 715 and are considered to be aseptic and ready for filling with a suitable liquid.」
(当審訳:[0122]例示的には、領域725は非殺菌領域を備えている。殺菌境界が殺菌カルーセル内のいくつかのポイントに存在するか、カルーセルの後に、直接的に無菌領域720が規定され、無菌領域720内でボトルがすべての機械表面および空気と同様に、殺菌されると考えられる。つまり、ボトルが殺菌境界に到達する前は、ボトルは非殺菌であると考えられる。一度、ボトルが殺菌されると、ボトルはディスチャージカルーセル715におろされ、無菌状態で適切な液体を充填する準備がなされると考えられる。)

k.「[0155] Associated with each emitter 2705 is a gripper 2725 which is adapted to support a target to be irradiated. The illustrated target is a bottle preform P, but the target could just as well be a bottle or other relatively deep hollow article.」
(当審訳:[0155]各エミッタ2705に関連付けられているのはグリッパ2725であり、それは照射されるターゲットを支持するように適合されている。図示のターゲットはボトルのプリフォームPであるが、ターゲットはボトル、あるいは他の相対的に深い穴の物であり得る。)

l.上記a.ないしk.及びFIG.2Bの記載を踏まえると、甲5には、以下の甲5発明が記載されている。
《甲5発明》
a5)ボトルBが、インフィードトランスファホイール105から殺菌カルーセル110のグリッパ115に移され、
b5)殺菌カルーセル110が回転すると、ボトル内への所望のノズル進入量に達するまで、ボトルBはエミッタノズル220の周りに上昇し、次いで、ボトルBがノズル220を通過するように降下し、
c5)ノズルの進入は、十分な線量が、ボトルの内面に達することを可能とするもので、ノズル窓210から出射される電子は空気中で散乱し、電子ビームエネルギープルームを生成してボトルの内周面を殺菌し、
d5)ボトルの外側の上部表面が電子プルーム280によって殺菌され、
e5)ボトルの外面はボトルの上部だけを殺菌し、
f5)エミッタノズル220から放出された電子ビームは、エミッタノズル220がボトルB内に挿入される前後において、電子のブルーム280によってボトルBの上部表面を殺菌し、
g5)ボトルBの上部表面の殺菌は、エミッタノズル220を完全にボトルBの外部に位置させた状態で行われ、
i5)ボトルBは、殺菌カルーセル705から無菌領域720のディスチャージカルーセル715を通って運ばれ、
j5)殺菌カルーセル705後に、直接的に規定される無菌領域720のディスチャージカルーセル715が配置されており、
k5)ボトルBが殺菌されるクリーンプロセスゾーン150には、正圧の内部ゲージ圧が供給されており、
l5)エミッタノズル220からの電子ビームの照射が、ボトル(B)の底部に近い位置から首部および開口にかけてなされており、
m5)ボトルBの内面全体を殺菌し、
n5)殺菌が、ボトルBの開口側から底部側へのエミッタノズル220の相対移動と、底部側から反転して開口部側へのエミッタノズル220の相対移動によってなされ、
o5)ボトルBが、内壁および外側に位置する上部表面の両方の殺菌の間、上下方向に立設されており、
q5)電子ビーム照射の線量率が、ボトルBの下降または上昇の速度によって調整され得、
r5)ボトルBの開口部及び首部、底部といった場所の違いに応じて、ボトルB内でエミッタノズル220を相対的に異なる速度で移動させ、
s5)エミッタノズル220が、ボトルBの底部まで導入され、
t5)電子プルーム280が、ボトルBの内部および外側の両方からその開口部に作用し、
v5)ボトルBがプリフォームであり得る、
殺菌方法。

(イ)本件発明1について
a.甲5発明
甲5発明は、上記第3.3.(2)イ.(ア)l.に示したとおりである。
b.対比
甲5発明の「ボトルB」、「インフィードトランスファホイール105及び殺菌カルーセル110」、「エミッタノズル220」、「電子」、「ボトルの内周面」、「上部表面」、「殺菌方法」は、各々、本件発明1の「容器」、「搬送装置」、「照射装置」、「電荷担体」、「内壁」、「開口領域」、「容器の殺菌方法」に相当する。
ここで、本件発明1の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、上記第3.3.(1)ア.で示したとおり、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「容器に随意により配置されるキャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものである。
一方、甲5発明の「d5)ボトルの外側の上部表面が電子プルーム280によって殺菌され、e5)ボトルの外面はボトルの上部だけを殺菌し」なる事項について、「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域は、ボトルBの「開口」が設けられた領域のみならず当該「開口」が設けられた領域に隣接する領域をも含むものと解するのが自然である。
ゆえに、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」と、本件発明1の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」とは、「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」という限りにおいて一致するものである。
そして、甲5発明の「ボトル内への所望のノズル進入量に達するまで、ボトルBはエミッタノズル220の周りに上昇し、次いで、ボトルBがノズル220を通過するように降下」することは、「エミッタノズル220」が、「ボトルB」と該「エミッタノズル220」との間の前記「ボトルB」の長手方向に相対移動によって、前記「ボトルB」の内部へ導入されることを意味することが明らかである。
ゆえに、本件発明1と甲5発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

《一致点》
A)容器が搬送装置によって所定の搬送経路に沿って運ばれる工程と、
B)照射装置が前記容器と該照射装置との間の前記容器の長手方向の相対移動によって殺菌すべき前記容器の内部へと導入される工程と、
C)電荷担体の照射によって前記容器の内壁を殺菌すべく電荷担体を照射する工程と、を含む容器の殺菌方法であって、
D’)前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する領域も殺菌され、
E’)前記開口領域および前記開口領域に隣接する領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されない、容器の殺菌方法。

《相違点5-0》
「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」が、本件発明1では「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」であるのに対し、甲5発明では「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域である点。

c.相違点の判断
上記第3.3.(2)ア.(イ)b.でも示したとおり、本件発明1の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「キャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものである。
一方、甲5には、前記「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域と、ボトルBの蓋、キャップ、ないしカバー等やねじ領域、キャリングとの関係が記載されておらず、前記「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域が、蓋、キャップ、ないしカバー等と接触する領域や、容器のねじ領域や容器に随意により配置されるキャリングまで延びる領域を含む領域であるとはいえないことを踏まえると、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲5発明であるとはいえず、理由1-2によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
しかし、蓋、キャップ、ないしカバー等の容器の開口を塞ぐ手段は、通常備えられ、容器のねじ領域やキャリングは必要に応じて備えられるものであることが技術常識であり、また、容器の、蓋と接触する領域、ねじ領域及びキャリングまで延びる領域といった領域は、例えば、飲料容器の場合には、飲用者の口と直接触れる可能性のある領域であり、予め殺菌されておくべき領域であることは、例示を待つまでもなく当業者に周知の事項である。
そして、ボトルの外面のどこまでを照射対象とするかは、当該ボトルの用途やその製造コスト等を勘案し、当業者が適宜決定し得た設計的な事項にすぎないから、甲5発明の「ボトルB」に、蓋、キャップ、ないしカバー等やねじ領域、キャリングを設ける際には、蓋と接触する領域、ねじ領域及びキャリングまで延びる領域をも殺菌すること、すなわち、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明1における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
さらに、特許権者が、平成30年5月23日付け意見書で主張する、「滅菌に必要な資源(エネルギー)を低減させることができるとともに、非常に速やかな殺菌工程とすることができる」という本件発明1の作用効果(同意見書12頁16?24行を参照)は、「d5)ボトルの外側の上部表面が電子プルーム280によって殺菌され、e5)ボトルの外面はボトルの上部だけを殺菌し」ということをその構成の一部とする甲5発明においても奏されるものであり、格別なものとはいえない。
ゆえに、本件発明1は、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、本件発明1に係る特許は、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(ウ)本件発明2について
本件発明2の「外側に位置する開口領域」は、上記第2.で示したとおり本件訂正請求が認められたことにより、「外側に位置する、開口部を有する開口領域」であることが明確となったことを踏まえると、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域は、本件発明2の「外側に位置する開口領域」を包含することが明らかであるから、甲5発明の構成f5)は、本件発明2の構成Fに相当する。
ゆえに、本件発明2と甲1発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明2は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明2における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明2に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(エ)本件発明3について
甲5発明の構成g5)は、本件発明3の構成Gに相当する。
ゆえに、本件発明3と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明3は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明3における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明3に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(オ)本件発明4について
本件発明4と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》及び以下の《相違点5-1》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点5-1》
本件発明4は、開口領域の殺菌の際に、照射装置の下端が、0.5cm?10cmの間、好ましくは1cm?6cmの間、特に好ましくは3cm?5cmの間の距離に位置するのに対し、甲5発明は、照射装置(エミッタノズル220)の下端の位置が不明である点。
相違点について検討する。
《相違点5-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点5-1》に関し、甲5発明において、「エミッタノズル220」と「上部表面」との距離は、電子ビームの照射出力や必要とされる殺菌能力等を踏まえ、当業者が適宜設定すべき設計的事項である。
また、本件発明4が上記の距離とした理由について、本件特許明細書には段落【0017】に定性的かつ当業者であれば通常想定し得る事項しか記載されていないことを踏まえると、本件発明4が奏する作用効果は、甲5発明が奏する作用効果から、当業者が予測し得る程度のものであり、格別なものとはいえない。
ゆえに、本件発明4は、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明4に係る特許は、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(カ)本件発明5について
甲5発明の構成i5)における「無菌領域720」は、本件発明5の「クリーンルーム」に相当することを踏まえると、甲5発明の構成i5)は、本件発明5の構成Iに相当する。
ゆえに、本件発明5と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明5は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明5における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明5に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(キ)本件発明6について
甲5発明の構成j5)における「直接的に規定される無菌領域720のディスチャージカルーセル715」は、「殺菌カルーセル705後」に配置されており、「殺菌カルーセル705」での「電子ビームの照射」は、「ボトルB」が「ディスチャージカルーセル715」に受け渡されるまで行われていると解されることを踏まえると、甲5発明の構成j5)は、本件発明6の構成Jに相当する。
ゆえに、本件発明6と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明6は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明6における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明6に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(ク)本件発明7について
本件発明7の構成Kについての本件特許明細書の「【0020】さらなる好都合な方法の場合には、容器に、気体媒体の導かれた流れが作用させられる。・・・このやり方で、無菌室の境界を、たとえ物理的な分離が存在しなくても容器の前記開口領域の下方に維持または定義することができる。・・・」及び「【0029】・・・さらなる好都合な実施形態の場合には、装置が、容器に気体媒体の流れを作用させるための加圧装置をさらに有する。」との記載を踏まえると、甲5発明の構成k5)は、本件発明7の構成Kに相当する。
ゆえに、本件発明7と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明7は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明7における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明7に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(ケ)本件発明8について
甲5発明の構成l5)では「エミッタノズル220からの電子ビームの照射が、ボトルBの底部に近い位置から首部および開口にかけてなされて」いることは、「電子ビームの照射」が、「エミッタノズル220」が「ボトルB」の「底部に近い位置から首部および開口に」向けて移動する時間行われていることを意味すると解されることを踏まえると、甲5発明の構成l5)は、本件発明8の構成Lに相当する。
ゆえに、本件発明8と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明8は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明8における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明8に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(コ)本件発明9について
甲5発明の構成m5)は、本件発明9の構成Mに相当する。
ゆえに、本件発明9と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明9は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明9における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明9に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(サ)本件発明10について
甲5発明の構成n5)は、本件発明10の構成Nに相当する。
ゆえに、本件発明10と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明10は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明10における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明10に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(シ)本件発明11について
甲5発明の構成o5)は、本件発明11の構成Oに相当する。
ゆえに、本件発明11と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明11は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明11における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明11に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(ス)本件発明12について
本件発明12と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》及び以下の《相違点5-2》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点5-2》
本件発明12では、照射装置は容器に対して斜めに配置され、前記容器は側方から照射されるのに対し、甲5発明は、そのような構成を有していない点。
相違点について検討する。
《相違点5-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点5-2》に関し、甲3の段落[0015]及び図1には、電子線照射装置の電子線照射窓1が、ボトル3の軸線Cに直交する面に対して角度Aで傾斜して設けられ、これにより、電子線照射窓1から照射された電子線2は、ボトル3の軸線Cに対して角度Aで照射されることが記載されており(申立書の31頁28行ないし32頁14行も併せて参照されたい。)、この記載に基づき、甲5発明において、「エミッタノズル220」を「ボトル(B)」に対して斜めに配置し、「ボトル(B)」が側方から照射されるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件特明12は、甲5発明及び甲3記載事項に基づき、当業者が容易に発明し得たものである。
したがって、本件発明12に係る特許は、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(セ)本件発明13について
線量率とは、単位時間当たりに物質に吸収または照射される放射線の量である(デジタル大辞泉)ことを踏まえると、甲5発明の構成q5)は、本件発明13の構成Qに実質的に相当する。
ゆえに、本件発明13と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明13は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明13における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明13に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(ソ)本件発明14について
甲5発明の構成r5)は、「ボトルBの三次元的な形状による不均一な線量分布があること」(上記第2.3.(2)イ.(ア)g.を参照。)を踏まえ「ボトルBの開口部及び首部、底部といった場所の違いに応じて、ボトルB内でエミッタノズル220を相対的に異なる速度で移動させ」るものと解されることを踏まえると、甲5発明の構成r5)は、本件発明14の構成Rに相当する。
ゆえに、本件発明14と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明14は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明14における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明14に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(タ)本件発明15について
甲5発明の構成s5)は、本件発明15の構成Sに相当する。
ゆえに、本件発明15と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明15は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明15における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明15に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

なお、特許権者は、平成29年8月10日付け意見書で、甲5の[0148]及び[0149]には「エミッタは、回転式カルーセルのステーションにおいて、ターゲットの上方に常に配置されている」こと、すなわち、エミッタは容器の底部に配置されることがないことが開示されており、甲5に開示の装置では、容器の底部からはじまる電荷担体の放射を実施することは不可能である旨を主張する。
しかし、上記[0148]には「1. For hollow targets with low enough aspect ratios, electron beam emitters are positioned above the container and direct energy through the mouth thereof.(当審訳:1.十分に低いアスペクト比を有する中空ターゲットの場合、電子ビームエミッタは容器の上に配置され、その口からエネルギーを直接送る。)」と記載され、上記[0149]には、「2. For hollow targets with high aspect ratios or with a shape that prevents a beam fixed above the target from reaching all surfaces (e.g. for a bottle),(2.高アスペクト比の中空ターゲット、または、ターゲットの上に固定されたビームが全ての表面に到達しないような形状の物(例えば、ボトル)の場合、)・・・The emitter is invariably positioned above the target,(エミッタはターゲットの上方に常に配置され、)・・・When it is time to irradiate the target, the gripper is raised up so that the target volume surrounds the nozzle.(ターゲットを照射する時間になると、グリッパが上昇し、ターゲット容積がノズルを取り囲む。)」と記載されているにすぎず、特に、[0149]にはターゲットの上方に常に配置されたノズルに対して、ターゲット(例えば、ボトル)が、グリッパの上昇し、その結果、ターゲット容積がノズルを取り囲むこと、すなわち、エミッタのノズルが、相対的に見て、容器の底部に配置されることが記載されているから、上記主張は、その前提が誤っており、採用できない。

(チ)本件発明16について
甲5発明の構成t5)の「電子プルーム280」は、本件発明16の「電子雲」に相当することを踏まえると、甲5発明の構成t5)は、本件発明16の構成Tに相当する。
ゆえに、本件発明16と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明16は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明16における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明16に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(ツ)本件発明17について
本件発明17と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》及び以下の《相違点5-3》でのみ相違し、その余の点では一致している。
《相違点5-3》
本件発明17では、電荷担体は、加速装置によって加速された電子であるのに対し、甲5発明は、加速装置によって加速された電子であるかが不明である点。
相違点について検討する。
《相違点5-0》の判断は、上記上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したとおりである。
《相違点5-2》に関し、甲2の段落【0072】、【0095】及び【0097】には、容器を殺菌するための電子ビームの電子が、加速デバイス6を介して加速されることが記載されており(申立書の30頁10行ないし31頁27行も併せて参照されたい。)、この記載に基づき、甲5発明において、加速装置によって加速された電子とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ゆえに、本件発明17は、甲5発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明17に係る特許は、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(テ)本件発明18について
甲5発明の構成v5)の「プリフォーム」は、本件発明18の「プラスチックの予備成形物」に相当することを踏まえると、甲5発明の構成v5)は、本件発明18の構成Vに相当する。
ゆえに、本件発明18と甲5発明とは、上記第3.3.(2)イ.(イ)b.で示した《相違点5-0》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示したように、上記《相違点5-0》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明18は甲5発明であるとはいえないが、甲5発明の「ボトルの外面はボトルの上部だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明18における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明18に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(ト)本件発明19について
a.甲5発明A
上記第2.3.(1)イ.(ア)b.に示した甲5記載事項に関し、ボトル内の殺菌の間は、ボトルの開口が上方を向いていることは明らかである。
また、上記第2.3.(1)イ.(ア)d.及びe.に示した甲5記載事項に関し、ボトルの上部表面の殺菌の間も、ボトルの開口は上方を向いていることが明らかである。
以上を踏まえると、甲5には、上記甲5発明に加え、以下に示す甲5発明Aが記載されているといえる。
《甲5発明A》
w5)ボトルBは、インフィードトランスファホイール105から殺菌カルーセル110のグリッパ115に移され、
x5)殺菌カルーセル110が回転すると、ボトル内への所望のノズル進入量に達するまで、ボトルBはエミッタノズル220の周りに上昇し、次いで、ボトルBがノズル220を通過するように降下し、
y5)殺菌カルーセル110が回転し、ボトルBはエミッタノズル220の周りに上昇し、次いで、ボトルBがノズル220を通過するように降下する間に、ボトルの内部と上部表面が殺菌され、
z5)ボトルの内部と上部表面が殺菌されている間、ボトルは上方を向いている、
殺菌方法。

b.対比
甲5発明Aの「ボトルB」、「インフィードトランスファホイール105」及び「殺菌カルーセル110」、「エミッタノズル220」、「ボトルの内部」は、各々、本件特許発明19の「容器」、「搬送装置」、「照射装置」、「容器の内壁」に相当する。
ここで、本件発明19の「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、上記第3.3.(1)ア.で示したことと同様に、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「容器に随意により配置されるキャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものである。
一方、甲5発明Aの「上部表面」なる語句が規定する領域は、ボトルBの「開口」が設けられた領域のみならず当該「開口」が設けられた領域に隣接する領域をも含むものと解するのが自然である。
ゆえに、甲5発明Aの「上部表面」なる語句が規定する領域と、本件発明19の「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」とは、「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」という限りにおいて一致するものである。
そして、甲5発明Aの「ボトル内への所望のノズル進入量に達するまで、ボトルBはエミッタノズル220の周りに上昇し、次いで、ボトルBがノズル220を通過するように降下」することは、「エミッタノズル220」が、「ボトルB」と該「エミッタノズル220」との間の前記「ボトルB」の長手方向に相対移動によって、前記「ボトルB」の内部へ導入されることを意味することが明らかである。
ゆえに、本件発明1と甲5発明Aとの一致点、相違点は以下のとおりである。

W)搬送装置により、所定の搬送経路に沿って、その端部に開口部を有する容器を搬送し、
X)前記容器の内部に照射装置を挿入し、
Y’)前記容器内部の前記容器の底部から始まる電荷担体の放射を始め、前記電荷担体の前記放射によって前記容器の内壁の全体を殺菌するために、前記開口部の方向に、前記容器の内壁に対し相対的に前記照射装置を移動し、前記照射装置を前記開口部の外へ移動させている間に、前記照射装置が前記容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する領域を殺菌することで、前記容器を殺菌し、前記開口領域および前記開口領域に隣接する領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されず、
Z)前記容器が上下方向に立設されており、かつ、前記容器および前記開口領域の両方の前記殺菌の間、前記容器の前記開口端が上方を向いている容器の殺菌方法。

《相違点5-0’》
「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」が、本件発明1では「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」であるのに対し、甲5発明Aでは「上部表面」なる語句が規定する領域である点。

c.相違点の判断
上記第3.3.(2)イ.(ト)b.で示したように、本件発明19の「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「キャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものであるが、甲5には、前記「上部表面」なる語句が規定する領域と、ボトルBの蓋、キャップ、ないしカバー等やねじ領域、キャリングとの関係が記載されておらず、甲5発明Aの「上部表面」なる語句が規定する領域が、蓋、キャップ、ないしカバー等と接触する領域や、容器のねじ領域や容器に随意により配置されるキャリングまで延びる領域を含む領域であるとはいえないことを踏まえると、上記《相違点5-0’》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるから、本件発明19は甲5発明Aであるとはいえず、理由1-2によっては、本件発明19に係る特許を取り消すことはできない。
しかし、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示した理由と同様の理由により、甲5発明Aの「上部表面」が規定する領域を、本件発明19における「容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
ゆえに、本件発明19は、甲5発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、本件発明19に係る特許は、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(ナ)本件発明20について
a.甲5発明B
上記第2.3.(1)イ.(ア)b.に示した甲5記載事項に関し、ボトル内の殺菌の間は、ボトルの開口が上方を向いていることは明らかである。
また、上記第2.3.(1)イ.(ア)d.及びe.に示した甲5記載事項に関し、ボトルの上部表面の殺菌の間も、ボトルの開口は上方を向いていることが明らかである。
以上を踏まえると、甲5には、上記甲5発明及び甲5発明Aに加え、以下に示す甲5発明Bが記載されているといえる。
《甲5発明B》
a51)ボトルBが、インフィードトランスファホイール105から殺菌カルーセル110のグリッパ115に移され、
b51)ボトルBのフィニッシュに合致するように充分に細く、ボトル内部まで延びるように十分な長さを有するエミッタノズル220を備えた電子ビームエミッタ130と、
c51)殺菌カルーセル110が回転すると、ボトル内への所望のノズル進入量に達するまで、ボトルBはノズル220の周りに上昇し、十分な線量が、ボトルの内面に達することを可能とし、
d51)電子ビームエミッタ130を制御するコントローラ240を備え、コントローラ240は、ノズル窓210から照射される電子ビームエネルギープルームによって、ボトルの内周面と、ボトルの外側は上部表面だけを殺菌し、
e51)殺菌カルーセル110において、ノズル220がボトルBと一緒に移動し、
f51)ボトルBに空気の流れを作用させる内部ゲージ圧を供給する手段がある、
電子ビーム殺菌装置。

b.対比
甲5発明Bの「ボトルB」、「インフィードトランスファホイール105」及び「殺菌カルーセル110」、「電子ビームエミッタ130」、「電子」、「ボトルの内周面」、「電子ビーム殺菌装置」は、各々、本件発明20の「容器」、「搬送装置」、「照射装置」、「電荷担体」、「内壁」、「容器の殺菌装置」に相当する。
ここで、本件発明20の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、上記第3.3.(1)ア.で示したことと同様に、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「容器に随意により配置されるキャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものである。
一方、甲5発明Bの「d51)電子ビームエミッタ130を制御するコントローラ240を備え、コントローラ240は、ノズル窓210から照射される電子ビームエネルギープルームによって、ボトルの内周面と、ボトルの外側は上部表面だけを殺菌し」なる事項について、「ボトルの外側は上部表面だけ」なる語句が規定する領域は、ボトルBの「開口」が設けられた領域のみならず当該「開口」が設けられた領域に隣接する領域をも含むものと解するのが自然である。
ゆえに、甲5発明Bの「ボトルの外側は上部表面だけ」と、本件発明1の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」とは、「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」という限りにおいて一致するものである。
そして、甲5発明Bの「ボトル内への所望のノズル進入量に達するまで、ボトルBはエミッタノズル220の周りに上昇」することは、「エミッタノズル220」が、「ボトルB」と該「エミッタノズル220」との間の前記「ボトルB」の長手方向に相対移動によって、前記「ボトルB」の内部へ導入されることを意味することが明らかである。
ゆえに、本件発明20と甲5発明Bとの一致点、相違点は以下のとおりである。

《一致点》
A1)容器を所定の搬送経路に沿って運ぶ搬送装置と、
B1)電荷担体を照射する照射装置と、
を備え、
C1)前記照射装置を、前記容器と該照射装置との間の容器の長手方向の相対移動によって容器の内部へと導入し、前記容器の内壁を殺菌することができる容器の殺菌装置であって、
D1’)前記照射装置を制御する制御装置をさらに備え、該制御装置は、前記照射装置による照射によって前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域も殺菌し、前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌しない、容器の殺菌装置。

《相違点5-0”》
「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する領域」が、本件発明20では「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」であるのに対し、甲5発明Bでは「ボトルの外側は上部表面だけ」なる語句が規定する領域である点。

c.相違点の判断
上記第3.3.(2)イ.(ナ)b.で示したように、本件発明20の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」は、「後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域」であって、「容器のねじ領域」を含み、「キャリアリングまで延びることが好ましい」とされる領域を規定するものであるが、甲5には、前記「ボトルの外側は上部表面だけ」なる語句が規定する領域と、ボトルBの蓋、キャップ、ないしカバー等やねじ領域、キャリングとの関係が記載されておらず、、甲5発明Bの「ボトルの外側は上部表面だけ」なる語句が規定する領域が、蓋、キャップ、ないしカバー等と接触する領域や、容器のねじ領域や容器に随意により配置されるキャリングまで延びる領域を含む領域であるとはいえないことを踏まえると、上記《相違点5-0”》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるから、本件発明20は甲5発明Bであるとはいえず、理由1-2によっては、本件発明20に係る特許を取り消すことはできない。
しかし、上記第3.3.(2)イ.(イ)c.で示した理由と同様の理由により、甲5発明Bの「ボトルの外側は上部表面だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明20における「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
ゆえに、本件発明20は、甲5発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、本件発明20に係る特許は、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(ニ)本件特許発明21について
甲5発明Bの構成e51)は、本件特許発明21の構成E1に相当する。
ゆえに、本件発明21と甲5発明Bとは、上記第3.3.(2)イ.(ナ)b.で示した《相違点5-0”》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(ナ)c.で示したように、上記《相違点5-0”》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明21は甲5発明Bであるとはいえないが、甲5発明Bの「ボトルの外側は上部表面だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明21の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明21に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(ヌ)本件特許発明22について
甲5発明Bの構成f51)は、本件特許発明22の構成F1に相当する。
ゆえに、本件発明22と甲5発明Bとは、上記第3.3.(2)イ.(ナ)b.で示した《相違点5-0”》でのみ相違し、その余の点では一致している。
そして、上記第3.3.(2)イ.(ナ)c.で示したように、上記《相違点5-0”》は、単なる表現の相違等とはいえない、実質的な相違点であるため、本件発明22は甲5発明Bであるとはいえないが、甲5発明Bの「ボトルの外側は上部表面だけ」なる語句が規定する領域を、本件発明22の「開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域」と一致させることは、当業者であれば容易に想到し得たことというべきである。
したがって、本件発明22に係る特許は、理由1-2によっては、取り消すことはできないが、理由2-2によって取り消されるべきものである。

(3)小括
以上のとおり、理由3について、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえないから、同法第113条第4号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。
また、理由1(理由1-1及び理由1-2)について、本件発明1ないし3、5ないし11、13ないし16、18ないし22は、同法第29条第1項第3号に該当するものではないから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。
しかしながら、理由2(理由2-1及び理由2-2)について、本件発明1ないし22に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきである。

4.むすび
以上のとおりであるから、上記取消理由2によって、本件発明1ないし22に係る特許は取り消されるべきものである。
したがって、結論のとおり決定する。
 
別掲
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
容器の殺菌方法および殺菌装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の殺菌方法および殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料製造産業の分野において、容器(例えば、プラスチック材料製の容器)を、中身を入れる前に殺菌することが知られている。この場合、この殺菌を、幅広くさまざまなやり方で実行することができる。このやり方で、例えば容器を、例えばH_(2)O_(2)(過酸化水素)または過酢酸などの殺菌剤で殺菌することが可能である。しかしながら、これらの媒体の取り扱いは、これらの媒体が人間に有害な影響も有する可能性があるため、問題がないわけではない。加えて、これらの媒体を使用する場合には、事後に容器をすすぐことが必要である。
【0003】
近年では、容器を電荷担体の照射(特に、電子線照射)によって殺菌する方法も、知られるようになってきている。このやり方で、特許文献1は、包装材料の殺菌のための方法および装置を提示している。この場合、包装材料の内面を電子線照射によって処理するための処理ヘッドが、包装材料の開口部を通ってそれぞれの包装材料に配置される。
【0004】
本出願の出願人による特許文献2は、容器の殺菌のための装置を提示している。この装置は、電荷担体を発することができる出口窓を備える処理ヘッドを有している。特許文献2に開示の内容は、その全体がここでの言及によって本明細書に援用される。
【0005】
電荷担体によって容器を殺菌するための装置は、特許文献3からも知られており、特に電子の出口窓の冷却装置がさらに説明されている。さらに、特許文献3に開示の内容も、ここでの言及によって本明細書に援用される。
【0006】
しかしながら、プラスチック材料製の容器の内壁の殺菌は、全体にわたる殺菌において必ずしも充分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008007428号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1982921号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102008025868号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、プラスチック材料製の容器の殺菌を、さらなる殺菌処理または先行の殺菌処理を必要とすることなく液体(特に、飲料)で満たすことができるようなやり方で可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、本発明によれば、独立請求項の主題によって達成される。好都合な実施形態およびさらなる発展が、従属請求項の主題である。
【0010】
本発明にかかる容器の殺菌方法においては、容器が搬送装置によって所定の搬送経路に沿って運ばれる。さらに、照射装置が、容器の長手方向の容器と照射装置との間の相対移動によって、殺菌すべき容器へと導入され、電荷担体の照射によって容器の内壁を殺菌すべく電荷担体の照射を放射する。
【0011】
本発明によれば、容器の外側に位置する開口領域も殺菌される。
【0012】
この場合、外側に位置する領域とは、特に、内面が殺菌される容器の開口領域であると理解される。さらに、開口領域は、開口部を含む領域であり、容器の頭部領域に隣接していると理解される。このやり方で、特に容器のねじ領域も、外側において殺菌される。したがって、後の充てんの手順において注ぎ込まれる液体と接触し、あるいは容器の蓋と接触する容器の領域が、殺菌されることが好都合である。また、プラスチック材料製の予備成形物の頭部領域および開口領域が、容器に随意により配置されるキャリアリングまで延びることが好ましい。
【0013】
容器は、好ましくはプラスチック材料製の容器であり、用語「容器」は、例えば瓶などの仕上がった容器、および特にプラスチック材料製の容器を形成すべく成形することができる例えばプラスチック材料製の予備成形物の両方であると理解される。
【0014】
外側に位置する開口領域が、照射装置によって殺菌されることが好都合である。外側に位置する開口領域のこの殺菌を、容器の内面の殺菌の直前または直後に実行することが特に好ましい。容器がプラスチック材料製の容器であることが好都合である。
【0015】
さらなる好都合な方法の場合には、開口領域の殺菌が、照射装置を完全に容器の外部に位置させつつ実行される。
【0016】
特に好ましい方法の場合には、照射装置が、特に開口部を通って容器の内部へと導入される棒状の本体を有している。この場合、電子を棒状の本体から出すことができる出口窓を、この棒状の本体の端部に配置することができる。
【0017】
さらなる好都合な方法の場合には、開口領域の殺菌の際に、照射装置の下端または上述の端部が、0.5cm?10cmの間、好ましくは1cm?6cmの間、特に好ましい様相では3cm?5cmの間の開口領域からの距離に位置する。これらの特定の寸法のおかげで、照射装置から発せられる特に電子などの電荷担体が、開口領域および開口領域に隣接する容器の頭部領域を殺菌するための充分な範囲を依然として有することができる。
【0018】
本発明にかかる容器の殺菌方法において、開口領域および頭部領域よりも下方に位置する容器の外壁の領域が、電荷担体の照射による照射によっては殺菌されない。これらの領域においては、これらの領域が充てんされる飲料に触れる可能性がないため、殺菌を省略することが可能である。
【0019】
さらなる好都合な方法の場合には、容器が、クリーンルームを通って運ばれ、あるいはクリーンルームへと運ばれる。このやり方で、この種のクリーンルームを照射装置に直接隣接させることが可能であるが、照射をクリーンルームの内部で実行することも可能であると考えられ、このクリーンルームが殺菌処理の後も続くことが可能であると考えられる。さらなる好都合な方法の場合には、照射装置が、容器の開口領域を、少なくとも容器が無菌室に進入するまで照射する。この場合、この無菌室の境界を、上述の容器の開口領域の反対側(例えば、下方)に、すなわち容器の底部の方向に、定めることができると好都合である。この場合、容器が、無菌室の境界を越える往復運動を実行することができる。
【0020】
さらなる好都合な方法の場合には、容器に、気体媒体の導かれた流れが作用させられる。このやり方で、例えば、特に容器の長手方向に流れる無菌の空気を、容器に作用させることができる。このやり方で、無菌室の境界を、たとえ物理的な分離が存在しなくても容器の前記開口領域の下方に維持または定義することができる。無菌の空気を流す空気フィルタを設けることが好都合である。好ましくは、気体媒体の流れが、容器の首部から容器の底部へと進む成分を有する。
【0021】
さらなる好都合な方法の場合には、照射が、少なくとも照射装置が容器の底部から取り去られる時間のあいだ行われる。換言すると、照射が、好都合には照射装置を容器から引き出す際に行われる。この場合、照射を、照射装置が再び容器から引き出されるや否や、開始させることができる。しかしながら、照射を、照射装置の浸漬の最中および照射装置の引き出しの最中の両方において行うことも可能であると考えられる。
【0022】
さらには、照射を、照射装置の引き出しの手順の全体において行うことが可能であり、すなわち特に照射装置の端部がすでに再び容器の外部に位置していても行うことが可能である。
【0023】
さらに本発明は、容器の殺菌装置に関し、そのような装置が、容器を所定の搬送経路に沿って運ぶ搬送装置と、電荷担体の照射(特に、電子の照射)を放射する照射装置とを有しており、この場合に、この照射装置を、容器の内壁を殺菌するために、容器の長手方向の容器と照射装置との間の相対移動によって容器の内部へと導入することができる。
【0024】
本発明によれば、この装置は、照射装置を制御するための制御装置を有しており、この制御装置は、照射装置によって放射される照射によって容器の外側に位置する開口領域も殺菌される効果を有する。
【0025】
容器の処理のためのさらなる装置を、容器の搬送方向において容器の殺菌のための装置の下流に配置することが好ましい。このさらなる装置は、例えば、特に飲料などの液体で容器を満たす充てん装置であってよい。さらには、しかしながら、さらなる装置が、例えばプラスチック材料製の予備成形物をプラスチック材料製の容器へと成形する成形装置や、プラスチック材料製の予備成形物を加熱する加熱装置など、プラスチック材料製の予備成形物を処理する装置であってもよい。
【0026】
したがって、指定の照射を照射装置が少なくとも部分的に容器の外部に位置し、好ましくは完全に容器の外部に位置するときに作動させるべきでもあることが、装置に関しても提案される。
【0027】
照射装置が、電荷担体または電子を照射装置から発することができる出口窓を、照射装置の端面に有することが好都合である。
【0028】
この照射装置が、少なくとも局所的に容器の搬送経路に沿って容器と一緒に移動することが好都合である。このやり方で、例えば複数の照射装置が配置され、さらに容器を搬送するための複数の搬送装置も配置されたキャリア装置を提供することが可能である。したがって、この容器の搬送の際に、この場合には例えば棒状の本体を有する照射装置を、容器を殺菌するために容器の内部へと導入することができる。
【0029】
さらなる好都合な実施形態の場合には、装置が、電子を照射装置の前記出口窓の方向に加速させる加速装置(好ましくは、複数の加速装置)を有する。さらなる好都合な実施形態の場合には、装置が、容器に気体媒体の流れを作用させるための加圧装置をさらに有する。
【0030】
容器を、殺菌の際に局所的に円形である少なくとも1つの搬送経路に沿って案内することが好都合である。
【0031】
さらなる好都合な実施形態の場合には、装置が、容器が案内されて通過する無菌室を有する。この場合、この殺菌室を、容器の搬送経路の周囲にチャネルの形態として設計することが可能である。特に、上述の無菌室を、容器の搬送経路の周囲のリングの形態に設計することが可能であると考えられる。このやり方で、上述の無菌室の容積を比較的小さく保つことができ、このやり方で無菌の状態を安価なやり方で維持することができる。
【0032】
さらなる利点および実施形態が、添付の図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 殺菌の手順の図式的な図である。
【図2】 殺菌の手順のさらなる図式的な図である。
【図3】 殺菌の手順のさらなる図式的な図である。
【図4】 空気によるさらなる加圧を含む殺菌手順の図である。
【図5】 容器の搬送を伴う殺菌手順の図式的な図である。
【図6】 容器の殺菌装置の考えられるさらなる実施形態を示している。
【図7】 殺菌シーケンスの図式的な図である。
【図8a】 図7に示した殺菌シーケンスの詳細図である。
【図8b】 図7に示した殺菌シーケンスの詳細図である。
【図8c】 図7に示した殺菌シーケンスの詳細図である。
【図8d】 図7に示した殺菌シーケンスの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1?図3は、殺菌プロセスを説明する3つの図を図式的に示している。この場合、ここでは開口部10dを通って容器10の内部へと導入することができる棒状の本体の形態に設計された殺菌装置2(図式的にのみ示されている)が設けられている。図1に示されている状況においては、照射装置が、ほぼ容器の底部10eまで導入されており、このやり方で、上述の底部領域10eにも電子雲12を作用させることができる。この処理の結果として、参照符号10aで示されているプラスチック材料製の容器の内壁の全体が殺菌される。この場合には、電子4が、加速装置(図示されていない)によって加速させられる。参照符号10bは、開口部10dを含む開口領域を指しているが、開口領域10bは、容器の長手方向Lに開口部10dよりもさらに(下方へと)延びている。
【0035】
図2は、下端部22が出口窓24を容器10の中ほどの領域に位置させるように配置されている第2の状況を示している。この場合、内壁の中ほどの領域が殺菌される。
【0036】
この場合、容器10に対する照射装置2の移動を、一定の速度で生じさせることができるが、速度を例えば容器の外形に依存するようにし、例えばより大きな断面の領域においては、よりゆっくりとした相対移動とし、より小さな断面の領域においては、より速やかな移動とし、このやり方で容器の内壁10aに常に一定の線量を加えることが可能であると考えられる。
【0037】
この場合、すべての構成において、容器10と照射装置2との間の相対移動は、容器10の長手方向Lに生じる。
【0038】
図3は、容器10に対する照射装置2のさらなる位置を示している。この場合、照射装置2または出口窓24が、容器10から完全に引き出されている。電子雲12が、内側および外側の両方から容器の開口部10dに作用し、この開口部の殺菌をもたらしている。しかしながら、さらには、開口領域にも電子が作用し、この場合には容器の上部領域10fにも電子が作用している。
【0039】
図4は、図3に示した状況を示しており、この場合には、案内された気流30が容器へとさらに向けられている。より正確には、無菌の空気による加圧が、やはり容器の長手方向Lに生じ、このやり方で無菌室の境界の移動を防止している。参照符号Uは無菌ではない領域を指しており、参照符号Sは無菌の領域を指している。参照符号32は、無菌室の境界を指しており、この場合には、無菌室の境界を材料の境界によって形成する必要はない。しかしながら、ここで気流を、プラスチック材料製の容器へと、容器の長手方向に対して斜めに衝突させることも、同様に可能であると考えられる。しかしながら、この気流30が、特に容器の開口部から容器の底部へと長手方向Lに延びる成分も有することが好ましい。
【0040】
図5は、本発明に係る装置1の大まかな概略図である。この場合には、装置1は、容器10を保持するための複数の搬送要素(図示せず)が配置された搬送ホイール16を備えている。したがって、この搬送ホイールは、容器を搬送するための搬送装置6の一部である。さらに、上述したようなやり方でプラスチック材料製の容器の開口部へと導入することができる複数の照射装置2が、この搬送ホイール16に配置されている。参照符号Pは容器の搬送経路を指しており、参照符号aは殺菌のための処理角度を指している。最初に、殺菌されていない容器10が、送り込みホイール14によって搬送ホイール16へともたらされる。搬送ホイール16による搬送の最中に、プラスチック材料製の容器は、最初に内壁について殺菌される。容器が送り出され、あるいは送り出しホイール18へと移されるとき、容器は開口領域についても殺菌され、したがって外側についても殺菌される。
【0041】
参照符号34は、容器が依然として殺菌されている間に進入する無菌室を指している。その後に、今や無菌の容器が、ここではチャネルの形態である無菌室34を通って運び出される。無菌室のこの領域において、上述のように、無菌ゾーンを容器の指定の領域の上方(例えば、首部リングの上方)だけに形成し、その下方には形成しないことも可能である。
【0042】
図6は、本発明に係る装置のさらなる実施形態を示している。図5に示した実施形態と対照的に、この場合には、プラスチック材料製の容器の開口領域を殺菌(この場合には、特にやはり電子による処理によって)するさらなる殺菌装置26が設けられている。しかしながら、この場合に、例えば紫外線照射、X線照射、またはガンマ線照射による殺菌など、他の殺菌処理も可能であると考えられる。この殺菌装置26は、この場合には固定様式で配置される。
【0043】
図7は、殺菌処理を示すためのさらなる図である。この場合、複数の照射装置2が設けられ、この場合には容器10と一緒に搬送経路Pに沿って運ばれる。この搬送経路Pは、すでに上述したように、円形および直線の両方であってよく、あるいは他の移動方向に進むようにすることができる。この場合に、個々の照射装置2が固定であるように設計され、すなわち容器の長手方向に移動することがないことが、明らかである。むしろ、ここでは容器が持ち上げられることで、照射装置2が容器の内部へと進入し、殺菌を行うことができる。
【0044】
この場合には、破線Tが、無菌領域と無菌ではない領域との間の分離の線を指している。25kGyを上回る線量を、無菌領域において加えることができ、したがって線量は、無菌でない領域においては25kGyを下回る。この場合、殺菌プロセスを、いくつかの部分I-IVに分割することができる。部分Iにおいては、容器が長手方向に沿って昇降させられることがなく、この領域においては、容器の開口部に電子雲12が作用し、したがってここで殺菌が施される。領域IIにおいては、容器が持ち上げられ、照射装置2が容器の内部に進入する。このやり方で、容器の底部領域の殺菌が可能であり、容器の中ほどの領域の殺菌も可能である。
【0045】
次いで、部分IIIにおいては、容器が再び下げられ、この場合に、図7に示されるとおり、容器の内面の殺菌がこの部分においても施される。しかしながら、部分IIIのうちの右側の2つの状態においては、容器がすでに再びほとんど下げられた状態で、容器の外側の開口領域の照射も施される。容器の持ち上げが、その後に容器が再び下げられるときよりも迅速に行われていることが明らかである。したがって、照射装置2の容器への導入を、その後に再び容器から取り出すときよりも素早く行うことが好ましい。
【0046】
部分IVにおいては、容器が再び下方位置において搬送され、開口領域について照射される。この場合、斜めに向けられ、あるいはおおむね他のやり方で配置された照射装置2aを設けることも可能であり、容器が側方から照射される。さらに、プラスチック材料製の容器を、内部の照射の最中に容器の長手軸を中心にして回転させ、このやり方で容器の内面への電子のさらにより一様な分布を達成することも、可能であると考えられる。
【0047】
図8a?図8bは、個々の部分をさらに詳しい図にして示している。この場合、図8aに示されている状況において、容器を例えばスルースホイール(sluice wheel)によって導入することが可能であると考えられ、その場合、既存のガンマ線を遮ることが好ましい。さらに、容器が、この場合には電子照射装置2の上方へと持ち上げられ、最初に内面の殺菌が行われないことが好ましい。内面の殺菌は、図8bの左側に示されている2つの状況において初めて始まる。
【0048】
図8bに示されている状況においては、容器が照射装置2に対して順次下げられ、この最中に最小限の線量も容器の内面へと加えられる。この場合、アーク(電子線の破壊)の発生が問題である。アークが生じると、容器の内側の表面への線量が少なくなりすぎる。そのようなアークの発生が、特にセンサ装置によって確認された場合、容器を後続の殺菌領域へと移動させず、再度の処理を行うか、あるいは取り除くことが可能である。電子線の線量に必要な処理の継続時間を、容器の下降または上昇の速度によって調節することが可能である。許容される線量の境界は、容器を下降させるための調整された移動のプロファイルおよび必要な浸漬深さを必要とする。
【0049】
容器を昇降させるために、例えば機械式のリフト用カムなどの駆動部を使用することができる。さらに、容器を持ち上げるために、リニアモータ、電動モータ、油圧による駆動部、または空気圧による駆動部を、使用することも可能であると考えられる。しかしながら、反対に、容器そのものを上昇または下降させる代わりに(あるいは、容器そのものの上昇または下降に加えて)、個々の照射装置2を上昇または下降させることも可能であると考えられる。
【0050】
図8bから明らかであるとおり、容器の外側の殺菌は行われず、当然ながら容器の外側の領域は無菌ではない。図8cに示されている状況においては、容器が照射装置2の下方に位置している。ここで、少なくとも最小限の線量が、容器またはレセプタクルの外側へと加えられる。
【0051】
照射装置が容器へと浸漬されるとき、殺菌作用が生じることが絶対的に必要というわけではない。この場合、ここで照射をオンまたはオフにすることができる。殺菌の定義によれば、例えば上述のように開口部を通って細菌が持ち込まれるという事実の結果として、放射線の雲12が存在する出口窓よりも上方において、再汚染が再び生じる可能性がある。しかしながら、それにもかかわらず、図8aに示されるように、上方から下方への照射は、追加の安全性の度合いを可能にする。
【0052】
実際の殺菌は、図8bに示されるように、容器内部の容器の底部から、容器の開口部の方向への照射装置の相対移動によって始まる。この場合、上述のように、この容器の壁の相対移動を、例えば壁の厚さまたは壁の直径に合わせて調整することができる。容器内の殺菌の際に無菌の領域と無菌でない領域との間で生じる容器の内部の気体の交換について、これらの領域のすべてが図8bに示されるように放射線の雲12を通って移動しなければならず、したがって殺菌されなければならないという結果をもたらすことが、好都合である。
【0053】
第3のステップにおいて、照射装置は、容器から引き出され、開口部が外側領域において好ましくはキャリアリングまで殺菌されると同時に、特に容器へと落下するすべての粒子が殺菌用の雲12を通過しなければならないようなやり方で開口部の口が照射されるように、開口部の上方に配置され、あるいは開口部の上方へと移動させられる。放射線の雲におけるこの保護の結果として、殺菌を、無菌でない環境で行うことができ、維持することもできる。
【0054】
図8cは、この殺菌状態の維持を示している。この場合にも、微生物の問題が、瓶の内部の殺菌の際の先のアークの場合において防止される。上述のように、この場合にも、アークの発生は首部リングへの線量は過度に少なくなる。容器が無菌領域へと移されず、再び処理されるか、あるいは取り除かれる。
【0055】
さらに、最小限の線量のための処理の継続時間または電子ビームにおける滞留時間を、他の表面の線量過大が防止されるようなやり方で調節することが好ましい。
【0056】
図8dは、容器の殺菌のさらなるステップを示している。ここで、容器は、内側について殺菌され、開口領域についても殺菌されており、それでもなお依然として加えられている放射線の雲12によって再汚染から保護されている。その後に、容器は、容器の開口部の領域だけに広がる無菌室へと移される。開口部の周囲および上方だけに存在する小さな領域だけがこれらの殺菌手段において無菌である形式の首部リング絶縁手段は、従来技術において公知である。上述のように、この場合には、無菌状態を保証するために、好ましくは上方から下方への無菌の空気を導かせることができる。
【0057】
放射線の雲から無菌の気流への移動のために、例えば放射線エミッタ、空気ノズル、UVランプ、またはプラズマなど、さらなる手段を使用することができる。
【0058】
殺菌処理の後で、容器を、出口に位置するスルースホイールまたは移送用星形ホイールへと移すことができる。この場合、回転エミッタのアークを、内部および首部の処理の際に固定のエミッタによって保護することが好ましい。汚染からの無菌ゾーンの保護も、特に好ましくは照射装置によって実行される。
【0059】
容器の外側の最小限の線量を、上述のように、固定のエミッタによって実現することも可能である。
【0060】
しかしながら、アークに関して、固定のエミッタは、特に内側または開口領域の処理の際に回転エミッタにおいてアークがすでに生じている場合に、或る程度問題である。
【0061】
出口において、容器をスルースホイールによって順に取り出すことができ、その場合、ガンマ線の遮蔽もここで順に行われる。
【0062】
容器を搬送するための搬送装置が、容器を例えば底部にて運ぶことができるが、搬送装置が容器を容器の開口部またはキャリアリングにて運ぶことも可能であると考えられる。さらに、容器の側壁による搬送も、可能であると考えられる。
【0063】
後処理の範囲において、容器を無菌の空気ですすぐこともできる。この場合には、例えば、処理の際に生じたオゾンを吹き飛ばすことができる。
【0064】
出願人は、出願書類に開示された特徴のすべてについて、それらが単独または組み合わせにおいて従来技術と比べて新規である限りにおいて、本発明に不可欠であるとして請求する権利を留保する。
【符号の説明】
【0065】
1 装置
2 照射装置、電子照射装置
2a 照射装置
4 電子
6 搬送装置
10 容器
10a 内壁
10b 開口領域
10d 開口部
10e 底部
10f 容器領域
12 電子雲、放射線の雲
14 送り込みホイール
16 搬送ホイール
18 送り出しホイール
22 端部
24 出口窓
26 殺菌装置
30 気流
32 無菌室境界
34 無菌室
L 長手方向
P 搬送経路
U 無菌でない領域
S 無菌領域
I?IV 部分
a 処理角度
T 分離線
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器が搬送装置によって所定の搬送経路に沿って運ばれる工程と、
照射装置が前記容器と該照射装置との間の前記容器の長手方向の相対移動によって殺菌すべき前記容器の内部へと導入される工程と、
電荷担体の照射によって前記容器の内壁を殺菌すべく電荷担体を照射する工程と、
を含む容器の殺菌方法であって、
前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域も殺菌され、
前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されないことを特徴とする容器の殺菌方法。
【請求項2】
前記外側に位置する開口領域は、前記照射装置によって殺菌されることを特徴とする請求項1に記載の容器の殺菌方法。
【請求項3】
前記開口領域の殺菌は、前記照射装置を完全に前記容器の外部に位置させつつ実行されることを特徴とする請求項2に記載の容器の殺菌方法。
【請求項4】
前記開口領域の殺菌の際に、前記照射装置の下端が、0.5cm?10cmの間、好ましくは1cm?6cmの間、特に好まくは3cm?5cmの間の距離に位置することを特徴とする請求項3に記載の容器の殺菌方法。
【請求項5】
前記容器は、クリーンルームを通って運ばれること、またはクリーンルームへと運ばれることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の容器の殺菌方法。
【請求項6】
前記照射装置は、前記容器の前記開口領域を、少なくとも前記容器が無菌室に進入するまで照射することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の容器の殺菌方法。
【請求項7】
前記容器に、気体媒体の導かれた流れが作用させられることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の容器の殺菌方法。
【請求項8】
前記照射は、少なくとも前記照射装置が前記容器の底部から取り去られる時間のあいだ行われることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の容器の殺菌方法。
【請求項9】
前記容器の内壁の全体を殺菌する請求項1に記載の容器の殺菌方法。
【請求項10】
前記殺菌が、前記容器内部の前記容器の底部から、前記容器の前記開口部の方向への前記照射装置の相対移動によって始まる請求項1に記載の容器の殺菌方法。
【請求項11】
前記容器が、前記内壁および前記外側に位置する前記開口領域の両方の殺菌の間、上下方向に立設されている請求項1に記載の容器の殺菌方法。
【請求項12】
さらに第2の照射装置が設けられ、前記第2の照射装置は前記容器に対して斜めに配置され、前記容器は側方から照射される請求項1に記載の容器の殺菌方法。
【請求項13】
電子線照射の線量に必要な処理の継続時間が、前記容器の下降または上昇の速度によって調節され得る請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項14】
前記容器の断面形状の違いに応じて、該容器内で前記照射装置を異なる速度で移動させる請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項15】
前記照射装置が、前記容器の底部まで導入される請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項16】
電子雲が、前記内部および前記外側の両方から前記容器の前記開口部に作用する請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項17】
前記電荷担体は、加速装置によって加速された電子である請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項18】
前記容器がプラスチックの予備成形物である請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項19】
搬送装置により、所定の搬送経路に沿って、その端部に開口部を有する容器を搬送し、
前記容器の内部に照射装置を挿入し、
前記容器内部の前記容器の底部から始まる電荷担体の放射を始め、前記電荷担体の前記放射によって前記容器の内壁の全体を殺菌するために、前記開口部の方向に、前記容器の内壁に対し相対的に前記照射装置を移動し、前記照射装置を前記開口部の外へ移動させている間に、前記照射装置が前記容器の外側に位置する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域を殺菌することで、前記容器を殺菌し、前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌されず、
前記容器が上下方向に立設されており、かつ、前記容器および前記開口領域の両方の前記殺菌の間、前記容器の前記開口端が上方を向いている容器の殺菌方法。
【請求項20】
容器を所定の搬送経路に沿って運ぶ搬送装置と、
電荷担体を照射する照射装置と、
を備え、
前記照射装置を、前記容器と該照射装置との間の容器の長手方向の相対移動によって容器の内部へと導入し、前記容器の内壁を殺菌することができる容器の殺菌装置であって、
前記照射装置を制御する制御装置をさらに備え、該制御装置は、前記照射装置による照射によって前記容器の外側に位置する、開口部を有する開口領域と、該開口領域に隣接する頭部領域も殺菌し、前記開口領域および前記頭部領域よりも下方に位置する前記容器の外壁の領域は、前記電荷担体の照射による照射によっては殺菌しないことを特徴とする容器の殺菌装置。
【請求項21】
前記照射装置は、少なくとも局所的に前記容器と一緒に移動することを特徴とする請求項20に記載の容器の殺菌装置。
【請求項22】
前記容器に気体媒体の流れを作用させる加圧装置を備えることを特徴とする請求項20または21に記載の容器の殺菌装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-24 
出願番号 特願2012-35718(P2012-35718)
審決分類 P 1 651・ 113- ZAA (B65B)
P 1 651・ 121- ZAA (B65B)
P 1 651・ 537- ZAA (B65B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 神山 茂樹  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 渡邊 豊英
蓮井 雅之
登録日 2016-06-10 
登録番号 特許第5948080号(P5948080)
権利者 クロネス アーゲー
発明の名称 容器の殺菌方法および殺菌装置  
代理人 川上 美紀  
代理人 藤田 考晴  
代理人 上田 邦生  
代理人 川上 美紀  
代理人 藤田 考晴  
代理人 上田 邦生  

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