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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G06F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G06F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06F
管理番号 1349691
異議申立番号 異議2018-700476  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-12 
確定日 2019-02-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6245487号発明「情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6245487号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2?7]について訂正することを認める。 特許第6245487号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第6245487号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成28年8月12日(国内優先権主張 平成27年8月12日)を国際出願日としたものであって、平成29年11月24日にその特許権の設定登録がされ、平成29年12月13日に特許公報が発行され、その後、平成30年6月12日にその特許に対して特許異議申立人 丸林敬子 により特許異議の申立てがされたものである。

その後、当審において平成30年8月31日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、その指定期間内である平成30年11月2日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求による訂正を「本件訂正」という。)がなされたものである。
なお、上記訂正の請求がなされたことに伴って、当審から平成30年11月7日付けで通知した通知書に対し、特許異議申立人 丸林敬子 は、その指定期間内に意見書は提出していない。


第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は以下の通りである。

特許請求の範囲の請求項2を、
「ユーザの情報を取得する取得部と、
前記ユーザに機能性素材の情報を提示する提示部と、
複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部とを備え、
前記提示部は、前記取得部が取得したユーザに対して提示する機能性素材に関する情報を、前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された別のユーザが機能性素材を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体又は排泄物に関する検査結果に基づき提示することを特徴とする情報処理装置。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3?7も同様に訂正する。)

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア 訂正の目的の適否

本件訂正は、「複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部」という構成を付加すると共に、訂正前の「前記ユーザとは別のユーザが機能性素材を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体又は排泄物に関する検査結果」を「前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された別のユーザが機能性素材を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体又は排泄物に関する検査結果」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否

上記アで言及した様に、本件訂正は、「複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部」という構成を付加すると共に、訂正前の「前記ユーザとは別のユーザが機能性素材を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体又は排泄物に関する検査結果」を「前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された別のユーザが機能性素材を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体又は排泄物に関する検査結果」と限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項の有無

本件訂正にかかる「複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部」という訂正事項については、明細書の段落【0052】に「 図1のサーバ1は、取得したユーザの情報のうち、少なくとも腸内細菌叢情報が含まれる情報に基づいて、ユーザUを複数のグループのうちいずれか1以上のグループに分類する。」と記載されている。
また、本件訂正にかかる「前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された別のユーザ」という訂正事項については、明細書の段落【0010】に「また、複数のユーザを2以上のグループに分類する分類部を備え、前記別ユーザは前記ユーザと同一のグループから選定することができる。」と記載されており、段落【0052】の記載とあわせ読むと、当該訂正事項は明細書に記載されている事項と認められる。

したがって、本件訂正にかかる訂正事項は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ 一群の請求項の適否

本件訂正に係る訂正前の請求項2?7について、請求項3?7はそれぞれ請求項2を引用しているものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項2?7に対応する訂正後の請求項2?7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 小括

以上の通りであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[2?7]について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて

1.本件発明

本件訂正請求により訂正された訂正請求項2?7に係る発明を含む本件発明は、平成30年11月2日に提出された訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、請求項の順に「本件発明1」、「本件発明2」・・・という。)

「【請求項1】
ユーザの情報を取得する取得部と、
前記ユーザに1種類以上の乳酸菌を含む機能性素材の情報を提示する提示部と、
複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部を備え、
前記提示部は、前記取得部が取得したユーザに対して、前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された別のユーザが機能性素材を摂取した後に取得した情報と、前記ユーザが以前に行った機能性素材に対する評価に基づき、機能性素材の情報を提示することを特徴とする情報処理装置。

【請求項2】
ユーザの情報を取得する取得部と、
前記ユーザに機能性素材の情報を提示する提示部と、
複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部とを備え、
前記提示部は、前記取得部が取得したユーザに対して提示する機能性素材に関する情報を、前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された別のユーザが機能性素材を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体又は排泄物に関する検査結果に基づき提示することを特徴とする情報処理装置。

【請求項3】
前記排泄物に関する検査結果は、前記別のユーザの腸内細菌に関する検査結果であることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。

【請求項4】
前記提示部は、前記取得部が取得したユーザに対して提示する機能性素材に関する情報を前記ユーザが以前に行った機能性素材に対する評価に基づき提示することを特徴とする請求項2又は3に記載の情報処理装置。

【請求項5】
ユーザが機能性素材を摂取する目的を取得する目的取得部を有し、前記提示部は前記目的取得部が取得した目的に応じて前記ユーザに送信する機能性素材の情報を変更することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の情報処理装置。

【請求項6】
腸内細菌叢の類似度を利用して複数のユーザを2以上のグループに分類する分類部を備え、
前記別ユーザは前記ユーザと同一のグループから選定することを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の情報処理装置。

【請求項7】
前記機能性素材は1種類以上の乳酸菌を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の情報処理装置。」

2.取消理由の概要

訂正前の請求項2、3、7に係る特許に対して平成30年8月31日付けで当審から特許権者に通知した取消理由は、概略以下のとおりである。

訂正前の請求項2、3、7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2、3、7に係る特許は、取り消されるべきものである。

甲第2号証:国際公開第03/084393号

3.甲各号証の記載

(1)甲第1号証(特開2011-232989号公報)

上記甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1-ア)
「本発明は、ユーザーからの入力情報に応じて、ユーザーに適したサプリメントを提案する方法、並びに、その方法を実施するシステム、プログラム、記憶媒体に関する。」(【0001】)

(1-イ)
「上記課題を達成するため、本発明のサプリメント提案システムは、通信手段を介して接続されたユーザー端末と情報伝達可能な通信手段と、演算手段と記録手段とを少なくとも備えたホスト端末を有し、ユーザー端末からの入力情報に応じて、ユーザー端末への出力情報として、各ユーザーに適したサプリメントを提案するシステムであって、ユーザー端末から、ユーザーに対する質問事項の回答を受信するユーザー質問回答情報入力手段と、ユーザーに対する各質問事項の各回答と、そのユーザーに提案するサプリメントとの対応に関連する情報を、少なくとも蓄積するデータベースと、ユーザー質問回答情報入力手段で得られる情報をデータベースと参照させ、ユーザーに提案するサプリメントを決める提案サプリメント演算手段と、提案サプリメント演算手段で得られる情報を、ユーザー端末へ送信する提案情報出力手段とを備えることを特徴とする。
ここで、ユーザーに対する質問事項を、身体的特徴を含む個人情報、体調に関連する体調情報、心理的状況に関連する心理情報、生活習慣に関連する生活習慣情報、希望する改善事項に関連する希望事項情報、とから成る群の少なくとも1つを有するものとしてもよい。」(【0007】、【0008】)

(1-ウ)
「希望する改善事項に関連する希望事項情報を、アンチエイジング、美容、ダイエット、健康、とから成る群の少なくとも1つを有するものとしてもよい。」(【0013】)

(1-エ)
「提案サプリメント演算手段として、希望事項情報が健康の場合には、提案サプリメントとして、マルチビタミン、マルチミネラル、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、βカロチン、食物繊維、海藻、プロテイン、レシチン、EPA、DHA、αリポ酸、クエン酸、核酸、L-カルチニン、SOD、ポリフェノール、コラーゲン、グルコサミン、コンドロイチン、エネキシア、乳酸菌、ガーリック、イチョウ葉エキス、カモミール、亜鉛、とから成る群の少なくとも1つを出力してもよい。」(【0017】)

(1-オ)
「データベースには、ユーザーに対する各質問事項の各回答と、そのユーザーに提案するサプリメントとの対応に関連する情報が少なくとも蓄積される。その他に、各ユーザーの顧客情報や各サプリメントの売り上げ情報など従来公知の営業用情報なども蓄積させておいてもよい。
また、図示の例では、データベースをホスト端末とは別体にしているが、ホスト端末内部の記録手段にデータベースの機能を設けてもよい。」(【0025】)

上記(1-ア)から(1-オ)の記載より、甲第1号証には、

「ユーザーからの入力情報に応じて、ユーザーに適したサプリメントを提案するサプリメント提案システムが備えるホスト端末であって、
前記ホスト端末は、ユーザー端末からユーザーに対する質問事項の回答を受信するユーザー質問回答情報入力手段と、ユーザーに対する各質問事項の各回答とそのユーザーに提案するサプリメントとの対応に関連する情報を少なくとも蓄積するデータベースと、ユーザー質問回答情報入力手段で得られる情報をデータベースと参照させユーザーに提案するサプリメントを決める提案サプリメント演算手段と、提案サプリメント演算手段で得られる情報をユーザー端末へ送信する提案情報出力手段とを備え、
前記ユーザーに対する質問事項は、身体的特徴を含む個人情報、体調に関連する体調情報、心理的状況に関連する心理情報、生活習慣に関連する生活習慣情報、希望する改善事項に関連する希望事項情報、とから成る群の少なくとも1つを有し、
前記希望する改善事項に関連する希望事項情報を、アンチエイジング、美容、ダイエット、健康、とから成る群の少なくとも1つを有するものとしてもよく、
また、前記提案サプリメント演算手段は、希望事項情報が健康の場合には、提案サプリメントとして、マルチビタミン、マルチミネラル、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、βカロチン、食物繊維、海藻、プロテイン、レシチン、EPA、DHA、αリポ酸、クエン酸、核酸、L-カルチニン、SOD、ポリフェノール、コラーゲン、グルコサミン、コンドロイチン、エネキシア、乳酸菌、ガーリック、イチョウ葉エキス、カモミール、亜鉛、とから成る群の少なくとも1つを出力してもよく、
前記データベースをホスト端末内部の記録手段に設けてもよい、
サプリメント提案システムが備えるホスト端末。」の発明が記載されている。(以下、「甲1発明」という。)

(2)甲第2号証(国際公開第03/084393号)

上記甲第2号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(2-ア)
「本発明は、被検査対象者の健康管理を行う健康管理システムに関する。」(第1頁第6行)

(2-イ)
「以下、本明の第1実施形態にかかる健康管理システムについて図を用いて説明する。
尚、第1実施形態において、採血デバィス3a及び分析デバィス3bが採取手段の一例及び分析手段の一例にそれぞれ相当し、インターネット4と通信回線9と健康管理システム専用回線11とが第1から第3の伝送手段の一例にそれぞれ相当し、医薬品投与デバィス12が医薬品投与手段の一例に相当し、携帯電話10を含む携帯用電子機器(PDA)やパーソナルコンピュータ、ホームページ(又はインターネット上のウェブページ)8が分析データ及び/又は診断結果(健康管理情報)の開示手段又は健康管理情報表示装置の一例に相当する。分析データ及び/又は診断結果は健康管理情報の一例であり、分析データ及び診断結果、又は、分析データ、又は、診断結果が健康管理情報の一例として、開示手段又は健康管理情報表示装置により、開示又は表示される。
・・・途中省略・・・
また、第1実施形態中では、体液として血液を例に説明を行うが、唾液、尿、又はリンパ液などを採取して分析してもよい。
図1は、上記第1実施形態にかかる健康管理システムのシステム構成概略図を、図2A、図2B、図2Cは上記健康管理システムのフローチャートをそれぞれ示す。健康保険組合に加入している被検査対象者である加入者1は、住居である自分の家14にて、自分自身の血液2を、採取手段の一例である採血デバイス3aを用いて採血し、この血液2を分析手段の一例である分析デバイス3bによって成分分析を行う(図2A?図2CのステップS1)。採血デバイス3aと分析デバイス3bとは、通称マイクロTAS(micro total analysis system)と呼ばれるパームトップサイズの採血分析一体型機器3であってもかまわないし、採血は注射器(採決デバイス3aの具体例)で行い、分析は生化学分析装置(分析デバイス3bの具体例)で行うような、採血と分析とは別個の機器で行うものであってもかまわない。
分析の内容は、加入者1の健康管理や疾病管理の目的により異なる。加入者1の日常の健康管理が主要な目的であるならば、分析項目は、血液2のグルコース濃度、乳酸濃度、pH値、又は、酸素濃度といった健康状態の指標となる生体パラメータの測定を行う。これらの生体パラメータは、ISFET(イオン感応性電解効果型トランジスタ)による濃度測定や、化学反応後の溶液の吸光度測定、又は、酸化還元電位測定等によって求めることができる。また、加入者1の疾病の発病管理が主目的であるならば、加入者1の体内で発現したタンパク質や抗体を分析できるような、プロテオームチップ(Proteome Chip)や抗体チップ(Antibody Chip)による微量検体測定を行う。
分析デバイス3bで分析された分析データは、一旦、自分の家14に設置され ているホームサーバ7bに記録されてから、第1の伝送手段の一例であるインターネット4を経由して、健康保険組合が運営している健康管理センターの健康管理装置5の送受信部5aへと送信されて、制御部5gの制御の元に、健康管理センターの健康管理装置5のサーバ7aに記録される(図2A?図2CのステップS2)。制御部5gは、健康管理装置5による様々な動作の制御を行なう。健康管理センターの健康管理装置5の送受信部5aへの分析データの送信は、通常は新たな分析データが得られる都度行うものである。」(第9頁第5行?第10頁第24行)

(2-ウ)
「図3に示すように、サーバ7aには、加入者1の過去の記録、すなわち現在までの分析データの履歴データ120や、診断結果履歴(症状、病状の程度、又は進行度合い)のデータ121や、医薬品投与の履歴(対処用の医薬品、投与回数、投与時間、投与量、又は医薬品の種類など)のデータ122や、医薬品投与が加入者1に与えた影響の履歴(副作用、又は効能)などの履歴データ123や、アレルギ一等の加入者1の体質データ124や、加入者1の遺伝子情報データ125や、医薬品スクリーニングデータ126などの個人データ(個人データべ一ス)101、別の加入者αの同様な個人データ(個人データベース)102、別の加入者βの同様な個人データ(個人データベース)103などの加入者全体データ100が保存蓄積されている。また、上記個人データを、加入者全体や、加入者の各年代別、性別別あるいは地域(都道府県、市町村などの区域)別の加入者単位で解析、統計処理した総合データベース等も保存蓄積されている。」(第11頁第3行?第14行)

(2-エ)
「診断手段6は、コンピュータプログラムによって上記個人データ101、102、103……や、上記加入者全体のデータ100、上記診断指標のデータ141、上記適用する医薬品のデータ142、上記人的影響表示データ143、上記医薬品の処方関連データ144などの標準データ140に基づき自動的に診断を下す(図2A?図2CのステップS3)。
診断手段6は、制御部5gの制御のもとに診断動作を行なうものであって、例えば、被検査対象者のホームサーバ7bから健康管理センターの健康管理装置5の送受信部5aに送信された分析データと上記診断指標データ141とにより、症状などを解析して、上記医薬品のデータ142により適用する医薬品などを決定する。この際に、診断手段6は、人的影響表示データ143や処方関連データ144に基づき適用する医薬品を当該被検査対象者に適するように更に考慮する。以上は分析データと標準データ140から診断したものであるが、個人データから診断することも可能であり、例えばその個人の分析データの履歴、診断結果の履歴から、個人の病状の総合的判断(過去から良好に病状や健康状態が推移しているのか、あるいは改善されていないのかなどの判断や、新たな症状の兆しの判断)、人的影響表示データ143により対象者への医薬品の最適な選択や、処方関連データ144により、副作用のない、また医薬品の投与量や投与回数の少ない医薬品の組み合わせも考慮できる。
診断を下すに当たって、分析データの履歴データ120と診断結果履歴のデータ121だけでなく、その他様々な情報も考慮する理由を以下に記す。」(第12頁第8行?第27行)

(2-オ)
「また、図3に示したように、加入者全員の蓄積データから、分析データ解析結果のデータ131や、体質解析結果のデータ132や、遺伝子情報解析結果のデータ133や、投与医薬品解析結果のデータ134等の、体質と投与医薬品と分析データなどとの間の相関関係を示すデータを相関データ130としてデータべース化してサーバ7aに記憶させておき、このデータベースを元に、さらに分析や調査をすることで、自身の個人データがあまり蓄積されていない加入したばかりの者であっても、効果的な医薬品投与を行うことができる。
例えば、初めての加入者と良く似た体質でかつ既にデータが蓄積されている加入者(対象者)のデータを参照して、その参照した対象者の分析データ、診断結果履歴のデータ121、医薬品投与の履歴のデータ122などを用いることにより、初めての加入者に対しても、より適切な診断や、医薬品の提供が可能となる。ある症例Aに対する医薬品XとYとがあり、そのどちらを投与したほうがより効果的かつ安全であるかを前もって知る場合に、相関データ130の相関データベースは好適に用いられる。相関データベース内には、例えば「体質Bの者に症例Aが発症し、医薬品Xを投与したときの分析データ結果」や「体質Bの者に症例Aが発症し、医薬品Yを投与したときの分析データ結果」や「体質Cの者に症例Aが発症し、医薬品Xを投与したときの分析データ結果」等、様々なケースにおける加入者全体の分析データが分析データ解析結果のデータ131として蓄積されており、診断手段6は、分析データ解析結果のデータ131に加えて加入者1の意向(コスト、投与量、又は投与タイミング等)を考慮した上で、最適な処方を提供することができる。」(第14頁第7行?第27行)

(2-カ)
「診断手段6が下した診断結果は、制御部5gの制御のもとに、健康管理センターの健康管理装置5の送受信部5aにより、サーバ7aから、第2の伝送手段の一例である携帯電話を含む携帯用電子機器(PDA)などの通信回線9を経由して加入者1の所有する、携帯用電子機器(PDA)などの情報端末機器でありかつ開示手段又は健康管理情報表示装置の一例となる携帯電話10へと送信される(図2A?図2CのステップS6)。」(第16頁第15行?第21行)

上記(2-ア)から(2-カ)の記載より、甲第2号証には、

「被検査対象者の健康管理を行う健康管理システムが備える健康管理装置5であって、
被検査対象者である加入者1は、住居である自分の家14にて、自分自身の血液2を、採取手段の一例である採血デバイス3aを用いて採血し、この血液2を分析手段の一例である分析デバイス3bによって成分分析を行い、当該分析デバイス3bで分析された分析データは、第1の伝送手段の一例であるインターネット4を経由して、健康保険組合が運営している健康管理センターの健康管理装置5の送受信部5aへと送信されて、制御部5gの制御の元に、健康管理センターの健康管理装置5のサーバ7aに記録され、
前記サーバ7aには、加入者1の過去の記録、すなわち現在までの分析データの履歴データ120や、診断結果履歴(症状、病状の程度、又は進行度合い)のデータ121や、医薬品投与の履歴(対処用の医薬品、投与回数、投与時間、投与量、又は医薬品の種類など)のデータ122や、医薬品投与が加入者1に与えた影響の履歴(副作用、又は効能)などの履歴データ123や、アレルギ一等の加入者1の体質データ124や、加入者1の遺伝子情報データ125や、医薬品スクリーニングデータ126などの個人データ(個人データべ一ス)101、別の加入者αの同様な個人データ(個人データベース)102、別の加入者βの同様な個人データ(個人データベース)103などの加入者全体データ100が保存蓄積されており、
また、上記個人データを、加入者全体や、加入者の各年代別、性別別あるいは地域(都道府県、市町村などの区域)別の加入者単位で解析、統計処理した総合データベース等も保存蓄積されており、
健康管理装置5が備える診断手段6は、コンピュータプログラムによって上記個人データ101、102、103……や、上記加入者全体のデータ100、上記診断指標のデータ141、上記適用する医薬品のデータ142、上記人的影響表示データ143、上記医薬品の処方関連データ144などの標準データ140に基づき自動的に診断を下し、
また、加入者全員の蓄積データから、分析データ解析結果のデータ131や、体質解析結果のデータ132や、遺伝子情報解析結果のデータ133や、投与医薬品解析結果のデータ134等の、体質と投与医薬品と分析データなどとの間の相関関係を示すデータを相関データ130としてデータべース化してサーバ7aに記憶させておき、相関データベース内には、例えば「体質Bの者に症例Aが発症し、医薬品Xを投与したときの分析データ結果」や「体質Bの者に症例Aが発症し、医薬品Yを投与したときの分析データ結果」や「体質Cの者に症例Aが発症し、医薬品Xを投与したときの分析データ結果」等、様々なケースにおける加入者全体の分析データが分析データ解析結果のデータ131として蓄積されており、
このデータベースを元に、さらに分析や調査をすることで、自身の個人データがあまり蓄積されていない加入したばかりの者であっても、効果的な医薬品投与を行うことができ、例えば、初めての加入者と良く似た体質でかつ既にデータが蓄積されている加入者(対象者)のデータを参照して、その参照した対象者の分析データ、診断結果履歴のデータ121、医薬品投与の履歴のデータ122などを用いることにより、初めての加入者に対しても、より適切な診断や、医薬品の提供が可能であり、
前記診断手段6が下した診断結果は、制御部5gの制御のもとに、健康管理センターの健康管理装置5の送受信部5aにより、サーバ7aから、第2の伝送手段の一例である携帯電話を含む携帯用電子機器(PDA)などの通信回線9を経由して加入者1の所有する、携帯用電子機器(PDA)などの情報端末機器でありかつ開示手段又は健康管理情報表示装置の一例となる携帯電話10へと送信される、
健康管理装置5。」の発明が記載されている。(以下、「甲2発明」という。)

(3)甲第3号証(特開2003-67489号公報)

上記甲第3号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(3-ア)
「【発明の属する技術分野】本発明は、検査項目ごとに算出された評価基準の点数を算出し、データをグラフ及び数値形式のデータとして出力し、前記の利用者端末に送信する検査結果データ出力システムに関する。」(【0001】)

(3-イ)
「・・・省略・・・。さらに、上記システムを用いて、健康食品などのサプリメントの評価をすることが可能なシステムを提供することをも目的とする。」(【0004】)

(3-ウ)
「また、上記課題を解決するため、請求項6に記載の発明においては、請求項5に記載の発明において、前記の個人別法人別検査結果データベースに記憶される複数の検査対象者のデータは、人種・性別・年齢・その他のグループのいずれかに分類されたデータとして記憶され、・・・以下省略・・・」(【0010】)

(3-エ)
「図4から図7は、本発明のシステムの実施形態を示す図である。図4及び図5においては、患者等の被検査者の検査結果データに基づき、該当する被検査者に対し健康食品や医薬品等のサプリメントを使用・処方する場合において、サプリメントの使用前、使用後のそれぞれの検査結果データを測定して管理サーバー3に送信する形態を示している。・・・以下省略・・・」(【0021】)

(3-オ)
「以下、本発明の基本的な処理の流れについて、図面を用いて説明する。
・・・途中省略・・・
初めに、利用者端末1から会員登録を行う処理について説明する。
・・・途中省略・・・
次に、利用者端末から検査結果データを入力し送信して前記の個人別法人別検査結果データベースに記憶する処理について説明する。
・・・途中省略・・・
入力された検査結果データは送信されて(S211、S215、S217)、管理サーバー3において受信される(S219)。管理サーバー3においては、受信したユーザーIDと検査結果データとを関連付けて一時記憶し、個人別法人別検査結果データベースに記憶する(S222)。
・・・途中省略・・・
利用者端末1から管理サーバー3にアクセスした状態において、評価エンジン手段を用いたデータ処理画面を表示させ、老化度の評価、過去のデータとの比較、推奨サプリメントの抽出、等のメニューの選択を行う。
・・・途中省略・・・
次に、推奨サプリメントの抽出・出力をする処理について説明する。利用者端末から検査結果データを管理サーバーに送信した後に、管理サーバーにおいて、推奨サプリメント一覧作成のためのエンジンが起動する(S242)。検査結果の各項目ごとの数値を抽出し(S243)、検査項目ごとの検査結果の数値と評価基準との比較処理を行う(S244)。
・・・途中省略・・・
算出された数値から、サプリメントによる改善が必要と判定される場合には(S245)、改善サプリメントをデータベースから抽出し(S246)、抽出された改善サプリメントのデータを管理サーバーのメモリに一時記憶する(S247)。すべての検査項目について、推奨サプリメントの抽出処理を繰り返す(S248)。次いで、サプリメントの名称,価格,効果などのデータテーブルを作成し(S249)、利用者端末へデータテーブルを送信し(S250、S251)、利用者端末にて受信され(S252)、一覧表が表示される(S253)。
・・・途中省略・・・
またサプリメントの抽出は、図29に一例を示すような、改善サプリメントデータベースに記憶されている、症状とサプリメントとの関連付けをさせたデータを用いる。」(【0022】?【0035】)

(4)甲第4号証(特開2003-16192号公報)

上記甲第4号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(4-ア)
「【発明の属する技術分野】本発明は、通信ネットワークを用いて得た利用者の情報に基づき、その利用者に対してサプリメント(栄養補助食品)の処方を行うサプリメント処方システムに関する。」(【0001】)

(4-イ)
「サプリメント処方部26の処理を図7及び図8のフローチャートに表す。 ・・・途中省略・・・
次に、ステップS14で求めた推定摂取量と、ステップS16で求めた栄養所要量とを比較して、その差が所定範囲(α?-α内)内である場合には「適量」と判定し、推定摂取量が栄養所要量よりも所定量(α)以上である場合には「過剰」と判定し、推定摂取量が栄養所要量よりも所定量(-α)以下である場合には「不足」と判定する(ステップS18)。
次に、質問4の健康状態に対する回答から得られた利用者の症状とその度合から、健康状態または生活態度別過不足栄養素データベース50の該当する栄養素の過不足程度を抽出して、不足であれば「-1」、過剰であれば「+1」の点数とし、すべての症状について各栄養素の過不足に応じて付与された点数を加算する(ステップS19)。加算した結果、点数が所定値(β)以上となった栄養素は「過剰」と判定し、点数が所定範囲(β?-β)内にある栄養素は「適量」と判定し、所定値(-β)以下となった栄養素は「不足」と判定する(ステップS20)。
次に、各栄養素について、ステップ18とステップ20でそれぞれ判定された結果を、図9に示す判定マトリックスMと照合して、判定マトリックスMのいずれのカテゴリーに属するかを判定する(ステップS22)。判定マトリックスMのカテゴリーについての解釈は任意に行うことができるが、ここでは、ステップ18の判定を優先させステップ20の判定を補助的なものとする。」(【0035】?【0038】)

(5)甲第5号証(特開2011-254810号公報)

上記甲第5号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(5-ア)
「ここで、腸内細菌叢に含まれる細菌の種類を分析する方法としては、各種手法を用いることができ、特に限定されるものではなく、例えば、培養法や、T-RFLP法、DGGE(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法のような分子生物学的手法等を用いることができるが、これらの中でも、分子生物学的手法を用いるのが好ましい。腸内細菌叢には、100種類にもおよぶ細菌が含まれており、これら多数の細菌を培養法により培養し、その種類を同定することは、これら細菌中には嫌気性細菌等も含まれていることから、その培養条件の設定には困難性を伴うため、時間と労力を非常に要することとなる。これに対して、分子生物学的手法は、PCR法により増幅させた特定の遺伝子断片の種類に基づいて腸内細菌叢中の細菌の種類を同定する方法であり、培養法のように培養条件に左右されず、腸内細菌叢中に含まれる細菌を比較的容易に同定することができる。」(【0032】)

(5-イ)
「以上のことから、本実施形態では、腸内細菌叢に含まれる細菌の種類を分析する方法として、T-RFLP法を用いる場合を一例にして説明する。
(S11)まず、被検者から、例えば、糞便等の試料を採取する。
そして、この試料を、バッファー等に懸濁し糞便懸濁液を調製する。
(S12)次に、糞便懸濁液中に含まれる細菌のDNAを抽出することによりDNA抽出液を得る(抽出工程)。」(【0034】?【0036】)

(6)甲第6号証(特開2011-204194号公報)

上記甲第6号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(6-ア)
「本願発明において、サプリメントは、限定はされず、人体に有用なものであればよく、ビタミン類、ミネラル類、タンパク質・アミノ酸類、動植物抽出物や生薬等、菌類、食物繊維類、その他を例示することができる。
・・・途中省略・・・
菌類としては、ビフィズス菌、乳酸菌、納豆菌、納豆菌培養エキス、酪酸菌、乳清発酵物、メシマコブ菌糸体等を例として挙げることができる。
その他のサプリメントとしては、DHA、EPA、コエンザイムQ10、α-リポ酸、L-カルニチン、キトサン、ベータグルカン、ヒアルロン酸、各種リン脂質等を例として挙げることができる。」(【0013】)

(7)甲第7号証(光岡知足、「腸内菌叢」、理化学研究所ニュース、 1980年7月、No.64、p.1-5)

上記甲第7号証には、以下の事項が記載されている。

(7-ア)
「いまから10数年前、新しい嫌気培養法が開発されて、これらが生きた細菌として分離されるようになった。嫌気性Roll tube法、嫌気性Glove box法やわれわれのPlate-in-bottle法がそれである。その結果、健康なヒトの十二指腸や空腸では、菌種・菌数とも少ないが、回腸あたりから細菌が急激に増殖しはじめ、大腸では100種類もの細菌が内容1g当り10^(11)以上も棲息していることが明らかになった。」(第1頁右欄)

(8)甲第8号証(平山和宏、「腸内菌叢の基礎」、モダンメディア、
2014年10月、第60巻、第10号、p.9-13)

上記甲第8号証には、以下の事項が記載されている。

(8-ア)
「VII.腸内細菌叢の研究法と将来
かつて、腸内細菌叢の研究には、もっぱら培養を基礎とした手法が用いられてきた。しかし、腸内細菌叢を研究するのはしばしば困難である。腸内、特に大腸は酸素が存在しないなど非常に特殊な環境であり、栄養条件なども実験室内で再現することは難しい。ロールチューブ法、プレートインボルト法、嫌気ブローブボックス法といった高度な嫌気環境を可能にする方法や装置の開発、培地の組成をはじめとする培養技術の向上などが長年にわたって進められ、培養法も進歩し続けているが、それでもなお、腸内に存在するすべての細菌を培養することはできない。腸内細菌叢が数百?1000種を超えるともいわれる膨大な数の細菌から構成される極めて複雑な生態系であることも研究を困難にしている。腸内細菌叢を培養し、観察し、同定し、解析する作業には莫大な労力と時間が必要である。
分子生物学的な手法は、これらの問題を解決する一つの手段として盛んに用いられるようになった。分子生物学的な手法は主として細菌の遺伝子、特に16SrRNAの遺伝子(16SrDNA)の配列の違いを検出することを基礎としたものである。培養法に比べて労力や時間が削減され、培養法で要求される熟練も必要としない。菌が生きている必要がないので、試料の採取や輸送、保存にも制約が少ない。FISH法、クローンライブラリー法、DGGE法、TGGE法、T-RFLP法、定量的PCR法、DNAマイクロアレイ法などがある。
さらに、新しい原理に基づくいわゆる「次世代シーケンサー」の登場と強力なコンピューターの利用により、メタゲノム解析が可能となった。「次世代シーケンサー」はそれまでのシーケンサーの数万倍もの能力を持ち、遺伝子情報解析の速度、経済性、網羅性を飛躍的に進歩させた。国際的な大規模プロジェクトも行われ、膨大な数の遺伝子情報を持った総合的なデータベースが構築されつつある。」(第12頁右欄)

4.判断

(1)取消理由通知に記載した取消理由について

ア.本件発明2について

<対比>

本件発明2と甲2発明とを対比する。

(ア-1)
甲2発明においては、「被検査対象者である加入者1は、住居である自分の家14にて、自分自身の血液2を、採取手段の一例である採血デバイス3aを用いて採血し、この血液2を分析手段の一例である分析デバイス3bによって成分分析を行い、当該分析デバイス3bで分析された分析データは、第1の伝送手段の一例であるインターネット4を経由して、健康保険組合が運営している健康管理センターの健康管理装置5の送受信部5aへと送信されて、制御部5gの制御の元に、健康管理センターの健康管理装置5のサーバ7aに記録され」るのであるから、前記「分析データ」は「被検査対象者である加入者1(本件発明2でいうところの『ユーザ』に相当。)」の「情報」であり、そして、前記「分析データ」は「健康管理センターの健康管理装置5の送受信部5aへと送信され」るのであるから、前記「健康管理装置5の送受信部5a」は、前記「分析データ」を「取得」していることは明らかである。

してみると、甲2発明にかかる「健康管理装置5の送受信部5a」は、本件発明2でいう『ユーザの情報を取得する取得部』に相当する。

(ア-2)
甲2発明における「診断手段6」は、「コンピュータプログラムによって上記個人データ101、102、103……や、上記加入者全体のデータ100、上記診断指標のデータ141、上記適用する医薬品のデータ142、上記人的影響表示データ143、上記医薬品の処方関連データ144などの標準データ140に基づき自動的に診断を下し、」「相関データベース」を元に、「初めての加入者に対しても、より適切な診断や、医薬品の提供が可能」となるのであり、そして、「前記診断手段6が下した診断結果は、制御部5gの制御のもとに、健康管理センターの健康管理装置5の送受信部5aにより、サーバ7aから、第2の伝送手段の一例である携帯電話を含む携帯用電子機器(PDA)などの通信回線9を経由して加入者1の所有する、携帯用電子機器(PDA)などの情報端末機器でありかつ開示手段又は健康管理情報表示装置の一例となる携帯電話10へと送信される」のであるから、甲2発明と本件発明2とは、「ユーザに対して健康管理のための物質の情報を提示する提示部を備える」という点において、共通する構成を備えているといえる。

(ア-3)
甲2発明における「診断手段6」が下す「診断結果」は、“「例えば「体質Bの者に症例Aが発症し、医薬品Xを投与したときの分析データ結果」や「体質Bの者に症例Aが発症し、医薬品Yを投与したときの分析データ結果」や「体質Cの者に症例Aが発症し、医薬品Xを投与したときの分析データ結果」等、様々なケースにおける加入者全体の分析データが分析データ解析結果のデータ131として蓄積されて」いる「相関データベース」”を元に、分析や調査をすることで「初めての加入者と良く似た体質でかつ既にデータが蓄積されている加入者(対象者)のデータを参照して、その参照した対象者の分析データ、診断結果履歴のデータ121、医薬品投与の履歴のデータ122などを用いることにより、初めての加入者に対しても、より適切な診断や、医薬品の提供が可能」となるものである。

ここで、上記「初めての加入者と良く似た体質でかつ既にデータが蓄積されている加入者(対象者)」は、本件特許発明2でいうところの『別のユーザ』であり、そして、前記“「相関データベースに蓄積されている分析データ解析結果のデータ131」”や前記“「その参照した対象者の分析データ、診断結果履歴のデータ121、医薬品投与の履歴のデータ122など」”は、『別のユーザが健康管理のための物質を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体に関する検査結果』といえる。

してみると、甲2発明と本件発明2とは、「提示部は、前記取得部が取得したユーザに対して提示する健康管理のための物質の情報を、前記ユーザとは別のユーザが健康管理のための物質を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体に関する検査結果に基づき提示する」という点において、共通する構成を備えているといえる。

(ア-4)
甲2発明にかかる「健康管理装置5」は、被検査対象者である加入者1から分析データを受信し、当該「健康管理装置5」がそなえるデータベースを用いて、診断手段6がコンピュータプログラムによって自動的に診断を下し、診断結果を加入者1の所有する携帯電話10へと送信するのであるから、本件発明2でいう『情報処理装置』に相当する。

なお、上記(ア-1)から(ア-4)は、取消理由通知で指摘した内容と同じである。

(ア-5)
甲2発明における「総合データベース」は、「個人データを、加入者全体や、加入者の各年代別、性別別あるいは地域(都道府県、市町村などの区域)別の加入者単位で解析、統計処理した」データを「保存蓄積」するものであるから、甲2発明の「健康管理装置5」は、「個人データ」を「各年代別、性別別あるいは地域(都道府県、市町村などの区域)別」に分類するための機能が備わっているといえる。

してみると、甲2発明と本件発明2とは、「複数のユーザをグループに分類する分類部」を備えている、という点において共通しているといえる。

上記(ア-1)から(ア-5)で対比した様に、本件発明2と甲2発明とは、

「ユーザの情報を取得する取得部と、
前記ユーザに健康管理のための物質の情報を提示する提示部と、
複数のユーザをグループに分類する分類部とを備え、
前記提示部は、前記取得部が取得したユーザに対して提示する健康管理のための物質の情報を、別のユーザが健康管理のための物質を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体に関する検査結果に基づき提示することを特徴とする情報処理装置。」

という点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本件発明2においては、『提示部』が提示する『情報』は、『機能性素材』であり、同『提示部』は、『機能性素材に関する情報』を『別のユーザが機能性素材を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体に関する検査結果に基づき提示』してるのに対して、甲2発明においては、提示する情報は「医薬品」であり、「診断手段6」は「医薬品に関する情報」を「別のユーザが医薬品を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体に関する検査結果に基づき提示」している点において相違している。

[相違点2]
本件発明2に係る『分類部』は、『複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する』ものであるのに対し、甲2発明における「分類部」は「腸内細菌叢に関する情報に基づ」いてグループに分類するものでない点。

[相違点3]
本件発明2においては、『別のユーザ』について『前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された』との限定がされているのに対し、甲2発明においては、「初めての加入者と良く似た体質でかつ既にデータが蓄積されている」という限定である点。

<判断>

(a-1)[相違点1]について

本件発明2でいう『機能性素材』や甲2発明における「医薬品」は、いずれも、健康管理の為にユーザが摂取する物質であることを鑑みると、甲2発明を本件発明2の様に「機能性素材」を対象とするものに変更すること(即ち、ユーザに提示する情報を「機能性素材」とすることや、検査結果の基になる情報を「機能性素材」に関するものとすること。)は、当業者であれば容易に変更し得るものと認められ、また、その様に変更するにあたって阻害要因があるとも考えられない。

(a-2)[相違点2]について

甲2発明は、「個人データ」を「各年代別、性別別あるいは地域(都道府県、市町村などの区域)別」に分類するための機能を備えているものの、当該機能は、本件発明2の様に『複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する』ものではない。
そして、機能性素材の情報をユーザに提示するという目的において、『複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する』という技術事項が周知であることを示す証拠もない。
したがって、『複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部』を発明特定事項として備える本件発明2は、甲2発明に基づいて当業者といえども容易に想到し得るものとは認められない。

(a-3)[相違点3]について

上記「(a-2)[相違点2]について」で検討した様に、『複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部』を発明特定事項として備える本件発明2は、甲2発明に基づいて当業者といえども容易に想到し得るものとは認められないのであるから、甲2発明において、本件発明2の『別のユーザ』に対応する「加入者」について、『前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された』との限定を付すことは、当業者といえども容易に想到し得るものとは認められない。

(a-4)まとめ

上記「(a-2)[相違点2]について」及び「(a-3)[相違点3]について」で検討した様に、本件発明2は、甲2発明に基づいて当業者といえども容易に想到し得るものとは認められない。

イ.本件発明3及び本件発明7について

本件発明3及び本件発明7は、いずれも本件発明2を引用する発明であるから、甲2発明との間には、上述した[相違点2]及び[相違点3]があり、当該[相違点2]及び[相違点3]については、本件発明2で検討したのと同様に、甲2発明に基づいて当業者といえども容易に想到し得るものとは認められない。

(2)取消理由通知において採用しなかった異議申立理由について

(2-1)本件発明2に対する新規性欠如の理由

異議申立人は、異議申立理由として、「本件発明2は、甲2発明と同一又は実質的に同一であるから進歩性を有しない」旨主張しているが、上記「(1)取消理由通知に記載した取消理由について」で検討した様に、本件発明2と甲2発明との間には上述した相違点1?3があり、当該相違点1?3は、実質的に同一といえるものでもないから、異議申立人の主張は理由がない。

(2-2)甲第1号証を主引例とする進歩性欠如の理由

ア.本件発明1について

本件発明1は、上記「第3 特許異議の申立てについて」の「1.本件発明」の「【請求項1】」に記載された通りである。

また、異議申立人の提示した甲第1号証?甲第6号証に記載されている事項は、上記「第3 特許異議の申立てについて」の「3.甲各号証の記載」で記載した通りである。

<対比>

本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア-1)
甲1発明に係る「ユーザー質問回答情報入力手段」は、「ユーザー端末からユーザーに対する質問事項の回答を受信する」ものであり、前記「ユーザーに対する質問事項の回答」は、本件発明1でいう『ユーザの情報』に相当するものであるから、甲1発明に係る「ユーザー質問回答情報入力手段」は、本件発明1でいう『ユーザの情報を取得する取得部』に相当する。

(ア-2)
甲1発明の「ホスト端末」は、「ユーザー端末からユーザーに対する質問事項の回答を受信するユーザー質問回答情報入力手段と、ユーザーに対する各質問事項の各回答とそのユーザーに提案するサプリメントとの対応に関連する情報を少なくとも蓄積するデータベースと、ユーザー質問回答情報入力手段で得られる情報をデータベースと参照させユーザーに提案するサプリメントを決める提案サプリメント演算手段と、提案サプリメント演算手段で得られる情報をユーザー端末へ送信する提案情報出力手段とを備え、」ており、前記「提案情報出力手段」がユーザー端末へ送信する「提案サプリメント演算手段で得られる情報」は、「ユーザーに提案するサプリメント」の事であり、該「サプリメント」は本件発明1でいう『機能性素材の情報』に相当する。そして、甲1発明においては、「サプリメント」として「・・・乳酸菌、・・・とから成る群の少なくとも1つを出力してもよい」のであるから、甲1発明に係る「提案サプリメント演算手段で得られる情報をユーザー端末へ送信する提案情報出力手段」は、本件発明1でいう『前記ユーザに1種類以上の乳酸菌を含む機能性素材の情報を提示する提示部』に相当する。

(ア-3)
甲1発明の「ホスト端末」は、「ユーザー端末からユーザーに対する質問事項の回答を受信するユーザー質問回答情報入力手段と、ユーザーに対する各質問事項の各回答とそのユーザーに提案するサプリメントとの対応に関連する情報を少なくとも蓄積するデータベースと、ユーザー質問回答情報入力手段で得られる情報をデータベースと参照させユーザーに提案するサプリメントを決める提案サプリメント演算手段と、提案サプリメント演算手段で得られる情報をユーザー端末へ送信する提案情報出力手段とを備え、」るものであり、「ユーザー質問回答情報入力手段で得られる情報をデータベースと参照させユーザーに提案するサプリメントを決める」演算を行っているのであるから、本件発明1でいう『情報処理装置』に相当する。

上記(ア-1)及び(ア-3)で対比した様に、本件発明1と甲1発明とは、

「ユーザの情報を取得する取得部と、
前記ユーザに1種類以上の乳酸菌を含む機能性素材の情報を提示する提示部とを備える、情報処理装置。」

という点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点a]
本件発明1は、『複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部』との発明特定事項を備えているのに対し、甲1発明は、かかる発明特定事項を備えていない点。

[相違点b]
本件発明1は、提示部について『前記取得部が取得したユーザに対して、前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された別のユーザが機能性素材を摂取した後に取得した情報と、前記ユーザが以前に行った機能性素材に対する評価に基づき、機能性素材の情報を提示する』との構成が特定されているのに対し、甲1発明に係る「提案情報出力手段」には、かかる構成が特定されていない点。

<判断>

(a-1)[相違点a]について

異議申立人の提示した甲第2号証には、「個人データを、加入者全体や、加入者の各年代別、性別別あるいは地域(都道府県、市町村などの区域)別の加入者単位で解析、統計処理」すること、甲第3号証には、「複数の検査対象者のデータは、人種・性別・年齢・その他のグループのいずれかに分類され」ること、甲第4号証には、「各栄養素について、ステップ18とステップ20でそれぞれ判定された結果を、図9に示す判定マトリックスMと照合して、判定マトリックスMのいずれのカテゴリーに属するかを判定する」ことが記載されている。
しかしながら、いずれの甲号証にも本件発明1が備える『複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部』については、記載も示唆もされていない。
また、甲1発明は、ユーザーからの入力情報に応じて、ユーザーに適したサプリメントを提案することを目的とするものであって、サプリメントを提案するに際して、当該ユーザーを分類する必要性はなく、ユーザーを何かしらの単位(グループ)に分類するという甲第2?4号証に記載されている技術事項を甲1発明に付加する動機付けがあるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2?4号証に記載されている事項に基づいて当業者が容易に想到し得るとは認められない。

(a-2)[相違点b]について

本件発明1に係る『提示部』について特定されている『前記取得部が取得したユーザに対して、前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された別のユーザが機能性素材を摂取した後に取得した情報と、前記ユーザが以前に行った機能性素材に対する評価に基づき、機能性素材の情報を提示する』との事項は、分類部による処理結果を前提に実行されるのであるから、上記[相違点a]で言及した様に、甲1発明に『複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部』を付加することが当業者にとって容易に想到し得ないのであるから、前記『提示部』について特定されている事項についても、当業者が容易に想到し得るとは認められない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2?4号証に記載されている事項に基づいて当業者が容易に想到し得るとは認められない。

イ.本件発明2?7について

独立請求項である本件発明2、本件発明2を引用する本件発明3?6、本件発明1又は本件発明2を引用する本件発明7は、いずれも、『複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部』との発明特定事項を備えているものであるから、上記「(a-1)[相違点a]について」で言及したのと同様の理由により、甲1発明及び甲第2?6号証に記載されている事項に基づいて当業者が容易に想到し得るとは認められない。

なお、甲第5号証及び甲第6号証にも『複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部』については、記載も示唆もされていない。

ウ.まとめ

上記「ア.本件発明1について」及び「イ.本件発明2?7について」で検討した様に、本件発明1?7は、甲1発明及び甲第2?6号証に記載されている事項に基づいて当業者が容易に想到し得るとは認められないのであるから、異議申立人の主張は理由がない。

(2-3)実施可能性要件違反(特許法第36条第4項第1号)の理由

ア.「複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類す る」との発明特定事項について

特許第6245487号の明細書には、「なお、ユーザの情報には、アンケートに対する回答によって示される、腸内細菌叢の類似度を含むユーザUの腸内細菌叢に関する情報(以下、「腸内細菌叢情報」と呼ぶ)を含めることができる。」(【0019】)、「図1のサーバ1は、取得したユーザの情報のうち、少なくとも腸内細菌叢情報が含まれる情報に基づいて、ユーザUを複数のグループのうちいずれか1以上のグループに分類する。ここで、分類する際の特性因子(以下「グルーピング特定因子」と略記する)は特に限定されない。」(【0052】)と記載されている。

当該記載を参酌するに、「ユーザの情報」には、「腸内細菌叢の類似度を含むユーザUの腸内細菌叢に関する情報」を含めることが出来るのであるから、当業者であれば、「ユーザの情報」に含まれる「腸内細菌叢に関する情報」のうち、どれかの情報を用いてユーザを分類することは可能であると考えるのが自然であるから、“「複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する」という動作は不明瞭であり、出願時の技術常識に基づいてもその具体的動作を当業者が理解できないから、当業者であっても本件発明1、7の実施をすることができない”との異議申立人の主張は理由がない。

イ.「腸内細菌叢の類似度を利用して複数のユーザを2以上のグループに 分類する」との発明特定事項について

上記「ア」と同様に、特許第6245487号の明細書の【0019】及び【0052】の記載を参酌するに、「ユーザの情報」には、「腸内細菌叢の類似度を含むユーザUの腸内細菌叢に関する情報」を含めることが出来るのであるから、当業者であれば、「ユーザの情報」に含まれる「腸内細菌叢の類似度を含むユーザUの腸内細菌叢に関する情報」のうち、「腸内細菌叢の類似度」の情報を用いてユーザを分類することは可能であると考えるのが自然である。また、取得した情報の類似度を求める技術手法自体は、様々な手法で各種技術分野で実施されていることであることも鑑みると、“「腸内細菌叢の類似度を利用して複数のユーザを2以上のグループに分類する」という動作は不明瞭であり、出願時の技術常識に基づいてもその具体的動作を当業者が理解できないから、当業者であっても本件発明6、7の実施をすることができない”との異議申立人の主張は理由がない。

ウ.「別のユーザの身体又は排泄物に関する検査結果に基づき提示する」 との発明特定事項について

特許第6245487号の明細書には、「サーバ1は、ユーザの情報、及び、アンケート票情報と素材情報との関係性に基づいて、サプリメントの素材の中からユーザUにとって適合するものを推薦する処理を実行する。
ここで、推薦とは、ユーザUにとって適合するサプリメントの素材を、ユーザUに対し提示することを意味する。具体的には、ユーザに提示すべき情報を、サーバ1がユーザ端末2に対し送信し、ユーザ端末2の画面に表示させることをいう。このため、ユーザに提示すべき情報がサーバ1のディスプレイに表示されることはない。
ユーザUは、その推薦結果に対する評価(実際にサプリメントの素材を摂取した際の効き具合等)を、ユーザ端末2を操作して入力する。なお、推薦結果に対する評価の方法は特に限定されない。例えば、サプリメントを摂取した後に行われた、身体検査の検査結果、排泄物の検査結果等を含めることができる。なお、排泄物の検査結果は、排泄物の色、におい、形等についての判定結果であってもよい。
このようなユーザUからの推薦結果に対する評価を示す情報は、第1フィードバック情報として、ユーザ端末2からサーバ1に送信される。
そこで、サーバ1は、ユーザUからの推薦結果に対する第1フィードバック情報に基づいて、次回以降の推薦結果又は推薦処理を補正する。
このような補正は複数のユーザU毎に夫々個別独立して実行される。これにより、次回以降の推薦では、複数のユーザUの夫々にとってより適切なサプリメントの素材が夫々推薦されるようになる。このようにして、効果の個人差がある1種以上の乳酸菌を含む、複数の機能性素材又は菌の中から、ユーザUにとって適合するものを推薦する処理が、複数のユーザU毎に適切に実行可能になる。
ただし、とあるユーザUの推薦の処理に対して、当該ユーザU自身の第1フィードバック情報のみを考慮すると、必ずしも当該ユーザUにとって適切な推薦とならない場合がある。当該ユーザU自身の第1フィードバック情報は、当該ユーザUの主観情報に過ぎないからである。
そこで、第1実施形態のサーバ1は、客観的な情報も加味した推薦を行うべく、当該ユーザUからの推薦結果に対する第1フィードバック情報のみならず、当該ユーザUと生体情報等が類似する別ユーザUの第1フィードバック情報に基づいて、次回以降の推薦結果又は推薦処理を補正する。」(【0020】、【0021】)と記載されている。

当該記載を参酌するに、サーバ(情報処理装置)は、「ユーザから「サプリメントを摂取した後に行われた、身体検査の検査結果、排泄物の検査結果等」の「評価を示す情報」を受け取り、当該「評価を示す情報」に基づいて次回以降の推薦結果を補正する」との情報処理を実行することを、当業者であれば、明確に理解することが出来ると考えるのが自然であるから、“「別のユーザの身体又は排泄物に関する検査結果に基づき提示する」という動作は不明瞭であり、出願時の技術常識に基づいてもその具体的工程を当業者が理解できないから、当業者であっても本件発明2?7の実施をすることができない”との異議申立人の主張は理由がない。

(2-4)サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)の理由

ア.「腸内細菌叢に関する情報」という記載について

特許第6245487号の明細書における「なお、ユーザの情報には、アンケートに対する回答によって示される、腸内細菌叢の類似度を含むユーザUの腸内細菌叢に関する情報(以下、「腸内細菌叢情報」と呼ぶ)を含めることができる。」(【0019】)の記載は、「・・・を含めることができる。」と記載されている様に、「腸内細菌叢に関する情報」が「アンケートに対する回答によって示される」との一例を挙げているのであり、「アンケートに対する回答によって示される」以外のものを排除する内容ではないから、“出願時の技術常識に照らしても、本件発明1及びこれを引用する本件発明7の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない”との異議申立人の主張は理由がない。

イ.「腸内細菌叢の類似度」という記載について

上記「ア」と同様に、特許第6245487号の明細書の【0019】の記載は、「・・・を含めることができる。」と記載されている様に、「腸内細菌叢の類似度」が「アンケートに対する回答によって示される」との一例を挙げているのであり、「アンケートに対する回答によって示される」以外のものを排除する内容ではないから、“出願時の技術常識に照らしても、本件発明6及びこれを引用する本件発明7の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない”との異議申立人の主張は理由がない。

ウ.「ユーザの排泄物に関する検査結果」及び「腸内細菌に関する検査結 果」という記載について

特許第6245487号の明細書における「例えば、サプリメントを摂取した後に行われた、身体検査の検査結果、排泄物の検査結果等を含めることができる。なお、排泄物の検査結果は、排泄物の色、におい、形等についての判定結果であってもよい。」(【0020】)の記載は、「排泄物の検査結果」として「排泄物の色、におい、形」を例示として挙げつつ、「・・・であってもよい。」と記載されている様に、「排泄物の色、におい、形」以外のものを排除する内容ではなく、また、「腸内細菌に関する検査結果」については、「排泄物の検査結果」の一例とするものであるから、“出願時の技術常識に照らしても、本件発明2、3及びこれらを引用する本件発明4?7の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない”との異議申立人の主張は理由がない。

(2-5)明確性違反(特許法第36条第6項第2号)の理由

ア.「腸内細菌叢に関する情報」、「腸内細菌叢の類似度」、「排泄物に 関する検査結果」という記載について

「腸内細菌叢に関する情報」、「腸内細菌叢の類似度」、「排泄物に関する検査結果」という記載は、特許第6245487号の明細書の【0019】、【0020】の記載、及び、上記「(2-3)実施可能性要件違反(特許法第36条第4項第1号)の理由」、上記「(2-4)サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)の理由」で言及した事項を参酌するに、それぞれの用語が意味する内容は明確であるといえるので、“本件明細書等の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、これらの用語の意味内容を、当業者が理解することはできないから、本件発明1?7は明確でない”との異議申立人の主張は理由がない。


第4 むすび

以上の通りであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。

さらに、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの情報を取得する取得部と、
前記ユーザに1種類以上の乳酸菌を含む機能性素材の情報を提示する提示部と、
複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部を備え、
前記提示部は、前記取得部が取得したユーザに対して、前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された別のユーザが機能性素材を摂取した後に取得した情報と、前記ユーザが以前に行った機能性素材に対する評価に基づき、機能性素材の情報を提示することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
ユーザの情報を取得する取得部と、
前記ユーザに機能性素材の情報を提示する提示部と、
複数のユーザを腸内細菌叢に関する情報に基づきグループに分類する分類部とを備え、
前記提示部は、前記取得部が取得したユーザに対して提示する機能性素材に関する情報を、前記分類部によって前記ユーザと同一のグループに分類された別のユーザが機能性素材を摂取した後に行った、前記別のユーザの身体又は排泄物に関する検査結果に基づき提示することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
前記排泄物に関する検査結果は、前記別のユーザの腸内細菌に関する検査結果であることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記提示部は、前記取得部が取得したユーザに対して提示する機能性素材に関する情報を前記ユーザが以前に行った機能性素材に対する評価に基づき提示することを特徴とする請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
ユーザが機能性素材を摂取する目的を取得する目的取得部を有し、前記提示部は前記目的取得部が取得した目的に応じて前記ユーザに送信する機能性素材の情報を変更することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
腸内細菌叢の類似度を利用して複数のユーザを2以上のグループに分類する分類部を備え、
前記別ユーザは前記ユーザと同一のグループから選定することを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記機能性素材は1種類以上の乳酸菌を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の情報処理装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-01-28 
出願番号 特願2017-508699(P2017-508699)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (G06F)
P 1 651・ 121- YAA (G06F)
P 1 651・ 537- YAA (G06F)
P 1 651・ 113- YAA (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 早川 学  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 佐藤 智康
宮久保 博幸
登録日 2017-11-24 
登録番号 特許第6245487号(P6245487)
権利者 ヤヱガキ醗酵技研株式会社 合同会社IP Bridge1号
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム  
代理人 林 一好  
代理人 小林 淳一  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 松沼 泰史  
代理人 松沼 泰史  
代理人 正林 真之  
代理人 高田 尚幸  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 高田 尚幸  
代理人 小林 淳一  
代理人 高田 尚幸  
代理人 高田 尚幸  
代理人 小林 淳一  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  
代理人 松沼 泰史  
代理人 松沼 泰史  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 小林 淳一  

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