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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 D06F |
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管理番号 | 1349914 |
審判番号 | 不服2018-7909 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-07 |
確定日 | 2019-04-04 |
事件の表示 | 特願2013-212598「衣類のドライパック保管方法及びその方法で使用する温風式立体乾燥装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年4月20日出願公開、特開2015-73770、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年10月10日の出願であって、平成29年7月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年9月29日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成30年2月23日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年6月7日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年2月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1?5に係る発明は、以下の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.国際公開第2013/061485号 2.特開昭53-115395号公報 3.オーダースーツ専門店スプレーモ,"ゼニア新素材 Cool Effect(クールエフェクト)",[online],オーダースーツblog【オーダースーツのスプレーモ】,[2010年5月3日インターネットアーカイブ収録],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20100503072101/http://supremo.jp/blog> 第3 本願発明 本願請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、平成30年6月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 衣類をドライパックして保管するドライパック保管方法であって、 縫製工場で生産され洗濯或いはクリーニングせずにハンガーに吊り下げた状態の夏物衣類を温風式立体乾燥装置で乾燥する乾燥工程と、 前記乾燥工程で乾燥された夏物衣類を気密性袋にパックするパック工程と、 前記パック工程でパックされた夏物衣類を積載保管する保管工程と、を備え、 前記乾燥工程で乾燥された夏物衣類を前記パック工程で前記気密性袋にパックした後の気密性袋内の相対湿度が1.5?3.5%RHであり、前記夏物衣類は、定尺幅1.5m×長さ1mの重量が220g以下の生地で縫製されてなることを特徴とする夏物衣類のドライパック保管方法。 【請求項2】 前記気密性袋は、KOPシートとPEシートのラミネートシートで形成される請求項1に記載の夏物衣類のドライパック保管方法。 【請求項3】 前記夏物衣類は、揃いのスーツとパンツ或いはスカートであり、前記ハンガーは、前記スーツを吊り下げる肩形状アームと、前記パンツ或いはスカートを着脱自在に吊り下げる吊り下げ部材を備える請求項1又は2に記載の夏物衣類のドライパック保管方法。 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の夏物衣類のドライパック保管方法で使用する温風式立体乾燥装置であって、 中空の乾燥ブースと、 前記乾燥ブースの外に配置された温風発生器と、前記乾燥ブースの下方に配置され前記温風発生器と接続された温風吹き出し口と、前記乾燥ブースの上方に配置され前記温風発生器に接続された温風吸い込み口と、前記乾燥ブースの上方に配置され排気ファンに接続された排気口と、を備える前記乾燥ブース内の温風雰囲気温度を86℃?94℃の範囲に制御する雰囲気温度制御手段と、 複数の夏物衣類を複数のハンガーにそれぞれ吊り下げた状態で且つ互いに所定の間隔を空けて吊り下げる前記乾燥ブース内に配置された吊り下げ部材と、 前記吊り下げ部材に吊り下げられた夏物衣類の乾燥時間を16分?24分の範囲に制御する乾燥時間制御手段と、を有し、 前記排気口から排気される排気量が前記温風吹き出し口から吹き出される吹き出し量の25?40%であることを特徴とする温風式立体乾燥装置。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。) ア.「[0001]本発明は、洋服や和服等の衣類ドライパックシステム及び衣類のドライパック方法に関する。詳しくは、衣類を輸送するために衣類を乾燥して気密性の袋にパックする衣類ドライパックシステム及び衣類のドライパック方法に関する。 背景技術 [0002]縫製工場からアパレル製品を問屋やショップに輸送する方法としては、皺や折り目の発生を抑制するため、アパレル製品を折畳まないでハンガーに吊り下げた状態で行われる。輸送距離が短い場合は、ハンガーに吊り下げた状態で輸送しても問題が少ないが、輸送距離が長くなると、輸送費・効率の点で問題が多い。そこで、最近、アパレル製品を折畳まない状態で乾燥装置の乾燥室に吊り下げて乾燥させ、その後ナイロン製の包装袋に入れて密閉し、輸送するドライパック方式が試みられている(例えば、非特許文献1参照。)。」 イ.「[0006]本発明者は、上記従来のドライパック方式では乾燥が不十分であるため、包装袋内の湿度が高く、輸送されたアパレル製品には皺や折り目が付いており、アイロンをかけて解消する必要があることを見出した。 [0007]上記従来のハンガーに吊り下げた洗濯後の衣類をハンガーポールに吊り下げて温風により洗濯後の衣類を乾燥させるタイプの乾燥装置では、55℃の温風を上方から吹き出して下方から強制排気している。したがって、温風の温度が低いために乾燥が不十分であるが、通常の洗濯後の衣類乾燥であれば、輸送による皺や折り目の発生を抑える必要がないので問題にならない。しかし、上記縫製工場で生産されたアパレル製品のドライパック方式での乾燥では、乾燥が不十分であるため、輸送中にアパレル製品に皺や折り目が付いてしまう問題があった。すなわち、縫製工場で生産されたアパレル製品のドライパック方式ではパックした衣類を重ねて輸送するため、乾燥が不十分であると、包装袋内の相対湿度が高く、輸送中に発生した皺や折り目が輸送後衣類を包装袋から取り出しても解消されないという問題があった。 [0008]本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、輸送後の衣類の皺や折り目をアイロン等によって強制解消する必要のない衣類のドライパックシステム及びドライパック方法を提供することを課題としている。」 ウ.「[0010]課題を解決するためになされた本発明は、衣類をドライパックして輸送するための衣類のドライパックシステムであって、衣類を洗濯或いはクリーニングせずにハンガーに吊り下げた状態で乾燥する乾燥装置と、前記乾燥装置で乾燥された衣類を気密性袋にパックするパック装置と、を有し、前記乾燥装置は、中空の乾燥ブースと前記乾燥ブースの外に配置された温風発生器と前記温風発生器に接続され前記乾燥ブース内に温風を吹き出す温風吹き出し口と前記温風発生器に接続され前記乾燥ブース内から温風を排出する温風排出口とを備え前記乾燥ブース内の温風雰囲気温度を86℃?94℃の範囲に制御する雰囲気温度制御手段と、複数の衣類を複数のハンガーにそれぞれ吊り下げた状態で前記乾燥ブース内に配置された吊り下げ部材と、前記吊り下げ部材に吊り下げられた衣類の乾燥時間を16分?24分の範囲に制御する乾燥時間制御手段と、を備え、前記乾燥装置で乾燥された衣類を前記パック装置で前記気密性袋にパックした後の常温時の気密性袋内の相対湿度が5%RH以下であることを特徴としている。 [0011]……… [0012]ハンガーに吊り下げた状態の衣類が86℃?94℃の温風雰囲気の乾燥ブース内で16分?24分間乾燥されるので、衣類の湿気(水分)がほぼ完全に除去される。湿気がほぼ完全に除去された衣類がパック装置で気密性袋に入れられて密閉されるので、袋内の常温時の相対湿度が5%RH以下になる。その結果、輸送による皺や折れ目の発生が抑制される。 [0013]また、東京の年平均相対湿度は60%RHであり、地球上のほとんど全ての相対湿度は季節を問わず5%RHより高い。したがって、輸送中に僅かに発生した皺や折れ目も輸送後に衣類を気密性袋から取り出すと、衣類が外気の湿気を吸収して皺や折れ目が自然に解消される。」 エ.「[0060]<比較試験>上記実施形態の衣類のドライパックシステムを使って、本発明の効果を検証した。比較試験に使用した乾燥装置1のスクリュー(吊り下げ部材)13の長さ(乾燥ブースの長さに略等しい)は570cmであり、比較試験に用いた衣類は、ウール50%、ポリエステル50%混紡繊維製のスーツである。 [0061](試験例1)乾燥ブース11内の温風雰囲気温度を86℃にし、ハンガーフック間隔を35cm、生産されたままの(洗濯或いはクリーニングしない)衣類の乾燥ブース11内への保持時間(乾燥時間)を24分にして、乾燥後、ナイロン製の包装袋に入れて脱気シールした。 [0062](試験例2)乾燥ブース11内の温風雰囲気温度を90℃にし、ハンガーフック間隔を30cm、生産されたままの(洗濯或いはクリーニングしない)衣類の乾燥ブース11内への保持時間を20分にして、乾燥後、ナイロン製の包装袋に入れて脱気シールした。 [0063](試験例3)乾燥ブース11内の温風雰囲気温度を94℃にし、ハンガーフック間隔を25cm、生産されたままの(洗濯或いはクリーニングしない)衣類の乾燥ブース11内への保持時間を16分にして、乾燥後、ナイロン製の包装袋に入れて脱気シールした。 [0064](比較例1)乾燥ブース11内の温風雰囲気温度を90℃にし、ハンガーフック間隔を15cm、生産されたままの(洗濯或いはクリーニングしない)衣類の乾燥ブース11内への保持時間を35分にして、乾燥後、ナイロン製の包装袋に入れて脱気シールした。 [0065](比較例2)乾燥ブース11内の温風雰囲気温度を85℃にし、ハンガーフック間隔を15cm、生産されたままの(洗濯或いはクリーニングしない)衣類の乾燥ブース11内への保持時間を50分にして、乾燥後、ナイロン製の包装袋に入れて脱気シールした。 [0066](比較例3)乾燥ブース11内の温風雰囲気温度を90℃にし、ハンガーフック間隔を30cm、生産されたままの(洗濯或いはクリーニングしない)衣類の乾燥ブース11内への保持時間を10分にして、乾燥後、ナイロン製の包装袋に入れて脱気シールした。 [0067]包装袋に入れて脱気シールして1週間後、(株)シロ産業製湿度計(MG14HT-492SDM)で常温時の包装袋内の湿度を測定した。 [0068]測定結果を表1に示す。表1中の搬出時間は、乾燥ブース11の一方の端部から所定の間隔を空けて吊り下げられた衣類が他方の端部に移動して搬出される時間間隔である。すなわち、搬出時間=(所定の間隔)/(衣類移動速度)である。 [0069]表1から試験例1?3ではいずれも相対湿度が5%RH以下であることがわかる。それに対して、比較例1?3ではいずれも相対湿度が5%RHを越えることがわかる。 [0070][表1] 」 (2)引用発明 上記(1)及び図面からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「衣類をドライパックして輸送するための衣類のドライパック方法であって、 縫製工場で生産された衣類を洗濯或いはクリーニングせずにハンガーに吊り下げた状態で温風を用いた乾燥装置で乾燥する乾燥工程と、 前記乾燥装置で乾燥された衣類を気密性袋にパック装置でパックするパック工程と、 前記パック工程でパックした衣類を重ねて輸送する輸送工程と、を備え、 前記乾燥装置で乾燥された衣類を前記パック装置で前記気密性袋にパックした後の常温時の気密性袋内の相対湿度が5%RH以下である、 衣類のドライパック方法。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。 オ.「次の組成を有する錠剤状の脱酸素剤18gを第1表に記載した包装材よりなる袋中に密封し,その表面に所定の孔をあけた。…… 第1表(当審注:第1表の一部を抜粋) …… *1 KOP/PE……二軸延伸したポリプロピレンフイルムにポリ塩化ビニリデンをコーテイングし,更にポリエチレンフイルムをラミネートした三層フイルム(2ページ右下欄7行?3ページ右上欄5行)」 したがって、引用文献2には次の技術的事項(以下、「引用文献2技術」という。)が記載されているといえる。 「KOPシートとPEシートのラミネートシールを包装材として用いること。」 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。 カ.「こんにちは。 オーダースーツ専門店スプレ-モの清水です。 本日ご紹介するのは、ゼニア社の夏の新素材の「クールエフェクト」です。…… 従来のトロピカルの素材と比較してみますと、まず目付が220g/mから190g/mに、糸の番手も70から82に細くなりました。…… (2010年4月3日の「ゼニア新素材 Cool Effect(クールエフェクト)の項目)」 衣料の技術分野においては、1.5m×1m当たりの生地の重量を「目付」と呼ぶことが一般的である。 したがって、引用文献3には次の技術的事項(以下、「引用文献3技術」という。)」が記載されているといえる。 「夏物衣類用として、1.5m×1m当たりの重量が190gの生地を用いること。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と、引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア.技術常識を考慮すると、引用発明において、衣類を「輸送」する期間中、衣類が輸送車等の輸送手段内においてドライパックされた状態で保管されていることが理解できる。したがって、引用発明における「衣類をドライパックして輸送するための衣類のドライパック方法」及び「衣類のドライパック方法」は、それぞれ本願発明1における「衣類をドライパックして保管するドライパック保管方法」及び「衣類のドライパック保管方法」に相当する。 イ.引用発明における「衣類」と、本願発明1における「夏物衣類」とは、「衣類」である点で共通する。 ウ.引用発明における「乾燥装置」は、「ハンガーに吊り下げた状態で温風を用い」て乾燥させる装置である。したがって、引用発明における「温風を用いた乾燥装置」は、本願発明1における「温風式立体乾燥装置」に相当する。また、引用発明の「縫製工場で生産された衣類を洗濯或いはクリーニングせずにハンガーに吊り下げた状態で温風を用いた乾燥装置で乾燥する乾燥工程」と本願発明1の「縫製工場で生産され洗濯或いはクリーニングせずにハンガーに吊り下げた状態の夏物衣類を温風式立体乾燥装置で乾燥する乾燥工程」とは「縫製工場で生産され洗濯或いはクリーニングせずにハンガーに吊り下げた状態の衣類を温風式立体乾燥装置で乾燥する乾燥工程」である点で共通する。 エ.引用発明において、乾燥装置で乾燥された衣類は、乾燥工程で乾燥された衣類であり、引用発明における「乾燥装置で乾燥された衣類を気密性袋にパック装置でパックするパック工程」と、本願発明1における「乾燥工程で乾燥された夏物衣類を気密性袋にパックするパック工程」とは、「乾燥工程で乾燥された衣類を気密性袋にパックするパック工程」である点で共通する。 オ.上記ア.及びイ.を考慮すると、引用発明における「衣類」と、本願発明1における「夏物衣類」とは、「衣類」である点で共通するから、引用発明における「パック工程でパックした衣類を重ねて輸送する輸送工程」と、本願発明1における「パック工程でパックされた夏物衣類を積載保管する保管工程」とは、「パック工程でパックされた衣類を積載保管する保管工程」である点で共通する。 カ.引用文献1の段落[0067]の記載から、引用発明における「気密性袋にパックした後の常温時の気密性袋内の相対湿度」は、「包装袋に入れて脱気シールして1週間後、(株)シロ産業製湿度計(MG14HT-492SDM)で測定した湿度」であることが分かる。一方、本願明細書段落【0063】の記載から、本願発明1における「気密性袋にパックした後の気密性袋内の相対湿度」も、「包装袋に入れて脱気シールして1週間後、(株)シロ産業製湿度計(MG14HT-492SDM)で測定した湿度」であることが分かる。 したがって、引用発明における「気密性袋にパックした後の常温時の気密性袋内の相対湿度」は、本願発明1における「気密性袋にパックした後の気密性袋内の相対湿度」に相当する。 キ.引用発明における「相対湿度が5%RH以下」と、本願発明1における「相対湿度が1.5?3.5%RH」とは、「相対湿度が所定の範囲内」である点で共通するから、引用発明の「前記乾燥装置で乾燥された衣類を前記パック装置で前記気密性袋にパックした後の常温時の気密性袋内の相対湿度が5%RH以下である」という事項と本願発明1の「前記乾燥工程で乾燥された夏物衣類を前記パック工程で前記気密性袋にパックした後の気密性袋内の相対湿度が1.5?3.5%RHであ」るという事項とは「前記乾燥工程で乾燥された衣類を前記パック工程で前記気密性袋にパックした後の気密性袋内の相対湿度が所定の範囲内」である点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「衣類をドライパックして保管するドライパック保管方法であって、 縫製工場で生産され洗濯或いはクリーニングせずにハンガーに吊り下げた状態の衣類を温風式立体乾燥装置で乾燥する乾燥工程と、 前記乾燥工程で乾燥された衣類を気密性袋にパックするパック工程と、 前記パック工程でパックされた衣類を積載保管する保管工程と、を備え、 前記乾燥工程で乾燥された衣類を前記パック工程で前記気密性袋にパックした後の気密性袋内の相対湿度が所定の範囲内である、 衣類のドライパック保管方法。」 <相違点> 本願発明1では、衣類が「夏物衣類」であって、かかる夏物衣類が「定尺幅1.5m×長さ1mの重量が220g以下の生地で縫製されてなる」ものであり、また、パックした後の気密性袋内の相対湿度が「1.5?3.5%RH」であるのに対し、 引用発明では、衣類が夏物衣類とはされておらず、かかる衣類の定尺幅1.5m×長さ1mの重量が不明であり、また、パックした後の気密性袋内の相対湿度が5%RH以下である点。 (2)相違点についての判断 引用文献1には、衣類をパックした後の気密性袋内の相対湿度を5%RH以下とすることは記載されているものの、定尺幅1.5m×長さ1mの重量が220g以下の生地で縫製されてなる夏物衣類に対して、パックした後の気密性袋内の相対湿度を1.5?3.5%RHとすることは記載も示唆もなく、さらには、衣類の生地の性質(単位幅×長さあたりの重量や厚さ)などに応じてパックした後の気密性袋内の相対湿度を最適化することについての記載も示唆もない。 また、引用文献2及び3にも、衣類のドライパック保管方法において、定尺幅1.5m×長さ1mの重量が220g以下の生地で縫製されてなる夏物衣類に対して、パックした後の気密性袋内の相対湿度を1.5?3.5%RHとすることは記載も示唆もない。 そして、本願発明1は、上記相違点に係る発明特定事項を備えることにより、「接着材の劣化が抑制され、夏物衣料でも積載保管による皺の発生が抑制される。(本願明細書の段落【0020】)」という効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2?4について 本願発明2?4は、本願発明1を引用して発明特定事項をさらに限定する発明であり、本願発明1が備える発明特定事項を全て備えている。したがって、本願発明2?4と引用発明とは、少なくとも前記相違点で相違する。そして、上記「1.(2)」で述べたとおり、この相違点により、本願発明1は、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、同様に、本願発明2?4も、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定について 原査定の拒絶の理由の概要は上記「第2」のとおりであるが、上記「第5」で述べたように、本願発明1?4は、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-03-25 |
出願番号 | 特願2013-212598(P2013-212598) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(D06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大内 康裕、横山 幸弘、長清 吉範 |
特許庁審判長 |
柿崎 拓 |
特許庁審判官 |
佐々木 芳枝 山村 和人 |
発明の名称 | 衣類のドライパック保管方法及びその方法で使用する温風式立体乾燥装置 |
代理人 | 大川 宏 |