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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01B
管理番号 1349967
審判番号 不服2017-15925  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-26 
確定日 2019-03-12 
事件の表示 特願2015-541784「軽量の電気ケーブル用ハイブリッドカーボンナノチューブシールド」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月15日国際公開,WO2014/074283,平成28年 2月 4日国内公表,特表2016-503563〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年(2013年)10月18日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年11月9日 米国,以下,「本願優先日」という。)を国際出願日とする出願であって,平成27年4月10日に国内書面とともに国際出願日における明細書,特許請求の範囲,図面及び要約書の翻訳文(以下,「本件明細書等」という。)が提出され,平成29年5月26日付け拒絶理由通知に対し,同年8月28日に意見書が提出されたが,同年9月4日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年10月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成30年10月15日に当審から審理終結通知が発送されたところ,同年10月25日に上申書が提出されたものである。

第2 平成29年10月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年10月26日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の請求項1の記載は,次のとおりである。
「ハイブリッドカーボンナノチューブ(CNT)シールドを含むケーブルであって,
少なくとも1つの導線,
少なくとも1つの導線の少なくとも1つを覆う少なくとも1つの絶縁層,
低周波のシールド機能のために構成された金属ホイル部,および,
高周波のシールド機能のために構成されたCNTテープ部,
を含む,ケーブル。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された(下線部は,補正箇所である。)。
「ハイブリッドカーボンナノチューブ(CNT)シールドを含むケーブルであって,
少なくとも1つの導線,
少なくとも1つの導線の少なくとも1つを覆う少なくとも1つの絶縁層,
低周波のシールド機能のために構成された金属ホイル部,および,
高周波のシールド機能のために構成されたCNTテープ部,
を含み,
前記少なくとも1つの導線の重量配分は27%であり,前記少なくとも1つの絶縁層の重量配分は37%であり,前記金属ホイル部,および前記CNTテープ部の重量配分は6%である,
ケーブル。」

2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「導線」,「絶縁層」,「金属ホイル部」及び「CNTテープ部」について,「ケーブル」における各要素の重量配分を特定するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は,上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2) 引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア) 原査定の拒絶の理由に引用された,米国特許出願公開第2008/0254675号明細書(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている(下線は当審で付加し,訳は当審で作成した。以下同様。)。

a 「ABSTRACT
A coaxial cable (10) includes at least one conducting wire (110), at least one insulating layer (120) coating a respective conducting wire (110), at least one shielding layer (130) surrounding the at least one insulating layer (120), and a single sheath (140) wrapping the at least one shielding layer (130). The shielding layer (130) includes a metal layer and a carbon nanotube film.」
(訳)「要約
同軸ケーブル(10)は,少なくとも1つの導線(110)と,それぞれの導線(110)を被覆する少なくとも1つの絶縁層(120)と,少なくとも1つの絶縁層(120)を取り囲む少なくとも1つのシールド層(130)と,少なくとも1つのシールド層(130)を覆う1つのシース(140)とを備えている。シールド層(130)は,金属層及びカーボンナノチューブフィルムを含む。」

b 「[0002] 1. Field of the Invention
[0003] The present invention relates to cables and, particularly, to a coaxial cable.」
(訳)「[0002] 1. 発明の分野
[0003] 本発明は,ケーブル,特に,同軸ケーブルに関するものである。」

c 「[0019] The present coaxial cable includes at least one conducting wire, at least one insulating layer, each insulating layer respectively surrounding a corresponding conducting wire, at least one shielding layer encompassing the at least one insulating layer, and a sheath wrapping the above-mentioned three parts thereof. The coaxial cable is, usefully, an electromagnetic interference (EMI) shield cable.」
(訳)「[0019] 本発明の同軸ケーブルは,少なくとも1つの導線と,それぞれ対応する導線を取り囲む少なくとも1つの絶縁層と,少なくとも1つの絶縁層を取り囲む少なくとも1つのシールド層と,上記3つの部分を覆うシースと,を含む。同軸ケーブルは,通常,電磁干渉(EMI)シールドケーブルである。」

d 「[0020] Referring to FIGS. 1 and 2 , a coaxial cable 10 , according to the first embodiment, is shown. The coaxial cable 10 includes a conducting wire 110 , an insulating layer 120 , a shielding layer 130 and a sheath 140 . The axis of the conducting wire 110 , the insulating layer 120 , the shielding layer 130 , and the sheath 140 is consistent (i.e., such elements are coaxial), and the arrangement thereof is, in turn, from center/inner to outer.」
(訳)「[0020] 図1及び図2を参照すると,第1の実施の形態による同軸ケーブル10が示されている。同軸ケーブル10は,導線110,絶縁層120,シールド層130及びシース140を含む。導電性ワイヤ110と,絶縁層120と,シールド層130,シース140の軸は一致しており(すなわち,これらの要素は同軸である。),その配置は,中央/内側から外側の順である。」

e 「[0023] Referring to FIG. 3 , the shielding layer 130 coating/encompassing the insulting layer 120 includes a metal layer 132 and a carbon nanotube film 134 . The metal layer 132 is deposited on the insulating layer 120 , and the carbon nanotube film 134 coats the metal layer 132 ; or the carbon nanotube film 134 is deposited on the insulating layer 120 , and the metal layer 132 coats the carbon nanotube film 134 . The metal layer 132 is, e.g., a metal film, a wound foil, a woven tape, or a braid.」
(訳)「[0023] 図3を参照すると,絶縁層120を被覆する/取り囲むシールド層130は,金属層132及びカーボンナノチューブフィルム134を備えている。金属層132は絶縁層120に付着され,カーボンナノチューブフィルム134が金属層132を被覆する,または,カーボンナノチューブフィルム134は絶縁層120に付着され,金属層132がカーボンナノチューブフィルム134を被覆する。金属層132は,例えば,金属フィルム,巻かれたホイル,織られたテープ,または編組である。」

f 「[0029] In the step (2), the first carbon nanotube film may be drawn out from the carbon nanotube array with a tool with a certain width, such as an adhesive tape. Specifically, the initial carbon nanotubes of the carbon nanotube array can be drawn out with the adhesive tape. As the carbon nanotubes are drawn out, the other carbon nanotubes are also drawn out due to the van der Waals attractive force between ends of adjacent carbon nanotubes, and then the first carbon nanotube film is formed. The carbon nanotubes in the first carbon nanotube film are substantially parallel to each other. The carbon nanotube film may, for example, have a length of several centimeters and a thickness of several microns.」
(訳)「[0029] 前記工程(2)において,前記第1のカーボンナノチューブフィルムは,一定幅のツール,例えば粘着テープを用いて前記カーボンナノチューブアレイから引き出すことができる。具体的には,カーボンナノチューブアレイの初期カーボンナノチューブを粘着テープで引き出すことができる。カーボンナノチューブが引き出されると,隣接するカーボンナノチューブの端部間のファンデルワールス引力により他のカーボンナノチューブも引き出され,第1のカーボンナノチューブフィルムが形成される。第1のカーボンナノチューブフィルム中のカーボンナノチューブは,実質的に互いに平行である。カーボンナノチューブフィルムは,例えば,数センチメートルの長さ及び数ミクロンの厚さを有することができる。」

(イ) 引用発明
上記(ア)によれば,引用文献1には,以下の発明が記載されている(以下,「引用発明」という。)。

(引用発明)
「少なくとも1つの導線110,
それぞれ対応する導線110を取り囲む少なくとも1つの絶縁層120,
少なくとも1つの絶縁層120を取り囲む少なくとも1つのシールド層130,
上記3つの部分を覆うシース140,を含む同軸ケーブルであって,
シールド層130は,金属層132及びカーボンナノチューブフィルム134を備えており,金属層132は巻かれたホイルである同軸ケーブル。」

イ 引用文献2
(ア) 原査定の拒絶の理由に引用された,特表2002-513988号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

a 「【0001】
発明の分野
本発明は,シールドケーブルすなわち遮蔽ケーブルに関し,より詳細には,無線周波信号の伝送のための非編組ドロップケーブルに関する。」

b 「【0002】
発明の背景
ケーブルテレビジョン信号などの無線周波信号の伝送において,ドロップケーブルは,一般に,中継線及び配線ケーブルから,直接に加入者の家庭に信号を供給する際の最終リンクとして用いられる。従来のドロップケーブルは,信号を伝送する絶縁心線と,信号漏洩及び外部信号からの干渉を阻止する,心線を包囲する導電性シールドとを含む。さらに,ドロップケーブルは,一般に,湿気がケーブルに侵入することを阻止する外側保護ジャケットを含む。ドロップケーブルの1つの共通の構造は,絶縁心線,心線を包囲する,金属層及び重合体層から成る積層テープ,編組金属ワイヤ層,及び外側保護ジャケットを含む。
【0003】
従来の編組ドロップケーブルにおける1つの問題点は,このようなドロップケーブルは,標準コネクタに取付けるのが困難であることにある。特に,編組シールドは,切断して標準コネクタに取付けることが困難であり,通常,ケーブルの接続作業の間に,ケーブルジャケットの周りを覆うように折返されなければならない。その結果,金属編組は,取付け時間及びコストを増加させる。さらに,金属編組を形成することは,一般に,時間がかかるプロセスであり,ケーブルの製造率を制限する。従って,従来のドロップケーブルから,編組を除去する試みが,工業界に存在する。」

c 「【0005】
発明の概要
本発明は,コネクタに容易に取付けることが可能であり,いったん,接続されると,コネクタ引離しを阻止するために,コネクタを適切に係留することが可能である非編組ドロップケーブルを提供する。さらに,本発明は,信号漏洩及び外部信号からの干渉を阻止するために,充分な遮蔽能力を有するドロップケーブルを提供する。」

d 「【0014】
ケーブル10は,さらに,ケーブルコア12を包囲している,接着剤層25によりケーブルコア12に接着されている第1すなわち内側シールドテープ18を含む。第1のシールドテープ18の複数の長手方向エッジは,通常,互いに重畳され,このようにして,100%カバーされることが,第1のシールドテープにより実現される。第1のシールドテープ18は,例えば,金属箔薄層などの,少なくとも1つの導電層を含む。好ましくは,第1のシールドテープ18は,重合体層26を含む接着積層テープであり,金属層28と30とが,重合体層の互いに反対の側に,接着されている。重合体層26は,通常,ポリオレフィン(例えばポリプロピレン)またはポリエステルフィルムである。金属層28及び30は,通常,アルミニウム箔薄層である。曲げる際のアルミニウムの亀裂を阻止するために,アルミニウム箔層は,一般に,重合体層と同一の引張特性及び伸び特性を有するアルミニウム合金から形成されることが可能である。この構造を有するテープは,Neptcoから,HYDRA7(商標)で,市販されている。さらに,第1のシールドテープ18は,好ましくは,第1のシールドテープの1つの表面に被着されている接着剤を含み,これにより,接着剤層25が,第1のシールドテープとケーブルコア12との間に,形成される。・・・」

(イ) 引用文献2記載事項
上記(ア)によれば,引用文献2には,以下の事項が記載されている。
「金属箔薄層を含むシールドテープを含むケーブル。」

ウ 周知文献3
(ア) 本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特表2011-524604号公報(以下,「周知文献3」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

a 「【技術分野】
【0001】
本発明はケーブルの形成,より詳細には,ナノ構造体ベースの材料から作った導電部材および実質的に低い結合抵抗を提供できる材料から作ったシールド層に関する。」

b 「【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは,高い破断点歪みと比較的高い引張係数(または引張弾性係数)を含む,極めて高い引張強度を有することが知られている。カーボンナノチューブは,また高い耐疲労性,耐照射損傷性および耐熱性を示し得る。そのために,カーボンナノチューブの複合材料への添加は,複合材料の引張強度および剛性を増加させることが可能である。」

c 「【0026】
導電部材42を,炭素,銅,銀,ボロンナイトライド,ボロン,MoS2,またはこれらの組み合わせの1つから作ってよい。更に,導電部材42を作ることができる材料は,1つの実施形態において,例えば,熱分解炭素被膜黒鉛(pyrograph)ファイバ由来のもののような,任意の種類の黒鉛を含むことができる。導電部材42を,AC,DC,低出力,または高出力のような電気信号を伝送するように設計してよい。1つの実施形態では,導電部材42は,構造体全体の約1?約3重量パーセントの範囲であってよい。当然ながら,この範囲は説明の目的のためだけのものであって,より小さなまたはより大きな範囲を用いることができる。」

d 「【0040】
・ケーブルの形成
本発明のケーブルを形成するように,導電部材42はシールド層44を設けてよい。1つの実施形態において,シールド層44において,ナノ構造体ベースの材料から作ってよい。1つの実施態様において,ナノ構造体ベースの材料は,例えばカーボンナノチューブから作った糸,テープ,ケーブル,リボンまたはシートなど,導電カーボンナノチューブから作ったものでありうる。一方,該材料が,電気伝導性および/または熱伝導性を有することができるのであれば,シールド層を,カーボンナノチューブから作ったシートから作ってよい。1つの実施形態において,シールド層44は,構造体全体の約4?約7重量パーセントの範囲であってよい。当然ながら,この範囲は,説明の目的のためだけのものであり,より小さいまたはより大きい範囲を用いることができる。1つの実施形態において,シールド層44を導電部材42に連結する場合,シールド層44は,起源からの大電流を,実質的な劣化なしで,導電部材42に沿って外部回路へ向かわせることができる。これは,本発明のシールド層44を規定するナノチューブが,RF信号または他の電磁波もしくは信号が導電部材42へまたは導電部材42から漏れることを最小限に抑えるように,作用できるからである。当然ながら,RF信号または他の電磁波もしくは信号が,導電部材42へまたは導電部材42から漏れることを最小限に抑えるように作用できる,他の市販の任意の材料をシールド層44の適所に用いてもよい。
【0041】
所望の程度まで,同軸ケーブル40は,該同軸ケーブル40の導電性を向上させ,抵抗を減少させるように,絶縁体を含むこともできる。1つの実施形態において,同軸ケーブル40は,導電部材42とシールド層44との間に囲むように配置した少なくとも1つの絶縁層46を含んでよい。絶縁層46を,シート26から切断したカーボンナノチューブのストリップから作ってよく,絶縁層46は,構造体全体の約33?37重量パーセントの範囲であってよい。1つの実施形態では,同軸ケーブル40は,シールド層44の周囲を囲むように配置した第2絶縁層48を更に含んでもよい。第2絶縁層48を,シート26から切断したカーボンナノチューブのストリップから作ってよく,第2絶縁層48は,構造体全体の約55?約60重量パーセントの範囲であってよい。当然ながら,これらの範囲は説明の目的のためだけのものであって,より小さいまたはより大きい範囲を用いることができる。更に,他の任意の市販の絶縁材料を,絶縁層46,48の適所に用いてもよい。」

(イ) 周知文献3記載事項
上記(ア)dによれば,周知文献3には,以下の事項が記載されている。
「カーボンナノチューブから作ったテープによるシールド層を設けたケーブル。」

また,上記(ア)c及びdによれば,周知文献3には,以下の事項が記載されている。
「構造体全体に対し,導電部材を約1?約3重量パーセントの範囲,絶縁層を約33?37重量パーセントの範囲,カーボンナノチューブから作ったテープによるシールド層を約4?約7重量パーセントの範囲としたケーブル。」

エ 周知文献4
(ア) 本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特開昭62-172799号公報(以下,「周知文献4」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

a 「〔産業上の利用分野〕
本発明は,電磁波を出して,いわゆる電磁波障害を発生させる電子機器,たとえばTV,タイプライター,NC工作機,乗車券自動販売機,パソコン等に取付けられて電磁波エネルギーを反射,吸収し,これによってエネルギーの伝播を妨げ,伝播エネルギーを減衰させる電磁波シールド材に関するものである。」

b 「上記表1の可撓性黒鉛シートとは,天然の黒鉛粒子を酸処理したのち,原容積の少なくとも25倍以上に膨張させ,重畳する炭素積層間を開放したものを,接着剤,添加剤を使用することなく,シート状に成形したものである。このため,黒鉛本来の性質をそっくりそのまま保持する上に,可撓性という従来の黒鉛に期待できなかった特殊な性能を持つものである。
従って,可撓性黒鉛シートからなる電磁波シールド材は,軽く柔軟性もあり切断曲げ加工が容易で,電子機器ケースに凹凸があっても,その凹凸に沿って張り付けることができ,また表1から明らかなように,かなり良いシールド効果を発揮するものである。しかし,その反面,次のような問題点を有する。即ち,可撓性黒鉛シート0.38tのシールド効果と周波数との関係は第4図のようになり,低周波域ではシールド効果がアルミ箔0.05tよりも低い。・・・
そこで本発明者は研究の結果,可撓性黒鉛シートに金属箔を接着させれば,可撓性黒鉛シート特有の可撓性を損なわず,しかも,上記問題点を解消することができることを見出した。本発明はかかる見地に基づくものである。」

c 「〔問題点を解決するための手段〕
上記問題点を解決するため,本発明の電磁波シールド材は,可撓性黒鉛シートの片面又は両面に金属箔を接着してなるものである。」

d 「〔実施例〕
以下,本発明の第1の実施例を第1図に基づいて説明する。この実施例の電磁波シールド材は,可撓性黒鉛シート1の両面に金属箔2を接着してなるものである。金属箔2は,アルミニウム,銅,亜鉛,鉄,ステンレス等を圧延又は電解法で製作したものである。可撓性黒鉛シート1と金属箔2とは接着剤で接着する。・・・
上記第1の実施例では,可撓性黒鉛シート1の両面に金属箔2を接着させたが,第2図に示す如く,その片面にだけ金属箔2を接着させてもよい。」

e 「〔第2の実施例〕
第1の実施例に基づいて,可撓性黒鉛シート0.38tにアルミ箔0.05tを両面接着したもの(A)と,第2の実施例に基づいて,可撓性黒鉛シート0.38tにアルミ箔0.05tを片面接着したもの(B)のシールド効果と周波数の関係は第3図のようになる。この第3図から明らかなように,可撓性黒鉛シートとアルミ箔との相乗効果により,低周波域から高周波域まで広い範囲で優れたシールド効果を示している。・・・」

f 「〔発明の効果〕
以上述べた如く,本発明によれば,可撓性黒鉛シートは勿論のこと,金属箔も可撓性を有するから,電磁波シールド材を電子機器ケース等の凹凸に沿って容易に張り付けることができる。また黒鉛シートの問題点であった低周波域でのシールド効果の低さを金属箔のシールド効果により改善するものであって,両者の相乗効果により低周波域から高周波域まで広い範囲で優れたシールド効果を得ることができるものである。しかも,本発明に係る電磁波シールド材は,全体として軽く,厚さを大きくとれ,柔軟性もあり,かつ圧縮復元性に優れているので,電磁波シールド用補助材としての電磁波シールド材としても充分に適用でき,優れた効果を示す。・・・」

(イ) 周知文献4記載事項
上記(ア)によれば,周知文献4には,以下の事項が記載されている。
「可撓性黒鉛シートのシールド効果は,低周波域ではアルミ箔よりも低いため,可撓性黒鉛シートに金属箔を接着し,両者の相乗効果により低周波域から高周波域まで広い範囲で優れたシールド効果を有するように構成した電磁波シールド材。」

(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明の「同軸ケーブル」は「ケーブル」の一種である。

(イ) 引用発明の「同軸ケーブル」が含む「シールド層130」は「カーボンナノチューブフィルム134」を備えているから,引用発明の「同軸ケーブル」は「カーボンナノチューブ(CNT)シールドを含むケーブル」であるということができる。

(ウ) 引用発明の「導線110」及び「絶縁層120」は,本件補正発明の「導線」及び「絶縁層」に相当する。

(エ) 引用発明の「金属層132」は「巻かれたホイル」であるから,本件補正発明の「金属ホイル部」に相当する。

(オ) 引用発明の「カーボンナノチューブフィルム134」と,本件補正発明の「CNTテープ部」は,「CNT構造体」である点で共通する。

イ したがって,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。

(一致点)
「カーボンナノチューブ(CNT)シールドを含むケーブルであって,
少なくとも1つの導線,
少なくとも1つの導線の少なくとも1つを覆う少なくとも1つの絶縁層,
金属ホイル部,および,
CNT構造体,
を含む,ケーブル。」

(相違点1)
「カーボンナノチューブ(CNT)シールドを含むケーブル」について,本件補正発明は,「ハイブリッドカーボンナノチューブ(CNT)シールド」を含んでいるのに対し,引用発明は,「ハイブリッドカーボンナノチューブ(CNT)シールド」を含んでいるか否か不明である点。

(相違点2)
「金属ホイル部」について,本件補正発明は,「低周波のシールド機能のために構成され」ているのに対し,引用発明は,「低周波のシールド機能のために構成され」ているのか不明である点。

(相違点3)
「CNT構造体」について,本件補正発明は,「高周波のシールド機能のために構成されたCNTテープ部」であるのに対し,引用発明は,「カーボンナノチューブフィルム134」であって,「高周波のシールド機能のために構成され」ているのか不明である点。

(相違点4)
本件補正発明の「ケーブル」の各要素の重量配分は,「前記少なくとも1つの導線の重量配分は27%であり,前記少なくとも1つの絶縁層の重量配分は37%であり,前記金属ホイル部,および前記CNTテープ部の重量配分は6%である」のに対し,引用発明の「同軸ケーブル」の各要素は,どのような重量配分であるのか不明である点。

(4) 判断
以下,相違点について判断する。
ア 相違点1について
本件補正発明の「ハイブリッドカーボンナノチューブ(CNT)シールドを含むケーブル」について,特許請求の範囲の記載だけでは,その技術的意義を一義的に明確に理解できるとはいえないから,本件明細書等の発明の詳細な説明を参酌すると,以下の記載がある。

「【0005】
軽いケーブルの製造に成功する鍵は,シールド機能,すなわち,シールド効果のために金属ホイルと,第2の遮蔽機能と同様に機械的な機能,すなわち,ホイルを適所で保持するためにカーボンナノチューブ(CNT)テープとを採用したハイブリッドな機械的で電気的な構造を使用することを含んでいる。・・・」
「【0017】
軽量のケーブルを実現するための我々の革新的な概念は,従来のケーブル布線の金属編組シールド部のかなりの割合を,薄い金属ホイルと軽量のカーボンナノチューブとを含むハイブリッド構造に取り替えることであり,これは,高周波でシールドの効果を改善しつつ,金属ホイルの機械強化部品として役立つだろう。」
「【0019】
組み合わせた金属ホイル/CNTテープのシールドの本発明の実施形態に係るシールドの効果は,いずれかのシールド部のシールド効果をそれぞれ上回るが,優れた電気的および機械的な性能を提供し,重量を著しく減少させる。軽量のケーブルを成功させる鍵としては,低周波のシールド機能,すなわち,低周波のシールド効果(LF-SE)のために,金属ホイルを用いるハイブリッドの機械的および電気的な構造と,高周波のシールド機能(HF-SE)と優れた機械的機能,すなわち,ホイルを適所に保持するために,カーボンナノチューブ(CNT)テープとを使用することが挙げられる。」
「【0025】
ハイブリッドの機械的および電気的な構造は,有効なシールドによる低周波シールド機能のために金属ホイルを使用し,高周波シールド機能にCNTテープを使用する。・・・」
「【0056】
図4Aで示されるように,軽量化にもかかわらず,同軸ケーブル(100)が導電性ケーブル(100)の全長に沿ってCNTテープ部(150)を含む設計には不利な点がある。・・・しかしながら,図4Aで見られるように,CNTテープの層の数にかかわらず,その全長に沿ってCNTテープ部(150)を含む同軸ケーブル(100)は,低周波で,例えば,約50MHzから約200MHzの間の周波数で,シールド効果の不足に直面する。
【0057】
図4Bで示されるように,低周波でのこの不足は,本発明の実施形態にしたがって,CNTテープ部(150)と金属ホイル部(140)の両方を含むハイブリッドの同軸ケーブルを製作することで取り除くことができる。」

これらの記載によれば,本件明細書等の発明の詳細な説明には,「カーボンナノチューブ(CNT)テープ」を採用すると,ケーブルの軽量化を図ることができるが,その場合,低周波におけるシールド効果の不足が生じるため,低周波シールド機能を有する「金属ホイル」を組み合わせることによって,ケーブルを製作したことが理解でき,「ハイブリッド」とは,上記「カーボンナノチューブ(CNT)テープ」と上記「金属ホイル」を組み合わせた態様を示すものであると理解できる。
そうすると,本件補正発明における「ハイブリッドカーボンナノチューブ(CNT)シールドを含むケーブル」とは,「CNTテープ部」と「金属ホイル部」の組み合わせによるシールド機能を有するケーブルであると解釈することができる。
これに対し,引用発明の「同軸ケーブル」の「シールド層130」は,後記イのとおり,本件補正発明の 「CNTテープ部」及び「金属ホイル部」に相当する構成を備えているといえるから,引用発明の「同軸ケーブル」も,「ハイブリッドカーボンナノチューブ(CNT)シールドを含むケーブル」を含んでいるということができる。
したがって,相違点1は実質的な相違点とはいえない。

イ 相違点2及び3について
前記(2)エ(イ)のとおり,周知文献4には,「可撓性黒鉛シートのシールド効果は,低周波域ではアルミ箔よりも低いため,可撓性黒鉛シートに金属箔を接着し,両者の相乗効果により低周波域から高周波域まで広い範囲で優れたシールド効果を有するように構成した電磁波シールド材」が記載されており,当該記載から,金属箔は,低周波でのシールド機能のために用いられているといえる一方,炭素(カーボン)からなる可撓性黒鉛シートは,高周波のシールド機能のために用いられているということができる。また,周知文献4が,本願優先日の25年以上前に公開されたものであることに鑑みると,このようなシールド効果は,本願優先日時点において,技術常識であったと認められる。
そこで,これを前提として検討するに,上記可撓性黒鉛シートと引用発明のカーボンナノチューブフィルム134は,ともに炭素からなるものであるから,引用発明の「カーボンナノチューブフィルム134」と巻いたホイルである「金属層132」からなる「シールド層130」も上述のシールド効果を有しているといえる。そうすると,引用発明においても,「金属ホイル部(金属層132)」は,「低周波のシールド機能のために構成された」ものであるといえ,「CNT構造体(カーボンナノチューブフィルム134)」は,「高周波のシールド機能のために構成された」ものであるということができる(もっとも,本件補正発明も引用発明も,金属ホイル部とカーボンナノチューブによるシールド機能を有するものであるから,このことからも,両者は同様のシールド機能を有しているということもできる。)。
なお,引用発明は,「カーボンナノチューブフィルム134」の形状が,テープであると特定されていないが,前記(2)ア(ア)fのとおり,引用文献1には,「前記第1のカーボンナノチューブフィルムは,一定幅のツール,例えば粘着テープを用いて前記カーボンナノチューブアレイから引き出すことができる。」,「カーボンナノチューブフィルムは,例えば,数センチメートルの長さ及び数ミクロンの厚さを有することができる。」と記載されており,その形状はテープであるということもできるし,前記(2)イ(イ)や同ウ(イ)のとおり,シールドテープを含むケーブルは周知技術であるといえるから,引用発明の「カーボンナノチューブ134」の形状をテープとすることは,当業者であれば容易に想到し得るものである。

ウ 相違点4について
ケーブルの各要素の重量配分をどのように設定するかは,ケーブルに求められる重量,強度,費用等に応じて,適宜決定し得る設計的な事項にすぎず,相違点4に係る重量配分とすることは,当業者であれば容易に想到し得るものである(なお,本件明細書等の【0064】ないし【0066】,【図5】に記載された「RG400」は,同軸ケーブルの規格の一種であると認められ,そのようなケーブルにおいて,ある要素を置換してその要素の重量が変われば,他の各要素を含めた全体の重量配分が変わることは明らかである。そして,規格によって求められる電気的特性を実現しようとすれば,置換した要素以外の各要素の材料や寸法は自ずと決められるのであり,その結果として定まる変更された重量配分の値そのものに技術的意味はない。)。
また,前記(2)ウ(イ)のとおり,周知文献3には,「構造体全体に対し,導電部材を約1?約3重量パーセントの範囲,絶縁層を約33?37重量パーセントの範囲,カーボンナノチューブから作ったテープによるシールド層を約4?約7重量パーセントの範囲としたケーブル」が記載されており,カーボンナノチューブから作ったテープによるシールド層の重量配分を,ケーブル全体からみて,一桁程度の量に設定することも記載されているから,引用発明において,そのような量に設定することに格別の困難性はない。

エ したがって,本件補正発明は,引用文献1及び2に記載された発明並びに周知文献3及び4に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) 本件補正についてのむすび
以上のとおり,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年10月26日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,本件明細書等の特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし22に係る発明は,本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。


引用文献1:米国特許出願公開第2008/0254675号明細書
引用文献2:特表2002-513988号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)ア及びイに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「ケーブル」における各要素の重量配分について,「前記少なくとも1つの導線の重量配分は27%であり,前記少なくとも1つの絶縁層の重量配分は37%であり,前記金属ホイル部,および前記CNTテープ部の重量配分は6%である」ことを削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用文献1及び2に記載された発明並びに周知文献3及び4に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様に,引用文献1及び2に記載された発明並びに周知文献4に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
なお,請求人は,審理終結の通知をした後に上申書を提出し,審理の再開を申立てているが,当該上申書の内容を検討しても,審理再開の必要は認められない(審判便覧42-00「審理の終結及び再開」参照。)。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-10-11 
結審通知日 2018-10-15 
審決日 2018-10-26 
出願番号 特願2015-541784(P2015-541784)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01B)
P 1 8・ 121- Z (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 加藤 浩一
梶尾 誠哉
発明の名称 軽量の電気ケーブル用ハイブリッドカーボンナノチューブシールド  
代理人 清原 義博  
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