• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1349985
審判番号 不服2017-13217  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-06 
確定日 2019-03-14 
事件の表示 特願2015-230622「偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開、特開2016-191904〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成27年11月26日(優先権主張 平成27年3月30日(以下、「優先日」という。))を出願日とする出願であって、平成28年9月29日付けで拒絶理由が通知され、同年11月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月17日付けで拒絶理由が通知され、同年3月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月29日付けで拒絶査定がなされ、同年9月6日付けで本件拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。
その後、当審において平成30年6月28日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月3日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本件発明
本件出願の請求項1?6に係る発明は、平成30年9月3日付けの手続補正書により補正(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は次のとおりのものである。

「偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを備える偏光板であって、
前記偏光フィルムは、厚みが10μm以下でありかつ単位膜厚あたりの突刺し強度が5.8gf/μm以上であり、
前記偏光板の端面が、偏光板の厚み方向に対して15°以上90°以下の角度で切削傷を有し、
前記単位膜厚あたりの突刺し強度は、突刺し治具が通過することができる直径15mm以下の円形の孔の開いた2枚のサンプル台の間に、偏光フィルムの突刺し試験用のサンプルを挟み、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.33cm/秒で、前記サンプルの主面の法線方向から前記突刺し治具を突刺し、前記サンプルの吸収軸に沿って前記サンプルが一箇所裂けた際の強度を前記サンプル12枚について測定した平均値を、前記サンプルの膜厚で除した値であり、
前記突刺し治具は、円柱状の棒であり、前記サンプルに接する先端が球形または半球形であって、先端の直径が1mmφであり先端の曲率半径が0.5Rである突刺し針を備える、偏光板。」

第3 当審拒絶理由の概要
本件補正前の請求項1に対する当審拒絶理由は、概略以下のとおりである。

●理由1(明確性)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

1 請求項1の記載の「単位膜あたりの突刺し強度」が、(1)本件明細書の段落【0203】に記載の条件で求められたものであるのか、あるいは(2)段落【0023】、【0024】において好ましいとされている、「直径が0.5mmφ以上であり、5mmφ以下」の「先端の球形部又は半球形部」、「0Rよりも大きく、0.7Rよりも小さい」「曲率半径」の突刺し治具を用いて、「0.05cm/秒以上であり、0.5cm/秒以下」の突刺し速度で、「5個以上の」偏光フィルムの試験片について行って求められたものであるのか不明である。
また、偏光フィルムのどの方向(軸)に沿って裂けるときの強さであるのか不明である。また、測定に際し、突刺し治具が通過することができる直径15mm以下の円形の穴の開いた2枚のサンプル台の間に偏光フィルムを挟んで行っているかどうか不明である。
さらに、突刺し治具先端の球形部又は半球形部の直径、曲率半径、突刺し速度、サンプル数、温度条件等のどのような値の組み合わせに基づいて「単位膜あたりの突刺し強度」が求められたものであるのか不明である。

2 加えて、発明の詳細な説明の段落【0025】の「単位膜厚あたりの突刺し強度は、偏光フィルムを製造する際の延伸倍率を下げることにより、又は乾燥処理を50?80℃、より好ましくは50?70℃程度の高温で行うことにより、高くすることができる。」との記載によれば、「単位膜厚あたりの突刺し強度」は、乾燥状態により影響されると把握されるところ、偏光フィルムの乾燥状態は、長尺の偏光フィルムあるいは偏光板製造後の、偏光フィルムあるいは偏光板としての保管時や(長尺のものから枚葉体への)切断後あるいは端面加工後における温度、湿度などの周囲環境に応じ時間の経過とともに変化することは技術常識である。そうすると、該周囲環境に応じて乾燥状態が変化した結果、「単位膜厚あたりの突刺し強度」も変わることになるため、請求項1の記載の「単位膜あたりの突刺し強度」が、いつの時点で測定されたのか不明である。

3 以上のとおり、請求項1の記載の「単位膜あたりの突刺し強度」が不明である。また、その結果、「厚みが10μm以下でありかつ単位膜厚あたりの突刺し強度が5.8gf/μm以上であ」るという事項により特定される「偏光フィルム」が不明である。
よって、請求項1に係る発明は明確でない。

●理由2(進歩性)
本件出願の請求項1に係る発明は、本件出願の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の引用例1?7に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(引用例等一覧)
引用例1:国際公開第2013/114612号
引用例2:特開2007-223021号公報
引用例3:特開2001-343522号公報
引用例4:特開2013-156623号公報
引用例5:特開2012-123229号公報
引用例6:特開2014-174265号公報
引用例7:特開2012-133296号公報

第4 当審拒絶理由の「●理由1(明確性)」についての判断
1 本件発明は、「偏光板」が備える「偏光フィルム」に関し、「厚みが10μm以下でありかつ単位膜厚あたりの突刺し強度が5.8gf/μm以上であり」、「単位膜厚あたりの突刺し強度」は、「突刺し治具が通過することができる直径15mm以下の円形の孔の開いた2枚のサンプル台の間に、偏光フィルムの突刺し試験用のサンプルを挟み、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.33cm/秒で、前記サンプルの主面の法線方向から前記突刺し治具を突刺し、前記サンプルの吸収軸に沿って前記サンプルが一箇所裂けた際の強度を前記サンプル12枚について測定した平均値を、前記サンプルの膜厚で除した値であり、前記突刺し治具は、円柱状の棒であり、前記サンプルに接する先端が球形または半球形であって、先端の直径が1mmφであり先端の曲率半径が0.5Rである突刺し針を備える」との発明特定事項を有している。

2 本件補正により請求項1の記載が補正された結果、請求項1の記載において、「単位膜厚あたりの突刺し強度」は、「突刺し治具が通過することができる直径15mm以下の円形の孔の開いた2枚のサンプル台の間に、偏光フィルムの突刺し試験用のサンプルを挟み、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.33cm/秒で、前記サンプルの主面の法線方向から前記突刺し治具を突刺し、前記サンプルの吸収軸に沿って前記サンプルが一箇所裂けた際の強度を前記サンプル12枚について測定した平均値を、前記サンプルの膜厚で除した値」であって、「前記突刺し治具」とは、「円柱状の棒であり、前記サンプルに接する先端が球形または半球形であって、先端の直径が1mmφであり先端の曲率半径が0.5Rである突刺し針を備える」ものとなり、その定義が明確になった。

3 しかしながら、本件補正後の請求項1の記載において、「偏光フィルム」の「単位膜あたりの突刺し強度」がいつの時点で測定されたものであるのか依然として不明である。

4 「単位膜あたりの突刺し強度」について、本件明細書には、以下の事項が記載されている(下線は、当合議体が付したものである。)。
(1) 「【0021】
本発明では、偏光フィルムとして、単位膜厚あたりの突刺し強度が5.8gf/μm以上であるものを採用する。この単位膜厚あたりの突刺し強度は、偏光フィルムに対して突刺し治具を垂直に突き刺し、その延伸軸(吸収軸)に沿って偏光フィルムが裂けるときの強さのことであり、例えば、ロードセルを備えた圧縮試験機で測定することができる。圧縮試験機の例としては、(株)カトーテック社製のハンディー圧縮試験機“KES-G5型”、(株)島津製作所製の小型卓上試験機“EZ Test”などが挙げられる。
【0022】
測定に用いる偏光フィルムは保護フィルムを積層して偏光板化する前のものでも、保護フィルムが接着剤等で積層された偏光板から保護フィルムを除去したものでもよい。
・・・略・・・
【0025】
単位膜厚あたりの突刺し強度は、偏光フィルムを製造する際の延伸倍率を下げることにより、又は乾燥処理を50?80℃、より好ましくは50?70℃程度の高温で行うことにより、高くすることができる。」

(2) 「【0061】
(製造方法〔a〕)
・・・略・・・
【0064】
一軸延伸は、周速の異なるロール間で行ってもよいし、熱ロールを使用して行ってもよい。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、4?17倍程度であり、好ましくは4.5倍以上、また好ましくは8倍以下である。
・・・略・・・
【0071】
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は通常、30?100℃程度であり、50?80℃が好ましい。乾燥処理の時間は通常、60?600秒程度であり、120?600秒が好ましい。
【0072】
乾燥処理によって、偏光フィルムの水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は通常、5?20重量%であり、8?15重量%が好ましい。水分率が5重量%を下回ると、偏光フィルムの可撓性が失われ、偏光フィルムがその乾燥後に損傷したり、破断したりする場合がある。また、水分率が20重量%を上回ると、偏光フィルムの熱安定性に劣る場合がある。
【0073】
製造方法〔a〕では、延伸の工程で、延伸倍率を下げることにより、偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度を向上することができる。」

(3) 「【0086】
(製造方法〔b〕)
・・・略・・・
【0132】
(延伸工程)
本工程は、基材フィルム及びポリビニルアルコール系樹脂層からなる積層フィルムに延伸処理を施し、延伸された基材フィルム及びポリビニルアルコール系樹脂層からなる延伸フィルムを得る工程である。積層フィルムの延伸倍率は、所望する偏光特性に応じて適宜選択することができるが、好ましくは、積層フィルムの元長に対して4倍超17倍以下であり、より好ましくは4.5倍超8倍以下である。延伸倍率が4倍以下であると、ポリビニルアルコール系樹脂層が十分に配向しないため、偏光フィルムの偏光度が十分に高くならないことがある。一方、延伸倍率が17倍を超えると、高い突刺し強度を得にくくなる。更に延伸時にフィルムの破断が生じ易くなるとともに、延伸フィルムの厚さが必要以上に薄くなり、後工程での加工性及び取扱性が低下するおそれがある。延伸処理は通常、一軸延伸である。
・・・略・・・
【0141】
(染色工程)
・・・略・・・
【0151】
染色工程の後、後述する第1貼合工程の前に洗浄工程及び乾燥工程を行うことが好ましい。洗浄工程は通常、水洗浄工程を含む。水洗浄処理は、イオン交換水及び蒸留水等の純水に、染色処理後の又は架橋処理後のフィルムを浸漬することにより行うことができる。水洗浄温度は、通常3?50℃、好ましくは4?20℃の範囲である。浸漬時間は、通常2?300秒間、好ましくは3?240秒間である。
・・・略・・・
【0153】
洗浄工程の後に行われる乾燥工程としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥等の任意の適切な方法を採用し得る。例えば加熱乾燥の場合、乾燥温度は、通常20?95℃であり、乾燥時間は、通常1?15分間程度である。
・・・略・・・
【0159】
製造方法〔b〕では、一般的に延伸の工程で、延伸倍率を下げることにより、偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度を向上することができる。」

(4) 「【実施例】
【0184】
・・・略・・・
【0186】
[実施例1]
(1)樹脂層形成工程
基材フィルムとして、厚さ90μmの未延伸のポリプロピレン(PP)フィルム(融点163℃)を使用し、その表面にコロナ処理を行い、コロナ処理面にプライマー層を形成した。プライマー層は、ポリビニルアルコール粉末〔日本合成化学工業(株)製、平均重合度1100、ケン化度99.5モル%、商品名“Z-200”〕を95℃の熱水に溶解させ、濃度3重量%の水溶液を調製し、これにポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部の架橋剤〔田岡化学工業(株)製、商品名“スミレーズレジン(登録商標)650〕を配合した混合水溶液から形成した。プライマー層の形成は、この混合水溶液を基材フィルムのコロナ処理面に小径グラビアコーターで塗工し、これを80℃で10分間乾燥させた。プライマー層の厚さは0.2μmであった。
【0187】
次いで、ポリビニルアルコール粉末〔株式会社クラレ製の商品名“PVA124”、平均重合度2400、ケン化度98.0?99.0モル%〕を95度の熱水中に溶解させ濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を上記プライマー層の上にリップコーターを用いて塗工し80℃で20分間乾燥させ、基材フィルム、プライマー層、樹脂層からなる三層の積層フィルムを作製した。
【0188】
(2)延伸工程
上記積層フィルムをフローティングの縦一軸延伸装置を用いて160℃で4.6倍の自由端一軸延伸を実施し延伸フィルムを得た。
【0189】
(3)染色工程
その後、延伸フィルムを30℃のヨウ素とヨウ化カリウムの混合水溶液である染色溶液に180秒ほど浸漬して染色した後、10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次いで78℃のホウ酸水溶液である架橋溶液1に120秒浸漬させ、次いで、ホウ酸およびヨウ化カリウムを含む70℃の架橋溶液2に60秒浸漬させた。その後10℃の純水で10秒間洗浄し、最後に40℃で300秒間乾燥させた。以上の工程により樹脂層から偏光フィルムを形成し、偏光性積層フィルムを得た。各溶液の配合比率は以下である。
・・・略・・・
【0199】
[実施例2]
上記(2)の延伸工程における延伸倍率を5.2倍に変更し、上記(3)の染色工程における乾燥条件を、50℃で150秒間乾燥した後、65℃で150秒間乾燥するように変更した以外は実施例1と同様にして両面保護フィルム付き偏光板を作製した。
【0200】
[実施例3]
上記(4)と(5)の第1保護フィルム及び第2保護フィルムとして、25μmのTACフィルム(コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社製の製品名“コニカミノルタタックフィルムKC2UA(25μm)”)を使用した以外は実施例1と同様にして両面保護フィルム付き偏光板を作製した。
【0201】
[比較例1]
上記(2)の延伸工程における延伸倍率を5.2倍に変更した点以外は、実施例1と同様に両面保護フィルム付き偏光板を作製した。
【0202】
[比較例2]
上記(2)の延伸工程における延伸倍率を5.4倍に変更した点以外は、実施例1と同様に両面保護フィルム付き偏光板を作製した。
【0203】
<偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度測定>
実施例1及び比較例1,2において、上記(3)の染色工程の後に得られた偏光性積層フィルムから偏光フィルムを剥離して、長さ100mm×幅30mmの断片を切り出して突刺し試験用のサンプルとした。突刺し試験は、先端径1mmφ、0.5Rのニードルを装着した(株)島津製作所製の小型卓上機”EZ Test”を使用し、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.33cm/秒の測定条件下で行った。突刺し試験で測定される突刺し強度は、試験用のサンプル12枚に対して突刺し試験を行い、その平均値とした。偏光フィルムの厚さを接触式膜厚計〔ニコン(株)製の商品名“DIGIMICRO MH-15M”〕で測定し、単位膜厚あたりの突刺し強度を求めた。結果を、表1の「偏光フィルムの厚さ」及び「突刺し強度」の欄に示した。
・・・略・・・
【0205】
【表1】



5 上記4の本件明細書の記載(特に、段落【0022】、【0025】、【0064】、【0071】、【0073】、【0132】、【0153】、【0159】、【0186】?【0205】(【0205】【表1】の実施例1、2の乾燥条件等)等の下線部を参照。)によれば、偏光フィルムの「単位膜厚あたりの突刺し強度」は、延伸倍率の他に、加熱温度、時間等の乾燥条件により制御される(影響を受ける)と把握できるところ、偏光フィルムの乾燥状態は、長尺の偏光フィルムあるいは偏光板製造後の、偏光フィルムあるいは偏光板としての養生時、保管・運搬時や、(長尺のものから枚葉体への)切断後あるいは端面加工後、あるいは表示装置に組み込んだ後等における温度、湿度などの周囲の環境に応じ時間の経過とともに変化するものである。

6 例えば、本件明細書の段落【0025】に、「単位膜厚あたりの突刺し強度」を「高くする」ための乾燥処理条件(温度条件)として、「50℃?80℃」、より好ましくは「50℃?70℃」の条件が挙げられ、段落【0153】に、乾燥工程における加熱乾燥の乾燥温度(及び乾燥時間)として、通常20?95℃(通常1?15分間程度)が挙げられ、本件発明の実施例1及び実施例2における乾燥条件(乾燥温度(及び乾燥時間))が、40℃(300秒)、50℃(150秒)及び65℃(150秒)とされているところ、「加熱乾燥の乾燥温度」である「20℃?95℃」の範囲の温度、あるいは「単位膜厚あたりの突刺し強度」を「高くする」ための乾燥処理条件(温度条件)である「50℃?80℃」、より好ましい「50℃?70℃」の範囲の温度は、長尺の偏光フィルムあるいは偏光板としての養生時や保管・輸送時において、あるいは偏光フィルムと保護フィルムとの貼合工程等の偏光板製造工程や表示装置製造工程における他の接(粘)着剤層を介した貼合工程の乾燥条件として、想定される温度である(偏光板製造工程や表示装置製造工程における他の接(粘)着剤層を介した貼合工程の乾燥条件・温度条件については、引用例1(段落[0088])、引用例5(段落【0129】)、引用例7(段落【0113】)、特開2008-122502号公報(段落【0040】)、特開2013-71314号公報(段落【0159】)、特開2012-137723号公報(段落【0114】)、特開平6-67172号公報(6頁右欄11行?7頁左欄50行(実施例7?11))、特開2013-200578号公報(段落【0214】?【0216】)等を参照。偏光板の養生時、あるいは保管・運搬時に、高温の環境下とされることについては、特開2010-152334号公報(段落【0025】)、特開2005-173440号公報(段落【0040】)等を参照。)。あるいは偏光フィルム・偏光板が表示装置に組み込まれた後に、表示装置が晒される外部環境下の温度、あるいは表示装置内において偏光板が晒される温度として、想定される温度である(高温の環境に関しては、例えば、自動車内や屋外で使用される表示装置やプロジェクター装置の表示装置、あるいはバックライト直上の偏光板や画像処理回路近傍の偏光板やプラズマ表示装置表面の偏光板等が想定される。)。また、このような温度状態、温度環境にある期間は、本件明細書において「単位膜厚あたりの突刺し強度」を向上させている乾燥処理時間(例えば、実施例1,2等においては300秒程度)と、同程度あるいはより長期に渡るものである。
あるいは、偏光フィルムの「単位膜厚あたりの突刺し強度」が、乾燥状態に影響・制御されるということは、偏光フィルム周囲の湿度や吸水・吸湿による偏光フィルムの水分量にも影響・制御されるということもできる。

7 そうすると、仮に、偏光フィルムを作製した時点(例えば、乾燥工程直後であって、偏光フィルムと保護フィルムとの貼合工程前等)で、偏光フィルムの「単位膜厚あたりの突刺し強度」を測定した時に、該偏光フィルムの「単位膜厚あたりの突刺し強度」が5.8gf/μm「未満」であったとしても、その後の温度状態(あるいは温度状態及び時間)によって、乾燥が更に進み、該偏光フィルムの「単位膜厚あたりの突き刺強度」が変化し5.8gf/μm「以上」となることが考えられる。あるいは偏光フィルムの作製時、「単位膜厚あたりの突き刺強度」が5.8gf/μm「以上」であったとしても、その後の湿度変化、偏光フィルムの水分量変化によっては、乾燥状態が変化し、該偏光フィルムの「単位膜厚あたりの突刺し強度」が変化し5.8gf/μm「未満」となることも考えられる。
さらに、請求項1には、「単位膜厚あたりの突刺し強度」について、「温度23±3℃の環境下」で測定することは特定されているものの、いつの時点で測定したものかを特定する記載がないことに加え、測定するときの湿度や偏光フィルムの水分量等、偏光フィルムの乾燥状態を特定する特定する記載もない。

8 してみると、仮に、偏光フィルムの「単位膜厚あたりの突刺し強度」の定義が明確であったとしても、周囲環境等に応じて乾燥状態が変化しうる偏光フィルムの、いつの時点で測定した「単位膜厚あたりの突刺し強度」が5.8gf/μm以上であるのかが特定されなければ、「偏光フィルム」が特定されない。同様に、「単位膜厚あたりの突刺し強度」を測定するときの湿度や偏光フィルムの水分量等、偏光フィルムの乾燥状態について特定されていないから、「単位膜厚あたりの突刺し強度」が5.8gf/μm以上である「偏光フィルム」が特定されない。
よって、「厚みが10μm以下でありかつ単位膜厚あたりの突刺し強度が5.8gf/μm以上であ」る「偏光フィルム」が明確であるということができない。また、その結果、該「偏光フィルム」を備えた「偏光板」が明確であるともいうことができない。

9 請求人は、「第3 当審拒絶理由の概要」「●理由1(明確性)」「2」に関し、平成30年9月3日付けの意見書において、「上記拒絶理由通知書では、本願の明細書の段落[0025]の記載を根拠として、「『単位膜厚あたりの突刺し強度』は、乾燥状態により影響されると把握される」とした上で、「偏光フィルムの乾燥状態は、…周囲環境に応じ時間の経過とともに変化することは技術常識である。そうすると、該周囲環境に応じて乾燥状態が変化した結果、『単位膜厚あたりの突刺し強度』も変わることになるため、請求項1に記載の『単位膜あたりの突刺し強度』が、いつの時点で測定されたのか不明である。」とも述べられています。」、「しかしながら、本願の明細書の段落[0025]で述べているのは、突刺し強度を高くするために、「偏光フィルムを製造する際の」乾燥処理の温度を「50?80℃、より好ましくは50?70℃程度」とする方法が考えられることを述べているにすぎず、偏光フィルムの乾燥状態によって、単位膜厚あたりの突刺し強度の値が変化することまでもを説明する記載ではありません。」、「一般に、偏光フィルムを製造する際の乾燥処理の温度を高くすると、ポリビニルアルコール系樹脂層におけるポリビニルアルコール系樹脂の配向の緩和が促進されるため、ポリビニルアルコール系樹脂層の配向性が低下することが知られています。配向性が低下したポリビニルアルコール系樹脂層から得られる偏光フィルムは、裂けにくいものとなるため、単位膜厚あたりの突刺し強度を向上することができます。」、「このことは、本願の明細書の実施例と比較例との対比からも明らかであり、延伸倍率を高くすると、ポリビニルアルコール系樹脂層のポリビニルアルコール系樹脂の配向性が高まり、得られる偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度が低下しますが(実施例1と比較例1及び2との対比)、延伸倍率を高くした場合にも乾燥温度を高くすることにより、ポリビニルアルコール系樹脂層のポリビニルアルコール系樹脂の配向性を低下させることができるため、得られる偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度が低下することを抑制することができます(実施例1及び2と実施例3との対比)。」、「したがって、上記拒絶理由通知書で述べられているように「『単位膜厚あたりの突刺し強度』は、乾燥状態により影響される」とすることは適切ではなく、当然ながら「周囲環境に応じて乾燥状態が変化した結果、『単位膜厚あたりの突刺し強度』も変わることになる」とすることも適切ではないため、「請求項1に記載の『単位膜あたりの突刺し強度』が、いつの時点で測定されたのか不明である。」とされるべきものではないと思料します。」と主張している。

しかしながら、仮に、乾燥処理を(50?80℃、より好ましくは50?70℃程度の)高温で行うことによって、ポリビニルアルコール系樹脂層におけるポリビニルアルコール系樹脂の配向の緩和を促進して、ポリビニルアルコール系樹脂層の配向性を低下させ、単位膜厚あたりの突刺し強度を向上させることができるとしても、結局のところ、上記6において述べたとおり、本件明細書において、「加熱乾燥の乾燥温度」として挙げられた「20℃?95℃」の範囲の温度、あるいは「単位膜厚あたりの突刺し強度」を「高くする」ための乾燥処理条件(温度条件)として記載された「50℃?80℃」、より好ましい「50℃?70℃」の範囲の温度は、長尺の偏光フィルムあるいは偏光板としての養生時、保管・運搬時や、偏光フィルムと保護フィルムとの貼合工程等の偏光板製造工程、あるいは表示装置製造工程における乾燥工程等において想定される温度(あるいは温度及び時間)であり、あるいは偏光フィルム・偏光板の表示装置への組込後に表示装置が晒される外部環境の温度、あるいは表示装置内で偏光フィルム(偏光板)が晒される温度として想定される温度(あるいは温度及び時間)である。そうすると、偏光フィルムの「単位膜厚あたりの突刺し強度」は、乾燥状態、すなわち温度状態(あるいは温度状態及び時間)により変化するものである。また、本件明細書の段落【0025】等の記載から、偏光フィルムの「単位膜厚あたりの突刺し強度」は、延伸倍率の他に、乾燥状態に影響・制御されるということが理解されるから、偏光フィルム周囲の湿度(変化)や吸水・吸湿による偏光フィルムの水分量(変化)にも影響を受けて変化するということもできる。そうすると、やはり、いつの時点で測定した「偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」が5.8gf/μm以上であるのかが特定されない限り、「偏光フィルム」が明確であるということができない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

8 以上のとおり、本件発明は明確でないから、本件出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしていない。

第5 当審拒絶理由の「●理由2(進歩性)」についての判断
1 引用例1を主引用例とする場合
(1) 引用例に記載された事項及び引用発明
ア 引用例1
当審拒絶理由で引用され、本件出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用となった発明が記載された国際公開第2013/114612号(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当合議体が付与した。以下、同様。)。
(ア) 「技術分野
[0001] 本発明は、表示装置の偏光板などに用いられる偏光性積層フィルムおよびその製造方法に関する。
背景技術
[0002] 偏光板は、液晶表示装置における偏光の供給素子として、・・・略・・・広く用いられている。かかる偏光板として、従来より、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムにトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを接着したものが使用されているが、近年、液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などモバイル機器への展開、さらには大型テレビへの展開などに伴い、薄肉軽量化が求められている。
[0003] そのような薄型の偏光板を製造する方法として、基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液を塗布して樹脂層を設けた後、延伸し、次いで染色することにより、偏光子層を有する積層フィルムを得、これに保護フィルムを貼合して偏光性積層フィルムを得た後、該偏光性積層フィルムから基材フィルムを剥離して偏光板を得る方法が提案されている(例えば、特開2000-338329号公報参照)。
・・・略・・・
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0005] 基材フィルムと偏光子層とを有する積層フィルムに接着剤層を介して保護フィルムを貼合して偏光性積層フィルムを得る際に、貼合ロールを用いて連続的に貼合を行なうと、偏光性積層フィルムの端部から接着剤が溢れ、貼合ロールが汚染されてしまい、徐々に偏光性積層フィルムの裏面に接着剤が回りこんでフィルム自体も汚染されてしまう不具合がある。このような状態で積層フィルムをロール状に巻き取ると、積層フィルムの裏面に回りこんだ接着剤の影響でブロッキングが生じる不具合があり、次工程で安定して巻き出せない不具合が生じやすい。一方、接着剤が溢れ出さないように、接着剤の供給量を減らすと、偏光子の端まで接着剤が十分に行きわたらずに端部での接着が安定しない不具合がある。
[0006] 本発明は、基材フィルム、偏光子層、接着剤層、保護フィルムがこの順で積層されている長尺状の偏光性積層フィルムであって、偏光子層と保護フィルムとが安定した接着力で貼合されており、かつ接着剤の溢れ出しがない偏光性積層フィルム、それを巻回してなる偏光性積層フィルムロール、および偏光性積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
・・・略・・・
発明の効果
[0008] 本発明によると、偏光子層と保護フィルムとが安定した接着力で貼合されており、巻き取りの際にブロッキングなどの不具合が生じることがない偏光性積層フィルムを提供することができ、その偏光性積層フィルムから偏光板を得ることができる。
図面の簡単な説明
[0009] [図1]本発明の偏光性積層フィルムの幅方向の断面を模式的に示す図である。
[図2]本発明の偏光性積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
[図3]本発明の偏光性積層フィルムの製造方法の各製造工程後の積層フィルムを模式的に示す上面斜視図である。」

(イ) 「発明を実施するための形態
[0010] [偏光性積層フィルム]
図1は、本発明の偏光性積層フィルムの幅方向の断面を模式的に示す図である。本発明の偏光性積層フィルムは、基材フィルム11、偏光子層12、接着剤層13、保護フィルム14がこの順で積層されている長尺状の偏光性積層フィルムである。偏光性積層フィルムにおいて、基材フィルム11の幅方向の両端をP1、偏光子層12の幅方向の両端をP2、接着剤層13の幅方向の両端をP3、保護フィルム14の幅方向の両端をP4とすると、偏光子層12の両端P2は基材フィルム11の両端P1および保護フィルム14の両端P4より内側に位置し、接着剤層13の両端P3は偏光子層12の両端P2より外側に位置し、かつ基材フィルム11の両端P1および保護フィルム14の両端P4より内側に位置する。
[0011] このような構成においては、偏光子層12と保護フィルム14とが接着剤層13により安定した接着力で貼合されており、かつ接着剤が偏光性積層フィルムから溢れ出して貼合ロールを汚染する等の不具合が生じない。
[0012] (基材フィルム)
基材フィルム11に用いる樹脂としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられ、それらのガラス転移温度(Tg)または融点(Tm)に応じて適切な樹脂を選択できる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂・・・略・・・およびこれらの混合物、共重合物などが挙げられる。
[0013] 基材フィルム11は、上述の樹脂1種類のみを用いた単層であっても構わないし、樹脂を2種類以上をブレンドしたものであっても構わない。もちろん、単層でなく多層膜を形成していても構わない。
[0014] ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、安定的に高倍率に延伸しやすく好ましい。また、プロピレンにエチレンを共重合することで得られるエチレン-ポリプロピレン共重合体なども用いることも出来る。・・・略・・・プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
・・・略・・・
[0015] 上記のなかでも、プロピレン系樹脂フィルムを構成するプロピレン系樹脂として、プロピレンの単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体・・・略・・・が好ましく用いられる。
・・・略・・・
[0017] ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有するポリマーであり、主に、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合体である。用いられる多価カルボン酸には、主に2価のジカルボン酸が用いられ、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどがある。また、用いられる多価アルコールも主に2価のジオールが用いられ、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
[0018] ポリエステル系樹脂の代表例として、テレフタル酸とエチレングリコールの共重合体であるポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートは結晶性の樹脂であるが、結晶化処理する前の状態のものの方が延伸などの処理を施しやすい。必要であれば、延伸時、または延伸後の熱処理などによって結晶化処理することが出来る。また、ポリエチレンテレタレートの骨格にさらに他種のモノマーを共重合することで結晶性を下げた(もしくは、非晶性とした)共重合ポリエステルも好適に用いられる。このような樹脂の例として、例えば、シクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸などを共重合したものなどが好適に用いられる。これらの樹脂も延伸性にすぐれ好適に用いることができる。
・・・略・・・
[0027] 基材フィルム11の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性の点から1?500μmが好ましく、1?300μmがより好ましく、さらには5?200μmが好ましい。基材フィルムの厚さは、5?150μmが最も好ましい。
[0028] 基材フィルム11は、偏光子層12との密着性を向上させるために、少なくとも偏光子層12が形成される側の表面に、コロナ処理・・・略・・・を行ってもよい。また密着性を向上させるために、基材フィルム11の偏光子層12が形成される側の表面にプライマー層・・・略・・・を形成してもよい。プライマー層を設ける場合、基材フィルム11の表面全面に渡って形成することが好ましい。・・・略・・・
[0029] (偏光子層)
偏光子層12は、ポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して形成され、厚みが10μm以下のものが好ましい。偏光子層12に用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化度が90?100モル%のものが好適に用いられ、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールでもよい。たとえば、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで数%ほど変性したものなどが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度も特に限定されるものではないが、100?10000が好ましく、1500?10000がより好ましい。
・・・略・・・
[0041] [偏光性積層フィルムロール]
本発明の偏光性積層フィルムロールは、長尺状の前記積層フィルムを巻回して作製したものである。本発明の偏光性積層フィルムロールは、前記積層フィルムからの接着剤の溢れ出しがないので、溢れ出した接着剤の影響で生じるブロッキングを抑制することができる。
[0042] [偏光性積層フィルムの製造方法]
図2は、本発明の偏光性積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。図3は、本発明の偏光性積層フィルムの製造方法における各製造工程後の積層フィルムを模式的に示す上面斜視図である。本発明の製造方法は、長尺状の基材フィルム11の少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層12を形成して積層フィルムを得る積層工程(S10)と、積層フィルムを一軸延伸する延伸工程(S20)と、一軸延伸を行なった積層フィルムの樹脂層を二色性色素で染色する染色工程(S30)と、染色を行なった積層フィルムの樹脂層を、架橋剤を含む溶液に浸漬して架橋し偏光子層を形成する架橋工程(S40)と、架橋を行なった積層フィルムにおける偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に接着剤層を介して保護フィルム14を貼合する貼合工程(S50)と、をこの順に有する偏光性積層フィルムの製造方法である。貼合工程(S50)においては、好ましくは、一対の貼合ロール間に、積層フィルムと保護フィルム14とが重なるように送り込み貼合を行なう。
・・・略・・・
[0049] 貼合工程(S50)の後に、偏光子層12の両端と同じ位置または偏光子層12の両端より少し内側の位置で偏光性積層フィルムを切断して端部を除去し、さらに基材フィルムを剥離する剥離工程を有してもよい。当該剥離工程により得られるフィルムを偏光板として利用することができる。偏光性積層フィルムの切断は、ロールなどの長尺を連続で処理できる方法が好ましい。方法としては、特に限定されるものではないが、たとえば、一般にスリッターと呼ばれている方法などを好適に用いることができる。
[0050] スリッターの例としては、たとえばレザー刃と呼ばれる剃刀刃を用いる方法が挙げられる。同じレザー刃を用いた方法でも、特にバックアップガイドを設けずに空中でスリットする中空切りや、バックアップガイドとして、溝を切ったロールに刃を入れ込んでスリットの蛇行を安定させる溝ロール法などがある。・・・略・・・中でも、フィルムのスリット位置を簡単に変更でき、かつ、走行が安定しやすい方法である「レザー刃を用いた溝ロール法」などが好適に用いられる。」

(ウ) 「[0081] [剥離工程]
本発明の製造方法においては、保護フィルムを偏光子層に貼合する貼合工程(S50)の後、基材フィルムの剥離工程を行なうことができる。基材フィルムの剥離工程では、基材フィルムを積層フィルムから剥離する。基材フィルムの剥離方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板で行われる剥離フィルムの剥離工程と同様の方法で剥離できる。貼合工程(S50)の後、そのまますぐ剥離してもよいし、一度ロール状に巻き取った後、別に剥離工程を設けて剥離してもよい。
実施例
[0082] [実施例1]
(1)基材フィルムの作製
エチレンユニットを約5重量%含むプロピレン/エチレンのランダム共重合体(住友化学(株)製「住友ノーブレン W151」、融点Tm=138℃)からなる樹脂層の両側にプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン(住友化学(株)製「住友ノーブレンFLX80E4」、融点Tm=163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造の基材フィルムロールを、多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。得られた基材フィルムロールの合計厚みは100μmであり、各層の厚み比(FLX80E4/W151/FLX80E4)は3/4/3であった。
[0083] (2)プライマー層の形成
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製「Z-200」、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部混合した。得られた混合水溶液を、コロナ処理を施した上記基材フィルムロールのコロナ処理面上にグラビアコーターを用いて連続で塗工し、80℃で10分間乾燥させることにより、厚み0.2μmのプライマー層を形成、プライマー層/基材フィルムの構成からなるフィルムを作成した。この際、プライマー層は基材フィルムの全幅に渡って形成した。
[0084] (3)積層工程
ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製「PVA124」、平均重合度2400、平均ケン化度98.0?99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、基材フィルムの一方のプライマー層上にカンマコーターを用いて連続で塗工し、80℃で5分間乾燥させることにより、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層からなる3層構造の積層フィルムロールを作製した。ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層の厚みは10.6μmであった。塗工の際、基材フィルムの両端からそれぞれ3.0cm以内の領域にはポリビニルアルコール水溶液を塗工せずに、未塗布部とした。すなわち、樹脂層の幅方向の長さは基材フィルムの幅方向の長さより6cm短いものとした。
[0085] (4)延伸工程
上記の積層フィルムをロール間空中延伸装置にて160℃の延伸温度で縦方向に4.3倍に自由端一軸延伸した後に巻回し、積層フィルムロールを得た。得られた積層フィルムの厚みは55.2μmであり、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは6.3μmであった。
[0086] (5)染色工程、架橋工程
延伸後の積層フィルムロールについて、次の手順で染色工程および架橋工程を行なった。まず、積層フィルムを30℃のヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液である30℃の染色溶液に150秒間程度の滞留時間となるように浸漬し、ポリビニルアルコール系樹脂層の染色を行ない(染色工程)、ついで10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液である72℃の架橋溶液に600秒間程度の滞留時間となるように浸漬させて(架橋工程)、樹脂層から偏光子層を形成した。その後、10℃の純水で4秒間洗浄した後、80℃で300秒間乾燥させて、積層フィルムロールを得た。
[0087] (6)貼合工程
まず、ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製「KL-318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部混合し、接着剤溶液とした。
[0088] 次に、得られた積層フィルムの偏光子層側の面に、偏光子層の幅より8.0cm幅が広いトリアセチルセルロース(TAC)からなる保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製「KC4UY」)を、両端でそれぞれ4.0cm偏光子層よりも外側になるようにセットし、両フィルム間に上記の接着剤溶液をフィードしてから貼合ロールで貼り合わせた。この際、接着剤層の幅方向の両端が偏光子層の両端より外側に、かつ保護フィルムおよび基材フィルムの両端よりも内側になるように接着剤溶液のフィード量を調整した。その後、80℃で5分間乾燥させて偏光性積層フィルムを得てこれを巻回して偏光性積層フィルムロールを得た。得られた偏光性積層フィルムは、基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの5層からなる長尺状の偏光性積層フィルムであった。
[0089] 得られた偏光性積層フィルムは、接着剤の溢れ出しもなく、したがって偏光性積層フィルムの表面への接着剤の漏出もなかったことから良好な状態であった。
[0090] 得られた偏光性積層フィルムの幅方向の断面は、図1に示すような断面となっていた。接着剤層13の幅方向の長さは基材フィルム11の幅方向の長さより3.2cm短く、接着剤層13の端P3と基材フィルム11の端P1との間隔は1.6cmであった。偏光子層12の幅方向の長さは接着剤層13の幅方向の長さより2.0cm短く、偏光子層12の端P2と接着剤層13の端P3との間隔は1.0cmであった。また、接着剤層13の幅方向の長さは保護フィルム14の幅方向の長さより8.0cm短く、接着剤層13の端P3と保護フィルム14の端P4との間隔は4.0cmであった。
[0091] 得られた偏光性積層フィルムロールをリワインダーに設置して偏光性積層フィルムを巻き出してみたが、ブロッキング等も特になく、次工程での巻き出し時にもスムーズに巻き出すことが出来た。また、そのまま連続で巻き出しながら、両端部をレーザー刃でスリットして保護フィルムと基材フィルムが接着剤層を介して直接接着され、偏光子層が積層されていない部分を除去したが、スリットの刃も安定しており、綺麗に端部を除去することが出来た。
[0092] さらに、スリットして得られた偏光性積層フィルムから基材フィルムを剥がし取った。端部がスリットされているためスムーズに剥離を行なうことができ、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる偏光板を得ることができた。
[0093] [実施例2]
基材として、1,4シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸、エチレングリコールの3種のモノマーが共重合されてなるポリエステル基材(帝人(株)製:PETG)を用いた。基材フィルムの厚みは70μmであった。実施例1と同じ方法でプライマー層およびポリビニルアルコール系樹脂層を設け、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層の構成からなる積層フィルムを作成した(積層工程)。プライマー層の厚みは0.2μm、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは10.4μmであった。ここでも、ポリビニルアルコール水溶液は、基材フィルムの端から3.0cm以内の両端部の領域には塗布せずに未塗布部分を設けた。
[0094] 上記の積層フィルムをロール間空中延伸装置にて110℃の延伸温度で縦方向に4.0倍に自由端一軸延伸し(延伸工程)、積層フィルムロールを得た。得られた積層フィルムロールの厚みは40.5μmであり、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは6.2μmであった。
[0095] 得られた積層フィルムを実施例1と同様にして染色工程を行ない、洗浄し、乾燥して積層フィルムを得た。得られた積層フィルムに実施例1と同じように保護フィルムを貼合して(貼合工程)、基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの5層からなる長尺状の偏光性積層フィルムを得た。
[0096] 得られた偏光性積層フィルムの幅方向の断面は、図1に示すような断面となっていた。接着剤層13の幅方向の長さは基材フィルム11の幅方向の長さより3.0cm短く、接着剤層13の端P3と基材フィルム11の端P1との間隔は1.5cmであった。偏光子層12の幅方向の長さは接着剤層13の幅方向の長さより2.0cm短く、偏光子層12の端P2と接着剤層13の端P3との間隔は1.0cmであった。また、接着剤層13の幅方向の長さは保護フィルム14の幅方向の長さより8.0cm短く、接着剤層13の端P3と保護フィルム14の端P4との間隔は4.0cmであった。
[0097] 得られた偏光性積層フィルムロールをリワインダーに設置して偏光性積層フィルムを巻き出してみたが、ブロッキング等も特になく、次工程での巻き出し時にもスムーズに巻き出すことが出来た。また、そのまま連続で巻き出しながら、両端部をレーザー刃でスリットして保護フィルムと基材フィルムが接着剤層を介して直接接着され、偏光子層が積層されていない部分を除去したが、スリットの刃も安定しており、綺麗に端部を除去することが出来た。
[0098] さらに、スリットして得られた偏光性積層フィルムから基材フィルムを剥がし取った。端部がスリットされているためスムーズに剥離を行なうことができ、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる偏光板を得ることができた。」

(エ) 「産業上の利用可能性
[0106] 本発明の偏光性積層フィルムは、液晶表示装置をはじめとする各種表示装置に有効に適用することができる。」

(オ) 「符号の説明
[0107] 11 基材フィルム、11a 未塗布部、12 樹脂層(偏光子層)、13 接着剤層、14 保護フィルム。」

(カ) 「請求の範囲
・・・略・・・
[請求項4]
長尺状の基材フィルムの少なくも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る積層工程と、
前記積層フィルムを一軸延伸する延伸工程と、
前記一軸延伸を行なった前記積層フィルムの前記樹脂層を二色性色素で染色する染色工程と、
前記染色を行なった前記積層フィルムの前記樹脂層を、架橋剤を含む溶液に浸漬して架橋し偏光子層を形成する架橋工程と、
前記架橋を行なった前記積層フィルムにおける前記偏光子層の前記基材フィルム側の面とは反対側の面に接着剤層を介して保護フィルムを貼合する貼合工程と、をこの順に有し、
前記積層工程では、前記基材フィルムの幅方向の両方の端部に、前記ポリビニルアルコール系樹脂層を形成しない部分を設け、
前記貼合工程では、前記貼合後の前記積層フィルムの幅方向において、前記偏光子層の両端が前記保護フィルムの両端より内側に位置し、前記接着剤層の両端が前記偏光子層の両端より外側に位置し、かつ前記基材フィルムおよび前記保護フィルムの両端より内側に位置するように貼合する、偏光性積層フィルムの製造方法。
[請求項5]
前記貼合工程の後に、前記積層フィルムから前記基材フィルムと前記保護フィルムとが前記接着剤層を介して直接接着されている部分を切断して除去する除去工程を有する、請求項4に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
[請求項6]
請求項5に記載の方法により製造された偏光性積層フィルムから前記基材フィルムを剥離して除去する剥離工程を有する、偏光板の製造方法。」

(キ) 「[図1]




(ク) 「[図2]




(ケ) 「[図3]



イ 引用例1発明1及び引用例1発明2
(ア) 上記ア(ア)?(ケ)より、引用例1の[実施例1](上記ア(ウ)ウの[0081]?[0092]を参照。)には、「請求の範囲」の請求項6に記載された「偏光板の製造方法」を具体化した「偏光板の製造方法」であって、「偏光性積層フィルムの製造方法」の「(6)貼合工程」の後に、「除去工程」、「剥離工程」を有する「偏光板の製造方法」が記載されている。そうすると、引用例1には、[実施例1]の「偏光板の製造方法」により製造された「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる偏光板」として、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明1」という。)。

「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる偏光板であって、以下の工程からなる偏光板の製造方法により製造された偏光板。
積層工程:
ポリビニルアルコール水溶液を、プロピレン/エチレンのランダム共重合体(融点Tm=138℃)からなる樹脂層の両側にプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン(融点Tm=163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造の基材フィルム上のプライマー層上に塗工し、乾燥させることにより、積層フィルムロールを作製し、
延伸工程:
上記の積層フィルムを160℃の延伸温度で縦方向に4.3倍に自由端一軸延伸し、延伸後の積層フィルムロールを得、ここで、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは6.3μmであり、
染色工程、架橋工程:
延伸後の積層フィルムロールについて、染色工程および架橋工程を行ない、樹脂層から偏光子層を形成し、その後、洗浄した後、80℃で300秒間乾燥させて、偏光子層を具備する積層フィルムロールを得て、
貼合工程:
次に、得られた偏光子層を具備する積層フィルムの偏光子層側の面に、トリアセチルセルロース(TAC)からなる保護フィルムを、両端で偏光子層よりも外側になるようにセットし、両フィルム間に接着剤溶液をフィードしてから貼合ロールで貼り合わせて、偏光性積層フィルムを得て、これを巻回して偏光性積層フィルムロールを得て、
除去工程:
得られた偏光性積層フィルムロールを巻き出しながら、保護フィルムと基材フィルムが接着剤層を介して直接接着され、偏光子層が積層されて端部を除去し、
剥離工程:
さらに、偏光性積層フィルムから基材フィルムを剥がし取って、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる偏光板を得る。」

(イ) 同様に、上記ア(ア)?(ケ)より、引用例1には、[実施例2](上記ア(ウ)の[0093」?[0098]及び[0081]?[0092]を参照。)の「偏光板の製造方法」により製造された「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる偏光板」として、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明2」という。)。

「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる偏光板であって、以下の工程からなる偏光板の製造方法により製造された偏光板。
積層工程:
ポリビニルアルコール水溶液を、1,4シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸、エチレングリコールの3種のモノマーが共重合されてなるポリエステル基材フィルム上のプライマー層上に塗工し、乾燥させることにより、積層フィルムロールを作製し、
延伸工程:
上記の積層フィルムを110℃の延伸温度で縦方向に4.0倍に自由端一軸延伸し、延伸後の積層フィルムロールを得、ここで、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは6.2μmであり、
染色工程、架橋工程:
延伸後の積層フィルムロールについて、染色工程および架橋工程を行ない、樹脂層から偏光子層を形成し、その後、洗浄した後、80℃で300秒間乾燥させて、偏光子層を具備する積層フィルムロールを得て、
貼合工程:
次に、得られた偏光子層を具備する積層フィルムの偏光子層側の面に、トリアセチルセルロース(TAC)からなる保護フィルムを、両端で偏光子層よりも外側になるようにセットし、両フィルム間に接着剤溶液をフィードしてから貼合ロールで貼り合わせて、偏光性積層フィルムを得て、これを券回して偏光性積層フィルムロールを得て、
除去工程:
得られた偏光性積層フィルムロールを巻き出しながら、保護フィルムと基材フィルムが接着剤層を介して直接接着され、偏光子層が積層されていない端部を除去し、
剥離工程:
さらに、偏光性積層フィルムから基材フィルムを剥がし取って、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる偏光板を得る。」

ウ 引用例2
当審拒絶理由で引用され、本件出願の優先日前日本国内または外国において頒布された刊行物である特開2007-223021号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材の端面を切削加工する切削加工方法において、前記シート状部材の端面の垂線方向に沿って延びる回転軸と、前記シート状部材の端面側に突き出る切削刃とを有する切削部材を、その回転軸を中心に回転させながら、切削される端面の長手方向に沿って前記シート状部材に対して相対移動させ、回転する前記切削刃により形成される切削領域の、シート面に平行で回転中心を通る仮想線から離れた部分を、前記シート状部材の端面に接触させることを特徴とする切削加工方法。
【請求項2】
前記切削領域の部分が前記シート状部材の端面に接触する際に前記切削刃が端面に侵入する角度が、その端面の長手方向に対して75°以下である請求項1に記載の切削加工方法。
・・・略・・・
【請求項10】
請求項1?8のいずれか1項に記載の方法により端面を切削加工されたシート状部材。
【請求項11】
端面の長手方向に対して75°以下の角度で延びる切削跡が端面に形成された請求項10に記載のシート状部材。」

(イ) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状部材の端面を切削加工する切削加工方法と、その方法により切削加工する工程を有するシート状部材の製造方法と、その切削加工方法により端面を切削加工されたシート状部材と、そのシート状部材を備える光学素子及び画像表示装置とに関し、特に高精度の端面加工を必要とするシート状部材について有用である。
【背景技術】
【0002】
高精度の端面加工を必要とするシート状部材の一例として、偏光板等の光学用途のフィルムが挙げられる。偏光板は、液晶表示装置(以下、LCDと略称することがある。)の構成部材として多くの場面で用いられており、近年においては、その需要が急激に増加している。しかも、光学補償機能や輝度向上機能などを備えた付加価値の高い偏光板の使用が増加しており、表示品位に対する要求はより一層高まる傾向にある。偏光板としては、一般に、ヨウ素又は二色性染料を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光フィルムの両面に、トリアセチルセルロース(以下、TACと略称することがある。)等の保護フィルムを積層したものが使用される。また、目的に応じて、光学補償機能や輝度向上機能を有するフィルムを粘着剤又は接着剤を介して積層したものも使用される。
【0003】
LCDのパネルに偏光板を実装するにあたっては、その偏光板を所定の形状及び寸法に加工する必要があり、特に狭額縁仕様のパネルに実装される偏光板では、その端面を精度よく且つ良好な状態に仕上げることが大変重要である。一般には、長尺状の単層シートや積層シート(例えば光学フィルム層と粘着層とで形成され、積層フィルムと呼ばれることもある。) の原反に対して、打ち抜き用刃型等を用いて矩形形状に切断する。このシート状部材は、一軸又は二軸方向に延伸加工しており、この延伸方向に関係なく切断が行われる。ところが、この切断されたシート状部材の端面(切断面)に繊維状破断片が付着したり、切断時の圧力により端面から粘着剤がはみ出したりして、外観不良や品質低下の原因になるという問題があった。
・・・略・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、シート状部材の端面を精度よく且つ良好な状態に仕上げることができる切削加工方法と、この方法により切削加工する工程を有するシート状部材の製造方法と、この切削加工方法により得られるシート状部材と、そのシート状部材を備える光学素子及び画像表示装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る切削加工方法は、シート状部材の端面を切削加工する切削加工方法において、前記シート状部材の端面の垂線方向に沿って延びる回転軸と、前記シート状部材の端面側に突き出る切削刃とを有する切削部材を、その回転軸を中心に回転させながら、切削される端面の長手方向に沿って前記シート状部材に対して相対移動させ、回転する前記切削刃により形成される切削領域の、シート面に平行で回転中心を通る仮想線から離れた部分を、前記シート状部材の端面に接触させるものである。
【0007】
本発明に係る切削加工方法では、シート状部材の端面の垂線方向に沿って延びる回転軸と、そのシート状部材の端面側に突き出る切削刃とを有する切削部材が用いられる。シート状部材の端面を切削加工する際には、この切削部材を、その回転軸を中心に回転させながら、切削加工される端面の長手方向に沿って移動させ、回転する切削刃をシート状部材の端面に侵入させる。なお、切削部材はシート状部材に対して相対移動させればよいため、切削部材をシート状部材に近接させるものに限られず、シート状部材を切削部材に近接させたり、両者を互いに近接させたりしても構わない。回転する切削刃をシート状部材の端面に侵入させることにより、端面に繊維状破断片が付着していたり粘着剤がはみ出していたりする場合には、それらが除去される。かかる切削刃は、図9、10に示した回転刃12のように端面に押圧されることなく通過するため、切削跡が比較的浅くなり表面を良好な状態に仕上げることができる。
【0008】
本発明では、回転する切削刃により形成される切削領域を、シート状部材の端面に接触させて切削加工を行うに際し、その切削領域の中でも所定の仮想線から離れている部分をシート状部材の端面に接触させるようにする。かかる仮想線は、シート状部材のシート面と平行に延びて切削領域の回転中心を通る仮想の線である。かかる構成に基づく作用効果について、図1、2を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明との比較のために例示する切削加工方法の概念図であり、切削領域の回転中心Pを通りシート面に平行な仮想線30近傍の領域を、複数枚重ねた状態としたシート状部材1の端面10に接触させる様子を示している。一方、図2は、本発明に係る切削加工方法の一例を示す概念図であり、切削領域の仮想線30から離れた部分をシート状部材1の端面10に接触させる様子を示している。両図の(b)は、端面10に形成される切削跡を示している。なお、符号2は、回転する切削刃の軌跡である。実際の切削刃の軌跡はらせん状であるが、図示の便宜上、円形の軌跡を所定ピッチでずらすことで概念的に記載している。
【0010】
図1では、切削刃がシート状部材1の端面10に侵入する角度が、その端面10の長手方向Wに対して略90°であり、換言すると切削方向が端面10の厚み方向(図1の上下方向)に略平行である。一方、図2では、切削方向が端面10の厚み方向に対して大きく傾斜しているとともに、切削ピッチが図1に比べて小さくなっている。このように切削領域8の仮想線30から離れた部分を端面に接触させることにより、その端面に形成される切削跡のピッチが小さくなって目立ち難くなり、外観が良好となる。
【0011】
また、上記においては、切削方向の違いにより以下の作用効果が奏される。即ち、図1に示す方法によれば、回転する切削刃がシート状部材1の端面10を真下に押し下げる(又は真上に押し上げる)方向に作用して、シート状部材1に端面割れや隙間が生じやすくなる傾向にあるが、図2に示す方法であれば切削刃による押し下げ(又は押し上げ)作用が緩和され、端面割れや隙間の発生を防止することができる。その結果、シート状部材の端面を良好な状態に仕上げることができ、端面凹凸の発生を抑制して優れた寸法精度を効果的に得ることができる。
【0012】
かかる切削加工について本発明者らが鋭意研究したところ、切削刃の端面への侵入角度が端面の長手方向に対して75°以下となるときに、上述した作用効果が効果的に得られることを見出した。即ち、本発明においては、前記切削領域の部分が前記シート状部材の端面に接触する際に前記切削刃が端面に侵入する角度が、その端面の長手方向に対して75°以下であることが好ましい。かかる切削刃の侵入角度は、切削刃がシート状部材の端面に侵入する位置での接線と端面の長手方向とがなす角度として定義することができる。この侵入角度が75°を超えると図1に示す方法に近付き、切削跡が目立ち易くなるとともに、シート状部材の端面割れや隙間が防止される効果が小さくなる傾向にある。
・・・略・・・
【0017】
本発明に係る切削加工方法は、シート状部材が複数枚の光学フィルムを積層してなる場合において、その端面の切削加工に非常に有用となる。かかるシート状部材の具体例としては偏光板が挙げられる。
・・・略・・・
【0020】
本発明のシート状部材は、上記いずれかの方法により端面を切削加工されたシート状部材である。かかるシート状部材においては、端面の長手方向に対して75°以下の角度で延びる切削跡が端面に形成されたものが好ましい。この切削跡の角度は、切削跡の接線と端面の長手方向とがなす角度として定義することができる。」

(ウ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<シート状部材の端面を切削加工する装置及び方法>
本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。図3は、シート状部材の端面を切削加工するために用いられる端面切削装置の構成を示す概略斜視図である。
・・・略・・・
【0023】
図3に示す端面切削装置は、ワーク固定装置3とワーク加工装置4とを備え、互いに奥行を異ならせて並設されている。ワーク固定装置3は、ワークテーブル16と、ワークテーブル16の上方に配置された押さえ部材17と有する。ワークテーブル16には切削加工の対象となるシート状部材1が載置され、そのテーブル高さは昇降ハンドル18の操作により適宜に調節可能に構成されている。押さえ部材17は、エアシリンダ19のロッドの先端に取り付けられており、ワークテーブル16に対して近接した位置と離間した位置との間で変位可能に構成されている。本実施形態では、シート状部材1の長手方向Wに沿って複数の押さえ部材17が配設されている。
・・・略・・・
【0029】
図6は、切削領域とシート状部材の端面との位置関係を示す図であり、・・・略・・・本実施形態では、回転する切削刃7によりリング形をなす切削領域8が形成される。なお、回転中心Pから径方向に延びる切削刃が設けられている場合には、円形をなす切削領域が形成される。シート状部材1の端面10の切削は、その切削領域8の中でも、シート面に平行で回転中心Pを通る仮想線30から離れた部分である領域9を用いて行われる。即ち、切削部材5を回転させながら長手方向Wに沿って移動させ、領域9を端面10に接触させて切削加工を行う。
・・・略・・・
【0036】
<シート状部材の具体例>
本発明に係るシート状部材は、本発明に係る切削加工方法により端面を切削加工されたシート状部材であり、端面の長手方向に対して75°以下の角度で延びる切削跡が形成されたものが好ましい。かかる場合、上述のように切削跡が目立ち難くなって外観が良好であるとともに、切削刃7の端面10への侵入角度θが75°以下であることにより端面割れや隙間の発生が好適に防止され、十分な寸法精度が確保される。なお、寸法精度を確保する観点から、侵入角度θは23°以上であることが好ましい。
【0037】
本発明のシート状部材は、切削加工された端面の最大高さが6μm以下であることが好ましい。かかる場合、端面同士を突き合わせて大型のシート状部材を形成した場合においても、切削跡の凹凸により生じる隙間からの光漏れなどを防止することができる。なお、端面の最大高さは、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは4μm以下であり、小さくなるほど好ましい。
【0038】
シート状部材としては、各種シート材料の単層体或いは積層体を特に制限なく使用できるが、本発明に係る切削加工方法は複数枚の光学フィルムを積層してなるシート状部材への適用が有用であり、かかるシート状部材としては、偏光フィルムの片面又は両面に粘着剤や接着剤を介して透明保護層を積層した偏光板が例示される。」

(エ) 「【実施例】
【0091】
・・・略・・・
【0093】
実施例1
前述の実施形態で示した方法に基づき、上記偏光板(320μm/枚)を6枚積層して厚みを約1.9mmとし、その端面を0.5mmの切削代で切削加工した。切削領域の半径は72.5mmとし、切削部材の回転軸は端面の垂線方向に平行とした。また、切削部材の回転速度が4500rpm、移動速度が2.0m/minという加工条件で、重ねたシート状部材を挟むアクリル板の下面が切削領域の下端(外周縁)に揃うようにして切削加工を行った。アクリル板の厚みは3mmとし、重ねたシート状部材の上面が、切削領域の下端から4.9mmの高さを通過するようにした。したがって、実施例1では、シート状部材の端面に接触する切削領域は、シート面に平行で回転中心を通る仮想線から半径の10/11以上離れた部分に該当する13/14以上離れた部分となり、6枚重ねたシート状部材の上面に切削刃が侵入する角度は21°となる。なお、上記の最大高さは、切削部材の回転軸側にあるものを1枚目として、6枚目までシート状部材ごとに算出し、その中で最大高さが最も大きいものをワースト値とした。
【0094】
実施例2
重ねたシート状部材の上面が、切削領域の下端から6mmの高さを通過するようにして切削加工を行うこと以外は実施例1と同じとした。したがって、実施例2では、シート状部材の端面に接触する切削領域は、仮想線から半径の11/12以上離れた部分となり、6枚重ねたシート状部材の上面に切削刃が侵入する角度は23°となる。
【0095】
実施例3
重ねたシート状部材の上面が、切削領域の下端から7mmの高さを通過するようにして切削加工を行うこと以外は実施例1と同じとした。したがって、実施例3では、シート状部材の端面に接触する切削領域は、仮想線から半径の9/10以上離れた部分となり、6枚重ねたシート状部材の上面に切削刃が侵入する角度は25°となる。
【0096】
実施例4
重ねたシート状部材の上面が、切削領域の下端から12mmの高さを通過するようにして切削加工を行うこと以外は実施例1と同じとした。したがって、実施例4では、シート状部材の端面に接触する切削領域は、仮想線から半径の5/6以上離れ、且つ10/11以内の部分となり、6枚重ねたシート状部材の上面に切削刃が侵入する角度は33°となる。
【0097】
実施例5
重ねたシート状部材の上面が、切削領域の下端から24mmの高さを通過するようにして切削加工を行うこと以外は実施例1と同じとした。したがって、実施例5では、シート状部材の端面に接触する切削領域は、仮想線から半径の2/3以上離れた部分となり、6枚重ねたシート状部材の上面に切削刃が侵入する角度は48°となる。
【0098】
実施例6
重ねたシート状部材の上面が、切削領域の下端から36mmの高さを通過するようにして切削加工を行うこと以外は実施例1と同じとした。したがって、実施例6では、シート状部材の端面に接触する切削領域は、仮想線から半径の1/2以上離れた部分となり、6枚重ねたシート状部材の上面に切削刃が侵入する角度は59°となる。
【0099】
実施例7
重ねたシート状部材の上面が、切削領域の下端から48mmの高さを通過するようにして切削加工を行うこと以外は実施例1と同じとした。したがって、実施例7では、シート状部材の端面に接触する切削領域は、仮想線から半径の1/3以上離れた部分となり、6枚重ねたシート状部材の上面に切削刃が侵入する角度は70°となる。
【0100】
実施例8
重ねたシート状部材の上面が、切削領域の下端から52mmの高さを通過するようにして切削加工を行うこと以外は実施例1と同じとした。したがって、実施例8では、シート状部材の端面に接触する切削領域は、仮想線から半径の1/4以上離れた部分となり、6枚重ねたシート状部材の上面に切削刃が侵入する角度は73°となる。
【0101】
比較例
重ねたシート状部材の中央が、切削領域の回転中心を通るようにして切削加工を行うこと以外は実施例1と同じとした。
【0102】
・・・略・・・
【0103】
実施例10
上記偏光板(320μm/枚)1枚を、その上面が切削領域の下端から3.3mmの高さを通過するようにして切削加工を行うこと以外は実施例1と同じとした。したがって、実施例10では、シート状部材の端面に接触する切削領域は、仮想線から半径の20/21以上離れた部分となり、シート状部材の上面に切削刃が侵入する角度は17°となる。
【0104】
・・・略・・・
各実施例及び比較例の評価結果を表1及び表2に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
表1、2に示すように、各実施例の最大高さはいずれも比較例よりも小さく、切削領域の中でもシート面に平行で回転中心を通る仮想線から離れた領域を端面に接触させることによって、端面の状態を良好にすることができた。特に実施例1?7では、切削された端面の状態が平滑で最大高さが効果的に小さくなっており、中でも実施例3?6で顕著であることから、切削領域の仮想線から半径の1/3以上離れた部分を端面に接触させることが好ましく、1/2以上離れた部分ではより好ましいことが分かる。更に、実施例3の回転軸側の数枚及び実施例4では最大高さが最も小さくなっており、切削領域の仮想線から半径の5/6以上離れ、且つ10/11以内の部分を端面に接触させることが好ましいことが分かる。また、実施例10の結果から、偏光板1枚であっても問題なく切削加工できることが分かるが、同じ位置で切削加工された実施例1の6枚目の方が最大高さが小さいことから、複数枚を重ねた状態で切削加工することが好ましいことが分かる。
【0111】
ここで、図11?13は、いずれも本発明における切削後の端面を示す写真である。図11は、その端面の正面視を示す顕微鏡写真であり、割れや隙間が確認されず良好な状態に仕上がっていることがわかる。図12は、その端面同士を突き合わせるようにして並べたときの側面視を示す顕微鏡写真であり、端面の凹凸が抑制されて平滑に加工されていることがわかる。図13は偏光板の積層体を示しており、端面が平滑であるために光が反射して、光沢のある状態に仕上がっていることが確認できる。」

(オ) 「【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明との比較のために例示される切削加工方法を説明する概念図
【図2】本発明に係る切削加工方法を説明する概念図
【図3】本発明に係る切削加工方法に用いられる装置構成の一例を示す概略斜視図
・・・略・・・
【図6】本発明に係る切削加工方法を説明する概念図
・・・略・・・
【図11】本発明における切削後の端面の正面視の顕微鏡写真
【図12】本発明における切削後の端面同士を突き合わせるようにして並べたときの側面視の顕微鏡写真
【図13】本発明において切削された偏光板の積層体を示す写真
・・・略・・・
【符号の説明】
【0114】
1 シート状部材
5 切削部材
7 切削刃
8 切削領域
9 切削領域の仮想線から離れた部分の領域
10 シート状部材の端面
16 ワークテーブル
17 押さえ部材
20 アクリル板
30 仮想線
P 回転中心
r 切削領域の半径
R 切削部材の回転方向
S 回転軸
W 切削加工される端面の長手方向
θ 切削刃の侵入角度」

(カ) 「【図1】

【図2】

【図3】

・・・略・・・
【図6】

・・・略・・・
【図11】

【図12】

【図13】



(2) 引用例1発明1を主引用発明とする場合
ア 対比
本件発明と引用例1発明1を対比すると、以下のとおりである。
(ア) 引用例1発明1の「貼合工程」によれば、引用例1発明1の「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる偏光板」における「保護フィルム」は、「トリアセチルセルロース(TAC)からなる保護フィルム」である。
引用例1発明1の「トリアセチルセルロース(TAC)からなる」「保護フィルム」は、本件発明の「保護フィルム」に相当する。

(イ) 引用例1発明1の「延伸工程」及び「染色工程、架橋工程」によれば、引用例1発明1の「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる偏光板」における「偏光子層」は、「厚み」が「6.3μm」とされた「ポリビニルアルコール系樹脂層」から「形成」されたものである。
そうすると、引用例1発明1の「偏光子層」の「厚み」は「6.3μm」である。
引用例1発明1の「偏光子層」は、「積層フィルム」を構成するものであり、その厚みからみて、フィルム状であるということができる。
引用例1発明1の「偏光子層」は、本件発明の「偏光フィルム」に相当し、引用例1発明1の「偏光子層」は、その「厚み」が「6.3μm」であるから、本件発明の「偏光フィルム」の「厚みが10μm以下であ」るとの要件を満たす。

(ウ) 引用例1発明1の「偏光板」は、「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層からなる」から、「偏光子層」の一方(片側)の面に「保護フィルム」を備えるものである。
引用例1発明1の「偏光板」は、本件発明の「偏光板」に相当し、引用例1発明1の「偏光板」は、本件発明の「偏光板」の「偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを備える」との要件を満たす。

(エ) 以上の対比結果を踏まえると、本件発明と引用例1発明1は、
「偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを備える偏光板であって、
前記偏光フィルムは、厚みが10μm以下である、偏光板。」で一致し、以下の相違点で相違する。

(相違点1)
本件発明においては、「前記偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度が5.8gf/μm以上であり」、「前記単位膜厚あたりの突刺し強度は、突刺し治具が通過することができる直径15mm以下の円形の孔の開いた2枚のサンプル台の間に、偏光フィルムの突刺し試験用のサンプルを挟み、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.33cm/秒で、前記サンプルの主面の法線方向から前記突刺し治具を突刺し、前記サンプルの吸収軸に沿って前記サンプルが一箇所裂けた際の強度を前記サンプル12枚について測定した平均値を、前記サンプルの膜厚で除した値であり」、「前記突刺し治具は、円柱状の棒であり、前記サンプルに接する先端が球形または半球形であって、先端の直径が1mmφであり先端の曲率半径が0.5Rである突刺し針を備える」ものであるのに対して、
引用例1発明1においては、「偏光子層」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」が不明である点。

(相違点2)
本件発明は、「前記偏光板の端面が、偏光板の厚み方向に対して15°以上90°以下の角度で切削傷を有し」ているのに対して、
引用例1発明1においては、そのようになっていない点。

イ 相違点についての判断
(ア) 相違点1について
a 本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0025】、【0064】、【0071】、【0073】、【0132】、【0153】、【0159】等における「単位膜厚あたりの突刺し強度」、「延伸倍率」及び「乾燥処理」についての記載や、段落【0184】?【0205】の実施例1?3、比較例1,2(特に、【0205】の【表1】の実施例1?3の「突刺し強度(gf/μm)」及び「乾燥条件」)の記載に基づけば、「単位膜厚あたりの突刺し強度」は、「染色工程」において「染色」、「架橋」、「洗浄」し、最後に「乾燥させた」、「偏光性積層フィルムから」「剥離した」「偏光フィルム」をサンプルとして求めたものであること、「偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」を5.8gf/μm以上に高く制御するための条件は、延伸倍率を下げる(例えば、通常4?17倍程度であるところ、4.6?5.2倍程度とする)こと、または、乾燥処理を、例えば50?80℃(より好ましくは50?70℃程度)の高温(で300秒程度)で行うことであると理解される。

b ここで、引用例1発明1においては、「延伸工程」において、「積層フィルムを160℃の延伸温度で縦方向に4.3倍に自由端一軸延伸し、延伸後の積層フィルムロールを得」て、「ポリビニルアルコール系樹脂層の厚み」を「6.3μm」とし、「染色工程、架橋工程」において、「延伸後の積層フィルム」を、洗浄した後、「80℃で300秒間乾燥させて」いるから、引用例1発明1における「延伸倍率」は「4.3倍」であり、また、乾燥処理条件は「80℃、300秒」である。

c 引用例1発明1における「偏光子層」の「延伸倍率」「4.3倍」は、本件明細書に記載の実施例2の「5.2倍」(本件明細書の段落【0205】【表1】参照)と比較すると低く、通常用いられる延伸倍率「4?17倍」の下限に近い倍率となっていることが把握できる。
また、引用例1発明1における「偏光子層」の乾燥処理条件「80℃、300秒」は、本件明細書に記載の実施例2の乾燥処理条件「(1)50℃、150秒、(2)65℃、150秒」あるいは実施例1、3の乾燥処理条件「40℃、300秒」(本件明細書の段落【0205】【表1】参照)と比較すると、より高温の上限に近い温度(及び時間)の乾燥処理条件となっていることが把握できる。

d してみると、上記aの「偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」を5.8gf/μm以上に高く制御するための延伸倍率や乾燥温度等の条件、本件明細書の実施例1?3の延伸倍率、乾燥処理条件、単位膜厚あたり突刺し強度値や、引用例1発明1の上記bの延伸倍率条件及び温度・乾燥時間等の乾燥処理条件からみて、引用例1発明1の「偏光子層」の「単位膜厚あたり突刺し強度」は、実施例1、3あるいは実施例2のものと同程度あるいはそれ以上高くなっていると考えられる。
そうすると、引用例1発明1において、「染色工程、架橋工程」の後に得られた「偏光子層」(本件発明の「偏光フィルム」に相当)は、「積層フィルム」から剥離した「偏光子層」をサンプルとして、「突刺し治具が通過することができる直径15mm以下の円形の孔の開いた2枚のサンプル台の間に、偏光フィルムの突刺し試験用のサンプルを挟み、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.33cm/秒で、前記サンプルの主面の法線方向から前記突刺し治具を突刺し、前記サンプルの吸収軸に沿って前記サンプルが一箇所裂けた際の強度を前記サンプル12枚について測定した平均値を、前記サンプルの膜厚で除した値であり」、「前記突刺し治具は、円柱状の棒であり、前記サンプルに接する先端が球形または半球形であって、先端の直径が1mmφであり先端の曲率半径が0.5Rである突刺し針を備える」ものとして求めた、「偏光子層」(「偏光フィルム」)の「単位膜厚あたりの突刺し強度」は5.8gf/μm以上となっている蓋然性が高い。
してみると、上記相違点1は実質的な相違点を構成しない。

(イ) 相違点2について
a 引用例2(請求項1、2、10、11、段落【0001】?【0003】、【0005】?【0012】、【0017】、【0020】、【0036】?【0038】、【0091】?【0111】、図1?3、6、11?13等(上記(1)ウ(ア)?(カ)参照。))には、偏光板の端面を切削刃を有する切削部材で切削加工する際、偏光板の端面に偏光板の端面長手方向に対して75°以下、23°以上の角度で伸びる切削跡が形成されるように偏光板の端面に切削部材を接触させることによって、偏光板端面の端面割れ、隙間、端面凹凸をなくすとともに、切削跡のピッチを小さくして、偏光板の端面を精度よく、且つ、外観が良好な状態に仕上げて、狭額縁仕様のパネルへの実装において表示品位上良好なものとする技術が記載されている。

b 引用例1発明1に関し、用いられる液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などモバイル機器への展開、さらには大型テレビへの展開などに伴い、薄肉軽量化が求められているところ(引用例1の段落[0002]参照。)、モバイル機器あるいは大型テレビにおいては額縁が狭い方が好ましいことや、狭額縁仕様とされる偏光板に関し、高い寸法精度あるいは高精度な端面加工が求められることは当業者にとって周知の技術的事項(例えば、特開2005-224935号公報(段落【0005】)、国際公開第2014/097885号(段落[0002]、[0007])、国際公開第2014/168133号(段落[0072])、引用例2(段落【0003】)等参照)である。また、偏光板として外観が良好なものが好ましいことはいうまでもないことである。

c そうすると、引用例1発明1において、偏光板を狭額縁仕様とすることを考慮して、偏光板の端面を精度よく且つ外観が良好な状態に仕上げることができる引用例2に記載された上記の技術を採用して、(偏光板の端面長手方向と直交する方向である)偏光板の厚み方向に対して15°(=「90°」-「75°」)?67°(=「90°」-「23°」)程度の角度で切削傷(跡)を有する構成として、上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 平成30年9月3日付けの意見書(以下、単に「意見書」という。)における請求人の主張について
(ア) 請求人は、意見書の「(5) 理由2について」「(5-1) 引用文献1との対比」において、「上記拒絶理由通知書では、本願の明細書の段落[0025]の記載、及び、同実施例(段落[0205](表1))の記載を対比した上で、引用文献1に記載の実施例1及び2の延伸倍率及び温度・乾燥時間等の乾燥処理条件に基づき、「引用発明1の偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度は5.8gf/μm以上となっている蓋然性が高い。」と述べられています。しかしながら、単位膜厚あたりの突刺し強度は、延伸倍率や乾燥処理条件にのみ影響を受けるものではありません。」、「本願の明細書の実施例で用いている基材フィルムは、厚さ90μmの未延伸のポリプロピレン(PP)フィルム(融点163℃)であり、これを160℃で延伸しています(本願の明細書の段落[0186],[0188]、[0199]、[0200])。」、「これに対し、引用文献1に記載の実施例1で用いられている基材フィルムは、プロピレン/エチレンのランダム共重合体(融点138℃)からなる樹脂層の両側に、ホモポリプロピレン(融点163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造(厚み100μm)を有しています。プロピレン/エチレンのランダム共重合体からなる樹脂層は融点が比較的低いため、当該樹脂層を含む引用文献1(実施例1)に記載の3層構造の基材フィルムは、本願の明細書の実施例で用いているポリプロピレンフィルムの基材フィルムに比較すると、延伸工程においてネックインが生じやすくなっていると考えられます。」、「ネックインが生じやすい基材フィルム上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して延伸処理を行うと、基材フィルムのネックインの影響を受けてポリビニルアルコール系樹脂層にもネックインが生じやすくなります。ポリビニルアルコール系樹脂層に生じるネックインが大きいほどポリビニルアルコール系樹脂が配向しやすくなり、ポリビニルアルコール系樹脂層の配向性が高まること、配向性の高いポリビニルアルコール系樹脂層から得られる偏光フィルムが裂けやすいことは、技術常識として知られています。」、「したがって、引用文献1の実施例1に記載の方法で得られた偏光フィルムは、本願の実施例に記載の方法で得られた偏光フィルムに比較すると、偏光フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂層の配向性が向上しているために裂けやすくなっている、すなわち単位膜厚あたりの突刺し強度が低下していると考えられます。」、「よって、引用文献1の実施例1に記載の方法で得られた偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度は、本願の実施例に記載の偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度よりも低く、単位膜厚あたりの突刺し強度は5.8gf/μm未満である蓋然性が高いと推測されます。」と主張している。

(イ) しかしながら、請求人が主張するように、引用例1発明1の3層構造及び各層の融点からみて、引用例1発明1において、本件発明の実施例1あるいは実施例2に比較して、160℃での延伸工程においてネックインがより生じやすくなっているとしても、延伸倍率が小さいとネックインが生じにくいことが技術常識であり、(引用例1発明1における延伸倍率「4.3倍」であり、例えば本件発明の実施例2の延伸倍率「5.2倍」(あるいは実施例1の「4.6倍」)と比較すると小さくなっていることからみて、)引用例1発明1においては積層フィルムあるいは偏光子層にネックインがより生じにくくなっているということができる。加えて、乾燥処理条件からみると、引用例1発明1においては、本件発明の実施例1あるいは実施例2よりも高温で乾燥処理を行っているのであるから、「単位膜厚あたりの突刺し強度」が向上していると考えられる。そうすると、請求人が主張するようなことが生じ得るとしても、延伸倍率及び乾燥処理条件等を勘案すると、やはり引用例1発明1における「偏光子層」(「偏光フィルム」)の「単位膜厚あたりの突刺し強度」は5.8gf/μm以上となっている蓋然性が高いということができる。
よって、請求人の上記(ア)の主張を採用することはできない。

(ウ) 仮に、請求人が上記(ア)において主張するとおりであり、上記イ(ア)及び上記(イ)のとおりでないとしても、基材フィルムにポリビニルアルコール系樹脂層を積層した積層フィルムを延伸して偏光子層を作製する際の基材フィルムとして、融点が163℃の未延伸のポリプロピレンからなる単層の基材フィルムを用いることは、本件出願の優先日前に周知の技術である(例えば、特開2014-206719号公報(段落【0098】)、特開2012-13764号公報(段落【0094】)、特開2011-248294号(段落【0088】、【0095】、【0098】)等参照。)。
そして、引用例1の段落[0012]?[0014]には、基材フィルムに用いる樹脂は「樹脂1種類のみを用いた単層であっても構わない」こと、基材フィルムに用いる樹脂として例示された「ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ」ることが記載されているから、引用例1の上記の記載・示唆に基づき、引用例1発明1の基材フィルムとして、上記周知の融点が163℃の未延伸のポリプロピレンからなる単層の基材フィルムを採用することは、当業者が容易になし得たことである。そして、このような構成としたものは、請求人が上記(ア)において主張するような「延伸工程においてネックインが生じやすくなっている」ということはなく、上記(イ)のとおり上記相違点1に係る本件発明1の構成を満たすものとなる蓋然性が高い。
したがって、仮に、請求人が上記(ア)において主張するとおりであったとしても、引用例1発明1において、上記相違点1及び上記相違点2に係る本件発明の構成とすることが、当業者に容易になし得たことであるという結論において相違しない。

エ 以上のとおりであるから、本件発明は、引用例1発明1及び引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 引用例1発明2を主引用発明とする場合
ア 対比
本件発明と引用例1発明2を対比すると、上記(2)アにおける対比と同様であり、本件発明と引用例1発明2とは、上記(2)アにおける(一致点)と同じ点で一致し、(相違点1)及び(相違点2)と同じ点で相違する。

イ 相違点についての判断
(ア) 相違点1について
a 引用例1発明2は、「延伸工程」において、「積層フィルムを110℃の延伸温度で縦方向に4.0倍に自由端一軸延伸し」、「ポリビニルアルコール系樹脂層の厚み」を「6.2μm」とし、「染色工程、架橋工程」において、「積層フィルムを」、洗浄した後、「80℃で300秒間乾燥させて」いるから、引用例1発明2における「延伸倍率」は「4.0倍」であり、また、乾燥処理条件は「80℃、300秒」である。

b 引用例1発明2における「偏光子層」の「延伸倍率」「4.0倍」は、本件明細書に記載の実施例2の「5.2倍」と比較するとずっと低く、通常用いられる延伸倍率の下限に近い倍率であり、かつ、「偏光子層」の乾燥処理条件「80℃、300秒」は、本件明細書に記載の実施例2の乾燥処理条件「(1)50℃、150秒、(2)65℃、150秒」あるいは実施例1、3の乾燥処理条件「40℃、300秒」と比較すると、より高温の上限に近い温度(及び時間)の乾燥処理条件となっていることが把握できる。

c してみると、上記(2)イ(ア)aの「偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」を高く制御するための延伸倍率や乾燥温度等の条件、本件明細書の実施例1?3の延伸倍率、乾燥処理条件、単位膜厚あたり突刺し強度値に基づけば、引用例1発明2の上記aの延伸倍率条件及び温度・乾燥時間等の乾燥処理条件からみて、引用例1発明2の「偏光子層」の「単位膜厚あたり突刺し強度」は、実施例1、3あるいは実施例2のものと同程度あるいはそれ以上高くなっていると考えられる。
そうすると、引用例1発明2において、「染色工程、架橋工程」の後に得られた「偏光子層」(本件発明の「偏光フィルム」に相当)は、「積層フィルム」から剥離した「偏光子層」をサンプルとして、「突刺し治具が通過することができる直径15mm以下の円形の孔の開いた2枚のサンプル台の間に、偏光フィルムの突刺し試験用のサンプルを挟み、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.33cm/秒で、前記サンプルの主面の法線方向から前記突刺し治具を突刺し、前記サンプルの吸収軸に沿って前記サンプルが一箇所裂けた際の強度を前記サンプル12枚について測定した平均値を、前記サンプルの膜厚で除した値であり」、「前記突刺し治具は、円柱状の棒であり、前記サンプルに接する先端が球形または半球形であって、先端の直径が1mmφであり先端の曲率半径が0.5Rである突刺し針を備える」ものとして求めた、「偏光子層」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」は5.8gf/μm以上となっている蓋然性が高い。
してみると、上記相違点1は実質的な相違点を構成しない。

(イ) 相違点2について
a 相違点2については、(2)イ(イ)において検討したとおりである。

ウ 平成30年9月3日付けの意見書における請求人の主張について
(ア) 請求人は、意見書の「(5) 理由2について」「(5-1) 引用文献1との対比」において、「引用文献1に記載の実施例2で用いられている基材フィルムは、厚みが70μmのポリエステル基材であり(段落[0093])、本願の実施例で用いている基材フィルム(厚み90μm(本願の明細書の段落[0186]))よりも小さい厚みとなっています。」、「基材フィルムの厚みが小さいほど延伸工程でのネックインが生じやすいため、上記した理由と同様の理由により、引用文献1の実施例2に記載の方法で得られた偏光フィルムは、本願の実施例に記載の方法で得られた偏光フィルムに比較すると、偏光フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂層の配向性が高くなっており、このポリビニルアルコール系樹脂から得られる偏光フィルムは、突刺し強度が低下していると考えられます。」、「したがって、引用文献1の実施例2に記載の方法で得られた偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度は、本願の実施例に記載の偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度よりも低く、単位膜厚あたりの突刺し強度は5.8gf/μm未満である蓋然性が高いと推測されます。」と主張している。

(イ) しかしながら、請求人が主張するように、基材フィルムの厚みが小さいほど延伸工程でのネックインが生じやすいといえるとしても、引用例1発明2においては、本件発明の実施例1,2よりも低温の110℃で延伸処理を行っているから、引用例1発明2においては偏光子層にネックインがより生じにくくなっているということができる。また、延伸倍率からみても、引用例1発明2の方が偏光子層にネックインがより生じにくくなっている。加えて、引用例1発明2の方が、本件発明の実施例1、3あるいは実施例2よりも高温で乾燥処理を行っている。そうすると、請求人が主張するようなことが生じ得るとしても、延伸倍率及び乾燥処理条件等を勘案すると、やはり引用例1発明2における「偏光子層」(「偏光フィルム」)の「単位膜厚あたりの突刺し強度」は5.8gf/μm以上となっている蓋然性が高いということができる。
よって、請求人の上記(ア)の主張を採用することはできない。

エ 以上のとおりであるから、本件発明は、引用例1発明2及び引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用例3を主引用例とする場合
(1) 引用例3に記載された事項
引用例3(特開2001-343522号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、偏光フィルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】平面表示装置、特に液晶表示装置は、ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話など、さまざまな用途で用いられている。高度情報化社会といわれる現在、携帯電話をはじめとする情報携帯端末の普及はめざましいものがあり、それに付随して、多機能化及び軽量薄肉化が急速に進行している。そこで、液晶表示装置に用いられる光学機能性フィルムの軽量薄肉化の要求もますます強くなってきている。液晶表示装置に用いられる光学機能性フィルムのうちで、通常最も厚みのあるものは偏光板である。一般的な偏光板は、一軸延伸及び二色性物質の吸着配向が施されたポリビニルアルコールフィルムをホウ酸含有水溶液中に浸漬し、水洗後、乾燥して得られる偏光フィルムの両面に、保護フィルムを貼合して作製されている。現在工業的に製造されている偏光フィルムの厚みは、通常15μmから30μm程度であり、保護フィルムが貼合された後の偏光板の膜厚は、100μmから200μmにもなる。
【0003】また、偏光フィルムの膜厚が厚い場合、軽量薄肉化以外に収縮応力の点でも問題がある。これまで、液晶表示装置の液晶セルの基板にはガラスが用いられてきたが、近年、液晶表示装置の軽量薄肉化や耐衝撃性などの観点から、プラスチック基板を用いるいわゆるプラスチックセルが上市されはじめた。プラスチックセルは、ガラスセルと比較して反りやすいという欠点を有しており、収縮応力の大きい従来の偏光板をプラスチックセルに適用すると、液晶セルが変形し、表示品位を著しく損なう場合があった。収縮応力を小さくするには、偏光フィルムの膜厚を小さくすればよいが、上述の方法で膜厚の薄い偏光板を作製すると、フィルムがホウ酸含有水溶液中で破断しやすいなどの問題があった。また、一軸延伸の際の延伸倍率を下げることによっても収縮応力を低減できるが、延伸倍率が低いと、十分な光学特性が得られないという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者らは鋭意研究を行った結果、従来とは異なる製造方法を採用することにより、薄肉の偏光フィルムが製造でき、また膜厚と延伸倍率の比が特定の範囲にあるときには、収縮応力の小さい偏光フィルムが得られることを見出し、本発明に至った。したがって本発明の目的は、軽量薄肉化の要求に応え、薄肉でしかも収縮応力の小さい偏光フィルムを提供し、また従来とは異なる方法でこれを製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂を主成分とし、フィルムの膜厚d(μm )と延伸倍率e(倍)との積d×eが30以下である偏光フィルムを提供し、さらには、基材樹脂フィルムにポリビニルアルコール系樹脂を塗布する工程、及び得られる積層フィルムを一軸延伸する工程を包含する上記偏光フィルムの製造方法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
・・・略・・・
【0007】フィルムの膜厚d(μm)と延伸倍率e(倍)との積d×eが30以下である薄肉の偏光フィルムは、本発明に従って、基材樹脂フィルムにポリビニルアルコール系樹脂を塗布し、得られる積層フィルムを一軸延伸することにより製造できる。ここで用いる基材樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂以外のものであり、具体的には、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルムなどが挙げられる。ポリエステル系樹脂フィルムとしては、非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどが、・・・略・・・挙げられるが、もちろんこれらに限定されるわけではない。基材樹脂フィルムは、後工程で5倍程度に一軸延伸できるものなら特に限定はないが、ガラス転移温度が140℃以下のものが好ましい。基材樹脂フィルムの膜厚は、20?800μm程度、さらには100?400μm程度であるのが好ましい。
・・・略・・・
【0010】こうして基材樹脂フィルム上にポリビニルアルコール系樹脂が塗布された積層フィルムは、一軸延伸される。一軸延伸は、周速の異なるロール間で縦一軸に延伸する方法によって行ってもよいし、テンター法で横一軸に延伸する方法によって行ってもよい。また、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて圧延を行ってもよいが、最適にはテンター法が用いられる。延伸倍率は、通常4?8倍程度である。延伸倍率が4倍を下回ると、得られる偏光フィルムの光学特性が必ずしも十分でなくなる傾向にある。延伸工程の前後には、予熱、熱処理、冷却などの工程を適宜設けてもよい。延伸温度は、選定した基材樹脂フィルムの性質により異なるが、例えば、基材樹脂フィルムが非晶性ポリエステル樹脂の場合は、70?120℃程度、好ましくは85?110℃程度の温度で延伸を行うことができる。一軸延伸の際には、基材樹脂フィルム上のポリビニルアルコール系樹脂の含水率を1?10重量%程度、好ましくは2?8重量%程度に調整することにより、良好な延伸が可能となる。
・・・略・・・
【0015】ホウ酸処理後の一軸延伸ウェブは通常、水洗処理される。この水洗処理は、例えば、ホウ酸処理された一軸延伸ウェブを水に浸漬することにより行われる。水洗処理における水の温度は、通常5?40℃程度であり、浸漬時間は通常、2?120秒程度である。次いで乾燥処理するが、この乾燥は、通常100℃以下、好ましくは40?95℃の温度で行われる。乾燥時間は通常、120?600秒程度である。」

イ 「【0022】実施例1
帯電防止処理が施された厚さ250μmの非晶性ポリエチレンテレフタレートシートの表面をコロナ処理し、この面に、重合度2,400、ケン化度99.9%以上のポリビニルアルコールの5重量%水溶液をバーコーターで塗工後、50℃の熱風乾燥オーブンで5分間乾燥して、厚み5μmのポリビニルアルコール層を設けた。このシートに、テンター延伸機を用いて100℃で横一軸に5倍の延伸を施し、染色用ウェブとした。この染色用ウェブを25℃の純水に1分間浸漬した後、水100重量部あたりヨウ素を0.25重量部及びヨウ化カリウムを5重量部それぞれ含有する水溶液に、温度28℃で180秒間浸漬した。次いで、水100重量部あたりホウ酸を7.5重量部及びヨウ化カリウムを6重量部それぞれ含有するホウ酸水溶液に、温度40℃で300秒間浸漬した。この間、ウェブは緊張状態に保ったまま処理が行われた。その後、15℃の純水で2秒間洗浄した。水洗したフィルムを50℃で300秒間乾燥し、基材樹脂フィルム付き偏光フィルムを得た。このとき、基材樹脂フィルムを除いた偏光フィルムの膜厚は1μmであり、偏光フィルムの膜厚d(μm)と延伸倍率e(倍)との積d×eは5であった。
【0023】上記基材樹脂フィルム付き偏光フィルムの偏光フィルム面に、トリアセチルセルロース製で表面にケン化処理が施された厚み80μmの保護フィルムを、5重量%ポリビニルアルコール水溶液からなる接着剤を介して貼合し、50℃で5分間乾燥させた。乾燥後、基材樹脂フィルムを剥ぎ取り、トリアセチルセルロースフィルムが片面に付いた膜厚81μmの偏光板を得た。さらに、基材樹脂フィルムを剥ぎ取った後の偏光フィルム面に上述のトリアセチルセルロースフィルムを同様に貼合し、膜厚1μmの偏光フィルムの両面に80μmのトリアセチルセルロース保護フィルムが貼合された合計膜厚161μmの偏光板を得た。この偏光板の片面に膜厚25μmの粘着剤層を貼合し、前述の収縮応力評価を行った。その結果、反りは1mmであった。」

ウ 「【0025】
【発明の効果】本発明によれば、膜厚が薄く、しかも収縮応力の小さい偏光フィルムが提供され、またそれを工業的有利に製造できる。」

(2) 引用例3発明
ア 上記(1)ア?ウより、引用例3には、引用例3における本発明である「偏光板の製造方法」を具体化した実施例1の「偏光板の製造方法」により製造された「厚1μmの偏光フィルムの両面に」「トリアセチルセルロース保護フィルムが貼合された」「偏光板」として、次の発明が記載されている(以下、「引用例3発明」という。)。

「厚1μmの偏光フィルムの両面にトリアセチルセルロース保護フィルムが貼合された偏光板であって、以下の製造方法により製造された偏光板。
非晶性ポリエチレンテレフタレートシートの表面にポリビニルアルコール層を設け、このシートに100℃で横一軸に5倍の延伸を施し、染色用ウェブとし、
この染色用ウェブを25℃の純水に1分間浸漬した後、水100重量部あたりヨウ素を0.25重量部及びヨウ化カリウムを5重量部それぞれ含有する水溶液に、温度28℃で180秒間浸漬し、次いで、水100重量部あたりホウ酸を7.5重量部及びヨウ化カリウムを6重量部それぞれ含有するホウ酸水溶液に、温度40℃で300秒間浸漬し、その後、洗浄し、水洗したフィルムを50℃で300秒間乾燥し、基材樹脂フィルム付き偏光フィルムを得て、
上記基材樹脂フィルム付き偏光フィルムの偏光フィルム面に、トリアセチルセルロース保護フィルムを貼合し、50℃で5分間乾燥させ、乾燥後、基材樹脂フィルムを剥ぎ取り、トリアセチルセルロース保護フィルムが片面に付いた偏光板を得て、
さらに、基材樹脂フィルムを剥ぎ取った後の偏光フィルム面にトリアセチルセルロース保護フィルムを貼合し、膜厚1μmの偏光フィルムの両面にトリアセチルセルロース保護フィルムが貼合された偏光板を得る。」

(3) 対比
本件発明と引用例3発明とを対比すると、次のとおりである。
ア 引用例3発明の「膜厚1μmの偏光フィルムの両面に」「貼合された」「トリアセチルセルロース保護フィルム」は、本件発明の「保護フィルム」に相当する。

イ 引用例3発明の「膜厚1μm」の「偏光フィルム」は、本件発明の「偏光フィルム」に相当し、引用例3発明の「偏光フィルム」は、本件発明の「偏光フィルム」の「厚みが10μm以下であ」るとの要件を満たす。

ウ 引用例3発明の「偏光板」は、「膜厚1μmの偏光フィルムの両面にトリアセチルセルロース保護フィルムが貼合された」ものである。
引用例3発明の「偏光板」は、本件発明の「偏光板」に相当し、引用例3発明の「偏光板」は、本件発明の「偏光板」の「偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを備える」との要件を満たす。

エ 以上の対比結果を踏まえると、本件発明と引用例3発明は、上記1(2)アにおける(一致点)と同じ点で一致し、(相違点1)及び(相違点2)と同じ点で相違する。

(4) 判断
ア 相違点1について
(ア) 引用例3発明は、「100℃で横一軸に5倍の延伸を施し」、「水洗したフィルムを50℃で300秒間乾燥し」ているから、引用例3発明における「(横)延伸倍率」は「5倍」であり、また、乾燥処理条件は「50℃、300秒」である。

(イ) 引用例3発明における「偏光フィルム」の「延伸倍率」「5倍」は、本件明細書に記載の実施例2の「5.2倍」と比較すると低いものとなっていることが把握できる。
また、引用例3発明における「偏光フィルム」の乾燥処理条件「50℃、300秒」は、本件明細書に記載の実施例1、3の乾燥処理条件「40℃、300秒」と比較すると、より高温の乾燥処理条件となっていることが把握できる。

(ウ) してみると、上記1(2)イ(ア)aの「偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」を高く制御するための延伸倍率や乾燥温度等の条件、本件明細書の実施例1?3の延伸倍率、乾燥処理条件、単位膜厚あたり突刺し強度値や、引用例3発明の上記(ア)の延伸倍率条件及び温度・乾燥時間等の乾燥処理条件からみて、引用例3発明の「偏光フィルム」の「単位膜厚あたり突刺し強度」は、実施例1、3あるいは実施例2のものと同程度あるいはそれ以上高くなっていると考えられる。
そうすると、引用例3発明において、「水洗したフィルムを50℃で300秒間乾燥し、基材樹脂フィルム付き偏光フィルムを得」た後の「偏光フィルム」をサンプルとして、「突刺し治具が通過することができる直径15mm以下の円形の孔の開いた2枚のサンプル台の間に、偏光フィルムの突刺し試験用のサンプルを挟み、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.33cm/秒で、前記サンプルの主面の法線方向から前記突刺し治具を突刺し、前記サンプルの吸収軸に沿って前記サンプルが一箇所裂けた際の強度を前記サンプル12枚について測定した平均値を、前記サンプルの膜厚で除した値であり」、「前記突刺し治具は、円柱状の棒であり、前記サンプルに接する先端が球形または半球形であって、先端の直径が1mmφであり先端の曲率半径が0.5Rである突刺し針を備える」ものとして求めた、「偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」は5.8gf/μm以上となっている蓋然性が高い。
してみると、上記相違点1は実質的な相違点を構成しない。

イ 相違点2について
(ア) 引用例3発明は、引用例3の段落【0002】、【0003】に記載されているように、ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話等の情報携帯端末に用いられるものであり、軽量薄肉化がますます強く要求されるものであるところ、このようなノート型パーソナルコンピュータや携帯電話等の情報携帯端末において、偏光板の狭額縁化に伴って、高い寸法精度あるいは高精度な端面加工が求められていることは当業者にとって周知の技術的事項である。また、偏光板として外観が良好なものが好ましいことはいうまでもないことである。

(イ) そうすると、引用例3発明において、偏光板の端面を精度よく且つ外観が良好な状態に仕上げることができる引用例2に記載された上記の技術を採用して、上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 平成30年9月3日付けの意見書における請求人の主張について
(ア) 請求人は、意見書の「(5) 理由2について」「(5-2) 引用文献3との対比」において、「延伸工程における延伸温度が低い場合、基材フィルム上に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層におけるポリビニルアルコール系樹脂の配向の緩和が抑制されるため、ポリビニルアルコール系樹脂層の配向性が高い状態で維持されることは技術常識です。そして、配向性の高いポリビニルアルコール系樹脂層から得られる偏光フィルムは裂けやすいため、単位膜厚あたりの突刺し強度が低下します。」、「引用文献3の実施例1の延伸温度は100℃であり、この延伸温度は、本願の明細書の実施例に記載の延伸温度160℃(本願の明細書の段落[0188])に比べて低くなっています。」、「したがって、上記した理由により、引用文献3の実施例1に記載の方法で得られた偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度は、本願の実施例に記載の偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度よりも低く、単位膜厚あたりの突刺し強度は5.8gf/μm未満である蓋然性が高いと推測されます。」と主張している。

(イ) しかしながら、延伸工程においては、延伸倍率・延伸温度や基材フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂層の膜厚・相転移温度(ガラス転移温度、融点)に応じて発生する延伸状態、ネックイン状態に依存して、基材フィルム樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂の配向がなされることや、例えば、その後の乾燥工程における乾燥温度・乾燥時間に依存して該配向の緩和・弛緩が生じることはいえるとしても、請求人が主張する「延伸工程における延伸温度が低い場合、基材フィルム上に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層におけるポリビニルアルコール系樹脂の配向の緩和が抑制される」との主張はその根拠が不明である。そして、引用例3発明においては、横延伸倍率が「5倍」と低く、また、100℃で横一軸延伸を行っているのであるから、ネックインが生じにくく(あるいは強い配向となりにくく)なっている。また、引用例3発明における乾燥処理条件「50℃、300秒」は、本件発明の実施例1、3より高温の条件となっている。以上を勘案すると、やはり引用例3発明における「偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」は5.8gf/μm以上となっている蓋然性が高いということができる。
よって、請求人の上記(ア)の主張を採用することはできない。

エ 以上のとおりであるから、本件発明は、引用例3発明及び引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 引用例4を主引用例とする場合
(1) 引用例4に記載された事項
引用例4(特開2013-156623号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置における偏光の供給素子として、また偏光の検出素子として、広く用いられている。かかる偏光板として、従来より、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムにトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを接着したものが使用されているが、近年、液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などモバイル機器への展開、さらには大型テレビへの展開などに伴い、薄肉軽量化が求められている。
【0003】
そのような薄型の偏光板を製造する方法として、基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液を塗布して樹脂層を設けた後、延伸し、次いで染色することにより、偏光子層を有する偏光性積層フィルムを得、これをそのまま偏光板として利用する方法、および該フィルムに保護フィルムを貼合した後、基材フィルムを剥離したものを偏光板として利用する方法が提案されている・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術のように、基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂層を設けた後、延伸、染色、架橋等することによって、基材フィルムと偏光子層とを有する積層フィルムを得る場合、その積層フィルムにおいては、染色、架橋等の工程で、熱、張力や延伸力などが作用し、その端部に波打ちや反りを生じることがあり、その結果、保護フィルムを貼合する際に端部に折れ込みやシワが生じることがある。このような折れ込みやシワが原因となって、たとえば部分的な接着剤の溜まりが生じ、その部分が乾燥不良となることで、偏光子層の青変劣化などの不具合を引き起こすことがあった。
【0007】
本発明は、基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂層を設けた後、延伸、染色、架橋等することによって積層フィルムを得、該積層フィルムにさらに保護フィルムを貼合する偏光板の製造方法であって、端部での折れ込みやシワの発生を抑制し、偏光子層の青変劣化を抑制する偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
・・・略・・・
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂層を設けた後、延伸、染色、架橋等することによって積層フィルムを得、該積層フィルムにさらに保護フィルムを貼合して偏光板を製造するにあたり、保護フィルムを貼合する際の端部での折れ込みやシワの発生を抑制し、偏光子層の青変劣化を抑制することができる。」

イ 「【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の偏光板の製造方法を示すフローチャートである。
・・・略・・・
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の偏光板の製造方法を示すフローチャートである。本発明の製造方法は、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る積層工程(S10)と、積層フィルムを一軸延伸する延伸工程(S20)と、一軸延伸を行なった積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色する染色工程(S30)と、染色を行なった積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を、架橋剤を含む溶液に浸漬して架橋し偏光子層を形成する架橋工程(S40)と、架橋を行なった積層フィルムから、幅方向の両方の第1端部を切断して除去する貼合前除去工程(S50)と、第1端部を除去した積層フィルムにおける偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合する貼合工程(S60)と、をこの順に有する偏光板の製造方法である。貼合工程(S60)の後に、さらに基材フィルムを剥離する剥離工程(S70)を有してもよい。積層工程(S10)において基材フィルムの両面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、貼合工程(S60)において二つの偏光子層にそれぞれ保護フィルムを貼合するようにしてもよい。
【0012】
本発明の製造方法によると、貼合前除去工程(S50)を有することにより、架橋工程(S40)を終了した時点で積層フィルムにおいて波打ち反りが生じている端部を除去することができる。したがって、積層フィルムに保護フィルムを貼合する貼合工程(S60)において、積層フィルムの端部に折れ込みやシワの発生や、偏光子層における青変劣化を抑制することができる。
【0013】
・・・略・・・
【0025】
[樹脂層形成工程(S10)]
ここでは、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。基材フィルムに適した材料は、後述する。なお、本実施形態において、基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂の延伸に適した温度範囲で延伸できるものを用いることが好ましい。
【0026】
形成する樹脂層の厚みは、3μm超かつ30μm以下であることが好ましく、さらには5?20μmが好ましい。3μm以下であると延伸後に薄くなりすぎて染色性が著しく悪化してしまい、30μmを超えると、最終的に得られる偏光子層の厚みが10μmを超えてしまうことがある。
【0027】
・・・略・・・
【0029】
(基材フィルム)
基材フィルムに用いる樹脂としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられ、それらのガラス転移温度(Tg)または融点(Tm)に応じて適切な樹脂を選択できる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂・・・略・・・およびこれらの混合物、共重合物などが挙げられる。
【0030】
基材フィルムは、上述の樹脂1種類のみを用いた単層であっても構わないし、樹脂を2種類以上をブレンドしたものであっても構わない。もちろん、単層でなく多層膜を形成していても構わない。
・・・略・・・
【0032】
上記のなかでも、プロピレン系樹脂フィルムを構成するプロピレン系樹脂として、プロピレンの単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体・・・略・・・が好ましく用いられる。
・・・略・・・
【0035】
ポリエステル系樹脂の代表例として、テレフタル酸とエチレングリコールの共重合体であるポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートは結晶性の樹脂であるが、結晶化処理する前の状態のものの方が延伸などの処理を施しやすい。必要であれば、延伸時、または延伸後の熱処理などによって結晶化処理することが出来る。また、ポリエチレンテレタレートの骨格にさらに他種のモノマーを共重合することで結晶性を下げた(もしくは、非晶性とした)共重合ポリエステルも好適に用いられる。このような樹脂の例として、例えば、シクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸などを共重合したものなどが好適に用いられる。これらの樹脂も延伸性にすぐれ好適に用いることができる。
・・・略・・・
【0044】
基材フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性の点から1?500μmが好ましく、1?300μmがより好ましく、さらには5?200μmが好ましい。基材フィルムの厚さは、5?150μmが最も好ましい。
・・・略・・・
【0046】
(樹脂層)
樹脂層には、ポリビニルアルコール系樹脂が用いられる。
・・・略・・・
【0048】
[延伸工程(S20)]
ここでは、基材フィルムおよび樹脂層からなる積層フィルムを一軸延伸する。好ましくは、5倍超かつ17倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。さらに好ましくは5倍超かつ8倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。延伸倍率が5倍以下だと、ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層が十分に配向しないため、結果として、偏光子層の偏光度が十分に高くならない不具合を生じることがある。一方、延伸倍率が17倍を超えると延伸時の積層フィルムの破断が生じ易くなると同時に、延伸フィルムの厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性・ハンドリング性が低下するおそれがある。
・・・略・・・
【0050】
また、延伸処理は、・・・略・・・乾式延伸方法を用いる方が、積層フィルムを延伸する際の温度を広い範囲から選択することができる点で好ましい。
【0051】
[染色工程(S30)]
・・・略・・・
【0056】
[架橋工程(S40)]
・・・略・・・
【0061】
架橋工程の後に洗浄工程を行なうことが好ましい。
・・・略・・・
【0062】
・・・略・・・以上の工程を経ることにより、樹脂層が偏光子としての機能を有することになる。本明細書においては、偏光子としての機能を有する樹脂層を偏光子層という。
【0063】
[貼合前除去工程(S50)]
・・・略・・・
【0065】
・・・略・・・しかしながら、通常、これらの工程は一つのライン内で連続していることが生産性の観点から好ましく、架橋工程(S40)、貼合前除去工程(S50)、貼合工程(S60)の順に連続している設備であることが好ましい。また、貼合前除去工程の前後のどちらか一方、または両方に偏光子の乾燥工程があることが好ましい。乾燥工程としては、任意の適切な方法(たとえば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)を採用しうる。たとえば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常、20?95℃であり、乾燥時間は、通常、1?15分間程度である。
・・・略・・・
【0068】
[貼合工程(S60)]
ここでは、偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合して偏光板を得る。
・・・略・・・
【0093】
[剥離工程(S70)]
本発明の製造方法においては、保護フィルムを偏光子層に貼合する貼合工程(S60)の後、基材フィルムの剥離工程(S70)を行なうことができる。基材フィルムの剥離工程(S70)では、基材フィルムを積層フィルムから剥離する。基材フィルムの剥離方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板で行われる剥離フィルムの剥離工程と同様の方法で剥離できる。貼合工程(S60)の後、そのまますぐ剥離してもよいし、一度ロール状に巻き取った後、別に剥離工程を設けて剥離してもよい。」

ウ 「【実施例】
【0094】
[実施例1]
(1)基材フィルムの作製
エチレンユニットを約5重量%含むプロピレン/エチレンのランダム共重合体(住友化学(株)製「住友ノーブレン W151」、融点Tm=138℃)からなる樹脂層の両側にプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン(住友化学(株)製「住友ノーブレンFLX80E4」、融点Tm=163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造の基材フィルムロールを、多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。得られた基材フィルムロールの合計厚みは100μmであり、各層の厚み比(FLX80E4/W151/FLX80E4)は3/4/3であった。
【0095】
(2)プライマー層の形成
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製「Z-200」、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部混合した。得られた混合水溶液を、コロナ処理を施した上記基材フィルムロールのコロナ処理面上にグラビアコーターを用いて連続で塗工し、80℃で10分間乾燥させることにより、厚み0.2μmのプライマー層を形成した。この作業を、基材フィルムの反対側にも施し、両面にプライマー層を設けた「プライマー層/基材フィルム/プライマー層」の構成からなるフィルムを作成した。
【0096】
(3)樹脂層形成工程
ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製「PVA124」、平均重合度2400、平均ケン化度98.0?99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、基材フィルムの一方のプライマー層上にカンマコーターを用いて連続で塗工し、80℃で5分間乾燥させることにより、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層からなる3層構造の積層フィルムロールを作製した。ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層の厚みは10.6μmであった。ここでも、同じ作業を基材フィルムの反対側のプライマー層上にも施し、両面にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を設けた「ポリビニルアルコール系樹脂層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層」の構成からなる積層フィルムを作成した。ここで、ポリビニルアルコール水溶液は、基材フィルムの端から1cmの両端の領域(第3端部)においては塗布しなかった。
【0097】
(4)染色前除去工程および延伸工程
上記の積層フィルムロールの両端部(第2端部)を端から2cmの位置で切断して未塗布部分を連続で除去した後(染色前除去工程)、ロール間空中延伸装置にて160℃の延伸温度で縦方向に5.8倍に自由端一軸延伸し、積層フィルムロールを得た。得られた積層フィルムロールの厚みは55.2μmであり、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは5.1μmであった。
【0098】
(5)染色工程、架橋工程、貼合前除去工程
延伸後の積層フィルムロールについて、次の手順で染色工程および架橋工程を行なった。まず、積層フィルムを30℃のヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液である30℃の染色溶液に150秒間程度の滞留時間となるように浸漬し、ポリビニルアルコール系樹脂層の染色を行ない(染色工程)、ついで10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液である72℃の架橋溶液に600秒間程度の滞留時間となるように浸漬させた(架橋工程)。その後、10℃の純水で4秒間洗浄した後、このフィルムの両端部を端から1.5cmずつの位置でスリットして両端部のカール部分(第1端部)を除去した(貼合前除去工程)。最後に80℃で300秒間乾燥させて、積層フィルムロールを得た。
【0099】
(6)貼合工程
貼合前除去工程を経た積層フィルムロールを用いて、次の手順で偏光板を作製した。まず、ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製「KL-318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部混合し、接着剤溶液とした。
【0100】
次に、得られた積層フィルムロールの両面に存在するポリビニルアルコール系樹脂層上に、上記接着剤溶液を塗布した後、トリアセチルセルロース(TAC)からなる保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製「KC4UY」)を両面から貼合し、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板ロールを得た。得られた偏光板は、偏光子端部での折れ込みやシワ、青変といった不具合もなく、偏光子の端部まで良好に接着された良い状態のものであった。
【0101】
[実施例2]
基材として、1,4-シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸、エチレングリコールの3種のモノマーが共重合されてなるポリエステル基材を用いた。基材フィルムの厚みは70μmであった。実施例1と同じ方法でプライマー層およびポリビニルアルコール系樹脂層を設け、「ポリビニルアルコール系樹脂層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層」の構成からなる積層フィルムを作成した(積層工程)。プライマー層の厚みは0.2μm、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは10.4μmであった。ここでも、ポリビニルアルコール水溶液は、基材フィルムの端から1cmの両端の領域(第3端部)においては塗布しなかった。
【0102】
上記の積層フィルムロールの端から2cmの両端の領域(第2端部)を除去してから(染色前除去工程)、ロール間空中延伸装置にて110℃の延伸温度で縦方向に4.0倍に自由端一軸延伸し(延伸工程)、積層フィルムロールを得た。得られた積層フィルムロールの厚みは40.5μmであり、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは5.2μmであった。
【0103】
得られた積層フィルムを実施例1と同様にして染色工程を行ない、洗浄し、ついで、積層フィルムの端から2cmの両端の領域(第1端部)をスリットにより連続で除去した(貼合前除去工程)。その後、実施例1と同じ方法で乾燥して積層フィルムを得た。得られた積層フィルムに実施例1と同じ方法で両面に保護フィルムを貼合して(貼合工程)、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板ロールを得た。得られた偏光板は、偏光子端部での折れ込みやシワ、青変といった不具合もなく、偏光子の端部まで良好に接着された良い状態のものであった。」

エ 「【図1】


(2) 引用例4発明
上記(1)ア?エによれば、引用例4の[実施例2]には、引用例4における本発明の「偏光板の製造方法」を具体化した「偏光板の製造方法」により製造された「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板」として、次の発明が記載されている。

「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板であって、以下の製造方法により製造された偏光板。
1,4-シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸、エチレングリコールの3種のモノマーが共重合されてなるポリエステル基材フィルムの両面にプライマー層を設けたプライマー層/基材フィルム/プライマー層の構成からなるフィルムを作成し、
ポリビニルアルコール水溶液を、基材フィルムの一方のプライマー層上塗工し、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層からなる3層構造の積層フィルムロールを作製し、同じ作業を基材フィルムの反対側のプライマー層上にも施し、両面にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を設けたポリビニルアルコール系樹脂層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層の構成からなる積層フィルムを作成し、
上記の積層フィルムロールを110℃の延伸温度で縦方向に4.0倍に自由端一軸延伸し、積層フィルムロールを得て、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは5.2μmであり、
延伸後の積層フィルムロールについて、染色工程および架橋工程を行ない、その後、洗浄した後、最後に80℃で300秒間乾燥させて、積層フィルムロールを得て、
次に、得られた積層フィルムロールの両面に存在するポリビニルアルコール系樹脂層上に、トリアセチルセルロース(TAC)からなる保護フィルムを両面から貼合し、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板ロールを得て、偏光板を作製した。」

(3) 対比
本件発明と引用例4発明とを対比すると、次のとおりである。
ア 引用例4発明の「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板」における両側の「保護フィルム」は、それぞれ本件発明の「保護フィルム」に相当する。

イ 引用例4発明においては、偏光板の製造方法の内容からみて、引用例4発明の「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板」における両「偏光子層」は、「染色」・「架橋」された「ポリビニルアルコール系樹脂層」から構成されるものであり、ここで、「延伸後」の該「ポリビニルアルコール系樹脂層」の「ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは5.2μmであ」る。
引用例4発明の両「偏光子層」は、その厚みからみて、フィルム状であるということができる。
また、引用例4発明の「偏光板」における両「偏光子層」は、それぞれ本件発明の「偏光フィルム」に相当し、引用例4発明の両「偏光子層」は、それぞれ「厚みが10μm以下であ」るとの要件を満たす。

ウ 引用例4発明の「偏光板」は、「保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる」から、両「偏光子層」は、その一方(片側)の面に「保護フィルム」を備えるものである。
引用例4発明の「偏光板」は、本件発明の「偏光板」に相当し、引用例4発明の「偏光板」は、本件発明の「偏光板」の「偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを備える」との要件を満たす。

エ 以上の対比結果を踏まえると、本件発明と引用例4発明は、上記1(2)アにおける(一致点)と同じ点で一致し、(相違点1)及び(相違点2)と同じ点で相違する。

(4) 判断
ア 相違点1について
(ア) 引用例4発明は、「110℃の延伸温度で縦方向に4.0倍に自由端一軸延伸し」、「洗浄した後、最後に80℃で300秒間乾燥させて」ているから、引用例4発明における「延伸倍率」は「4.0倍」であり、また、乾燥処理条件は「80℃、300秒」である。

(イ) 引用例4発明における「偏光子層」の「延伸倍率」「4.0倍」は、本件明細書に記載の実施例2の「5.2倍」と比較するとずっと低く、通常用いられる延伸倍率の下限に近い倍率となっていることが把握できる。
また、引用例4発明の「偏光子層」の乾燥処理条件「80℃、300秒」は、本件明細書に記載の実施例2の乾燥処理条件「(1)50℃、150秒、(2)65℃、150秒」あるいは実施例1、3の乾燥処理条件「40℃、300秒」と比較すると、より高温の上限に近い温度(及び時間)の乾燥処理条件となっていることが把握できる。

(ウ) してみると、上記1(2)イ(ア)aの「偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」を高く制御するための延伸倍率や乾燥温度等の条件、本件明細書の実施例1?3の延伸倍率、乾燥処理条件、単位膜厚あたり突刺し強度値や、引用例4発明の上記(ア)の延伸倍率条件及び温度・乾燥時間等の乾燥処理条件からみて、引用例4発明の「偏光子層」の「単位膜厚あたり突刺し強度」は、実施例1、3あるいは実施例2のものと同程度あるいはそれ以上高くなっていると考えられる。
そうすると、引用例4発明において、「最後に80℃で300秒間乾燥させ」た後の「偏光子層」(本件発明の「偏光フィルム」に相当)は、該「偏光子層」をサンプルとして、「突刺し治具が通過することができる直径15mm以下の円形の孔の開いた2枚のサンプル台の間に、偏光フィルムの突刺し試験用のサンプルを挟み、温度23±3℃の環境下、突刺し速度0.33cm/秒で、前記サンプルの主面の法線方向から前記突刺し治具を突刺し、前記サンプルの吸収軸に沿って前記サンプルが一箇所裂けた際の強度を前記サンプル12枚について測定した平均値を、前記サンプルの膜厚で除した値であり」、「前記突刺し治具は、円柱状の棒であり、前記サンプルに接する先端が球形または半球形であって、先端の直径が1mmφであり先端の曲率半径が0.5Rである突刺し針を備える」ものとして求めた、「偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」は5.8gf/μm以上となっている蓋然性が高い。
してみると、上記相違点1は実質的な相違点を構成しない。

イ 相違点2について
(ア) 引用例4発明に関し、引用例4の段落【0002】に記載されているように、用いられる液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などモバイル機器への展開、さらには大型テレビへの展開などに伴い、薄肉軽量化が求められているところ、このようなノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などのモバイル機器あるいは大型テレビにおいては額縁が狭い方が好ましく、偏光板に関し、高い寸法精度あるいは高精度な端面加工が求められることは当業者にとって周知の技術的事項である。また、偏光板として外観が良好なものが好ましいことはいうまでもないことである。

(イ) そうすると、引用例4発明において、偏光板の端面を精度よく且つ外観が良好な状態に仕上げることができる引用例2に記載された上記の技術を採用して、上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 平成30年9月3日付けの意見書における請求人の主張について
(ア) 請求人は、意見書の「(5) 理由2について」「(5-3) 引用文献4との対比」において、「上記(5-2)でも述べたとおり、延伸工程における延伸温度が低い場合、基材フィルム上に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層におけるポリビニルアルコール系樹脂の配向の緩和が抑制されるため、ポリビニルアルコール系樹脂層の配向性が高い状態で維持されることは技術常識です。そして、配向性の高いポリビニルアルコール系樹脂層から得られる偏光フィルムは裂けやすいため、単位膜厚あたりの突刺し強度が低下します。」、「引用文献4の実施例2及び3の延伸温度は110℃であり、この延伸温度は、本願の明細書の実施例に記載の延伸温度160℃(本願の明細書の段落[0188])に比べて低くなっています。」、「したがって、上記した理由により、引用文献3の実施例2及び3に記載の方法で得られた偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度は、本願の実施例に記載の偏光フィルムの単位膜厚あたりの突刺し強度よりも低く、単位膜厚あたりの突刺し強度は5.8gf/μm未満である蓋然性が高いと推測されます。」と主張している。

(イ) しかしながら、上記2(4)ウ(イ)で述べたとおり、請求人の「延伸工程における延伸温度が低い場合、基材フィルム上に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層におけるポリビニルアルコール系樹脂の配向の緩和が抑制される」との主張はその根拠が不明である。そして、引用例4発明においては、延伸倍率が「4.0倍」と低く、また、110℃で縦一軸延伸を行っているのであるから、ネックインが生じにくく(あるいは強い配向となりにくく)なっている。また、引用例4発明の乾燥処理条件「80℃、300秒」は、本件発明の実施例2の乾燥処理条件「(1)50℃、150秒、(2)65℃、150秒」、あるいは実施例1、3の乾燥処理条件「40℃。300秒」よりも高温である。以上を勘案すると、やはり引用例4発明における「偏光フィルム」の「単位膜厚あたりの突刺し強度」は5.8gf/μm以上となっている蓋然性が高いということができる。
よって、請求人の上記(ア)の主張を採用することはできない。

エ 以上のとおりであるから、本件発明は、引用例4発明及び引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおりであって、本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしていない。
また、本件発明は、引用例1発明1及び引用例2に記載された技術、引用例1発明2及び引用例2に記載された技術、引用例3発明及び引用例2に記載された技術、あるいは引用例4発明及び引用例2に記載された技術に基づいて、本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-28 
結審通知日 2019-01-15 
審決日 2019-01-28 
出願番号 特願2015-230622(P2015-230622)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G02B)
P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
河原 正
発明の名称 偏光板  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ