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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1350035
審判番号 不服2018-4824  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-09 
確定日 2019-04-02 
事件の表示 特願2013-246116「情報送信装置、情報送信方法及びコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 4日出願公開、特開2015-103234、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年11月28日の出願であって、平成28年11月24日付けで拒絶理由通知がなされ、平成29年1月11日付けで手続補正がなされ、平成29年5月24日付けで拒絶理由通知(最後)がなされ、平成29年7月25日付けで手続補正がなされたが、平成29年12月26日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成30年4月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要

原査定(平成29年12月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1,2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004-340687号公報
2.特開平10-160491号公報

2.請求項1、3、4には「前記到着時刻が前記要求が受信された時刻に近い順」と記載されているが、当該請求項には、情報通信装置が「要求」を受信すること等記載されておらず、また、何によって「要求が受信された」かについても記載されていない。したがって、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第3 本願発明

本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成30年4月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ユーザの通信装置から送信された要求を受信する受信部と、
受信された前記要求に応じて、前記ユーザが要求している、現在地以外のユーザに指定された場所から行先までの行き方を少なくとも含む案内情報を検索する検索部と、
前記案内情報で示される行先に到着する時刻を表す到着時刻を算出する時刻算出部と、
検索された案内情報のうち、前記ユーザが訪れることが可能な行先の案内情報を、前記到着時刻が前記要求が受信された時刻に近い順に前記ユーザの通信装置に送信する送信部と、
を備える情報送信装置。」

本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明3は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明4は、本願発明1に対応するコンピュータプログラムの発明であり、本願発明1の各部を、コンピュータに実行させる各ステップとした発明である。

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2004-340687号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、施設名称表示システムの概略システム構成を説明するための図である。
【0029】
本システムは、移動端末100、及びセンター(基地局ともいう)200を備えている。両者はそれぞれ通信機能を備えており、両者間でデータ通信を行えるようになっている。
・・・(中略)・・・
【0031】
移動端末100は、車両等の移動体に搭載される情報処理端末、例えば、目的地(又は経由地)への経路を案内する機能を有する、いわゆるカーナビゲーション装置である。」

イ.「【0041】
移動端末100に施設の検索条件(ジャンル等)、及び周辺探索要求が入力されると、移動端末100は、GPS受信機102等により検出した現在地(東経・北緯等)、ジャイロセンサ103等により検出した方向(上り、下り)、地図DB106より取得した現在地に対応する道路の道路リンクID、及びユーザID等を、センター200に送信(アップロード)する(S100)。」

ウ.「【0042】
センター200は、移動端末100から送信される現在地や道路リンクID等を受信し、その現在地に対応する道路が高速・有料道路か否かを判定する(S101)。」

エ.「【0043】
その現在地に対応する道路が高速・有料道路であると判定された場合には(S101:Yes)、センター200は、一般道路へのアクセスポイント(その現在地に対応する高速・有料道路と一般道路とが交差するポイント)を検索する(S102)。・・・(中略)・・・例えば、その現在地に対応する高速・有料道路と一般道路とが交差するポイントのうちの直近(例えば進行方向直近)のものをアクセスポイントとすることが考えられる。」

オ.「【0045】
アクセスポイントが検索されると、センター200は、POIサーバ202により、そのアクセスポイントを含む所定範囲(例えばそのアクセスポイントを中心とする半径5kmの範囲)に存在する特定ジャンル(移動端末100から受信したジャンル)に分類された施設を検索する。」

カ.「【0046】
一方、現在地に対応する道路が高速・有料道路でないと判定された場合には(S101:No)、現在地を含む所定範囲(例えば現在地を中心とする半径5kmの範囲)に存在する施設が検索される。」

キ.「【0048】
複数の施設の位置が検索されると、センター200は、経路検索サーバ201により、現在地と上記検索された複数の施設位置それぞれの間の経路を検索する(S104)。ここでは、経路検索に際して交通情報DB203aが参照されるため、最新の道路交通情報(例えば渋滞時間)を考慮した経路が検索される。これにより、各経路の経路長が得られるため、各施設への移動予想時間(旅行時間ともいう)を算出することが可能となる。」

ク.「【0049】
各施設への移動予想時間が算出されると、センター200は、各施設名称の表示順序を決定する。この決定のため、センター200は、各施設への移動予想時間に基づいて施設名称等をソートする(S105)。ここでは、センター200は、各施設への移動予想時間の短い順に施設名称をソートするものとする。これにより、各施設名称の表示順序が決定される。」

ケ.「【0050】
施設名称の表示順序が決定されると、センター200は、その表示順序の施設名称リスト(各施設名称及び各施設への移動予想時間を含む)を作成し、これを移動端末200に送信する(S106)。移動端末100は、通信装置108により、センター200から送信される施設名称リストを受信する。CPU101(表示制御部)は、その受信した施設名称リストに基づいて、各施設の施設名称を、各施設への移動予想時間に基づく表示順序で画像表示装置109に表示させる。」

前記ア.?ケ.によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「移動端末100及びセンター200を備え(【0028】)、
移動端末100は、車両等の移動体に搭載され、目的地への経路を案内する機能を有するカーナビゲーション装置であり(【0031】)、
移動端末100は、施設の検索条件であるジャンル及び周辺探索要求が入力されると、現在地や方向(上り、下り)、道路リンクID、ジャンルをセンターに送信し(【0041】【0045】)、
センター200は、
移動端末100から送信された現在地に対応する道路が高速・有料道路か否かを判定し(【0042】)、
当該道路が高速・有料道路であると判定した場合には、一般道路へのアクセスポイントであって進行方向直近のものを検索し(【0043】)、
そのアクセスポイントを含む所定範囲に存在し、移動端末100から受信した前記ジャンルに分類された施設を検索し(【0045】)、
一方、高速・有料道路でないと判定した場合には、現在地を含む所定範囲に存在する施設を検索し(【0046】)、
複数の施設の位置が検索されると、現在地と検索された複数の施設位置それぞれの間の経路を検索して、各施設への移動予想時間を算出し(【0048】)、
各施設への移動予想時間の短い順に施設名称をソートして、施設名称の表示順序を決定し(【0049】)、
各施設名称及び各施設への移動予想時間を含む、前記表示順序の施設名称リストを作成し、当該施設名称リストを移動端末200に送信し(【0050】)、
移動端末100は、受信した施設名称リストに基づいて、各施設の施設名称を、各施設への移動予想時間に基づく表示順序で画像表示装置109に表示する(【0050】)、
施設名称表示システム(【0028】)。」

2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平10-160491号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0022】本実施形態のナビゲーションシステムは、図1に示すように、移動体6に搭載された情報表示装置1と、情報表示装置1と移動体通信等の通信回線5を介して接続された情報提供装置2と、を備えて構成されている。」

イ.「【0087】図7は情報表示装置1が実行する情報表示処理を説明するためのフロー図である。
【0088】先ず、ユーザ操作解析部50は、入力装置15に、情報表示処理の要求が入力されたか否かを判断する(ステップ1001)。たとえば、図1において、情報表示装置1の前面に設けられたボタン15aが押された場合、ユーザ操作解析部50は、入力装置15に情報表示処理の要求が入力されたものと判断する。
【0089】次に、情報表示処理の要求が入力された場合、ユーザ操作解析部50は、ユーザに検索したい施設情報を選択させる(ステップ1002)。」

ウ.「【0091】図8にディスプレイ11に表示された、施設情報選択のためのメニュー画面の一例を示す。図8に示す例では、ユーザに、ホテル、レストラン、駐車場、駐車場、観光地ガイド等の項目の中から任意の項目を選択させることで、施設情報の属性を設定している。」

エ.「【0095】検索範囲設定部60は、マップマッチ処理部56で算出された現在地に関する情報を取得する。また、ステップ1002でユーザが選択した施設の属性に関する情報とを取得する。そして、当該取得した現在地情報と施設属性情報とを、施設情報の検索条件として設定する。」

オ.「【0100】次に、検索範囲設定部60は、設定した検索条件に当該情報表示装置1の識別情報を付して、情報提供装置2に送信するように、表示側通信装置21に指令を出す。これを受けて、表示側通信装置21は、検索範囲設定部60で設定した検索条件と当該情報表示装置1の識別情報とを、情報提供装置2に送信する(ステップ1004)。」

カ.「【0101】次に、表示側通信装置21は、情報提供装置2からの応答を待つ(ステップ1005)。応答があった場合は、情報提供装置2から送信されたデータを受信データ解析部61に転送する。
【0102】次に、受信データ解析部61は、表示側通信装置21から転送されたデータを解析する(ステップ1006)。そして、提供されたデータに含まれる複数の施設情報を選別すると共に、選別した複数の施設情報各々に含まれる詳細情報、例えば施設の名称、地図上の位置、サービス内容、サービス時間等の情報を検出する。」

キ.「【0103】次に、アイコン描画部64は、受信データ解析部61で解析した複数の施設情報各々に対応するアイコンを、ディスプレイ11に表示されている地図上に重ねて表示する(ステップ1007)。」

ク.「【0108】次に、個別情報選択部72は、ディスプレイ11上に表示されているアイコンの中からユーザが選択したアイコンに対応する施設情報を、受信データ解析部61で解析されたデータの中から選び出す(ステップ1008)。」

ケ.「【0113】次に、個別情報選択部72は、ステップ1008で選択されたアイコンに対応する施設情報の詳細をディスプレイ11に表示するように、アイコン描画部64に指令を出す。これを受けて、アイコン描画部64は、グラフィック処理部59に、ステップ1008で選択されたアイコンに対応する施設情報の詳細、すなわち、施設の名称、サービス内容等の詳細情報を、ディスプレイ11に表示する(ステップ1009)。」

コ.「【0115】尚、選択された施設情報に含まれる詳細情報をディスプレイ11に表示した後、当該施設を実際に利用するか否かを選べるようにし、利用する方を選んだ場合に、経路計算部51において、当該施設を目的地として経路計算を行い、経路誘導部52で当該施設までの経路誘導を行うようにしてもよい。このようにすることで、ユーザは、選び出した施設に容易に行くことができる。」

サ.「【0155】図16は情報提供装置2が実行する情報提供処理を説明するためのフロー図である。
・・・(中略)・・・
【0158】次に、情報検索部83は、ユーザ要求解析部82で解析された検索条件に従い、情報記憶装置25に記憶された施設情報を検索して、当該検索条件に合致する施設情報を全て検出する(ステップ3003)。
【0159】たとえば、ユーザ要求解析部82で解析された検索条件が、移動体6の現在地、施設の属性「レストラン」、である場合、現在地から所定範囲内にあるレストランの施設情報を情報記憶装置23から検索する。」

シ.「【0165】次に、到着時刻予想部90は、ユーザ要求解析部82で検索された検索条件の現在地情報と、情報検索部83で検出した施設情報各々に含まれる施設の位置情報とに基づき、移動体6が情報検索部83で検出した施設情報各々に対応する施設3に到着する時間を予測する(ステップ3004)。」

ス.「【0172】次に、施設利用可能判定部91は、情報検索部83で検出した施設情報各々に含まれる営業時間と、到着時刻予想部90で予測した、移動体6の前記検出した施設情報各々に対応する施設3への到着予想時刻とを基に、情報検索部83で検出した施設情報の中から、移動体6が施設3に到達したときに、当該施設3が営業しているもの検出する(ステップ3005)。」

セ.「【0176】次に、情報加工部84は、施設利用可能判定部91で検出された施設情報を、ユーザ要求解析部82で解析されたユーザの識別情報によって特定される情報表示装置1に送信するように、提供側通信装置28に要求する(ステップ3006)。これを受けて提供側通信装置28は、情報表示装置1と通信を行う。」

前記ア.?セ.によれば、引用文献2には次の事項が記載されている。

<引用文献2の記載事項>
「情報表示装置1と情報提供装置2とを備え(【0022】)、
情報表示装置1は、
情報表示処理の要求が入力された場合、ユーザに検索したい施設情報の属性を選択させ(【0089】【0091】)、
現在地に関する情報とユーザが選択した施設の属性に関する情報とを取得して、現在地情報と施設属性情報とを施設情報の検索条件として設定し(【0095】)、
設定した検索条件を情報提供装置2に送信し(【0100】)、
情報提供装置2は、
検索条件の現在地から所定範囲内にあり、検索条件の施設属性に該当する施設情報を検索し(【0159】)、
現在地情報と施設情報各々に含まれる施設の位置情報とに基づき、移動体6が検索された施設情報各々に対応する施設3に到着する時刻を予測し(【0165】)、
施設情報各々に含まれる営業時間と、施設情報各々に対応する施設3への到着予想時刻とを基に、施設情報の中から、移動体6が施設3に到達したときに、当該施設3が営業しているものを検出し(【0172】)、
検出された当該施設情報を情報表示装置1に送信し(【0176】)、
情報表示装置1は、
情報提供装置2から受信した複数の施設情報各々に含まれる、施設の名称、地図上の位置、サービス内容、サービス時間の詳細情報を検出し(【0101】【0102】)、
複数の施設情報各々に対応するアイコンを、ディスプレイ11に表示されている地図上に重ねて表示し(【0103】)、
ユーザが選択したアイコンに対応する施設情報を選び出し(【0108】)、当該施設情報の詳細情報をディスプレイ11に表示し(【0113】)、
詳細情報を表示した後、当該施設を実際に利用するか否かを選べるようにし、利用する方を選んだ場合に、当該施設を目的地として経路計算を行い、当該施設までの経路誘導を行う(【0115】)、
ナビゲーションシステム(【0022】)。」

第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明のセンターとを対比すると、次のことがいえる。

・引用発明の「センター」は、「各施設名称及び各施設への移動予想時間を含む、前記表示順序の施設名称リストを作成し、当該施設名称リストを移動端末200に送信」することから、本願発明1の「情報送信装置」に相当する。

・引用発明の「移動端末100」は、「車両等の移動体に搭載され、目的地への経路を案内する機能を有するカーナビゲーション装置」であり、「施設の検索条件であるジャンル及び周辺探索要求が入力されると、現在地や方向(上り、下り)、道路リンクID、ジャンルをセンターに送信」することから、施設の周辺探索要求をセンターに送信する「ユーザの通信装置」といえる。
したがって、センターは、ユーザの通信装置から送信された要求を受信する受信手段を有するといえる。
このセンターの受信手段は、本願発明1の「ユーザの通信装置から送信された要求を受信する受信部」に相当する。

・引用発明のセンターが移動端末に送信する「各施設名称及び各施設への移動予想時間」は、ユーザの通信装置から受信された要求に応じて提供される、ユーザが要求している案内情報といえる。
したがって、引用発明の「各施設名称及び各施設への移動予想時間」と、本願発明1の「受信された前記要求に応じて、前記ユーザが要求している、現在地以外のユーザに指定された場所から行先までの行き方を少なくとも含む案内情報」は、「受信された前記要求に応じて、前記ユーザが要求している、案内情報」の点で共通する。

・引用発明の「移動端末100から送信された現在地に対応する道路が高速・有料道路か否かを判定し、
当該道路が高速・有料道路であると判定した場合には、一般道路へのアクセスポイントであって進行方向直近のものを検索し、
そのアクセスポイントを含む所定範囲に存在し、移動端末100から受信した前記ジャンルに分類された施設を検索し、
一方、高速・有料道路でないと判定した場合には、現在地を含む所定範囲に存在する施設を検索し、
複数の施設の位置が検索されると、現在地と検索された複数の施設位置それぞれの間の経路を検索して、各施設への移動予想時間を算出」する手段は、全体として、移動端末に送信される「各施設名称及び各施設への移動予想時間」すなわち案内情報を検索する検索手段といえる。
したがって、引用発明の当該検索手段と、本願発明1の「受信された前記要求に応じて、前記ユーザが要求している、現在地以外のユーザに指定された場所から行先までの行き方を少なくとも含む案内情報を検索する検索部」は、「受信された前記要求に応じて、前記ユーザが要求している、案内情報を検索する検索部」の点で共通する。

・引用発明の「各施設名称及び各施設への移動予想時間を含む、前記表示順序の施設名称リストを作成し、当該施設名称リストを移動端末200に送信」する手段と、本願発明1の「検索された案内情報のうち、前記ユーザが訪れることが可能な行先の案内情報を、前記到着時刻が前記要求が受信された時刻に近い順に前記ユーザの通信装置に送信する送信部」は、「検索された案内情報を前記ユーザの通信装置に送信する送信部」の点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明のセンターとの一致点、相違点は次のとおりである。

<一致点>
「ユーザの通信装置から送信された要求を受信する受信部と、
受信された前記要求に応じて、前記ユーザが要求している、案内情報を検索する検索部と、
検索された案内情報を、前記ユーザの通信装置に送信する送信部と、
を備える情報送信装置。」

<相違点1>
案内情報が、本願発明1では「現在地以外のユーザに指定された場所から行先までの行き方を少なくとも含む」のに対し、引用発明では「各施設名称及び各施設への移動予想時間を含む」ものであり、「現在地以外のユーザに指定された場所から行先までの行き方」を含まない点。

<相違点2>
本願発明1は「前記案内情報で示される行先に到着する時刻を表す到着時刻を算出する時刻算出部」を備えるのに対し、引用発明は施設への移動予想時間を算出するものの、到着時刻までは算出していないから、上記時刻算出部を備えていない点。

<相違点3>
送信部により送信される案内情報が、本願発明1では、「検索された案内情報のうち、前記ユーザが訪れることが可能な行先の案内情報」であるのに対し、引用発明では、進行方向直近の一般道路へのアクセスポイントを含む所定範囲、あるいは、現在地を含む所定範囲に存在する、指定されたジャンルの施設の情報でしかなく、ユーザが訪れることが可能な施設かどうかまでは特定していないから、「検索された案内情報のうち、前記ユーザが訪れることが可能な行先の案内情報」ではない点。

<相違点4>
案内情報を送信する送信部が、本願発明1では「前記到着時刻が前記要求が受信された時刻に近い順」に送信するのに対し、引用発明の「各施設への移動予想時間の短い順」は、「前記到着時刻が前記要求が受信された時刻に近い順」ではなく、また、この順序は表示順序であって送信順序ではない点。

(2)判断

上記相違点1について検討すると、引用発明は、移動体に対し、現在地から検索された施設への移動予想時間を案内するシステムであり、移動体あるいはユーザが、現在地以外のユーザに指定された場所から検索された施設へ移動することは記載も示唆もされていない。
また、引用文献2記載のナビゲーションシステムも、移動体に対し、現在地から施設に到達したときに営業している施設を案内するシステムであり、移動体またはユーザが、現在地以外のユーザに指定された場所から検索された施設へ移動することは記載も示唆もされていない。
したがって、現在地からの移動のみしか想定していない引用発明及び引用文献2の記載事項からは、上記相違点1に係る「現在地以外のユーザに指定された場所から行先までの行き方を少なくとも含む案内情報」の検索を容易に想到することはできない。
よって、本願発明1は、相違点2-4を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について

本願発明2も、本願発明1の「受信された前記要求に応じて、前記ユーザが要求している、現在地以外のユーザに指定された場所から行先までの行き方を少なくとも含む案内情報を検索する検索部」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
本願発明3は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「受信された前記要求に応じて、前記ユーザが要求している、現在地以外のユーザに指定された場所から行先までの行き方を少なくとも含む案内情報を検索する検索部」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
本願発明4は、本願発明1に対応するコンピュータプログラムの発明であり、本願発明1の「受信された前記要求に応じて、前記ユーザが要求している、現在地以外のユーザに指定された場所から行先までの行き方を少なくとも含む案内情報を検索する検索部」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について

1.理由1(特許法第29条第2項)について

審判請求時の補正により、本願発明1、2は「受信された前記要求に応じて、前記ユーザが要求している、現在地以外のユーザに指定された場所から行先までの行き方を少なくとも含む案内情報を検索する検索部」という事項を有し、また、本願発明3、4も当該事項に対応する事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第36条第6項第2号)について

審判請求時の補正により、請求項1には、情報送信装置に「ユーザの通信装置から送信された要求を受信する受信部」を備えることが記載され、また、請求項3には「情報送信装置が、ユーザの通信装置から送信された要求を受信する受信ステップ」が記載され、請求項4には「ユーザの通信装置から送信された要求を受信する受信ステップ」をコンピュータに実行させることが記載されたから、原査定の理由2を維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-18 
出願番号 特願2013-246116(P2013-246116)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉田 誠  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 宮久保 博幸
金子 幸一
発明の名称 情報送信装置、情報送信方法及びコンピュータプログラム  
代理人 特許業務法人 志賀国際特許事務所  

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