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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01P
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01P
管理番号 1350130
審判番号 不服2017-19325  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-26 
確定日 2019-03-22 
事件の表示 特願2013-127068「給電路」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月5日出願公開、特開2015-2490〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月18日の出願であって、平成29年3月15日付けで拒絶理由が通知され、同年5月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月26日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年12月26日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後の発明
平成29年12月26日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成29年5月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「無線機に結合する導波管-トリプレート線路変換器からトーナメント給電で複数のパッチアンテナに至るトリプレート線路として形成された給電路であって、
上記導波管-トリプレート線路変換器のプローブに一端が連なり、前記プローブの幅に対応する第1の幅を有し、かつ前記第1の幅と前記一端から他端までの長さにおいて所定のインピーダンスを有する幹線路と、
前記他端に連なり、前記第1の幅より狭く前記インピーダンスと整合する第2の幅において前記他端から複数方向に分岐する前記トーナメント給電の母線と、を備える
ことを特徴とする給電路。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「無線機に結合する導波管-トリプレート線路変換器からトーナメント給電で複数のパッチアンテナに至るトリプレート線路として形成された給電路であって、
上記導波管-トリプレート線路変換器のプローブに一端が連なり、前記プローブの幅に対応する一様の幅である第1の幅を有し、かつ前記第1の幅と前記一端から他端までの長さにおいて所定のインピーダンスを有する幹線路と、
インピーダンス整合用のトランスフォーマを介さずに前記他端に連なり、前記第1の幅より狭く前記インピーダンスと整合する一様の幅である第2の幅において前記他端から複数方向に分岐する前記トーナメント給電の母線と、を備え、
前記導波管-トリプレート線路変換器を介して供給される電力の下で、前記給電路が晒される環境における前記給電路の温度と、前記給電路の発熱量との双方または何れか一方が既定の限度内に抑えられるように、前記第1の幅は、前記第2の幅よりも広く設定され、かつ前記導波管-トリプレート線路変換器は、前記母線の至近点に配置されている
ことを特徴とする給電路。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2 補正の適否について
請求項1に係る上記1の補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「幹線路」について、「前記プローブの幅に対応する第1の幅」を「前記プローブの幅の対応する一様の幅である第1の幅」と特定し、同様に補正前の「母線」について、「前記他端に連なり」という事項を「インピーダンス整合用のトランスフォーマを介さずに前記他端に連なり」と特定し、前記「母線」の「第2の幅」を「一様の幅である第2の幅」と特定し、さらに、前記「第1の幅」と前記「第2の幅」との関係、及び、同様に補正前の「導波管-トリプレート線路変換器」と前記「母線」との関係を、「前記導波管-トリプレート線路変換器を介して供給される電力の下で、前記給電路が晒される環境における前記給電路の温度と、前記給電路の発熱量との双方または何れか一方が既定の限度内に抑えられるように、前記第1の幅は、前記第2の幅よりも広く設定され、かつ前記導波管-トリプレート線路変換器は、前記母線の至近点に配置されている」と特定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(補正後の発明)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)補正後の発明
補正後の発明は、上記1で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明及び引用文献記載事項並びに周知技術
ア 引用文献1と引用発明
原査定の拒絶理由に引用された特公平7-52803号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「平面アンテナ」の発明に関し、図面(第4図)とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
(ア)「[産業上の利用分野]
本発明は、例えば、マイクロ波通信、衛星放送受信等に用いられる平面アンテナに関するものである。」(1頁1欄14行-2欄1行)
(イ)「[従来の技術]
ストリップラインを形成した基板を両側より接地基板により挟んだ構成の所謂トリプレート形の基板において、上記接地基板に例えばスロットを形成して放射素子とし、ストリップラインによりアンテナ素子をアレイ化し、各放射素子への給電電力をストリップライン内で合成(分岐)する構成の平面アンテナにおいては、供給パターンの給電点に対し、同軸コネクタ、導波管等により給電することが多い。」(1頁2欄2行-10行)
(ウ)「第4図は従来例を示し、放射回路基板1には、環状のスロット2を形成して構成した放射素子3が多数整列して形成されている。給電回路基板4にはストリップラインによる給電線5が形成されており、各給電線5により並列に集合接続されて、最終としての給電点Pより、導波管6内にプローブ7を突出して挿入している。」(1頁2欄11行-2頁3欄1行)
(エ)「[発明が解決しようとする課題]
上記の平面アンテナへ導波管6による給電部を設ける場合、特願昭63-326948号に記載されている方法がある。これは、第4図に示すように、放射素子を削除した部分に導波管6を配し、導波管6内にストリップラインによるプローブ7を突出せしめ、ストリップライン-導波管変換器を構成し、給電するようにしている。」(2頁3欄2行目?2頁3欄8行目)

(オ)図4は以下のとおり。

引用文献1の上記(ウ)、(エ)に従来例として記載された上記(オ)の第4図の平面アンテナは、上記(イ)の従来の技術についての事項を前提としたものといえるから、ストリップライン(給電線5)を形成した給電回路基板4を両側より接地基板により挟んだ構成の所謂トリプレート形の基板において、上記接地基板の一方である放射回路基板1に環状のスロットを形成して放射素子3(以下、「環状スロット放射素子」ということもある。)とし、導波管6内にストリップラインによるプローブ7を直線的に突出せしめてストリップライン-導波管変換器を構成して給電するものであり、各放射素子への給電電力をストリップライン内で分岐する構成の平面アンテナであるといえ、前記「ストリップライン」は、トリプレート形の基板に形成された「トリプレート線路」ということができる。
そして、前記プローブ7は、前記ストリップライン-導波管変換器の導波管6内において該導波管6から給電を受け給電線5の給電点Pに給電するものであるから、前記導波管6内において該導波管6から給電を受ける部分(以下、「プローブ部分」という。)と、該プローブ部分に連なり前記給電線5の給電点Pに接続される線路(以下、「第1の線路」という。)を備えているといえる。
また、前記給電線5は、第4図より2分岐を繰り返して各放射素子に給電するものであるから、「トーナメント給電」するものということができ、特に前記給電点にPに連なる線路(以下、「第2の線路」という。)は、その両端で異なる方向に2分岐される。さらに、前記給電点Pに連なる第2の線路は、前記トーナメント給電により全ての放射素子に電力を供給する元となる線路といえる。
そして、前記ストリップライン-導波管変換器により給電された電力を各放射素子3に給電するための線路を「給電路」と称することは任意であり、前記「給電路」には、前記「第1の線路」と前記「第2の線路」が含まれ、これらは前記「トリプレート線路」といえる。
さらに、第4図より、前記ストリップライン-導波管変換器は、前記第2の線路の至近点に配置されていることが看取できる。
そうすると、引用文献1には、前記「給電路」について、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(引用発明)
「ストリップライン-導波管変換器からトーナメント給電で複数の環状スロット放射素子に至るトリプレート線路として形成された給電路であって、
上記ストリップライン-導波管変換器のプローブ部分に一端が連なり、他端が給電点Pに接続される第1の線路と、
前記他端に連なり、前記他端から2方向に分岐するとともに、前記トーナメント給電により全ての放射素子に電力を供給する元となる第2の線路と、を備え、
前記ストリップライン-導波管変換器は、前記第2の線路の至近点に配置されている
給電路。」

イ 引用文献2とその記載事項
原査定の拒絶理由に引用された特開2005-94314号公報(以下、「引用文献2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
(ア)「【背景技術】
【0002】
近年、アンテナ素子をはじめとする高周波信号の授受をともなう部材を搭載した各種機器が広く普及している。かかる高周波信号を伝送する平面構造の高周波伝送線路としては、いわゆるマイクロストリップ線路が知られている。マイクロストリップ線路は、一般に、誘電体と、この誘電体の下面に形成されたグランド導体と、誘電体の上面に形成された信号線路導体とから構成されるものであり、信号線路導体を介して高周波信号を伝送する。また、高周波伝送線路としては、いわゆるトリプレート線路も知られている。トリプレート線路は、マイクロストリップ線路とは異なり、誘電体の内部に信号線路導体を有し、当該信号線路導体を介して高周波信号を伝送するものである。
【0003】
ところで、このようなマイクロストリップ線路やトリプレート線路といった伝送線路においては、例えば実効的にアンテナ素子の面積を増やして感度の向上を図る平面アレイアンテナ等のように、信号線路導体を2方向に分岐して使用する形態を採用する場合も多い。この場合、伝送線路としては、図9に示すように、グランド導体101が下面に形成された誘電体102の上面に、信号線路導体103をT字状に形成したものを用いる。これにより、伝送線路においては、分岐前の信号線路導体103aから分岐後の信号線路導体103b,103cへと同図中矢印で示す方向に電流が流れることになる。
【0004】
ここで、伝送線路についての重要なパラメータとしては、特性インピーダンスが挙げられる。特に、伝送される信号の周波数が高い高周波伝送線路においては、信号の反射を防止するとともに、周囲のノイズの影響等を回避すべく、特性インピーダンスを安定に保つことが重要である。
【0005】
一般に、特性インピーダンスZ(Ω/m)は、信号線路導体の単位当たりの抵抗をR(Ω/m)、インダクタンスをL(H/m)、コンダクタンスをG(S/m)、キャパシタンスをC(F/m)とすると、次式(1)で表される。なお、特性インピーダンスZは、誘電体の誘電率や信号線路導体の物理的な寸法等の関数で表すことができ、多数の実験式が提案されている。
【0006】
【数1】

【0007】
上述した信号線路導体をT字状に形成した伝送線路においては、図10に示すように、分岐前の信号線路導体における特性インピーダンスをZ_(C1)とし、分岐後の信号線路導体における特性インピーダンスを、それぞれ、Z_(C2),Z_(C3)とすると、これら特性インピーダンスZ_(C1),Z_(C2),Z_(C3)の間には、次式(2)に示す関係が成立する。また、伝送線路においては、Z_(C2)=Z_(C3)の場合には、次式(3)が成立し、Z_(C2)=αZ_(C3)の場合には、次式(4)が成立する。なお、同図に示す信号線路導体を備えた伝送線路は、図11に示すように、所定の電源に接続された実効抵抗Z_(C1)と、並列に接続された2つの実効抵抗Z_(C2),Z_(C3)とを接続した回路と等価である。
【0008】
【数2】

【0009】
【数3】

【0010】
【数4】

【0011】
したがって、信号線路導体をT字状に形成した伝送線路を設計するにあたっては、所望の特性インピーダンスZ_(C1),Z_(C2),Z_(C3)が得られるように、分岐前及び分岐後の信号線路導体の物理的な寸法を決定する必要がある。」

(イ)図9は以下のとおり。

(ウ)図10は以下のとおり。

(エ)「【0019】
なお、前記曲線の形状としては、形成の容易さ、及び信号線路導体の幅方向における端縁を流れる電流の不連続をより小さくする観点から、所定の曲率半径からなる円弧の一部とするのが望ましい。また、分岐後の導体は、分岐部分における特性インピーダンスが不連続となるのを防止するために、一定の導体幅で分岐前の導体に接続されるのが望ましい。」
(オ)「【0033】
シミュレーションは、図4に示すように、下面にグランド導体12が形成された誘電体11として、比誘電率ε_(r)=2.6、誘電体厚d=0.56mmのものを用い、当該誘電体11の上面に形成される信号線路導体13として、導体厚t=35μmのものを用いて行った。また、信号線路導体13は、図5に示すように、分岐前信号線路導体13aとして、導体幅W_(1)=1.6mm、特性インピーダンスZ_(C1)=50Ωに形成するとともに、分岐後信号線路導体13b,13cとして、それぞれ、導体幅W_(2)=W_(3)=0.4mm、特性インピーダンスZ_(C2)=Z_(C3)=100Ωに形成した。
【0034】-【0035】(略)
【0036】
また、比較のため、図7に示すように、信号線路導体をT字状に形成した従来の伝送線路についても反射損失を求めた。」


(カ)図7は以下のとおり。

上記記載からみて、引用文献2には、トリプレート線路である伝送線路は、信号線路導体を有し該信号線路導体を介して高周波信号を伝送するものであり((ア)の【0002】)、前記伝送線路を用いた平面アレイアンテナ等において、前記信号線路導体を2方向に分岐するためにT字状に形成すること(同【0003】、図9)が記載され、さらに、「伝送線路においては、分岐前の信号線路導体103aから分岐後の信号線路導体103b,103cへと同図中矢印で示す方向に電流が流れる」(同【0003】、図9)の記載からみて、前記伝送線路は、前記平面アレイアンテナに適用した場合、前記高周波信号を前記平面アレイアンテナを構成する各アンテナ素子へ伝送する、すなわち給電するために用いる線路といえる。
ここで、伝送線路についての重要なパラメータとしては、特性インピーダンスが挙げられ(同【0004】)、特性インピーダンスZは、誘電体の誘電率や信号線路導体の物理的な寸法等の関数で表すことができる(同【0005】)。そして、信号線路導体をT字状に形成した伝送線路においては、図10に示すように、分岐前の信号線路導体における特性インピーダンスをZ_(C1)とし、分岐後の信号線路導体における特性インピーダンスを、それぞれ、Z_(C2),Z_(C3)とすると、これら特性インピーダンスZ_(C1),Z_(C2),Z_(C3)の間には、前記(2)式(同【0008】)に示す関係が成立し、Z_(C2)=Z_(C3)の場合には、前記(3)式(同【0009】)が成立する(同【0006】)。
したがって、信号線路導体をT字状に形成した伝送線路を設計するにあたっては、所望の特性インピーダンスZ_(C1),Z_(C2),Z_(C3)が得られるように、分岐前及び分岐後の信号線路導体の物理的な寸法を決定する必要がある(同【0011】)。
そして、図7に示す信号線路導体をT字状に形成した伝送線路((オ)の【0036】)について、図5の例と同様に、信号線路導体は、分岐前信号線路導体として、導体幅W_(1)=1.6mm、特性インピーダンスZ_(C1)=50Ωに形成するとともに、分岐後信号線路導体として、それぞれ、導体幅W_(2)=W_(3)=0.4mm、特性インピーダンスZ_(C2)=Z_(C3)=100Ωに形成することが示唆(同【0033】)されている。
また、上記(エ)の、「分岐後の導体は、分岐部分における特性インピーダンスが不連続となるのを防止するために、一定の導体幅で分岐前の導体に接続されるのが望ましい」ことは、信号の反射を防止する((ア)の【0004】)ために、上記図9の伝送線路にも該当する事項であることは明らかである。

したがって、引用文献2には図9の「伝送線路」についての次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認める。
「平面アレイアンテナに給電するために用いられ、信号線路導体を有し該信号線路導体を介して高周波信号を伝送するトリプレート線路である伝送線路において、
前記信号線路導体を2方向に分岐するためにT字状に形成し、この場合、前記伝送線路の分岐前の前記信号線路導体における特定インピーダンスをZ_(C1)とし、前記伝送線路の分岐後の前記信号線路導体における特性インピーダンスをそれぞれZ_(C2)及びZ_(C3)とすると、Z_(C2)=Z_(C3)の場合にZ_(C1)=Z_(C2)/2であり、かつ所望の特性インピーダンスZ_(C1),Z_(C2),Z_(C3)が得られるように、分岐前及び分岐後の前記信号線路導体の物理的な寸法を決定したものであって、具体的には、前記信号線路導体を、分岐前信号線路導体として、導体幅W_(1)=1.6mm、特性インピーダンスZ_(C1)=50Ωに形成するとともに、分岐後信号線路導体として、それぞれ、導体幅W_(2)=W_(3)=0.4mm、特性インピーダンスZ_(C2)=Z_(C3)=100Ωに形成し、
分岐後の導体は、分岐部分における特性インピーダンスが不連続となるのを防止するために、一定の導体幅で分岐前の導体に接続されるものである、
伝送線路。」

ウ 周知文献1、2と周知事項1
当審で新たに引用する特開2006-254399号(以下、「周知文献1」という。)及び特開2010-177618号(以下、「周知文献2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
(周知文献1)
(ア)「【0005】
さらに、このように衛星信号を受信するアンテナ部に受信された数GHZ帯域の信号はTV受像機のような信号受信装置に用いる為に、これに適合した低い周波数帯域に周波数変換をさせ、受信された微弱な伝達信号を増幅させる必要がある。この為に用いられるのが低雑音ブロックダーウン変換器のLNB(Low Noise blockdown converter)である。このようなLNBは前記した信号受信部であるアンテナ部と連結され、全体のアンテナを構成するものにして、その構成は前記アンテナ部に伝達される信号を受け入れる導波管(feed horn)と前述した信号処理を行う回路部とで構成される。」
(イ)「【0014】
本発明が適用されるアンテナはアレイ型パッチアンテナ部10を有する平面アンテナにして、一般的にマイクロストリップアンテナとも呼ばれる形式のアンテナである。このような形式のアンテナは受信部と変調/増幅部で構成され、これはそれぞれアレイ型パッチアンテナ部10と、これの下部に結合するLNB部20とに区分される。さらに、前記パッチアンテナ部10から受信された信号のLNBへの伝達の為に、パッチアンテナ部ではプローブライン12が構成され、LNBには導波管22が構成されて、これを通じてプローブライン12に集まった信号は導波管22を通じてLNBに伝達されるものの、前記従来技術で記述した通り、プローブライン12が導波管22に挿入されるように、アンテナ部から折曲げて立体的に構成する場合には、プローブライン12が完全に固定されないので振動に敏感な問題点があった。従って、これを改善する為に本発明のパッチアンテナ部10のプローブライン12は、パッチアンテナ部から立体的に折曲げて構成せずに、パッチアンテナ部10の平面上に存在するようにする。これを通じて移動等の振動が発生する場合にもプローブライン12がアンテナ部とは別に振動する問題を解決することができる。」

(周知文献2)
(ア)「【0031】
図4はアンテナパターンを示したものであり、8bは基板8に設けた溝であり、第2のベースプレート70の各分岐出力端子70bと対応する基板8側の給電点を示す。8cは第2の導波管端子70b相互とアンテナパターン8aとのインピーダンス整合用の抵抗器であり、アンテナパターン同様にプリント印刷されている。8dは基板8の裏面に設置された地導体(グランドプレーン)である。図中、図2と同一符号は、同一又は相当部分を示す。
【0032】
次に動作について説明する。高周波パッケージ10はパッケージ外部からの制御信号を受け、内部に搭載された半導体増幅器1を動作させ、高周波パッケージ10に入力された高周波信号を増幅し、導波管端子60aより高周波信号を出力し、第1のベースプレート60及び第2のベースプレート70で形成された分配回路へ入力する。高周波信号は回路が導波管で形成されているため、高周波パッケージ10内部に回路を形成することに比べて電力損失を低減して伝送する。分配回路で分岐された高周波信号は各分岐出力端子70bから基板8の給電点8bを介してマイクロストリップライン構成の多数のアレイアンテナに高周波電力を送出する。」

上記周知文献1に記載されているLNBは受信信号を周波数変換及び増幅するためのいわゆる無線受信回路の一部であり、同様に上記周知文献2の高周波パッケージは高周波信号をアレイアンテナに送出するいわゆる無線送信回路の一部である。
したがって、上記周知文献1及び上記周知文献2に記載されているように、「基板の一方の面に増幅器等の無線送受信回路の一部を配置し、他方の面にマイクロストリップ線路を用いて接続されたパッチアンテナアレイを配置し、前記マイクロストリップ線路と無線送受信回路の一部を導波管で結合するアレイアンテナの給電構造。」(以下、「周知事項1」という。)は周知である。

エ 周知文献3と周知事項2
当審で新たに引用する特表2001-518265号(以下、「周知文献3」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「文書WO95/34102は、移動体無線通信システム内における使用のためのアレイアンテナを開示している。このアンテナは、少なくとも2つの列および2つの行を有するマイクロストリップパッチのマトリックスを備えた、マイクロストリップアンテナアレイを含む。さらに、複数の増幅器が備えられ、送信用のそれぞれの電力増幅器、または受信用のそれぞれの低雑音増幅器は、マイクロストリップパッチの異なる列に接続される。最後に、ビーム形成器がそれぞれの増幅器に接続され、マイクロストリップパッチの列により発生せしめられる狭い水平アンテナローブの方向および形状を決定する。」(5頁25行?6頁4行)
(イ)「当業者にとっては、いくつかの他の二重偏波アンテナ素子、例えば、交差ダイポール、環状スロット、ホーン、などが、マイクロストリップアンテナのほかに用いられうることは明らかである。」(7頁10行?12行)

上記周知文献3に記載されているように、「少なくとも2つの列および2つの行を有するマイクロストリップパッチアンテナのマトリックスを備えたマイクロストリップアンテナアレイにおいて、前記マイクロストリップパッチアンテナが環状スロットアンテナで置換可能であること。」(以下、「周知事項2」という。)は周知である。

オ 周知文献4と周知事項3
当審で新たに引用する特開平6-237105号(以下、「周知文献4」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0004】また、マイクロストリップ線路に流せる電流の大きさは線路の幅で決まるので、大電流を流す部分に幅の広いマイクロストリップ線路が必要となる。また、マイクロ波集積回路の調整の容易さ等から、同一特性インピーダンスのマイクロストリップ線路でも部分的に線路幅を広くする場合もある。」

上記周知文献4に開示されているように、「マイクロストリップ線路に流せる電流の大きさは線路の幅で決まるので、大電流を流す部分に幅の広いマイクロストリップ線路が必要となること。」(以下、「周知事項3」という。)はマイクロストリップ線路の線路幅に関する周知事項である。

(3)対比
補正後の発明と引用発明を対比する。
ア 給電路について
引用発明の「給電路」は「トリプレート線路として形成された」ものである点で補正後の発明の「給電路」と共通する。また、引用発明の「ストリップライン-導波管変換器」は、該ストリップラインがトリプレート線路として形成されるのであるから、補正後の発明の「導波管-トリプレート線路変換器」に相当する。
また、補正後の発明の「導波管-トリプレート線路変換器」は「無線機に結合する」ものであるが、引用発明の「マイクロストリップ-導波管変換器」の接続先は言及されていない。
また、補正後の発明の「パッチアンテナ」と引用発明の「環状スロット放射素子」はいずれも「アンテナ素子」である点で共通する。
したがって、補正後の発明の「無線機に結合する導波管-トリプレート線路変換器からトーナメント給電で複数のパッチアンテナに至るトリプレート線路として形成された給電路」と引用発明の「ストリップライン-導波管変換器からトーナメント給電で複数の環状スロット放射素子に至るトリプレート線路として形成された給電線」はいずれも「導波管-トリプレート線路変換器からトーナメント給電で複数のアンテナ素子に至るトリプレート線路として形成された給電路」である点で共通する。

イ 幹線路について
補正後の発明の「幹線路」と引用発明の「第1の線路」は、いずれも「給電路」を構成する線路であり、引用発明の「上記ストリップライン-導波管変換器のプローブ部分」は補正後の発明の「上記導波管-トリプレート線路変換器のプローブ」に相当するから、補正後の発明の「導波管-トリプレート線路変換器のプローブに一端が連なり、前記プローブの幅に対応する一様の幅である第1の幅を有し、かつ前記第1の幅と前記一端から他端までの長さにおいて所定のインピーダンスを有する幹線路」と引用発明の「ストリップライン-導波管変換器のプローブ部分に一端が連なり、他端が給電点Pに接続される第1の線路」は、「導波管-トリプレート線路変換器のプローブに一端が連なり、前記一端から他端までの長さを有する幹線路」である点で共通する。

ウ 母線について
補正後の発明の「母線」と引用発明の「第2の線路」は、いずれも「給電路」を構成する線路であり、両者は幹線路の他端に連なる点で共通し、引用発明1の「前記他端から2方向に分岐する」は補正後の発明の「前記他端から複数方向に分岐する」に含まれ、引用発明の「前記トーナメント給電により全ての放射素子に電力を供給する元となる」「線路」であることは、補正後の発明の「前記トーナメント給電の母線」であることに相当する。
したがって、補正後の発明の「インピーダンス整合用のトランスフォーマを介さずに前記他端に連なり、前記第1の幅より狭く前記インピーダンスと整合する一様の幅である第2の幅において前記他端から複数方向に分岐する前記トーナメント給電の母線」という構成と引用発明の「前記他端に連なり、前記他端から2方向に分岐するとともに、前記トーナメント給電により全ての放射素子に電力を供給する元となる第2の線路」という構成は、「前記他端に連なり、前記他端から複数方向に分岐する前記トーナメント給電の母線」である点で共通する。

エ.給電路の幅と導波管-トリプレート線路変換器の配置について
補正後の発明の「前記導波管-トリプレート線路変換器を介して供給される電力の下で、前記給電路が晒される環境における前記給電路の温度と、前記給電路の発熱量との双方または何れか一方が既定の限度内に抑えられるように、前記第1の幅は、前記第2の幅よりも広く設定され、かつ前記導波管-トリプレート線路変換器は、前記母線の至近点に配置されている」と、引用発明1の「前記ストリップライン-導波管変換器は、前記トリプレート線路の第2の部分の至近点に配置されている」とは、「前記導波管-トリプレート線路変換器は、前記母線の至近点に配置されている」点で共通する。

以上の対比結果を総合すると、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「導波管-トリプレート線路変換器からトーナメント給電で複数のアンテナ素子に至るトリプレート線路として形成された給電路であって、
上記導波管-トリプレート線路変換器のプローブに一端が連なり、前記一端から他端までの長さを有する幹線路と、
前記他端に連なり、前記他端から複数方向に分岐する前記トーナメント給電の母線と、を備え、
前記導波管-トリプレート線路変換器は、前記母線の至近点に配置されている
給電路。」

(相違点1)
一致点である「導波管-トリプレート線路変換器」の接続先に関し、補正後の発明は「無線機に結合する」構成であるのに対し、引用発明はその点の構成が不明である点。

(相違点2)
一致点である「アンテナ素子」に関し、補正後の発明は「パッチアンテナ」であるのに対し、引用発明は「環状スロット放射素子」である点。

(相違点3)
一致点である「幹線路」に関し、補正後の発明では「前記プローブの幅に対応する一様の幅である第1の幅を有し、かつ前記第1の幅と前記一端から他端までの長さにおいて所定のインピーダンスを有する」点が特定されているのに対し、引用発明では、この点の特定がない点。

(相違点4)
一致点である「母線」に関し、補正後の発明では「インピーダンス整合用のトランスフォーマを介さずに前記他端に連なり、前記第1の幅より狭く前記インピーダンスと整合する一様の幅である第2の幅において前記他端から複数方向に分岐する」点で特定されているのに対し、引用発明では、この点の特定がない点。

(相違点5)
補正後の発明では、「前記導波管-トリプレート線路変換器を介して供給される電力の下で、前記給電路が晒される環境における前記給電路の温度と、前記給電路の発熱量との双方または何れか一方が既定の限度内に抑えられるように、前記第1の幅は、前記第2の幅よりも広く設定され、かつ前記導波管-トリプレート線路変換器は、前記母線の至近点に配置されている」のに対し、引用発明では、単に「前記ストリップライン-導波管変換器は、前記トリプレート線路の第2の部分の至近点に配置されている」ものである点。

(4)相違点の検討・判断
ア 相違点1について
相違点1の「導波管-トリプレート線路変換器」の接続先について検討する。
上記(2)ウのとおり、「基板の一方の面に増幅器等の無線送受信回路の一部を配置し、他方の面にマイクロストリップ線路を用いて接続されたパッチアンテナアレイを配置し、前記マイクロストリップ線路と無線送受信回路の一部を導波管で結合するアレイアンテナ」(周知事項1)の給電構造は周知であり、当該周知のアレイアンテナの給電構造を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見当たらないから、当該周知のアレイアンテナの給電構造に基づいて、引用発明の「ストリップライン-導波管変換器(即ち、導波管-トリプレート線路変換器)」の導波管側に給電装置としての無線機を接続して、引用発明の「ストリップライン-導波管変換器(即ち、導波管-トリプレート線路変換器)」を補正後の発明のような「無線機に結合する導波管-トリプレート線路変換器」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

イ 相違点2について
相違点2の「アンテナ素子」について検討する。
上記(2)エのとおり、「少なくとも2つの列および2つの行を有するマイクロストリップパッチアンテナのマトリックスを備えたマイクロストリップアンテナアレイにおいて、前記マイクロストリップパッチアンテナが環状スロットアンテナで置換可能であること。」(周知事項2)は周知であり、当該周知の置換技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見当たらないから、引用発明1の「環状スロット放射素子」を補正後の発明のような「パッチアンテナ」に置換する程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

ウ 相違点3、4について
相違点3、4は、給電路の線幅に関するものであるので、まとめて検討する。まず、相違点3、4に係る補正後の発明の構成について検討する。

(ア)相違点3に係る「幹線路」が「前記第1の幅と前記一端から他端までの長さにおいて所定のインピーダンスを有する」ことについて
補正後の発明は、「母線」について「前記第1の幅より狭く前記インピーダンスと整合する一様の幅である第2の幅において前記他端から複数方向に分岐する」ことが特定されており、請求項1の表記上、「前記インピーダンス」は前記「幹線路」の「所定のインピーダンス」のことであると解される。また、一般に線路同士のインピーダンスを整合することは、特性インピーダンスを整合することといえる。そうすると、「幹線路」の「所定のインピーダンス」は、「所定の特性インピーダンス」のことと解するのが相当である。

(イ)相違点4に係る「トランスフォーマ」について
本願明細書の「このような給電の過程では、トランスフォーマ43Tは、幅が母線43FMより狭く設定されることによって、同じ幅で形成されたその母線43FMと幹線路43Bとの間におけるインピーダンス整合を図る。」(【0020】)及び「また、上記電気信号の母線43FMに対する引き渡しは、幹線路43Bの太さが従来例に比べて約2.5倍の(インピーダンスが1/2倍となる)値に設定されるため、トランスフォーマ43Tが介在しなくても、母線43FMが幹線路43Bから2方向に分岐することに起因するインピーダンス不整合を伴うことなく行われる。」(【0047】)の記載からみて、トランスフォーマは、幹線路と前記幹線路から2分岐する母線が同じ幅で形成されるなどの場合に、前記幹線路と前記母線との間におけるインピーダンス整合を図るためのものであって、幹線路が母線より太く形成され、前記幹線路と前記母線との間で2分岐することに起因するインピーダンス不整合がなければ、前記幹線路と前記母線との間にトランスフォーマを介在する必要はないといえる。そうすると、相違点4の「インピーダンス整合用のトランスフォーマを介さずに」とは、前記幹線路と前記母線との間でインピーダンス整合がとれていることを意味するものと解される。
さらに、相違点3に係る「幹線路」が「一様の幅である第1の幅を有」すること、及び、相違点4に係る「母線」が「一様の幅である第2の幅を有」することについて、「幹線路」と「母線」とが「一様の幅である」ことは、本願明細書には明示されていないが、「幹線路」及び「母線」の幅とは異なる幅の部分を有するインピーダンス整合用のトランスフォーマを介さないで「幹線路」と「母線」とが連なっていることを意味するものと解される。なお、補正後の発明の実施形態である図1、図2の例では、幹線路43Bと母線43FMとの連結部分(図1の点線で囲まれている部分)の前記母線43FMに三角形状の切り欠き部分が形成されているため、厳密には一様の幅である前記母線43FMが前記幹線路43Bと連結されているとはいえないから、この点からも、「幹線路」と「母線」とが「一様の幅である」ことは、トランスフォーマを介さないで「幹線路」と「母線」とが連なっていることを意味するものと解される。

上記(ア)(イ)を踏まえて、上記相違点3、4について検討する。
引用文献2には、上記(2)イのとおり以下の事項(引用文献2記載事項)が記載されている。
「平面アレイアンテナに給電するために用いられ、信号線路導体を有し該信号線路導体を介して高周波信号を伝送するトリプレート線路である伝送線路であって、
前記信号線路導体を2方向に分岐するためにT字状に形成し、この場合、前記伝送線路の分岐前の前記信号線路導体における特定インピーダンスをZ_(C1)とし、前記伝送線路の分岐後の前記信号線路導体における特性インピーダンスをそれぞれZ_(C2)及びZ_(C3)とすると、Z_(C2)=Z_(C3)の場合にZ_(C1)=Z_(C2)/2であり、かつ所望の特性インピーダンスZ_(C1),Z_(C2),Z_(C3)が得られるように、分岐前及び分岐後の前記信号線路導体の物理的な寸法を決定したものであって、具体的には、前記信号線路導体を、分岐前信号線路導体として、導体幅W_(1)=1.6mm、特性インピーダンスZ_(C1)=50Ωに形成するとともに、分岐後信号線路導体として、それぞれ、導体幅W_(2)=W_(3)=0.4mm、特性インピーダンスZ_(C2)=Z_(C3)=100Ωに形成し、
分岐後の導体は、分岐部分における特性インピーダンスが不連続となるのを防止するために、一定の導体幅で分岐前の導体に接続されるものである、
伝送線路。」
そこで、引用発明において、分岐前の第1の線路の線幅及び分岐後の第2の線路の線幅を設定するに際し、引用発明と同様に給電のために2分岐する線路の構造を有する引用文献2記載事項を適用して、前記第1の線路の線幅及び第2の線路の線幅を、前記第1の線路と第2の線路との特性インピーダンスが整合するように設定することは、当業者が容易に想到し得るものである。
この場合、第1の線路については、第1の線路と第2の線路との間にインピーダンス整合用のトランスフォーマが不要であるから、前記第1の線路は一様の幅である第1の幅を有し、かつ前記第1の幅と前記一端から他端までの長さにおいて所定の特性インピーダンスを有するものとなることは明らかである。さらに、前記第1の幅は、プローブ部分と不整合とならないように該プローブ部分に対応した幅であることも当然のことといえる。
また、第2の線路については、インピーダンス整合用のトランスフォーマを介さずに第1の線路の他端に連なり、該第1の線路の所定の特性インピーダンスと整合する一様の幅である第2の幅において前記他端から2分岐するものとなることは明らかであり、2分岐したそれぞれの線路の特性インピーダンスを、分岐前の第1の線路の所定の特定インピーダンスの2倍にするため、引用文献2記載事項と同様に分岐後の第2の幅を分岐前の第1の幅より狭くすることは、当業者が適宜になし得ることである。

エ 相違点5について
上記(2)オのとおり、「マイクロストリップ線路に流せる電流の大きさは線路の幅で決まるので、大電流を流す部分に幅の広いマイクロストリップ線路が必要となること。」(周知事項3)は周知であり、これはマイクロストリップ線路に大電流を流すことによる発熱等による障害に対処することに他ならなず、前記発熱等による障害を考慮して、前記障害が起こらない限度で前記マイクロストリップ線路の線幅を設定することは、当業者が当然に考慮すべき事項といえる。
よって、この点からみても、引用発明において、分岐前の電流が流れる第1の線路の幅を、2分岐された電流が流れる第2の線路の幅より広く設定することは、当業者が適宜になし得ることであり、前記障害が起こらない発熱等の限度は当業者が適宜に設定し得ることである。

オ 小括
したがって、補正後の発明は、引用発明及び引用文献2記載事項並びに周知事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

3 結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年12月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年5月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1に「本願発明」として認定したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-3に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>
1.特公平7-52803号公報
2.特開2005-94314号公報
3.特開2006-279474号公報
4.特開昭61-239701号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用発明、引用文献2及び引用文献2記載事項、並びに、周知事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]で検討した補正後の発明から、補正前の「幹線路」についての「前記プローブの幅に対応する第1の幅」を「前記プローブの幅の対応する一様の幅である第1の幅」とする補正、補正前の「母線」についての「前記他端に連なり」という事項を「インピーダンス整合用のトランスフォーマを介さずに前記他端に連なり」とする補正、前記「母線」の「第2の幅」を「一様の幅である第2の幅」とする補正、及び、前記「第1の幅」と前記「第2の幅」との関係、及び、補正前の「導波管-トリプレート線路変換器」と前記「母線」との関係を、「前記導波管-トリプレート線路変換器を介して供給される電力の下で、前記給電路が晒される環境における前記給電路の温度と、前記給電路の発熱量との双方または何れか一方が既定の限度内に抑えられるように、前記第1の幅は、前記第2の幅よりも広く設定され、かつ前記導波管-トリプレート線路変換器は、前記母線の至近点に配置されている」とする補正に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する補正後の発明が、上記第2の[理由]2(3)(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載事項並びに周知事項に基づいて容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2記載事項並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-18 
結審通知日 2019-01-22 
審決日 2019-02-06 
出願番号 特願2013-127068(P2013-127068)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01P)
P 1 8・ 575- Z (H01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米倉 秀明  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 中野 浩昌
佐藤 実
発明の名称 給電路  
代理人 柏野 由布子  
代理人 志賀 正武  
代理人 西澤 和純  
代理人 鎌田 康一郎  
代理人 古都 智  
代理人 小室 敏雄  
代理人 高橋 詔男  
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