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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1350148 |
審判番号 | 不服2017-9991 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-05 |
確定日 | 2019-03-20 |
事件の表示 | 特願2015-191397「パッケージ構造およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-111332〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成27年9月29日(パリ条約に基づく優先権主張 平成26年12月2日 台湾(TW))の出願であって、平成28年8月30日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年12月6日付けで手続補正がなされたが、平成29年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月5日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。 その後、当審の平成30年6月19日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年9月20日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成30年9月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 コア層と、前記コア層の対向する2つの面にそれぞれ配置した第1パターン化金属層および第2パターン化金属層と、を含む基板を提供するステップと、 前記基板を貫通する貫通空洞を形成するステップと、 前記基板をテープキャリア上へ配置するステップと、 前記貫通空洞内に半導体部品を配置し前記テープキャリア上に位置決めして、前記貫通空洞の内壁および前記半導体部品の側面の両方により、溝の幅が、実質的に、50μm?100μmの範囲内である溝を画定するステップと、 前記溝上に充填化合物を供給し、前記充填化合物の材料がエポキシ樹脂を含む、ステップと、 前記充填化合物に、加熱温度が、実質的に、80℃?100℃の範囲内である加熱プロセスを施して、前記充填化合物を前記テープキャリアの方へ流入させて前記溝を完全充填するステップと、 第1積層を前記基板上に前記第1パターン化金属層に対して積層するステップであって、該第1積層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆する、ステップと、 前記テープキャリアを取り外すステップと、 第2積層を前記基板上に前記第2パターン化金属層に対して積層するステップであって、該第2積層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆する、ステップと、 を含み、 前記第1積層は第1誘電層および第1回路層を備え、前記第1誘電層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆し、前記第2積層は第2誘電層および第2回路層を備え、前記第2誘電層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆する、パッケージ構造の製造方法。」 3.引用例 これに対して、当審による拒絶の理由に引用された国際公開第2010/038489号(以下、「引用例」という。)には、「電子部品内蔵配線板及びその製造方法」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。 (1)「[0046] 電子部品3は、本実施形態では、ICチップであり 、コア基板2の通孔21内に、いわゆるフェースアップ方式で収容されて いる。」 (2)「[0050] 続いて、図1A?図4Bを参照して、この電子部品 内蔵配線板1の製造方法を説明する。 [0051] 先ず、図1Aに示すような、厚さ約110μmのコア基板2 の両主面に厚さ約12μmの銅箔101,102がラミネートされた銅張 積層板を準備する。 ・・・・・(中 略)・・・・・ [0054] そして、サブトラクティブ法により、不要部分の銅めっき膜 104,105を溶解除去することで、導体パターン4,5,10aが形 成される(図1D参照)。・・(以下、略) [0055] 次に、ドリル等を用いた既知の穴あけ工法によって、電子部 品3を収容するための通孔21を形成する(図1E参照)。なお、炭酸ガ ス(CO_(2))レーザ、Nd-YAGレーザやエキシマレーザ等により、通 孔21を形成してもよい。・・(以下、略) [0056] なお、図7に示すように、通孔21の形成前に、予め導体パ ターン10を形成しておいてもよい。この場合、導体パターン4,5を形 成する工程で導体パターン10も形成する。 [0057] 続いて、図1Eの基板の第2面側にテープ201を貼付する (図2A参照)。テープ201としては、UV(紫外線)照射により粘着 性が低下し、容易に剥離可能となるUVテープ(例えば、リンテック株式 会社のAdwill Dシリーズ等)が採用できる。・・(以下、略) ・・・・・(中 略)・・・・・ [0059] テープ201の貼付後、電子部品3をテープ201の接着( 粘着)面上に、いわゆるフェースアップ方式にて載置する(図2B参照) 。ここで、上述したように、テープ201が略水平に貼付されているため 、電子部品3も上下方向に位置ずれすることなく正確に配置することがで きる。 [0060] 続いて、図2Bの基板の第1面上に、厚さ約60μmのフィ ルム状の樹脂材料(本実施形態ではプリプレグ)を真空ラミネーション法 によりラミネートする。これにより図3Aに示すように、層間絶縁層6が 形成される。このラミネートの際、樹脂材料が、スルーホール導体20の 内部に流入し、また、通孔21内における電子部品3とコア基板2の内壁 との隙間に流入する。これにより、電子部品3とコア基板2の内壁との隙 間は、樹脂材料で充填される。 ・・・・・(中 略)・・・・・ [0062] 続いて、UV照射を行って、テープ201を剥離する(図3 B参照)。そして、図3Bの基板の第2面上に、厚さ約60μmのフィル ム状の樹脂材料(本実施形態ではプリプレグ)を真空ラミネーション法に よりラミネートする。これにより図3Cに示すように、層間絶縁層7が形 成される。このラミネートの際、樹脂材料がスルーホール導体20の内部 に流入することで、スルーホール導体20の内部は、樹脂材料で充填され る。 [0063] なお、図8A?図8Cに示すように、電子部品3をフェース ダウン方式で収容することも勿論可能である。 [0064] 次に、炭酸ガス(CO_(2))レーザやUV-YAGレーザ等に より、図3Cの基板の所定箇所にビアホールを形成し、アディティブ法に より、導体パターン8,9とビア導体60,70を形成することで、図5 に示す電子部品内蔵配線板1が得られる。」 (3)「[0083] また、上記実施形態では、層間絶縁層6の形成の際 、電子部品3とコア基板2の内壁との隙間が、層間絶縁層6を構成する樹 脂材料で充填され、これにより、電子部品3が固定されるが、他の方法で 電子部品3を固定してもよい。例えば、層間絶縁層6の形成の前(即ち、 樹脂材料のラミネート前)に、絶縁性樹脂(例えば、熱硬化性樹脂と無機 フィラーとからなる)を電子部品3とコア基板2の内壁との隙間に充填す ることで、電子部品3を固定してもよい。」 ・上記引用例に記載の「電子部品内蔵配線板及びその製造方法」のうちの製造方法は、上記(2)の記載事項、及び図1A?図4B、図5によれば、順に以下の(a)?(h)の工程を有するものである。 (a)コア基板2の両主面にそれぞれ銅からなる導体パターン4,導体パターン5、10aを形成する工程(図1A?図1D)、 (b)導体パターン4,導体パターン5、10aがそれぞれ形成されたコア基板2に対して、電子部品3を収容するための通孔21を形成する工程(図1E)、 (c)コア基板2の第2面(下面)側にテープ201を貼付する工程(図2A)、 (d)電子部品3を通孔21内のテープ201の接着面上に正確に配置する工程(図2B)、 (e)コア基板2の第1面(上面)上に、フィルム状の樹脂材料をラミネートし、層間絶縁層6を形成する工程(図3A)、 (f)テープ201を剥離する工程(図3B)、 (g)コア基板2の第2面(下面)上に、フィルム状の樹脂材料をラミネートし、層間絶縁層7を形成する工程(図3C)、 (h)層間絶縁層6,層間絶縁層7上にそれぞれ導体パターン8,導体パターン9を形成する工程(図5)。 ・上記(1)の記載事項によれば、電子部品3は、ICチップである。 ・上記(3)の記載事項によれば、電子部品3とコア基板2の内壁との隙間を樹脂材料で充填する方法として、層間絶縁層6の形成の際に、層間絶縁層6を構成する樹脂材料で充填する方法に代えて、層間絶縁層6の形成の前(上記(e)の樹脂材料のラミネート前)に、絶縁性樹脂(例えば、熱硬化性樹脂と無機フィラーとからなる)を電子部品3とコア基板2の内壁との隙間に充填するようにしてもよいものである。 したがって、特に、層間絶縁層6の形成の前(即ち、樹脂材料のラミネート前)に、熱硬化性樹脂を含む絶縁性樹脂を電子部品3とコア基板2の内壁との隙間に充填するようにした場合に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「コア基板の両主面にそれぞれ銅からなる導体パターン4,導体パターン5、10aを形成する工程と、 前記導体パターン4,導体パターン5、10aがそれぞれ形成された前記コア基板に対して、ICチップを収容するための通孔を形成する工程と、 前記コア基板の第2面(下面)側にテープを貼付する工程と、 前記ICチップを前記通孔内の前記テープの接着面上に正確に配置する工程と、 熱硬化性樹脂を含む絶縁性樹脂を前記ICチップと前記コア基板の内壁との隙間に充填する工程と、 前記コア基板の第1面(上面)上に、フィルム状の樹脂材料をラミネートし、層間絶縁層6を形成する工程と、 前記テープを剥離する工程と、 前記コア基板の第2面(下面)上に、フィルム状の樹脂材料をラミネートし、層間絶縁層7を形成する工程と、 前記層間絶縁層6,層間絶縁層7上にそれぞれ導体パターン8,導体パターン9を形成する工程と、 を含む電子部品内蔵配線板の製造方法。」 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 (1)引用発明における「コア基板の両主面にそれぞれ銅からなる導体パターン4,導体パターン5、10aを形成する工程と」によれば、 引用発明における「コア基板」、その両主面にそれぞれ形成される銅からなる「導体パターン4」、「導体パターン5、10a」は、それぞれ本願発明でいう「コア層」、「第1パターン化金属層」、「第2パターン化金属層」に相当し、 引用発明において、コア基板の両主面にそれぞれ銅からなる導体パターン4,導体パターン5、10aを形成してなるものが、本願発明でいう「基板」に相当するものであるといえるから、 本願発明と引用発明とは、「コア層と、前記コア層の対向する2つの面にそれぞれ配置した第1パターン化金属層および第2パターン化金属層と、を含む基板を提供するステップ」とを含むものである点で一致する。 (2)引用発明における「前記導体パターン4,導体パターン5、10aがそれぞれ形成された前記コア基板に対して、ICチップを収容するための通孔を形成する工程と」によれば、 引用発明における「通孔」は、コア基板を貫通してなるものであり(引用例の図1Eも参照)、本願発明でいう「貫通空洞」に相当し、 本願発明と引用発明とは、「前記基板を貫通する貫通空洞を形成するステップ」とを含むものである点で一致する。 (3)引用発明における「前記コア基板の第2面(下面)側にテープを貼付する工程と」によれば、 引用発明における「テープ」は、本願発明でいう「テープキャリア」に相当し、 本願発明と引用発明とは、「前記基板をテープキャリア上へ配置するステップ」とを含むものである点で一致する。 (4)引用発明における「前記ICチップを前記通孔内の前記テープの接着面上に正確に配置する工程と、熱硬化性樹脂を含む絶縁性樹脂を前記ICチップと前記コア基板の内壁との隙間に充填する・・」によれば、 引用発明における「ICチップ」は、本願発明でいう「半導体部品」に相当し、 引用発明にあっても、ICチップを通孔内のテープ接着面上に正確に配置、すなわち位置決めした際、ICチップとコア基板の内壁との間に「隙間」が設けられるものであり(引用例の図2Bも参照)、当該「隙間」は、本願発明でいう「溝」に相当するといえるから、 本願発明と引用発明とは、「前記貫通空洞内に半導体部品を配置し前記テープキャリア上に位置決めして、前記貫通空洞の内壁および前記半導体部品の側面の両方により、所定の幅の溝を画定するステップ」とを含むものである点で共通する。 ただし、画定される溝の所定の幅について、本願発明では、「実質的に、50μm?100μmの範囲内」である旨特定するのに対し、引用発明では、具体的な値の特定はされていない点で相違している。 (5)引用発明における「熱硬化性樹脂を含む絶縁性樹脂を前記ICチップと前記コア基板の内壁との隙間に充填する工程と」によれば、 引用発明における、熱硬化性樹脂を含む「絶縁性樹脂」は、本願発明でいう「充填化合物」に相当し、両者はともに「熱硬化性樹脂を含む」ものである点で共通し、 引用発明にあっても、絶縁性樹脂をICチップとコア基板の内壁との隙間に充填するためには、当該絶縁性樹脂を隙間上に供給し、テープの方に流入させる必要があることは当然のことであるから、 本願発明と引用発明とは、「前記溝上に充填化合物を供給し、前記充填化合物の材料が熱硬化性樹脂を含む、ステップ」と、「前記充填化合物を前記テープキャリアの方へ流入させて前記溝を充填するステップ」とを含むものである点で共通するといえる。 ただし、充填化合物の材料として含む熱硬化性樹脂について、本願発明では、「エポキシ樹脂」と特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違し、さらに、充填化合物をテープキャリアの方へ流入させて溝を充填するステップについて、本願発明では、「前記充填化合物に、加熱温度が、実質的に、80℃?100℃の範囲内である加熱プロセスを施」し、溝を「完全」充填する旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違している。 (6)引用発明における「前記コア基板の第1面(上面)上に、フィルム状の樹脂材料をラミネートし、層間絶縁層6を形成する工程と、前記テープを剥離する工程と、前記コア基板の第2面(下面)上に、フィルム状の樹脂材料をラミネートし、層間絶縁層7を形成する工程と、前記層間絶縁層6,層間絶縁層7上にそれぞれ導体パターン8,導体パターン9を形成する工程と」によれば、 (a)引用発明における、コア基板の第1面(上面)上にラミネートされる「フィルム状の樹脂材料」、それにより形成される「層間絶縁層6」は、それぞれ本願発明でいう「第1積層」、「第1誘電層」に相当するといえ、 引用発明にあっても、フィルム状の樹脂材料から形成される層間絶縁層6によってICチップの上面が被覆されることになる(引用例の図3Aも参照)ことから、 本願発明と引用発明とは、「第1積層を前記基板上に前記第1パターン化金属層に対して積層するステップであって、該第1積層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆する、ステップ」とを含むものである点で一致し、 また、本願発明と引用発明とは、「前記第1積層は第1誘電層を備え、前記第1誘電層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆」してなるものである点で共通するということができる。 (b)引用発明における「前記テープを剥離する工程」は、本願発明における「前記テープキャリアを取り外すステップ」に相当する。 (c)引用発明における、コア基板の第2面(下面)上にラミネートされる「フィルム状の樹脂材料」、それにより形成される「層間絶縁層7」は、それぞれ本願発明でいう「第2積層」、「第2誘電層」に相当するといえ、 引用発明にあっても、フィルム状の樹脂材料から形成される層間絶縁層7によってICチップの下面が被覆されることになる(引用例の図3Cも参照)ことから、 本願発明と引用発明とは、「第2積層を前記基板上に前記第2パターン化金属層に対して積層するステップであって、該第2積層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆する、ステップ」とを含むものである点で一致し、 また、本願発明と引用発明とは、「前記第2積層は第2誘電層を備え、前記第2誘電層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆」してなるものである点で共通するということができる。 ただし、テープキャリアを取り外すステップ前に行われる第1積層を積層するステップにおける第1積層、テープキャリアを取り外すステップ後に行われる第2積層を積層するステップにおける第2積層について、本願発明では、それぞれ「第1誘電層および第1回路層」、「第2誘電層および第2回路層」を備える旨特定するのに対し、引用発明では、それぞれフィルム状の樹脂材料(層間絶縁層6)のみ、フィルム状の樹脂材料(層間絶縁層7)のみである点で相違している。 (7)そして、引用発明における「電子部品内蔵配線板」は、本願発明でいう「パッケージ構造」に相当するといえるものである。 よって、本願発明と引用発明とは、 「コア層と、前記コア層の対向する2つの面にそれぞれ配置した第1パターン化金属層および第2パターン化金属層と、を含む基板を提供するステップと、 前記基板を貫通する貫通空洞を形成するステップと、 前記基板をテープキャリア上へ配置するステップと、 前記貫通空洞内に半導体部品を配置し前記テープキャリア上に位置決めして、前記貫通空洞の内壁および前記半導体部品の側面の両方により、所定の幅の溝を画定するステップと、 前記溝上に充填化合物を供給し、前記充填化合物の材料が熱硬化性樹脂を含む、ステップと、 前記充填化合物を前記テープキャリアの方へ流入させて前記溝を充填するステップと、 第1積層を前記基板上に前記第1パターン化金属層に対して積層するステップであって、該第1積層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆する、ステップと、 前記テープキャリアを取り外すステップと、 第2積層を前記基板上に前記第2パターン化金属層に対して積層するステップであって、該第2積層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆する、ステップと、 を含み、 前記第1積層は第1誘電層を備え、前記第1誘電層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆し、前記第2積層は第2誘電層を備え、前記第2誘電層は前記半導体部品の少なくとも一部を被覆する、パッケージ構造の製造方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 画定される溝の所定の幅について、本願発明では、「実質的に、50μm?100μmの範囲内」である旨特定するのに対し、引用発明では、具体的な値の特定はされていない点。 [相違点2] 充填化合物の材料として含む熱硬化性樹脂について、本願発明では、「エポキシ樹脂」と特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。 [相違点3] 充填化合物をテープキャリアの方へ流入させて溝を充填するステップについて、本願発明では、「前記充填化合物に、加熱温度が、実質的に、80℃?100℃の範囲内である加熱プロセスを施」し、溝を「完全」充填する旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。 [相違点4] テープキャリアを取り外すステップ前に行われる第1積層を積層するステップにおける第1積層、テープキャリアを取り外すステップ後に行われる第2積層を積層するステップにおける第2積層について、本願発明では、それぞれ「第1誘電層および第1回路層」、「第2誘電層および第2回路層」を備える旨特定するのに対し、引用発明では、それぞれフィルム状の樹脂材料(層間絶縁層6)のみ、フィルム状の樹脂材料(層間絶縁層7)のみである点。 5.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 引用発明において、ICチップとコア基板の内壁との隙間の大きさは、通孔へのICチップの挿入精度や、全体の小型化の程度等を勘案して決定されるべき事項であるところ、当審による拒絶の理由に引用された特開2011-49555号公報(以下、「引用例2」という。)の段落【0044】?【0046】には、電子素子内蔵型印刷回路基板の構造について、電子素子120の水平方向の側面からキャビティ116の内壁までは、0?60μm程度とし、両側面からキャビティ116の内壁までの距離の和の値が60μm以上になるようにすることが記載されており、引用発明においても、隙間の大きさを例えば50?60μm程度として、本願発明で特定する「実質的に、50μm?100μm」の範囲を満たすような値とすることも当業者が適宜なし得ることである。 なお、本願明細書の段落【0015】には、「溝g1の幅w1は実質的に50μm?100μmの範囲内であり、・・・つまり、半導体部品130の側面と貫通空洞C1の内壁との間の距離が非常に近く、溝g1は非常に狭く深い。本実施形態で開示した数値は例示としてのみ用いたものであることはもちろんであり、本発明を限定するものと解釈すべきではない。」とあり、単に溝幅の例示が記載されているだけであって、下限値を50μmとし、上限値を100μmとすることに臨界的意義は認められない。 [相違点2]及び[相違点3]について 当審による拒絶の理由に引用された特開2009-260318号公報(以下、「引用例3」という。)の段落【0034】、【0058】?【0059】には、部品内蔵配線基板において、ICチップ61と収容穴部90との隙間に熱硬化性樹脂である「エポキシ樹脂」からなる樹脂充填剤92を充填する際、支持テーブルを樹脂充填剤92の硬化開始温度よりも低い例えば100℃の温度に加熱を行い、樹脂充填剤92をICチップ61と収容穴部90との隙間に注入し、粘着テープ171とチップ主面62との間のわずかな隙間を確実に埋めるようにしたこと、つまり、「エポキシ樹脂」からなる樹脂充填剤をわずかな隙間に確実に充填するために、当該樹脂充填剤を硬化開始温度よりも低い例えば100℃の温度に加熱するようにした技術事項が記載されているといえ(なお、例えば特開2012-80024号公報の段落【0007】にも記載のように、樹脂を硬化開始温度よりも低い所定の温度で加熱するにより、樹脂の粘度が低下し流動性が増すことは周知の技術事項である)、引用発明においても、熱硬化性樹脂を含む絶縁性樹脂をICチップとコア基板の内壁との隙間に確実に充填できるようかかる技術事項を採用し、相違点2,3に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。 [相違点4]について 引用発明においては、テープを剥離する工程の前後の工程においてそれぞれ積層される層としては、フィルム状の樹脂材料(層間絶縁層6)のみ、フィルム状の樹脂材料(層間絶縁層7)のみでり、その後の工程において、ICチップの上面,下面をそれぞれ被覆するように形成された層間絶縁層6,層間絶縁層7上にそれぞれ導体パターン8,導体パターン9を形成するようにしたものであるが、 当審による拒絶の理由に引用された特開2013-84692号公報(以下、「引用例4」という。)の段落【0056】、図14には、第2絶縁層207で電子部品300の上面を被覆するに際し、第2絶縁層207(本願発明でいう「第1誘電層」に相当)及び銅箔205(のちに配線の一部を構成するものであり、本願発明でいう「第1回路層」に相当)の積層を配置するようにすることが記載され、また同様に、段落【0058】、図16には、第2絶縁層208で電子部品300の下面を被覆するに際し、基板100の第2面F2上に第2絶縁層208(本願発明でいう「第2誘電層」に相当)及び銅箔206(のちに配線の一部を構成するものであり、本願発明でいう「第2回路層」に相当)の積層を配置するようにすることが記載されており、引用発明においても、テープを剥離する工程の前後の工程においてそれぞれ積層される層として、フィルム状の樹脂材料(層間絶縁層6)のみ、フィルム状の樹脂材料(層間絶縁層7)のみとするのではなく、予め銅箔などの層(本願発明でいう第1回路層,第2回路層に相当する層)も積層してなるものを用いるようにし、相違点4に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。 なお、請求人は平成30年9月20日付け意見書において、「・・当業者は、引用文献4の記載を見た後、引用文献4の絶縁及び隙間充填機能を有する第2絶縁層を絶縁材料又はエポキシ樹脂を充填材料としている引用文献1、3及び引用文献2に応用し、本願発明1の全体とした技術手段を完成することは容易に想到することはできません。」などと主張している。 しかしながら、上記引用例4(当審による拒絶理由通知時の引用文献4)について認定した技術事項は、第2絶縁層207で電子部品300の上面を被覆するに際し、第2絶縁層207及び銅箔205の積層を配置し、同様に、第2絶縁層208で電子部品300の下面を被覆するに際し、基板100の第2面F2上に第2絶縁層208及び銅箔206の積層を配置するようにしたこと、すなわち、絶縁層に対して予め銅箔を積層してなるものを配置するようにしたことであり、キャビティにおける基板と電子部品との隙間への絶縁体の充填方法とは直接関係のないことである。したがって、引用例4に記載された技術事項を引用発明に適用することに阻害要因はなく、上記したとおり、相違点4に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。 よって、請求人の上記主張を採用することはできない。 そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願発明が奏する効果は、引用発明及び引用例2?4に記載の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用例2?4に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-10-16 |
結審通知日 | 2018-10-23 |
審決日 | 2018-11-05 |
出願番号 | 特願2015-191397(P2015-191397) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小山 和俊 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
田中 慎太郎 井上 信一 |
発明の名称 | パッケージ構造およびその製造方法 |
代理人 | 石川 雅章 |
代理人 | 杉村 憲司 |