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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1350158 |
審判番号 | 不服2018-4519 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-04 |
確定日 | 2019-03-20 |
事件の表示 | 特願2016-534175「賭けモードを提供するダーツゲーム装置、ダーツゲーム方法及びコンピュータ可読媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月28日国際公開、WO2015/076495、平成29年 2月23日国内公表、特表2017-505647〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)10月7日(パリ条約による優先権主張、外国庁受理2013年(平成25年)11月25日(以下、「優先日」という。)、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成29年4月7日付けで拒絶理由が通知され、同年7月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成30年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成30年4月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年4月4日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示すため当審で付加した。) ア 請求項1 「賭けダーツゲームモードを提供するダーツゲーム装置として、 一人以上のプレーヤーから、ダーツゲーム方式及び賭けモードを選択する入力を受信するユーザ入力部; 前記一人以上のプレーヤーにより支払われたクレジットを積み立て、前記選択されたダーツゲーム方式に基づいて前記一人以上のプレーヤーがダーツゲームを実行するようにし、さらに前記選択されたゲーム方式による結果に基づいて、前記積み立てられたクレジットの中、ゲーム費用を除いた少なくとも一部を返すことによって、一人以上のプレーヤーの前記積み立てられたクレジットを精算し、前記一人以上のプレーヤーの識別情報に少なくとも部分的に基づいて前記一人以上のプレーヤーにダーツゲームプレイに関連する有利または不利を適用するためのハンディキャップモードを決定する制御部; 前記ダーツゲーム装置と選択的に繋がり、水平方向に延び、照明部を含むダーツ板;及び前記選択されたゲーム方式による結果を出力する出力部を含み、 前記照明部は、前記ハンディキャップモードにすると決められた場合、前記一人以上のプレーヤーがダーツを投げる位置を変えるように表示する ダーツゲーム装置。」 イ 請求項2 「請求項1において、 前記賭けダーツゲームに参加していない一人以上の他のプレーヤー(他プレーヤー)に賭け事ダーツゲームへの参加依頼を送るネットワーク接続部をさらに含む、 ダーツゲーム装置。」 ウ 請求項3 「請求項1において、 前記ユーザ入力部は、 ダーツ板にマッピングされた表示装置を含む、 ダーツゲーム装置。」 エ 請求項4 「ユーザ入力部及び制御部を含むダーツゲーム装置によって賭けダーツゲームモードを提供するための方法として、 前記ユーザ入力部が、一人以上のプレーヤーからダーツゲーム方式及び賭けモードを選択する入力を受信する段階; 前記制御部が、前記一人以上のプレーヤーにより支払われたクレジットを積み立てる段階; 前記制御部が、前記選択されたゲーム方式に基づいて、前記一人以上のプレーヤーがダーツゲームを実行するようにする段階;及び 前記制御部が、前記選択されたゲーム方式による結果に基づいて、前記積み立てられたクレジットの中、ゲーム費用を除いた少なくとも一部を返すことによって、一人以上のプレーヤーの、前記積み立てられたクレジットを精算する段階; 前記制御部が、前記一人以上のプレーヤーの識別情報に少なくとも部分的に基づいて前記一人以上のプレーヤーにダーツゲームプレイに関連する有利または不利を適用するためのハンディキャップモードを決定する段階;及び、 前記ダーツゲーム装置に選択的に接続され、水平方向に延びるダーツ板に含まれる照明部が、前記ハンディキャップモードにすると決められた場合、前記一人以上のプレーヤーがダーツを投げる位置を変えるように表示する段階; を含む賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 オ 請求項5 「請求項4において、 前記ユーザ入力部が、プレーヤーから選択された前記積み立てられたクレジットを返す際の比率を選択する入力を受信する段階をさらに含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 カ 請求項6 「請求項4において、 前記プレーヤーの識別情報は、プレーヤーのレート(rating)情報、プレーヤーのクラス情報、プレーヤーのPPD(point per dart)情報及びプレーヤーのMPR(mark per round)情報の中、少なくとも一つの情報を含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 キ 請求項7 「請求項4において、 前記精算する段階は、 前記制御部が、前記ダーツゲームが中断された場合、中断された時点までの前記一人以上のプレーヤーのプレー結果に基づいて前記積み立てられたクレジットを精算する段階を含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 ク 請求項8 「請求項4において、 前記クレジットはプレーヤー一人のゲーム費用に全体プレーヤーの数を乗じた数値である、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 ケ 請求項9 「請求項7において、 前記クレジットは、賭けダーツゲームの追加を許可するための追加費用をさらに含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 コ 請求項10 「請求項4において、 ネットワーク接続部が、前記賭けダーツゲームに参加していない一人以上の他のプレーヤーに、賭けダーツゲームへの参加依頼を送る段階をさらに含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 サ 請求項11 「請求項4において、 前記入力を受信する段階は、ダーツ板にマッピングされた入力装置を通じて受信される、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 シ 請求項12 「コンピュータにより実行される場合、前記コンピュータがダーツゲーム装置のプレーヤーに、賭けモードを提供するようにするプログラムが記録されたコンピュータ可読媒体として、 前記プログラムは、 前記コンピュータが一人以上のプレーヤーからダーツゲーム方式及び賭けモードを選択する入力を受信するようにするためのコード; 前記コンピュータが前記一人以上のプレーヤーにより支払われたクレジットを積み立てるためのコード; 前記コンピュータが前記選択されたゲーム方式に基づいて、前記一人以上のプレーヤーがダーツゲームを実行するようにするためのコード; 前記コンピュータが前記選択されたゲーム方式による結果に基づいて、前記積み立てられたクレジットの中、ゲーム費用を除いた少なくとも一部を返すことによって、一人以上のプレーヤーの前記積み立てられたクレジットを精算するようにするためのコード; 前記コンピュータが前記一人以上のプレーヤーの識別情報に少なくとも部分的に基づいて前記一人以上のプレーヤーにダーツゲームプレイに関連する有利または不利を適用するためのハンディキャップモードを決定するようにするためのコード;及び、 前記コンピュータが、前記ダーツゲーム装置に選択的に接続され、水平方向に延びるダーツ板に含まれる照明部に、前記ハンディキャップモードにすると決められた場合、前記一人以上のプレーヤーがダーツを投げる位置を変えるように表示するためのコードを含む、 コンピュータ可読媒体。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成29年7月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 ア 請求項1 「賭けダーツゲームモードを提供するダーツゲーム装置として、 一人以上のプレーヤーから、ダーツゲーム方式及び賭けモードを選択する入力を受信するユーザ入力部; 前記一人以上のプレーヤーにより支払われたクレジットを積み立て、前記選択されたダーツゲーム方式に基づいて前記一人以上のプレーヤーがダーツゲームを実行するようにし、さらに前記選択されたゲーム方式による結果に基づいて、前記積み立てられたクレジットの中、ゲーム費用を除いた少なくとも一部を返すことによって、一人以上のプレーヤーの前記積み立てられたクレジットを精算する制御部;及び 前記選択されたゲーム方式による結果を出力する出力部を含む、 ダーツゲーム装置。」 イ 請求項2 「請求項1において、 前記賭けダーツゲームに参加していない一人以上の他のプレーヤー(他プレーヤー)に賭け事ダーツゲームへの参加依頼を送るネットワーク接続部をさらに含む、 ダーツゲーム装置。」 ウ 請求項3 「請求項1において、 前記ユーザ入力部は、 ダーツ板にマッピングされた表示装置を含む、 ダーツゲーム装置。」 エ 請求項4 「ダーツゲーム装置によって賭けダーツゲームモードを提供するための方法として、 一人以上のプレーヤーからダーツゲーム方式及び賭けモードを選択する入力を受信する段階; 前記一人以上のプレーヤーにより支払われたクレジットを積み立てる段階; 前記選択されたゲーム方式に基づいて、前記一人以上のプレーヤーがダーツゲームを実行するようにする段階;及び 前記選択されたゲーム方式による結果に基づいて、前記積み立てられたクレジットの中、ゲーム費用を除いた少なくとも一部を返すことによって、一人以上のプレーヤーの、前記積み立てられたクレジットを精算する段階を含む賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 オ 請求項5 「請求項4において、 プレーヤーから選択された前記積み立てられたクレジットを返す際の比率を選択する入力を受信する段階をさらに含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 カ 請求項6 「請求項4において、 プレーヤーの識別情報の少なくとも一部分に基づいてハンディキャップモードを決定する段階をさらに含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 キ 請求項7 「請求項4において、 プレーヤーからハンディキャップモードを選択する入力を受信する段階をさらに含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 ク 請求項8 「請求項6において、 前記プレーヤーの識別情報は、プレーヤーのレート(rating)情報、プレーヤーのクラス情報、プレーヤーのPPD(point per dart)情報及びプレーヤーのMPR(mark per round)情報の中、少なくとも一つの情報を含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 ケ 請求項9 「請求項4において、 前記精算する段階は、 前記ダーツゲームが中断された場合、中断された時点までの前記一人以上のプレーヤーのプレー結果に基づいて前記積み立てられたクレジットを精算する段階を含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 コ 請求項10 「請求項4において、 前記クレジットはプレーヤー一人のゲーム費用に全体プレーヤーの数を乗じた数値である、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 サ 請求項11 「請求項9において、 前記クレジットは、賭けダーツゲームの追加を許可するための追加費用をさらに含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 シ 請求項12 「請求項4において、 前記賭けダーツゲームに参加していない一人以上の他のプレーヤーに、賭けダーツゲームへの参加依頼を送る段階をさらに含む、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 ス 請求項13 「請求項4において、 前記入力を受信する段階は、ダーツ板にマッピングされた入力装置を通じて受信される、 賭けダーツゲームモードを提供するための方法。」 セ 請求項14 「コンピュータにより実行される場合、前記コンピュータがダーツゲーム装置のプレーヤーに、賭けモードを提供するようにするプログラムが記録されたコンピュータ可読媒体として、 前記プログラムは、 前記コンピュータが一人以上のプレーヤーからダーツゲーム方式及び賭けモードを選択する入力を受信するようにするためのコード; 前記コンピュータが前記一人以上のプレーヤーにより支払われたクレジットを積み立てるためのコード; 前記コンピュータが前記選択されたゲーム方式に基づいて、前記一人以上のプレーヤーがダーツゲームを実行するようにするためのコード;及び 前記コンピュータが前記選択されたゲーム方式による結果に基づいて、前記積み立てられたクレジットの中、ゲーム費用を除いた少なくとも一部を返すことによって、一人以上のプレーヤーの前記積み立てられたクレジットを精算するようにするためのコードを含む、 コンピュータ可読媒体。」 2 補正の適否 (1)請求項1に係る本件補正事項についての検討 ア 補正の目的について (ア)本件補正のうち、請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に係る発明に「前記ダーツゲーム装置と選択的に繋がり、水平方向に延び、照明部を含むダーツ板」を追加するとともに、当該「ダーツ板」が備える「照明部」が「ハンディキャップモードにすると決められた場合」に「一人以上のプレーヤがダーツを投げる位置を変えるように表示する」ものであることを特定する補正をその一部に含むものである(以下、「補正事項1」という。)。 ここで、当該「ダーツ板」について、本件補正前の請求項1の発明特定事項において対応するものはない。 してみると、補正事項1は、本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定するものとはいえないから、特許法17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものに該当するものではない。 (イ)本件補正のうち、請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の「制御部」の機能として、「前記一人以上のプレーヤーの識別情報に少なくとも部分的に基づいて前記一人以上のプレーヤーにダーツゲームプレイに関連する有利又は不利を適用するためのハンディキャップモードを決定する」機能を追加する補正をその一部に含むものである(以下、「補正事項2」という。)。 当該補正事項2により「制御部」の機能として追加されたところの「ハンディキャップモードを決定する」機能は、本件補正前の請求項1において「制御部」が備える機能として特定されていた「クレジットを積み立て」、「ダーツゲームを実行」し、「クレジットを精算」する機能とは、別個独立のものであって、本件補正前の請求項1の発明特定事項に対応するものではない。 してみると、補正事項2は、本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定するものとはいえないから、特許法17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものに該当するものではない。 (ウ)そして、上記補正事項1および2は、特許法17条の2第5項第1号ならびに第3号および第4号のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。 イ 新規事項の追加について 本件補正のうち、請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に係る発明に、「前記照明部は、前記ハンディキャップモードにすると決められた場合、前記一人以上のプレーヤーがダーツを投げる位置を変えるように表示する」との事項を追加する補正をその一部に含むものである(以下、「補正事項3」という。)。 これに対して、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「照明部(143)は、ハンディキャップモードにすると決められた場合、プレーヤーによってダーツを投げる位置を変えるよう表示することもできる。」(段落【0116】)と記載されている。 しかしながら、補正事項3においては、「プレーヤーによって」「ダーツを投げる位置を変えるように表示する」とは規定されておらず、プレーヤーによらず全てのプレーヤーについて一律に「ダーツを投げる位置を変えるように表示する」ことも含まれるところ、そのようにすることは当初明細書等に記載も示唆もされていない。 してみると、補正事項3は、当初明細書等に記載されておらず、また、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内であるとはいえず、当該補正は当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。 (2)請求項4に係る本件補正事項についての検討 ア 補正の目的について (ア)本件補正のうち、請求項4に係る補正は、本件補正前の請求項6に係る発明に、「前記ダーツゲーム装置に選択的に接続され、水平方向に延びるダーツ板に含まれる照明部が、前記ハンディキャップモードにすると決められた場合、前記一人以上のプレーヤーがダーツを投げる位置を変えるように表示する段階」を追加する補正をその一部に含むものである(以下、「補正事項4」という。)。 ここで、当該「段階」は本件補正前の請求項6における各「段階」と並列的な関係であるから、補正事項4は外的付加に相当して、特許請求の範囲の減縮には該当しない。 してみると、補正事項4は、特許法17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものに該当するものではない。 (イ)そして、上記補正事項4は、特許法17条の2第5項第1号ならびに第3号および第4号のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。 イ 新規事項の追加について 補正事項4の「前記一人以上のプレーヤーがダーツを投げる位置を変えるように表示する」は、上記(1)イのとおり、当初明細書等に記載されておらず、また、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内であるとはいえず、当該補正は当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。 (3)請求項12に係る本件補正事項についての検討 ア 補正の目的について (ア)本件補正のうち、請求項12に係る補正は、本件補正前の請求項14に係る発明の「コンピュータ」が実行することとして、「ハンディキャップモードを決定する」ことを追加する補正をその一部に含むものである(以下、「補正事項5」という。)。 当該補正事項5により「コンピュータ」が実行することととして追加されたところの「ハンディキャップモードを決定する」ことは、本件補正前の請求項14において「コンピュータ」が実行することとして特定されていた「一人以上のプレーヤーから」「入力を受信」し、「クレジットを積み立て」、「ダーツゲームを実行」し、「クレジットを精算」することとは、別個独立のものであって、本件補正前の請求項14の発明特定事項に対応するものではない。 してみると、補正事項5は、本件補正前の請求項14に記載した発明特定事項を限定するものとはいえないから、特許法17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものに該当するものではない。 (イ)そして、上記補正事項5は、特許法17条の2第5項第1号ならびに第3号および第4号のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。 イ 新規事項の追加について 本件補正のうち、請求項12に係る補正は、本件補正前の請求項14に係る発明に、「前記コンピュータが、前記ダーツゲーム装置に選択的に接続され、水平方向に延びるダーツ板に含まれる照明部に、前記ハンディキャップモードにすると決められた場合、前記一人以上のプレーヤーがダーツを投げる位置を変えるように表示するためのコードを含む」との事項を追加する補正をその一部に含むものである(以下、「補正事項6」という。)。 しかしながら、上記(1)イのとおり、補正事項6の「前記一人以上のプレーヤーがダーツを投げる位置を変えるように表示する」は、当初明細書等に記載されておらず、また、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内であるとはいえず、当該補正は当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項および第5項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年4月4日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成29年7月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1(2)アのとおりのものであって、再掲すると、以下のとおりのものである。 「賭けダーツゲームモードを提供するダーツゲーム装置として、 一人以上のプレーヤーから、ダーツゲーム方式及び賭けモードを選択する入力を受信するユーザ入力部; 前記一人以上のプレーヤーにより支払われたクレジットを積み立て、前記選択されたダーツゲーム方式に基づいて前記一人以上のプレーヤーがダーツゲームを実行するようにし、さらに前記選択されたゲーム方式による結果に基づいて、前記積み立てられたクレジットの中、ゲーム費用を除いた少なくとも一部を返すことによって、一人以上のプレーヤーの前記積み立てられたクレジットを精算する制御部;及び 前記選択されたゲーム方式による結果を出力する出力部を含む、 ダーツゲーム装置。」 2 原査定の拒絶の理由 本願発明についての原査定の拒絶の理由は、本願発明は、優先日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明、および、優先日前に頒布された下記の引用文献2ないし4に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。 引用文献1:韓国公開特許第10-2007-0062658号公報 引用文献2:特表2005-500110号公報 引用文献3:特開2001-357166号公報 引用文献4:リッジレーザー7 コンプリートガイド、株式会社エンターブレイン、2007年2月12日、初版、p.016 3 引用文献 (1)引用文献1の記載事項 引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。 ア ![]() (第9頁第1-4行) (当審訳:上記した電子ダーツゲーム装置(1)はプレーヤーの操作によって複数の互いに異なるダーツゲームを選択するための選択部(300)と、前記プレーヤーによってダーツがヒットされる複数の点数領域を有するダーツターゲット(100)と、前記ダーツがヒットした前記複数の点数領域を検出するセンサー(101)と、選択部(300)から選択されたダーツゲームとセンサー(101)から検出された点数から個々のプレーヤーに対するダーツゲーム状態をリアルタイムで計算してディスプレイ部(200)に出力する制御部(10)からなる。) イ ![]() (第10頁第22-27行) (当審訳:図6に示されるように、ゲーム開始の前またはゲームの中でオプションボタン(311)を押すと、“プレイングオプション(PLAYING OPTION)”メニューが表示されて、前記プレイングオプションには以下の8種メニューがある。 すなわち、順序変更(SWITCH THE ORDER)メニュー(ダブルスやチーム・プレーでの投げる順番を変更するメニュー)、スタットリコール(STAT RECALL)メニュー(以前のゲームの結果を照会機能)、ゲームセッティング(GAME SETTING)メニュー(ゲームの難易度調節、ブルオプションなどの設定機能)、ハンディキャップ(HANDICAP)設定メニュー(プレーヤー別にハンディキャップを設定する機能)、ダーツ取り消し(DART UNTHROW)メニュー(最後の投げたダーツを取り消すことができる機能)、ルール(RULE)説明メニュー、ゲーム終了(QUIT)メニュー、リターンゲーム(RETURN TO GAME)メニューなどがある。) ウ ![]() (第10頁第34-36行) (当審訳:また、ゲームセッティング(GAME SETTING)メニューには、店舗やオペレーターがセットアップで設定することと、ゲームでプレーヤーが設定するセッティングの二つがあり、ゲームセッティングはゲーム開始の前に変更することができ、一旦ゲームが始まるとセッティング変更は不可能なのが望ましい。このようなゲームセッティングに対して図5のメインメニュー画面に開示された内容を中心に説明すると次のとおりである。) エ ![]() (第14頁第35-43行) (当審訳:また、本発明による電子ダーツゲーム装置(1)はゲームをする度にプレーヤーのカードに10ゴールドが累積して、このように累積したゴールドは後日に商品支給、イベント参加などに参照されるポイント制度で活用することもできる。合わせて、対戦モードゲームではゲームで勝利したプレーヤーが所定のゴールド(10ゴールド)を追加で獲得することができ、対戦モードをすれば勝利する時に得るゴールドおよびピッツ獲得時に得るゴールドなどさらに多いゴールドを獲得することができる機会も付与する。その上に、本発明による電子ダーツゲーム装置(1)のセットアップでベッティング機能を活性化すると、プレーヤーはベッティング金額を自ら設定することもできる。例えば、方向キー(310)の上下左右キーを利用してベッティング金額を決めるが、10単位で最高990ゴールドまで設定するようになっている。このような高度なベッティング機能は二人のプレーヤーがすべてカードタッチをした場合にだけ使用することができ、ベッティング金額は低いゴールドを所有しているプレーヤーを基準に限定されることが望ましい。もちろん、後述するオンライン対戦モードの場合にも基本的に所定ゴールド(例えば、20GOLD)がベッティング金額に設定されうる。) オ ![]() (第15頁第26-28行) (当審訳:図12に図示されたように、メドレーゲームは1対1対戦方式で通常3戦2勝制または5戦3勝制で勝敗を決めるゲームである。図示された例では301クリケットゲームを選択した場合の作動モードを示している。オンライン上でゲームする各プレーヤーの等級、PPD,MPRおよび対戦成績結果などが詳細に記載されている。) カ ![]() 引用文献1の図2より、「選択部(300)」には「オプションボタン(311)」が含まれることが、看て取れる。 キ ![]() 引用文献1の図12より、「ディスプレイ部(200)」に「対戦成績結果」が表示されることが、看て取れる。 (2)引用発明1の認定 ア 上記(1)アのとおり、引用文献1には「プレーヤーの操作によって複数の互いに異なるダーツゲームを選択する」との記載があるが、この選択の後には選択された一つの「ダーツゲーム」が行われることは明らかであるから、当該記載は「プレーヤーの操作によって複数の互いに異なるダーツゲームから一つのダーツゲームを選択する」ことを意味すると認められる。 イ 上記(1)イより、「オプションボタン(311)」を押すと、「ゲームセッティング(GAME SETTING)メニュー」を含む「プレイングオプション(PLAYING OPTION)メニュー」が表示されると認められる。そして、上記(1)カより、「オプションボタン(311)」は「選択部(300)」に含まれると認められることに照らせば、「ゲームセッティング(GAME SETTING)メニュー」における設定は、「選択部(300)」を用いて行うものであると認められる。 ウ 上記(1)エの「電子ダーツゲーム装置(1)のセットアップでベッティング機能を活性化する」との記載より、「電子ダーツゲーム装置」は「ベッティング機能」を提供するものであると認められる。 エ 上記(1)ウより、「セットアップ」は「店舗やオペレーター」が行うことであると認められる。そして、上記(1)エの「セットアップでベッティング機能を活性化する」との記載と合わせると、「ベッティング機能を活性化する」「セットアップ」は「店舗やオペレーター」が行うことであると認められる。 オ 以上より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「ベッティング機能を提供する電子ダーツゲーム装置として、 ゲームセッティングメニューにおいて、プレーヤーの操作によって複数の互いに異なるダーツゲームから一つのダーツゲームを選択するとともに、店舗やオペレーターがセットアップでベッティング機能を活性化するための選択部、 選択部から選択されたダーツゲームとセンサーから検出された点数から個々のプレーヤーに対するダーツゲーム状態をリアルタイムで計算する制御部、および、 対戦成績結果を表示するディスプレイ部を含む 電子ダーツゲーム装置。」 (3)引用文献2の記載事項 引用文献2には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。 「【0002】 発明の背景 現在、多数の競争的ゲームをオンラインで、例えばインターネット上でプレーすることができる。一つの例はゲームコールEast End Arrows、ダーツゲームである。・・・」 「【0013】 本発明はその最も広い形でプレーヤを互いに無作為に対戦させる。各プレーヤは賞金資金を寄贈し、勝者は敗者の賞金資金を受けとる。」 「【0031】 各ゲームをプレーするためにはシステムへの例えば$1.00の料金の支払いを必要とする。・・・」 「【0036】 システムオペレータは各ゲーム料金の小さな割合、例えば$0.05を保持してコストをカバーし、小さな操作利益を与える。プレー料金の残り$0.95の大部分は各プレーヤの第一ラウンドの賞金資金の寄金を形成し、小さな総額は限られた数の指名されたジャックポットコンピュータプレーヤ(これらは後述される)のための少し大きな賞金資金を作るために使用される。」 (4)引用文献3の記載事項 引用文献3には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。 「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、携帯電話などの携帯端末の通信により、参加料を徴収して例えば、クイズ、宝くじ、簡易くじ、ビンゴゲームなどゲームサービスへの参加を募り、携帯端末と通信しつつゲームサービスを実行し、ゲームサービスの結果に応じて参加者に対して配当を行なうようにする。」 「【0112】賞金は、例えば、参加料の総額からサービス提供者の手数料を差し引いた金額をビンゴ達成者人数で割った額を一人当たりの賞金額とする。また、ビンゴの達成タイミングに応じて重み付けを行なってもよい。・・・」 (5)引用文献4の記載事項 引用文献4には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。 ア 「国境を越えて世界中のリッジレーザーたちと腕を競い合えるモードがこの「オンラインバトル」だ。」(第16頁左欄第1-2行) イ 「レースに参加するには自分のルームを作成して参加者を募るか、既に作成されているルームに参加するかのふた通りの方法がある。レースの細かなルールの決定はルーム作成者に権限があり、レースの開始もルーム作成者の判断によって行われる。レースに関する基本ルールは、・・・OBPを賭けるかどうか・・・といった項目から成り立っている。」(第16頁左欄第4-15行) ウ 「参加者全員が持っているOBPの1割を参加ポイントとして徴収し、その合計をレースの結果に応じて再分配する。再分配がされるのは8位以上の順位の者に限られ、上位の者ほど配当が多くなる。」(第16頁右欄第1-3行) (6)周知技術 ア 上記(3)、(4)より、プレーヤーにより支払われた料金を積み立て、ゲームの結果に応じて、積み立てられた料金から費用を除いた少なくとも一部を賞金としてプレーヤーに支払うことは周知技術であると認められる。 イ 上記(5)イにおいて、「ルーム作成者」は「レースに参加する」プレーヤーであると認められ、引用文献4には、プレーヤーである「ルーム作成者」が、「OBPを賭けるかどうか」を決定することが記載されていると認められる。 してみると、上記(5)より、プレーヤーが賭けモードを選択できるようにすることは周知技術であると認められる。 4 対比・判断 (1)本願発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「ベッティング機能」は、本願発明の「賭けダーツゲームモード」に相当する。 イ 引用発明1の「ダーツゲームを選択する」は、本願発明の「ダーツゲーム方式を選択する」に相当する。 ウ 引用発明1の「選択部」は、「プレーヤーの操作によって複数の互いに異なるダーツゲームから一つのダーツゲームを選択する」ものであるから、本願発明の「ユーザ入力部」と同様に「プレーヤーから」「ダーツゲーム方式」を「選択する入力を受信する」ものであることは自明である。 エ 引用発明1においては、「選択部から選択されたダーツゲームとセンサーから検出された点数から個々のプレーヤーに対するダーツゲーム状態をリアルタイムで計算する」ことにより、「プレーヤー」が「ダーツゲーム」を実行できるようにしているから、これは、本願発明の「選択されたダーツゲーム方式に基づいて前記一人以上のプレーヤーがダーツゲームを実行するようにし」に相当する。 オ 引用発明1の「対戦成績結果を表示するディスプレイ部」は、本願発明の「前記選択されたゲーム方式による結果を出力する出力部」に相当する。 カ 以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点および相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「賭けダーツモードを提供するダーツゲーム装置として、 一人以上のプレーヤーから、ダーツゲーム方式を選択する入力を受信するユーザ入力部; 前記選択されたダーツゲーム方式に基づいて前記一人以上のプレーヤーがダーツゲームを実行するようにする制御部;及び 前記選択されたゲーム方式による結果を出力する出力部を含む、 ダーツゲーム装置。」 【相違点1】 本願発明においては「一人以上のプレーヤーから」「賭けモードを選択する入力を受信」しているのに対して、引用発明1では「店舗やオペレーター」からである点。 【相違点2】 「賭けダーツゲームモードを提供する」ために、本願発明においては「制御部」が「前記一人以上のプレーヤーにより支払われたクレジットを積み立て」「前記選択されたゲーム方式による結果に基づいて、前記積み立てられたクレジットの中、ゲーム費用を除いた少なくとも一部を返すことによって、一人以上のプレーヤーの前記積み立てられたクレジットを精算」しているのに対して、引用発明1ではそのようにしているか否かが不明である点。 (2)上記相違点1について検討する。 上記3(6)イのとおり、プレーヤーが賭けモードを選択できるようにすることは周知技術であって、引用発明1において、当該周知技術を採用して、「店舗やオペレーター」に換えて、「プレーヤー」が「賭けモードを選択」できるようにして、相違点1に係る本願発明の発明特定事項となすことは当業者であれば適宜なし得たことである。また、そのようにすることにより、当業者が予測し得ない格別の効果を奏するとは認められない。 (3)上記相違点2について検討する。 引用発明1においては、「クレジット」の「積み立て」、「精算」といった「賭け」の具体的な処理手順が明示されていないものの、上記3(6)アのとおり、プレーヤーにより支払われた料金を積み立て、ゲームの結果に応じて、積み立てられた料金から費用を除いた少なくとも一部を賞金としてプレーヤーに支払うことは周知技術であり、引用発明1において、当該周知技術を適用して、「制御部」にこのような処理を行わせ、相違点2に係る本願発明の発明特定事項となすことは当業者であれば適宜なし得たことである。また、そのようにすることにより、当業者が予測し得ない格別の効果を奏するとは認められない。 (4)したがって、本願発明は、引用発明1、および、引用文献2ないし4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-10-16 |
結審通知日 | 2018-10-23 |
審決日 | 2018-11-05 |
出願番号 | 特願2016-534175(P2016-534175) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F) P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 古川 直樹、比嘉 翔一 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
後藤 昌夫 吉村 尚 |
発明の名称 | 賭けモードを提供するダーツゲーム装置、ダーツゲーム方法及びコンピュータ可読媒体 |
代理人 | 平川 明 |
代理人 | 矢澤 広伸 |