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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03F
管理番号 1350171
審判番号 不服2017-16159  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-31 
確定日 2019-04-09 
事件の表示 特願2016- 75148「感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、半導体装置及び電子部品」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日出願公開、特開2016-139149、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月26日に出願された特願2011-283982号の一部を、平成28年4月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年 1月23日付け:拒絶理由通知書
平成29年 3月30日付け:意見書、手続補正書
平成29年 7月20日付け:補正の却下の決定(平成29年3月30日にした手続補正の却下)、拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年10月31日付け:審判請求書、手続補正書
平成30年 7月23日付け:拒絶理由通知書
平成30年 9月25日付け:意見書、手続補正書
平成30年12月17日付け:拒絶理由通知書
平成31年 1月30日付け:意見書、手続補正書

第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。
理由1:本願の請求項1-5、8-13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2:本願の請求項1-14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

理由3:本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。

<引用文献等一覧>
引用文献A:特開2003-215789号公報
引用文献B:特開2003-215795号公報
引用文献C:特開2009-47761号公報
引用文献D:特開2008-83124号公報
引用文献E:特開2004-233981号公報
引用文献F:特開2008-262206号公報
引用文献G:特開2000-206684号公報
引用文献H:国際公開第2010/073948号
引用文献I:国際公開第2010/026988号
引用文献J:特開2009-20246号公報
引用文献K:特開2008-268788号公報
(当合議体注:
1)引用文献A-Gは、請求項1-5、8-13のいずれかに係る発明が記載されたものであり、かつ、請求項1-14に係る発明を当業者が容易に発明をすることができたことの論理付けにおける主引用発明が記載されたものである。
2)引用文献Hは、請求項1-14に係る発明を当業者が容易に発明をすることができたことの論理付けにおける副引用発明が記載されたものであるとともに、周知技術を示すものである。
3)引用文献Iは、請求項1-14に係る発明を当業者が容易に発明をすることができたことの論理付けにおける副引用発明が記載されたものである。
4)引用文献J及びKは、周知技術を示すものである。)

第3 平成30年7月23日付け拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由の概要
平成30年7月23日付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由は、概略、本願の請求項1-11に係る発明は、その出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>
引用文献1:国際公開第2010/073948号
引用文献2:特開2008-20623号公報
引用文献3:特開2006-3422号公報
引用文献4:特開2005-107130号公報
引用文献5:特開2003-233174号公報
引用文献6:特開2005-107131号公報
引用文献7:特開2003-207883号公報
引用文献8:特開2004-93816号公報
(当合議体注:
1)引用文献1は、請求項1-11に係る発明を当業者が容易に発明をすることができたことの論理付けにおける主引用発明が記載されたものである。
2)引用文献2-8は、周知技術を示すものである。)

第4 平成30年12月17日付け拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由の概要
平成30年12月17日付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。
理由1:本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。

理由2:本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

第5 本願発明
本願の請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成31年1月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるとおりの、以下の発明である。

「 【請求項1】
(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、
(B)o-キノンジアジド化合物と、
(C)熱架橋剤と、
(D)フェノール性低分子化合物と、
(E)アクリル樹脂とを含有し、
(C)熱架橋剤が、下記一般式(6)で表される化合物であり、
(D)フェノール性低分子化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であり、
(E)アクリル樹脂が、下記一般式(7)で表される構造単位及び下記一般式(8)で表される構造単位を有し、一般式(7)で表される構成単位の組成比が、(E)成分の総量に対して、60?90モル%であり、一般式(8)で表される構成単位の組成比が、(E)成分の総量に対して、10?30モル%であり、
(A)成分100質量部に対し、(D)成分を5?35質量部含有する、感光性樹脂組成物。
【化1】

[式(6)中、R^(31)?R^(36)は、それぞれ独立に炭素数1?10のアルキル基を示す。
]
【化2】

[式(3)中、R^(1)は水素基又はメチル基を示す。a?cは0?3の整数を示し、d?fは1?3の整数を示し、aとdの合計は5以下であり、bとeの合計は5以下であり、cとfの合計は5以下である。]
【化3】

【化4】

[式(7)及び(8)中、R^(9)は炭素数4?20のアルキル基を表し、R^(10)は水素原子又はメチル基を表す。]
【請求項2】
(A)成分がフェノール樹脂である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、不飽和炭化水素基を有しないフェノール樹脂(A1)と不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂(A2)を含むものである、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(A2)成分が、フェノール性水酸基と多塩基酸無水物との反応によって更に変性されているものである、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(F)熱酸発生剤を更に含有する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、塗布された感光性樹脂組成物を乾燥して樹脂膜を形成する工程と、前記樹脂膜を露光する工程と、露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液によって現像して、パターン樹脂膜を形成する工程と、前記パターン樹脂膜を加熱する工程と、を含有する、パターン硬化膜の製造方法。
【請求項7】
前記パターン樹脂膜を加熱する工程における加熱温度が200℃以下である、請求項6に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物のパターン硬化膜を層間絶縁層又は表面保護膜として有する電子部品。
【請求項9】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物のパターン硬化膜をカバーコート層、コア、カラー、又はアンダーフィルとして有する電子部品。」

第6 引用文献、引用発明等
1 引用文献1の記載事項
平成30年7月23日付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された国際公開第2010/073948号(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。

(1)「技術分野
[0001] 本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、レジストパターンの製造方法、半導体装置及び電子デバイスに関する。
・・・(中略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0007] 近年、再配線層を有する半導体装置の表面保護膜及びカバーコート層の用途において、環境負荷低減の観点から、アルカリ水溶液により現像可能でありながら、高い耐熱性を有するパターンを形成可能なポジ型感光性樹脂組成物が求められている。
また、高温による半導体装置へのダメージを軽減する観点から、低温で硬化が可能な、脱水閉環を必要としないポリマーを含むポジ型感光性樹脂組成物が求められている。
・・・(中略)・・・
発明の効果
[0029] 本発明によれば、低温での硬化が可能で、アルカリ水溶液で現像可能であり、十分に高い感度及び解像度で、密着性及び耐熱衝撃性に優れるレジストパターンを形成することができるポジ型感光性樹脂組成物を提供することができる。本発明のポジ型感光性樹脂組成物によれば、200℃以下の低温加熱プロセスで、レジストパターンを形成可能であるため、電子デバイスへの熱によるダメージを防止することができ、信頼性の高い半導体装置を歩留りよく提供することができる。」

(2)「[0033][ポジ型感光性樹脂組成物]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、(B)光により酸を生成する化合物と、(C)熱架橋剤と、(D)アクリル樹脂と含有する。以下、ポジ型感光性樹脂組成物に含有される各成分について説明する。
[0034]<(A)成分>
(A)成分:フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂
(A)成分は、分子中にフェノール性水酸基を有し、アルカリ現像液に対して可溶な樹脂である。(A)成分のフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン、及びヒドロキシスチレンを単量体単位として含む共重合体等のヒドロキシスチレン系樹脂、フェノール樹脂、ポリ(ヒドロキシアミド)等のポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリ(ヒドロキシフェニレン)エーテル、及びポリナフトール等が挙げられる。(A)成分はこれらの樹脂のうちの1種のみで構成されていてもよく、また、2種以上を含んで構成されていてもよい。
・・・(中略)・・・
[0070]<(B)成分>
(B)成分である光により酸を生成する化合物は、感光剤として用いられる。このような(B)成分は、光照射により酸を生成させ、光照射した部分のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。(B)成分としては、一般に光酸発生剤と称される化合物を用いることができる。(B)成分の具体例としては、o-キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。これらの中で、感度が高いことから、o-キノンジアジド化合物が好ましい。
・・・(中略)・・・
[0079]<(C)成分)>
(C)成分である熱架橋剤を含有することにより、パターン形成後の感光性樹脂膜を加熱して硬化する際に、(C)成分が(A)成分と反応して橋架け構造が形成される。これにより、低温での硬化が可能となり、膜の脆さや膜の溶融を防ぐことができる。(C)成分として、具体的には、フェノール性水酸基を有する化合物、ヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物が好ましいものとして用いることができる。
・・・(中略)・・・
[0086] 上述した(C)成分の中で、感度と耐熱性の向上という観点から、フェノール性水酸基を有する化合物及びヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましく、解像度及び塗膜の伸びもより向上できる観点から、ヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物がより好ましく、ヒドロキシメチルアミノ基の全部又は一部をアルキルエーテル化したアルコキシメチルアミノ基を有する化合物が特に好ましく、ヒドロキシメチルアミノ基の全部をアルキルエーテル化したアルコキシメチルアミノ基を有する化合物が最も好ましい。
前記ヒドロキシメチルアミノ基の全部をアルキルエーテル化したアルコキシメチルアミノ基を有する化合物の中でも特に、下記一般式(III)で表される化合物が好ましい。

[一般式(III)中、R^(21)?R^(26)は、それぞれ独立に炭素数1?10のアルキル基を示す。]
・・・(中略)・・・
[0088]<(D)成分>
(D)成分であるアクリル樹脂を含有することにより、良好な感光特性を維持しつつ、耐熱衝撃性を向上することができる。
[0089] 前記アクリル樹脂としては、下記一般式(1)?(3)で表される構造単位の1種又は2種以上を有するアクリル樹脂であることが好ましい。

[一般式(1)?(3)中、R^(1)は水素原子又はメチル基を表し、R^(2)は炭素数4?20のアルキル基を表し、R^(3)は1級、2級又は3級アミノ基を有する1価の有機基を表す。]
なかでも前記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位を有するアクリル樹脂を含有することにより、良好な感光特性を維持しつつ、耐熱衝撃性を向上することができるのでより好ましく、また、(A)成分との相溶性、レジストパターンの基板への密着性、機械特性及び耐熱衝撃性をより向上できる観点から、上記一般式(1)で表される構造単位、上記(2)で表される構造単位及び下記一般式(3)で表される構造単位を有するアクリル樹脂を含有することがより好ましい。(D)成分は、上記アクリル樹脂の1種のみからなるものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
・・・(中略)・・・
[0095] (D)成分であるアクリル樹脂において、上記一般式(1)で表される構造単位の組成比は、(D)成分の総量に対して、50?95モル%であることが好ましく、60?90モル%であることがより好ましく、70?85モル%であることが特に好ましい。上記一般式(1)で表される構造単位の組成比が50?95モル%であることにより、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜の耐熱衝撃性をより向上することができる。
[0096] また、(D)成分であるアクリル樹脂において、上記一般式(2)で表される構造単位の組成比は、(D)成分の総量に対して、5?35モル%であることが好ましく、10?30モル%であることがより好ましく、15?25モル%であることが特に好ましい。上記一般式(2)で表される構造単位の組成比が5?35モル%であることにより、(A)成分との相溶性、及びポジ型感光性樹脂組成物の現像性をより向上することができる。
・・・(中略)・・・
[0123]<その他の成分>
上述のポジ型感光性樹脂組成物は、上記(A)?(F)成分及び溶剤以外に、溶解促進剤、溶解阻害剤、カップリング剤、及び、界面活性剤又はレベリング剤等の成分を含有してもよい。
[0124](溶解促進剤)
溶解促進剤を上述のポジ型感光性樹脂組成物に配合することによって、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度及び解像性を向上させることができる。溶解促進剤としては従来公知のものを用いることができる。その具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸、スルホンアミド基を有する化合物が挙げられる。」

(3)「[0163][実施例1?12、比較例1?3]
実施例1?12、比較例1?3で用いた材料について以下に示す。
[(A)成分]
A1:クレゾールノボラック樹脂(クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、m-クレゾール/p-クレゾール(モル比)=60/40、ポリスチレン換算重量平均分子量=12,000、旭有機材工業社製、商品名「EP4020G」)
・・・(中略)・・・
[0166][(B)成分]
B1:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(エステル化率約90%、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名「TPPA528」)
B2:トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(エステル化率約95%)
[0167][(C)成分]
C1:ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW-30HM」、下記構造式で表される化合物)


・・・(中略)・・・
[0168][(D)成分]
合成例2:アクリル樹脂D1の合成
攪拌機、窒素導入管及び温度計を備えた500mlの三口フラスコに、トルエン75g、イソプロパノール(IPA)75gを秤取し、別途に秤取したアクリル酸ブチル(BA)85g、ラウリルアクリレート(DDA)24g、アクリル酸(AA)14g、及び1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリレート(商品名:FA-711MM、日立化成工業(株)社製)7.9gの重合性単量体、並びにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.13gを加えた。室温にて約270rpmの攪拌回転数で攪拌しながら、窒素ガスを400ml/分の流量で30分間流し、溶存酸素を除去した。その後、窒素ガスの流入を停止し、フラスコを密閉し、恒温水槽にて約25分で65℃まで昇温した。同温度を14時間保持して重合反応を行い、アクリル樹脂D1を得た。この際の重合率は98%であった。また、このA3のGPC法の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量(MW)は、約36,000であった。
・・・(中略)・・・
[0170]
[表1]

FA-711MM:1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリレート(日立化成工業(株)社製)
FA-712HM:2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルメタクリレート(日立化成工業(株)社製)
BA:アクリル酸n-ブチル
DDA:ラウリルアクリレート
AA:アクリル酸
X-22-2475:メタクリル変性シリコーンオイル(官能基当量:420g/mol、信越化学工業(株)社製、下記構造式で表される化合物)

(上記式中、Yは2価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、mは1?10の整数である。)
表1中のX-22-2475のモル数は、官能基当量から算出した。
[0171][ポジ型感光性樹脂組成物の調製]
(A)?(D)成分を表2に示した重量、(E)成分として乳酸エチル120g、及びカップリング剤として尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液2gを配合し、これを3μm孔のテフロン(登録商標)フィルターを用いて加圧ろ過して、実施例1?12、及び比較例1?3のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。
・・・(中略)・・・
[0178]
[表2]



2 引用発明
(1)引用発明1
上記1より、引用文献1には、実施例1として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、(A)?(D)成分の重量は、[0178]の[表2]に記載されたものである。
「 (A)?(D)成分とその重量を以下に示したものとし、(E)成分として乳酸エチル120g、及びカップリング剤として尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液2gを配合し、これを加圧ろ過して、調整した、
ポジ型感光性樹脂組成物。
(A)成分
A1:クレゾールノボラック樹脂(クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、m-クレゾール/p-クレゾール(モル比)=60/40、ポリスチレン換算重量平均分子量=12,000、旭有機材工業社製、商品名「EP4020G」) 100g
(B)成分
B1:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(エステル化率約90%、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名「TPPA528」)
15g
(C)成分
C1:ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW-30HM」) 15g
(D)成分
D1:攪拌機、窒素導入管及び温度計を備えた500mlの三口フラスコに、トルエン75g、イソプロパノール(IPA)75gを秤取し、別途に秤取したアクリル酸ブチル(BA)85g、ラウリルアクリレート(DDA)24g、アクリル酸(AA)14g、及び1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリレート(商品名:FA-711MM、日立化成工業(株)社製)7.9gの重合性単量体、並びにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.13gを加え、室温にて約270rpmの攪拌回転数で攪拌しながら、窒素ガスを400ml/分の流量で30分間流し、溶存酸素を除去し、その後、窒素ガスの流入を停止し、フラスコを密閉し、恒温水槽にて約25分で65℃まで昇温し、同温度を14時間保持して重合反応を行って得た、アクリル樹脂D1 10g」

第7 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
ア アルカリ可用性樹脂
引用発明の「A1:クレゾールノボラック樹脂(クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、m-クレゾール/p-クレゾール(モル比)=60/40、ポリスチレン換算重量平均分子量=12,000、旭有機材工業社製、商品名「EP4020G」)」は、その化学構造からみて、本願発明1の「フェノール性水酸基を有するアルカリ可用性樹脂」に相当する。

イ o-キノンジアジド化合物
引用発明の「B1:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(エステル化率約90%、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名「TPPA528」)」は、その化学構造からみて、本願発明1の「o-キノンジアジド化合物」に相当する。

ウ 熱架橋剤
引用発明の「C1:ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW-30HM」)」は、その化学構造からみて、本願発明1の「一般式(6)で表される化合物」に相当する(当合議体注:「一般式(6)は上記第5に記載したとおりのものである。)。
また、引用発明の「C1:ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW-30HM」)」は、技術的にみて、本願発明1の「熱架橋剤」に相当する。

エ アクリル樹脂
引用発明の「ポジ型感光性樹脂組成物」は、(D)成分として、「D1:攪拌機、窒素導入管及び温度計を備えた500mlの三口フラスコに、トルエン75g、イソプロパノール(IPA)75gを秤取し、別途に秤取したアクリル酸ブチル(BA)85g、ラウリルアクリレート(DDA)24g、アクリル酸(AA)14g、及び1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリレート(商品名:FA-711MM、日立化成工業(株)社製)7.9gの重合性単量体、並びにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.13gを加え、室温にて約270rpmの攪拌回転数で攪拌しながら、窒素ガスを400ml/分の流量で30分間流し、溶存酸素を除去し、その後、窒素ガスの流入を停止し、フラスコを密閉し、恒温水槽にて約25分で65℃まで昇温し、同温度を14時間保持して重合反応を行って得た、アクリル樹脂D1」(以下「アクリル樹脂D1」という。)を含むものである。
ここで、引用発明の「アクリル樹脂D1」は、「BA:アクリル酸n-ブチル」及び「DDA:ラウリルアクリレート」に由来する構造単位を含むところ、これらの構成単位は、技術的にみて、本願発明1の「一般式(7)で表される構造単位」に相当する。
また、引用発明の「アクリル樹脂D1」は、「AA:アクリル酸」に由来する構造単位を含むところ、この構成単位は、技術的にみて、本願発明1の「一般式(8)で表される構造単位」に相当する。
さらに、引用発明の「アクリル樹脂D1」における、「BA:アクリル酸n-ブチル」と「DDA:ラウリルアクリレート」を併せた含有量及び「AA:アクリル酸」の含有量は、それぞれ、約77%((670+100)/(35+670+100+200))及び約20%(200/(35+670+100+200))である。
そうしてみると、引用発明の「アクリル樹脂D1」は、本願発明1の「アクリル樹脂が、下記一般式(7)で表される構造単位及び下記一般式(8)で表される構造単位を有し、一般式(7)で表される構成単位の組成比が、(E)成分の総量に対して、60?90モル%であり、一般式(8)で表される構成単位の組成比が、(E)成分の総量に対して、10?30モル%である」という要件を満たすものである(当合議体注:「一般式(7)」及び「一般式(8)」は上記第5に記載したとおりのものである。)。

オ 感光性樹脂組成物
以上ア-エからみて、引用発明の「ポジ型感光性樹脂組成物」は、本願発明1の「感光性樹脂組成物」に相当する。

(2)一致点及び相違点
ア 本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
(一致点)
「(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、
(B)o-キノンジアジド化合物と、
(C)熱架橋剤と、
(E)アクリル樹脂とを含有し、
(C)熱架橋剤が、下記一般式(6)で表される化合物であり、
(E)アクリル樹脂が、下記一般式(7)で表される構造単位及び下記一般式(8)で表される構造単位を有し、一般式(7)で表される構成単位の組成比が、(E)成分の総量に対して、60?90モル%であり、一般式(8)で表される構成単位の組成比が、(E)成分の総量に対して、10?30モル%である、感光性樹脂組成物。」
(当合議体注:「一般式(3)」、「一般式(6)?「一般式(8)」は上記第5に記載したとおりのものである。)

イ 本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は「(D)フェノール性低分子化合物」を含有し、「(D)フェノール性低分子化合物」が「一般式(3)で表される化合物」であり、「(A)成分100質量部に対し、(D)成分を5?35質量部含有」するのに対して、引用発明は、このように特定されたものではない点。

(3)相違点についての判断
相違点1について検討する。
引用文献1には、「フェノール性低分子化合物」として、本願発明1の「一般式(3)で表される化合物」を用いることは記載も示唆もされていない。
ところで、本願明細書の【0056】には、本発明では、(D)成分であるフェノール性低分子化合物は、樹脂膜のアルカリ現像液に対する溶解速度を促進する目的で用いることが記載されている。
そこで、引用発明1において、樹脂膜のアルカリ現像液に対する溶解速度を促進する目的のために、本願発明1の「一般式(3)で表される化合物」を「(A)成分100質量部に対し」、「5?35質量部含有」させることを、当業者が容易に想到するものであるか否かについて以下検討する。
引用文献1の[0124]には、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度及び解像性を向上させるために、カルボキシル基、スルホン酸、スルホンアミド基を有する、従来公知の溶解促進剤をポジ型感光性樹脂組成物に配合することが記載されているが、「一般式(3)で表される化合物」を用いることは記載されていない。
ここで、溶解促進剤として、本願発明1の「一般式(3)で表される化合物」を含む、フェノール性低分子化合物を用いることは、平成30年7月23付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由に引用文献2-8として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2008-20623号公報、特開2006-3422号公報、特開2005-107130号公報、特開2003-233174号公報 、特開2005-107131号公報、特開2003-207883号公報及び特開2004-93816号公報(以下それぞれ「引用文献2」-「引用文献8」という。)に記載されており、周知技術であるといえる。
この点に関して、請求人は、平成30年9月25日付け意見書において「引用文献2-8に着目すると、数多くのフェノール性低分子化合物が例示されているものの、フェノール性低分子化合物とガラス転移温度との関係性については何ら記載されていません。また、引用文献2-8には、一般式(3)で表される化合物が、他のフェノール性低分子化合物とともに並列な関係で記載されているのみであり、これらの中から、一般式(3)で表される化合物のみを採用することの示唆はなく、ましてや、一般式(3)で表される化合物を採用したときの効果(特に、パターンメルトの点で優れるという効果)を示唆する記載はありません。」と主張している。
確かに、本願明細書の【0004】、【0063】、【0064】及び【0128】-【0145】の記載からは、請求人が主張するとおりの事項を把握することができる。
これに対して、引用文献2-8には、フェノール性低分子化合物の中から、本願発明1の「一般式(3)で表される化合物」を用い、「(A)成分100質量部に対し、(D)成分を5?35質量部含有」させることで、他のフェノール性低分子化合物を用いた場合に比して膜減りやパターンメルト等を抑制できるという効果を奏することは記載も示唆もされていない。
そうしてみると、請求人が主張する効果は、引用文献1-8に記載も示唆もされておらず、また、引用発明、並びに、引用文献1-8に記載された事項及び上記周知技術からは当業者が予測することができない、顕著なものと評価するのが相当である。
したがって、たとえ当業者といえども、引用発明、並びに、引用文献1-8に記載された事項及び周知技術に基づいて相違点1に係る本願発明1の構成とすることを容易に想到することができたとはいえない。

2 本願発明2-本願発明5について
本願発明2-本願発明5は、本願発明1の「硬化性樹脂組成物」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに、引用文献1-8に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明6及び本願発明7について
本願発明6及び本願発明7は、本願発明1-5の「硬化性樹脂組成物」を用いた「パターン硬化膜の製造方法」の発明であり、本願発明1の「硬化性樹脂組成物」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに、引用文献1-8に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明8及び本願発明9について
本願発明8及び本願発明9は、本願発明1-5の「硬化性樹脂組成物」のパターン硬化膜を有する「電子部品」の発明であり、本願発明1の「硬化性樹脂組成物」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに、引用文献1-8に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第8 平成30年12月17日付け拒絶理由通知書における理由1(特許法第36条第6項第1号)及び理由2(特許法第36条第6項第2号)について
平成30年12月17日付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由1及び理由2は、平成31年1月30日付けの手続補正でされた補正によって解消されている。

第9 原査定について
原査定の拒絶の理由において引用文献A?Kとして引用された各文献には、フェノール性低分子化合物の中から、本願発明1の「一般式(3)で表される化合物」を用いることで、他のフェノール性低分子化合物を用いた場合に比して膜減りやパターンメルトを抑制できるという効果を奏することは記載も示唆もされていない。
そして、平成30年9月25日付けの手続補正により、本願発明1-本願発明10は、「フェノール性低分子化合物」として「一般式(3)で表される化合物」を「(A)成分100質量部に対し」、「5?35質量部含有」する構成となっており、当該構成とすることで、他のフェノール性低分子化合物を用いた場合に比して膜減りやパターンメルトを抑制できるという効果を奏するものである。そうしてみると、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献A?Kに基づいて、容易に発明できたとはいえない。
また、理由3(特許法36条6項1号)については、平成30年9月25日付けの手続補正でされた補正によって解消されている。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第10 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由もない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2016-75148(P2016-75148)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03F)
P 1 8・ 537- WY (G03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 純平  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
川村 大輔
発明の名称 感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、半導体装置及び電子部品  
代理人 吉住 和之  
代理人 阿部 寛  
代理人 清水 義憲  
代理人 平野 裕之  
代理人 長谷川 芳樹  
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