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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F24F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F
管理番号 1350174
審判番号 不服2017-17446  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-27 
確定日 2019-04-09 
事件の表示 特願2015-56333号「空気調和システムおよび空気調和制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月6日出願公開、特開2016-176629号、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月19日の出願であって、平成29年2月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年4月27日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年9月20日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、その後当審より、平成30年10月16日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年12月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、平成30年12月10日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
室内の空調運転を行う空気調和機と、加湿空気を前記室内に供給する保湿空気供給機とを備え、前記空気調和機と前記保湿空気供給機とが相互通信を行うことで情報を共有しながら、連動してそれぞれの運転制御を実行し、室内環境を制御する空気調和システムであって、
前記室内に存在する就寝者の体動または表面温度に基づいて、前記就寝者の睡眠状態を判定し、深い睡眠であるか浅い睡眠であるかを識別する睡眠状態信号を出力する睡眠状態判定器をさらに備え、
前記空気調和機および前記保湿空気供給機は、
共有する前記情報に基づいて前記室内の結露の有無を判定し、前記結露の有無に関する判定結果と、前記睡眠状態信号に基づく識別結果との組合せに応じて、それぞれの運転制御を実行し、
前記睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合には、人よけ運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行し、
前記判定結果が結露ありを示し、かつ、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、前記空気調和機および前記保湿空気供給機を運転停止させることなしに、前記結露を除去または抑制する結露除去運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行する
空気調和システム。」

なお、本願発明2ないし14の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし13は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明14は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014-85086号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0007】
この発明によれば、高湿空気の搬送方向を容易に定めることができる。」

「【0063】
図7、図8において、寝室50内には流体搬送装置51が設置され、流体搬送装置51の本体ケース側面には睡眠センサ52、通信手段53を備えている。寝室50内上部には赤外線センサ54を備えたエアコン55が設置され、流体搬送装置51から数十cm?1m程度離れて寝具56が設置されている。
【0064】
睡眠センサ52は赤外線や電波、超音波などを用いて非接触で人の動き(体動)を測定するものであり、通信手段53は赤外線や電波などを利用したものである。
赤外線センサ54はエアコン55の吹出し気流による冷暖房を効率的にするため、人体の位置や、壁や床の表面温度などを検知するセンサで、その出力によって気流の方向を調整するためのものである。
【0065】
人が寝具56で就寝すると睡眠センサ52は人の体動を測定し、体動数に応じて入眠のタイミングや睡眠の深度を判定する。一般的に快眠のためには寝室の温度は、冬は20℃前後、夏は25℃前後、湿度は50?60%が理想的とされている。流体搬送装置51は睡眠が浅いと判定したときには湿度50?60%に調整し、睡眠が深いと判定したときには運転を停止して過加湿を防止して、質の良い睡眠へと誘導する。
【0066】
また、通信手段53によって、睡眠判定結果をエアコン55に送信し、同様に睡眠が浅いと判定したときには快眠温度に調整し、睡眠が深いと判定したときには運転を停止して冷えすぎ、温まりすぎを防止したり、入眠するまでは快眠温度より低めに設定し、入眠後は運転を停止したりして、流体搬送装置51と連動して、入眠から睡眠を通して質の良い睡眠のための室内環境を提供することができる。
また、エアコン55に設置した赤外線センサ54で人の体動を検知し、睡眠判定を行ってもよいが、流体搬送装置51の方がより、人に近い位置に設置することができるので、検知距離の小さい電波でもより精度の高い判定を行うことができる。
【0067】
図7では睡眠センサ52、通信手段53は流体搬送装置51に設置したが、図8のように別ユニットとして寝具に設置し、睡眠判定結果を流体搬送装置51、エアコン55に通信することによって、適温適湿環境に制御してもよい。その際、睡眠センサ52は赤外線、電波、超音波以外にも加速度センサを用いることも可能だし、通信手段をネット環境と接続できるものとし、睡眠センサを携帯電話の睡眠アプリケーションと連動しても良い。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「寝室内にエアコンと、高湿空気の搬送方向を容易に定めることができる流体搬送装置とが設置され、前記流体搬送装置は睡眠センサと通信手段を備え、前記エアコンに前記流体搬送装置から睡眠判定結果が通信手段で通信され、連動して室内環境を制御するエアコンと流体搬送装置であって、
寝具で就寝する人の体動を睡眠センサで測定し、体動数に応じて入眠のタイミングや睡眠の深度を判定し、
前記流体搬送装置は睡眠が浅いと判定したときには湿度50?60%に調整し、睡眠が深いと判定したときには運転を停止して過加湿を防止して、質の良い睡眠へと誘導するとともに、前記エアコンは、同様に睡眠が浅いと判定したときには快眠温度に調整し、睡眠が深いと判定したときには運転を停止して冷えすぎ、温まりすぎを防止したり、入眠するまでは快眠温度より低めに設定し、入眠後は運転を停止したりして、流体搬送装置と連動して、入眠から睡眠を通して質の良い睡眠のための室内環境を提供するエアコンと流体搬送装置。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2014-70882号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0006】
本発明の空気調和機は、室内環境の指標を検出する検出部と、検出された指標に基づいて室内状況を判断して、空調機器の運転を制御する制御部とを備え、空調運転に連動させて、室内に設置された空調機器の運転を制御するものである。制御部は、暖房運転の開始とともに空調機器に加湿運転を行わせ、室内状況が変化したとき、空調機器の加湿運転を他の運転に変更させる。
【0007】
すなわち、上記の空気調和機と室内に設置された空調機器とから空調システムが構成される。空気調和機と空調機器とが通信可能とされ、空気調和機の空調運転に連動して空調機器が運転を行う。したがって、空気調和機が暖房運転を開始すると、空気調和機からの指示により空調機器が加湿運転を行う。空気調和機は、室内環境に基づいて室内状況を判断し、室内状況が変化したとき、空調機器の加湿運転を他の運転に変更させる。
【0008】
暖房運転と同時に加湿運転が行われ、暖房運転によって室内が乾燥することを防げる。加湿により、室内の湿度が高くなっていく。制御部は、検出部により検出された室温や湿度などの指標に基づいて室内状況を判断している。室内状況が結露状態になったとき、制御部は、空調機器の加湿運転を停止させる。加湿運転の停止は、運転の変更の1つである。」

「【0028】
空気調和機1は、特に室内状況として、結露状態にあるか否かを監視している。制御部14は、検出部13によって検出された室温、外気温および室内の湿度に基づいて、室温と湿度から露点温度を確定し、外気温と露点温度を比較して、結露状態にあるか否かを判断する。結露状態にあるとき、制御部14は、加湿機2の加湿運転を停止させる。結露状態でないとき、制御部14は、加湿機2の加湿運転を続行させる。」

したがって、上記引用文献2には、「空気調和機と加湿機とを備え、前記空気調和機と前記加湿機とが通信可能とされ、空気調和機の空調運転に連動して加湿機が運転を行う空調システムであって、前記空気調和機の制御部は、検出部により検出された室温や湿度などの指標に基づいて室内状況を判断し、室内状況が結露状態になったとき、制御部は、加湿機の加湿運転を停止させる、空気調和システム」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献3(特開2010-133692号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「睡眠状態判定部5が、算出された人の頭部、胴部、手足部の体動の大きさと回数、さらに必要ならば表面温度も考慮して、図3に示したような睡眠状態(起床、REM睡眠、睡眠深度1?睡眠深度4)を判定する(S9)。」(【0022】)

「睡眠状況判定には、体動、顔温度、手足温度の順に重みをつけて判断するのが好ましい。」(【0031】)

したがって、上記引用文献3には、「就寝者の表面温度に基づいて、就寝者の睡眠状態を判定する」という技術的事項が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「エアコン」と「流体搬送装置」とはそれぞれ本願発明1における「空気調和機」と「保湿空気供給機」とに相当するから、結局、引用発明における「寝室内にエアコンと、高湿空気の搬送方向を容易に定めることができる流体搬送装置とが設置され」る態様は、本願発明1における「室内の空調運転を行う空気調和機と、加湿空気を前記室内に供給する保湿空気供給機とを備え」る態様に相当する。同様に、引用発明における「エアコンに前記流体搬送装置から睡眠判定結果が通信手段で通信され」る態様と「エアコンと流体搬送装置」とはそれぞれ本願発明1における「空気調和機と前記保湿空気供給機とが相互通信を行うことで情報を共有」する態様と「空気調和システム」とに相当するから、結局、引用発明の「流体搬送装置は睡眠センサと通信手段を備え、前記エアコンに前記流体搬送装置から睡眠判定結果が通信手段で通信され、連動して室内環境を制御するエアコンと流体搬送装置」は本願発明1の「空気調和機と前記保湿空気供給機とが相互通信を行うことで情報を共有しながら、連動してそれぞれの運転制御を実行し、室内環境を制御する空気調和システム」に相当する。また、引用発明の「寝具で就寝する人の体動を睡眠センサで測定し、体動数に応じて、入眠のタイミングや睡眠の深度を判定(し)」するエアコンと流体搬送装置は「睡眠判定結果が通信手段で通信され」るのであるから本願発明1における「睡眠状態信号を出力する睡眠状態判定器」に相当するものを備えるといえるので、結局、本願発明1の「室内に存在する就寝者の体動または表面温度に基づいて、前記就寝者の睡眠状態を判定し、深い睡眠であるか浅い睡眠であるかを識別する睡眠状態信号を出力する睡眠状態判定器をさらに備え」る空気調和システムに相当する。
そして、本願発明1の「空気調和機および前記保湿空気供給機は」「結露の有無に関する判定結果と、前記睡眠状態信号に基づく識別結果との組合せに応じて、それぞれの運転制御を実行(し)」する態様と引用発明の「流体搬送装置は睡眠が浅いと判定したときには湿度50?60%に調整し、睡眠が深いと判定したときには運転を停止し」「エアコンは、同様に睡眠が浅いと判定したときには快眠温度に調整し、睡眠が深いと判定したときには運転を停止(し)」する態様とは「空気調和機および前記保湿空気供給機は、睡眠状態信号に基づく識別結果に応じて、それぞれの運転制御を実行(し)」する態様の限りで一致し、引用発明における「睡眠が浅いと判定したとき」と「睡眠が深いと判定したとき」とはそれぞれ本願発明1における「睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合」と「睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合」に相当するから、結局、本願発明1の「空気調和機および前記保湿空気供給機は、共有する前記情報に基づいて前記室内の結露の有無を判定し、前記結露の有無に関する判定結果と、前記睡眠状態信号に基づく識別結果との組合せに応じて、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合には、人よけ運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行し、前記判定結果が結露ありを示し、かつ、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、前記空気調和機および前記保湿空気供給機を運転停止させることなしに、前記結露を除去または抑制する結露除去運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行する」態様と、引用発明の「流体搬送装置は睡眠が浅いと判定したときには湿度50?60%に調整し、睡眠が深いと判定したときには運転を停止して過加湿を防止して、質の良い睡眠へと誘導するとともに、前記エアコンは、同様に睡眠が浅いと判定したときには快眠温度に調整し、睡眠が深いと判定したときには運転を停止して冷えすぎ、温まりすぎを防止したり、入眠するまでは快眠温度より低めに設定し、入眠後は運転を停止したりして、流体搬送装置と連動して、入眠から睡眠を通して質の良い睡眠のための室内環境を提供する」態様とは、「空気調和機および前記保湿空気供給機は、睡眠状態信号に基づく識別結果に応じて、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合には、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、それぞれの運転制御を実行する」態様の限りにおいて一致している。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「室内の空調運転を行う空気調和機と、加湿空気を前記室内に供給する保湿空気供給機とを備え、前記空気調和機と前記保湿空気供給機とが相互通信を行うことで情報を共有しながら、連動してそれぞれの運転制御を実行し、室内環境を制御する空気調和システムであって、
前記室内に存在する就寝者の体動または表面温度に基づいて、前記就寝者の睡眠状態を判定し、深い睡眠であるか浅い睡眠であるかを識別する睡眠状態信号を出力する睡眠状態判定器をさらに備え、
前記空気調和機および前記保湿空気供給機は、睡眠状態信号に基づく識別結果に応じて、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合には、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、それぞれの運転制御を実行する
空気調和システム。」

(相違点)
空気調和機および保湿空気供給機のそれぞれの運転制御に関し、本願発明1は「共有する前記情報に基づいて前記室内の結露の有無を判定し、前記結露の有無に関する判定結果と、前記睡眠状態信号に基づく識別結果との組合せに応じて、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合には、人よけ運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行し、前記判定結果が結露ありを示し、かつ、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、前記空気調和機および前記保湿空気供給機を運転停止させることなしに、前記結露を除去または抑制する結露除去運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行する」という構成を備えるのに対し、引用発明は「流体搬送装置は睡眠が浅いと判定したときには湿度50?60%に調整し、睡眠が深いと判定したときには運転を停止して過加湿を防止して、質の良い睡眠へと誘導するとともに、前記エアコンは、同様に睡眠が浅いと判定したときには快眠温度に調整し、睡眠が深いと判定したときには運転を停止して冷えすぎ、温まりすぎを防止したり、入眠するまでは快眠温度より低めに設定し、入眠後は運転を停止したりして、流体搬送装置と連動して、入眠から睡眠を通して質の良い睡眠のための室内環境を提供する」ものであって、そのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、相違点に係る本願発明1の「共有する前記情報に基づいて前記室内の結露の有無を判定し、前記結露の有無に関する判定結果と、前記睡眠状態信号に基づく識別結果との組合せに応じて、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合には、人よけ運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行し、前記判定結果が結露ありを示し、かつ、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、前記空気調和機および前記保湿空気供給機を運転停止させることなしに、前記結露を除去または抑制する結露除去運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行する」という構成は、「結露の有無に関する判定結果と、前記睡眠状態信号に基づく識別結果との組合せに応じて、それぞれの運転制御を実行する」ものであって、少なくとも「前記判定結果が結露ありを示し、かつ、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、前記空気調和機および前記保湿空気供給機を運転停止させることなしに、前記結露を除去または抑制する結露除去運転を行う」ものと解されるところ、そのような構成は上記引用文献2及び3に記載されていない。そして、引用発明は、「睡眠が深いと判定したとき」に「エアコン」と「流体搬送装置」とが「運転を停止」するものであるから、本願発明1の「空気調和機および前記保湿空気供給機を運転停止させることなしに、前記結露を除去または抑制する結露除去運転を行う」構成とする動機付けがあるとはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2ないし13について
本願発明2ないし13も、本願発明1の「共有する前記情報に基づいて前記室内の結露の有無を判定し、前記結露の有無に関する判定結果と、前記睡眠状態信号に基づく識別結果との組合せに応じて、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合には、人よけ運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行し、前記判定結果が結露ありを示し、かつ、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、前記空気調和機および前記保湿空気供給機を運転停止させることなしに、前記結露を除去または抑制する結露除去運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行する」という構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明14について
本願発明14は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「共有する前記情報に基づいて前記室内の結露の有無を判定し、前記結露の有無に関する判定結果と、前記睡眠状態信号に基づく識別結果との組合せに応じて、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合には、人よけ運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行し、前記判定結果が結露ありを示し、かつ、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、前記空気調和機および前記保湿空気供給機を運転停止させることなしに、前記結露を除去または抑制する結露除去運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行する」という構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1及び14について上記引用文献1ないし3に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成30年12月10日の手続補正により補正された請求項1及び14は、それぞれ「共有する前記情報に基づいて前記室内の結露の有無を判定し、前記結露の有無に関する判定結果と、前記睡眠状態信号に基づく識別結果との組合せに応じて、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合には、人よけ運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行し、前記判定結果が結露ありを示し、かつ、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、前記空気調和機および前記保湿空気供給機を運転停止させることなしに、前記結露を除去または抑制する結露除去運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行する」という事項、「共有する前記情報に基づいて前記室内の結露の有無を判定し、前記結露の有無に関する判定結果と、前記睡眠状態信号に基づく識別結果との組合せに応じて、それぞれの運転制御を実行し、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が浅い睡眠を示す場合には、人よけ運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行し、前記判定結果が結露ありを示し、かつ、前記睡眠状態信号に基づく識別結果が深い睡眠を示す場合には、前記空気調和機および前記保湿空気供給機を運転停止させることなしに、前記結露を除去または抑制する結露除去運転を行うように前記それぞれの運転制御を実行する」に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1及び14は、上記引用文献1に記載された発明並びに上記引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1ないし14には、結露の有無に関係なく「浅睡眠時は」「人よけ運転」をすることが特定されていないから、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないので、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年12月10日の補正の結果、この拒絶の理由は解消した。

2.特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項1及び14の「結露を除去または抑制する結露除去運転」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年12月10日の補正の結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし14は、当業者が引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由及び当審が通知した拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2015-56333(P2015-56333)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F24F)
P 1 8・ 537- WY (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安島 智也  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 田村 嘉章
宮崎 賢司
発明の名称 空気調和システムおよび空気調和制御方法  
代理人 大宅 一宏  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  
代理人 上田 俊一  

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