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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L |
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管理番号 | 1350215 |
審判番号 | 不服2017-17906 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-01 |
確定日 | 2019-03-28 |
事件の表示 | 特願2016-168265「電気掃除機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日出願公開、特開2016-195917〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年2月27日(以下、「遡及日」という。)に出願した特願2014-37057号の一部を平成28年8月30日に新たな特許出願としたものであって、平成28年8月30日に上申書が提出され、平成29年4月17日付けで拒絶理由が通知され、同年6月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年12月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正書が提出された。 そして、当審から平成30年8月31日付けで拒絶理由が通知され、同年10月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 拒絶の理由 平成30年8月31日付けで当審が通知した拒絶理由は次のとおりである。 (進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その遡及日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その遡及日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1ないし4 ・引用文献等 1ないし3 1.特開2007-330360号公報 2.特開昭64-32828号公報 3.実願昭60-190405号(実開昭62-96348号)のマイクロフィルム 第3 本願発明 本願請求項4に係る発明は、平成30年10月26日に提出された手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項4に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項4】 電気掃除機の吸込口体と、電動送風機を含む掃除機本体と、前記掃除機本体に着脱可能に装着されるダストカップユニットと、前記掃除機本体に収容されるバッテリーとを備えている縦型の電気掃除機であって、 前記吸込口体は、 集塵開口部を有する吸込口本体と、 前記吸込口本体に対する上下方向および前後方向である縦方向、および、前記吸込口本体の長手方向である横方向に沿って回動可能に支持された可動パイプと、 前記吸込口本体の前方に向かう前記縦方向の回動における限界位置まで、前記可動パイプを回動させ、前記可動パイプが床面に対し略垂直または前方に傾いた状態では、前記可動パイプの前記吸込口本体の前方に向かう前記縦方向の回動と、前記可動パイプの前記横方向の回動とを規制する規制部とを備え、 前記吸込口体に対して前記掃除機本体を起てた状態において、 前記ダストカップユニットの上方に前記電動送風機が配置され、前記電動送風機の後方に前記バッテリーが配置され、かつ前記電動送風機を挟んで前記バッテリーと対向する位置にハンドルが配置されていること を特徴とする電気掃除機。」 第4 引用文献の記載及び引用発明 1.引用文献1 (1)引用文献の記載 当審の拒絶の理由に引用された、特開2007-330360号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付加したものである。以下同様。) ア.「【0001】 本願発明は、掃除機本体を片手で手軽に持って掃除が可能な小型で軽量な携帯型電気掃除機に関するものである。 【0002】 従来から、手軽な電気掃除機として携帯型の電気掃除機が利用されている。携帯型電気掃除機は、掃除機本体を持ち上げて、本体自体を人手により移動させることにより清掃を行うものであり、いわゆるハンディクリーナーと称せられるものである。このような携帯型電気掃除機を使用することで、ユーザは、床面以外にも、例えば机上,棚上または車内など、普通の電気掃除機では清掃することが困難な箇所を容易に清掃することができる。このような携帯型電気掃除機が例えば特許文献1に記載されている。」 イ.「【0007】 また、駆動用電源である充電式電池がハンドル内に内蔵されているので、自立状態では構成的に重量の重い電池が最上部に位置するため、重心が高くなって、自立状態での床面の傾斜や何かが当たったときに転倒しやすくなる。また、ハンドル位置と重心が近くなるため、掃除機本体が後方に傾倒される使用時には、梃子の原理で手にかかる荷重も大きくなってしまう。」 ウ.「【0024】 本実施形態の携帯型電気掃除機1は、掃除機本体を片手で持ち上げて、本体自体を片手で移動させることにより清掃を行うものであり、略紡錘型の掃除機本体2と、本体2の前端(図1?図3の自立状態では下端)側に着脱可能に装着される床用吸込具3と、本体2の後端(図1?図3の自立状態では上端)側に一体的に形成された湾曲形状のハンドル4とを備えている。 【0025】 掃除機本体2には、図2に示すように、前部(図2の自立状態では下部)に集塵室5が配置されて、当該集塵室5に連通すると共に床用吸込具3が着脱可能に装着される吸込ノズル6が突設されており、後部(図2の自立状態では上部)には電動送風機7とその駆動用電源である充電式電池8が内蔵されている。 【0026】 上記集塵室5には、当該集塵室5に形成された装着口9から集塵用のダストボックス10が着脱可能に装着されるようになっている。また、集塵室5の電動送風機7側の吸引口11には、ダストボックス10から漏れた塵埃が電動送風機7側に吸引されるのを防ぐエアインレットフィルタ12が備えられている。このエアインレットフィルタ12も、集塵室5の装着口9から着脱可能に装着されるものである。」 エ.「【0030】 一方、本実施形態の携帯型電気掃除機1は、前述したように掃除機本体2に一体的に突設された吸込ノズル6に床用吸込具3を装着した状態で、図1?図3に示すように掃除機本体2が床用吸込具3の上方に起立した状態で自立可能に構成されている。」 オ.「【0032】 一方、床用吸込具3は、平面視略T字状の吸込具であって、幅方向に延びるケーシング19と、ケーシング19の中央後端に連結されて上記吸込ノズル6が挿入される中空形状の接続用ベント20とを備えている。ケーシング19の前部底面には、幅方向に延びる吸込口21が形成されている。また、ケーシング19内には、上記吸込口21に臨ませて回転ブラシ22が備えられている。この回転ブラシ22は、ケーシング19に内蔵されたブラシ用モータ23により回転駆動され、吸込口21を介して床面に接して塵埃を掻き上げ、効率良く塵埃を吸い込むことができる。 【0033】 接続用ベント20は、ケーシング19を介して吸込口21に連通する中空体で、その長さは本体2側の吸込ノズル6と略同一で、その前端がケーシング19に上下に回動可能に連結されることで、前端を中心として上下方向に揺動する。これにより、ケーシング19は、本体2に対して上下方向に角度位置が変化する。よって、本体2が後方に傾倒しても吸引口21(回転ブラシ22)は、床面から離れないようになっている。」 カ.上記ウ.の記載から、ダストボックス10は、掃除機本体2に着脱可能に装着されることが理解できる。 キ.図2の記載から、引用文献1の携帯型電気掃除機1は縦型であることが看取できる。 ク.上記オ.及び図2の記載から、接続用ベント20は、ケーシング19に対する上下方向および前後方向である縦方向に沿って回動可能に支持されていることが理解できる。 ケ.図2の記載から、接続用ベント20は、その前面部がケーシング19の背面部に当接する位置まで回転させることができることが看取できるから、かかる位置を限界位置とすれば、引用文献1の携帯型電気掃除機1は、ケーシング19の前方に向かう縦方向の回動における限界位置まで、接続用ベント20を回動させるものであることが理解できる。 また、図2の記載から、接続用ベント20が床面に対し前方に傾いた状態では、接続用ベント20のケーシング19の前方に向かう縦方向の回動はケーシング19の背面部と接続用ベント20の前面部が当接することで規制されていることが看取できるから、引用文献1の携帯型電気掃除機1は、接続用ベント20が床面に対し前方に傾いた状態では、接続用ベント20のケーシング19の前方に向かう縦方向の回動を規制する規制部を備えることが理解できる。 コ.図2の記載から、床用吸込具3に対して掃除機本体2を起立した状態において、ダストボックス10の上方に電動送風機7が配置され、電動送風機7の後方に充電式電池8が配置され、かつ掃除機本体1の上方にハンドル4が配置されていることが看取できる。 (2)引用発明 上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「携帯型電気掃除機1の床用吸込具3と、電動送風機7を内蔵する掃除機本体2と、前記掃除機本体2に着脱可能に装着されるダストボックス10と、前記掃除機本体2に内蔵される充電式電池8とを備えている縦型の携帯型電気掃除機であって、 前記床用吸込具3は、 吸込口21が形成されたケーシング19と、 前記ケーシング19に対する上下方向および前後方向である縦方向に沿って回動可能に支持された接続用ベント20と、 前記ケーシング19の前方に向かう前記縦方向の回動における限界位置まで、前記接続用ベント20を回動させ、前記接続用ベント20が床面に対し前方に傾いた状態では、前記接続用ベント20の前記ケーシング19の前方に向かう前記縦方向の回動を規制する規制部とを備え、 前記床用吸込具3に対して前記掃除機本体2を起立した状態において、 前記ダストボックス10の上方に前記電動送風機7が配置され、前記電動送風機7の後方に前記充電式電池8が配置され、かつ前記掃除機本体2の上方にハンドル4が配置されている 携帯型電気掃除機1。」 2.引用文献2 当審の拒絶の理由に引用された、特開昭64-32828号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア.「そこで、第9図に示すように、走行移動性を改良するために、連結管3を、吸込口本体4に所定範囲前後回動自在に接続さた第1の回動管と、この第1の回動管に周方向へ回動自在に接続されかつ掃除機本体に接続された屈曲した第2の回動管5とにより構成することによって、掃除機本体2およびハンドル1を吸込口本体4に対して前後方向のみならず左右方向へも首振り回動自在とした構造が採られている。」(2ページ左上欄3ないし11行) イ.「そして、掃除中にハンドルから手を離したいときなどには、第1の回動管を回動範囲の限界まで上方へ回動させて、第2の回動管の係合部を第1の回動管または吸込口本体の被係合部に係合させると、第2の回動管が回り止めされ、ハンドルが把持されていなくとも、掃除機本体が吸込口本体の上方に位置する状態が安定して保持される。」(2ペ-ジ右下欄6ないし13行) ウ.「ところで、ハンドル13よりも吸込口本体16をより前方に位置させる通常の使用状態では、第3図および第5図に示すように、第2の回動管41の突起46と吸込口本体16の谷部47との係合は解除されているので、第1の回動管26のみならず第2の回動管41も自由に回動できる。そして、吸込口本体16に対して第1の回動管26が矢視Aで示すように前後方向へ回動し、この第1の回動管26に対して第2の回動管41が矢視Bで示すように周方向へ回動してこの第2の回動管41の掃除機本体1側が左右方向へ首振り回動することにより、吸込口20を被掃除面50に近接対向させたまま、吸込口本体16を前後左右に楽にかつ円滑に走行移動させることができる。 そして、第1図、第2図および第4図に示すように、第1の回動管26を回動範囲の上限まで回動させて、掃除機本体11を立てると、第2の回動管41の突起47が吸込口本体16の谷部47に係合し、吸込口本体16に対して第2の回動管41の回動が不可能となる。このとき、第2の回動管41の回動軸と被掃除面50とのなす角度がほぼ最大すなわち直角になり、第1図に示すように、掃除機本体11の重心は吸込口本体16のほぼ真上方向に位置する。したがって、この状態では、ハンドル16が把持されていなくとも、掃除機本体11はぐらつくことなく吸込口本体16の上方に安定して位置し、全体として安定して立ち、倒れることがない。したがってまた、倒れることにより掃除機本体11が破損したり、人体を傷付けたりすることもない。」(3ページ右下欄12行ないし4ページ左上欄20行) 3.当審の拒絶の理由に引用された、実願昭60-190405号(実開昭62-96348号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「以下、本考案の実施例、図面(第1図?第5図)に基づいて説明する。 先ず、第1図?第3図に示す第1実施例について説明する。図において、11はハンドルで、本体12の上部に固定されている。前記本体12の下部には接続パイプ13が突出しており、接続パイプ14と一定の角度を持って回転可能に接続されている。前記接続パイプ14は本体12の下側に位置する床ノズル15に対しても回転中心14aを中心に前後方向に回動可能に接続されている。16は前記接続パイプ13,14の両側方で床ノズル15の上部に取り付けられた一対のブロック状の突起で、前記本体12を床に対してほぼ垂直に立てたとき、前記本体12の下部とブロック状の突起16が接触する構造となっている。 上記構成において動作を説明すると、一時的に掃除を中断したり、また掃除後の収納時には、前記本体12を直立させれば前記ブロック状の突起16が前記本体12の下部と接触し、前記接続パイプ13と接続パイプ14との間の回動ができなくなるようロックされる。これにより本体12も第1図矢印D方向に倒れることなく、垂直の状態を保持することができる。 次に第4図、第5図に基づき第2実施例について説明すると、本体12の下部に爪17を設け、床ノズル15の上部中央に溝18を形成し、前記本体12を床面にほぼ垂直に立てたときに前部爪17が溝18に嵌合して、接触パイプ13と接続パイプ14との間の回動ができなくなるようにして、前記本体12の垂直状態を保持するようになっている。」(明細書4ページ2行ないし5ページ11行) 第5 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「携帯型電気掃除機1」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「電気掃除機」に相当し、以下同様に、「床用吸込具3」は「吸込口体」に、「電動送風機7」は「電動送風機」に、「電動送風機7を内蔵する掃除機本体2」は「電動送風機を含む掃除機本体」に、「ダストボックス10」は「ダストカップユニット」に、「掃除機本体2に内蔵される充電式電池8」は「掃除機本体に収容されるバッテリー」に、「充電式電池8」は「バッテリー」に、「吸込口21」は「集塵開口部」に、「吸込口21が形成されたケーシング19」は「集塵開口部を有する吸込口本体」に、「ケーシング19」は「吸込口本体」に、「接続用ベント20」は「可動パイプ」に、「起立した状態」は「起てた状態」にそれぞれ相当する。 また、引用発明における「掃除機本体1の上方にハンドル4が配置されている」ことと、本願発明における「電動送風機を挟んで前記バッテリーと対向する位置にハンドルが配置されていること」とは、「掃除機本体にハンドルが配置されている」ことという限りにおいて一致する。 そうすると、本願発明と引用発明は、 電気掃除機の吸込口体と、電動送風機を含む掃除機本体と、前記掃除機本体に着脱可能に装着されるダストカップユニットと、前記掃除機本体に収容されるバッテリーとを備えている縦型の電気掃除機であって、 前記吸込口体は、 集塵開口部を有する吸込口本体と、 前記吸込口本体に対する上下方向および前後方向である縦方向に沿って回動可能に支持された可動パイプと、 前記吸込口本体の前方に向かう前記縦方向の回動における限界位置まで、前記可動パイプを回動させ、前記可動パイプが床面に対し略垂直または前方に傾いた状態では、前記可動パイプの前記吸込口本体の前方に向かう前記縦方向の回動を規制する規制部とを備え、 前記吸込口体に対して前記掃除機本体を起てた状態において、 前記ダストカップユニットの上方に前記電動送風機が配置され、前記電動送風機の後方に前記バッテリーが配置され、かつ前記掃除機本体にハンドルが配置されている 電気掃除機 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明においては、前記吸込口本体に対する上下方向および前後方向である縦方向、および、「前記吸込口本体の長手方向である横方向に沿って」回動可能に支持された可動パイプと、 前記吸込口本体の前方に向かう前記縦方向の回動における限界位置まで、前記可動パイプを回動させ、前記可動パイプが床面に対し略垂直または前方に傾いた状態では、前記可動パイプの前記吸込口本体の前方に向かう前記縦方向の回動と、「前記可動パイプの前記横方向の回動とを規制する」規制部とを備えているのに対し、 引用発明においては、前記ケーシング19に対する上下方向および前後方向である縦方向に沿って回動可能に支持された接続用ベント20と、 前記ケーシング19の前方に向かう前記縦方向の回動における限界位置まで、前記接続用ベント20を回動させ、前記接続用ベント20が床面に対し前方に傾いた状態では、前記接続用ベント20の前記ケーシング19の前方に向かう前記縦方向の回動を規制する規制部とを備えるものの、接続用ベント20は、ケーシング19の長手方向である横方向に沿って回動するものではなく、規制部は接続用ベント20の横方向の回動を規制するものではない点。 <相違点2> 「掃除機本体にハンドルが配置されている」ことに関して、 本願発明においては、「電動送風機を挟んで前記バッテリーと対向する位置にハンドルが配置されている」ことであるのに対し、 引用発明においては、「掃除機本体1の上方にハンドル4が配置されている」ことである点。 各相違点について検討する。 <相違点1>について 電気掃除機において、吸込口本体に対して可動パイプを縦方向及び横方向に回動可能にすると共に、縦方向の回動における限界位置まで可動パイプを回動させ、吸込口本体と可動パイプとを自立可能に構成し、自立させた状態では縦方向及び横方向の回動を規制する規制部を備えるように構成することは、例えば、引用文献2及び引用文献3に記載されるように本願の遡及日前周知である(以下、「周知技術1」という。)。 そして、引用文献1の段落【0002】には、「携帯型電気掃除機を使用することで、ユーザは、床面以外にも、例えば机上,棚上または車内など、普通の電気掃除機では清掃することが困難な箇所を容易に清掃することができる。」との記載があり、引用発明の携帯型電気掃除機は、机上,棚上または車内など清掃困難な箇所の清掃に用いられることを前提とするものであるから、よりフレキシブルな操作性が求められることは当業者であれば予測し得ることであり、引用発明において、操作性の向上を図るために、上記周知技術1を適用して、接続用ベント20を縦方向のみならず横方向にも回動可能なものとし、接続用ベント20が床面に対し前方に傾いた状態では、接続用ベント20の横方向の回動をも規制するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 <相違点2について> 引用文献1の段落【0001】に「本願発明は、掃除機本体を片手で手軽に持って掃除が可能な小型で軽量な携帯型電気掃除機に関するものである。」との記載があるように、引用発明は、片手で持って掃除が可能な小型で軽量な携帯型掃除機であり、引用発明と同様の小型・軽量の携帯型電気掃除機において、電動送風機を挟んでバッテリーと対向する位置にハンドルが配置されていることは、例えば、特開昭63-252121号公報(特に、第1図及び第3図参照。)、実願昭61-188178号(実開昭63-95547号)のマイクロフィルム(特に、第4図参照。)、実願昭62-47845号(実開昭63-153947号)のマイクロフィルム(特に、第1図参照。)、実願昭59-89909号(実開昭61-6348号)のマイクロフィルム(特に、第3図参照)に記載されるように、本願の遡及日前周知である(以下、「周知技術2」という。)。 そして、電気掃除機において、ハンドルの位置に関して、引用発明や上記引用文献2(第1図及び第2図参照。)及び引用文献3(第1図及び第4図参照。)に記載されるもののように、掃除機本体を挟んで吸込口とは反対位置に配置されるものと、上記周知技術2のように掃除機本体の側面に配置されるものとは、いずれも広く知られるものであるところ、どちらを採用するかは電気掃除機の大きさやデザイン性、操作性に鑑み、適宜選択し得るものである。 そうすると、引用発明において、デザイン性や操作性を考慮して、掃除機本体1の上方に配置されているハンドル4を、周知技術2のようなハンドルの配置にすることに格別の困難性は見あたらず、また、縦型の電気掃除機を自立させる際に、全体の重心バランスは当業者が当然考慮すべき事項であるから、引用発明において、全体の重心バランスを考慮して、周知技術2のような電動送風機、バッテリー及びハンドルの配置構成を採用することは、当業者にとって適宜の設計的事項にすぎない。 ここで、審判請求人は、平成30年10月26日提出の意見書において、「本願請求項1に係る発明は、上記構成A(当審注:相違点2に係る本願発明の発明特定事項)を備えるため、起てた状態での縦型電気掃除機の重心を、引用文献1?3に記載の発明よりも大幅に低くすることが可能となります。よって、引用文献1?3に記載の発明に比べて、起てた状態での縦型電気掃除機の姿勢の安定性を改善することができるという効果を奏します。」と述べている。 しかしながら、上記意見書において、審判請求人が主張する「起てた状態での縦型電気掃除機の重心を」「大幅に低くすることが可能と」することは、本願明細書の発明の詳細な説明には一切記載がない。 また、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0056】ないし【0063】には、掃除機本体を手で持ったときのバランスについて説明がされているが、上記構成A、すなわち、相違点2に係る本願発明の発明特定事項と関係で説明がされているものではない。 仮に、本願発明が、相違点2に係る本願発明の発明特定事項により、「起てた状態での縦型電気掃除機の重心を」「大幅に低くすることが可能と」するものであるとしても、上述したとおり、縦型の電気掃除機を自立させる際に、全体の重心バランスは当業者が当然考慮すべき事項であるから、引用発明におけるハンドル4を掃除機本体1の上方にかえて掃除機本体1の側方に配置すれば「起てた状態での縦型電気掃除機の重心を」「大幅に低くすることが可能と」なることは、引用発明及び周知技術2から、当業者が予測し得ることである。 そして、本願発明の効果を全体としてみても、引用発明、周知技術1及び周知技術2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎない。 したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 |
審理終結日 | 2019-01-24 |
結審通知日 | 2019-01-29 |
審決日 | 2019-02-13 |
出願番号 | 特願2016-168265(P2016-168265) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A47L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村山 睦 |
特許庁審判長 |
久保 竜一 |
特許庁審判官 |
佐々木 芳枝 山村 和人 |
発明の名称 | 電気掃除機 |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |