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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 C07J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C07J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C07J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C07J
管理番号 1350251
審判番号 不服2018-3993  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-22 
確定日 2019-04-18 
事件の表示 特願2015-238204「オベチコール酸の調製、使用および固体形態」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月12日出願公開、特開2016-74724、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は、2013年6月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年6月19日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特願2015-518485号の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成27年12月7日に新たな特許出願としたものであって、同日付けで上申書が提出され、平成28年12月16日付けで手続補正書及び上申書が提出され、平成29年4月12日付けで拒絶理由が通知され、同年7月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年3月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、同年6月26日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年11月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 (原査定の理由2:新規事項)平成29年7月19日の手続補正は、本願請求項1?16、20、21に係る発明において、非結晶性オベチコール酸を調製するプロセスについて、
a.精製された3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を水素化して、3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を製造する工程
b.3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を還元して、粗製オベチコール酸を形成する工程
を特定することを含むところ、本願の出願当初の明細書等には、a.の「水素化」及びb.の「還元」については、それぞれ、実質的には「Pd/Cおよび水素ガスと反応」及び「NaBH_(4)と反応」という特定の試薬や条件を用いた場合のみが記載されている。
したがって、上記手続補正は、当初明細書等の全ての記載及び出願常識を考慮することにより導かれる事項とはいえず、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2 (原査定の理由3:進歩性)本願請求項1、3?16、20、21に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?9、12、13に記載された本願優先日における周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2008-540612号公報
2.塩路雄作著、「固形製剤の製造技術」、株式会社シーエムシー、
2003年、12頁
3.特開2007-77123号公報
4.特表2008-539243号公報
5.特表2006-504618号公報
6.特開2000-16997号公報
7.特開平11-52565号公報
8.特開平3-20265号公報
9.浅原照三 外4名編、「溶剤ハンドブック」、株式会社講談社、
1985年、47?51頁
12.社団法人日本化学会編、「実験化学ガイドブック」、
丸善株式会社、1992年、第3刷、130?131頁
13.Bruno C.HANCOCK 外1名、JOURNAL
OF PHARMACEUTICAL SCIENCES、
1997年、86巻1号、1?12頁

3 (原査定の理由4及び5:実施可能要件及びサポート要件)本願請求項1?16、20、21に係る発明は、上記1に示した工程a.及びb.を含むところ、明細書等にそれぞれ具体的に記載された「Pd/Cおよび水素ガスと反応」及び「NaBH_(4)と反応」から、あらゆる「水素化」及び「還元」にまで拡張ないし一般化することはできない。
したがって、請求項1?16、20、21について、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願は、特許請求の範囲の記載が、第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

4 (原査定の理由6:明確性)本願請求項17、19に係る発明は、「オベチコール酸を含む残渣を酢酸n-ブチルと共に使用して、結晶オベチコール酸を得る工程」という記載が、酢酸n-ブチルをどのように用いて結晶オベチコール酸を得るのか不明である。
したがって、請求項17、19について、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第3 本願発明
本願の請求項1?17に係る発明(以下、「本願発明1」、「本願発明2」などといい、これらをまとめて「本願発明」という場合もある。)は、平成30年3月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
1重量%未満のケノデオキシコール酸(CDCA)を含む非結晶性オベチコール酸を調製するプロセスであって、該プロセスが、
結晶化によって粗製3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を精製して、E-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を提供する工程、
精製されたE-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を塩基性溶液の存在下でPd/Cおよび水素ガスと反応させて水素化して、3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を製造する工程、
3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸をNaBH_(4)と反応させて還元して、粗製オベチコール酸を形成する工程、
粗製オベチコール酸を、酢酸n-ブチルを用いて結晶化することによって、結晶オベチコール酸を調製する工程、および
結晶オベチコール酸を非結晶性オベチコール酸へ変換する工程
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記変換する工程が、結晶オベチコール酸をNaOH水溶液に溶解させることおよび塩酸クエンチを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
エタノールを用いる結晶化によって、粗製3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を精製する工程およびE-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を単離する工程を含む請求項1?2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルをNaOHと反応させて、粗製3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を形成する工程をさらに含む、請求項1?3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
3α,7-ジトリメチルシリルオキシ-5β-コラ-6-エン-24-酸メチルエステルをCH_(3)CHOと反応させて、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルを形成する工程をさらに含む、請求項1?4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルをLi[N(CH(CH_(3))_(2))_(2)]およびSi(CH_(3))_(3)Clと反応させて、3α,7-ジトリメチルシリルオキシ-5β-コラ-6-エン-24-酸メチルエステルを形成する工程をさらに含む、請求項1?5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸をCH_(3)OHおよびH_(2)SO_(4)と反応させて、3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルを形成する工程をさらに含む、請求項1?6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸をNaBH_(4)と反応させて、オベチコール酸を形成することが、85℃?110℃の温度で塩基性水溶液中で行われる、請求項1?7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記精製されたE-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を塩基性溶液の存在下でPd/Cおよび水素ガスと反応させて、3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を形成する工程が、90℃?110℃の温度で行われる、請求項1?8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルをNaOHと反応させて、粗製3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を形成する工程が、20℃?60℃の温度で行われる、請求項4?9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記3α,7-ジトリメチルシリルオキシ-5β-コラ-6-エン-24-酸メチルエステルをCH_(3)CHOと反応させて、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルを形成する工程が、極性非プロトン性溶媒中で-50℃?-70℃の温度で三フッ化ホウ素(BF_(3))溶媒和錯体の存在下で行われる、請求項5?10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルをLi[N(CH(CH_(3))_(2))_(2)]およびSi(CH_(3))_(3)Clと反応させて、3α,7-ジトリメチルシリルオキシ-5β-コラ-6-エン-24-酸メチルエステルを形成する工程が、極性非プロトン性溶媒中で-10℃?-30℃の温度で行われる、請求項6?11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸をCH_(3)OHおよびH_(2)SO_(4)と反応させて、3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルを形成する工程が、3時間加熱され、そして該反応混合物のpHが水性塩基性溶液で調整される、請求項7?12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
1重量%未満のケノデオキシコール酸(CDCA)を含む非結晶性オベチコール酸を調製するプロセスであって、該プロセスが、
3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸をCH_(3)OHおよびH_(2)SO_(4)と反応させて、3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルを形成する工程であって、該反応が加熱され、そして該反応混合物のpHが水性塩基性溶液で調整される、工程;
3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルをLi[N(CH(CH_(3))_(2))_(2)]およびSi(CH_(3))_(3)Clと反応させて、3α,7-ジトリメチルシリルオキシ-5β-コラ-6-エン-24-酸メチルエステルを形成する工程であって、該反応が極性非プロトン性溶媒中で行われる、工程;
3α,7-ジトリメチルシリルオキシ-5β-コラ-6-エン-24-酸メチルエステルをCH_(3)CHOと反応させて、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルを形成する工程であって、該反応が三フッ化ホウ素(BF_(3))溶媒和錯体の存在下で、極性非プロトン性溶媒中で行われる、工程;
3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルをNaOHと反応させて、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を形成する工程;
結晶化によって、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を精製して、E-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を提供する工程;
塩基性溶液の存在下で、精製されたE-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸をPd/Cおよび水素ガスと反応させて、3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を形成する工程;
3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸をNaBH_(4)と反応させて粗製オベチコール酸を形成する工程であって、該反応が塩基性水溶液中で行われる、工程;
粗製オベチコール酸を酢酸n-ブチルを用いて結晶化することによって、結晶オベチコール酸を調製する工程;ならびに
結晶オベチコール酸をNaOH水溶液に溶解させることおよび塩酸クエンチによって、結晶オベチコール酸を非結晶性オベチコール酸に変換する工程
を含む、プロセス。
【請求項15】
1重量%未満のケノデオキシコール酸(CDCA)を含む非結晶性オベチコール酸を調製するプロセスであって、該プロセスが、
3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸をCH_(3)OHおよびH_(2)SO_(4)と反応させて、3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルを形成する工程であって、該反応が3時間加熱され、そして該反応混合物のpHが水性塩基性溶液で調整される、工程;
該3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルを活性炭で処理する工程;
3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルをLi[N(CH(CH_(3))_(2))_(2)]およびSi(CH_(3))_(3)Clと反応させて、3α,7-ジトリメチルシリルオキシ-5β-コラ-6-エン-24-酸メチルエステルを形成する工程であって、該反応が極性非プロトン性溶媒中で-10℃?-30℃の温度で行われ、該極性非プロトン性溶媒がテトラヒドロフランである、工程;
3α,7-ジトリメチルシリルオキシ-5β-コラ-6-エン-24-酸メチルエステルをCH_(3)CHOと反応させて、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルを形成する工程であって、該反応が極性非プロトン性溶媒中で-50℃?-70℃の温度で三フッ化ホウ素(BF_(3))溶媒和錯体の存在下で行われ、該三フッ化ホウ素溶媒和錯体が三フッ化ホウ素アセトニトリル錯体である、工程;
3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸メチルエステルをNaOHと反応させて、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を形成する工程であって、該反応が20℃?60℃の温度で行われる、工程;
結晶化によって、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を精製して、E-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を提供する工程;
塩基性溶液の存在下で、精製されたE-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸をPd/Cおよび水素ガスと反応させて、3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を形成する工程であって、該反応が90℃?110℃の温度で行われる、工程;
3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸をNaBH_(4)と反応させて粗製オベチコール酸を形成する工程であって、該反応が85℃?110℃の温度で塩基性水溶液中で行われる、工程;
粗製オベチコール酸を、酢酸n-ブチルを用いて結晶化することによって、結晶オベチコール酸を調製する工程;ならびに
結晶オベチコール酸をNaOH水溶液に溶解させることおよび塩酸クエンチによって、結晶オベチコール酸を非結晶性オベチコール酸に変換する工程
を含む、プロセス。
【請求項16】
前記非結晶性オベチコール酸が、89?94℃に吸熱点の値を有する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項1?15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記非結晶性オベチコール酸が、以下の図10または図11に記載のX線回折パターンのいずれか1つによって特徴付けられる、請求項1?16のいずれか一項に記載のプロセス。
【化1】

【化2】



第4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
1 原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前の平成20年11月20日頒布された引用文献1には、次の事項が記載されている。

(1a)「【請求項1】
一般式(I)
【化1】

の3α-7α(β)-ジヒドロキシ-6α(β)-アルキル-5β-コラン酸の調製方法であって、
ここで、6及び7位の破線(---)の結合は、置換基がα又はβ位であってもよいことを示し、このコラン酸は:
i)一般式(IA)の3-α,7-α-ジヒドロキシ-6-α-アルキル-5β-コラン酸
【化2】

;
ii)一般式(IB)の3-α,7-α-ジヒドロキシ-6-β-アルキル-5β-コラン酸
【化3】

;
iii)一般式(IC)の3-α,7-β-ジヒドロキシ-6-α-アルキル-5β-コラン酸
【化4】

;
の各クラスからなるものであり、Rは、直鎖又は分岐のC_(1)?C_(5)のアルキルであり、当該方法は:
a)3-α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン酸(II)
【化5】

を、酸性環境下、メタノール中でエステル化して、メチル3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネート(III)
【化6】

を得るステージと;
b)メチル3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネート(III)を、トリメチルクロロシランを用いてシリル化して、対応するメチル3-α-トリメチルシロキシ-7-ケト-5β-コラネート(IV)
【化7】

を得るステージと;
c)ステージb)で得たメチル3-α-トリメチルシロキシ-7-ケト-5β-コラネート(IV)を、強塩基及びトリメチルクロロシランの存在下、シリル化して、メチル3α-,7α-ジ-トリメチルシロキシ-6-エン-5β-コラネート(V)
【化8】

を得るステージと;
d)メチル3α-,7α-ジ-トリメチルシロキシ-6-エン-5β-コラネート(V)を、Rが上記と同様の意味であるアルデヒドであるR-CHO及びルイス酸と反応して、メチル3α-ヒドロキシ-6-アルキリデン-7-ケト-5β-コラネート(VI)
【化9】

を得るステージと;
e)メチル3-α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラネート(VI)を、3-α-ヒドロキシ-6-アルキリデン-7-ケト-5β-コラン酸(VII)
【化10】

に加水分解するステージと;
f)3-α-ヒドロキシ-6-アルキリデン-7-ケト-5β-コラン酸を、水性アルキル環境下で、Pd/Cを用いて、3-α-ヒドロキシ-6β-アルキル-7-ケト-5β-コラン酸(VIII)
【化11】

に水素化するステージと;
g)中間体(VIII)を、水性アルカリ環境下で可能な熱処理を行い、対応する3α-ヒドロキシ-6α-アルキル-7-ケト-5β-コラン酸(IX)
【化12】

を得るステージと;
h)下記の選択的作用条件、つまり:
h’)3α-ヒドロキシ-6α-アルキル-7-ケト-5β-コラン酸(IX)を、金属ハイドライドを用いて、3α-,7α-ジ-ヒドロキシ-6α-アルキル-5β-コラン酸(IA)に還元する作用条件;
h’’)金属ナトリウム及びアルコールの存在下、3α-ヒドロキシ-6α-アルキル-7-ケト-5β-コラン酸(IX)を還元して、3α-,7β-ジ-ヒドロキシ-6α-アルキル-5β-コラン酸(IC)を得る作用条件;
h’’’)金属ハイドライドの存在下、3α-ヒドロキシ-6β-アルキル-7-ケト-5β-コラン酸(VIII)を、3α-,7α-ジ-ヒドロキシ-6β-アルキル-5β-コラン酸(IB)に還元する作用条件;
に従って、7位のケト基を、中間体(VIII)又は(IX)の7位のヒドロキシ基に還元するステージと;
を有することを特徴とする方法。」

(1b)「【0001】
本発明は、3α(β)-7α(β)-ジヒドロキシ-6α(β)-アルキル-5β-コラン酸の調製方法に関する。」

(1c)「【0051】
本発明の方法のステージa)における3-α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン酸(II)のエステル化反応は、酸性条件下、30?60℃の温度で好ましく実行され、この酸は、好ましくは、メタンスルホン酸である。
【0052】
本発明の方法のステージb)に包含されるメチル3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネートの3α位の水酸基のシリル化反応は、非極性の溶媒中、より好ましくは芳香性溶媒中、よりさらに好ましくはトルエン中で、脂肪族、脂環族又は複素芳香型の三級アミンから好ましくなる水素イオン受容体の存在下で、好ましく実行され、上記の三級アミンは、トリエチルアミンであることがよりさらに好ましい。
【0053】
特に好適実施例によると、ステージc)で使用される前に、メチル3-α-トリメチルシロキシ-7-ケト-5β-コラネートは、単離且つ精製されないが、逆に、このステージにおいて、塩が水抽出により前もって単離されたものから反応溶媒を蒸発させた後に得られる油状の残渣を使用する。
【0054】
本発明の方法のステージc)に包含される7位のケト基の次なるシリル化は、強塩基として、アンモニアから得られたアルカリ性アミド、又は脂肪族の二級アミンから得られたアルカリ性アミドを使用して、実行される。特に好適な溶液としては、上記の強塩基として、リチウムジイソプロピルアミドを使用する。この反応は、極性非プロトン性溶媒中で好ましく実行され、よりさらに好ましくは、この溶媒は、テトラヒドロフランである。
【0055】
好適実施例によると、ステージd)に使用される前のステージc)で得られる産物は、単離且つ精製されないが、逆に、この場合もまた、塩が水により前もって抽出されたものから反応溶媒を蒸発させた後に得られる油状の残渣を使用する。
【0056】
ステージd)は、好ましくはアルキルハライドから好ましく選択された非極性溶媒中で好ましく実行され、さらにより好ましくは、この溶媒は、塩化メチレンである。
【0057】
ステージd)は、アルデヒドであるR-CHOの存在下で、ルイス酸として三フッ化ホウ素エーテル塩を使用して、-90?-60℃の温度で2?4時間、好ましく実行される。なお、Rは、好ましい意味を有する。
【0058】
次に、上記の反応混合物は、0?35℃の温度で1?6時間、反応される。
【0059】
この場合もまた、下記のステージe)に使用される前に、ステージd)で得られた産物は、単離且つ精製されないが、塩及び水溶性成分が水抽出により抽出されたものから反応溶媒を蒸発させた後に得られる油状の残渣を使用する。
【0060】
ステージe)は、アルカリ性の水酸化物の存在下、好ましくはメタノールなどのアルコール性溶媒中で好ましく実行され、よりさらに好ましくは、上記のアルカリ性の水酸化物は、30%の水酸化ナトリウムの水溶液である。
【0061】
上記の温度は、好ましくは、20?60℃である。
【0062】
ステージe)の反応産物は、酸性化した後に、可能であれば水の存在下、酢酸エチル及びアセトンから好ましく選択された有機溶媒を用いた結晶化により、好ましく単離される。
【0063】
ステージf)に包含される水素化反応は、1?3気圧の圧力で、水酸化ナトリウムの水溶液の存在下、水性環境において好ましく実行される。本発明の方法がステージg)を包含する場合、特に、一般式(IA)又は(IC)の化合物が調製されるべき場合、このステージは、水素化反応に由来する反応混合物について、直接好ましく実行され、この反応を95?105℃の温度で数時間加熱することにより、好ましく実行され、6-β-エチル基が6-α-エチルへとエピマー化される。
【0064】
ステージf)又は可能なステージg)に由来する反応産物は、下記の作用条件を好ましく用いて、反応混合物から単離される。
【0065】
1)上記の水性溶液を添加する条件であって、ここから、濾過により触媒が除去され、85%のリン酸を好ましく用いて酸性化される、条件;
2)酢酸エチルを、ステージ1)で得た混合物に添加し、全体を、40?70℃の温度に加熱する条件;
3)これを、その後、0?30℃の温度に冷却し、得た沈殿物を濾過し、その後乾燥する条件。
【0066】
ステージh)の還元が本発明の方法の式(IA)の化合物を得るようにステージh’)に包含される作用条件に従って実行される場合、又は本発明の方法の式(IB)の化合物を得るようにステージh’’’)に包含される作用条件に従って実行される場合、上記の金属ハイドライドは、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムであり、還元反応は、アルカリ性の水溶液中で実行される。この反応は、70?105℃で1時間、好ましく実行される。
【0067】
代わって、ステージh)の還元がステージh’’)に包含される作用条件に従って実行される場合、直鎖又は分岐のC_(1)?C_(5)のアルコール、よりさらに好ましくはsec-ブチルアルコール中で、溶媒還流温度(solvent reflux temperature)で好ましく実行される。ステージh’)又はh’’’)で得られた産物は、下記の作用条件に従って、好ましく単離される。
【0068】
1’)好ましくは塩化メチレンなどの非極性溶媒である水和性溶媒を、上記の反応混合物に添加し、好ましくはリン酸を用いて混合物を酸性化する条件;
2’)その後得た混合物を攪拌し、停止して、水相を除去する条件;
3’)有機相から、水及びアンモニアを用いて、産物を抽出する条件;
4’)このようにして得た水相に、リン酸を添加して、全体を、数時間、20?50℃の温度で、攪拌する条件;
5’)沈殿した産物を濾過により回収し乾燥する条件。
【0069】
本発明の方法は、Rが好ましくはメチルである式(I)の化合物の調製に特に適する。」

(1d)「【実施例】
【0071】
(例1)Rがメチルである式(IA)の3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸の調製方法
a)メチル3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネート(III)の調製
17.0kgの3-α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン酸、68kgのメタノール、及び0.17kgのメタンスルホン酸を、反応器に充填する。この反応混合物を、その後、1時間、30?60℃に加熱し、25.5kgの脱塩水を添加する。得た混合物を、その後、攪拌し、良好な沈殿が達成されるまで、20?25℃に冷却し、その後、0?15℃にさらに冷却する。沈殿物を、濾過し、水及びメタノールの混合物で洗浄し、約40℃でオーブン中でさらに乾燥する。このようにして、15kgのメチル3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネート(III)を得る。化学量論的収率:85.2%。
【0072】
b)メチル3-α-トリメチルシロキシ-7-ケト-5β-コラネート(IV)の調製
15.0kgのメチル3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネート、45kgのトルエン、7.5kgのトリエチルアミン、及び7.5kgのトリメチルクロロシランを反応器に充填する。
【0073】
この混合物を、70?80℃に加熱し、この温度で、約1時間、攪拌下で保持し、その後、37.5kgの水を添加し、この混合物を、15?20℃で攪拌する。
【0074】
底部の水相をその後分離し消失させる。油状の残渣が得られるまでその有機相を濃縮し、これに、15kgのテトラヒドロフランを添加する。
【0075】
このようにして得た、メチル3-α-トリメチルシロキシ-7-ケト-5β-コラネート(IV)を含有する溶液を、下記のステージc)に用いる。
【0076】
c)メチル3α-,7α-ジ-トリメチルシロキシ-5β-コラネート(V)の調製
30kgのテトラヒドロフランを、反応器に充填し、その後、この混合物を、-90?-60℃の温度とし、9.8kgの100%リチウムジイソプロピルアミド、及び9.3kgのトリメチルクロロシランを添加し、上記b)で調製し、メチル3-α-トリメチルシロキシ-7-ケト-5β-コラネートを含有するテトラヒドロフランの全溶液を注入する。その後、この混合物を、約1時間、-60?-90℃の温度で攪拌する。その後、4.50kgの重炭酸ナトリウム、及び60kgの水からなる溶液を注入し、この混合物を、0?10℃で攪拌し、底部の水相を分離し消失させる。その底部の相を、その後、油状の残渣が得られるまで、濃縮し、これに、45.0kgの塩化メチレンを添加する。
【0077】
このようにして得たメチル3α-,7α-ジ-トリメチルシロキシ-5β-コラネートを、次のステージd)に送る。
【0078】
d)Rがメチルであるメチル3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラネート(VI)の調製
上記の例に由来するメチル3α,7-α-ジ-トリメチルシロキシ-5β-コラネートを有する塩化メチレンの全溶液を反応器に充填し、-90/-60℃の冷却し、その後、1.97kgのアセトアルデヒド、及び5.5kgの三フッ化ホウ素エーテル塩を添加する。この反応混合物を、上記の温度で、2/4時間、攪拌下で保持する。その後、30?35℃に加熱し、約2/4時間、この温度で保持する。その後、60kgの水を添加する。得た混合物を、攪拌し、その水相を分離する。このようにして得た、メチル3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラネートを含有する溶液を、次のステージに送る。
【0079】
e)RがCH_(3)である3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸7(VII)の調製
上記のステージで得たメチル3-α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラネートを有する塩化メチレンの溶液を、反応器に充填する。その後、油状の残渣が得られるまで、その溶媒を、蒸留により、除去し、これに、15kgのメタノールを添加する。
【0080】
その後、この反応混合物を、45?50℃に加熱し、7.5kgの30%の水酸化ナトリウムを注入し、反応混合物を、約1時間、上記の温度で保持する。その後、30kgの水を添加する。その後、45.0kgの塩化メチレン、及び7.5kgの85%のリン酸を添加する。底部の有機相を分離し、続いて、水相を、消失させた。有機相から、蒸留により、ペースト状の残渣を得るまで、溶媒を除去する。この残渣に、約37.5kgの酢酸エチルを添加し、この混合物を、65?75℃に加熱し、その後、10?35℃に冷却する。このようにして得、濾過し、且つ酢酸エチルで洗浄した沈殿物を、乾燥する。
【0081】
メチル3-α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネートに対して計算した51.8%の化学量論的収率で、8.0kgの3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸を得る。
【0082】
f)RがCH_(3)である3-α-ヒドロキシ-6-β-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(IX)の調製
8.0kgの3-α-ヒドロキシ-6-α-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸、48.0kgの水、5.1kgの30%の水酸化ナトリウム、及び0.80kgの5%のパラジウム/炭素を、反応器に充填する。この反応混合物を、水素の吸収が観察されなくなるまで、1?3気圧の圧力で水素化する。
【0083】
g)3α-ヒドロキシ-6-α-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(IX)の調製
反応の終期において、混合物を95?105℃に加熱し、この温度で数時間保持して、3α-ヒドロキシ-6-β-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(VIII)を、所望の3α-ヒドロキシ-6-α-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(IX)の対応するエピマーに変換させる。
【0084】
この懸濁液を濾過し、触媒を除去する。5.1kgの85%のリン酸、及び9.6kgの酢酸エチルを、濾過した溶液に添加し、この反応混合物を、40?70℃の温度に加熱する。これを、0?30℃の温度に冷却し、沈殿物を、濾過により回収する。酢酸エチルで洗浄した後、沈殿物を、65℃のオーブン中で乾燥する。5.0kgの3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-β-コラン酸を得る。化学量論的収率:62.2%。
【0085】
【化34】

・・・
【0091】
h’)Rがメチルである式(I)の3α,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸の調製
5.0kgの3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-β-コラン酸、5.0kgの水、及び2.50kgの水酸化ナトリウムを、反応器に充填する。その後、この混合物を、70?105℃に加熱し、2.50kgの水に溶解した水素化ホウ素ナトリウムの混合物を注入し、その後、この混合物を、1時間、熱状態で保持し、室温に冷却し、10.0gの脱塩水、15.0kgの塩化メチレン、及び3.00kgの85%のリン酸を添加する。この混合物を、攪拌し、底部の有機相を分離し、水相を除去する。
【0092】
有機溶液を冷却することにより、粗産物の結晶化を行う。この産物を、50kgの脱塩水、及び1.10kgの30%のアンモニアに溶解する。その後、完全な溶液となるまで、この混合物を、攪拌し、この混合物を20?50℃で保持し、1.50kgのリン酸を注入する。20?50℃の温度に常に保ちながら、沈殿した混合物を攪拌し、その後、濾過により沈殿物を回収し、水で洗浄し、乾燥する。
【0093】
Rがメチルである式(I)の3α-,7α-ジ-ヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸4.50kgを得る。化学量論的収率:89.6%。」

2 引用文献1に記載された発明
引用文献1は、一般式(I)の3α(β)-7α(β)-ジヒドロキシ-6α(β)-アルキル-5β-コラン酸の調製方法に関する技術を開示する(上記(1a)、(1b))。
そして、実施例の例1(上記(1d))には、一般式(I)のうちの一般式(IA)であってRがメチルである、3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸の調製方法が記載されていることから、引用文献1には、次の引用発明が記載されているものと認める。
なお、引用文献1の例1には、「3-α-」などのような誤記と認められる表記があるが、請求項1(上記(1a))及び発明の詳細な説明(上記(1c))に記載されているa)?h)の工程も参酌して、以下では、一般的な化合物の表記に用いられる記載に統一して示す。

「3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸(Rがメチルである(IA))の調製方法であって、前記調製方法が、
a)17.0kgの3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン酸(II)、68kgのメタノール、及び0.17kgのメタンスルホン酸を、反応器に充填する。この反応混合物を、その後、1時間、30?60℃に加熱し、25.5kgの脱塩水を添加する。得た混合物を、その後、攪拌し、良好な沈殿が達成されるまで、20?25℃に冷却し、その後、0?15℃にさらに冷却する。沈殿物を、濾過し、水及びメタノールの混合物で洗浄し、約40℃でオーブン中でさらに乾燥する。このようにして、15kgのメチル3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネート(III)を、化学量論的収率:85.2%で得る工程、
b)15.0kgのメチル3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネート(III)、45kgのトルエン、7.5kgのトリエチルアミン、及び7.5kgのトリメチルクロロシランを反応器に充填する。この混合物を、70?80℃に加熱し、この温度で、約1時間、攪拌下で保持し、その後、37.5kgの水を添加し、この混合物を、15?20℃で攪拌する。底部の水相をその後分離し消失させる。油状の残渣が得られるまでその有機相を濃縮し、これに、15kgのテトラヒドロフランを添加する。このようにして、メチル3α-トリメチルシロキシ-7-ケト-5β-コラネート(IV)を含有する溶液を得る工程、
c)30kgのテトラヒドロフランを、反応器に充填し、その後、この混合物を、-90?-60℃の温度とし、9.8kgの100%リチウムジイソプロピルアミド、及び9.3kgのトリメチルクロロシランを添加し、工程b)で調製したメチル3α-トリメチルシロキシ-7-ケト-5β-コラネート(IV)を含有するテトラヒドロフランの全溶液を注入する。その後、この混合物を、約1時間、-60?-90℃の温度で攪拌する。その後、4.50kgの重炭酸ナトリウム、及び60kgの水からなる溶液を注入し、この混合物を、0?10℃で攪拌し、底部の水相を分離し消失させる。その底部の相を、その後、油状の残渣が得られるまで、濃縮し、これに、45.0kgの塩化メチレンを添加する。このようにして、メチル3α-,7α-ジトリメチルシロキシ-5β-コラネート(V)を得る工程、
d)工程c)からのメチル3α-,7α-ジトリメチルシロキシ-5β-コラネート(V)を有する塩化メチレンの全溶液を反応器に充填し、-90/-60℃の冷却し、その後、1.97kgのアセトアルデヒド、及び5.5kgの三フッ化ホウ素エーテル塩を添加する。この反応混合物を、上記の温度で、2/4時間、攪拌下で保持する。その後、30?35℃に加熱し、約2/4時間、この温度で保持する。その後、60kgの水を添加する。得た混合物を、攪拌し、その水相を分離する。このようにして、メチル3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラネート(Rがメチルである(VI))を含有する溶液を得る工程、
e)工程d)で得たメチル3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラネート(Rがメチルである(VI))を有する塩化メチレンの溶液を、反応器に充填する。その後、油状の残渣が得られるまで、その溶媒を、蒸留により、除去し、これに、15kgのメタノールを添加する。その後、この反応混合物を、45?50℃に加熱し、7.5kgの30%の水酸化ナトリウムを注入し、反応混合物を、約1時間、上記の温度で保持する。その後、30kgの水を添加する。その後、45.0kgの塩化メチレン、及び7.5kgの85%のリン酸を添加する。底部の有機相を分離し、続いて、水相を、消失させた。有機相から、蒸留により、ペースト状の残渣を得るまで、溶媒を除去する。この残渣に、約37.5kgの酢酸エチルを添加し、この混合物を、65?75℃に加熱し、その後、10?35℃に冷却する。このようにして得、濾過し、且つ酢酸エチルで洗浄した沈殿物を、乾燥する。メチル3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネートに対して計算した51.8%の化学量論的収率で、8.0kgの3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(VII))を得る工程、
f)8.0kgの3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(VII))、48.0kgの水、5.1kgの30%の水酸化ナトリウム、及び0.80kgの5%のパラジウム/炭素を、反応器に充填する。この反応混合物を、水素の吸収が観察されなくなるまで、1?3気圧の圧力で水素化する工程、
g)反応の終期において、混合物を95?105℃に加熱し、この温度で数時間保持して、3α-ヒドロキシ-6β-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(VIII))を、所望の3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(IX))の対応するエピマーに変換させる。この懸濁液を濾過し、触媒を除去する。5.1kgの85%のリン酸、及び9.6kgの酢酸エチルを、濾過した溶液に添加し、この反応混合物を、40?70℃の温度に加熱する。これを、0?30℃の温度に冷却し、沈殿物を、濾過により回収する。酢酸エチルで洗浄した後、沈殿物を、65℃のオーブン中で乾燥する。5.0kgの3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(IX))を、化学量論的収率:62.2%で得る工程、
h’)5.0kgの3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(IX))、5.0kgの水、及び2.50kgの水酸化ナトリウムを、反応器に充填する。その後、この混合物を、70?105℃に加熱し、2.50kgの水に溶解した水素化ホウ素ナトリウムの混合物を注入し、その後、この混合物を、1時間、熱状態で保持し、室温に冷却し、10.0gの脱塩水、15.0kgの塩化メチレン、及び3.00kgの85%のリン酸を添加する。この混合物を、攪拌し、底部の有機相を分離し、水相を除去する。有機溶液を冷却することにより、粗産物の結晶化を行う。この産物を、50kgの脱塩水、及び1.10kgの30%のアンモニアに溶解する。その後、完全な溶液となるまで、この混合物を、攪拌し、この混合物を20?50℃で保持し、1.50kgのリン酸を注入する。20?50℃の温度に常に保ちながら、沈殿した混合物を攪拌し、その後、濾過により沈殿物を回収し、水で洗浄し、乾燥する。3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸(Rがメチルである(IA))の4.50kgを、化学量論的収率:89.6%で得る工程
からなる調製方法。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1は、非結晶性オベチコール酸を調製するプロセスであるところ、その工程は、次のA)?E)に分けられる。
A)結晶化によって粗製3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を精製して、E-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を提供する工程
B)精製されたE-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を塩基性溶液の存在下でPd/Cおよび水素ガスと反応させて水素化して、3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を製造する工程
C)3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸をNaBH_(4)と反応させて還元して、粗製オベチコール酸を形成する工程
D)粗製オベチコール酸を、酢酸n-ブチルを用いて結晶化することによって、結晶オベチコール酸を調製する工程
E)結晶オベチコール酸を非結晶性オベチコール酸へ変換する工程

(2)これを踏まえて、本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 本願明細書【0102】によれば、オベチコール酸の他の名称は、「3α,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン-24-酸(3α,7α-dihydroxy-6α-ethyl-5β-cholan-24-oic acid)」であると記載されている。
したがって、引用発明の「3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸(Rがメチルである(IA))」は、本願発明1の「オベチコール酸」に相当する。
また、引用発明の「3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(VII))」は、本願発明1の「3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸」に相当する。
そして、引用発明の「3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(IX))」は、本願発明1の「3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸」に相当する。

イ 引用発明の「3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸(Rがメチルである(IA))の調製方法」は、本願発明1の「1重量%未満のケノデオキシコール酸(CDCA)を含む非結晶性オベチコール酸を調製するプロセス」と、「オベチコール酸を調製するプロセス」である点で共通する。

ウ 引用発明の工程e)の「工程d)で得たメチル3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラネート(Rがメチルである(VI))を有する塩化メチレンの溶液を、反応器に充填する。その後、油状の残渣が得られるまで、その溶媒を、蒸留により、除去し、これに、15kgのメタノールを添加する。その後、この反応混合物を、45?50℃に加熱し、7.5kgの30%の水酸化ナトリウムを注入し、反応混合物を、約1時間、上記の温度で保持する。その後、30kgの水を添加する。」は、メチル3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラネート(Rがメチルである(VI))を、エステル加水分解して、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(VII))を得る工程であるといえる。
そして、それに続く、引用発明の工程e)の「その後、45.0kgの塩化メチレン、及び7.5kgの85%のリン酸を添加する。底部の有機相を分離し、続いて、水相を、消失させた。有機相から、蒸留により、ペースト状の残渣を得るまで、溶媒を除去する。この残渣に、約37.5kgの酢酸エチルを添加し、この混合物を、65?75℃に加熱し、その後、10?35℃に冷却する。このようにして得、濾過し、且つ酢酸エチルで洗浄した沈殿物を、乾燥する。メチル3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラネートに対して計算した51.8%の化学量論的収率で、8.0kgの3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(VII))を得る工程」は、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(VII))を単離精製する工程といえる。
そうすると、引用発明の工程e)の後段の工程は、本願発明1のA)の「結晶化によって粗製3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を精製して、E-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を提供する工程」と、「粗製3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を精製して、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を提供する工程」である点で共通する。

エ 引用発明の「f)8.0kgの3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(VII))、48.0kgの水、5.1kgの30%の水酸化ナトリウム、及び0.80kgの5%のパラジウム/炭素を、反応器に充填する。この反応混合物を、水素の吸収が観察されなくなるまで、1?3気圧の圧力で水素化する工程」及び「g)反応の終期において、混合物を95?105℃に加熱し、この温度で数時間保持して、3α-ヒドロキシ-6β-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(VIII))を、所望の3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(IX))の対応するエピマーに変換させる。この懸濁液を濾過し、触媒を除去する。5.1kgの85%のリン酸、及び9.6kgの酢酸エチルを、濾過した溶液に添加し、この反応混合物を、40?70℃の温度に加熱する。これを、0?30℃の温度に冷却し、沈殿物を、濾過により回収する。酢酸エチルで洗浄した後、沈殿物を、65℃のオーブン中で乾燥する。5.0kgの3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(IX))を、化学量論的収率:62.2%で得る工程」は、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(VII))の6位のエチリデンを塩基性溶液の存在下で水素化し、その後、得られた6位がβ-エチルである化合物をα-エチルである化合物にエピマー化させる工程といえる。
一方、本願明細書【0060】には、「工程5は、E-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸(5)をPd/Cおよび水素ガスと反応させて3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸(6)を形成することである。工程5は、1段階(水素化と異性化とを一緒に)で行われても、2段階(水素化の後に異性化)で行われてもよい。」と記載されている。すなわち、本願発明1のB)の工程は、異性化を包含する工程であるといえる。
したがって、引用発明の工程f)及びg)は、本願発明1のB)の「精製されたE-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を塩基性溶液の存在下でPd/Cおよび水素ガスと反応させて水素化して、3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を製造する工程」と、「精製された3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を塩基性溶液の存在下でPd/Cおよび水素ガスと反応させて水素化して、3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を製造する工程」である点で共通する。

オ 引用発明の工程h’)の「5.0kgの3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン酸(Rがメチルである(IX))、5.0kgの水、及び2.50kgの水酸化ナトリウムを、反応器に充填する。その後、この混合物を、70?105℃に加熱し、2.50kgの水に溶解した水素化ホウ素ナトリウムの混合物を注入し、その後、この混合物を、1時間、熱状態で保持し、室温に冷却し、10.0gの脱塩水、15.0kgの塩化メチレン、及び3.00kgの85%のリン酸を添加する。この混合物を、攪拌し、底部の有機相を分離し、水相を除去する。」は、7位のケト基を水素化ホウ素ナトリウムで還元してヒドロキシ基とする工程であって、3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸(Rがメチルである(IA))が得られているといえる。
したがって、引用発明のこの工程は、本願発明1のC)の「3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸をNaBH_(4)と反応させて還元して、粗製オベチコール酸を形成する工程」に相当する。

カ 引用発明の工程h’)の「有機溶液を冷却することにより、粗産物の結晶化を行う。」は、前段の還元処理で得られた粗製3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸(Rがメチルである(IA))を結晶化する工程といえるから、引用発明のこの工程は、本願発明1のD)の「粗製オベチコール酸を、酢酸n-ブチルを用いて結晶化することによって、結晶オベチコール酸を調製する工程」と、「粗製オベチコール酸を結晶化することによって、結晶オベチコール酸を調製する工程」である点で共通する。

キ 引用発明の工程h’)の「この産物を、50kgの脱塩水、及び1.10kgの30%のアンモニアに溶解する。その後、完全な溶液となるまで、この混合物を、攪拌し、この混合物を20?50℃で保持し、1.50kgのリン酸を注入する。20?50℃の温度に常に保ちながら、沈殿した混合物を攪拌し、その後、濾過により沈殿物を回収し、水で洗浄し、乾燥する。3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸(Rがメチルである(IA))の4.50kgを、化学量論的収率:89.6%で得る工程」は、前段で結晶化した3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸(Rがメチルである(IA))を処理する工程といえるから、引用発明のこの工程は、本願発明1のE)の「結晶オベチコール酸を非結晶性オベチコール酸へ変換する工程」と、「結晶オベチコール酸を処理する工程」である点で共通する。

ク 引用発明の「3α-,7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン酸(Rがメチルである(IA))の調製方法」は、さらに、3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン酸(II)を原料とする工程a)?工程e)の前段の工程を有する。
一方、本願明細書の実施例1には、引用発明と同じく3α-ヒドロキシ-7-ケト-5β-コラン-24-酸(KLCA)を原料とする一連の工程により、オベチコール酸を調製する方法が示されており、本願発明1は、A)?E)の工程「を含む、プロセス。」とあるように、KLCAを原料とする工程の一部を発明特定事項としたものといえる。
そして、引用発明の工程a)?工程e)の前段の工程は、本願明細書の実施例1の工程1?工程4(【0197】?【0208】参照)と同様である。
よって、引用発明が、さらに工程a)?工程e)の前段の工程を有することは、本願発明1との相違点とはならない。

ケ 以上のことから、両発明は、次の一致点及び相違点1?5を有する。

一致点:
「オベチコール酸を調製するプロセスであって、該プロセスが、
粗製3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を精製して、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を提供する工程、
精製された3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を塩基性溶液の存在下でPd/Cおよび水素ガスと反応させて水素化して、3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を製造する工程、
3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸をNaBH_(4)と反応させて還元して、粗製オベチコール酸を形成する工程、
粗製オベチコール酸を結晶化することによって、結晶オベチコール酸を調製する工程、および
結晶オベチコール酸を処理する工程
を含む、プロセス。」である点

相違点1:
「オベチコール酸を調製するプロセス」が、本願発明1では、「1重量%未満のケノデオキシコール酸(CDCA)を含む非結晶性オベチコール酸を調製するプロセス」であるのに対し、引用発明では、CDCAの含有量が不明であり、オベチコール酸が非結晶性であるか不明である点

相違点2:
「粗製3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を精製して、3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を提供する工程」が、本願発明1では、結晶化によって精製してE-3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸(以下、「E体」という。)を提供する工程であるのに対し、引用発明では、工程e)の後段で沈殿物としており、結晶化を行ってE体を提供しているか不明な点

相違点3:
「精製された3α-ヒドロキシ-6-エチリデン-7-ケト-5β-コラン-24-酸を塩基性溶液の存在下でPd/Cおよび水素ガスと反応させて水素化して、3α-ヒドロキシ-6α-エチル-7-ケト-5β-コラン-24-酸を製造する工程」が、本願発明1では、精製されたE体を水素化する工程であるのに対し、引用発明では、精製されたE体を水素化しているのか不明な点

相違点4:
「粗製オベチコール酸を結晶化することによって、結晶オベチコール酸を調製する工程」が、本願発明1では、「酢酸n-ブチルを用いて」結晶化することによって、結晶オベチコール酸を調製する工程であるのに対し、引用発明では、「有機溶液を冷却することにより」粗産物の結晶化を行う点

相違点5:
「結晶オベチコール酸を処理する工程」が、本願発明1では、「結晶オベチコール酸を非結晶性オベチコール酸へ変換する工程」であるのに対し、引用発明は、非結晶性オベチコール酸へ変換しているか不明な点

(3)上記相違点1?5について検討する。
ア 事案に鑑み、まず、相違点2?3について、これらは関連するのでまとめて検討する。
(ア)引用文献1には、相違点2の、本願発明1では、結晶化によって精製して、E体を提供する工程に対応する工程について、実施例の(例1)の工程e)の後段には、ペースト状の残渣を得るまで有機溶媒を除去し、残渣に酢酸エチルを添加して加熱、冷却、濾過、酢酸エチル洗浄という工程を経て沈殿物を乾燥することが記載されており(上記(1d)【0080】)、一般的な説明の記載には、反応産物は酸性化した後に、酢酸エチル又はアセトンを用いた結晶化により単離されると記載されている(上記(1c)【0062】)。
そうすると、引用発明について、結晶化により単離することまでは示唆されているといえる。そして、引用文献12から、再結晶、すなわち、引用発明の工程e)の後段の処理のような工程が、純粋な物質を得るための手段として採用されていることは理解できる。
しかしながら、引用発明の一連の調製方法では、工程e)の後に、工程f)及び工程g)で、6位のエチリデンを水素化し、その後、得られた6位のエチル基が6βのものを6αのものにエピマー化させる工程を有している(上記(1d)、(1c)【0063】)。
そもそも、引用文献1には、工程e)のエステル加水分解で得られたもの、あるいはその前駆体であるメチルエステルが、E体とZ体の混合物であるか否かについて記載されておらず、また、そのようなことに着目もされていない。しかも、6位のエチリデンが、E体かZ体かに関わらず、水素化後にはエチル基に変換され、6βのものは6αのものにエピマー化できることが示されている。
そうすると、エステル加水分解で得られたものについて、結晶化により精製してE体を提供してから水素化することが動機付けられるとはいえない。

(イ)上記(ア)のとおり、結晶化により精製してE体を提供することが動機付けられないことと同様に、相違点3の水素化を精製されたE体について行うとする理由がない。

(ウ)よって、相違点2及び3は、当業者が容易になし得たものとはいえない。

イ(ア)そうすると、相違点1、4及び5について検討するまでもなく、本願発明1は当業者が容易になし得たものということはできない。

(イ)また、非結晶形を含めて結晶形が異なると物性が異なることから結晶形を検討することが普通に行われていることが示される引用文献2、オベチコール酸とは異なる化合物について、非結晶形化合物を得ることが記載されている引用文献3?5、オベチコール酸とは異なる特定の化合物について、再結晶溶媒として酢酸n-ブチルを用いることや、再結晶溶媒として酢酸エステル類が挙げられている引用文献6?9、及び様々な非結晶形への変換手段が当業者に知られていることが示される引用文献13の記載を参酌しても、本願発明1は当業者が容易になし得たものとはいえない。

ウ 本願発明1の効果についても検討するに、本願明細書には、引用文献1と比較した効果が記載されている(【0079】?【0083】)。
そして、酢酸n-ブチルによる結晶化によって、具体的には結晶オベチコール酸形態Cを得ることで、非常に純粋な非結晶性オベチコール酸が得られること(【0045】、【0068】、【0087】)、上記相違点2に係るE体を単離することで、実質的に純粋なオベチコール酸の効率的かつ高収率の製造を可能にすることが記載されている(実施例2)。
そして、これらの工程を備えることにより、高純度の非晶質性オベチコール酸が得られることは、当業者が容易に予測し得たことということはできない。

エ 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?9、12、13に記載された本願優先日における周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明14及び15について
本願発明14及び15は、非結晶性オベチコール酸を調製するプロセスであるところ、その工程に、上記1で検討した本願発明1の工程を全て含み、さらなる特定を有する方法の発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?9、12、13に記載された本願優先日における周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明2?13、16?17について
本願発明2?13、16?17は、それぞれ直接又は間接的に本願発明1を引用してさらなる特定を有する方法の発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?9、12、13に記載された本願優先日における周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について
1 理由3(進歩性)について
上記第5で検討したとおりであり、原査定の理由3を維持することはできない。

2 理由2(新規事項)、理由4及び5(実施可能要件及びサポート要件)、並びに理由6(明確性)について
審判請求と同時にした手続補正により、補正前の本願請求項1の「水素化して」との記載は、「塩基性溶液の存在下でPd/Cおよび水素ガスと反応させて水素化して」に、同「還元して」との記載は、「NaBH_(4)と反応させて還元して」に、それぞれ補正後の本願請求項1のとおり補正されている。
また、同手続補正により、補正前の本願請求項17及び19の「オベチコール酸を含む残渣を酢酸n-ブチルと共に使用して、結晶オベチコール酸を得る工程」との記載は、「粗製オベチコール酸を酢酸n-ブチルを用いて結晶化することによって、結晶オベチコール酸を調製する工程」に、それぞれ補正後の本願請求項14及び15のとおり補正されている。
これらの補正により、補正後の本願請求項1?13、16、17についてした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内にしたものとなり、また、本願請求項1?17は、特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号及び同条同項第2号を満たすものとなった。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-08 
出願番号 特願2015-238204(P2015-238204)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (C07J)
P 1 8・ 121- WY (C07J)
P 1 8・ 536- WY (C07J)
P 1 8・ 537- WY (C07J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 千弥子清水 紀子天野 斉  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 冨永 保
関 美祝
発明の名称 オベチコール酸の調製、使用および固体形態  
代理人 山本 健策  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 石川 大輔  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
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