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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1350315
審判番号 不服2017-14152  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-25 
確定日 2019-03-27 
事件の表示 特願2015-125217「向上した熱伝達効率のための流体流路」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月 7日出願公開、特開2016- 32101〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成27年6月23日(パリ条約に基づく優先権主張 平成26年7月29日 米国(US))の出願であって、平成28年7月21日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年10月25日付けで手続補正がなされ、平成29年1月16日付け最後の拒絶理由通知に対する応答時、同年4月21日付けで手続補正がなされたが、当該手続補正について、同年5月17日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月25日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

2.平成29年9月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年9月25日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
(1)補正後の本願発明
平成29年9月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
a)マニホールドであって:
第1の流体出口開口、第2の流体出口開口、及び流体入口開口を有する第1の表面と;
前記第1の流体出口開口と前記流体入口開口との間の前記第1の表面から生じる第1の突出部と;
前記第2の流体出口開口と前記流体入口開口との間の前記第1の表面から生じる第2の突出部と;を有する、
マニホールドと;
b)熱伝導性溝付き構造であって:
前記第1の表面に面するとともに、前記第1の突出部の周りに前記第1の流体出口開口から前記流体入口開口に流体を輸送する第1の流体流路を形成するための第1の空洞、前記第2の突出部の周りに前記第2の流体出口開口から前記流体入口開口に流体を輸送する第2の流体流路を形成するための第2の空洞、及び前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に形成される第3の突出部を有する第2の表面であって、前記第1の流体出口開口及び前記流体入口開口は前記第1の空洞に面し、前記第2の流体出口開口及び前記流体入口開口は前記第2の空洞に面する、第2の表面;を有する、
熱伝導性溝付き構造と;を有し、
前記第1の突出部は、前記第1の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第1の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第2の側部表面と、前記第1の側部表面と前記第2の側部表面を接続する第1の接続表面を有し、
前記第2の突出部は、前記第2の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第3の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第4の側部表面と、前記第3の側部表面と前記第4の側部表面を接続する第2の接続表面を有し、
前記第1の空洞は、前記第1の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第5の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第6の側部表面と、前記第5の側部表面と前記第6の側部表面を接続する第3の接続表面を有し、
前記第2の空洞は、前記第2の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第7の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第8の側部表面と、前記第7の側部表面と前記第8の側部表面を接続する第4の接続表面を有する、
装置。」

とあったものが、

「【請求項1】
a)マニホールドであって:
第1の流体出口開口、第2の流体出口開口、及び流体入口開口を有する第1の表面と;
前記第1の流体出口開口と前記流体入口開口との間の前記第1の表面から生じる第1の突出部と;
前記第2の流体出口開口と前記流体入口開口との間の前記第1の表面から生じる第2の突出部と;を有する、
マニホールドと;
b)熱伝導性溝付き構造であって:
前記第1の表面に面するとともに、前記第1の突出部の周りに前記第1の流体出口開口から前記流体入口開口に流体を輸送する第1の流体流路を形成するための第1の空洞、前記第2の突出部の周りに前記第2の流体出口開口から前記流体入口開口に流体を輸送する第2の流体流路を形成するための第2の空洞、及び前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に形成される第3の突出部を有する第2の表面であって、前記第1の流体出口開口及び前記流体入口開口は前記第1の空洞に面し、前記第2の流体出口開口及び前記流体入口開口は前記第2の空洞に面する、第2の表面;を有する、
熱伝導性溝付き構造と;を有し、
前記第1の突出部は、前記第1の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第1の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第2の側部表面と、前記第1の側部表面と前記第2の側部表面を接続する第1の接続表面を有し、
前記第2の突出部は、前記第2の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第3の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第4の側部表面と、前記第3の側部表面と前記第4の側部表面を接続する第2の接続表面を有し、
前記第1の空洞は、前記第1の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第5の側部表面と、前記流体入口開口から離れた前記溝付き構造内の場所から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に前記マニホールドから前記溝付き構造に向かう方向において前記第5の側部表面の前記溝付き構造側の終端位置と同じ高さで終端するように傾斜する第6の側部表面と、前記第5の側部表面と前記第6の側部表面を接続する第3の接続表面を有し、
前記第2の空洞は、前記第2の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第7の側部表面と、前記流体入口開口から離れた前記溝付き構造内の前記場所から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に前記マニホールドから前記溝付き構造に向かう方向において前記第7の側部表面の前記溝付き構造側の終端位置と同じ高さで終端するように傾斜する第8の側部表面と、前記第7の側部表面と前記第8の側部表面を接続する第4の接続表面を有する、
装置。」
と補正された。

上記補正は、
ア.請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、熱伝導性溝付き構造の第1の空洞が有する「第6の側部表面」について、「前記流体入口開口から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に傾斜する」とあったのを、「前記流体入口開口から離れた前記溝付き構造内の場所から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に前記マニホールドから前記溝付き構造に向かう方向において前記第5の側部表面の前記溝付き構造側の終端位置と同じ高さで終端するように傾斜する」と補正し、その始端のより具体的な位置と終端の位置とについての限定を付加し、
イ.同様に、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、熱伝導性溝付き構造の第2の空洞が有する「第8の側部表面」について、「前記流体入口開口から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に傾斜する」とあったのを、「前記流体入口開口から離れた前記溝付き構造内の前記場所から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に前記マニホールドから前記溝付き構造に向かう方向において前記第7の側部表面の前記溝付き構造側の終端位置と同じ高さで終端するように傾斜する」と補正し、その始端のより具体的な位置と終端の位置とについての限定を付加するものであるといえる。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第7017654号明細書(以下、「引用例」という。)には、「APPARATUS AND METHOD OF FORMING CHANNELS IN A HEAT-EXCHANGING DEVICE」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、当審による翻訳文を付記する。下線は当審で付与した。)。
ア.「Accordingly, what is needed is a structure and a method of efficiently manufacturing a heat exchanger that provides for uniform pressure flows for the transmission of a cooling material.」(1欄48?51行)
(従って、必要とされることは、冷却物質の伝送のための均一な圧力の流れを提供する熱交換器を効率的に製造する構造及び方法である。)

イ.「FIG.1A is a side cross-sectional view of a portion of a heat exchanger 110 coupled to a heat-generating source 180. The heat exchanger 110 comprises a manifold layer 101 and an interface layer 105. The manifold layer 101 comprises a surface having a plurality of apertures 101A-E and a plurality of solid portions 101J-M. The interface layer 105 comprises a plurality of narrowing trenches 105A-D and is coupled at a bottom surface to the heat-generating source 180. Each narrowing trench is defined by a sloping sidewall, a substantially planar floor, and a second sloping sidewall. Each trench is narrowing in that a cross-sectional area at an upper plane of a trench is larger than a cross-sectional area at a bottom plane of the trench, realized, for example, by sloping sidewalls. As described in more detail below, the plurality of apertures 101A-E, the plurality of solid portions 101J-M, and the narrowing trenches 105A-D define flow paths or channels that can accommodate the flow of a cooling material.・・・」(4欄66行?5欄16行)
(図1Aは、熱発生源180に結合された熱交換器110の一部の側断面図である。熱交換器110は、マニホールド層101とインターフェース層105からなる。マニホールド層101は、複数の開口部101A-Eと複数の中実部101J-Mを有する表面を含む。インターフェース層105は、複数の狭小化トレンチ(narrowing trenches)105A-Dを含み、熱発生源180と底面で結合されている。各狭小化トレンチは、傾斜側壁、実質的に平坦な床面、及び第二傾斜側壁によって画定される。各トレンチは、例えば傾斜した側壁によって実現される、トレンチの上面での断面積がトレンチの底面での断面積より大きいことで幅が狭くなっている。以下でより詳細に説明するように、複数の開口部101A-E、複数の固体部101J-M、及び複数の狭小化トレンチ105A-Dは、冷却物質の流れを収容することが可能な流路またはチャネルを画定する。)

ウ.「・・・Also, while the drawings show only five apertures 10A-E and four narrowing trenches 105A-D, fewer or more apertures and narrowing trenches can be formed in accordance with the present invention.」(6欄18?21行)
(また、図面は、5つの開口部101A-E及び4つの狭小化トレンチ105A-Dのみを示しているが、より少ない又はより多い数の開口部及び狭小化トレンチを本発明に従って形成することができる。)

エ.「It is believed that fluid paths channeled along sloping sidewalls, rounded corners, and other non-perpendicular edges in accordance with the present invention have advantages over channels having substantially perpendicular edges. Because sloping sidewalls provide a more uniform flow path than do right-angled sidewalls, there are fewer pressure drops along the flow path. Thus, a pump requires less energy to transmit the cooling material along the channels and thus forms part of a more efficient heat-exchanging system.」(6欄32?41行)
(本発明に従う傾斜側壁、丸みをおびたコーナー、及び他の非垂直な縁部に沿って導かれる流体路は、実質的に垂直な縁部を有するチャネルより優れた利点を有すると考えられる。傾斜側壁は、垂直側壁よりも均一な流路を提供するので、流路に沿ってより少ない圧力低下である。このように、ポンプは、チャネルに沿って冷却物質を伝送するために要するエネルギーがより少なくてすみ、したがって、より効率的な熱交換システムの一部を形成する。)

オ.「It will be appreciated that the bottom surfaces of the solid portions 201J-M, which form part of the flow paths for the heat exchanger 210 and substantially conform to the contour of the narrowing trenches 105A-D, can have other shapes, such as a polygonal shape that approximately mirrors the shape of the narrowing trenches 105A-D. For example, FIG.3 illustrates a cross-sectional diagram of a heat exchanger 250, in accordance with the present invention, coupled to the heat-generating source 280. The heat exchanger 250 comprises the interface layer 105 described above and a manifold layer 265 having apertures 265A-E and solid portions 265J-M. FIG.3 also shows an exemplary flow path 261 from the aperture 265B to the aperture 265A. The solid portions 265J-M each has a bottom surface that extends into each of the plurality of narrowing trenches 105A-D, respectively. The solid portion 265J is exemplary. As illustrated in FIG.3, the bottom surface of the solid portion 265J is formed from piecewise straight edges, such as exemplary piecewise straight edges 270A-C, which extend into the narrowing trench 105A. As described above, it will be appreciated that because the bottom surface of the solid portion 265J extends into the narrowing trench 105D, the flow path 261 has a smaller cross-sectional area than a corresponding flow path formed when the bottom surface of a solid portion does not extend into the narrowing channels. Thus, for example, the flow path 261 illustrated in FIG.3 has a smaller cross-sectional area than the flow path 121 illustrated in FIG.1B.
This structure has several advantages. For example, a cooling material traveling along the exemplary fluid flow paths 221 (FIG.2) and 261 (FIG.3) do not encounter any sharp edges as they travel between apertures, cooling a heat-generating source, and thus travel with fewer pressure drops. These structures also reduce the volume of the channel (flow path) along which the cooling material is transmitted. Forcing the same amount of cooling material along each smaller channel increases the velocity of the cooling material, which will increase the rate at which heat is carried away from the heat-generating source 280 . Those skilled in the art will recognize other advantages with a manifold layer having a bottom surface that defines a portion of a channel, conforming to the shape of a narrowing trench.」(7欄1?42行)
(熱交換器210の流路の一部を形成し、狭小化トレンチ105A-Dの輪郭に実質的に適合する中実部201J-Mの底面は、狭小化トレンチ105A-Dの形状をほぼ反映する多角形の形状のような他の形状を有することもできることを理解されたい。例えば、図3は、熱発生源280に結合された本発明による熱交換器250の断面図を示す。熱交換器250は、上述したインターフェース層105、及び開口部265A-Eと中実部265J-Mを有するマニホールド層265からなる。図3はまた、開口部265Bから開口部265Aへの例示的な流路261を示す。中実部265J-Mはそれぞれ、複数の狭小化トレンチ105A-Dの各々の中に拡張する底面を有している。中実部265Jは例示的なものである。図3に示されるように、中実部265Jの底面は、狭小化トレンチ105Aの中に拡張する、例えば区分的直線縁部270A-Cのような区分的な直線縁部から形成されている。上述したように、中実部265Jの底面は、狭小化トレンチ105D(※)の中に拡張しているので、流路261は、固体部の底面が狭小化チャネルの中に拡張していないときに形成される対応する流路よりも小さい断面積を有することが理解されるであろう。このように、例えば、図3に示された流路261は、図1Bに示された流路121よりも小さい断面積を有している。
この構造は、いくつかの利点を有する。例えば、例示的な流体流路221(図2)および261(図3)に沿って移動する冷却物質は、熱発生源を冷却するために開口部間を移動するとき鋭利な縁部に出会うことはなく、したがってより少ない圧力低下で移動する。これらの構造はまた、冷却物質が伝送されるチャネル(流路)の容積を減少させる。それぞれより小さいチャネルに沿って同じ量の冷却物質を強制すると冷却物質の速度が増加し、熱が熱発生源280から除去される割合が増加であろう。当業者であれば、狭小化トレンチの形状に適合する、チャネルの一部を画定する底面を有するマニホールド層の他の利点を認識するであろう。)
(※ 符号「105D」は、「105A」の誤記と認められる。)

カ.「



・上記「ア.」、「エ.」、「オ.」の記載事項によれば、上記引用例には、冷却物質の伝送のための均一な圧力の流れを提供する熱交換器の構造について記載されている。
・上記「イ.」、「オ.」の記載事項、及び図1A、上記「カ.」(図3)によれば、熱交換器は、積層されたマニホールド層とインターフェース層からなる。マニホールド層は、複数の開口部と複数の中実部を有し、インターフェース層は、熱発生源と底面で結合され、その反対側の面に複数の狭小化トレンチを含み、これら複数の開口部、複数の中実部、及び複数の狭小化トレンチは冷却物質の流路(チャネル)を画定するものである。
そして、各狭小化トレンチは、傾斜側壁、平坦な床面、第二傾斜側壁によって画定され、トレンチの上面での断面積がトレンチの底面での断面積よりも大きくなっている。
・上記「オ.」、「カ.」(図3)によれば、マニホールド層における各中実部は、インターフェース層の各狭小化トレンチの中に拡張する底面を有し、当該底面は、各狭小化トレンチの形状をほぼ反映する形状であり、3つの区分的な直線縁部から形成されてなるものである。
・上記「カ.」(図3)によれば、特に中央部分の3つの開口部265B?265D、2つの中実部265K,265L及び2つの狭小化トレンチ105B,105Cで構成される部分に着目すると、
(a)中実部265Kは、開口部265Bと開口部265Cとの間に設けられ、狭小化トレンチ105Bの中に拡張する底面を有し、
中実部265Lは、開口部265Dと開口部265Cとの間に設けられ、狭小化トレンチ105Cの中に拡張する底面を有している。
(b)狭小化トレンチ105Bは、開口部265B側から延びて開口部265C側に近づく方向に傾斜する傾斜面C(傾斜側壁)と、開口部265C側から延びて開口部265B側に近づく方向に傾斜する傾斜面A(傾斜側壁)と、傾斜面Cと傾斜面Aを接続する平坦な底面(床面)を有し、
狭小化トレンチ105Cは、開口部265C側から延びて開口部265D側に近づく方向に傾斜する傾斜面B(傾斜側壁)と、開口部265D側から延びて開口部265C側に近づく方向に傾斜する傾斜面D(傾斜側壁)と、傾斜面Bと傾斜面Dを接続する平坦な底面(床面)を有している。
また、各傾斜面A?Dの始端位置はいずれも、マニホールド層の開口部から離れたインターフェース層内の場所である。
(c)そして、冷却物質は、マニホールド層からみて、開口部265B及び開口部265Dは冷却物質が流出する開口部であり、開口部265Cは冷却物質が流入する開口部であり、開口部265Bから狭小化トレンチ105B側に流出し開口部265Cから流入する流路と、開口部265Dから狭小化トレンチ105C側に流出し開口部265Cから流入する流路とが形成されている。

なお、上記「カ.」における「傾斜面A」?「傾斜面D」は、平成29年5月17日付け補正の却下の決定において審査官が図3に追記したものであり、当審においても便宜上これを援用する。

したがって、特に図3に示される熱交換器の中央部分(3つの開口部265B?265D、2つの中実部265K,265L及び2つの狭小化トレンチ105B,105Cで構成される部分)に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「積層されたマニホールド層とインターフェース層からなる熱交換器であって、
前記マニホールド層は、
冷却物質が流出する開口部265B、冷却物質が流入する開口部265C、及び冷却物質が流出する開口部265Dと、
前記開口部265Bと前記開口部265Cとの間に設けられた中実部265Kと、前記開口部265Dと前記開口部265Cとの間に設けられた中実部265Lと、を有し、
前記インターフェース層は、熱発生源と底面で結合され、その反対側の面に狭小化トレンチ105Bと狭小化トレンチ105Cとを有し、
前記3つの開口部、2つの中実部、及び2つの狭小化トレンチは冷却物質の流路を画定し、前記マニホールド層からみて、前記開口部265Bから前記狭小化トレンチ105B側に流出し前記開口部265Cから流入する流路と、前記開口部265Dから前記狭小化トレンチ105C側に流出し前記開口部265Cから流入する流路とが形成され、
前記中実部265Kは、前記狭小化トレンチ105Bの中に拡張する底面を有し、前記中実部265Lは、前記狭小化トレンチ105Cの中に拡張する底面を有し、これら底面は、各狭小化トレンチの形状をほぼ反映する形状であり、3つの区分的な直線縁部から形成されてなり、
前記狭小化トレンチ105Bは、前記開口部265B側から延びて前記開口部265C側に近づく方向に傾斜する傾斜面Cと、前記開口部265C側から延びて前記開口部265B側に近づく方向に傾斜する傾斜面Aと、前記傾斜面Cと前記傾斜面Aを接続する平坦な底面を有し、
前記狭小化トレンチ105Cは、前記開口部265C側から延びて前記開口部265D側に近づく方向に傾斜する傾斜面Bと、前記開口部265D側から延びて前記開口部265C側に近づく方向に傾斜する傾斜面Dと、前記傾斜面Bと前記傾斜面Dを接続する平坦な底面を有し、
前記各傾斜面A?Dの始端位置はいずれも、前記マニホールド層の開口部から離れた前記インターフェース層内の場所である、熱交換器。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における「積層されたマニホールド層とインターフェース層からなる熱交換器であって、前記マニホールド層は、冷却物質が流出する開口部265B、冷却物質が流入する開口部265C、及び冷却物質が流出する開口部265Dと、前記開口部265Bと前記開口部265Cとの間に設けられた中実部265Kと、前記開口部265Dと前記開口部265Cとの間に設けられた中実部265Lと、を有し、・・・前記中実部265Kは、前記狭小化トレンチ105Bの中に拡張する底面を有し、前記中実部265Lは、前記狭小化トレンチ105Cの中に拡張する底面を有し、・・」によれば、
(a)引用発明における「マニホールド層」は、本願補正発明でいう「マニホールド」に相当し、
(b)引用発明のマニホールド層が有する、冷却物質が流出する「開口部265D」、冷却物質が流出する「開口部265B」、冷却物質が流入する「開口部265C」が、それぞれ本願補正発明でいう「第1の流体出口開口」、「第2の流体出口開口」、「流体入口開口」に相当する。
なお、マニホールド層における、インターフェース層と対向する側の面が、本願補正発明でいう「第1の表面」に相当する。
(c)さらに、引用発明のマニホールド層が有する、開口部265Dと開口部265Cとの間に設けられた「中実部265L」、開口部265Bと開口部265Cとの間に設けられた「中実部265K」における、狭小化トレンチの中に拡張する底面部分が、それぞれ本願補正発明でいう「第1の突出部」、「第2の突出部」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、「a)マニホールドであって:第1の流体出口開口、第2の流体出口開口、及び流体入口開口を有する第1の表面と;前記第1の流体出口開口と前記流体入口開口との間の前記第1の表面から生じる第1の突出部と;前記第2の流体出口開口と前記流体入口開口との間の前記第1の表面から生じる第2の突出部と;を有する、マニホールド」とを有するものである点で一致する。

イ.引用発明における「前記インターフェース層は、熱発生源と底面で結合され、その反対側の面に狭小化トレンチ105Bと狭小化トレンチ105Cとを有し、前記3つの開口部、2つの中実部、及び2つの狭小化トレンチは冷却物質の流路を画定し、前記マニホールド層からみて、前記開口部265Bから前記狭小化トレンチ105B側に流出し前記開口部265Cから流入する流路と、前記開口部265Dから前記狭小化トレンチ105C側に流出し前記開口部265Cから流入する流路とが形成され、前記中実部265Kは、前記狭小化トレンチ105Bの中に拡張する底面を有し、前記中実部265Lは、前記狭小化トレンチ105Cの中に拡張する底面を有し、・・」によれば、
(a)引用発明における「インターフェース層」は、その底面に結合された熱発生源からの熱を伝導するものであることは自明になことであり、また、狭小化トレンチからなる溝を有してなるものであるといえることから、本願補正発明でいう「熱伝導性溝付き構造」に相当し、
(b)引用発明において、マニホールド層からみて、開口部265Dから狭小化トレンチ105C側に流出し開口部265Cから流入する「流路」、開口部265Bから狭小化トレンチ105B側に流出し開口部265Cから流入する「流路」が、それぞれ本願補正発明でいう「第1の流体流路」、「第2の流体流路」に相当する。
また、引用発明にあっても各流路を画定するために、本願補正発明と同様に、「開口部265D」及び「開口部265C」は「狭小化トレンチ105C」に面し、「開口部265B」及び「開口部265C」は「狭小化トレンチ105B」に面することは当然のことである(上記「カ.」(図3)も参照)。
(c)そして、引用発明のインターフェース層が有する、中実部265Lの底面部分がその中に拡張してなる「狭小化トレンチ105C」、中実部265Kの底面部分がその中に拡張してなる「狭小化トレンチ105B」が、それぞれ本願補正発明でいう「第1の空洞」、「第2の空洞」に相当し、
引用発明においても、「狭小化トレンチ105C」と「狭小化トレンチ105B」との間には当然、本願補正発明でいう、第1の空洞と第2の空洞との間に形成される「第3の突出部」を有するものである(上記「カ.」(図3)も参照)。
なお、インターフェース層における、マニホールド層と対向する側の面が、本願補正発明でいう「第2の表面」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、「b)熱伝導性溝付き構造であって:前記第1の表面に面するとともに、前記第1の突出部の周りに前記第1の流体出口開口から前記流体入口開口に流体を輸送する第1の流体流路を形成するための第1の空洞、前記第2の突出部の周りに前記第2の流体出口開口から前記流体入口開口に流体を輸送する第2の流体流路を形成するための第2の空洞、及び前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に形成される第3の突出部を有する第2の表面であって、前記第1の流体出口開口及び前記流体入口開口は前記第1の空洞に面し、前記第2の流体出口開口及び前記流体入口開口は前記第2の空洞に面する、第2の表面;を有する、熱伝導性溝付き構造」とを有するものである点で一致する。

ウ.引用発明における「前記狭小化トレンチ105Bは、前記開口部265B側から延びて前記開口部265C側に近づく方向に傾斜する傾斜面Cと、前記開口部265C側から延びて前記開口部265B側に近づく方向に傾斜する傾斜面Aと、前記傾斜面Cと前記傾斜面Aを接続する平坦な底面を有し、前記狭小化トレンチ105Cは、前記開口部265C側から延びて前記開口部265D側に近づく方向に傾斜する傾斜面Bと、前記開口部265D側から延びて前記開口部265C側に近づく方向に傾斜する傾斜面Dと、前記傾斜面Bと前記傾斜面Dを接続する平坦な底面を有し、前記各傾斜面A?Dの始端位置はいずれも、前記マニホールド層の開口部から離れた前記インターフェース層内の場所である、・・」によれば、
(a)引用発明の狭小化トレンチ105Cが有する、開口部265D側から延びて開口部265C側に近づく方向に傾斜する「傾斜面D」、開口部265C側から延びて開口部265D側に近づく方向に傾斜する「傾斜面B」、傾斜面Bと傾斜面Dを接続する「平坦な底面」が、それぞれ本願補正発明でいう「第5の側部表面」、「第6の側部表面」、「第3の接続表面」に相当する。
このうち「傾斜面B」については、その始端位置がマニホールド層の開口部から離れたインターフェース層内の場所であり、本願補正発明でいう「第6の側部表面」の始端位置と一致し、その終端位置についても、傾斜面Bと傾斜面Dとは平坦な底面で接続されるのであるから、当然、傾斜面Dの終端位置と同じ高さであり、本願補正発明でいう「第6の側部表面」の終端位置と一致する。
(b)同様に、引用発明の狭小化トレンチ105Bが有する、開口部265B側から延びて開口部265C側に近づく方向に傾斜する「傾斜面C」、開口部265C側から延びて開口部265B側に近づく方向に傾斜する「傾斜面A」、傾斜面Cと傾斜面Aを接続する「平坦な底面」が、それぞれ本願補正発明でいう「第7の側部表面」、「第8の側部表面」、「第4の接続表面」に相当する。
このうち「傾斜面A」については、その始端位置がマニホールド層の開口部から離れたインターフェース層内の場所であり、本願補正発明でいう「第8の側部表面」の始端位置と一致し、その終端位置についても、傾斜面Aと傾斜面Cとは平坦な底面で接続されるのであるから、当然、傾斜面Cの終端位置と同じ高さであり、本願補正発明でいう「第8の側部表面」の終端位置と一致する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第1の空洞は、前記第1の流体出口開口側から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第5の側部表面と、前記流体入口開口から離れた前記溝付き構造内の場所から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に前記マニホールドから前記溝付き構造に向かう方向において前記第5の側部表面の前記溝付き構造側の終端位置と同じ高さで終端するように傾斜する第6の側部表面と、前記第5の側部表面と前記第6の側部表面を接続する第3の接続表面を有し、前記第2の空洞は、前記第2の流体出口開口側から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第7の側部表面と、前記流体入口開口から離れた前記溝付き構造内の前記場所から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に前記マニホールドから前記溝付き構造に向かう方向において前記第7の側部表面の前記溝付き構造側の終端位置と同じ高さで終端するように傾斜する第8の側部表面と、前記第7の側部表面と前記第8の側部表面を接続する第4の接続表面を有する」ものである点で共通する。
ただし、第1の流体出口開口側から延びる第5の側部表面の具体的な始端位置、及び第2の流体出口開口側から延びる第7の側部表面の具体的な始端位置について、本願補正発明では、それぞれ「第1の流体出口開口」、「第2の流体出口開口」と特定するのに対し、引用発明では、それぞれ開口部265Dから離れたインターフェース層内の場所、開口部265Bから離れたインターフェース層内の場所である点で相違している。

エ.引用発明における「前記中実部265Kは、前記狭小化トレンチ105Bの中に拡張する底面を有し、前記中実部265Lは、前記狭小化トレンチ105Cの中に拡張する底面を有し、これら底面は、各狭小化トレンチの形状をほぼ反映する形状であり、3つの区分的な直線縁部から形成されてなり」によれば、
(a)引用発明の中実部265Lにおける、狭小化トレンチ105Cの中に拡張する底面は、3つの区分的な直線縁部から形成され、狭小化トレンチ105Cの形状をほぼ反映する形状である。したがって、狭小化トレンチ105Cの中に拡張する底面を構成するこれら3つの直線縁部は、狭小化トレンチ105Cの「傾斜面B」、「傾斜面D」、傾斜面Bと傾斜面Dを接続する「平坦な底面」に対応した形状の直線縁部である(上記「カ.」(図3)も参照)。そして、傾斜面Dに対応した形状の直線縁部、傾斜面Bに対応した形状の直線縁部、傾斜面Bと傾斜面Dを接続する平坦な底面に対応した形状の直線縁部が、それぞれ本願補正発明でいう「第1の側部表面」、「第2の側部表面」、「第1の接続表面」に相当するものである。
(b)同様に、引用発明の中実部265Kにおける、狭小化トレンチ105Bの中に拡張する底面は、3つの区分的な直線縁部から形成され、狭小化トレンチ105Bの形状をほぼ反映する形状である。したがって、狭小化トレンチ105Bの中に拡張する底面を構成するこれら3つの直線縁部は、狭小化トレンチ105Bの「傾斜面C」、「傾斜面A」、傾斜面Cと傾斜面Aを接続する「平坦な底面」に対応した形状の直線縁部である(上記「カ.」(図3)も参照)。そして、傾斜面Cに対応した形状の直線縁部、傾斜面Aに対応した形状の直線縁部、傾斜面Cと傾斜面Aを接続する平坦な底面に対応した形状の直線縁部が、それぞれ本願補正発明でいう「第3の側部表面」、「第4の側部表面」、「第2の接続表面」に相当するものである。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第1の突出部は、前記第1の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第1の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第2の側部表面と、前記第1の側部表面と前記第2の側部表面を接続する第1の接続表面を有し、前記第2の突出部は、前記第2の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第3の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第4の側部表面と、前記第3の側部表面と前記第4の側部表面を接続する第2の接続表面を有」するものである点で一致する。

オ.そして、引用発明における「熱交換器」は、マニホールド層とインターフェース層とを有する装置といえるものであるから、本願補正発明でいう「装置」に相当する。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「a)マニホールドであって:
第1の流体出口開口、第2の流体出口開口、及び流体入口開口を有する第1の表面と;
前記第1の流体出口開口と前記流体入口開口との間の前記第1の表面から生じる第1の突出部と;
前記第2の流体出口開口と前記流体入口開口との間の前記第1の表面から生じる第2の突出部と;を有する、
マニホールドと;
b)熱伝導性溝付き構造であって:
前記第1の表面に面するとともに、前記第1の突出部の周りに前記第1の流体出口開口から前記流体入口開口に流体を輸送する第1の流体流路を形成するための第1の空洞、前記第2の突出部の周りに前記第2の流体出口開口から前記流体入口開口に流体を輸送する第2の流体流路を形成するための第2の空洞、及び前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に形成される第3の突出部を有する第2の表面であって、前記第1の流体出口開口及び前記流体入口開口は前記第1の空洞に面し、前記第2の流体出口開口及び前記流体入口開口は前記第2の空洞に面する、第2の表面;を有する、
熱伝導性溝付き構造と;を有し、
前記第1の突出部は、前記第1の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第1の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第2の側部表面と、前記第1の側部表面と前記第2の側部表面を接続する第1の接続表面を有し、
前記第2の突出部は、前記第2の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第3の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第4の側部表面と、前記第3の側部表面と前記第4の側部表面を接続する第2の接続表面を有し、
前記第1の空洞は、前記第1の流体出口開口側から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第5の側部表面と、前記流体入口開口から離れた前記溝付き構造内の場所から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に前記マニホールドから前記溝付き構造に向かう方向において前記第5の側部表面の前記溝付き構造側の終端位置と同じ高さで終端するように傾斜する第6の側部表面と、前記第5の側部表面と前記第6の側部表面を接続する第3の接続表面を有し、
前記第2の空洞は、前記第2の流体出口開口側から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第7の側部表面と、前記流体入口開口から離れた前記溝付き構造内の前記場所から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に前記マニホールドから前記溝付き構造に向かう方向において前記第7の側部表面の前記溝付き構造側の終端位置と同じ高さで終端するように傾斜する第8の側部表面と、前記第7の側部表面と前記第8の側部表面を接続する第4の接続表面を有する、
装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
第1の流体出口開口側から延びる第5の側部表面の具体的な始端位置、及び第2の流体出口開口側から延びる第7の側部表面の具体的な始端位置について、本願補正発明では、それぞれ「第1の流体出口開口」、「第2の流体出口開口」と特定するのに対し、引用発明では、それぞれ開口部から離れた場所である点。

(4)判断
上記[相違点]について検討する。
引用発明において、傾斜面D及び傾斜面Cについても、その始端位置がマニホールド層の開口部から離れたインターフェース層内の場所であるのは、3つの開口部265B?265D、2つの中実部265K,265L及び2つの狭小化トレンチ105B,105Cで構成される部分(中央部分)の両側に、それぞれ1つの開口部、1つの中実部及び1つの狭小化トレンチで構成され流路を画定する部分がさらに設けられていることに起因するものと解される。
しかしながら、開口部、中実部及び狭小化トレンチで構成され流路の数をどの程度とするかは、冷却対象(熱発生源)の大きさ等に応じて当業者が適宜定め得る事項である。そして、引用例の図3(上記「カ.」を参照)には5つの開口部101A-E、4つの中実部265J-M及び4つの狭小化トレンチ105A-Dの例が示されているが、引用例の6欄18?21行には、より少ない数の開口部及び狭小化トレンチとすることもできる旨記載(上記「(2)ウ.」を参照)されていることから、引用発明において、上記中央部分の両側に流路を画定する部分をさらに設けることなく、当該中央部分のみとし、それに伴って、傾斜面D、傾斜面Cの始端位置を、それぞれ開口部265D、開口部265Bとすること(上記「カ.」(図3)も参照)も、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願補正発明が奏する効果についてみても、引用発明から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成29年9月25日付けの手続補正は上記のとおり却下され、また、平成29年4月21日付け手続補正は同年5月17日付けで補正の却下がなされているので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年10月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
a)マニホールドであって:
第1の流体出口開口、第2の流体出口開口、及び流体入口開口を有する第1の表面と;
前記第1の流体出口開口と前記流体入口開口との間の前記第1の表面から生じる第1の突出部と;
前記第2の流体出口開口と前記流体入口開口との間の前記第1の表面から生じる第2の突出部と;を有する、
マニホールドと;
b)熱伝導性溝付き構造であって:
前記第1の表面に面するとともに、前記第1の突出部の周りに前記第1の流体出口開口から前記流体入口開口に流体を輸送する第1の流体流路を形成するための第1の空洞、前記第2の突出部の周りに前記第2の流体出口開口から前記流体入口開口に流体を輸送する第2の流体流路を形成するための第2の空洞、及び前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に形成される第3の突出部を有する第2の表面であって、前記第1の流体出口開口及び前記流体入口開口は前記第1の空洞に面し、前記第2の流体出口開口及び前記流体入口開口は前記第2の空洞に面する、第2の表面;を有する、
熱伝導性溝付き構造と;を有し、
前記第1の突出部は、前記第1の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第1の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第2の側部表面と、前記第1の側部表面と前記第2の側部表面を接続する第1の接続表面を有し、
前記第2の突出部は、前記第2の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第3の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第4の側部表面と、前記第3の側部表面と前記第4の側部表面を接続する第2の接続表面を有し、
前記第1の空洞は、前記第1の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第5の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第1の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第6の側部表面と、前記第5の側部表面と前記第6の側部表面を接続する第3の接続表面を有し、
前記第2の空洞は、前記第2の流体出口開口から延びて前記流体入口開口に近づく方向に傾斜する第7の側部表面と、前記流体入口開口から延びて前記第2の流体出口開口に近づく方向に傾斜する第8の側部表面と、前記第7の側部表面と前記第8の側部表面を接続する第4の接続表面を有する、
装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である、熱伝導性溝付き構造の第1の空洞が有する「第6の側部表面」について、その始端のより具体的な位置と終端の位置とについての限定を省き、同じく発明特定事項である、熱伝導性溝付き構造の第2の空洞が有する「第8の側部表面」について、その始端のより具体的な位置と終端の位置とについての限定を省いたもの、すなわち上記「2.(4)」で認定した上記[相違点]に係る構成を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項は、上記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明と全て一致し相違するところがない。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明である。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-10-26 
結審通知日 2018-10-30 
審決日 2018-11-13 
出願番号 特願2015-125217(P2015-125217)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 麻川 倫広  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 関谷 隆一
井上 信一
発明の名称 向上した熱伝達効率のための流体流路  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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