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審決分類 |
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61M 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61M |
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管理番号 | 1350316 |
審判番号 | 不服2017-15298 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-13 |
確定日 | 2019-03-27 |
事件の表示 | 特願2014-543627「カテーテル装置および技術」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日国際公開、WO2013/082174、平成27年 1月19日国内公表、特表2015-501704〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成24年11月28日(パリ条約による優先権主張 平成23(2011)年11月28日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年9月13日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年12月9日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲について手続補正がなされたが、平成29年6月2日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。 これに対し、平成29年10月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに特許請求の範囲について手続補正がなされ、平成30年3月8日に上申書が提出されたものである。 第2 平成29年10月13日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成29年10月13日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正 平成29年10月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成28年12月9日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含むものである。(なお、下線部は補正箇所を明確にする目的で当審にて付与した。) (1)補正後 「【請求項1】 カテーテルおよび少なくとも1つの清浄装置を含有する個別に密封されたパッケージを備えるカテーテルアセンブリであって、 前記清浄装置は、清浄キャップ、保護キャップまたはその両方であり、 前記カテーテルは、少なくとも1つのポートを有し、 前記カテーテルおよび前記少なくとも1つの清浄装置のそれぞれが、前記パッケージの離隔した区画に個別に密封されているカテーテルアセンブリ。」 (2)補正前 「【請求項1】 カテーテルおよび少なくとも1つの清浄装置を含有するパッケージを備えるカテーテルアセンブリであって、 前記清浄装置は、清浄キャップ、保護キャップまたはその両方であり、保護カバーによって気密密閉され、 前記カテーテルは、少なくとも1つのポートを有しているカテーテルアセンブリ。」 2 本件補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「清浄装置」について、「保護カバーによって気密密閉され、」との特定事項を削除することを含むものであって、補正前の請求項1に係る発明を拡張したものといえる。 念のため、本件補正において、清浄装置について、「保護カバーによって気密密閉され、」との特定事項を削除した点と、「個別に密封された」パッケージを備え、「前記カテーテルおよび前記少なくとも1つの清浄装置のそれぞれが、前記パッケージの離隔した区画に個別に密封され」との特定事項を付加した点との関係について検討する。 まず、補正前の請求項1において、清浄装置を気密密閉する「保護カバー」と、カテーテルおよび少なくとも1つの清浄装置を含有する「パッケージ」とは異なる構成であると文言上理解できる。 本件明細書の記載をみても、段落【0006】「・・・カテーテルアセンブリは、カテーテルおよび少なくとも1つの清浄キャップを含有するパッケージから成っており、カテーテルは、少なくとも1つのポートを有する、カテーテルアセンブリを提供することと、パッケージを開いて清浄キャップを取り外すことと、カテーテルを泌尿器カテーテル挿入部位に取り付けることと、前述のポートをポート清浄装置で清浄することと、ポートを通して尿サンプルを採取することと、から成る。カテーテルおよび少なくとも1つの清浄キャップは、パッケージの離隔した区画に個別に密封されている。・・・」(なお、下線は当審にて付与した。以下同様。)、段落【0010】「図1に示すように、パッケージ100は、カテーテル104と共に連結された1つ以上の別々の部位清浄装置102を含む。・・・清浄装置102およびカテーテル104は、パッケージ100の離隔した区画に個別に密封されていてもよく、または、それらは、パッケージ100の共用区画の中に一緒に密封されていてもよい。・・・実施形態によれば、以下さらに説明するように、清浄装置102は、清浄キャップ、保護キャップまたはその両方であってもよい。」との記載からみて、パッケージの離隔した区画に個別に密封された清浄キャップは、パッケージを開くことにより、カテーテルアセンブリから取り外されるものであるから、清浄装置である清浄キャップとパッケージとは別体のものであることが示唆されている。 また、段落【0015】「 ・・・図2Aに示すように、保護キャップ200は、保護カバー202によって気密密閉されている。保護カバー202は、音波溶接、マイクロ波溶接、熱融着または他の接着技術で、保護キャップ200に取り外し可能に融着または接着されてもよい。保護カバー202は、保護キャップ200と同じ材料または異なる材料でできていてもよい。保護カバー202で保護キャップ200を密閉することを容易にするため、図2Bに示すように、保護キャップは、保護キャップ200の開口部を取り囲むリム206またはフランジの上面に配置されるエネルギーディレクタ204を含んでいる。エネルギーディレクタ204は、保護キャップ200のリム206よりも小さい横断面を有する材料の隆起したリッジまたはリブを備えている。エネルギーディレクタ204の横断面が小さいので、エネルギーディレクタが素早く融解し、保護キャップ200のリム206の全体を溶融するのに必要なエネルギーより小さいエネルギーで保護カバー202と融合することができる。・・・」と記載されていることからみて、「保護カバー」とは、清浄装置である保護キャップの開口部を取り囲むリムまたはフランジの上面に配置されるエネルギーディレクタに融合され一体化されて、保護キャップの開口部を密閉するものと解される。 さらに、保護カバーを設けずに、パッケージにより保護キャップの開口部を密閉する、すなわちパッケージが保護カバーを兼ねるような態様は、本件明細書等には記載も示唆もされておらず、また本件優先権主張の日における技術常識ということもできない。 以上の点を勘案すると、補正前の請求項1に係る発明における「保護カバー」と「パッケージ」とは異なる構成であることが明らかといえる。 そうすると、本件補正において、清浄装置について、「保護カバーによって気密密閉され、」との特定事項を削除した点は、「個別に密封された」パッケージを備え、「前記カテーテルおよび前記少なくとも1つの清浄装置のそれぞれが、前記パッケージの離隔した区画に個別に密封され」との特定事項を付加したことに含まれるということもできず、実質的に補正前の請求項1に係る発明を減縮するものであるとも解せない。 してみると、本件補正において、清浄装置について、「保護カバーによって気密密閉され、」との特定事項を削除した点は、補正前の請求項1に係る発明を拡張するものといえるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、同項に規定するその他の事項を目的とするものでないことも明らかである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 以上の理由により、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正が上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?22に係る発明は、平成28年12月9日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項10、16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明10」、「本願発明16」という。)は、それぞれ以下のとおりのものと認める。 (1)本願発明10 「【請求項10】 カテーテルを取り付ける方法であって、 カテーテルおよび少なくとも1つの清浄装置を含有するパッケージを備え、該カテーテルは、少なくとも1つのポートを有する、カテーテルアセンブリを提供することと、 前記パッケージを開いて前記少なくとも1つの清浄装置を取り外すことと、 前記カテーテルを泌尿器カテーテル挿入部位に取り付けることと、 前記ポートを前記少なくとも1つの清浄装置で清浄することを含み、 前記カテーテルおよび前記少なくとも1つの清浄装置のそれぞれは、前記パッケージの離隔した区画に個別に密封され、前記清浄装置は保護カバーにより気密密閉された保護キャップである、方法。」 (2)本願発明16 「【請求項16】 前記ポートを通してサンプルを採取することをさらに含んでいる、請求項10に記載の方法。」 第4 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明10に対する理由1は、概ね次のとおりである。 本願発明10は、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当するから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 第5 当審の判断 (1)理由1(特許法第29条第1項柱書)について (a)本願発明10について 本願発明10の「カテーテルを取り付ける方法であって、・・・前記カテーテルを泌尿器カテーテル挿入部位に取り付けることと、・・・を含み、・・・、方法。」との記載からみて、本願発明10の「カテーテルを取り付ける方法」のカテーテルを取り付ける対象は「泌尿器カテーテル挿入部位」であって、人間の泌尿器を含むことは明らかである。 さらに、本件明細書の段落【0010】「・・・清浄装置102を使用して、カテーテル104の挿入前にカテーテル挿入部位を清浄することができる。・・・」、段落【0011】「カテーテル104は、尿カテーテルまたは任意の他の種類のカテーテルを備えていてもよい。・・・」、段落【0013】「カテーテル104が設置された後、いくつかの実施形態では、このカテーテルを使用して、無菌の清浄な尿検体を、泌尿器カテーテルポートを通して採取することができる。」との記載からみても、本願発明10の「カテーテルを取り付ける方法」のカテーテルを取り付ける対象が、人間の泌尿器を含むことを示唆するものといえる。 また、本願発明10の「カテーテルを取り付ける方法」の「カテーテルを取り付ける」とは、上述のように、その取り付ける対象が「泌尿器カテーテル挿入部位」すなわち人間の泌尿器を含むこと、本願発明10を引用する本願発明16が「前記ポートを通してサンプルを採取することをさらに含んでいる」ものであることを勘案すると、カテーテルが有するポートを通して、泌尿器からサンプルを採取することを含むというのであるから、本願発明10の「カテーテルを取り付ける」は、カテーテルを人間の泌尿器カテーテル挿入部位に直接挿入することを含むといえる。 さらに、本件明細書の段落【0006】「別の実施形態は、尿検体を採取する方法に関し、方法は、カテーテルアセンブリを提供することであって、カテーテルアセンブリは、カテーテルおよび少なくとも1つの清浄キャップを含有するパッケージから成っており、カテーテルは、少なくとも1つのポートを有する、カテーテルアセンブリを提供することと、パッケージを開いて清浄キャップを取り外すことと、カテーテルを泌尿器カテーテル挿入部位に取り付けることと、前述のポートをポート清浄装置で清浄することと、ポートを通して尿サンプルを採取することと、から成る。カテーテルおよび少なくとも1つの清浄キャップは、パッケージの離隔した区画に個別に密封されている。」、段落【0011】「・・・カテーテル104の先端より前方の1つ以上の区画に配置された1つ以上の清浄装置102は、カテーテルの挿入前にカテーテル挿入部位を清浄して衛生化するように、ユーザに注意喚起する役割をする。部位を清浄した後、パッケージ100の被覆を剥がして、カテーテルの末口を露出させ、パッケージ100の中を通るカテーテルを保持することで、カテーテル104を挿入し得る。このようにして、ユーザは、挿入の間にカテーテル104に接触する必要さえないので、汚染および感染の危険をさらにいっそう減らす「ノータッチカテーテル」技術を可能にしている。」との記載は、技術常識を勘案すれば、カテーテルが尿管や膀胱などの人体内に直接挿入されることを前提として、泌尿器カテーテル挿入部位周辺の雑菌等が、挿入前のカテーテルに対して、直接的あるいはユーザの手等を介して間接的に付着することを防ぎ、尿サンプルの汚染および被サンプル者の感染の危険性を低減させることを含むものと解することができるから、本願発明10の「カテーテルを取り付ける」とは、カテーテルを人間の泌尿器カテーテル挿入部位に直接挿入することを示唆するものといえる。 してみると、本願発明10の「カテーテルを取り付ける方法」とは、人間の泌尿器に対してカテーテルを直接挿入するという医師が行う工程および人体に対する作用工程を含むものと解されるから、人間を手術、治療又は診断する方法の発明に該当する。 よって、本願発明10は、人間を手術、治療又は診断する方法に該当するから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 (b)請求人の主張について 請求人は、平成28年12月9日付けの意見書において、「請求項10を「カテーテルを取り付ける方法」に補正しました。この補正により、「カテーテルを使用する方法」ではなく、その前段階として取り付けることを明らかにしましので、特許・実用新案審査ハンドブック「特許・実用新案審査基準」付属書A 事例集22頁 3.2産業上の利用可能性 [事例11]「胃瘻チューブと栄養剤容器の接続方法」に見られる事例と同様に、人間を手術、治療又は診断する方法には該当しないと考えます。」と主張する。 しかしながら、本件特許請求の範囲および明細書等の記載をみても、本願発明10が、「カテーテルを使用する方法」ではなく、その前段階として取り付けるものに限定されたものと解すべき根拠は見出せないし、たとえ前段階で取り付けるものであったとしても、上記(a)で検討したとおり、本願発明10の「カテーテルを取り付ける方法」のカテーテルを取り付ける対象が人間の泌尿器を含み、さらに「カテーテルを取り付ける」とは、カテーテルを人間の泌尿器カテーテル挿入部位に直接挿入することを含むと解されることに鑑みると、本願発明10は、人間を手術、治療又は診断する方法の発明に該当する。 よって、請求人の主張は採用できない。 (c)小括 以上のとおり、本願発明10は、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができないものである。 (2)補正案について 請求人は、平成30年3月8日付け上申書において、「なお、上記主張に関し、さらに補正の機会を与えていただけるのであれば、本出願人は独立請求項1に対して、本願明細書段落[0011]等の記載に基づき、「前記少なくとも1つの清浄装置のそれぞれは、前記カテーテルの先端より前方または隣接して配置されたそれぞれの区画に個別に密封される」という発明特定事項を組み込み、さらに発明を限定的に減縮する補正をする準備があることを併せて申し述べる次第です。」と補正案を提示している。 しかしながら、当該補正案の前提となる平成29年10月13日付けの手続補正は、上記第2のとおり却下されたため、当該補正案はその前提を欠くものである。 念のために、当該補正案において組み込むとした「前記少なくとも1つの清浄装置のそれぞれは、前記カテーテルの先端より前方または隣接して配置されたそれぞれの区画に個別に密封される」という事項について検討しても、原査定の拒絶の理由のうち理由3(特許法第29条第2項)において提示された米国特許第4811847号明細書(例えば、FIG-2,3等を参照。)には、尿道カテーテルパッケージにおいて、消毒液含浸スポンジ13,14,15を、尿道カテーテルCの先端より前方または隣接して配置した点が開示されていることに鑑みると、当該補正案をもってしても進歩性を見出すことはできない。 第6 結び 本願発明10は、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明ないし理由について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-10-24 |
結審通知日 | 2018-10-30 |
審決日 | 2018-11-14 |
出願番号 | 特願2014-543627(P2014-543627) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(A61M)
P 1 8・ 14- Z (A61M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鶴江 陽介、佐藤 吉信、久島 弘太郎 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
芦原 康裕 内藤 真徳 |
発明の名称 | カテーテル装置および技術 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |