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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 E04B 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 E04B |
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管理番号 | 1350335 |
審判番号 | 無効2017-800136 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2017-10-13 |
確定日 | 2019-04-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3870019号発明「台輪、台輪の設置構造、台輪の設置方法及び建造物本体の設置方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第3870019号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1?10に係る発明の特許を無効とすることを求める事件であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 平成12年10月23日 本件出願(特願2000-322918号) 平成18年10月20日 設定登録(特許第3870019号) 平成29年10月13日 本件無効審判請求 平成29年12月27日 審判事件答弁書提出 平成30年 1月16日 審理事項通知(起案日) 平成30年 2月20日 請求人より口頭審理陳述要領書提出 平成30年 3月 6日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出(差出日) 平成30年 3月23日 口頭審理 第2 本件発明 本件特許の請求項1?10に係る発明(以下「本件発明1」などといい、これらの発明をまとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 アンカーボルトを介して結合される布基礎と該布基礎上に構築される建造物本体との間に介在させるとともに、前記布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される台輪において、 前記布基礎天端面に該布基礎の長手方向に沿って配置される台輪本体と、 前記台輪本体をその幅方向に貫通するようにして形成された換気孔と、 前記台輪本体に上下方向に貫通し且つ、該台輪本体の長手方向に細長い形状に形成されたアンカーボルト挿通用のアンカー用長孔とを備え、 台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられていること を特徴とする台輪。 【請求項2】 請求項1記載の台輪において、 テーパ部は、下面の両縁部に設けられていること を特徴とする台輪。 【請求項3】 請求項1または2記載の台輪において、 前記台輪本体が、台輪の上下面を構成する板状の上部面部材及び下面部材と、これら上上面部材の間に設けられて、前記換気孔を仕切る仕切り壁部とを備え、 前記布基礎に前記台輪本体を固定するための釘を挿通させるための釘孔が、前記台輪本体の上下面部材と仕切り壁部を上下に貫通するように形成されていることを特徴とする台輪。 【請求項4】 天端面に台輪本体を設置する際の位置合わせマークが設けられた布基礎上に設置される請求項1?3のいずれかに記載の台輪において、 前記台輪本体には、前記位置合わせマークに合致させて前記台輪本体を布基礎上に位置決めする位置決めマークが設けられていること を特徴とする台輪。 【請求項5】 請求項1?4のいずれか記載の台輪において、台輪本体の上面には、該台輪本体上に設置される土台又は半土台の端部を合わせて位置決めする端部位置合わせマークが設けられていることを特徴とする台輪。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか記載の台輪において、 前記台輪本体の長手方向の両端部には、長手方向に連続して配置される前記台輪本体の端部どうしを互いに長さ方向に嵌合して接続する接続部が設けられていることを特徴とする台輪。 【請求項7】 天端面に台輪本体を設置する際の位置合わせマークが設けられた布基礎と該布基礎上に構築された建造物本体とがアンカーボルトを介して結合され、これら布基礎と建造物本体との間に、請求項4記載の台輪が前記布基礎上に敷き込まれた状態で介在させた台輪の設置構造において、 前記アンカー用長孔に前記アンカーボルトが挿通され、 前記位置決めマークが前記位置合わせマークに合致していることを特徴とする台輪の設置構造。 【請求項8】 布基礎と該布基礎上に構築された建造物本体とがアンカーボルトを介して結合され、これら布基礎と建造物本体との間に、請求項6記載の台輪が前記布基礎上に敷き込まれた状態で介在されるとともに、前記布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置された台輪の設置構造において、 前記アンカー用長孔に前記アンカーボルトが挿通され、 前記建造物本体は前記台輪上に、端部を前記端部位置合わせマークに合わせた状態で設置されていることを特徴とする台輪の設置構造。 【請求項9】 請求項4記載の台輪を、上部の建造物本体と接合するアンカーボルトを備えた布基礎上に敷き込んで設置する台輪の設置方法において、 台輪本体は、アンカー用長孔にアンカーボルトを挿通させ、且つ、前記位置決めマークを前記布基礎天端面の位置合わせマークに合致させて前記布基礎天端面上に敷き込むことを特徴とする台輪の設置方法。 【請求項10】 布基礎上に敷き込まれるとともに、前記布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置された請求項5記載の台輪上に建造物本体を設置する建造物本体の設置方法であって、 前記布基礎上に敷き込まれた台輪の前記端部位置合わせマークに端部を合わせて、建造物本体を設置することを特徴とする建造物本体の設置方法。」 第3 請求人の主張 請求人は、本件特許の請求項1?10に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、概ね以下のとおり主張している(審判請求書(以下「請求書」という。)、平成30年2月20日付け口頭審理陳述要領書(以下「請求人陳述書」という。)を参照。)。また、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出している。 1 無効理由の概要 (1)無効理由1 本件特許の請求項1?10に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された甲第1号証?甲第3号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証?甲第18号証)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2)無効理由2 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1?10の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 (第1回口頭審理調書) <証拠方法> 提出された証拠は、以下のとおりである。 甲第1号証:実願昭58-74578号(実開昭59-181103号)のマイクロフィルム 甲第2号証:実願平4-55570号(実開平6-10413号)のCD-ROM 甲第3号証:実願昭56-59783号(実開昭57-172810号)のマイクロフィルム 甲第4号証:実願昭58-111992号(実開昭60-19601号)のマイクロフィルム 甲第5号証:特開平9-13392号公報 甲第6号証:特開平8-319676号公報 甲第7号証:実願平4-19370号(実開平5-83102号)のCD-ROM 甲第8号証:「広辞苑」、第5版、株式会社岩波書店、1998年11月11日、第2631頁 甲第9号証:「図解 機械用語辞典」、20版、日刊工業新聞社、昭和54年12月20日、第555頁 甲第10号証:Wikipedia「面取り」、[online]、[2017年10月4日検索]、インターネット<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%A2%E5%8F%96%E3%82%8A> 甲第11号証:実公平7-24486号公報 甲第12号証:特開平7-173897号公報 甲第13号証:特開平10-237877号公報 甲第14号証:実願昭63-148978号(実開平2-68910号)のマイクロフィルム 甲第15号証:実願昭51-30686号(実開昭52-122510号)のマイクロフィルム 甲第16号証:実公昭45-28050号公報 甲第17号証:実願昭51-95202号(実開昭53-14311号)のマイクロフィルム 甲第18号証:特開平10-219856号公報 2 具体的な理由 (1)無効理由1について ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明」という。)との対比 本件発明1と甲1発明は、 「アンカーボルトを介して結合される布基礎と該布基礎上に構築される建造物本体との間に介在させるとともに、前記布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される台輪において、 前記布基礎天端面に該布基礎の長手方向に沿って配置される台輪本体と、 前記台輪本体に上下方向に貫通し且つ、該台輪本体の長手方向に細長い形状に形成されたアンカーボルト挿通用のアンカー用長孔とを備えている 台輪。」 の点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本件発明1は、「台輪本体をその幅方向に貫通するようにして形成された換気孔」を備えているのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 (相違点2) 本件発明1は、「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 ここで、布基礎の長手方向に沿って台輪を複数隣接して配置することは、甲1発明のほか、甲第2号証(甲2発明)にも記載されており、また、台輪本体を長方形(長尺板状)に形成することは、甲1のほか、甲第2号証?甲第5号証にも記載されているとおり周知の技術にすぎないことから、実質的な相違点とはいえない。 (請求書18頁2行?下から6行) (イ)相違点に関する容易想到性について a 相違点1について 甲第3号証には、長手方向に沿つて所定間隔をおきながら換気孔が複数個形成されている台輪(甲3発明)が記載されていることから、相違点1の「前記台輪本体には、換気孔が前記台輪本体の幅方向に貫通するようにして形成されている」ことは、甲3発明から、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 これに対し、被請求人は、「甲1発明の台座は第3図で示されるとおり、一定の間隔を空けて配置されることで、基礎3と土台4間に等間隔の通気孔を設けるものである(甲第1号証明細書3頁4?5行、第3図)。従って、甲1発明の台座はそのままで通気孔が確保されるものであるから、あえて甲1発明の台座の形状を改変し、甲第3号証に開示された換気孔をさらに設ける動機付けは存在しない。」と主張する(審判事件答弁書第6頁第4?10行)が、甲1発明の台座のように、一定の間隔を空けて配置される台座においても、間隔を空けることなく配置される台座と同様に、通気部を設けて通気性を持たせるようにする要請は存在し、一般的に行われていること(例えば、甲第13号証(除湿溝13)、甲第14号証(通風溝)及び甲第15号証(アルミ合金枠体2)。)であることから、甲1発明の台座に、甲第3号証に開示された換気孔をさらに設ける動機付けは存在しないとの被請求人の主張は失当である。 また、被請求人は、「甲1発明に相違点1の構成(甲第3号証の記載)である『台輪本体をその幅方向に貫通するようにして形成された換気孔』を設けてしまうと、楔状突部tを設ける側壁1面と、楔状凹部hを設ける側壁1面が『換気孔』が設けられた面となってしまい、甲1発明の意図する効果を奏さなくなる。従って、この点でも、甲1発明に相違点1の構成(甲第3号証の記載)を適用する動機付けはない。」と主張する(審判事件答弁書第6頁第28行?第7頁第6行)が、甲第1号証の実用新案登録請求の範囲には、「基盤1の片側壁に突部tを突設すると共に反対側壁には該突部と係合する凹部hを形成し」と記載されているとおり、突部t及び凹部hを形成する側壁は、二方の各側壁に限定されず、一方の各側壁の場合もあること、さらに、突部t及び凹部hを形成する側壁が二方の各側壁であるとしても、突部t及び凹部hにかからないように換気孔を形成することは可能であることから、上記被請求人の主張に基づいて、甲1発明に相違点1の構成(甲第3号証の記載)を適用する動機付けはないとする被請求人の主張は失当である。 (請求書18頁下から4行?19頁1行、請求人陳述書3頁下から2行?4頁下から2行) b 相違点2について 種々の成型品等において、成型品等の稜線に人が接触して怪我をしないようにすること等を目的として、C面(斜面)やR面(丸面)からなる面取りを施すことは、本件出願前に一般的に行われていた周知の技術にすぎない(例えば、甲第6号証?甲第10号証参照。)。 そうであれば、甲1発明において、面取り(C面(斜面))を施すことは、当業者が容易になし得る事項であるといえる。なお、さらに付言すれば、甲第6号証?甲第7号証に記載のものは、土木・建築業界に関する技術であるので、甲第6号証?甲第7号証に記載された技術を、甲1発明に適用することに困難性があるとは到底いえない。 ここで、本件発明1は、「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」ことによる作用効果として、「台輪本体を設置する基礎の基礎天端面に、該天端面において台輪本体の側縁部下方に位置する部分に上方に突出する凸部が形成されていても凸部になんら干渉させることなく、前記台輪本体を略水平な状態で前記基礎の天端面に設置することができる。」ことを挙げているが、本件発明1には、テーパ部の具体的な形状(大きさ)等が特定されていないことから、当該「テーパ部」と「面取り(C面(斜面))」との間に構成上の差異は認められない。 よって、相違点2は、上記周知技術に基づいて、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 これに対し、被請求人は、「相違点2の構成は甲第6?10号証にそもそも開示されていない。」と主張する(審判事件答弁書第7頁第8行)が、甲第6号証の第1頁の図には、両端部にR面(丸面)からなる面取りを施した防水材3が、また、甲第7号証の図1及び図5には、両端部の下面にC面(斜面)からなる面取りを施したスペーサ1が、それぞれ記載されている。 また、被請求人は、「本件発明1の台輪のような部材において、さらに、『台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている』ような特定の位置、特定の形状を有するテーパ部を設けることは一切開示されていない。従って、甲第6?10号証には相違点2の構成(台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている)の開示がなく、甲1発明に甲第6?10号証に開示された事項を適用しても、相違点2の構成は想到されない。」と主張する(審判事件答弁書第8頁第8?17行)が、周知技術を示す文献として新たに提示する甲第16号証の第2図及び第3図には、下面の両端部にC面(斜面)からなる面取りを施した基礎4と木材3との間に設けられる合成樹脂製の基台2が、また、甲第17号証の第1図には、下面の両端部にC面(斜面)からなる面取りを施した基礎3と土台2との間に設けられるプラスチック等非腐蝕体4が、それぞれ記載されている。 したがって、甲第16号証に記載された合成樹脂製の基台2及び甲第17号証に記載されたプラスチック等非腐蝕体4は、本件発明1の構成要件中「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」構成を備えており、当該部材に施されたC面(斜面)からなる面取りが、布基礎の天端面の側縁部上方に位置するように配置された場合、本件発明1が奏するとされる作用効果と同等の作用効果を奏するものと認められる。 よって、相違点2は、上記周知技術に基づいて、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 (請求書19頁3行?22行、請求人陳述書5頁1行?8頁4行) イ 本件発明2について 本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?2のほか、次の点で相違する。 (相違点3) 本件発明2は、「テーパ部は、下面の両縁部に設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 相違点3について検討すると、上記ア(イ)bのとおり、C面(斜面)やR面(丸面)からなる面取りは、成型品等の稜線に人が接触して怪我をしないようにすること等を目的として施されるものであることから、上記周知技術(甲第6号証?甲第10号証及び甲第16号証?甲第17号証)に基づいて、下面の両縁部に面取り(C面(斜面))を設けることは、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 (請求書20頁5行?14行、請求人陳述書8頁12行?15行) ウ 本件発明3について 本件発明3と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?3のほか、次の点で相違する。 (相違点4) 本件発明3は、「台輪本体が、台輪の上下面を構成する板状の上面部材及び下面部材と、これら上下面部材の間に設けられて、前記換気孔を仕切る仕切り壁部とを備え、前記布基礎に前記台輪本体を固定するための釘を挿通させるための釘孔が、前記台輪本体の上下面部材と仕切り壁部を上下に貫通するように形成されている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 相違点4について検討すると、甲第1号証には、「方形若しくは長方形基盤1の板面中央部に、平面略太十字状をなすアンカーボルト2の挿通孔Hを穿ち・・・前記挿通孔の周辺に釘孔rを穿設した建築における基礎と土台間に介装する台座」(甲1発明)が記載されており、甲第3号証には、長手方向に沿つて所定間隔をおきながら換気孔が複数個形成されている台輪(甲3発明)、すなわち、台輪の上下面を構成する板状の上面部材及び下面部材と、これら上下面部材の間に設けられて、換気孔を仕切る仕切り壁部とを備えることが記載されており、釘孔を釘が効きやすい中実部に形成することは、当業者が当然考慮する事項であることから、相違点4の「前記布基礎に前記台輪本体を固定するための釘を挿通させるための釘孔が、前記台輪本体の上下面部材と仕切り壁部を上下に貫通するように形成されている」ことは、甲3発明から、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 また、相違点4は、甲第1号証(釘孔r)のほか、甲第18号証(釘孔8a、8b)にも記載されているように、周知の技術であり、甲1発明と甲3発明とを組み合わせることに、何ら阻害要因はないことから、相違点4は、甲1発明及び甲3発明並びに上記周知技術(甲第18号証)に基づいて、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 (請求書21頁1行?22行、請求人陳述書8頁17行?22行) エ 本件発明4について 本件発明4と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?4のほか、次の点で相違する。 (相違点5) 本件発明4は、「天端面に台輪本体を設置する際の位置合わせマークが設けられ」るとともに、「前記台輪本体には、前記位置合わせマークに合致させて前記台輪本体を布基礎上に位置決めする位置決めマークが設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 相違点5について検討すると、建築構造物及び建築部材に、位置合わせマーク及び位置決めマークを設けることは、本件出願前の周知の技術にすぎない(例えば、甲第11号証?甲第12号証参照。)。 そうであれば、相違点5の「天端面に台輪本体を設置する際の位置合わせマークが設けられ」るとともに、「前記台輪本体には、前記位置合わせマークに合致させて前記台輪本体を布基礎上に位置決めする位置決めマークが設けられている」ことは、上記周知技術から、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 これに対し、被請求人は、甲第11号証及び甲第12号証に記載の技術(もの)と、甲1発明とは、その形状も異なり、適用箇所も部材の種類も大きく異なるので、甲1発明に甲第11号証及び甲第12号証の開示事項を適用する動機付けはなく、また、適用したとしても相違点5の構成にはならないと主張する(審判事件答弁書第12頁第24行?)。 しかしながら、建築構造物及び建築部材に、位置合わせマーク(「墨出し」(建築工事において、工事の進行に必要な線・形や寸法を表示することをいい、本件では、大工が墨つぼを用いて墨で基礎の上面に目印としての基準線を引くことをいう。))及び位置決めマークを設けることは、甲第11号証?甲第12号証に記載されているように、本件出願前の周知の技術にすぎない。 そして、当該周知技術は、位置合わせ及び位置決めを目的として、部材や適用箇所等に関わらず、転用可能な技術であるといえる。 そうであれば、相違点5は、上記周知技術から、当業者が容易になし得る事項であるといえる。下記相違点6?10も同様である。 (請求書22頁4行?19行、請求人陳述書8頁下から3行?9頁12行) オ 本件発明5について 本件発明5と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?5のほか、次の点で相違する。 (相違点6) 本件発明5は、「台輪本体の上面には、該台輪本体上に設置される土台又は半土台の端部を合わせて位置決めする端部位置合わせマークが設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 相違点6について検討すると、建築構造物及び建築部材に、位置合わせマーク及び位置決めマークを設けることは、本件出願前の周知の技術にすぎない(例えば、甲第11号証?甲第12号証参照。)。 そうであれば、相違点6の「台輪本体の上面には、該台輪本体上に設置される土台又は半土台の端部を合わせて位置決めする端部位置合わせマークが設けられている」ことは、上記周知技術から、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 (請求書23頁3行?16行) カ 本件発明6について 本件発明6と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?6のみで相違し、甲第1号証には、「方形若しくは長方形基盤1の板面中央部に、平面略太十字状をなすアンカーボルト2の挿通孔Hを穿ち且つ基盤1の片側壁に突部tを突設すると共に反対側壁には該突部と係合する凹部hを形成し然して前記挿通孔の周辺に釘孔rを穿設した建築における基礎と土台間に介装する台座。」が記載されており、当該「突部t」及び「凹部h」は、本件発明6の「(前記台輪本体の長手方向の両端部に設けられている)長手方向に連続して配置される前記台輪本体の端部どうしを互いに長さ方向に嵌合して接続する接続部」に相当するものと認められる。 (請求項24頁1行?18行) キ 本件発明7について 本件発明7と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?6のほか、次の点で相違する。 (相違点7) 本件発明7は、「アンカー用長孔に前記アンカーボルトが挿通され、前記位置決めマークが前記位置合わせマークに合致している」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 相違点7について検討すると、建築構造物及び建築部材に、位置合わせマーク及び位置決めマークを設けることは、本件出願前の周知の技術にすぎない(例えば、甲第11号証?甲第12号証参照。)。 そうであれば、相違点7の「アンカー用長孔に前記アンカーボルトが挿通され、前記位置決めマークが前記位置合わせマークに合致している」ことは、上記周知技術から、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 (請求項24頁21行?25頁8行) ク 本件発明8について 本件発明8と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?6のほか、次の点で相違する。 (相違点8) 本件発明8は、「アンカー用長孔に前記アンカーボルトが挿通され、前記建造物本体は前記台輪上に、端部を前記端部位置合わせマークに合わせた状態で設置されている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 相違点8について検討すると、建築構造物及び建築部材に、位置合わせマーク及び位置決めマークを設けることは、本件出願前の周知の技術にすぎない(例えば、甲第11号証?甲第12号証参照。)。 そうであれば、相違点8の「アンカー用長孔に前記アンカーボルトが挿通され、前記建造物本体は前記台輪上に、端部を前記端部位置合わせマークに合わせた状態で設置されている」ことは、上記周知技術から、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 (請求項25頁18行?26頁7行) ケ 本件発明9について 本件発明9と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?5のほか、次の点で相違する。 (相違点9) 本件発明9は、「台輪本体は、・・・前記位置決めマークを前記布基礎天端面の位置合わせマークに合致させて前記布基礎天端面上に敷き込む」ようにしているのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 相違点9について検討すると、建築構造物及び建築部材に、位置合わせマーク及び位置決めマークを設けることは、本件出願前の周知の技術にすぎない(例えば、甲第11号証?甲第12号証参照。)。 そうであれば、相違点9の「台輪本体は、・・・前記位置決めマークを前記布基礎天端面の位置合わせマークに合致させて前記布基礎天端面上に敷き込む」ことは、上記周知技術から、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 (請求項26頁17行?27頁4行) コ 本件発明10について 本件発明10と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?6のほか、次の点で相違する。 (相違点10) 本件発明10は、「布基礎上に敷き込まれた台輪の前記端部位置合わせマークに端部を合わせて、建造物本体を設置する」ようにしているのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 相違点10について検討すると、建築構造物及び建築部材に、位置合わせマーク及び位置決めマークを設けることは、本件出願前の周知の技術にすぎない(例えば、甲第11号証?甲第12号証参照。)。 そうであれば、相違点10の「布基礎上に敷き込まれた台輪の前記端部位置合わせマークに端部を合わせて、建造物本体を設置する」ことは、上記周知技術から、当業者が容易になし得る事項であるといえる。 (請求項27頁14行?28頁1行) サ 被請求人が追加した相違点3、4、9、11、14について(下記第4の1(1)ア、エ、オ、(6)、(8)、(10)) 被請求人は、「甲第1号証に具体的に開示されている台座は、第1図にも示されている通り方形である。」と主張する(審判事件答弁書第4頁第5?6行)。 しかしながら、甲第1号証の実用新案登録請求の範囲には、「方形若しくは長方形基盤1」と記載されているとおり、台座の形状は、「方形」に限定されず、「長方形」の場合もあることから、甲第1号証に記載された発明は、本件発明1の構成要件中「該台輪本体の長手方向に細長い形状に形成されたアンカーボルト挿通用のアンカー用長孔」の構成を備えるものである。 また、被請求人は、「甲第1号証には甲1発明の構成中『布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される』構成を備えない。」と主張する(審判事件答弁書第5頁第9?10行)。 しかしながら、甲第1号証の第4図には、基礎が交わる角部の施工に関する記載ではあるが、布基礎の直線部分において台座を長手方向に隣接して配置することが記載されており、また、台座を長手方向にどのように配置するかは、アンカーボルトの位置に加え、台座の支持力を考慮して行う(台座の支持力が不足する場合は、当然に、複数の台座を隣接して配置することになる。ちなみに、甲第1号証の第3頁第12?20には、「基盤1の片側壁に楔状突部t、反対側壁に該突部と係合する楔状凹部hが形成されてあるので基礎3及び土台4が長間であつたり、或はこれらが平面鍵形若しくはT字形に構成されてある場合は第4図に示したように上記突部と凹部を順次係合して接続することにより耐荷力を増大したり各形状に順応して介在固着せられる利点をも具有するものである。」との記載があり、当該事項が示唆されている。)設計的な事項と認められることから、甲第1号証に記載された発明は、本件発明1の構成要件中「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される」構成を備えるものである。 この点に関し、本件発明1は、「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される台輪」と特定しているだけで、台輪間には通気孔となる間隙を一切設けない構成を特定したものではないと認められるが、仮に、当該構成を特定するものであるとしても、当該構成は、甲第3号証のほか、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証にも記載されているように、周知の技術であり、また、甲1発明とこの周知技術とを組み合わせることに、何ら阻害要因はない。 よって、被請求人が主張する相違点3及び4(審判事件答弁書第5頁第13?19行)は、相違点とはいえない。また、被請求人が主張する相違点9、11及び14(審判事件答弁書第15頁第13行?)についても同様である。 (請求人陳述書2頁16行?3頁下から4行、8頁7行?10行) (2)無効理由2について 本件発明1は、「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」ことによる作用効果として、「台輪本体を設置する基礎の基礎天端面に、該天端面において台輪本体の側縁部下方に位置する部分に上方に突出する凸部が形成されていても凸部になんら干渉させることなく、前記台輪本体を略水平な状態で前記基礎の天端面に設置することができる。」ことを挙げているが、本件発明1には、テーパ部の具体的な形状(大きさ)等が特定されていないことから、単に、「テーパ部」を設けることによって、明細書記載の作用効果が奏せられるかどうか明らかでない。 ちなみに、上記(1)ア(イ)bにおいて、種々の成型品等において、成型品等の稜線に人が接触して怪我をしないようにすること等を目的として、C面(斜面)やR面(丸面)からなる面取りを施すことは、本件出願前に一般的に行われていた周知の技術にすぎない(例えば、甲第6号証?甲第10号証参照。)ことを述べたが、本件発明1の「テーパ部」と「面取り(C面(斜面))」との間に構成上の差異があるのかどうかも明らかでない。 (請求項28頁14行?29頁1行) 第4 被請求人の主張 被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成29年12月27日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)、平成30年3月6日差出口頭審理陳述要領書(以下「被請求人陳述書」という。)を参照。)。また、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出している。 <証拠方法> 提出された証拠は、以下のとおりである。 乙第1号証:訂正2017-390041号審決 乙第2号証:「広辞苑」、第6版、株式会社岩波書店、2013年2月12日、第2172頁 1 無効理由1について (1)本件発明1について ア 相違点の追加について 本件発明1と甲1発明に請求人主張の相違点1及び相違点2が存することは認めるが、以下のとおり、他にも相違点がある。 甲第1号証に具体的に開示されている台座は、第1図にも示されている通り方形であるので、長手方向、短手方向の区別がなく、本件発明1の構成要件中「該台輪本体の長手方向に細長い形状に形成されたアンカーボルト挿通用のアンカー用長孔」の構成を有さない。 また、甲第1号証に具体的に開示されている台座は、第3図に示されているとおり、布基礎の直線部分において、アンカーボルトの挿入部分にのみ設置される。これは、基礎3と土台4間に等間隔の通気孔を設けるためである(甲第1号証明細書3頁4?5行)。甲第1号証のような方形(短尺)の台座を用いる場合、床下換気のために必ず換気孔(通気孔)を設ける必要があるから、甲第1号証の台座は必然的に第3図に示されるような設置方法となる。なお、甲第1号証の第4図には、平面鍵形若しくはT字形の基礎に配置する場合は突部と凹部を順次係合して接続することが記載されているが(甲第1号証明細書3頁15?17行)、第4図は基礎が交わる角部の施工に関する記載であり、布基礎の直線部分において甲第1号証の台座を長手方向に隣接して配置することは具体的に開示されていない。 従って、甲第1号証には甲1発明の構成中「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される」構成を備えない。 よって、請求人が認める相違点1、2に加えて、以下の点においても本件発明1と甲1発明は相違する。 (相違点3)(審決注;被請求人が追加した相違点) 本件発明1のアンカーボルト挿通用のアンカー用長孔は「台輪本体の長手方向に細長い形状に形成された」ものであるのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 (相違点4)(審決注;被請求人が追加した相違点) 本件発明1の台輪は「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 (答弁書4頁3行?5頁末行) イ 相違点1(審決注;請求人の相違点1と同じ)について 甲第3号証に記載の構成を甲1発明へ適用する動機付けがあるとする点を争う。 まず、甲1発明の台座は第3図で示されるとおり、一定の間隔を空けて配置されることで、基礎3と土台4間に等間隔の通気孔を設けるものである(甲第1号証明細書3頁4?5行、第3図)。従って、甲1発明の台座はそのままで通気孔が確保されるものであるから、あえて甲1発明の台座の形状を改変し、甲第3号証に開示された換気孔をさらに設ける動機付けは存在しない。また、甲第13乃至15号証の記載から、一定の間隔を空けて配置されるものではなく、形状が全く違う甲第3号証の換気孔の形状を甲1発明の台座に適用できるとの動機付けや技術常識は認められず(現に甲第13乃至15号証には甲第3号証のような換気孔の形状は一切記載がない)、甲1発明に甲第3号証の記載を適用する動機付けにはならない。 甲1発明の台座は、「平面鍵形若しくはT字形の場合自由に接続して介在固着し得られ」る効果も奏する(甲第1号証明細書1頁「3考案の詳細な説明」本文5?6行)。そして、甲1発明の台座は「基盤1の片側壁に楔状突部t、反対側壁に該突部と係合する楔状凹部hが形成されてあるので基礎3及び土台4が長間であつたり、或はこれらが平面鍵形若しくはT字形に構成されてある場合は第4図に示したように上記突部と凹部を順次係合して接続することにより耐荷力を増大したり各形状に順応して介在固着せられる利点をも具有するのである。」(甲第1号証明細書3頁下から9?末行)と記載されている。さらに、「下地材の張設に際しては基盤側壁の突部が測定具の用を兼ねる」(甲第1号証明細書4頁4?5行)との効果も記載されている。上記記載から明らかなとおり、甲1発明の台座は4面の側壁のうち、隣り合う2面の側壁に楔状突部tを設け、当該側壁2面と対向する残り2面の側壁に楔状凹部hを設けるものである。これによって、平面鍵形若しくはT字形であっても、「突部と凹部を順次係合して接続する」ことが可能となる。また、「基盤側壁の突部が測定具の用を兼ねる」ことも可能となる。なお、請求人が主張するように、一方の各側壁のみに突部及び凹部がある台座であって、かつ、上記各作用効果を奏するような台座は甲第1号証に開示されていないし、当業者が甲第1号証の記載から記載されているのと同様のものとして把握することはできない。そして、甲1発明に相違点1の構成(甲第3号証の記載)である「台輪本体をその幅方向に貫通するようにして形成された換気孔」を設けてしまうと、楔状突部tを設ける側壁1面と、楔状凹部hを設ける側壁1面が「換気孔」が設けられた面となってしまい、甲1発明の意図する効果を奏さなくなる。 従って、この点でも、甲1発明に相違点1の構成(甲第3号証の記載)を適用する動機付けはない。 (答弁書6頁2行?7頁6行、被請求人陳述書10頁2行?12頁末行) ウ 相違点2(審決注;請求人の相違点2と同じ)について 相違点2の構成は甲第6?10号証にそもそも開示されていない。 甲第6号証には、防水材3が記載されているが、当該防水材3は「ロール状に巻回されたシート状」であり(段落【0013】)、甲1発明の台輪とは異なり、巻回しできる程度の薄いシートにすぎず、「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」構成はどこにも開示されていない。 甲第7号証には、スペーサー1が記載されているが、当該スペーサー1は、予め布基礎仮枠(3)に固定され(段落【0006】)、その後に生コンクリートを打設するものである(段落【0007】)。コンクリートはスペーサー1を覆うように固化し(【図5】)、スペーサー1とコンクリートは一体化する。一方、本件発明1の台輪も、甲1発明の台座も、打設後の布基礎上に設置するものであって、甲第7号証のスペーサー1とは設置方法がそもそも異なる。本件発明1の台輪は「布基礎の長手方向に沿って配置される」ものであり、基礎上に敷き込まれるものである(本件明細書段落【0039】、【0040】参照)。従って、甲第7号証には、本件発明1の「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」構成は開示されていない。 甲第8号証、甲第9号証及び甲第10号証には、「面取り」の意味が記載されているが、「面取り」の対象は「建築部材」(甲第8号証)、「鋳物」(甲第9号証)、「鋼材、木工」(甲第10号証)等抽象的な記載にとどまり、本件発明1の台輪のような部材に対してテーパ部を設けることは何ら開示されていない。 甲第16号証について、請求人は、「甲第16号証の第2図及び第3図には、下面の両端部にC面(斜面)からなる面取りを施した基礎4と木材3との間に設けられる合成樹脂製の基台2が…記載されている」(請求認要領書5頁18?22行)と主張するが、甲第16号証は「建築物用根太」に関する考案であって、基台2を材木に嵌め合わせて一体とした上で、「根太」(床板をうけるために床下にわたす横木(乙第2号証[広辞苑第6版2172頁])として用いられるものである。つまり、基台2は根太として使用する材木の付属品であって、材木と独立して基礎と土台との間に介挿される甲1発明の台座とは用途・用法が異なる部材である。従って、甲第16号証の基台2に関する事項を甲1発明の台座に適用する前提を欠く。さらに、甲第16号証の基台2が図面記載のような形状をしている技術的意義については一切説明がない。技術的な意義が不明な形状を甲1発明の台座に適用する動機付けは存在しない。また、甲第16号証の基台2において被告が「C面(斜面)」と主張する部分は、コンクリート基礎4や木材3から幅方向にはみ出した部分の下部であり(第1図、第3図参照)、コンクリート基礎3や土台4から幅方向にはみ出さない甲1発明の台座には存在しない部分の形状である。このような甲1発明の台座には存在しない形状を、位置を変えてまでして甲1発明の台座に適用する動機付けは存在しない。さらに、仮に甲1発明に甲第16号証の基台2の形状を適用する動機付けを検討する場合であっても、上記のとおり基台2の形状の各部位の技術的意義は一切明らかではないのであるから、基台2の形状全体の適用が検討されるべきものである。請求人が主張するような形状の一部(請求人が「C面(斜面)」と主張する部分)のみを切り出して適用を検討すべき理由はない。この場合、甲第16号証の第1図及び第3図にあるように、嵌合溝1を設けて材木3に嵌める構成全ての甲1発明への適用が検討されるべきものである。そして、甲第16号証の基台2においては、嵌合溝1を形成する側壁部分が基礎や材木の幅方向から突出しており、請求人が「C面(斜面)」と主張する部分は側壁部分の下部である。基台2の形状全体が甲1発明の台座に適用されるとすれば、台座の側壁の2面が嵌合溝を構成するように上部に突出することとなり、甲第1号証の第4図のような順次係合接続ができなくなり、甲1発明の台座は「平面鍵形若しくはT字形に構成されてある場合は第4図に示したように上記突部と凹部を順次係合して接続する」の作用を奏することができなくなる。よって、組合せの阻害要因が存在し、甲第16号証の基台2の形状を甲1発明の台座に組み合わせる動機付けは認められない。 甲第17号証について、請求人は、「甲第17号証の第1図には、下面の両端部にC面(斜面)からなる面取りを施した基礎3と土台2との間に設けられるプラスチック等非腐食体4が…記載されている」(請求人要領書5頁20?22行)と主張するが、甲第17号証の明細書にはプラスチック等非腐食体4の構成について「嵌合」(明細書1頁12行)するものであって、「防蟻効果をも得られるべき形状」(明細書2頁5?7行)と記載されているが、それ以上に具体的な形状は記載されていない。また、仮に甲第17号証の図面のみによって形状を認定することが許されるとしても、基礎3と垂直方向から見ても(第1図)、基礎3と水平方向から見ても(第2図)、非腐食体4は同じような形状をしている。図面の記載から、非腐食体4に本件発明1のテーパ部のような形状が開示されているとは認めがたく、むしろ、非腐食体4は円錐台形状と見るのが自然である(なお、図面からこのように解釈したとしても、さらに、かかる非腐食体を「嵌合」するにはどのような形状とすればいいかは定かではない)。よって、非腐食体4の形状は定かではないが、少なくとも、甲第17号証に、相違点2にかかる構成「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」の開示がないことは明らかである。また、甲1発明の台座は「平面鍵形若しくはT字形に構成されてある場合は第4図に示したように上記突部と凹部を順次係合して接続する」作用を有する。仮に甲第17号証の非腐食体4が円錐台のような形状であるとすると、これを甲1発明の台座に組み合わせると、甲1発明の台座の側壁に設けられた突部と凹部を順次係合することができなくなる。よって、阻害要因が存在し、甲第17号証の非腐食体4の形状を甲1発明の台座に組み合わせる動機付けもない。 従って、甲第6?10号証、甲第16、17号証には相違点2の構成(台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている)の開示がなく、甲1発明に甲第6?10号証、甲第16、17号証に開示された事項を適用しても、相違点2の構成は想到されない。 (答弁書7頁8行?8頁17行、被請求人陳述書3頁下から3行?6頁12行) エ 相違点3(審決注;被請求人が追加した相違点)について 甲1発明の台座は方形(短尺)であり、長手・短手の区別がない。従って、相違点3にかかる構成を具備するには、その前提として甲1発明の台座を長方形(長尺板状)とする必要がある。 請求人は、相違点3を明示しないものの、これに関連し「台輪本体を長方形(長尺板状)に形成することは、甲1のほか、甲第2号証?甲第5号証にも記載されているとおり周知の技術にすぎないことから、実質的な相違点とはいえない。」(審判請求書18頁21?24行)と述べている。また、請求人は、「甲第1号証の実用新案登録請求の範囲には、『方形若しくは長方形基盤1』と記載されているとおり、台座の形状は、『方形』に限定されず、『長方形』の場合もある」ことから、相違点3は認められないと反論する(請求人要領書2頁下から7?3行)が、甲第1号証に具体的に開示されている台座は第1図、第4図等で記載されているような「方形」(短尺)のもののみである。長方形の台座であって、甲第1号証に記載されている効果(「平面鍵形若しくはT字形の場合各台座を自由に接続して介在固着し得られ」(甲第1号証明細書1頁下から4?3行)、「平面鍵形若しくはT字形に構成されてある場合…上記突部と凹部を順次係合して接続する」(同明細書3頁下から6?3行)、「下地材の張設に際しては基板側壁の突部が測定具の用を兼ねる」(同明細書4頁4?5行))を奏するような具体的な構成は一切開示がないし、甲第1号証の開示からその構成を容易に理解することはできない。当業者が甲第1号証の開示に接した場合は、当該考案の効果を奏する構成をもって、開示されている発明(考案)として把握する。公報中の従来技術の記載を引用例とする場合等は別として、実用新案公報に開示された当該考案の内容を主引例とする場合にあえて当該考案の効果を奏さない構成、奏するかどうか分からない構成を主引例として把握するというのは不自然である。そのような主引例の把握は、本件発明1を見た上での後知恵であって失当である。よって、請求人指摘の実用新案登録請求の範囲の記載にかかわらず、本件発明1と甲1発明は相違点3の構成において相違する。また、甲1発明の台座のアンカーボルト用の挿通孔Hは「平面略太十字状」であるが、仮に甲1発明の台座が「長方形」であったとしても、これに応じて挿通孔Hを「台輪本体の長手方向に細長い形状に形成」するという構成は一切開示がない。さらに、甲1発明の台座は「予め基盤1の挿通孔Hよりアンカーボルト2をその下端の向きに応じて挿入して該下端をコンクリート基礎3中等間隔に埋設して基盤1を載置」(甲1明細書2頁下から5?2行)するというのであるから、挿通孔Hはアンカーボルトが挿入するだけの大きさがあれば足り、第1図や明細書中に記載されている「平面略太十字状」から変更する必要はなく、相違点3の構成にする動機付けを欠く。 甲第2?5号証に台輪本体を長方形(長尺板状)に形成することが開示されていることは争わない。しかし、甲第1号証において、発明の効果を奏する構成として具体的に開示があるのは方形の台座のみである。特に、平面鍵形若しくはT字形であっても「突部と凹部を順次係合して接続する」ことができるのは、甲1発明の台座が方形であり、隣り合う2面の側壁に突部と凹部を備えることを前提としている(甲第1号証第4図参照)。また、「基盤側壁の突部が測定具の用を兼ねる」という効果を奏する必要もある。これを長方形(長尺板状)にしてもなお、平面鍵形若しくはT字形であっても「突部と凹部を順次係合して接続する」ことができ、かつ、「基盤側壁の突部が測定具の用を兼ねる」ことができるような具体的な構成は甲第1号証には開示されていない。 従って、甲1発明の台輪本体を長方形(長尺板状)に形成すると、甲1発明が意図する効果を奏さず、同効果を奏するためにはさらなる改変を要する結果となってしまう。当業者はこのような不都合のある改変を行う動機付けはなく、甲1発明を本件発明1の相違点3を備えた構成へと改変することは容易に想到されない。 (答弁書8頁19行?9頁15行、被請求人陳述書6頁下から1行?8頁3行) オ 相違点4(審決注;被請求人が追加した相違点)について 請求人は相違点4に関連して、「布基礎の長手方向に沿って台輪を複数隣接して配置することは、甲1発明のほか、甲第2号証(甲2発明)にも記載されており、…実質的な相違点とはいえない。」(審判請求書18頁20?24行)と主張する。 しかし、甲第1号証の第4図に記載されているのはあくまで「角部」にすぎない。そして、甲第1号証の第4図において台座は「隣接」されているが、「角部」は基礎が直交していることから「長手」、「短手」を明確に区別することはできず、「長手方向に隣接」との構成を認定することはできない。本件発明1の「前記布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される」構成は、明細書段落【0045】の「図6に示すように、…固定された台輪1の接続部8Bに該固定された台輪1に隣接して配置される次の台輪1の接続部8A を接合させ(図7参照)て、次の台輪1を配置する。」に基づくものであるが、同構成の効果は、続く明細書段落【0046】に「上記構成の台輪1によれば、基礎天端面21に該基礎2の長手方向に沿って配置される台輪本体11をその幅方向に貫通するようにして形成された換気孔3を備えるので、台輪本体11が設置される基礎2の構築工事の際に、一般的に基礎部分に設けられる換気孔を設ける必要がなく、その分の基礎工事の手間を簡略化することができる。」と記載されている。上記のような構成及び効果に関する明細書及び図面の記載を考慮すれば、本件発明1の「前記布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される」の構成は、換気孔を設ける必要がある布基礎の直線部分での設置に関する構成を指すことが明らかであって、「角部」において「隣接」されたにすぎない甲第1号証の第4図とはその内容が相違する。本件発明1の台輪は、台輪自体に換気孔が設けられており、複数隣接して使用するものであるのに対し、甲1発明の台座は方形で、それ自体に通気孔はなく、通気孔を設けるように間をあけて使用するものであるという点で大きく異なるのであって、かかる相違が相違点認定に反映されるべきものである。 また、請求人は「台座を長手方向にどのように配置するかは、アンカーボルトの位置に加え、台座の支持力を考慮して行う(台座の支持力が不足する場合は、当然に、複数の台座を隣接して配置することになる。)設計的な事項と認められる」(請求人要領書3頁4?7行)とも主張するが、「台座の支持力が不足する場合は、当然に、複数の台座を隣接して配置する」との構成は甲第1号証に開示されておらず請求人の主張は前提を欠く。請求人は、甲第1号証の3頁12?20行の記載を指摘するが第4図以外の方法で、耐荷力の増大をどのように行うかについて特段の記載がない。よって、本件発明1と甲1発明は相違点4に係る構成で相違する。 甲第2号証には相違点4にかかる構成が記載されているが、これを甲1発明に適用する動機付けはない。なぜなら、甲1発明の台座を布基礎の長手方向に配置する場合、甲第1号証の第3図に示されているとおり、基礎3と台座4の間に通気孔を設ける必要があり、一定の間隔を空ける必要があるが、これを甲第2号証に記載されているように「連接」(段落【0017】)してしまうと通気孔部分が失われてしまうからである。通気を目的として台座間に間隙を設ける配置を、間隙をなくす隣接配置に改変することは、「等間隔の通気孔」を設ける甲1発明の目的(甲第1号証明細書3頁4?5行)を阻害するものであるから、当業者であれば甲1発明に甲第2号証の記載を適用して相違点4にかかる構成とすることはあり得ない。 (答弁書9頁17行?10頁5行、被請求人陳述書8頁5行?9頁下から4行) (2)本件発明2について 本件発明2と甲1発明を比較すると以下の点でも相違する。 (相違点5)(審決注;請求人の相違点3と同じ) 本件発明2の台輪は「テーパ部は、下面の両縁部に設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 そもそも甲第6?10号証には相違点2の構成(台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている)すら開示がない。従って、相違点5の構成(テーパ部は、下面の両縁部に設けられている)についても開示がなく、甲1発明に甲第6?10号証に開示された事項を適用しても、相違点5の構成は想到されない。 (答弁書10頁末行?11頁16行) (3)本件発明3について 本件発明3と甲1発明を比較すると以下の点でも相違する。 (相違点6)(審決注;請求人の相違点4と同じ) 本件発明3の台輪は「台輪本体が、台輪の上下面を構成する板状の上部面部材及び下面部材と、これら上下面部材の間に設けられて、換気孔を仕切る仕切り壁部とを備え、布基礎に台輪本体を固定するための釘を挿通させるための釘孔が、前記台輪本体の上下面部材と仕切り壁部を上下に貫通するように形成されている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 甲第3号証の台輪2は「アンカーボルト6により台輪2、半土台3、床パネル4、壁パネル5を共に布基礎1に対して固定する」(甲第3号証明細書4頁4?6行)という方法で固定されており、そもそも布基礎に台輪を釘により固定することの開示がない。 従って、甲第3号証には相違点6にかかる構成の開示がなく、甲第3号証を甲1発明に適用しても相違点6の構成にならない。 請求人は、甲第1号証の釘孔r及び甲第18号証の釘孔8a、8bの記載があることから、相違点6は周知の技術と主張する(請求人要領書8頁17?19行)が、相違点6にかかる構成は単なる「釘孔」ではなく、「台輪本体が、台輪の上下面を構成する板状の上部面部材及び下面部材と、これら上下面部材の間に設けられて、換気孔を仕切る仕切り壁部とを備え、布基礎に台輪本体を固定するための釘を挿通させるための釘孔が、前記台輪本体の上下面部材と仕切り壁部を上下に貫通するように形成されている」構成であるが、かかる構成は甲第1号証にも甲第18号証にも記載がない。 (答弁書11頁下から4行?12頁下から4行、被請求人陳述書13頁2行?10行) (4)本件発明4について 本件発明4と甲1発明を比較すると以下の点でも相違する。 (相違点7)(審決注;請求人の相違点5と同じ) 本件発明4の台輪は「天端面に台輪本体を設置する際の位置合わせマークが設けられた布基礎上に設置される」ものであり「台輪本体には、前記位置合わせマークに合致させて前記台輪本体を布基礎上に位置決めする位置決めマークが設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 甲第12号証に開示されているのは屋根パネルであり、本件発明4の布基礎や台輪に相当する構成の記載がなく、相違点7にかかる構成はそもそも記載されていない。また、甲第12号証の屋根パネルは甲1発明の台座とは部材の形状も取付方法も技術分野も異なる。 よって、甲1発明に甲第12号証の開示事項を適用する動機付けもなく、また、適用したとしても相違点7の構成にはならない。 甲第11号証に開示されているのは間仕切りのランナーとして使用する断面コ字状の間仕切り用下地材であり台座に関する甲1発明とはその形状も異なり、適用箇所も部材の種類も大きく異なる。また、甲1発明の台座は方形(短尺)であるから、甲第11号証のような長尺方向の位置決めという課題があるとの記載はない。 従って、甲1発明に甲第11号証の開示事項を適用する動機付けは存在しない。 また、甲第11号証及び甲第12号証に記載されているように、建築構造物及び建築物に、位置合わせマーク(『墨出し』(建築工事において、工事の進行に必要な線・形や寸法を表示することをいい、本件では、大工が墨つぼを用いて墨で基礎の上面に目印としての基準線を引くことをいう。)及び位置決めマークを設けることが本件出願前の周知の技術にすぎないとしても、建築工事に用いられる工法や部材には様々なものがあり、用途、形状がそれぞれ異なり、位置決めが必要なものもあれば位置決めの必要がないものもあるため、位置決めマークを設けることが、およそあらゆる部材、箇所に共通に適用され、転用可能な技術であるとの事実は認められない。相違点8、10、12、13、15についても同様である。 (答弁書12頁末行?14頁2行、被請求人陳述書14頁1行?14行) (5)本件発明5について 本件発明5と甲1発明を比較すると以下の点でも相違する。 (相違点8)(審決注;請求人の相違点6と同じ) 本件発明5の台輪は「台輪本体の上面には、該台輪本体上に設置される土台又は半土台の端部を合わせて位置決めする端部位置合わせマークが設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 上記(4)と同様に、甲第11号証、甲第12号証のいずれにも本件発明5(甲1発明)のような台輪(台座)に関する記載はなく、相違点8にかかる開示はない。また、これを甲1発明に適用する動機付けもなく、また、適用したとしても相違点8の構成にはならない。 (答弁書14頁6行?15頁11行) (6)本件発明6について 本件発明6と甲1発明を比較すると以下の点でも相違する。 (相違点9)(審決注;被請求人が追加した相違点) 本件発明6の台輪は「長手方向に連続して配置される前記台輪本体の端部どうしを互いに長さ方向に嵌合して接続する接続部が設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 請求人は甲1発明に上記構成が備わっていると主張するが(審判請求書24頁3?10行)、甲1発明の台座は方形であるから「長手方向」「長さ方向に嵌合し」という構成が存在しない。また、甲1発明の台座は布基礎の直線部分において、換気孔部分を確保するため、一定の間隔を空けてアンカーボルトの挿入部分にのみ設置されるものであるから(第3図参照)、「長手方向に連続して配置される」構成も備えない。従って、上記相違点9に係る構成が甲1発明に備わっているとは言えない。 相違点3及び相違点4と同様、甲1発明に相違点9の構成を適用する動機付けはない。 (答弁書15頁15行?16頁4行) (7)本件発明7について 本件発明7と甲1発明を比較すると以下の点でも相違する。 (相違点10)(審決注;請求人の相違点7と同じ) 本件発明7は「アンカー用長孔にアンカーボルトが挿通され、位置決めマークが位置合わせマークに合致している」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 請求人は、甲第11号証及び甲第12号証を示し、「建築構造物及び建築部材に、位置合わせマーク及び位置決めマークを設けることは、本件出願前の周知の技術にすぎない」とし、相違点10の構成とすることも想到容易であると主張する(審判請求書25頁3?8行)。 しかし、甲1発明に相違点7に係る構成(台輪が「天端面に台輪本体を設置する際の位置合わせマークが設けられた布基礎上に設置される」ものであり「台輪本体には、前記位置合わせマークに合致させて前記台輪本体を布基礎上に位置決めする位置決めマークが設けられている」)を適用することは容易に想到されない。従って、甲1発明に相違点10にかかる構成(アンカー用長孔にアンカーボルトが挿通され、位置決めマークが位置合わせマークに合致している)を適用することも同様に想到困難である。 (答弁書16頁7行?末行) (8)本件発明8について 本件発明8と甲1発明を比較すると以下の点でも相違する。 (相違点11)(審決注;被請求人が追加した相違点) 本件発明8は台輪が「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置された」ものであるのに対し、甲1発明はそのような特定がされていない点。 (相違点12)(審決注;請求人の相違点8と同じ) 本件発明8は「アンカー用長孔にアンカーボルトが挿通され、建造物本体は台輪上に、端部を前記端部位置合わせマークに合わせた状態で設置されている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 請求人は、上記相違点11を認定していないが、甲1発明の台座は布基礎の直線部分において、換気孔部分を確保するため、一定の間隔を空けてアンカーボルトの挿入部分にのみ設置されるものである(第3図参照)。 従って、甲1発明は台輪が「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置された」構成(相違点11)も備えていない。 相違点11について、相違点3及び相違点4と同様、甲1発明に相違点11の構成を適用する動機付けはない。 相違点12について、甲1発明に相違点8に係る構成(「台輪本体の上面には、該台輪本体上に設置される土台又は半土台の端部を合わせて位置決めする端部位置合わせマークが設けられている」)を適用することは容易に想到されない。従って、甲1発明に相違点12にかかる構成(アンカー用長孔にアンカーボルトが挿通され、建造物本体は台輪上に、端部を前記端部位置合わせマークに合わせた状態で設置されている)を適用することも同様に想到困難である。 (答弁書17頁4行?18頁10行) (9)本件発明9について 本件発明9と甲1発明を比較すると以下の点でも相違する。 (相違点13)(審決注;請求人の相違点9と同じ) 本件発明9は「台輪本体は、アンカー用長孔にアンカーボルトを挿通させ、且つ、位置決めマークを布基礎天端面の位置合わせマークに合致させて布基礎天端面上に敷き込む」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 甲1発明に相違点7に係る構成(台輪が「天端面に台輪本体を設置する際の位置合わせマークが設けられた布基礎上に設置される」ものであり「台輪本体には、前記位置合わせマークに合致させて前記台輪本体を布基礎上に位置決めする位置決めマークが設けられている」)を適用することは容易に想到されない。従って、甲1発明に相違点13にかかる構成(台輪本体は、…位置決めマークを布基礎天端面の位置合わせマークに合致させて布基礎天端面上に敷き込む)を適用することも同様に想到困難である。 (答弁書18頁14行?19頁7行) (10)本件発明10について 本件発明10と甲1発明を比較すると以下の点でも相違する。 (相違点14)(審決注;被請求人が追加した相違点) 本件発明10は台輪が「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置された」ものであるのに対し、甲1発明はそのような特定がされていない点。 (相違点15)(審決注;請求人の相違点10と同じ) 本件発明10は「布基礎上に敷き込まれた台輪の端部位置合わせマークに端部を合わせて、建造物本体を設置する」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 請求人は、上記相違点14を認定していないが、甲1発明の台座は布基礎の直線部分において、換気孔部分を確保するため、一定の間隔を空けてアンカーボルトの挿入部分にのみ設置されるものである(第3図参照)。 従って、甲1発明は台輪が「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置された」構成(相違点14)も備えていない。 相違点14について、相違点3及び相違点4と同様、甲1発明に相違点14の構成を適用する動機付けはない。 相違点15について、請求人は、甲第11号証及び甲第12号証を示し、「建築構造物及び建築部材に、位置合わせマーク及び位置決めマークを設けることは、本件出願前の周知の技術にすぎない」とし、相違点15の構成とすることも想到容易であると主張する(審判請求書27頁下から5行?28頁1行)。 しかし、甲1発明に相違点8に係る構成(「台輪本体の上面には、該台輪本体上に設置される土台又は半土台の端部を合わせて位置決めする端部位置合わせマークが設けられている」)を適用することは容易に想到されない。従って、甲1発明に相違点15にかかる構成(布基礎上に敷き込まれた台輪の端部位置合わせマークに端部を合わせて、建造物本体を設置する)を適用することも同様に想到困難である。 (答弁書19頁11行?20頁17行) 2 無効理由2について 本件発明1の「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」との構成について、「テーパ」という形状も、テーパ部を設ける位置も明確であり何らの不明確性もない。テーパの具体的な大きさ(高さや幅)は当業者が適宜定めることができるものであり、これらの限定がないからといって明確性要件を欠くことはない。 (答弁書20頁20行?21頁1行) 第5 証拠 1 甲第1号証 (1)甲第1号証に記載された事項 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同様。) ア 「2.実用新案登録請求の範囲 方形若しくは長方形基盤1の板面中央部に、平面略太十字状をなすアンカーボルト2の挿通孔Hを穿ち且つ基盤1の片側壁に突部tを突設すると共に反対側壁には該突部と係合する凹部hを形成し然して前記挿通孔の周辺に釘孔rを穿設した建築における基礎と土台間に介装する台座。」 イ 「本考案は基礎と土台間に介装する通気用の台座に関するものであつてアンカーボルトによる締着並に釘打ちを自在ならしめ確固安定的に固着せられると共に基礎及び土台が長間であつたりこれらが平面鍵形若しくはT字形の場合各台座を自由に接続して介在固着し得られ然して側壁の突部はラス等の下地材張設に際しその下端部を当接することにより該下地材の張設作業を常に容易に然も正確に遂行せしめるようにしたものである。 即ち実施例の図面に示したように、ポリプロピレン、硬質ポリエチレン等の合成樹脂より成る略方形の基盤1の板面中央部に平面略太十字状をなすアンカーボルト2の挿通孔Hを形成し且つ該基盤の片側壁に楔状突部tを突設すると共に反対側壁に該突部と係合する凹部hを形成し然して前記挿通孔の4辺に釘孔rを穿設して成るものであつて、なお図面中3はコンクリート基礎、4は土台、5は土台4上に設立した柱、6はラス等の下地材、7は締着用ナツト、8は座金を示した。 本案は以上のように構成したので今本台座を使用する一般の場合は、第3図に示したように予め基盤1の挿通孔Hよりアンカーボルト2をその下端の向きに応じて挿入して該下端をコンクリート基礎3中等間隔に埋設して基盤1を載置した後その各釘孔rより釘を打込んで固着し次で該基盤上面に突出したアンカーボルト2の上部を土台4に予め穿設してあるボルト孔より挿入して上方に突出せしめ然る後該台座上に突出したアンカーボルト2の上端に座金8を介在してナツト7で締着すれば基礎3と土台4間には等間隔の通気孔を介して強固安定的に固着せられ・・・能率的に遂行せられるものである。 然して又本案は以上のほか基盤1の片側壁に楔状突部t、反対側壁に該突部と係合する楔状凹部hが形成されてあるので基礎3及び土台4が長間であつたり、或はこれらが平面鍵形若しくはT字形に構成されてある場合は第4図に示したように上記突部と凹部を順次係合して接続することにより耐荷力を増大したり各形状に順応して介在固着せられる利点をも具有するものである。」(明細書1頁13行?3頁末行) ウ 第3図から、台座(基盤1)は、コンクリート基礎3の長手方向に沿って間隔を空けて複数配置されることが看て取れる。 エ 第3図、第4図から、コンクリート基礎3は布基礎であることが看て取れる。 (2)甲第1号証に記載された発明の認定 甲第1号証には、上記(1)で記載した事項を踏まえると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 甲1発明 「方形若しくは長方形基盤1の板面中央部に、平面略太十字状をなすアンカーボルト2の挿通孔Hを穿ち且つ基盤1の片側壁に突部tを突設すると共に反対側壁には該突部tと係合する凹部hを形成し、前記挿通孔Hの周辺に釘孔rを穿設した布基礎であるコンクリート基礎3と土台間に介装する通気用の台座であって、 予め基盤1の挿通孔Hよりアンカーボルト2をその下端の向きに応じて挿入して該下端をコンクリート基礎3中等間隔に埋設して、基盤1をコンクリート基礎3の長手方向に沿って間隔を空けて複数配置した後、その各釘孔rより釘を打込んで固着し、該基盤1上面に突出したアンカーボルト2の上部を土台4に予め穿設してあるボルト孔より挿入して上方に突出せしめて、該台座上に突出したアンカーボルト2の上端に座金8を介在してナツト7で締着することにより、コンクリート基礎3と土台4間に等間隔の通気孔を介して強固安定的に固着せられ、 コンクリート基礎3及び土台4が長間であったり、或はこれらが平面鍵形若しくはT字形に構成されてある場合は上記突部tと凹部hを順次係合して接続することにより耐荷力を増大したり各形状に順応して介在固着せられる、通気用の台座。」 また、甲第1号証には、それぞれ以下の限定した発明としての甲1発明(それぞれ「甲1設置構造発明」、「甲1台座設置方法発明」、「甲1土台設置方法発明」という。)が記載されているとも認められる。 甲1設置構造発明 「基盤1の挿通孔Hよりアンカーボルト2を挿入して、基盤1をコンクリート基礎3の長手方向に沿って間隔を空けて複数配置した後、その各釘孔rより釘を打込んで固着し、該基盤1上面に突出したアンカーボルト2の上部を土台4に予め穿設してあるボルト孔より挿入して上方に突出せしめて、該台座上に突出したアンカーボルト2の上端に座金8を介在してナツト7で締着することにより、コンクリート基礎3と土台4間に介装する、台座の設置構造」 甲1台座設置方法発明 「基盤1の挿通孔Hよりアンカーボルト2を挿入して、基盤1をコンクリート基礎3の長手方向に沿って間隔を空けて複数配置した後、その各釘孔rより釘を打込んで固着し、該基盤1上面に突出したアンカーボルト2の上部を土台4に予め穿設してあるボルト孔より挿入して上方に突出せしめて、該台座上に突出したアンカーボルト2の上端に座金8を介在してナツト7で締着することにより、コンクリート基礎3と土台4間に介装する、台座の設置方法」 甲1土台設置方法発明 「基盤1の挿通孔Hよりアンカーボルト2を挿入して、基盤1をコンクリート基礎3の長手方向に沿って間隔を空けて複数配置した後、その各釘孔rより釘を打込んで固着し、該基盤1上面に突出したアンカーボルト2の上部を土台4に予め穿設してあるボルト孔より挿入して上方に突出せしめて、該台座上に突出したアンカーボルト2の上端に座金8を介在してナツト7で締着することにより、コンクリート基礎3と土台4間に介装する台座上に土台を設置する土台の設置方法」 2 甲第2号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、土台保護板の改善に関する。」 イ 「【0016】 図1の11は、ゴム,合成ゴム,合成樹脂その他の同効性質をもつ弾性材料からなる長尺の保護板であって、該保護板11の表面全域に、テーパー構造の突起12を一体に形成したものである。この突起12は図で示すような截頭円錐形状に形成してあるが、截頭角錐形状や角柱,円柱構造でも同様な作用効果が得られるので、図示実施例のものに特定されることはない。 ちなみに、前記突起12の上辺径は約9mm,基部径は約11mm,高さを6mm(荷重による歪1mm)としたものである。また、図1においては突起12は碁盤目状に配設形成されているが、千鳥状に配設形成してもよい。 【0017】 前記保護板11の長さ、および、形状は任意であるが、保護板11の一端中央部には突起12をもつ係合突片13が、また、保護板11の他端中央部には前記係合突片13が適嵌する係合凹所14が形成してあり、連設される保護板11間に間隙が生じないようにしてある。また、少くとも前記保護板11の巾は、コンクリート基礎15の巾、および、土台となる角材16の巾と略同一にすることが好ましい。また、保護板11の任意個所には、前記コンクリート基礎15に植設したアンカーボルト17が挿通する孔が穿設可能であることは当然である。図7は、図1に示す係合突片13と係合凹所14の平面形状を楔形状とし、土台である角材16をコンクリート基礎15上に保護板11を敷き込みする際に、保護板11同志が引っ張り方向に移動したり、分離したりするのを防止させるようにしたものである。」 3 甲第3号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「2.実用新案登録請求の範囲 全体が所定の剛性と強度を有して直方体状をなし、且つ長手方向に沿つて所定間隔をおきながら換気孔が複数個形成されていることを特徴とする台輪。」 イ 「以下、図面を参照して、この考案の各種実施例を説明する。第1図および第2図は第1実施例である。第1図において、1はコンクリートによる布基礎であり、この布基礎1には従来の布基礎に形成されているような換気孔は形成されていない。上記布基礎1上には、第2図に示すような直方体状の長手部材であるこの実施例の台輪2が載置されている。この台輪2は、防錆処理された鋼材からなり、またその長手方向に沿つて所定間隔をおきながら複数の換気孔2A.2B.2c.・・・が、その中央部において且つその幅方向に沿つて貫通形成されている。・・・而して上記台輪2、半土台3、床パネル4、壁パネル5は夫々、上記布基礎1上に所定間隔をおいて立てられているアンカーボルト6によつて結合固定されている。」(明細書2頁9行?3頁9行) 4 甲第4号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、図面ともに次の事項が記載されている。 ア 「2.実用新案登録請求の範囲 コンクリート基礎と建物躯(審決注;原文は「躯」のはこがまえの中が「品」。以下同じ。)体との間に介在されアンカーボルトを貫通させて固定される、偏平な細長形状の板状体からなる合成樹脂製の土台において、上記板状体にその長手方向に沿って複数個の打ち抜き可能なアンカーボルト貫通孔形成部を所定間隔で設けたことを特徴とする合成樹脂製の土台。」 イ 「3.考案の詳細な説明 本考案は、現場施工作業の省力化を図ることができる合成樹脂製の土台に関するものである。 家屋の構築、特に木質系パネル式住宅の構築にあたっては、コンクリート基礎上に壁体、床体等の建物躯体を設置する際、コンクリート基礎の天端と建物躯体との間にコンクリート基礎と略同巾の偏平な細長形状の土台(台輪)、好ましくは合成樹脂製の土台を介在させることが行われており、かかる土台には、コンクリート基礎に立設したアンカーボルトを建物躯体を固定するため貫通させる必要がある。」(明細書1頁12行?2頁3行) 5 甲第5号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 建築物の布基礎と床パネルとの間に敷設するプラスチック台輪において、該プラスチック台輪を構成する成分が少なくとも低密度ポリエチレンとポリプロピレンあるいは/および高密度ポリエチレンから成ることを特徴とするプラスチック台輪。」 イ 「【0014】【実施例】以下、本発明の実施例をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。また、本発明の実施例に使用するプラスチック製台輪および比較のために使用するプラスチック製台輪の外形は、従来の技術のところで示したと同種の(材質の異なる)ものであり、図2に示したようなものである。しかし、本実施例のプラスチック製台輪は、図2に示すような孔を有するものであっても、アンカーボルト部のみ孔を設けるようなタイプであっても構わない。図1に示すようにプラスチック製台輪3は、先に従来の技術のところで示したのと同様に、布基礎1の上にモルタル4を敷き、アンカーボルト2を台輪3の孔を通すようにして台輪3を敷き、図には示していないが、台輪3の上に床パネルを敷設するという方法で使用される。」 6 甲第6号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0011】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は、請求項1記載の本発明の建物床下部の防湿構造の一例を示す断面図である。図1において、本発明は、基礎の上に建物の土台が載置された構造における基礎部の上面より床下壌面に亘る建物床下部の防湿構造に関するものであり、建物の基礎1の上面11と土台2の下面21との間に弾性を有するシート状の防水材3が敷設され、上記防水材3の上面31より、床下壌面4に亘って防湿シート5が敷設されて構成されている。 ・・・ 【0013】上記防湿シート6の施工前には、基礎1の上面にロール状に巻回されたシート状の防水材3が展開されながら敷設され、コーキング材や、基礎1の上面に突き出して設けられているアンカーボルトに突き刺して固定される。」 イ 図1から、防水材3の両端部が丸みを帯びていることが看て取れる。 7 甲第7号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第7号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0006】【実施例】 順次図面に基づいて,本考案の一実施例を詳細に説明する。図(1)はスペーサー(1)付アンカーボルト(2)の取付断面図である。図(2)はスペーサー(1)の平面図である。嵌合リブ(1A),切込(1B),アンカーボルト用通孔(1C)を有するスペーサー(1)に,六角ナット(4)を螺合附加するアンカーボルト(2)を,通孔(1C)に挿貫入し,座金(6),スプリングワッシャー(5)を装着し,六角ナット(4′)を螺合固定し,スペーサー付アンカーボルトとして部品化する。次に天端リブ(3A)を有する布基礎仮枠(3)に図(1)の如く,スペーサー付アンカーボルトを嵌合固定する。」 イ 図1から、スペーサー1の下面の両縁部の角が斜面になっていることが看て取れる。 8 甲第11号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第11号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0001】【産業上の利用分野】この考案は、主に、間仕切のランナーとして使用する間仕切り用下地材に関する。」 イ 「【0012】覗き孔3は、載置面に描かれた墨付け線X等の墨付け位置を覗き確認するもので、図示例では、菱形状の覗き孔3を形成している。 【0013】更に、覗き孔3は、固定片1の長手方向に沿って複数個形成し、各覗き孔3は、墨付け線Xに沿った位置決め用の目印3Aを設ける。このとき、菱形状の覗き孔3を形成した場合は、菱形の対向する鋭角部分を目印3Aとすることができる。また、丸や四角など他の形状の覗き孔3を形成したときは、その覗き孔3の周囲縁の対向位置に任意の目印3Aを付すことも可能である。 【0014】位置決め基準線4は、各覗き孔3の目印3Aに連続するように設けてある(図2参照)。この位置決め基準線4自体が目印3Aの代わりをするものであってもよい。また、図4及び図5に示すごとく、固定片1を長手方向に沿って断面山形状に屈曲し、この山形状の頂部が位置決め基準線4を形成するようにしても良く、この場合、各覗き孔3に接する頂部が位置決め用の目印3Aになる。」 9 甲第12号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第12号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、木造建築における屋根パネルの取付方法に関するものである。」 イ 「【0007】【実施例】・・・先ず、屋根パネル6の取り付けに際しては、図示せぬ一方の妻側と他方の妻側との間に架設される棟梁3に対して、予め棟梁3の上面、つまりパネル取付面4に基準直線Lを墨出しする。」 ウ 「【0009】なお、この墨出し作業は、例えば棟梁3の仕上加工を終えたのち、そのまま工場内で行うようにしてもよく、あるいは工場から出荷し、施工現場に運搬したあとで、棟梁3を架設する前に行うようにしてもよい。 【0010】次いで、先の墨出しによって基準直線Lが記された棟梁3を、図示せぬ一方の妻側と他方の妻側との間に架設する。このとき、妻側に対する棟梁3の取り付けに際しては、先に記した基準直線Lを目印にして棟梁3の取付位置を決める。 【0011】続いて、一方の妻側と他方の妻側との間に架設された棟梁3に対し、予めユニット化された屋根パネル6を取り付ける。ここで、本実施例の場合は、図1に示すように、予め結合桁5と結合棟木7とが取り付けられた屋根パネル6を採用したので、結合桁5の端面を基準直線Lに合わせながら、棟梁3のパネル取付面4に結合桁5を介して屋根パネル6を取り付けるようにした。」 10 甲第13号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第13号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は建築物、特に住宅における床下換気工法の部材として使用する基礎受け板、及び、この基礎受け板を使用した建築物の基礎部分に関する。」 イ 「【0021】図1は、本発明に係る基礎受け板の一実施例を示す全体外観斜視図であり、(a)はその上面を、(b)はその下面を主に表している。同図において、基礎受け板1は100ミリメートル四方の正方形の板状体であり、その上面11の面積は、ボルト孔14部分を除くと80平方センチメートルである。さらに、その下面12中央には放射状の除湿溝13を有する(図2(b)参照)。」 ウ 「【0022】また基礎受け板1を布基礎と木製土台との間に挿入した状態で、基礎受け板1の見附面積が大きい程、布基礎と木製土台との間に基礎受け板1を挿入することによって生じる隙間、すなわち隣り合う基礎受け板と木製土台及び布基礎とによって形成される床下換気有効面積が小さくなり、床下換気効果の低い基礎部分を形成することになるので、基礎受け板1の見附面積が最小となるように使用することが望ましい。」 エ 「【0025】そして基礎受け板1の下面12には、放射状の除湿溝13が基礎受け板1の外縁部にかけて刻まれている。この除湿溝13の形状を放射状として、外縁部にかけて刻むということによって、この基礎受け板1に接する布基礎部分の除湿を目的とした、外部と基礎内部との多方向の空気流通を可能ならしめる。」 オ 「【0031】ここで注意すべきは、この基礎受け板2を使用する際には、図9(a)のように短手方向を外部に見せるように、すなわち基礎受け板2同士の間隔によって形成される床下換気有効面積が最大となるように配置することである。このように基礎受け板2を配置すれば、荷重支持に必要な面積も確保でき、かつ床下換気有効面積が最大となるように使用できることになり、またさらに除湿溝13の向きも、外部と内部を直接結ぶ向きとなり、床下換気にとって有効である。」 11 甲第14号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第14号証には、次の事項が記載されている。 ア 「2.実用新案登録請求の範囲 1.平面方形の基板部1Aの上面と下面に平面十字状の上面通風溝1A1,1A2と下面通風溝1B1,1B2を刻設することで、当該基板部1Aの上面の四隅部分に上面肉厚部1A4,1A5,1A6,1A7が形成されていると共に、当該基板部1Aの下面の四隅部分に下面肉厚部1B4,1B5,1B6,1B7が形成され、上記上面通風溝1A1,1A2の交差部分にはアンカーボルト用開口部1A8が開設され、上記上面肉厚部1A4,1A5,1A6,1A7には連結孔1A41,1A51,1A61,1A71が穿設されていることを特徴とする土台用パッキン。」 12 甲第15号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第15号証には、次の事項が記載されている。 ア 「2.実用新案登録請求の範囲 (1)アルミ合金枠体2の上面に薄い鉛シ一ト3を貼着した土台支持用ネコ。」 イ 「(2) 第2図、第3図のように本考案ネコ1は基礎コンクリート4上に載置ないしは部分的に埋め込まれる。 本考案ネコ1上に土台5を載置する。7は柱である。6は基礎コンクリ一ト4と土台5との間の空間である。」(明細書2頁下から2行?3頁4行) ウ 第1図から、ネコ1には水平方向に4つの穴が形成されていることが看て取れる。 13 甲第16号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第16号証には、次の事項が記載されている。 ア 「この考案は、・・・所要の厚みを有し、かつ上面にU型の嵌合溝1を形成した合成樹脂製の基台2を、木材3の下面に適当な間隔をもつて嵌着したことにある。 上記構成の根太を、コンクリート等の基礎4の上面に横置し、その要所に、基礎4に植設したアンカーボルト5を挿入して締着固設する。」(1欄下から7行?2欄1行) イ 第3図から、基台2の下面の両縁部の角が斜面になっていることが看て取れる。 14 甲第17号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第17号証には、次の事項が記載されている。 ア 「2.実用新案登録請求の範囲 鉛直荷重に対して適宜必要個所において基礎(3)と土台(2)との間にプラスチック等非腐蝕体(4)を嵌合して間隙(5)を形成するとともに、仕上材(6)に適宜穴(7)を設けて、床下換気穴(8)を構成したことを特徴とする、土台の防腐構造。」 イ 第1図、第2図から、プラスチック等非腐蝕体(4)下面の両縁部の角が斜面になっていることが看て取れる。 15 甲第18号証 請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第18号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、木造建築物の布基礎と当該布基礎上に敷設される土台との間に介装して使用する木造建築物の土台下スペーサーに関するものである。」 イ 「【0008】しかして、前記基板部1の中央位置と四隅近傍位置とに支持用突起部2,3が設けられ、中央の支持用突起部2の周囲に多数の弾性突出片4a?7bが設けられている。また、長さ方向の両端部で幅方向の中央位置それぞれに座ぐり凹部付き釘孔8a,8bが設けられ、長さ方向と平行な両側辺と、幅方向と平行な両側辺の一方とには、下向きの連結用折曲片9a?9cが連設され、幅方向と平行な両側辺の他方には、連結用溝状部10が一体に成形されている」 ウ 「【0013】以上のように構成されたスペーサー18は、図7に示すように布基礎19と当該布基礎19の上に敷設される土台20との間に、土台20の長さ方向に適当間隔おきに配置し、土台20をアンカーボルトにより布基礎19に固定する。このとき必要に応じて、座ぐり凹部付き釘孔8a,8bを利用してコンクリート釘によりスペーサー18を布基礎19上の所定位置に固定することができる。勿論、土台20に傷を付けないように、スペーサー18の平坦な面、即ち基板部1の表面側を土台20の底面に当接させるように配置する。」 第6 無効理由についての判断 1 無効理由1について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 (ア)甲1発明の「布基礎であるコンクリート基礎」は本件発明1の「布基礎」に相当し、甲1発明の「土台」は建造物本体の一部であるから、本件発明1の「建造物本体」に相当する。そして、甲1発明の「基礎と土台間に介装する」「台座」は、本件発明1の「布基礎と該布基礎上に構築される建造物本体との間に介在させる」「台輪」に相当する。また、甲1発明の台座は「方形若しくは長方形」であるから、長方形の態様を含んでおり、本件発明1の「台輪」と同様、「長手方向」を有する。 (イ)甲1発明の「アンカーボルト」は、本件発明1の「アンカーボルト」に相当し、甲1発明の「平面略太十字状をなすアンカーボルト2の挿通孔H」は台座本体を上下方向に貫通すること、及び挿通孔の形状は太十字状であることから、台座の長手方向に細長い形状を有することは明らかであるから、本件発明1の「台輪本体に上下方向に貫通し且つ、該台輪本体の長手方向に細長い形状に形成されたアンカーボルト挿通用のアンカー用長孔」に相当する。 (ウ)甲1発明の「(台座の)基盤1を基礎3の長手方向に沿って間隔を空けて複数配置」することは、本件発明1の「(台輪本体が)布基礎天端面に該布基礎の長手方向に沿って配置される」ことに相当する。 (エ)したがって、両者は、次の一致点1で一致し、相違点1?3で相違する。 (一致点1) 「アンカーボルトを介して結合される布基礎と該布基礎上に構築される建造物本体との間に介在させるとともに、前記布基礎の長手方向に沿って複数配置される台輪において、 前記布基礎天端面に該布基礎の長手方向に沿って配置される台輪本体と、 前記台輪本体に上下方向に貫通し且つ、該台輪本体の長手方向に細長い形状に形成されたアンカーボルト挿通用のアンカー用長孔とを備えている 台輪。」 (相違点1) 台輪の配置に関して、本件発明1は「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される」ものであるのに対し、甲1発明は「間隔を空けて複数配置」し、「基礎3及び土台4が長間であったり、或はこれらが平面鍵形若しくはT字形に構成されてある場合は上記突部tと凹部hを順次係合して接続することにより耐荷力を増大したり各形状に順応して介在固着せられる」ものである点。 (相違点2) 換気機能に関して、本件発明1は「台輪本体をその幅方向に貫通するようにして形成された換気孔」を形成するのに対し、甲1発明は(基盤1を基礎3の長手方向に沿って間隔を空けて複数配置することにより)「基礎3と土台4間に等間隔の通気孔」を形成している点。 (相違点3) 本件発明1は「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられ」ているのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 イ 各相違点に対する判断 (ア)相違点1について a 当審の判断 甲第2号証には、土台保護板を間隙が生じないように連設することが記載されている(上記第5の2参照)。 しかしながら、甲1発明は、台座を間隔を空けて配置し「基礎3と土台4間に等間隔の通気孔」を形成させることが前提となっている通気用の台座であるから、甲第2号証に記載された事項のように台座間に間隙を生じないようにすることには阻害要因があるというべきであり、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用する動機付けはない。 また、甲1発明の「基礎3及び土台4が長間であったり、或はこれらが平面鍵形若しくはT字形に構成されてある場合は上記突部tと凹部hを順次係合して接続する」点は、上記のように甲1発明は台座を間隔を空けて配置することを前提としつつ、耐荷力を増大したり形状に順応するために台座を部分的に隣接させるものであるから、本件発明1の「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される」ものではないし、また、あくまで部分的に台座を隣接させるにとどまる以上、甲1発明の当該構成から本件発明1の「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される」構成を得ることは、当業者が容易に想到しうる事項であるともいえない。 b 請求人の主張について 請求人は、「甲第1号証の第4図には、基礎が交わる角部の施工に関する記載ではあるが、布基礎の直線部分において台座を長手方向に隣接して配置することが記載されており、また、台座を長手方向にどのように配置するかは、アンカーボルトの位置に加え、台座の支持力を考慮して行う(台座の支持力が不足する場合は、当然に、複数の台座を隣接して配置することになる。ちなみに、甲第1号証の第3頁第12?20には、「基盤1の片側壁に楔状突部t、反対側壁に該突部と係合する楔状凹部hが形成されてあるので基礎3及び土台4が長間であつたり、或はこれらが平面鍵形若しくはT字形に構成されてある場合は第4図に示したように上記突部と凹部を順次係合して接続することにより耐荷力を増大したり各形状に順応して介在固着せられる利点をも具有するものである。」との記載があり、当該事項が示唆されている。)設計的な事項と認められることから、甲第1号証に記載された発明は、・・・「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される」構成を備えるものである。この点に関し、本件発明1は、「布基礎の長手方向に沿って複数隣接して配置される台輪」と特定しているだけで、台輪間には通気孔となる間隙を一切設けない構成を特定したものではないと認められるが、仮に、当該構成を特定するものであるとしても、当該構成は、甲第3号証のほか、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証にも記載されているように、周知の技術であり、また、甲1発明とこの周知技術とを組み合わせることに、何ら阻害要因はない。」旨(上記第3の2(1)サ参照)、主張する。 しかしながら、上記aで説示したように、甲第2号証に記載された事項を、甲1発明に適用する動機付けはない。また、甲第3号証?甲第5号証には、台輪(あるいは台輪に相当するもの)が隣接して配置されているとの直接的な記載はなく、それらのことが図面から直ちに読み取れるものでもない。 c 小括 以上のとおりであるから、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (イ)相違点2について a 当審の判断 甲第3号証には、「台輪本体をその幅方向に貫通するようにして形成された換気孔」を設けることが記載されている(上記第5の3参照)。 一方、甲1発明においては、台輪を間隔を空けて複数配置し、その間隙を換気孔(通気孔)としていることから、台輪本体にさらに換気孔を設ける必要性はなく、甲第3号証に記載された事項を適用する動機付けはないというべきである。また、甲1発明の実施例となる甲第1号証の第1図、第4図等の基盤1の形状を参照しても、方形状であることや、凹部、突部の存在から、幅方向を貫通するように換気孔をあらためて設けるためには比較的大きな構成の変更が必要となることが予測され、そのような意味からも、甲1発明において台輪そのものにあらためて換気孔を設けることは想定されていないというべきである。 また、その他の証拠である甲第2号証、甲第4号証?甲第18号証においても、相違点2に相当する構成は開示されていない。 b 請求人の主張について 請求人は、「甲1発明の台座のように、一定の間隔を空けて配置される台座においても、間隔を空けることなく配置される台座と同様に、通気部を設けて通気性を持たせるようにする要請は存在し、一般的に行われていること(例えば、甲第13号証(除湿溝13)、甲第14号証(通風溝)及び甲第15号証(アルミ合金枠体2)。)であることから、甲1発明の台座に、甲第3号証に開示された換気孔をさらに設ける動機付けは存在する」、「甲第1号証の実用新案登録請求の範囲には、「基盤1の片側壁に突部tを突設すると共に反対側壁には該突部と係合する凹部hを形成し」と記載されているとおり、突部t及び凹部hを形成する側壁は、二方の各側壁に限定されず、一方の各側壁の場合もあること、さらに、突部t及び凹部hを形成する側壁が二方の各側壁であるとしても、突部t及び凹部hにかからないように換気孔を形成することは可能である」旨(上記第3の2(1)ア(イ)a参照)、主張する。 しかしながら、甲第13号証、甲第14号証に開示されたパッキン(台座)は、台座部分は換気機能は有するものの、甲第3号証に記載されたような貫通する孔ではなく「溝」が形成されており、甲第14号証については、間隔を空けて配置される台座であるのか明らかでなく、また、甲第15号証に開示されたものは、アルミ合金枠体2が換気機能を有するのか、また貫通する孔を有するのかも明らかでないことから、甲第3号証に記載されたような貫通する孔を「一定の間隔を空けて配置される台座においても」適用する証拠としては充分なものとはいえない。よって、上記aで説示したように、甲第3号証に記載された事項を甲1発明に適用する動機付けはない。 c 小括 以上のことから、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ)相違点3について a 当審の判断 甲1発明は、「基礎と土台間に介装する通気用の台座に関するものであつてアンカーボルトによる締着並に釘打ちを自在ならしめ確固安定的に固着せられると共に・・・側壁の突部はラス等の下地材張設に際しその下端部を当接することにより該下地材の張設作業を常に容易に然も正確に遂行せしめるようにしたもので」あり(上記第5の1(1)イ参照)、「台輪本体11を設置する布基礎2の布基礎天端面21に上方に突出する凸部(例えば図における凸部22)が形成されていても・・・前記凸部22になんら干渉することなく前記台輪本体11を略水平な状態で布基礎2の天端面21に設置することができる」(本件明細書の【0011】)との本件発明の課題は何ら記載も示唆もない。 テーパ構造に関して、甲第6号証には防水材3の両端部が丸みを帯びていること(第5の6参照)、甲第7号証にはスペーサー1の下面の両縁部の角が斜面になっていること(第5の7参照)、甲第16号証には基台2の下面の両縁部の角が斜面になっていること(第5の13参照)、甲第17号証にはプラスチック等非腐蝕体(4)下面の両縁部の角が斜面になっていること(第5の14参照)が記載されているが、いずれの文献においても、何のための斜面(丸み)であるのか明らかでなく、技術的意義が不明であるから、それぞれの構成を採用する理由がなく、甲1発明に適用する動機付けはないというべきである。 また、その他の証拠である甲第2号証?甲第5号証、甲第8号証?甲第15号証、甲第18号証においても、相違点3に相当する構成は開示されていない。 b 請求人の主張について 請求人は、「種々の成型品等において、成型品等の稜線に人が接触して怪我をしないようにすること等を目的として、C面(斜面)やR面(丸面)からなる面取りを施すことは、本件出願前に一般的に行われていた周知の技術にすぎない(例えば、甲第6号証?甲第10号証参照。)。」、「甲第16号証に記載された合成樹脂製の基台2及び甲第17号証に記載されたプラスチック等非腐蝕体4は、本件発明1の構成要件中「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」構成を備えており、当該部材に施されたC面(斜面)からなる面取りが、布基礎の天端面の側縁部上方に位置するように配置された場合、本件発明1が奏するとされる作用効果と同等の作用効果を奏するものと認められる。」旨(上記第3の2(1)ア(イ)b参照)、主張する。 しかしながら、上記aで説示したように、甲第6号証、甲第7号証、甲第16号証、甲第17号証に記載された事項を甲1発明に適用する動機付けはない。また、甲第8号証?甲第10号証には、主に「面取り」の用語解説がなされているだけであり、これらの「面取り」は、本件発明1のように「布基礎天端面21に上方に突出する凸部・・・になんら干渉することなく前記台輪本体11を略水平な状態で布基礎2の天端面21に設置することができる」(本件明細書【0011】)テーパ部とは技術的意義が異なるものであり、相違点3に係る構成を導くものではない。 c 小括 以上のことから、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ むすび 以上のとおり、本件発明1は、上記イ(ア)?(ウ)のとおり、相違点1?3に係る本件発明1の構成にすることは当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (2)本件発明2について ア 本件発明2と甲1発明との対比 本件発明2と甲1発明とを対比すると、両者は、上記(1)アの相違点1?3に加えて、次の相違点4で相違する。 (相違点4) 本件発明2は「テーパ部は、下面の両縁部に設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 イ 各相違点に対する判断 (ア)相違点1?3について 相違点1?3については、上記(1)イで説示したとおりである。 (イ)相違点4について 相違点4は、相違点3に係る構成をさらに限定したものであるから、上記(1)イ(ウ)で説示したとおりである。 ウ むすび 以上のとおり、本件発明2は、上記イ(ア)、(イ)のとおり、相違点1?4に係る本件発明2の構成にすることは当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (3)本件発明3について ア 本件発明3と甲1発明との対比 (ア)本件請求項3の「上部面部材」、「上上面部材」の記載は、それぞれ「上面部材」、「上下面部材」の誤記と認める。 (イ)本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、上記(1)アの相違点1?3及び上記(2)アの相違点4(本件発明2を引用した場合)に加えて、次の相違点5で相違する。 (相違点5) 本件発明3は「台輪の上下面を構成する板状の上面部材及び下面部材と、これら上下面部材の間に設けられて、前記換気孔を仕切る仕切り壁部とを備え、前記布基礎に前記台輪本体を固定するための釘を挿通させるための釘孔が、前記台輪本体の上下面部材と仕切り壁部を上下に貫通するように形成されている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 イ 各相違点に対する判断 (ア)相違点1?4について 相違点1?4については、上記(1)イ、(2)イで説示したとおりである。 (イ)相違点5について 相違点5は、相違点2に係る構成が前提となって構成されているものであるから、上記(1)イ(イ)で説示したとおりである。 ウ むすび 以上のとおり、本件発明3は、上記イ(ア)、(イ)のとおり、相違点1?5に係る本件発明3の構成にすることは当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (4)本件発明4について ア 本件発明4と甲1発明の対比 本件発明4と甲1発明とを対比すると、両者は、上記(1)アの相違点1?3、上記(2)アの相違点4(本件発明2を引用した場合)、及び上記(3)アの相違点5(本件発明3を引用した場合)に加えて、次の相違点6で相違する。 (相違点6) 本件発明4は「天端面に台輪本体を設置する際の位置合わせマークが設けられた布基礎上に設置される」「台輪において」「台輪本体には、前記位置合わせマークに合致させて前記台輪本体を布基礎上に位置決めする位置決めマークが設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 イ 各相違点に対する判断 (ア)相違点1?5について 相違点1?5については、上記(1)イ、(2)イ、(3)イで説示したとおりである。 (イ)相違点6について a 当審の判断 甲第11号証には、間仕切のランナーにおいて載置面の墨付け線Xに沿わせる位置決め用の目印を設けること(上記第5の8参照)が、甲第12号証には、パネル取付面に基準直線を墨出しし、当該基準直線に合わせながら屋根パネルを取り付けること(上記第5の9参照)が記載され、甲第11号証、甲第12号証に記載された事項は、部材の幅方向の取付位置を合わせるために目印や基準直線を用いるものであると認められる。 ところで、甲1発明は「台輪」に関するものであり、甲第11号証、甲第12号証に記載された部材とは使用場所や求められる機能は異なっていることから、位置合わせの必要性についても異なっていることは明らかである。さらに甲1発明は「予め基盤1の挿通孔Hよりアンカーボルト2をその下端の向きに応じて挿入して該下端をコンクリート基礎3中等間隔に埋設して、基盤1を基礎3の長手方向に沿って間隔を空けて複数配置」していることから、アンカーボルトにより台座(台輪)の位置合わせは行うことができることからも、更なる幅方向の位置合わせの必要性があるとはいえない。また、甲第1号証の第4図から、基盤1の幅は基礎3の幅と略同じであることが看て取れることからも、甲1発明の台座(台輪)に目印等を設けて幅方向(基礎3の幅方向)の位置合わせをする必要性は想定されていないというべきである。 よって、甲第11号証、甲第12号証に記載された事項を甲1発明に適用する動機付けはないというべきである。 また、その他の証拠である甲第2号証?甲第10号証、甲第13号証?甲第18号証においても、相違点6に相当する構成は開示されていない。 b 請求人の主張について 請求人は、「建築構造物及び建築部材に、位置合わせマーク(「墨出し」(建築工事において、工事の進行に必要な線・形や寸法を表示することをいい、本件では、大工が墨つぼを用いて墨で基礎の上面に目印としての基準線を引くことをいう。))及び位置決めマークを設けることは、甲第11号証?甲第12号証に記載されているように、本件出願前の周知の技術にすぎない。そして、当該周知技術は、位置合わせ及び位置決めを目的として、部材や適用箇所等に関わらず、転用可能な技術であるといえる。」旨(上記第3の2(1)エ参照)、主張する。 しかしながら、上記aで説示したように、甲第11号証、甲第12号証に記載された事項を甲1発明に適用する動機付けはない。 c 小括 以上のことから、甲1発明において、相違点6に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ むすび 以上のとおり、本件発明4は、上記イ(ア)、(イ)のとおり、相違点1?6に係る本件発明4の構成にすることは当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (5)本件発明5について ア 本件発明5と甲1発明の対比 本件発明5と甲1発明とを対比すると、両者は、上記(1)アの相違点1?3、上記(2)アの相違点4(本件発明2を引用した場合)、上記(3)アの相違点5(本件発明3を引用した場合)及び上記(4)アの相違点6(本件発明4を引用した場合)に加えて、次の相違点7で相違する。 (相違点7) 本件発明5は「台輪本体の上面には、該台輪本体上に設置される土台又は半土台の端部を合わせて位置決めする端部位置合わせマークが設けられている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 イ 各相違点に対する判断 (ア)相違点1?6について 相違点1?6については、上記(1)イ、(2)イ、(3)イ、(4)イで説示したとおりである。 (イ)相違点7について 上記(4)イ(イ)aで説示したように、甲第11号証、甲第12号証には、部材の幅方向の取付位置を合わせるために目印や基準直線を用いることが記載されているが、相違点7に係る構成のように、台輪の上面に「土台又は半土台の端部を合わせて位置決めする端部位置合わせマーク」を設けることについては、何ら記載されておらず、示唆する記載もない。 また、その他の証拠である甲第2号証?甲第10号証、甲第13号証?甲第18号証においても、相違点7に相当する構成は開示されていない。 ウ むすび 以上のとおり、本件発明5は、上記イ(ア)、(イ)のとおり、相違点1?7に係る本件発明5の構成にすることは当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (6)本件発明6について ア 本件発明6と甲1発明の対比 本件発明6と甲1発明とを対比すると、両者は、上記(1)アの相違点1?3、上記(2)アの相違点4(本件発明2を引用した場合)、上記(3)アの相違点5(本件発明3を引用した場合)、上記(4)アの相違点6(本件発明4を引用した場合)及び上記(5)アの相違点7(本件発明5を引用した場合)に加えて、次の相違点8で相違する。 (相違点8) 接続部に関して、本件発明6は「台輪本体の長手方向の両端部には、長手方向に連続して配置される前記台輪本体の端部どうしを互いに長さ方向に嵌合して接続する接続部が設けられている」のに対し、甲1発明は台座の長手方向の両端部に突部、凹部が形成されているか明らかでない点。 イ 各相違点に対する判断 (ア)相違点1?7について 相違点1?7については、上記(1)イ、(2)イ、(3)イ、(4)イ、(5)イで説示したとおりである。 (イ)相違点8について a 当審の判断 甲1発明の台座は「方形若しくは長方形」であるから、長方形の態様を含んでおり、長方形の台座に対して、突部、凹部をその長手方向の両端部に設けることは、台座の配置方向等を勘案して当業者が適宜選択しうる事項にすぎない。 b 被請求人の主張について 被請求人は、「甲1発明の台座は方形であるから「長手方向」「長さ方向に嵌合し」という構成が存在しない。また、甲1発明の台座は布基礎の直線部分において、換気孔部分を確保するため、一定の間隔を空けてアンカーボルトの挿入部分にのみ設置されるものであるから(第3図参照)、「長手方向に連続して配置される」構成も備えない。従って、上記相違点9(審決注;上記(6)アの相違点8に相当)に係る構成が甲1発明に備わっているとは言えない。」旨(上記第4の1(6)参照)、主張する。 しかしながら、上記aで説示したように甲1発明の台座は長方形の態様を含んでおり、また、上記(1)イ(ア)aで説示したように甲1発明の台座は「隣接して配置される」ことが可能な構成を有していることから、被請求人の主張は採用できない。 c 小括 以上のことから、甲1発明において、相違点8に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。 ウ むすび 以上のとおり、本件発明6は、上記イ(ア)、(イ)のとおり、相違点1?7に係る本件発明6の構成にすることは当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (7)本件発明7について ア 本件発明7と甲1発明の対比 本件発明7は「請求項4記載の台輪」の設置構造に係る発明であるから、本件発明7と甲1発明(甲1設置構造発明を含む)とを対比すると、両者は、まず本件発明4と甲1発明の対比と同様、上記(1)アの一致点1で一致し、相違点1?3、上記(2)アの相違点4(本件発明2を引用した場合)、上記(3)アの相違点5(本件発明3を引用した場合)及び上記(4)アの相違点6で相違し、それらに加えて、次の一致点2で一致し、相違点9で相違する。 (一致点2) 「布基礎と該布基礎上に構築された建造物本体とがアンカーボルトを介して結合され、これら布基礎と建造物本体との間に、台輪が前記布基礎上に敷き込まれた状態で介在させた台輪の設置構造において、前記アンカー用長孔に前記アンカーボルトが挿通されている、台輪の設置構造」 (相違点9) 本件発明7は「天端面に台輪本体を設置する際の位置合わせマークが設けられた布基礎と該布基礎上に構築された建造物本体とがアンカーボルトを介して結合され、これら布基礎と建造物本体との間に」「台輪が前記布基礎上に敷き込まれた状態で介在させた台輪の設置構造において」「位置決めマークが前記位置合わせマークに合致している」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 イ 各相違点に対する判断 (ア)相違点1?6について 相違点1?6については、上記(1)イ、(2)イ、(3)イ、(4)イで説示したとおりである。 (イ)相違点9について 相違点9は、相違点6に係る構成が前提となって構成されているものであるから、上記(4)イ(イ)で説示したとおりである。 ウ むすび 以上のとおり、本件発明7は、上記イ(ア)、(イ)のとおり、相違点1?6、9に係る本件発明7の構成にすることは当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (8)本件発明8について ア 本件発明8と甲1発明の対比 本件発明8は「請求項6記載の台輪」の設置構造に係る発明であるから、本件発明8と甲1発明(甲1設置構造発明を含む)とを対比すると、両者は、まず本件発明6と甲1発明の対比と同様、上記(1)アの一致点1で一致し、相違点1?3、上記(2)アの相違点4(本件発明2を引用した場合)、上記(3)アの相違点5(本件発明3を引用した場合)、上記(4)アの相違点6(本件発明4を引用した場合)、上記(5)アの相違点7(本件発明5を引用した場合)及び上記(6)アの相違点8で相違し、それらに加えて、次の一致点3で一致し、相違点10、11で相違する。 (一致点3) 「布基礎と該布基礎上に構築された建造物本体とがアンカーボルトを介して結合され、これら布基礎と建造物本体との間に、台輪が前記布基礎上に敷き込まれた状態で介在されるとともに、前記布基礎の長手方向に沿って配置された台輪の設置構造において、 前記アンカー用長孔に前記アンカーボルトが挿通されている、台輪の設置構造」 (相違点10) 本件発明8は「建造物本体は前記台輪上に、端部を前記端部位置合わせマークに合わせた状態で設置されている」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 イ 各相違点に対する判断 (ア)相違点1?8について 相違点1?8については、上記(1)イ、(2)イ、(3)イ、(4)イ、(5)イ、(6)イで説示したとおりである。 (イ)相違点10について 相違点10は、相違点7に係る構成が前提となって構成されているものであるから、上記(5)イ(イ)で説示したとおりである。 ウ むすび 以上のとおり、本件発明8は、上記イ(ア)、(イ)のとおり、相違点1?7、10に係る本件発明8の構成にすることは当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (9)本件発明9について ア 本件発明9と甲1発明の対比 本件発明9は「請求項4記載の台輪」の設置方法に係る発明であるから、本件発明9と甲1発明(甲1台座設置方法発明を含む)とを対比すると、両者は、まず本件発明4と甲1発明の対比と同様、上記(1)アの一致点1で一致し、相違点1?3、上記(2)アの相違点4(本件発明2を引用した場合)、上記(3)アの相違点5(本件発明3を引用した場合)及び上記(4)アの相違点6で相違し、それらに加えて、次の一致点4で一致し、相違点11で相違する。 (一致点4) 「台輪を、上部の建造物本体と接合するアンカーボルトを備えた布基礎上に敷き込んで設置する台輪の設置方法において、台輪本体は、アンカー用長孔にアンカーボルトを挿通させる、台輪の設置方法」 (相違点11) 本件発明9は「位置決めマークを前記布基礎天端面の位置合わせマークに合致させて前記布基礎天端面上に敷き込む」のに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 イ 各相違点に対する判断 (ア)相違点1?6について 相違点1?6については、上記(1)イ、(2)イ、(3)イ、(4)イで説示したとおりである。 (イ)相違点11について 相違点11は、相違点6に係る構成が前提となって構成されているものであるから、上記(4)イ(イ)で説示したとおりである。 ウ むすび 以上のとおり、本件発明9は、上記イ(ア)、(イ)のとおり、相違点1?6、11に係る本件発明9の構成にすることは当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (10)本件発明10について ア 本件発明10と甲1発明の対比 本件発明10は「請求項5記載の台輪上に建造物本体を設置する建造物本体の設置方法」に係る発明であるから、本件発明10と甲1発明(甲1土台設置方法発明を含む)とを対比すると、両者は、まず本件発明5と甲1発明の対比と同様、上記(1)アの一致点1で一致し、相違点1?3、上記(2)アの相違点4(本件発明2を引用した場合)、上記(3)アの相違点5(本件発明3を引用した場合)、上記(4)アの相違点6(本件発明4を引用した場合)及び上記(5)アの相違点7で相違し、それらに加えて、次の一致点5で一致し、相違点12で相違する。 (一致点5) 「布基礎上に敷き込まれるとともに、前記布基礎の長手方向に沿って配置された台輪上に建造物本体を設置する建造物本体の設置方法であって、前記布基礎上に敷き込まれた台輪に建造物本体を設置する、建造物本体の設置方法。」 (相違点12) 建造物本体を設置するのに際し、本件発明は「布基礎上に敷き込まれた台輪の前記端部位置合わせマークに端部を合わせて」いるのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 イ 各相違点に対する判断 (ア)相違点1?7について 相違点1?7については、上記(1)イ、(2)イ、(3)イ、(4)イ、(5)イで説示したとおりである。 (イ)相違点12について 相違点12は、相違点7に係る構成が前提となって構成されているものであるから、上記(5)イ(イ)で説示したとおりである。 ウ むすび 以上のとおり、本件発明10は、上記イ(ア)、(イ)のとおり、相違点1?7、12に係る本件発明10の構成にすることは当業者が容易に想到し得たことではないため、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (11)無効理由1のまとめ 以上のとおり、本件発明1?10は、甲第1号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、その特許は、無効とすべきものではない。 2 無効理由2について 請求人は、無効理由2について「本件発明1には、テーパ部の具体的な形状(大きさ)等が特定されていないことから、単に、「テーパ部」を設けることによって、明細書記載の作用効果が奏せられるかどうか明らかでない。」、「本件発明1の「テーパ部」と「面取り(C面(斜面))」との間に構成上の差異があるのかどうかも明らかでない。」旨(上記第3の2(2)参照)、主張する。 しかしながら、本件請求項1において「台輪本体の下面縁部と、前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」と記載されており、この記載から「テーパ部」の形状、及び「テーパ部」の設けられている場所については、文字通り、理解することができるから明確である。 また、請求人はテーパ部の大きさが特定されていないから効果が奏されるか明らかでないと主張する。確かに、本件請求項1においてテーパ部の大きさについて特定はされていないが、本件明細書の「【0011】 ・・・テーパ部16が台輪本体11の延在方向に沿って設けられているので、前記台輪本体11を設置する布基礎2の布基礎天端面21に上方に突出する凸部(例えば図における凸部22)が形成されていても、前記凸部上方にテーパ部16が位置するように台輪1を配置して、前記凸部22になんら干渉することなく前記台輪本体11を略水平な状態で布基礎2の天端面21に設置することができる」との記載から、テーパ部を設けることによる効果は理解することができるから、本件請求項1のテーパ部の大きさは、明細書を参酌すれば上記効果を奏する程度の大きさであると理解できる。 したがって、本件特許請求の範囲の請求項1?10の記載は不備ではなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえないから、その特許は、無効とすべきものではない。 第7 むすび 上記第6で検討したとおり、本件発明1?10について、請求人の主張する無効理由1、2には無効とする理由がないから、その特許は無効とすべきものではない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-05-28 |
結審通知日 | 2018-05-31 |
審決日 | 2018-06-12 |
出願番号 | 特願2000-322918(P2000-322918) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Y
(E04B)
P 1 113・ 537- Y (E04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 五十幡 直子 |
特許庁審判長 |
小野 忠悦 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 井上 博之 |
登録日 | 2006-10-20 |
登録番号 | 特許第3870019号(P3870019) |
発明の名称 | 台輪、台輪の設置構造、台輪の設置方法及び建造物本体の設置方法 |
代理人 | 溝内 伸治郎 |
代理人 | 岩坪 哲 |
代理人 | 朝野 修治 |
代理人 | 溝内 伸治郎 |
代理人 | 岩坪 哲 |
代理人 | 速見 禎祥 |
代理人 | 速見 禎祥 |
代理人 | 森 治 |
代理人 | 鈴木 章 |