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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1350439
審判番号 不服2018-1918  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-13 
確定日 2019-04-01 
事件の表示 特願2016-86529号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月21日出願公開、特開2016-129825号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月16日に出願した特願2012-60900号の一部を平成27年3月16日に新たな特許出願(特願2015-51721号)とし、さらにその一部を平成28年4月22日に新たな特許出願(特願2016-86529号)としたものであって、同年8月10日に手続補正書が提出され、平成29年2月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月29日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月4日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月7日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年2月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、同年10月1日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月29日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明は以下のとおりのものである。なお、A?Lは本願発明の構成を分説するため当審で付した。

「【請求項1】
A 遊技機に対する異常状態を報知する報知音と、遊技の進行による演出音とを出力する複数の音声出力手段と、
B 演出表示手段と、
C 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な第1音量調整手段と、
D 前記音声出力手段と前記演出表示手段とを演出の進行にもとづいて制御する演出制御手段と、
E 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な前記第1音量調整手段とは異なる第2音量調整手段と、
F を備えるとともに、外部へ遊技球を排出可能な遊技機において、
G 前記第1音量調整手段と前記第2音量調整手段のうち、前記第1音量調整手段は、遊技者が操作することができない調整手段とされ、
H 前記演出制御手段は、
H1 前記第1音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音の音量を設定する演出音音量設定制御手段と、
H2 所定の条件が成立しているときに、遊技者が操作可能な前記第2音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した前記演出音の音量を変更する演出音音量変更制御手段と、
H3 異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための前記報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定される音量及び前記演出音音量変更制御手段で変更される音量に依存させることなく設定する報知音音量設定制御手段と、
H4 前記演出音の音量が前記演出音音量変更制御手段によりいずれの音量に変更されていても、前記遊技機に対する異常状態が発生した場合に、前記演出音音量変更制御手段により変更された音量を消音にする演出音抑制制御手段と、
H5 前記遊技機に対する異常状態を報知する前記報知音が前記音声出力手段から出力される前記異常報知期間を所定期間経過したことによって終了させる報知期間終了手段と、
H6 前記演出音及び前記報知音を前記音声出力手段から出力する制御を実行する音出力実行制御手段と、を備え、
I 前記遊技機に対する異常状態が報知される前記異常報知期間が遊技中に発生した際は進行しているスケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の音量を消音に変更設定し、前記異常報知期間に亘って音量が消音に変更設定される前記演出音に対応するスケジュールデータの進行を前記異常報知期間の間も停止することなく継続させ、前記報知期間終了手段によって前記異常報知期間が所定期間経過し終了されると前記異常報知期間が発生した際に対応するスケジュールデータの進行が継続されたまま消音に変更設定された前記演出音の音量を復旧設定するものであり、前記異常報知期間が発生する以前に前記演出音の音量が前記第2音量調整手段に対する操作に応じて前記演出音音量変更制御手段により変更されていた場合においては消音に変更設定された前記演出音の音量を前記演出音音量変更制御手段により変更されていた音量に設定し、前記演出音が復旧されるように構成され、
J 前記異常報知期間において消音にされる前記演出音が復旧される際に進行した状態となるように、前記演出音を消音に変更設定している間も演出音進行継続制御手段により消音された前記演出音に対応するスケジュールデータの進行を停止することなく継続して進行されており、
K 前記報知音音量設定制御手段は、前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段の操作に応じて前記演出音の音量を小さく設定している状態又は前記演出音音量変更制御手段が前記第2音量調整手段の操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した前記演出音の音量を小さく変更している状態であっても、前記異常報知期間においては、当該演出音の音量と比べて大きい音量を前記報知音の音量として設定し、
L 前記音出力実行制御手段は、前記異常報知期間においては、当該異常報知期間以外に出力しない前記報知音の音データを前記異常報知期間以外に出力する前記演出音の音データに加えて出力することで前記報知音を前記音声出力手段から出力し聴取可能にしている
ことを特徴とする遊技機。」

ここで、平成30年11月29日の意見書における補正の根拠を踏まえると、上記Iのうちの「前記報知期間終了手段によって前記異常報知期間が所定期間経過し終了されると前記異常報知期間が発生した際に対応するスケジュールデータの進行が継続されたまま消音に変更設定された前記演出音の音量を復旧設定するものであり、前記異常報知期間が発生する以前に前記演出音の音量が前記第2音量調整手段に対する操作に応じて前記演出音音量変更制御手段により変更されていた場合においては消音に変更設定された前記演出音の音量を前記演出音音量変更制御手段により変更されていた音量に設定し、前記演出音が復旧される」ことは、本願明細書の段落【0645】の「報知音は所定期間(例えば、90秒)だけ本体枠3に設けたスピーカ821及び扉枠5に設けたスピーカ130,222,262から流れるようになっており、この所定期間経過すると、これまで消音に強制的に設定された音生成用スケジュールデータに従って進行している演出音の音量が、音量調整ボリューム4140aのつまみ部が回動操作されて調節された基板ボリュームがサブボリューム値として再び設定され(このとき、操作ユニット400のダイヤル操作部401や押圧操作部405を操作することで設定モードへ移行して調節されている場合には、その調節された演出音のサブボリューム値に設定され)、本体枠3に設けたスピーカ821及び扉枠5に設けたスピーカ130,222,262から流れる」ことに対応する。
そして、このうち、本願発明の「前記演出音の音量」を「復旧設定」することは、「音量調整ボリューム4140aのつまみ部が回動操作されて調節された基板ボリュームがサブボリューム値として再び設定され(このとき、操作ユニット400のダイヤル操作部401や押圧操作部405を操作することで設定モードへ移行して調節されている場合には、その調節された演出音のサブボリューム値に設定され)ることに対応する。
したがって、本願発明の「復旧設定」される「前記演出音の音量」とは、音量調整ボリューム4140aのつまみ部が回動操作されて調節された基板ボリュームのサブボリューム値(このとき、操作ユニット400のダイヤル操作部401や押圧操作部405を操作することで設定モードへ移行して調節されている場合には、その調節された演出音のサブボリューム値)、すなわち、操作部により一律に調節された演出音のサブボリューム値を意味するのであって、例えば、音生成用スケジュールデータによりその時々で変化し得る音量ではないと解する。

第3 拒絶の理由
平成30年10月1日付けで当審が通知した拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願遡及日前日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1?5に記載された発明に基いて、その出願遡及日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2009-5735号公報
2.特開2005-288020号公報
3.特開2009-34354号公報
4.特開2008-54930号公報
5.特開2011-142953号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

ア 当審による拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2009-5735号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0019】
A.遊技機の装置構成 :
A-1.装置前面側の構成 :
図1は、本実施例の遊技機1の正面図である。」

「【0022】
上皿5には、皿状の凹部と、凹部を取り巻くように形成された皿外縁部5aとが設けられている。遊技球は、上皿5に形成された凹部に投入されて、発射装置ユニット12(図6参照)に供給される。また、皿外縁部5aには、遊技球の球貸スイッチ5b、返却スイッチ5c、投入した遊技球を排出するための排出ボタンなど、各種のボタン類が設けられている。さらに、上皿5の略中央部には複数の長孔とその上部に多数の小穴が形成された第1スピーカ5yが設けられている。また、上皿5の前面側には、2つの操作スイッチSW1,SW2が設けられている。遊技者は、これらの操作スイッチSW1,SW2を押すことによって、遊技中にキャラクタ図柄や遊技条件を選択するなど、遊技の進行に介入することが可能となっている。
【0023】
下皿6には、遊技機1の内部から遊技球を排出するための排出口6aが設けられており、排出された遊技球は下皿6内に貯留される。また、下皿6には、下皿満杯スイッチ6sが設けられており(図6参照)、下皿6が遊技球で一杯になると、これを検出して遊技球の払い出しが中断されるようになっている。下皿6に貯まった遊技球を排出するために、下皿6の底面には、下皿6内から遊技球を排出するための図示しない球抜き穴が設けられており、下皿6の略中央手前側には、球抜き穴を開閉させる排出ノブ6bが設けられている。排出ノブ6bは通常時は直立状態であるが、下端を奥側に押圧すると上端を回転軸として回転し、球抜き穴が開放状態となって、下皿6に貯まった遊技球を排出することが可能となっている。更に、排出ノブ6bの左右には、第2スピーカ6cが設けられている。」

「【0027】
中央装置26には、演出表示装置27が設けられている。演出表示装置27は、液晶画面を搭載しており、キャラクタ図柄や背景図柄などの種々の演出用図柄を変動停止表示することが可能となっている。」

「【0035】
また、裏機構盤102の中央部付近においては、演出制御基板ケース114、アンプ基板ケース115、装飾駆動基板ケース116、サブ制御基板ケース117などが設けられている。演出制御基板ケース114は、演出表示装置27を駆動する演出制御基板230を収容している。アンプ基板ケース115は、各種スピーカ5y、6cを駆動するアンプ基板226を収容している。装飾駆動基板ケース116は、装飾用の各種LEDやランプを駆動する装飾駆動基板228を収容している。サブ制御基板ケース117は、これら演出制御基板230、アンプ基板226や装飾駆動基板228などを制御するサブ制御基板220を収容している。そして、サブ制御基板ケース117の前面には、各種スピーカ5y,6cから出力される音量を調節するための音量設定スイッチ300が設けられている。」

「【0060】
C-1.遊技制御処理 :
図10は、主制御基板200に搭載されたCPU201が、遊技の進行を制御するために行う遊技制御処理の大まかな流れを示したフローチャートである。図示されているように、遊技制御処理では、賞球関連処理、普通図柄遊技処理、普通電動役物停止処理、特別図柄遊技処理、特別電動役物遊技処理などの各処理が繰り返し実行されている。一周の処理に要する時間は、ほぼ4msecとなっており、従って、これら各種の処理は約4msec毎に繰り返し実行されることになる。そして、これら各処理中で、サブ制御基板220や払出制御基板240などの各種制御基板に向けて各種のコマンドを送信する。こうすることにより、遊技機1全体の遊技が進行するとともに、サブ制御基板220では、遊技の進行に合わせた演出の制御が行われ、また、払出制御基板240では、賞球あるいは貸球の払い出しが行われることになる。以下、フローチャートに従って、主制御基板200に搭載されたCPU201が行う遊技制御処理について説明する。」

「【0075】
ここで、前述したように主制御基板200は、図10に示した遊技制御処理を実行する中で、遊技の演出に関する種々の制御コマンド(演出コマンド)をサブ制御基板220に向かって出力する。サブ制御基板220では、受け取った演出コマンドに基づいて具体的な演出の態様を決定し、演出表示装置27、各種スピーカ5y,6c、各種LEDやランプ類4b?4fを用いて様々な演出を行っている。また、遊技機1において何らかの異常が発生した場合には、その旨が主制御基板200からサブ制御基板220に伝達され、サブ制御基板220は、演出表示装置27、各種スピーカ5y,6c、各種LEDやランプ類4b?4fを用いてエラーの発生を報知するようになっている。そして、本実施例の遊技機1では、エラーの発生を効果音によって確実に報知するために、サブ制御基板220によって効果音のボリューム設定を変更する特別な処理が行われている。以下では、サブ制御基板220が効果音のボリューム設定を変更するために行う処理(ボリューム設定処理)の内容について詳しく説明する。」

「【0077】
ここで、音源IC224は、効果音出力チャンネルと呼ばれる複数のチャンネルを備えており、各チャンネルには、それぞれ異なる効果音データが予め割り当てられている。図12は、本実施例の遊技機1における効果音出力チャンネルの構成を概念的に示した説明図である。図示されているように、本実施例の音源IC224は、チャンネル0?7の全部で8チャンネルの効果音出力チャンネルを有している。このうち、チャンネル0?6の7チャンネルは、演出に関する様々な効果音データ(演出音データ)がそれぞれ割り当てられたチャンネル(演出用チャンネル)である。本実施例の遊技機1では、演出の態様(図柄変動演出、予告演出、リーチ演出、大当り演出など)に応じた7種類の効果音データ(演出音データ)が予め用意されており、それぞれ演出用チャンネル(チャンネル0?6)の何れかに割り当てられている。一方、チャンネル7は、演出に用いられることない(当審注:「ことない」は「ことのない」の誤記と認められる。)エラー報知のためだけの効果音データ(エラー音データ)が割り当てられたチャンネル(エラー報知用チャンネル)である。尚、ここでは、エラー報知用チャンネルは1チャンネルのみであるものとして説明するが、エラー報知の態様を増やしたい場合には、エラー報知用チャンネルを複数にして、それぞれ異なる効果音データ(エラー音データ)を割り当てることも可能である。また、本実施例の遊技機1では、演出用チャンネルの各チャンネルに割り当てる効果音データ(演出音データ)を演出態様毎に分けているが、これに限られるわけではなく、例えば、音の高さや、楽器の種類、あるいは楽曲などの違いによって分類しておいてもよい。」

「【0079】
効果音指定信号を受け取ると、音源IC224では、効果音指定信号に何れの効果音出力チャンネルが指定されているかに基づいて、サブ制御基板220に搭載された音源ROM225から効果音データの読み出しを行う。音源ROM225にはチャンネル数に対応する様々な効果音データが予め記憶されており、その中から指定されたチャンネルに割り当てられた効果音データを読み出して、アンプ基板226に向かって効果音データ信号を出力する。こうして出力された効果音データ信号はアンプ基板226で増幅されて、スピーカ5y,6cから効果音が出力される。尚、効果音指定信号には同時に複数のチャンネルを指定することも可能である。このような効果音指定信号を受け取った音源ICは、指定された複数のチャンネルの各々に割り当てられた効果音データを音源ROM225から読み出して、複合効果音データ信号をアンプ基板226に向けて出力する。これにより、種類の異なる複数の効果音を組み合わせて出力することも可能である。ただし、本実施例の遊技機1では、演出用チャンネル(チャンネル0?6)とエラー報知用チャンネル(チャンネル7)とを明確に区別しており、効果音指定信号に演出用チャンネルとエラー報知用チャンネルとを同時に指定しないようになっている。また、音源IC224から出力された効果音データ信号はアンプ基板226で増幅されて、スピーカ5y,6cから音波として出力されることから、本実施例の第1スピーカ5yおよび第2スピーカ6cは、本発明の「効果音出力手段」の一態様を構成している。」

「【0080】
ここで、音源IC224がアンプ基板226に向かって出力する効果音データ信号の出力レベル(効果音のボリューム)は、サブ制御基板220のCPU221からのボリューム設定信号に基づいて設定される。また、効果音のボリュームは、効果音出力チャンネルの各チャンネルに対して個別に設定されるボリューム(チャンネルボリューム)と、全てのチャンネルに対して一律に設定されるボリューム(トータルボリューム)とから構成されている。本実施例の遊技機1では、チャンネルボリュームおよびトータルボリュームは、それぞれ4段階(「消音」、「小」音量、「中」音量、「大」音量の何れか)に設定可能であり、チャンネルボリュームは、トータルボリュームの設定の範囲内で設定に応じて4段階に切り換わる。従って、トータルボリュームの設定が「消音」であると、チャンネルボリュームの設定にかかわらず、効果音は全て消音されることになる。また、チャンネルボリュームの設定が「消音」であれば、トータルボリュームの設定が「大」音量であっても、効果音は消音される。
【0081】
そして、サブ制御基板220のCPU221は、音源IC224に向かって出力するボリューム設定信号によって、チャンネルボリュームあるいはトータルボリュームの何れかの設定変更を指示するようになっている。このうち、チャンネルボリュームの設定変更については、主制御基板200から演出コマンドを受け取ったCPU221が演出の進行に合わせて適宜指示しており、例えば、効果音(演出音)をフェードアウトあるいはフェードインさせるなど、遊技状況に応じて効果音の音量(ボリューム)を変更することが可能となっている。また、図11に示されているように、サブ制御基板220のCPU221には、音量設定スイッチ300が接続されており、CPU221は、この音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームの設定を決定して、変更を指示するようになっている。尚、トータルボリュームの設定および各チャンネルボリュームの設定を指示する処理はサブ制御基板220のCPU221によって行われていることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「全体音量設定手段」および「個別音量設定手段」の一態様を構成している。」

「【0087】
次いで、サブ制御基板220のCPU221は、通常時用のボリュームテーブルを参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S204)。ここで、ボリュームテーブルとは、トータルボリュームを決定するために用いられる専用のテーブルであり、このテーブルには、前述した音量設定スイッチ300の各状態(図13参照)に対して、トータルボリューム設定が対応付けて記されている。また、このようなボリュームテーブルには、通常時に用いられる通常時用のボリュームテーブルと、エラーの発生時に用いられるエラー時用のボリュームテーブルとがあり、電源投入時には通常時用のボリュームテーブルを選択するようになっている。尚、これらのボリュームテーブルは、サブ制御基板220に搭載されたROM223(図11参照)に予め記憶されており、CPU221が参照するトータルテーブルをROM223から読み出すようになっている。
【0088】
図16は、本実施例の遊技機1で用いられる通常時用のボリュームテーブルを例示した説明図である。図示されているように、通常時用のボリュームテーブルでは、スイッチ0に対しては「消音」が対応付けられている。これは、音量設定スイッチ300がスイッチ0の状態であった場合には、トータルボリュームを「消音」に設定することを表している。また、スイッチ1の状態であれば、トータルボリュームを「小」音量に設定するようになっており、スイッチ2の状態であれば「中」音量に設定し、スイッチ3の状態であれば「大」音量に設定するようになっている。従って、遊技ホールの管理者(店員)が音量設定スイッチ300をスイッチ0?3の何れの状態にしておくかによって、遊技ホールの環境や雰囲気に合わせてトータルボリュームを「消音」から「大」音量までの4段階の中から選択可能となっている。」

「【0090】
こうして各チャンネルボリュームの新たな設定を記憶したら、サブ制御基板220のCPU221は、エラーの発生を報知するための効果音(以下、エラー報知音という)の出力中であるか否かを判断する(S210)。本実施例の遊技機1では、音源IC224がアンプ基板226に向けて効果音データ信号を出力するのに同期させて、効果音の出力中である旨を示す信号(出力通知信号)を音源IC224からCPU221に向かって出力するようになっている。CPU221では、この出力通知信号に基づいて、効果音の出力中であるか否かを判断可能となっている。そして、エラー報知音の出力中ではない場合は(S210:no)、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームを、S208で記憶した新たな設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力した後(S212)、ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を実行する。尚、サブ制御基板220のCPU221がボリューム設定信号を出力することにより、演出用チャンネルのチャンネルボリュームの新たな設定(変更後の音量)を音源IC224に指示していることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「個別音量反映手段」の一態様を構成している。」

「【0092】
以上では、演出の進行に伴うボリューム設定の変更を行う場合(S206:yes)について説明したが、演出の進行に伴うボリューム設定の変更を行わない場合には(S206:no)、次いで、エラーの発生に伴うボリューム設定の変更を行うか否かを判断する(図15のS214)。前述したように、遊技機1に何らかのエラーが発生すると、主制御基板200からエラー報知コマンドが出力される。本実施例の遊技機1では、例えば、前述した大入賞口31dが閉鎖中であるにもかかわらず大入賞口スイッチ31sで遊技球が検出されたことによって、大入賞口31dに異常が発生したものと判断された場合(大入賞口エラー)や、前述した下皿満杯スイッチ6sからの検出信号によって、下皿6が満杯状態になっている異常が発生したと判断された場合(下皿エラー)等に、エラー報知コマンドが主制御基板200から出力されるようになっている。そして、このコマンドを受け取ったサブ制御基板220のCPU221は、エラー発生に伴うボリューム設定の変更を行うと判断して(S214:yes)、演出用チャンネル(チャンネル0?6)の全てのチャンネルボリュームを「消音」に設定する旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S216)。
【0093】
次いで、サブ制御基板220のCPU221は、エラー時用のボリュームテーブルを参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S218)。図17は、本実施例の遊技機1で用いられるエラー時用のボリュームテーブルを例示した説明図である。図示されているように、エラー時用のボリュームテーブルでは、音量設定スイッチ300の全ての状態(スイッチ0?3)に対して、「大」音量が対応付けられている。従って、音量設定スイッチ300の状態にかかわらず、トータルボリュームを「大」音量に設定するようになっている。こうしてトータルボリュームを「大」音量に設定するボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力したら、ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を実行する。
【0094】
以上、エラー発生に伴うボリューム設定の変更を行う場合(S214:yes)について説明したが、エラーの発生に伴うボリューム設定の変更を行わない場合は(S214:no)、次に、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行うか否かを判断する(S220)。本実施例の遊技機1では、遊技ホールの管理者(店員)等によってエラーが解除されると、その旨を示す制御コマンド(エラー解除コマンド)が主制御基板200から出力されるようになっており、サブ制御基板220のCPU221は、このコマンドに基づいてエラー報知の終了時期を判断することができる。尚、CPU221がエラー報知の効果音指定信号を音源IC224に向かって出力するのと同時にタイマをセットしておき、所定時間の経過後にエラー報知を終了するようにしてもよい。
【0095】
そして、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行う場合は(S220:yes)、通常時用のボリュームテーブル(図16)を参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S222)。そして、エラー発生に伴い「消音」とされていた演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を「大」音量(電源投入時の状態)とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し(S223)、更に、この演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を、S208で記憶しておいた設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S224)。前述したように、サブ制御基板220のCPU221は、演出の進行に合わせてボリューム変更を行う場合、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの変更後の設定(音量設定情報)を記憶するようになっている(図14のS208)。そして、エラー報知音の出力中も演出は進行するので、CPU221は、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっている(S210:no)。そのため、音源IC224では、エラー報知音の出力中にチャンネルボリュームの設定を変更することはなく、従前の設定(エラー報知音の出力中はすべて「消音」)を維持している。そこで、エラー報知音の出力が終了したら、CPU221は、演出用チャンネルの各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)にするべくボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する。こうしてトータルボリュームおよびチャンネルボリュームを通常時の設定に復帰させるためのボリューム設定信号を出力すると、ボリューム設定処理の先頭に戻って、再びS200以降の一連の処理を実行する。尚、エラー報知の終了に伴って、各チャンネルボリュームを、RAM222に記憶しておいた設定に変更する処理はサブ制御基板220のCPU221によって行われていることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「個別音量回復手段」の一態様を構成している。
【0096】
以上では、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行う場合(S220:yes)について説明したが、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行わない場合には(S220:no)、今度は、音量設定スイッチ300の操作に伴うボリューム設定の変更を行うか否かを判断する(S226)。前述したように、本実施例の音量設定スイッチ300は、遊技機1の裏面にあるサブ制御基板ケース117の前面に設置されており(図5参照)、遊技ホールの管理者(店員)は、この音量設定スイッチ300を操作してスイッチ0?3(図13参照)の何れの状態にしておくかによって、トータルボリュームの設定を選択できるようになっている(図16参照)。また、このような音量設定スイッチ300の操作は、遊技機1に電源を投入した後においても可能である。そして、電源投入後に音量設定スイッチ300の操作がされていない場合には、音量設定スイッチ300の操作に伴うボリューム設定の変更を行わないと判断して(S226:no)、そのままボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を繰り返す。
【0097】
一方、電源投入後に音量設定スイッチ300の操作がされた場合は、音量設定スイッチ300の操作に伴うボリューム設定の変更を行うと判断して(S226:yes)、次いで、エラー報知音の出力中であるか否かを判断する(S228)。そして、エラー報知音の出力中ではない場合は(S228:no)、通常時用のボリュームテーブル(図16)を参照しながら、操作後の音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S230)。その後、ボリューム設定処理の先頭に戻って、S200以降の一連の処理を再び実行する。」

「【0107】
以上に説明したように、本実施例の遊技機1では、何らかのエラーが発生すると、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームが「大」音量に設定され、演出用チャンネル(チャンネル0?6)のチャンネルボリュームの全てが「消音」に設定されるとともに、チャンネルボリュームが「大」音量に設定されたエラー報知用チャンネル(チャンネル7)が指定されるようになっている。このため、演出の進行中にエラーが発生しても、演出のための効果音(演出音)は全て消音されて、エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみが「最大」音量(トータルボリューム「大」、チャンネルボリューム「大」)で出力される。その結果、遊技機1にエラーが発生した旨を効果音によって確実に報知することが可能となる。この点について、さらに補足して説明する。」

以上の記載事項から、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、引用発明の構成a?lは本願発明の構成A?Lに対応している。

「a 遊技機1に何らかのエラーが発生すると出力されるエラー報知音と、遊技の進行に合わせた演出音とを効果音として出力するスピーカ5y、6cと(【0060】、【0079】、【0081】、【0090】、【0092】)、
b 演出表示装置27と(【0027】)、
c 前記スピーカ5y、6cから出力する音量を調節するための音量設定スイッチ300と(【0035】)、
d 前記演出表示装置27と、前記スピーカ5y、6cとを遊技の進行に合わせて制御するサブ制御基板220と(【0035】、【0060】、【0075】)、
f を備えるとともに、遊技球が投入される上皿5と遊技球が排出される下皿6が設けられた遊技機1において(【0019】、【0022】、【0023】)、
g 前記音量設定スイッチ300は、遊技機1の裏面にあるサブ制御基板ケース117の前面に設置されており、遊技ホールの管理者(店員)が操作するものであり(【0096】)、
h 前記サブ制御基板220は(【0081】、【0087】、【0090】、【0092】?【0095】)、
h1 主制御基板200から演出コマンドを受け演出の進行に合わせて適宜指示して各チャンネルに対して個別に設定変更するチャンネルボリュームと、前記音量設定スイッチ300の状態に基づき全てのチャンネルに対して一律に設定変更するトータルボリュームを、それぞれ4段階(「消音」、「小」音量、「中」音量、「大」音量の何れか)に設定変更可能で、チャンネルボリュームがトータルボリュームの設定の範囲内で設定に応じて4段階に切り換わり(【0080】、【0081】)、通常時用のボリュームテーブルで、前記音量設定スイッチ300がスイッチ0の状態であった場合には、トータルボリュームを「消音」に設定し、スイッチ1の状態であれば、トータルボリュームを「小」音量に設定し、スイッチ2の状態であれば「中」音量に設定し、スイッチ3の状態であれば「大」音量に設定し(【0088】)、電源投入後に音量設定スイッチ300の操作がされた場合は、エラー報知音の出力中ではない場合、通常時用のボリュームテーブルを参照しながら、操作後の音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し(【0097】)、
h3、h4、k、l 何らかのエラーが発生すると、所定時間、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームを「大」音量に設定し、演出用チャンネル(図柄変動演出、予告演出、リーチ演出、大当り演出など演出の態様に応じた、または、音の高さや、楽器の種類、あるいは楽曲などの違いによって分類された7種類の演出音データが割り当てられているチャンネル0?6)のチャンネルボリュームの全てを「消音」に設定するとともに、チャンネルボリュームが「大」音量に設定されたエラー報知用チャンネル(演出に用いられることのないエラー報知のためだけのエラー音データが割り当てられたチャンネル7)を指定し、演出の進行中にエラーが発生しても、演出のための効果音(演出音)は全て消音されて、エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみを「最大」音量(トータルボリューム「大」、チャンネルボリューム「大」)で出力し(【0077】、【0092】、【0094】、【0107】)、
h5、i、j 所定時間のエラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっており、そのため、音源IC224では、エラー報知音の出力中にチャンネルボリュームの設定を変更することはなく、従前の設定(エラー報知音の出力中はすべて「消音」)を維持しており、所定時間の経過後、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行う場合は、通常時用のボリュームテーブルを参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、エラー発生に伴い「消音」とされていた演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を「大」音量(電源投入時の状態)とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、更に、この演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し(【0094】、【0095】)、
h6 演出音及びエラー報知音を効果音として前記スピーカ5y、6cから出力する演出を行う(【0079】、【0081】、【0090】)、
遊技機1。」(以下「引用発明1」という。)

イ 当審による拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2005-288020号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0053】
次に、操作ボタン75の操作と音量変更等と関係を説明する。
まず図4を参照してサブ統合基板90が実行する初期音量設定処理を説明する。この初期音量設定処理においては、サブ統合基板90は主制御装置30からの電源投入時であることを示す信号が入力されると(S1:YES)、音量変更処理により、スピーカ5から出力する音声の音量を初期音量に設定する(S3)。初期音量は、サブ統合基板90に設けられているホール用音量調整スイッチ(図示略)によって、遊技店が設定できる。
【0054】
また、電源投入時以外でも(S1:NO)、一定期間遊技が行われていないときには(S2:YES)、音量変更処理で初期音量に設定する(S3)。遊技が行われているか否かは主制御装置30が判断し、それを示す信号が主制御装置30からサブ統合基板90に与えられる。本実施例においては、主制御装置30は、一定時間以上にわたって始動入賞が発生していなければ遊技が行われていないと判断する構成であるが、例えばタッチ信号を主制御装置30に入力し、これに基づいて遊技の実行、不実行を判断する構成とできる。」

「【0056】
このパチンコ機50においては、遊技状態や図柄の変動状態等に応じて、遊技者が操作ボタン75を操作することで音量を調整できる音量調節可能期間(当審注:「音量調節可能期間」は「音量調整可能期間」の誤記と認められる。)がある。そのための音量調整処理を図5に従って説明する。
【0057】
サブ統合基板90は、音量調整処理を開始すると音量調整可能期間か否かを判断する(S11)。なお、音量調整可能期間中は、図7に例示するように図柄表示装置15にて「音量調整可能期間」との表示がなされる。
【0058】
音量調整可能期間であるが(S11:YES)、音量表示がなされていない場合には(S12:NO)、操作ボタン75からの操作信号が入力されると(S13:YES)、図柄制御基板40に指示して図柄表示装置15に音量表示を行わせ(S14)、計測値を一旦0にリセットしてから経過時間の計測を開始する(S15)。図柄表示装置15においては、図7に例示するような音量インジケータ41による音量表示が行われる。
【0059】
音量表示がなされている場合には(S12:YES)、計測処理に(S15)による計時が一定期間Aを経過したか否かを判断する(S16)。この一定期間Aは、図6のタイミングチャートにAとして示す期間であり、音量表示がなされた状態で(S12:YES)操作ボタン75の操作信号が無い期間が一定期間Aを経過すると(S16:YES)、図柄制御基板40に指示して図柄表示装置15での音量表示を終了させ(S17)、経過時間の計測も終了する(S18)。
【0060】
操作ボタン75の操作信号が無い期間が一定期間Aを経過してはいないが(S16:NO)、一定期間Bを経過したときには(S19:YES)、それまでの操作ボタン75の操作信号の入力回数に基づいてスピーカ5から出力する音量を変更し、操作信号の入力回数カウントを0にリセットする(S20)。なお、音量の変更は最大音量の次は最小音量になる。」

「【0072】
また、操作ボタン75の操作信号が無い期間が一定期間Aを経過すると、音量表示が終了する(図8I?K)。
一定期間遊技が行われていないときには、図柄表示装置15の表示がデモ表示になり(図8L)音量が初期音量にされる。デモ表示においては、図8Lに例示するとおり、操作ボタン75を押すと音量を変更できる旨が表示される。」

「【0114】
また、実施例では音量調整可能期間が特定変動の特定時以外の時であるが、デモ表示されている期間のみ音量調整が可能になるといった構成でもよい。上述したように変動表示中に音量調整する場合であると、音量表示、図柄、遊技球などを見なければならず遊技に集中できなくなってしまうおそれがあるが、デモ表示中であれば音量調整のみ行なえばよいので、通常中は遊技に集中できる。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる(e?h2は本件補正発明のE?H2に対応させて付与した。)。

「e 遊技店がスピーカ5から出力する音声の音量を初期音量に設定するためにサブ統合基板90に設けられているホール用音量調整スイッチ(【0053】)とは異なる、音量調整可能期間に遊技者が操作することで音量を調整できる操作ボタン75(【0056】)
f を備えるパチンコ機50(【0056】)において、
h サブ統合基板90は(【0053】、【0054】、【0057】)、
h2 デモ表示されている期間のみの音量調整可能期間において(【0114】)、遊技者が操作ボタン75を操作することでスピーカ5から出力する音量を変更可能とし(【0056】、【0060】)
パチンコ機50。」

ウ 当審による拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2009-34354号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0001】
本発明は、スロットマシン、パチンコ遊技機などの遊技用価値を用いて遊技を行う遊技機に関し、特に遊技の進行状況に応じた効果音を出力する遊技機に関する。」

「【0337】
上記の実施の形態では、ボーナス中楽曲の再生中に精算ボタン16が操作されたとき、或いはエラーが発生したときに、ボーナス中楽曲の再生を停止していた。もっとも、ボーナス中楽曲のような遊技の進行状況に応じた演出のための音声を再生する再生装置と、エラー音、設定変更音、エラー音などの警報音を再生する再生装置が別系統で設けられている場合には、ボーナス中楽曲の再生中に精算ボタン16が操作されたとき、或いはエラーが発生したときでもボーナス中楽曲の再生を継続するものの、再生されるボーナス中楽曲のレベルを低下させるものとしてもよい。演出のための音声を再生する再生装置がミュート機能を備えるのであれば、ボーナス中楽曲の再生中に精算ボタン16が操作されたとき、或いはエラーが発生したときには、ボーナス中楽曲をミュートするものとしてもよい。これによっても、遊技が中断されているのにボーナス中楽曲が大音量でスピーカ7L、7R、7Uから出力されて続けて、周囲の遊技者に迷惑をかけてしまうということがなくなる。」

エ 当審による拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2008-54930号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0035】
以下、遊技機の一種であるパチンコ遊技機(以下、「パチンコ機」という)の一実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1はパチンコ機10の正面図、図2はパチンコ機10の主要な構成を展開又は分解して示す斜視図、図3はパチンコ機10を構成する本体枠12の前面構成を示す正面図である。なお、図2、図3では便宜上、パチンコ機10の遊技領域内の構成を空白としている。」

「【0251】
ステップS1711の処理後、ステップS1712に進み、スピーカ20から出力させる異常報知音を設定するための異常報知音設定処理を行う。異常報知音設定処理では、例えば「ピーピーピー」といった異常報知音をスピーカ20から出力させるべく、ROMに予め記憶された異常報知音データを出力用データとして設定する。ステップS1713では、出力用データとして設定した異常報知音データを出力する出力経路として大音量経路を設定する。このとき、演出音をスピーカ20から出力させている場合には、演出音データの出力経路を切経路に変更する。
【0252】
ステップS1713の処理後、ステップS1708に進み、出力用データとして設定した異常報知音データを大音量経路からスピーカ20に対して順次出力する処理を行い、本処理を終了する。また、演出音がスピーカ20から出力されている場合には、演出音データを切経路からスピーカ20に対して順次出力する処理を行う。したがって、スピーカ20からの演出音の出力が停止され、スピーカ20からは大音量の異常報知音のみが出力されることとなる。」

オ 当審による拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2011-142953号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0001】
本発明は、各種エラー音報知の制御方法に関し、特に、パチンコ遊技機、アレンジボール遊技機、雀球遊技機、回胴式遊技機等の各種遊技機における各種エラー報知音の制御方法に関する。」

「【0028】
以上詳述した本実施の形態のパチンコ遊技機20によれば、主制御基板70から出力された報知音出力信号が音声・表示制御基板80における音信号合成回路85によって、演出音と報知音とが皿満タンエラー音に合成され、スピーカ36から放音される。こうすることにより、従来のように、演出音に替えて報知音を出力する場合と比較して、異常の発生をより簡略化された方法で遊技者に報知可能となる。
【0029】
また、別々に出力された演出音出力信号と報知音出力信号とを音信号合成回路85によって合成し、スピーカ36より皿満タンエラー音を放音するため、皿満タンエラー音を放音するために、演出音を止める必要がない。言い換えると、皿満タンスイッチ42がエラーを検出した際に、演出音の出力中にエラー報知音を出力する処理を割り込ませる必要がないため、このような処理をプログラムで行う際にエラー音を出力するための分岐処理をそもそも行う必要がない。また、演出音の出力中にエラー報知音を出力する処理を割り込ませた場合には、演出音を再度出力する際には、演出音と他の演出(例えば、図柄変動表示装置52に表示されている演出)とのタイミングを合わせる必要があるが、そもそも演出音を再出力する必要がないため、このような処理を行う必要もない。このため、いずれの場合であっても、従来の処理方法と比較してより簡略化されたプログラムで制御することができるため、プログラムの作成・開発及びプログラムが正常に作動するか否かを確認する作業に必要な労力を大幅に低減することができる。加えて、より簡略化されたプログラムで制御することができるため、プログラムが予期しない動作を行う可能性を未然に低減することができ、遊技者に不信感や不快感を与える可能性を未然に低減することができる。」

「【0032】
例えば、上述した実施の形態では、皿満タンエラー音は演出音よりも予め大きな音量として放音されるように設定されており、ステップS130で演出音出力信号と報知音出力信号とを合成するものとしたが、図6に示すように、ステップS130の前に、演出音の音量を小さくさせるステップ(S125)を加えても良い。こうすれば、演出音の音量が小さくなり、相対的に皿満タンエラー音の音量が大きくなるため、より確実に球受皿34が満タンであることを報知することができる。なお、ここで図6は、報知音出力処理ルーチンの他の一例を示すフローチャートである。」

第5 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。なお、見出しの(a)?(l)は本願発明の構成A?Lに対応している。

(a)引用発明1の「a 遊技機1に何らかのエラーが発生すると出力されるエラー報知音と、遊技の進行に合わせた演出音とを効果音として出力するスピーカ5y、6c」は、本願発明の「A 遊技機に対する異常状態を報知する報知音と、遊技の進行による演出音とを出力する複数の音声出力手段」に相当する。

(b)引用発明1の「b 演出表示装置27」は、本願発明の「B 演出表示手段」に相当する。

(c)引用発明1の「c 前記スピーカ5y,6cから出力する音量を調節するための音量設定スイッチ300」は、本願発明の「C 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な第1音量調整手段」に相当する。

(d)引用発明1の「d 前記演出表示装置27と、前記スピーカ5y、6cとを遊技の進行に合わせて制御するサブ制御基板220」は、本願発明の「D 前記音声出力手段と前記演出表示手段とを演出の進行にもとづいて制御する演出制御手段」に相当する。

(f)引用発明1のfの「遊技球が投入される上皿5と遊技球が排出される下皿6が設けられた遊技機1」は、上皿5及び下皿6から外部へ遊技球を排出可能なことは明らかであるから、本願発明のFの「外部へ遊技球を排出可能な遊技機」に相当する。

(g)引用発明1のgの「音量設定スイッチ300」は、「遊技ホールの管理者(店員)が操作するものであり」、「遊技機1の裏面にあるサブ制御基板ケース117の前面に設置されて」いることから、遊技者が操作することができないものとされていることは明らかである。
したがって、引用発明1の「g 前記音量設定スイッチ300は、遊技機1の裏面にあるサブ制御基板ケース117の前面に設置されており、遊技ホールの管理者(店員)が操作するものであ」ることは、本願発明のGの「前記第1音量調整手段は、遊技者が操作することができない調整手段とされ」ていることに相当する。

(h1)引用発明1の「h 前記サブ制御基板220」は、h1の「電源投入後に音量設定スイッチ300の操作がされた場合は、エラー報知音の出力中ではない場合、通常時用のボリュームテーブルを参照しながら、操作後の音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力」するものであるから、本願発明の「H1 前記第1音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音の音量を設定する演出音音量設定制御手段」に相当する構成を「備え」るといえる。

(h3)引用発明1の「h 前記サブ制御基板220」は、「h3、h4、k、l 何らかのエラーが発生すると、所定時間、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームを「大」音量に設定し」、「チャンネルボリュームが「大」音量に設定されたエラー報知用チャンネル」「を指定し」、「エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみを「最大」音量(トータルボリューム「大」、チャンネルボリューム「大」)で出力」するものであるから、本願発明の「H3 異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための前記報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定される音量及び前記演出音音量変更制御手段で変更される音量に依存させることなく設定する報知音音量設定制御手段」と対比すると、「H3’異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための前記報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定される音量に依存させることなく設定する報知音音量設定制御手段」に相当する構成を「備え」る点で共通する。

(h4)引用発明1の「h 前記サブ制御基板220」は、「h3、h4、k、l 何らかのエラーが発生すると」「演出用チャンネル(図柄変動演出、予告演出、リーチ演出、大当り演出など演出の態様に応じた、または、音の高さや、楽器の種類、あるいは楽曲などの違いによって分類された7種類の演出音データが割り当てられているチャンネル0?6)のチャンネルボリュームの全てを「消音」に設定する」ものであるから、本願発明の「H4 前記演出音の音量が前記演出音音量変更制御手段によりいずれの音量に変更されていても、前記遊技機に対する異常状態が発生した場合に、前記演出音音量変更制御手段により変更された音量を消音にする演出音抑制制御手段」と対比すると、「H4’前記遊技機に対する異常状態が発生した場合に、前記演出音の音量を消音にする演出音抑制制御手段」に相当する構成を「備え」る点で共通する。

(h5)引用発明1の「h 前記サブ制御基板220」は、「a 遊技機1に何らかのエラーが発生すると」「スピーカ5y、6c」から「出力されるエラー報知音」について、h5、i、jの「所定時間の経過後、エラー報知の終了」を行うものであるから、本願発明の「H5 前記遊技機に対する異常状態を報知する前記報知音が前記音声出力手段から出力される前記異常報知期間を所定期間経過したことによって終了させる報知期間終了手段」に相当する構成を「備え」るといえる。

(h6)引用発明1の「h 前記サブ制御基板220」は、「h6 演出音及びエラー報知音を効果音として前記スピーカ5y、6cから出力する演出を行う」ことから、本願発明の「H6 前記演出音及び前記報知音を前記音声出力手段から出力する制御を実行する音出力実行制御手段」に相当する構成を「備え」るといえる。

(i)引用発明1は、h5、i、jの「演出」の「進行」「に合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新」が行われることから、「チャンネルボリューム」は演出の進行に合わせて進行するデータといえ、本願発明の「スケジュールデータ」に相当する。
したがって、引用発明1の「h5、i、j 所定時間のエラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっており、そのため、音源IC224では、エラー報知音の出力中にチャンネルボリュームの設定を変更することはなく、従前の設定(エラー報知音の出力中はすべて「消音」)を維持して」いることは、本願発明の「I 前記遊技機に対する異常状態が報知される前記異常報知期間が遊技中に発生した際は進行しているスケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の音量を消音に変更設定し、前記異常報知期間に亘って音量が消音に変更設定される前記演出音に対応するスケジュールデータの進行を前記異常報知期間の間も停止することなく継続させ」ることに相当する。

また、上記第2で述べたように、本願発明の「復旧設定」される「前記演出音の音量」とは、音量調整ボリューム4140aのつまみ部が回動操作されて調節された基板ボリュームのサブボリューム値(このとき、操作ユニット400のダイヤル操作部401や押圧操作部405を操作することで設定モードへ移行して調節されている場合には、その調節された演出音のサブボリューム値)、すなわち、操作部により調節された演出音のサブボリューム値を意味するのであって、例えば、音生成用スケジュールデータ等によりその時々で変化し得る音量ではないものと解すべきであるから、引用発明1のh3の「通常時用のボリュームテーブルを参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいて」「決定」される「トータルボリューム」が、本願発明のIの「復旧設定」される「前記演出音の音量」に相当する。
したがって、引用発明1のh5、i、jの「所定時間の経過後、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行う場合は、通常時用のボリュームテーブルを参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、エラー発生に伴い「消音」とされていた演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を「大」音量(電源投入時の状態)とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、更に、この演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する」ことは、本願発明のIの「前記報知期間終了手段によって前記異常報知期間が所定期間経過し終了されると前記異常報知期間が発生した際に対応するスケジュールデータの進行が継続されたまま消音に変更設定された前記演出音の音量を復旧設定する」ことに相当する。

よって、引用発明1の「h5、i、j 所定時間のエラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶しておくが、エラー報知音の出力中はボリューム設定信号を出力しないようになっており、そのため、音源IC224では、エラー報知音の出力中にチャンネルボリュームの設定を変更することはなく、従前の設定(エラー報知音の出力中はすべて「消音」)を維持しており、所定時間の経過後、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行う場合は、通常時用のボリュームテーブルを参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、エラー発生に伴い「消音」とされていた演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を「大」音量(電源投入時の状態)とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、更に、この演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力」することと、本願発明の「I 前記遊技機に対する異常状態が報知される前記異常報知期間が遊技中に発生した際は進行しているスケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の音量を消音に変更設定し、前記異常報知期間に亘って音量が消音に変更設定される前記演出音に対応するスケジュールデータの進行を前記異常報知期間の間も停止することなく継続させ、前記報知期間終了手段によって前記異常報知期間が所定期間経過し終了されると前記異常報知期間が発生した際に対応するスケジュールデータの進行が継続されたまま消音に変更設定された前記演出音の音量を復旧設定するものであり、前記異常報知期間が発生する以前に前記演出音の音量が前記第2音量調整手段に対する操作に応じて前記演出音音量変更制御手段により変更されていた場合においては消音に変更設定された前記演出音の音量を前記演出音音量変更制御手段により変更されていた音量に設定し、前記演出音が復旧されるように構成され」ることとは、「I’前記遊技機に対する異常状態が報知される前記異常報知期間が遊技中に発生した際は進行しているスケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の音量を消音に変更設定し、前記異常報知期間に亘って音量が消音に変更設定される前記演出音に対応するスケジュールデータの進行を前記異常報知期間の間も停止することなく継続させ、前記報知期間終了手段によって前記異常報知期間が所定期間経過し終了されると前記異常報知期間が発生した際に対応するスケジュールデータの進行が継続されたまま消音に変更設定された前記演出音の音量を復旧設定するもの」である点で共通する。

(j)引用発明1の「h5、i、j 所定時間のエラー報知音の出力中も演出は進行するので、それに合わせて演出用チャンネルのチャンネルボリュームの更新を記憶してお」き、「所定時間の経過後、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行う場合は」、「エラー発生に伴い「消音」とされていた演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を「大」音量(電源投入時の状態)とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力し、更に、この演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を、エラー報知音の出力中に更新しておいた最新の設定(RAM222に記憶された最新の設定)とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する」ことは、所定時間において消音にされる演出音がエラー報知の終了に伴いチャンネルボリュームが進行した状態となるように、演出音を消音にしている間も消音にされた演出音に対応するチャンネルボリュームの進行を停止することなく継続して進行されているといえるから、本願発明の「J 前記異常報知期間において消音にされる前記演出音が復旧される際に進行した状態となるように、前記演出音を消音に変更設定している間も演出音進行継続制御手段により消音された前記演出音に対応するスケジュールデータの進行を停止することなく継続して進行されて」いることに相当する。

(k)引用発明1の「h3、h4、k、l 何らかのエラーが発生すると、所定時間、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームを「大」音量に設定」することと、本願発明の「K 前記報知音音量設定制御手段は、前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段の操作に応じて前記演出音の音量を小さく設定している状態又は前記演出音音量変更制御手段が前記第2音量調整手段の操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した前記演出音の音量を小さく変更している状態であっても、前記異常報知期間においては、当該演出音の音量と比べて大きい音量を前記報知音の音量として設定」することとは、「K’前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段の操作に応じて前記演出音の音量を小さく設定している状態であっても、前記異常報知期間においては、当該演出音の音量と比べて大きい音量を前記報知音の音量として設定」する点で共通する。

(l)引用発明1の「h3、h4、k、l 何らかのエラーが発生すると、所定時間、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームを「大」音量に設定し、演出用チャンネル(図柄変動演出、予告演出、リーチ演出、大当り演出など演出の態様に応じた、または、音の高さや、楽器の種類、あるいは楽曲などの違いによって分類された7種類の演出音データが割り当てられているチャンネル0?6)のチャンネルボリュームの全てを「消音」に設定するとともに、チャンネルボリュームが「大」音量に設定されたエラー報知用チャンネル(演出に用いられることのないエラー報知のためだけのエラー音データが割り当てられたチャンネル7)を指定し、演出の進行中にエラーが発生しても、演出のための効果音(演出音)は全て消音されて、エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみを「最大」音量(トータルボリューム「大」、チャンネルボリューム「大」)で出力」することにおいて、わざわざ「消音」に設定するのは、「消音」に設定しなければ演出音とともにエラー報知音が出力されてしまう構成、すなわち、エラー音のデータを演出音のデータに加えて出力するように構成されていると認められるから、この構成は、本願発明のLの「前記異常報知期間においては、前記異常報知期間以外に出力しない前記報知音の音データを前記異常報知期間以外に出力する前記演出音の音データに加えて出力することで前記報知音を前記音声出力手段から出力し聴取可能にしている」ことに相当する。

してみると、本願発明と引用発明1とは、
「A 遊技機に対する異常状態を報知する報知音と、遊技の進行による演出音とを出力する複数の音声出力手段と、
B 演出表示手段と、
C 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な第1音量調整手段と、
D 前記音声出力手段と前記演出表示手段とを演出の進行にもとづいて制御する演出制御手段と、
F を備えるとともに、外部へ遊技球を排出可能な遊技機において、
G 前記第1音量調整手段は、遊技者が操作することができない調整手段とされ、
H 前記演出制御手段は、
H1 前記第1音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音の音量を設定する演出音音量設定制御手段と、
H3’異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための前記報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定される音量に依存させることなく設定する報知音音量設定制御手段と、
H4’前記遊技機に対する異常状態が発生した場合に、前記演出音の音量を消音にする演出音抑制制御手段と、
H5 前記遊技機に対する異常状態を報知する前記報知音が前記音声出力手段から出力される前記異常報知期間を所定期間経過したことによって終了させる報知期間終了手段と、
H6 前記演出音及び前記報知音を前記音声出力手段から出力する制御を実行する音出力実行制御手段と、を備え、
I’前記遊技機に対する異常状態が報知される前記異常報知期間が遊技中に発生した際は進行しているスケジュールデータに従って前記音声出力手段から出力されていた前記演出音の音量を消音に変更設定し、前記異常報知期間に亘って音量が消音に変更設定される前記演出音に対応するスケジュールデータの進行を前記異常報知期間の間も停止することなく継続させ、前記報知期間終了手段によって前記異常報知期間が所定期間経過し終了されると前記異常報知期間が発生した際に対応するスケジュールデータの進行が継続されたまま消音に変更設定された前記演出音の音量を復旧設定するものであり、
J 前記異常報知期間において消音にされる前記演出音が復旧される際に進行した状態となるように、前記演出音を消音に変更設定している間も演出音進行継続制御手段により消音された前記演出音に対応するスケジュールデータの進行を停止することなく継続して進行されており、
K’前記報知音音量設定制御手段は、前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段の操作に応じて前記演出音の音量を小さく設定している状態であっても、前記異常報知期間においては、当該演出音の音量と比べて大きい音量を前記報知音の音量として設定し、
L 前記音出力実行制御手段は、前記異常報知期間においては、当該異常報知期間以外に出力しない前記報知音の音データを前記異常報知期間以外に出力する前記演出音の音データに加えて出力することで前記報知音を前記音声出力手段から出力し聴取可能にしている
遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は「E 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な前記第1音量調整手段とは異なる第2音量調整手段」を備えるのに対し、引用発明1はそのようなものではない点。

(相違点2)
本願発明は「H 前記演出制御手段」が「H2 所定の条件が成立しているときに、遊技者が操作可能な前記第2音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した前記演出音の音量を変更する演出音音量変更制御手段」を備えるのに対し、引用発明1はそのようなものではない点。

(相違点3)
「H 前記演出制御手段」が備えるH3’の「報知音音量設定制御手段」について、「異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための前記報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定される音量に依存させることなく設定する」だけでなく、本願発明は「前記演出音音量変更制御手段で変更される音量」にも依存させることなく設定するのに対し、引用発明1はそのようなものではない点。

(相違点4)
「H 前記演出制御手段」が備えるH4’の「演出音抑制制御手段」について、「前記遊技機に対する異常状態が発生した場合に、前記演出音の音量を消音にする」のは、本願発明では「前記演出音の音量が前記演出音音量変更制御手段によりいずれの音量に変更されていても」、「前記演出音音量変更制御手段により変更された音量を」消音にするのに対し、引用発明1ではそのようなものではない点。

(相違点5)
本願発明はIの「前記異常報知期間が発生する以前に前記演出音の音量が前記第2音量調整手段に対する操作に応じて前記演出音音量変更制御手段により変更されていた場合においては消音に変更設定された前記演出音の音量を前記演出音音量変更制御手段により変更されていた音量に設定し、前記演出音が復旧されるように構成され」るのに対し、引用発明1はそのようなものではない点。、

(相違点6)
K’の「前記異常報知期間においては、当該演出音の音量と比べて大きい音量を前記報知音の音量として設定」するのは、「前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段の操作に応じて前記演出音の音量を小さく設定している状態」だけでなく、本願発明は「前記演出音音量変更制御手段が前記第2音量調整手段の操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した前記演出音の音量を小さく変更している状態」であっても行うのに対し、引用発明1はそのようなものではない点。

第6 判断
以下、相違点について検討する。

(相違点1及び2について)
引用発明2の「スピーカ5」、「サブ統合基板90に設けられているホール用音量調整スイッチ」及び「遊技者が操作することで音量を調整できる操作ボタン75」は、本願発明の「音声出力手段」、「第1音量調整手段」及び「第2音量調整手段」に相当する。
したがって、引用発明2の「e 遊技店がスピーカ5から出力する音声の音量を初期音量に設定するサブ統合基板90に設けられているホール用音量調整スイッチとは異なる、音量調整可能期間に遊技者が操作することで音量を調整できる操作ボタン75」は、相違点1にかかる本願発明の「E 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な前記第1音量調整手段とは異なる第2音量調整手段」に相当する。
また、引用発明2の「h サブ統合基板90」は、「h2 デモ表示されている期間のみの音量調整可能期間において、遊技者が操作ボタン75を操作することでスピーカ5から出力する音量を変更可能と」するのであるから、相違点2に係る本願発明の「H2 所定の条件が成立しているときに、遊技者が操作可能な前記第2音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した前記演出音の音量を変更する演出音音量変更制御手段」に相当する構成を備えているといえる。
よって、引用発明2は、相違点1及び2に係る本願発明の構成を備えるものといえる。

そして、遊技機の興趣向上のため、遊技者も所望の音量に調整ができるように、引用発明1に引用発明2を適用することに当業者にとって格別の困難性はなく、そのようにして相違点1及び2に係る本願発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たものである。

(相違点3、4及び6について)
引用発明1は、「h3、h4、k、l 何らかのエラーが発生すると、所定時間、音量設定スイッチ300の状態にかかわらずトータルボリュームを「大」音量に設定し、演出用チャンネル(図柄変動演出、予告演出、リーチ演出、大当り演出など演出の態様に応じた、または、音の高さや、楽器の種類、あるいは楽曲などの違いによって分類された7種類の演出音データが割り当てられているチャンネル0?6)のチャンネルボリュームの全てを「消音」に設定するとともに、チャンネルボリュームが「大」音量に設定されたエラー報知用チャンネル(演出に用いられることのないエラー報知のためだけのエラー音データが割り当てられたチャンネル7)を指定し、演出の進行中にエラーが発生しても、演出のための効果音(演出音)は全て消音されて、エラー報知のための効果音(エラー報知音)のみを「最大」音量(トータルボリューム「大」、チャンネルボリューム「大」)で出力」するものであるところ、上記(相違点1及び2について)で検討した、引用発明1に引用発明2を適用して遊技者が所望の音量に調整した場合も同様に、確実にエラー報知を行うことができるように、遊技者の調整した音量にかかわらず、トータルボリュームを「大」音量に設定し、演出音は全て消音して、エラー報知音のみを「最大」音量で出力することに当業者にとって格別の困難性はなく、相違点3、4及び6に係る本願発明の構成とすることに格別の発明性があるとは認められない。

(相違点5について)
引用発明1は、h5、i、jの「所定時間の経過後、エラー報知の終了に伴うボリューム設定の変更を行う場合は、通常時用のボリュームテーブルを参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定」するものであり、上記(相違点1及び2について)で検討した、引用発明1に引用発明2を適用した場合に、エラー報知以前に遊技者が音量を調整していた場合に通常時の設定に復帰させるには、遊技者に違和感を感じさせないように、エラー報知以前に遊技者が変更していた演出音の音量に復帰設定することが自然であり、相違点5に係る本願発明の構成とすることに格別の発明性があるとは認められない。

(本願発明のI、Jの「スケジュールデータ」について)
上記第5(i)、(j)の検討では、引用発明1のh5、i、jの「チャンネルボリューム」が、本願発明のI及びJの「スケジュールデータ」に相当するものとしたが、仮に、そうではなく、引用発明1の「チャンネルボリューム」が「スケジュールデータ」に相当しない場合について念のため検討すると、遊技機の演出制御手段において、スケジュールデータに従って音を含む演出が進行することは、例えば、以下のア及びイのとおり、本願の出願遡及日前の周知技術であり、これを適用して、引用発明1のチャンネルボリュームをスケジュールデータとすることに格別の困難性はなく、当業者が容易になし得たものである。

ア 本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2010-188072号公報
「【0185】
[2-2.周辺基板のグループ]
周辺基板601は、図46に示すように、演出制御を行うサブ統合基板609と、多くのパチンコ遊技機1の遊技盤4に設けられる液晶表示器625の描画制御を行う液晶制御基板610と、を備えて構成されている。サブ統合基板609と液晶制御基板610との基板間は、図示しないハーネスによって電気的に接続されている。
【0186】
[2-2-1.サブ統合基板]
演出制御を行うサブ統合基板609は、マイクロプロセッサとしてのサブ統合MPU609aと、各種処理プログラムや各種コマンドを記憶するサブ統合ROM609bと、高音質の演奏を行う音源IC609cと、この音源IC609cが参照する音楽及び効果音等の音情報が記憶されている音ROM609dと、を備えて構成されている。
【0187】
サブ統合MPU609aは、パラレル入出力ポート、シリアル入出力ポート等の各種入出力ポートを内蔵しており、主制御基板602から各種コマンドを受信すると、この各種コマンドに基づいて、ガラスユニット70Aの発光ダイオード106,108に点灯信号又は点滅信号を出力するガラスユニット点灯点滅コマンドをランプ駆動基板620に出力したり、扉枠装飾ランプ34,35,42,43に点灯信号又は点滅信号を出力する扉枠側点灯点滅コマンドをランプ駆動基板620に出力したり、遊技盤上の演出・装飾ランプ621に点灯信号又は点滅信号を出力する遊技盤側点灯点滅コマンドをランプ駆動基板620に出力したり、遊技盤上の可動装置622に駆動信号を出力する可動装置駆動コマンドをランプ駆動基板620に出力したり、音ROM609dから抽出する音情報を示す制御信号(音コマンド)を音源IC609cに出力したり、液晶表示器625に表示させる画面を示す表示コマンドを液晶制御基板610に出力したり、その表示コマンドと対応するアニメーションによる演出から実写による演出に切り替える切替点を液晶制御基板610に出力したりする。この切替点は、サブ統合ROM609bに予め記憶されている。またこのサブ統合ROM609bには、ガラスユニット点灯点滅コマンド、扉枠側点灯点滅コマンド、遊技盤側点灯点滅コマンド及び可動装置駆動コマンドに対応する演出用スケジュールデータや音コマンドに対応する音用スケジュールデータ等も予め複数記憶されている。演出用スケジュールデータは、発光ダイオード106,108、扉枠装飾ランプ34,35,42,43及び遊技盤上の演出・装飾ランプ621の発光態様(例えば、点灯、点滅及び階調点灯等)のほかに、遊技盤上の可動装置622の可動態様(例えば、小刻みに振動したり、視認困難な待機位置から突然出現して所定時間経過後に再び待機位置に戻ったりする等)を時系列に規定されて構成されている。音用スケジュールデータは、音の進行を時系列に規定されて構成されている。

イ 本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2004-81590号公報
「【0019】
メイン制御基板100は、複数のセンサから検知信号が入力されるとともに、複数の機器に駆動信号を出力するが、図3においては、センサを始動口センサ56で代表し、機器をソレノイド50で代表している。
メイン制御基板100は、入力される検知信号を処理して、パチンコ機10の主要な遊技動作や遊技態様(例えば、大当りか否か、図柄変動パターン、停止図柄等)を決定する。そして、ソレノイド50等に駆動信号を出力し、サブ制御基板120と賞球制御基板160にコマンド信号を出力する。
【0020】
図4は、サブ制御基板120の構成を示すブロック図である。サブ制御基板120のCPU122は、メイン制御基板100から入力されたコマンド信号に基づいて制御ROM124に格納されている制御プログラムを実行し、コマンド信号を出力する。CPU122から出力されたコマンド信号は、音源IC128、表示制御基板150、ランプ27、保留球ランプ28に送られる。
さらにROM124には、特別図柄の変動パターンを記憶している変動パターンテーブルや、遊技進行にともなって発音されるバック・グラウンド・ミュージック(以下、「BGM」と略す)に係わる音パターンデータ、音スケジュールデータ、音定義データ等も格納されている(これらのデータについては、後述にて詳細に説明する)。RAM126には、CPU122の動作にともなって生成されるデータが一時的に記憶される。」

(本願発明の構成Lについて)
上記第5(l)の検討では、引用発明1の構成h3、h4、k、lが、本願発明の構成Lに相当するものとしたが、仮に、そうではなく、引用発明1がエラー音データを演出音データに加えて出力するように構成されているものと認められない場合について念のため検討すると、異常報知期間に、報知音の音データを演出音の音データに加えて出力することは、例えば、上記第4ウ?オのとおり、当審による拒絶の理由で引用された引用文献3、引用文献4及び引用文献5に記載されているように、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。

(効果について)
本願発明の奏する作用効果は、引用発明1及び2、または、引用発明1及び2、周知技術並びに引用文献3、4及び5の記載事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(請求人の主張について)
請求人は、平成30年11月29日の意見書において、
ア 審判合議体が認定する「「エラー報知音の出力が終了したら」「トータルボリューム」「を通常時の設定に復帰させる」に対応する引用文献1における具体的な処理は、図15や段落[0095]に「S222」として記載されている「通常時用のボリュームテーブル(図16)を参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを決定し、決定した設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S222)」という処理であるが、「S222」のエラー報知の終了に伴い「音量設定スイッチ300の状態に基づいてトータルボリュームを通常時用のボリュームテーブルを参照して決定する」という処理によって設定される「トータルボリューム」と審判合議体の「引用発明1に引用発明2を適用した場合に、エラー報知以前に操作ボタン75で遊技者が音量を調整していた場合に通常時の設定に復帰させるには、遊技者に違和感を感じさせないように、エラー報知以前に遊技者が操作ボタン75の操作に応じて変更していた演出音の音量に復帰設定することが自然であり、そのようにして、相違点5に係る本願発明の構成に想到することに格別の困難性はない。」と復帰設定すると認定する「演出音の音量」は異なるものであり対応しておらず、審判合議体の『「引用発明1は、「エラー報知音の出力が終了したら」「トータルボリューム」「を通常時の設定に復帰させる、【0095】参照。)」ものであり、上記(相違点1及び2について)で検討した、引用発明1に引用発明2を適用した場合に、エラー報知以前に操作ボタン75で遊技者が音量を調整していた場合に通常時の設定に復帰させるには、遊技者に違和感を感じさせないように、エラー報知以前に遊技者が操作ボタン75の操作に応じて変更していた演出音の音量に復帰設定することが自然であり、そのようにして、相違点5に係る本願発明の構成に想到することに格別の困難性はない。』という認定を『「引用発明1は、「エラー報知音の出力が終了したら」「チャンネルボリューム」「を通常時の設定に復帰させる、【0095】参照。)」ものであり、上記(相違点1及び2について)で検討した、引用発明1に引用発明2を適用した場合に、エラー報知以前に操作ボタン75で遊技者が音量を調整していた場合に通常時の設定に復帰させるには、遊技者に違和感を感じさせないように、エラー報知以前に遊技者が操作ボタン75の操作に応じて変更していた演出音の音量に復帰設定することが自然であり、そのようにして、相違点5に係る本願発明の構成に想到することに格別の困難性はない。』と読み替えて検討すると、

イ 審判合議体の認定を読み替えた「引用発明1は、「エラー報知音の出力が終了したら」「チャンネルボリューム」「を通常時の設定に復帰させる、【0095】参照。)」という認定に対応する引用文献1における具体的な処理は、図15や段落[0095]に「S224」として記載されている「この演出用チャンネル(チャンネル0?6)の各チャンネルボリュームの設定を、S208で記憶しておいた設定とする旨のボリューム設定信号を音源IC224に向かって出力する(S224)」という処理であり、この「S224」による処理は「エラー報知後に音源IC224に向かってボリューム設定信号を出力し、各チャンネルボリュームの設定をS208で記憶しておいた設定にする」ものであるため、引用文献1における各チャンネルボリュームの設定とされる「S208で記憶しておいた設定」が「エラー報知以前の演出音の音量」であれば、審判合議体の「引用発明1に引用発明2を適用した場合に、エラー報知以前に操作ボタン75で遊技者が音量を調整していた場合に通常時の設定に復帰させるには、遊技者に違和感を感じさせないように、エラー報知以前に遊技者が操作ボタン75の操作に応じて変更していた演出音の音量に復帰設定することが自然」とするご認定に想到するが、

ウ 引用文献1の「S208で記憶しておいた設定」についての記載を確認すると、段落[0089]に具体的に「演出の進行に伴ってボリューム設定の変更を行う場合には(S206:yes)、まず、各チャンネルボリュームの変更後の設定(音量設定情報)を、サブ制御基板220に搭載されたRAM222(図11参照)の所定領域に記憶する(S208)。ここで、各チャンネルボリュームの変更後の設定(音量設定情報)、すなわち変更後の音量は、サブ制御基板220のCPU221の制御下で行われる種々の演出パターンに応じて予め設定されている。また、音量の変更時期も演出パターンに応じて予め設定されている。このため、サブ制御基板220のCPU221は、主制御基板200から受信した演出コマンドを解析することで、その演出コマンドに対応する演出の実行時における音量の変更時期や変更後の音量を特定することができる。尚、演出の進行に合わせて各チャンネルボリュームを個別に変更する処理はサブ制御基板220のCPU221が行っていることから、本実施例のサブ制御基板220のCPU221は、本発明の「個別音量変更手段」の一態様を構成している。」と記載され、この段落[0089]の記載から「S208で記憶しておいた設定」が「各チャンネルボリュームの変更後の設定(音量設定情報)」であることが明らかであるとともに、「各チャンネルボリュームの変更後の設定」は「演出の進行に合わせて各チャンネルボリュームを個別に変更できるように演出パターンに応じて予め設定されている音量の変更時期や変更後の音量を演出コマンドから特定して記憶するもの」であることも明らかであり、

エ つまり、「S208で記憶しておいた設定」となる「S208でサブ制御基板220に搭載されたRAM222の所定領域に記憶される設定」は、RAM222の所定領域に記憶するタイミングにおいて時系列的に後に到来するエラー報知後(演出パターンに応じた演出が進行した後)の演出音の音量を前もって記憶するものであり、RAM222の所定領域に記憶するタイミングに出力されていた演出音の音量を記憶するものでないことから「S208で記憶しておいた設定」が「エラー報知以前の演出音の音量」でないことも明らかであること、

オ 引用文献2の段落[0053]-[0056]などには本願発明の第1音量調整手段と第2音量調整手段に相当する「遊技店が初期音量を設定可能なホール用音量調整スイッチ」と「遊技者が操作することで音量を調整可能な操作ボタン75」について記載され、さらに「遊技者が操作ボタン75を操作したことで調整された音量が一定期間遊技が行われなかったことによって初期音量に設定される」ことも記載されておりますが、遊技者が操作ボタン75を操作したことによって調整された音量が記憶されているといった具体的な記載は一切なく、遊技者が操作ボタン75を操作したことによって調整される音量と異なる音量から遊技者が操作ボタン75を操作したことによって調整された音量に設定されるといった記載もされていないことから遊技者が操作ボタン75を操作したことによって調整される音量が記憶されていることを示唆するような記載も一切されていないこと、

カ 引用文献1はエラー報知となるとエラー報知後に行われている演出音の音量を前もって記憶する(エラー報知以前の演出音の音量を記憶しない)ものであるとともに、引用文献2においてもエラー報知以前の音量を記憶するといった記載や示唆が一切されていないため、当業者が引用文献1に引用文献2を適用したとしても、審判合議体が認定した「引用発明1に引用発明2を適用した場合に、エラー報知以前に操作ボタン75で遊技者が音量を調整していた場合に通常時の設定に復帰させるには、遊技者に違和感を感じさせないように、エラー報知以前に遊技者が操作ボタン75の操作に応じて変更していた演出音の音量に復帰設定する」ことはないこと、

キ 相違点5を有すると審判合議体が認定した「I’」および「J」の構成は補正後においては、「スケジュールデータに従って演出音が音声出力手段から出力されている」ことや「演出音に対応するスケジュールデータの進行を停止することなく継続して進行させることで演出音が復旧される際に進行した状態にしている」ことを出願当初明細書の記載に基づき特定しており、このような演出音に対応するスケジュールデータの進行を停止することなく継続して進行させることで演出音が復旧される際に進行した状態にしているといった特定などによって、補正後の本願発明は消音された演出音が復旧する際にどの程度進行しているか確認する必要もなく、遊技者に違和感を与えることなくより容易に進行した状態で書音(当審注:「書音」は「消音」の誤記と認められる。)された演出音を復旧させることが可能になるのに対して、引用文献1は段落[0089]に記載されているように「サブ制御基板220のCPU221は、主制御基板200から受信した演出コマンドを解析することで、その演出コマンドに対応する演出の実行時における音量の変更時期や変更後の音量を特定し、サブ制御基板220に搭載されたRAM222(図11参照)の所定領域に各チャンネルボリュームの変更後の設定(音量設定情報)を記憶する」ものであり、消音された演出音が復旧する際にどの程度進行しているか確認する必要もないという効果を有する補正後の本願発明と明らかに異なること、

ク 以上のことから、引用文献1に対して引用文献2を適用しても、引用文献1と本願発明の相違点5(構成「I’」)について当業者であっても想到せず、そのため、相違点5(構成「I’」)をより限定し本願特有の効果を有する補正後の本願発明についても、当業者が引用文献1に対して引用文献2-5に記載された発明をどのように適用したとしても想到することはなく、補正後の本願発明を容易に想起できるものではないこと

を主張する。

しかしながら、請求人の主張の上記ア?カについて、上記第2及び上記第5(i)で検討したとおり、本願発明の「復旧設定」される「前記演出音の音量」とは、音量調整ボリューム4140aのつまみ部が回動操作されて調節された基板ボリュームのサブボリューム値(このとき、操作ユニット400のダイヤル操作部401や押圧操作部405を操作することで設定モードへ移行して調節されている場合には、その調節された演出音のサブボリューム値)、すなわち、操作部により調節された演出音のサブボリューム値を意味するのであって、これに対応するのは引用発明1のh5、i、jの「通常時用のボリュームテーブルを参照しながら、音量設定スイッチ300の状態に基づいて」「決定」される「トータルボリューム」であって、「演出」の「進行」に「合わせて」「更新」が「記憶」される演出用チャンネルのチャンネルボリュームではないから、本願発明の「前記演出音の音量」を引用発明1の「チャンネルボリューム」に対応させて主張する請求人の主張は採用することができない。

さらに、請求人の主張の上記キ及びクについては、上記第5(i)(j)及び上記(本願発明のI、Jの「スケジュールデータ」について)で検討したとおりである。そして、上記(相違点5について)で検討したように、引用発明1に引用発明2を適用した場合に、エラー報知以前に遊技者が音量を調整していた場合に通常時の設定に復帰させるには、遊技者に違和感を感じさせないように、エラー報知以前に遊技者が変更していた演出音の音量に復帰設定することが自然であり、そのための技術的手段を設けることは、当業者の設計的事項にすぎないから、請求人の主張は採用できない。

(まとめ)
したがって、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて、または、引用発明1及び2、周知技術並びに引用文献3、4及び5の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-29 
結審通知日 2019-01-30 
審決日 2019-02-18 
出願番号 特願2016-86529(P2016-86529)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠崎 正  
特許庁審判長 奥 直也
特許庁審判官 藤田 年彦
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  

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